September 22, 2017

秋の気配が暮らしを彩ってまいりました


 爽涼の候、澄んだ青空に心洗われ、少しずつ早まる日暮れとともに虫の音が心地よい季節がやってまいりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 この季節の移ろいは、日増しに五感が優れてくるような気配すら感じます。

  【 視 覚 】
    【 触 覚 】
      【 嗅 覚 】
        【 味 覚 】
          【 聴 覚 】

...と文学的なことを言っておきながら、結局のところ私が気づく事と言えば、身近なスーパーの果物売場の盛り沢山さ、食欲をそそるとても色鮮やかなこと。

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 まさに、「天高く馬肥ゆる秋(空は澄み渡って晴れ、馬が食欲を増し、肥えてたくましくなる秋)」ですね。

 さて、果物は古代から豊穣のシンボルとして、また愛情のしるしとして美術のさまざまな場面で描かれてきました。静物画のモチーフとしても時代や国を超えて多くの作品に描かれており、身近なものとして親しまれてきました。

 19世紀末、セザンヌは「静物画のモチーフは果物がよい」として、リンゴを好んで描いたそうです。リンゴの形や重さといった「物質としての存在感」を表現するために、テーブルクロスや花瓶などを同じ画面上に置き、果物の瑞々しさと無機質な素材とを描き分けるなど絶妙なバランスを配し、その制作姿勢は後の画家たちへ大きな影響を与えました。

 また、印象派の画家たちは、果物を描くことで、キャンバスを通じて自然界の光を屋内に持ち込むといった願いを抱いていたとも言われています。

 そこはかとなく秋の気配が感じられる今日この頃、文学的・芸術的な思考を巡らせながらも、皆さまの日常にある秋色=ご近所にあるスーパーの果物売場を散策し、五感で楽しく味わって頂ければ幸いです。

September 15, 2017

ローカル線で行く芸術の里、中房総いちはらの旅


 「ローカル線」という言葉にノスタルジーを感じるのは私一人ではないでしょう。多くの人にとって鉄道は、忘れ得ぬさまざまな想い出の場面にその背景として登場することでしょう。想い出が一杯詰まった鉄路とローカル線はイメージのなかで重ね合わされそれが郷愁として意識されるのでしょうか。故郷のローカル線はある意味人生そのものと言えるかもしれませんね。
 地方のローカル線は合理化のため次々と廃線となっています。私が幼いころ通学に利用していた片田舎の鉄道もはるか以前に廃されバスに取って代わりました。私の故郷の鉄路は既に想い出の中にしか存在しません。もう一度乗ってみたいと願ってもそれは叶わないのです。しかし、今も営業を続けるローカル線の旅を通じ、疑似的ではありますがその思いを叶えることは可能でしょう。鉄道ファンならずともローカル線に魅力を感じるのは、こうしたことも理由のひとつかもしれません。夏も終わりの週末、私は東京近郊のローカル線・小湊鐵道を利用した小旅行に出かけてきました。写真を交えて簡単にご紹介させていただきます。


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小湊鐵道五井機関区


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五井駅


 房総半島すなわち千葉県のほぼ中央部に位置する市原市内を南北に貫く小湊鐵道は、関東地方のローカル線の代表格と言えるでしょう。近年、沿線の風景の美しさや鉄道施設のノスタルジックな魅力に加え首都圏から日帰り可能な利便性が評価されマスコミに取り上げられることが多くなり、知名度も高まっています。創業は1917年(大正6年)ですから、今年100年を迎えました。
 東京湾沿岸部にありJR内房線と接続する五井駅を起点とし、山間部の上総中野駅を終点とする片道39.1kmの路線は、養老川と併行するように走り、車窓から眺める美しく穏やかな田園風景はこの路線の魅力のひとつです。ことに養老渓谷の眺めはそのハイライトと言えるでしょう。小湊鐵道の魅力は多くの表現者の心を捉え、写真や映像作品に取り上げられています。また、鉄道をテーマにした作品で知られる日本美術院同人の小田野尚之画伯はしばしば小湊鐵道に取材した作品を発表されています。(第66回春の院展「定刻着」ほか)


