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12 June 2023

驚愕の体験!
五感を刺激する芸術庭園「養老天命反転地」


美術趣味をご覧いただきまして、ありがとうございます。

親思いの息子が汲んだ滝の水がお酒になったという「養老孝子物語(ようろうこうしものがたり)」で知られている岐阜県の養老町。ここには奇想の空間とも呼べる「養老天命反転地(ようろうてんめいはんてんち)」があります。
このテーマパークのような芸術作品は、アーティスト荒川修作氏(1936〜2010年)とパートナーの詩人マドリン・ギンズ氏(1941〜2014)が30年余りの構想を経て、1995年にオープンしました。このたび、かねてより訪れたいと願っていた場所を訪れることができました。

ローカル鉄道の養老鉄道にトコトコ揺られ養老駅で降りると、そこから徒歩15分ほどで養老公園に着きます。「養老天命反転地」はこの施設内にあり、入場料770円(一般)を払って入ります。養老山地の麓に広がる約18,000㎡の広大なこの施設には、建物から地面にいたるまで水平・垂直になったところがほとんどなく、園内を散策するにはしばしば四つん這いになったり、暗闇の中を手探りしたりして進まなければなりません。通常の都市生活の基礎となっている水平・垂直の構造体と、整理・規格化されたルールに慣れた肉体感覚は困惑してしまいます。この場所は肉体感覚を新しく目覚めさせて、フルに活用するように強いてきます。
「養老天命反転地」というアート作品は、通常のアート作品を鑑賞するような、見る側と見られる側という概念を超えて、見る側をアート作品に引き込み、公園と身体との一体化ともいえる体験に参加させます。その身体的な参加行為(真っ暗な穴を手探りで進む、ゆがんだ地面に置かれた椅子に座るなどの)を通じて、常識や道徳といった価値観を取り払った、五感で感じるだけの幼児の状態に私たちを戻すこと。それこそが荒川修作氏とマドリン・ギンズ氏の狙いであり、荒川修作氏のいうところの五感だけの状態における永遠のやすらぎを手に入れる装置ともいえるのが、この「養老天命反転地」ではないかと思うのです。

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© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
施設中央の「楕円形フィールド」は、周囲が高い塀や丘で囲われた世界になっていて、壁に囲まれた世界の小説の心象が浮かんできます。オープン当初はまだ木々が低かったそうですが、28年余り経ち現在は木々が高く茂ったため当初の様相とは違っているそうです。自然の振る舞いがアート作品を変容させていく趣があります。

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© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
「楕円形フィールド」の中央にある「もののあわれ変容器」(奥)と「宿命の家」(手前)。

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© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
施設内には一人が入るのがやっとの幅の穴がいくつかある。

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© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
真っ暗な(思わず暗すぎだよ!と声が出るぐらいの闇)穴の中で手を前に突き出して、そろそろと進んで行き、迷路(一生出られなくなるのではないかと不安になる)のような曲がり角をいくつか曲がった先に突然、日本地図の形の光が現れる。園内には隠された日本地図が数か所あり、それを発見するのも楽しい。

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© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
周囲を半円形に囲む高い塀。

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© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
塀の上の通路を歩くことができる(向こうから人がくるとすれ違うのに一苦労)。もはや謎解き脱出ゲームの様相です。

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© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
斜面に設置された椅子に座ると平衡感覚を失い、現実とも非現実ともつかないシュールな世界を体験することになる。

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© 1997 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
「養老天命反転地記念館」に展示されている建設模型。施設全体を横切って日本地図があるのがわかる。この記念館のトイレもアート作品として素晴らしい。

この地を訪れる際には動きやすい服装とゴム底の運動靴で行かれることをお勧めします。

写真は「養老公園事務所」及び「荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所」の許諾を得て掲載しています。


<「養老天命反転地」の施設のご案内>
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養老公園は、今年、公園県営化100周年・都市公園制度150周年記念を迎え、公園内では各種様々なイベントを開催していきます。

住所:岐阜県養老郡養老町高林1298-2
開園時間:9:00~17:00(最終入場は16:30迄)
休園日:火曜日(祝日の場合はその翌日)、年末年始(12/29~1/3)※悪天候の場合は臨時開園する場合がございます。
入場料:一般770円
 その他に高校生・小中学生・団体の料金がございます(高校生・小中学生は保護者同伴)。
アクセス:養老鉄道養老線 養老駅下車 徒歩約15分 /養老ICより約20分
問い合わせ先:0584-32-0501(養老公園事務所)

「養老天命反転地」の詳細情報につきましては以下のウェブサイトをご覧ください。
https://www.yoro-park.com/facility-map/hantenchi/



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