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14 April 2021

米寿記念 上村淳之画伯~美しき花鳥画の世界へ~


「美術趣味」をお読みいただきまして、ありがとうございます。
先日、テレビで上村淳之(うえむらあつし)画伯のアトリエ「唳禽荘(れいきんそう)」と、創作活動のドキュメンタリーが放送されていましたのでご覧になった方もいらっしゃると思います。

本年2021年は日本画家、上村淳之画伯の米寿(88歳)の記念の年です。上村家は、清澄で香高い美人画を描いた祖母の上村松園(うえむらしょうえん)、花鳥画の伝統を追求した父親の上村松篁(うえむらしょうこう)、孫で当人の上村淳之画伯と三代にわたり京都で日本画の伝統を守り続けています。そうした家系を持つ上村淳之画伯は、京都市立美術大学日本画科に入学した当時、祖母の松園没後に空き家になっていた平城山(ならやま)の画室「唳禽荘」に移り住み小鳥を飼い始めました。小さいころから動物の世話をするのが好きだった上村淳之画伯は、丘陵に建つ広大なこの土地で鳥を増やし続け、約70種のさまざまな鳥たちを1,000羽近くも飼っているといわれています。

当社の高級複製画で上村家の作品をつくる際、私たちは監修や軸箱の題字を執筆いただくために「唳禽荘」を幾度も訪れます。丘の上にある「唳禽荘」の門には「日本鳥類保護連盟 奈良研究所」の看板がかかっています。この看板は上村淳之画伯の鳥への姿勢が単に画題として観察する域を超えて、ここでしかできない珍しい鳥の育成や繁殖などの貢献実績を現わしています。門をくぐると谷間を道がうねうねと下っています。その先にある大きな池で丹頂鶴が憩いでいるのを見たときはびっくりしたものです。さらにアトリエまでは大小さまざまな鳥小屋の間を通って行きますので、まさしく鳥たちの桃源郷に迷い込んだようなところなのです。

鳥博士ともよばれる上村淳之画伯が2010年(平成22年)に、大阪新歌舞伎座緞帳画の原画として描いたのが「四季花鳥図」です。この作品は平城山のアトリエに四季折々に訪ねてくる小鳥たちをテーマに、そこで繰広げられる花鳥の世界が丁寧に描かれています。雪積もる松の冬、梅や桜の花咲く春、新緑の初夏、そして木の実がなり紅葉していく秋、また冬になり椿の花が咲く。永遠に続くかのように季節が廻り、その画中ではさまざまな小鳥たちが楽し気に遊んでいます。実はこの作品で重要な役割をしているのが、何も描かれていないように見える背景なのです。上村淳之画伯は一番大切なのは余白であるといっており、背景をあえて省略して余白をつくることで花鳥画に広がりをもたらせているのです。この作品はまさしく上村淳之画伯の夢想した花鳥の絵巻世界なのです。
上村淳之画伯は東洋人には自然と共に生きているという感覚があり、人格を画面の花や鳥に託すことができるといっています。ただこの精神的に自然と一体になるというようなことが、最近だんだんなくなってきていると心配もされています。上村淳之画伯にはこれからも、平城山の鳥たちの桃源郷で健康 に気づかっていただきながら、ご活躍をしていただきたいです。

上村淳之「四季花鳥図」のご紹介
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上村淳之画伯が米寿を迎えることを記念して、奈良県の松伯美術館では「上村淳之 米寿記念Ⅰ上村松園・松篁・淳之三代展 ~日本画の行方~」が開催されています(2021年3月9日(火)~ 5月9日(日))。
同展では上村淳之画伯作品を中心に、三代にわたって受け継がれてきた美の系譜を通し、美しい世界、清らかな世界、そして絵画の真髄に触れる過程をご紹介しています。
詳しくは松伯美術館のホームページをご覧ください。

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