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月崎駅


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緑のトンネル


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トロッコ列車


 同鉄道は全線単線で電化されておらず、基本的には気動車(ディーゼル車)の1両または2両編成で運行されています。このほか開業当時使用していた蒸気機関車そっくりに仕立てられたディーゼル機関車が牽引する観光むけの里山トロッコ列車が平日上り下り各2本、土日祝日各3本運行されています。開業は1925年(大正14年)、まず五井~里見間での運行が始まり、終点上総中野までの全線が開通したのは1928年(昭和3年)です。当初計画では、日蓮上人ゆかりの誕生寺がある外房の小湊まで延伸する予定でした。小湊鐵道という社名はその名残です。駅舎など多数の施設が開業当初からのもので、簡素な造りながら古典的美しさを保っています。2016年(平成28年)、文部科学省文化審議会により同社の22施設を国の登録有形文化財へ登録する答申がなされ、今年5月に正式登録となりました。


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登録有形文化財案内板


 小湊鐵道沿線の観光としては養老渓谷と養老温泉が代表的ですが、近年では市原市が主催する中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」という現代アートのイベントが注目されています。この芸術祭は、東京近郊のベッドタウンとして開発が進み人口が急増する市北部と対照的に緑豊かな自然や里山が残る一方深刻な過疎化が進行する市南部地域の活性化をアートの力を借りて行うべくスタートしました。いわゆるアートによる「まちおこし」のひとつと言えます。第1回は2014に開催され、今年第2回目が4月から5月にかけて開催されました。特徴のひとつは、小湊鐵道沿線に点在する、廃校となった小中学校校舎や里山そのものを作品展示会場とすることです。人々が暮らす地域ごとにアートの拠点を構え、文化活動によるまちづくりを行うことがうたわれています。また、個々の地域を貫く地域の交通の要である小湊鐵道の活用ももうひとつの重要なポイントとされています。地域間の移動手段であるばかりでなく、駅舎などの施設そのものも活用されています。
 上記の通り今年のイベントは5月に終了してしまいましたが、そこかしこにイベントの活気の名残のようなものが感じられました。途中下車した月崎駅には、木村崇人氏による作品「森ラジオ ステーション」がありました。小湊鐵道でかつて使われていた詰所小屋を植物で覆い、いささか陳腐な表現ではありますが、「となりのトトロ」などジブリアニメのワンシーンを彷彿とさせる幻想的空間を具現化しています。


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木村崇人「森ラジオ ステーション」


 月崎駅から五井方面に三駅戻った高滝駅の近くには、養老川をダムで堰き止めた高滝湖がありその湖畔に市原湖畔美術館が建っています。「いちはらアート×ミックス」開催にあわせて既存の展示施設「水と彫刻の丘」(1995年開館)をリノベーションし2013年再オープンしたもので、数少ない公立現代美術館のひとつとして知られます。「いちはらアート×ミックス」の主要会場のひとつであるほか、年5回ほどの企画展を開催しています。現在は音楽の一ジャンルで、若者に人気のラップ・ミュージックを取り上げた「ラップ・ミュージアム展」を開催中です。


