05 December 2024
東山魁夷と川端康成
二人の芸術家の交流が生み出した「京洛四季シリーズ」の名作≪年暮る≫
はやいもので今年ももう12月です。華やかなクリスマスイルミネーションが年の瀬を彩りはじめます。それも過ぎ、大晦日になると静かな夜の街に鐘の音が響き渡ります。一年の締めくくりに感じる今年1年の思い出と、新年と共にやってくる希望に満ちた未来への期待感が胸に広がります。
◆東山魁夷と川端康成の交流から生まれた名作
1955年 、川端康成は京都の自然や町の風景が都市開発で変わっていくのを嘆き、その美しい姿を描きとめてほしいと、親しく交流のあった東山魁夷に希望を託しました。東山はその言葉に心を動かされ、1963年から約5年の歳月をかけて京都に通い、1968年11月に17点の連作を発表しました。これが季節折々の京都の町や自然を描いた「京洛四季シリーズ」です。
文化勲章受章の日本画家、東山魁夷(1908~1999年)と9歳年上で日本初のノーベル賞受賞作家の川端康成(1899~1972年)の交流は、1955年に東山が川端の小説の装幀をしたことからはじまり、川端の死を迎えるまで約17年続きました。東山は北山杉の絵を川端の「古都」の口絵として提供するなど、川端の作品の挿絵や装丁を手掛け、川端は画集「京洛四季」をはじめ東山の画集の序文を寄せたり、孔雀筆を用いて揮毫(きごう)した書とその筆を贈るなどしています。また、鎌倉にある川端邸に東山夫妻を招くなど、二人は親しく交流していました。二人の間で交わされた書簡も多数存在しています。そこから垣間見られるのは、画家と作家という立場はあるものの、お互いの芸術性に深く共感し敬意を払う姿です。
◆「京洛四季シリーズ」をしめくくる≪年暮る≫
≪年暮る≫(山種美術館所蔵)は東山が定宿にしていた京都ホテル(現ホテルオークラ京都)から眺望した、大晦日の雪降る京都の町並みを描いたものです。画面は「東山ブルー」と呼ばれている群青色のグラデーションで統一されていますが、位置により明るさや色が微妙に変化しています。画面中央はやや白く明るいのですが、手前と奥にいくにしたがい濃くなります。手前はしっかりと深い群青に赤みも感じます。一方奥にいくにしたがって淡い感じで群青が濃くなり、町並みの遠近が引き立てられます。手前の鴨川沿いの家からは暖かい光が漏れ、人の営みと温もりを感じます。
芸術の巨匠二人の交流が生んだ奇跡の連作「京洛四季シリーズ」は、この「年暮る」で終わるのです。
「京洛四季シリーズ」を発表したとき、東山は、旅人にとって、めぐりあいこそが幸せであると述べていますが、これは文字通りに京都をめぐって描いた風景との一期一会の出会いのことを指すと同時に、川端との運命的なめぐりあいをいっているようでならないのです。
この度、東山魁夷の著作権承継者さまと原画所蔵の山種美術館さまの協力を得て、東山魁夷の高級複製画シリーズ「東山魁夷 マスターピース コレクション™」として「年暮る」を製作しました。12月から発売を開始しますのでぜひご覧ください。
東山魁夷 マスターピース コレクション™ 高級複製画 東山魁夷「年暮る」

絵柄部分が浮き出して見える優美なデザイン額です。
商品の詳細は以下をご覧ください。
https://www.kyodoprinting.co.jp/release/2024/20241126-8777.html
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