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今年も桜の季節になりました。全国的に暖冬の影響もあり、記録的な早さで開花しています。
さて、このたびは横山大観の代表作とも呼べる「夜桜」をテーマに、二つの歴史的な場所をご紹介します。
(メインの写真は大倉集古館です)
<大倉集古館>
多くの大使館が集まる東京の港区虎ノ門という都会の真中にある大倉集古館は、六本木一丁目や神谷町といった地下鉄の駅から近くアクセスがよい。昨年9月に約5年半の増改築工事を経てリニューアルオープンしました。1917(大正6)年に実業家である大倉喜八郎により、日本で初めての私設美術館として設立された同館は、国宝3件、重要文化財13件および重要美術品44件を含む美術品約2,500件を収蔵しています。
大倉喜八郎は現在の新潟県に商人の三男として生まれ、江戸へ奉公に出ました。明治維新後に大倉組商会を設立して一大財閥を創り上げ、今の「大成建設」、「特種東海製紙」、「日清オイリオグループ」、「サッポロビール」、「あいおいニッセイ同和損保」などの名だたる企業となる数多くの事業を興しました。
その喜八郎の嫡子として1882(明治15)年に生まれたのが大倉喜七郎です。喜七郎は東京オリンピックの2年前にホテルオークラを設立し、1972(昭和47)年の札幌冬季オリンピックではスキージャンプ競技場「大倉山ジャンプ競技場」を寄贈しています。また喜七郎は日本美術のすばらしさを世界に発信したいという信念のもと、費用の全額を負担して1930(昭和5)年にローマで大規模な「日本美術展覧会」を開催しました。このとき日本画壇の代表者だった横山大観が日本画の威信をかけて制作した渾身の作品が、六曲一双の大作「夜桜」です。この作品を喜七郎が買い上げたため、歴史的にも芸術的にも価値の高い名品である「夜桜」が大倉集古館に収蔵されることになりました。
入り口近くに鎮座する大倉喜八郎の銅像:片足の雪駄を脱いで寛いでいるようにも見えます。
大観邸と庭、そこでの暮らしぶりの魅力は、書籍「大観邸 画業と暮らしと交流」(株式会社求龍堂発行)に、貴重な写真も豊富に掲載されて、詳しく書かれています。
詳しくは以下ホームページをご覧ください。
https://www.kyuryudo.co.jp/shopdetail/000000001579/001/O/page1/recommend/
横山大観記念館では3月29日まで、「新春万福」と称して「春園の月」の習作などを展示しています。開館日時などの詳細情報は以下の大観記念館Webサイトをご覧ください。
http://taikan.tokyo/
横山大観の「夜桜(左隻)」のご案内
「夜桜」は、横山大観が円熟期に描いた六曲一双の屏風形式の大作で、代表作の一つです。1930(昭和5)年、大倉財閥の二代目総帥 大倉喜七郎の「日本美術を世界へ発信したい」という信念から実現した「ローマ日本美術展」への出品作で、総代として企画運営に携わった大観が、「祖国の魂の宿れる作品を」との情熱で描きました。
暗闇のなか、かがり火に照らされて美しく輝く満開の山桜と対比をなす松が、幻想的、かつ艶やかに描かれています。また、一つひとつ濃淡をつけて描かれた桜はすでに散りはじめており、その儚さに、日本特有の美意識が感じとれます。
このたび、当社が独自開発した複製画の技法「彩美版®」を駆使し、さらに作品一部ずつに職人がシルクスクリーンを施しました。また、本金泥を一部使用し、贅沢に原画の魅力を再現しています。大観が表現した伝統ある日本美を、ぜひお手元でお楽しみください。
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