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高滝湖と市原湖畔美術館


 ラップ・ミュージックをご存じない方のために、かいつまんでご説明しますと、一般的な音楽が音階による旋律(メロディ)を主体とするところ、韻を踏む歌詞とリズムが最も重要な構成要素であるところに特徴があります。リズムに合わせて詩を朗読するイメージと言えば少しはご理解いただけるかもしれませんね、私は正直なところラップそのものには余り興味がなく、予備知識も持ち合わせていなかったのですが、音楽をテーマにしたアート展示がいかなるものか興味がもたれて覗いてみました。拙い私の文章で読者の皆様にご理解いただけるかどうかわかりませんが、特殊な電子装置を用いたリズムと言葉の緊密な関連性をビジュアル的に表わす展示を通し、作者それぞれのユニークなリズムと韻を踏む歌詞の連鎖が、あたかも和歌のように、練り上げられた計算に基づく美しい精緻な構造を形作っていることを知りました。また日本のラップ・ミュージックが既に30年近い歴史を持つことにも驚きました。少なくともこの企画展は私にとって、多少なりともラップを理解する手掛かりとなり、少なからぬ興味を持つきっかけとなったことは確かです。喰わず嫌いよりまずはチャレンジですね。


 ご紹介してきました小湊鐵道とその沿線ですが、実はこれからの季節、秋がお勧めです。田園地帯の黄金色の実りや紅葉の美しさは千葉県内でも一、二を争う魅力です。ことに、養老渓谷の紅葉はお勧めです。
JR東京駅から五井駅(JR内房線)まで片道約1時間、小湊鐵道・五井駅から終点・上総中野までは1時間余り。上総中野駅でいすみ鉄道に乗りかえれば、外房の大原まで抜けることができます。この秋、ローカル線の旅に出かけてみませんか。


※小湊鐵道やいすみ鉄道は一日の運行本数が少ないため、事前に時刻表をよくお確かめの上お出かけください。




【市原湖畔美術館】
<基本情報>
所在:千葉県市原市不入75-1
電話:0436-98-1525
開館:(平日)10:00 - 17:00
(土・祝前日)9:30 - 19:00
  (日・祝)9:30 - 18:00
休館:月曜(祝日の場合は、翌平日)、年末年始


<開催中の企画展>
ラップ・ミュージアム RAP MUSEUM
開催期間:8月11日~9月24日
入場料:料金:一般800(700)円
 大高生・シニア(65歳以上)600(500)円。
 ()内は20 名以上の団体料金。
 中学生以下・障害者手帳をお持ちの方とその介添者(1 名)は無料。

July 28, 2017

豪雨被災地の皆さまへ、心よりお見舞い申し上げます


 ようやく梅雨が明けたものの、災害レベルの豪雨に心を痛める毎日です。この度の九州北部、東北北部の豪雨災害、被害を受けられた地域の皆さま、関係の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

 恨むべきは突然の豪雨でありますが、古くより農耕に携わる生活をしてきた日本人にとって、雨は切っても切れない存在です。雨にまつわる言葉の数々からは、古人がどのように雨と接してきたかを伺い知ることもできます。以下、穏やかな言葉をまとめました。

・ 霧雨(きりさめ)...霧のように細かい雨。
・ 時雨(しぐれ)...降ったり止んだりする雨。
・ 村雨(むらさめ)...急に降りだして短時間で止むような雨。
・ 瑞雨(ずいう)...穀物を育む雨の意。
・ 慈雨(じう)...恵みの雨の意。
・ 甘雨(かんう)...草木を潤す雨の意。


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庭のトマト


 また、雨のあとには、天に美しい虹が映えるときがあります。

 以下の作品は、女性初の文化勲章受章者で、美人画の巨匠として知られる上村松園の名作《虹を見る》(原画は京都国立近代美術館所蔵)です。右隻には雨上がりの夕べ、振袖姿の姉に抱かれた愛らしい赤ちゃんが、天空に微かに映える虹を見上げて微笑む姿が印象的な構図で描かれています。

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上村松園《虹を見る》(当社彩美版®より)


 このような雨あがりの情景を、穏やかに慈しみたいものです。

 被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

July 14, 2017

大正時代のガーデニング男子


 梅雨だというのに、東京では雨があまり降りません。うだるような暑さが続き木々や草花も心なしか元気がないように見えます。水が足りないのではないでしょうか。我が家の子どもがまだ幼い頃は、家庭菜園が人気で、我が家でも地元自治体が運営する菜園を借りて野菜を育てていました。植物を育てるのは手間がかかるもの、夏場は水やりが大変です。水道が離れた場所にあり重いバケツを運んで何往復もしたものでした。

