27 November 2024
上村淳之先生との思い出
いつもブログ『美術趣味』をご覧いただきありがとうございます。
季節外れの暖かさが続いていましたが、最近では朝晩の寒暖差が激しく寒さが一層深まり、だんだんと冬の気配もしてきました。季節の変わり目を感じる今日この頃です。
今月11月1日、花鳥画で知られる日本画家で、文化勲章受章者の上村淳之(うえむら・あつし)先生が老衰のためお亡くなりになりました。91歳でした。
複製画の制作にあたって20年ほど前に淳之先生とお会いする機会があり、当時のことを懐かしく思い出しました。
当時、複製画の製造工程で出力した本紙(絵)の色味などを見ていただく際に、淳之先生の奈良のアトリエを訪問しました。アトリエ内は日本画を描くのに必要な画材の岩絵具や鳥のはく製、羽などがたくさん揃えられていました。室内の一部は外に面し、自然の景色を引き込んだような造りになっていて、鳥たちを自然に観察できるよう工夫されていました。
ちょうどアトリエ内に小鳥の絵を見つけ気になったので、描かれている小鳥について淳之先生にお聞きしたところ、素朴な質問にも気さくにお答えくださり、緊張が和らぐ様に感じました。
訪問したアトリエはご自宅とともに、上村淳之先生の祖母・上村松園が晩年すごした別荘地であった「唳禽荘(れいきんそう)」内にあり、敷地内は木々が生い茂り野鳥が住みやすいよう整備されています。オシドリや鴨などが池で泳ぎ、孔雀やキジ、サギなど数多くの野鳥が生息する敷地は、さながら里山のようで、先生は自然に生息する鳥たちを愛でながら花鳥画を追求されている様子でした。後でこの「唳禽荘」を案内していただいた際には、「(たくさん飼育していて野鳥に詳しいから)動物園の飼育係がよく話を聞きにくるんだよ」とも教えてくれました。
とても気さくに色々と教えていただき、有意義な時間を過ごせたことはよい思い出です。
寂しくはなりますが、上村淳之先生のご冥福をお祈り申し上げます。
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