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09 January 2025

東山魁夷≪満ち来る潮≫
縁起よき「上げ潮」、「満ちる」


いつもブログ『美術趣味』をご覧いただきありがとうございます。
今回ご紹介するのは「昭和の国民画家」と謳われた、東山魁夷の≪満ち来る潮≫です。

1966年に天皇が国事行為や皇室行事を行う場所として、皇居新宮殿が造営されました。国内外の賓客を迎えるために当時の第一線で活躍する芸術家の作品を飾ることになり、山口蓬春、橋本明治らと並び東山魁夷にも宮内庁から作品の制作が依属されました。そこで東山魁夷は海に囲まれた日本を象徴する「海」を描くことを決め、約1年間、北海道から日本海側、太平洋側の各地を巡り写生をして、壁画≪朝明けの潮(あさあけのうしお)≫(縦約3.8m、横約14.3m)を完成させ、皇居新宮殿の南溜の波の間に設置されました。

当時、山種美術館・創立者の山﨑種二(やまざきたねじ)はこの≪朝明けの潮≫を新宮殿で目にして大変感銘を受け、より多くの人が鑑賞できるようにと東山魁夷に同趣の作品を依頼しました。はじめは承諾をしなかった東山魁夷も再々にわたる山﨑種二の願いにより、1970年に≪満ち来る潮(みちくるうしお)≫を完成させたのです。

≪満ち来る潮≫は山種美術館が所蔵する(縦約2.1m、横約9.1m)の壁画です。この皇居新宮殿にゆかりのある貴重な作品は山種美術館でもめったに展示されることがないのですが、2014年11月~2015年2月にかけての「東山魁夷と日本の四季」展で展示された際には、当時の皇太子同妃両殿下がご覧になり、ときおり東山魁夷との思い出を話されたそうです。
皇居新宮殿の≪朝明けの潮≫の波が静かなのに対し、≪満ち来る潮≫の波は岩にぶつかり勢いのある上げ潮が動的に描かれています。海の色は緑青を基調として、深いところは濃い緑青、浅いところは薄い緑青、海面に反射する光と波はプラチナ箔を用いて海の深浅と動きを見事に表現しています。この海の色は青というよりは緑がかっていて、白波がはじけるような海を描いていても、決して厳しさは感じず、心が和むような海の色なのが印象的です。東山魁夷が≪朝明けの潮≫を描いた時に、はじめは群青を使おうとしたが強すぎるために緑青に群青を混ぜたそうですが、≪満ち来る潮≫でもそのことが生かされているのでしょう。≪朝明けの潮≫も≪満ち来る潮≫も共に、訪れた方々を温かく迎えてくれる日本を象徴する美しい海を描いた名作なのです。

なお、壁画≪朝明けの潮≫とほぼ同サイズの大下図を所蔵している長野県立美術館は、劣化が進んでいた本大下図を2年間の歳月をかけて2024年に修復を完了させました。修復された大下図は、2025年秋開催の「東山魁夷館35周年記念企画展」で一般公開する予定だそうですので、とても楽しみです。

2024年7月~9月にかけて山種美術館で開催された「【特別展】没後25年記念東山魁夷と日本の夏」では、貴重な≪満ち来る潮≫が展示されました。共同印刷では東山魁夷の著作権承継者と、山種美術館館長の協力をいただき、原画との照合を重ね東山魁夷 マスターピース コレクション™「満ち来る潮」を製作しました。本商品は原画≪満ち来る潮≫の中心部分を取り出して、飾りやすく迫力のある形にしています。


東山魁夷 マスターピース コレクション™「満ち来る潮」
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絵柄部分が浮き出して見える優美なデザイン額です。
商品の詳細はこちらをご覧ください。


2025年がみなさまにとって「上げ潮」、「満ちる」となり、よい年でありますように祈念いたします。

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