 ここ数年でしょうか、ガーデニングを楽しむ男性が増えてきているとの話題を耳にしました。そういえば、NHK「趣味の園芸」の講師はイケメン俳優の三上真史さんでしたし、作家いとうせいこうさんのエッセイをもとにして作られた田口トモロヲさん主演のNHKBSプレミアムドラマ「植物男子ベランダー」も、かなりディープな内容で人気だそうです。

 私自身はガーデニングにそれほど興味があるわけではないのですが、植物好きの家族のおかげで緑に囲まれた生活を送っています。リビングのど真ん中には、天井にとどかんばかりのウンベラータという観葉樹が鎮座し、四方に大きく枝葉をひろげています。ウンベラータの大きな葉は繊細でなるべく触らないようにしなけれなならないのですが、さほど広くない我が家のリビングですから、どこに行こうとしてもかならずこの樹の枝先ぎりぎりを通過しなければならず、不便を強いられています。それでも、活き活きとした植物たちに囲まれた空間には不便を上回る快適さと心を満たす歓びがあります。ことに室内にいながら樹下に憩う爽快さは、何物にも代えがたいものがあります。簡単な水やりでも続けていると、植物への愛情が自然と湧きあがってくるのが不思議です。

 ところでガーデニング、すなわち園芸は当初身分や教養の高い限られた人たちの趣味だったそうです。盆栽も含めていわゆる文人の嗜みの一つでした。江戸時代後期には一大ブームが興り、貴賤を問わずひろく愛好されたました。様々な花の品種が作出され園芸にかかわる出版も盛んでした。余談ですが、私はこうした園芸ブームと日本画の主題としての草花には、もちろん総てにあてはる訳ではないですが、なんらかの関連性があるのではないかと考えています。例えば酒井抱一や弟子鈴木其一ら江戸琳派の作品に多い花卉画は、園芸ブームという同時代性も併せて考えてみるべきではないでしょうか。機会があればもう少し深く探ってみたいと思います。

 話を戻します。近代日本を代表する文人の一人森鴎外(1862~1922)は園芸のスペシャリストでした。医学者らしく研究熱心で極めて高度な専門的知識を身に着けていたそうです。著名な植物学者牧野富太郎とも園芸を通じた親交がありました。自邸観潮楼(現在文京区立鴎外記念館のある場所)の裏庭は鴎外が園芸を楽しむ場所でした。毎日のように庭に下りて草花の生育状況を観察していたようです。鴎外がつけていた日記には草花の記述がしばしば登場します。また、花の開花記録である「花暦」を記しています。

 鴎外の弟子を自認していた一人に作家永井荷風(1879~1959)がいますが、荷風もまた園芸を好む男子の一人でした。荷風は随筆『偏奇館漫録』にこう記しています。

 「余花卉(かき)を愛すること人に超えたり。病中猶年々草花を種まき日々水を灌ぐ事を懈(おこた)らざりき。」


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断腸亭にほど近い余丁町の抜弁天。
荷風は大正6年12月の縁日に沈丁花一鉢を買い求め、自邸の窓下に植えている。



 断腸亭という彼の号の由来も花とかかわっています。大久保余丁町(現新宿区余丁町)の実家の庭園に咲いていた断腸花(秋海棠の別名)を好み、自らの書斎に名づけたのでした。断腸花は秋の花ですが、夏の花としては紫陽花と椎の花を特に好みました。

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荷風が好んだ夏の花、紫陽花。


 荷風の日記『断腸亭日乗』には草花の記述がしばしば出てきます。多くは季節の花の開花記録ですが、自ら雑草を抜き、種をまき、球根を植え、根分けをしたというような具体的園芸の記述もあります。また時には、樹医のようこともしています。大正9年に移り住んだ古いペンキ塗りの洋館、偏奇館には椎の老樹がありましたが、その樹に蟻がついて弱ったのを手入れして甦らせたのです。夏はこの椎の木の下で読書をするのが彼のお気に入りでした。

