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24 September 2026

東山魁夷《残照》に秘められた作品の魅力。
そして風景画で立つという決心はどこから来たのか。


東山魁夷が描いた《残照》(東京国立近代美術館所蔵)は左右2mを超えるスケールの大きな作品です。
この作品を近くから詳細に見ると、亀裂のような筋がいくつか見えます。これはおそらく作品発表後に、何らかの理由で損失が加えられてしまったのではないかと思っていました。ところが、美術史家の辻惟雄先生の著書『最後に、絵を語る。 奇想の美術史家の特別講義』(集英社)で、この亀裂のようなものは大きすぎたために繋いで制作したためと書かれていました。これを読み、なるほどこのような理由で跡があったのだなと私にとっての謎が解けた次第です。東山魁夷の著作権者にもこの亀裂についてお伺いしたところ、画室から《残照》を出そうとしたら、窓の大きさを忘れていて出せなくなり、仕方ないので半分に切って出して繋げたとの逸話を聞くことができました。
ちなみに辻先生はこの著書で個人的に好きな画家として東山魁夷を挙げており、《残照》、《道》、《曙》などの作品について語っています。辻先生は著書「奇想の系譜」で伊藤若冲などを再評価した美術史家として有名ですが、実は国民的な日本画家の東山魁夷が好きであったというのは、少なからず驚きでした。
さてこの《残照》はけっして派手ではなく、一見するとややさみしさや、慈しみのような印象を受ける作品ですが、この作品に特別な思いを寄せるファンか少なからずいらっしゃいます。それは、高い技術力で描かれているのみならず、この時の魁夷の心が作品に大きく映し出されているからなのでしょう。

東山魁夷は1980年に横浜で生まれました。幼少時代から絵を描くのが好きで、船具商を営む父の反対を説得して、1926年に東京美術学校(現在の東京藝術大学)日本画科に入学します。卒業後の1934年には第1回日独交換学生に選ばれるという、前途洋々とした未来を感じさせるものでありました。しかしながら、ここから1947年の《残照》を描くまでの十数年間、魁夷には数々の過酷な運命が訪れることになります。
1935年、留学中の魁夷のもとに父病気の報が届き、留学を断念し帰国することになりました。この時、父の病はそれほどでもなかったのですが、家業は深刻な事態となっていました。それから7年後に父は心臓の病のため急死してしいます。1944年には住んでいた家が焼夷弾で焼失してしまい、岐阜県に病気の母と妻のすみとで疎開するも、翌年には魁夷のもとに招集が届きます。そして配属された熊本の部隊では対戦車攻撃の訓練を受けましたが、これは爆弾を抱えて敵戦車の下に潜り込んで自爆するという絶望的な訓練でした。そのような厳しい訓練の中である日、熊本から望んだ阿蘇の山並みの美しさに出会い、もしもう一度絵筆をとることができたら、この時の感動を今の気持ちで描こうと心に決めました。同年の9月に魁夷は招集解除となり母と妻のすみと山梨に落ち着きますが、11月には母が死去します。翌年には療養中だった弟も死去して、魁夷はすべての肉親を失ってしまいます。魁夷は戦争での死を覚悟した訓練や、肉親との別れの経験を通して無常観や虚無感にさいなまれます。
このような心に不安を抱えていた魁夷は、美しい風景を求めて訪れた千葉県・鹿野山(かのうざん)で山並みに夕日が映える美しい風景に出会いました。この美しい風景との出会いは、魁夷の心に安らぎと充実をもたらしてくれたのです。
この鹿野山の風景をもとに描かれた《残照》は第3回日展で特選となり、政府買い上げとなりました。《残照》は戦後日本画の展開に大きな指針示した傑作として高く評価されています。
魁夷の風景画がなぜ今もって人々の心に打つものがあるのか。それは過酷な運命を経験し、再生した魁夷の精神性を作品が宿しているからなのでしょう。

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ハンチング帽を被ってスケッチをする東山魁夷の姿。
自然に対する真摯な姿勢と、純粋な力強い眼差しを感じます。
(写真提供 東山魁夷記念一般財団法人)


東山魁夷 マスターピース コレクションTM「残照」のご紹介

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この度、東山魁夷の著作権者の許諾を得て≪残照≫の高級複製画を製作・販売いたしました。
絵柄部分は高精細プリントをアクリルガラスに貼合する彩美版®プレミアムという技法を用いて画面に奥行きを感じさせることで、東山魁夷の作品世界を魅力的に見せています。また、絵柄の色調ばかりでなく、額の形状や色合いに至るまで何度も細かく著作権者の監修を受けて生み出されました。

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