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偏奇館跡地に立つ泉ガーデンタワー。


 草花を好んだ荷風でしたが、偏奇館の庭は人から見れば、荒れ放題だったようです。しかし荷風自身は、綺麗に手入れされた庭園より手をあまりかけず荒廃した雰囲気に雅趣を見出したのでした。『断腸亭日乗』大正6年12月1日の記録にはこう記されています。

 「蝋梅(ろうばい)の黄葉末落尽さゞるに枝頭の花早くも二三輪開きそめたり。予今年は病のため更に落葉を掃(はら)はざりしが、今になりては荒果てたる庭のさま却て風趣あり。」

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偏奇館庭園を偲ぶ:道源寺に隣接する六本木坂上児童遊園の樹立。


 麻布市兵衛町にあった偏奇館は戦災で焼け、その跡地には今、泉ガーデンタワーが聳え立っています。泉屋博古館分館のすぐ裏手です。この周辺は大規模開発により荷風が住んでいたころとはすっかり様子が変わってしまいました。私は、荷風が通った道源寺坂にわずかに残る面影をみつけ心に刻みました。坂下の西光寺の木芙蓉が、午後の陽射しを浴びて可憐な花を咲かせていました。

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麻布道源寺坂。


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道源寺坂に咲く木芙蓉。




【夏の花いろいろ】※クリックするとリンク先の記事に飛びます。
ツツジ: 小倉遊亀 《初夏の花》
ガクアジサイ: 中村岳陵 《八仙花》
セイヨウアジサイ: 山口蓬春 《榻上の花》

スイレン: クロード・モネ 《睡蓮の池》


【お知らせ】
■ロビー展「私たち、自然保護しています。」を日本自然保護協会様にご紹介いただきました

6月22日付当ブログで、自然保護活動がテーマの当社ロビー展の記事を掲載しましたが、このロビー展の概要を、協力いただいた日本自然保護協会様に同会ホームページでご紹介いただきました。以下リンクからご覧いだだけます。

公益財団法人日本自然保護協会(企業連携)http://www.nacsj.or.jp/partner/2017/06/4629/

June 16, 2017

木の森の生命たち


 私の住む区内にちょっと気になる「美術館」があると知り、天気の良い休日を見計らって訪れることにしました。初夏の日差しが急に増してきたと感じながら、自転車で、もたもたペダルをこぎ、閑静な住宅街の中を何となくこのあたりだろうと目途をつけたものの、そう甘くはなく右往左往。ようやくそれらしき建物を見つけました。(もう一度すんなり行ける自信がありません。)

 美術館と言っても大きな住宅の風情。しかし入口の意匠はとても神秘的で、樽に乗った馬の首の彫刻があり、壁にかかった味わいある木の板には、M●KKINKANと読みづらいロゴが記されていました。ここはしまずよしのりさんという彫刻家の作品を展示する、モッキンカン木の森美術館です。

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木の森美術館入口

 館長である奥様のリコさんに案内されて入ると、大小様々な木彫りの彫刻が所狭しと置かれています。楽器を奏でる動物や巨大な顔面などインパクトある作品や、小さく可愛い不思議な人形類などとともに、額装された絵や小さなスケッチも壁を覆っていました。
 しまず先生はとても多才な方で、書や詩も書き、童話も作られます。小さな彫刻作品はアニメーション制作に使用したもの。ご自身で微妙に人形を動かしては撮影しコンピュータのソフトで作り上げたオリジナルアニメ作品がたくさんあります。

 正式な展示室である2階に上がるとさらに圧倒されます。様々な木彫りの作品は皆大きく、生命が宿っているかのように生き生きして佇んでいます。殆どが大きな木から彫りだされた一木造の作品で、モチーフも様々。巨大なアゲハチョウやトンボが宙を舞っていたり、羽を畳んだ妖精が眠っていたり、夥しくざわめくキノコと笛を吹く少年、祈りを捧げる森の精など、異界に住む住人が集合したようです。

 女性が馬車に乗った作品は未完成とのことですが、館長に促され背後から女性を見ると、たくさんの子供に乳を与えている動物の姿が現れました。表と裏が異なる造形になっている作品で作者のユーモラスな面が伺えます。作品の様相は制作年によっても変化しているようで、それも楽しめる要因です。初期からの膨大な作品はここ以外に米蔵の倉庫に保管されているとのこと。絵画作品中心に展示された小さな部屋もあり、無垢でファンタスティックな世界は私の心の琴線に触れ、何度も見入ってしまいました。

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賑やかな彫刻展示風景

 しまず先生は、1944年東京都生まれで、幼少は長野育ち。その後浦和に移り美術に没頭。高校卒業後作家活動に入り、絵画からレリーフ、そして独学で彫刻を始め、長野県での制作活動を経て70歳を超える今も精力的に制作を続けています。

 お会いして様々なお話を伺いました。哲学を感じる大人向けの寓話、なかでもサラリーマンを経験していないしまず先生だからこそ、サラリーマンの風習の奇異さが目に付く内容のお話は不気味でした。今の世は「無邪気さ」や「他愛ないこと」が少なくなったこと、しかし「人間はそんな少年時代がすべてを決定づける」ことなど、あらためて確かにと共感できる言葉にも接しました。

 しまず先生の作品は多様ですが、その作品には共通して、人間は自然と対立するものではなく、自然の一部だと捉えた思想が投影されています。「森から放たれた原木と対峙し、その原木に宿る『生命の立体』を見出し、迷うことなく彫り出す。彫り起こされた『生命の立体』はやがて連なり新たな森を形成する。」

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作品「羽化する少女」

■モッキンカン木の森美術館
さいたま市南区大谷口593
TEL 048-881-0524
営業時間10時~17時
定休日 木曜
Web  http://www.unpopu.com/cho/index.html

May 26, 2017

新作モネ「睡蓮の池」のご案内


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。


 炒りたてのほうじ茶の香ばしい香りに誘われて、近所のお茶屋さんをのぞくと、「新茶」の入荷を知らせるポスターや幟を目にする様になりました。また、新茶の季節と共に、夏の気配が日に日に感じられ、強い陽射しに汗ばむ頃となってきました。急な気温上昇で真夏日・猛暑日になる事もあり体調を崩しがちですが、皆様どうぞ体をご自愛くださいませ。


 さて弊社ではこの度、印象派の巨匠、クロード・モネ「睡蓮の池」複製画の販売を開始いたします。モネが描いた日本の橋が架かる睡蓮の池。モネが移り住んだフランス・ジヴェルニーの地に造成した「水の庭」を描いた最初の連作のひとつでもあります。あふれる光と自然の息吹に満ち、緑きらめく美しい睡蓮の庭。陽光と深い緑が揺らめき水面へ反射が巧みに描かれています。豊かな色彩やモネの筆遣い、原画の持つ鼓動までをも「彩美版®」にて再現いたしました。


 気品ある木製デコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。


 モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。




クロード・モネ 《 睡蓮の池 》
Claude Monet / LE BASSIN DES NYMPHÉAS
販売価格 115,000円+税
限定200部発行


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ⓒ The Metoropolitan Museum of Art
Image source:Art Resource,NY/PPS通信社



※画像をクリックすると大きく見られます。


■仕様体裁
原 画 メトロポリタン美術館
H.O.ハヴメイヤー・コレクション
監 修 高橋明也(美術史家/三菱一号館美術館館長)
限 定 200部
技 法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
用 紙 キャンバス
額 縁 木製デコレーション金箔額(国産ハンドメイド)、アクリル付き
画 寸 天地53.0×左右42.1㎝
額 寸 天地66.0×左右51.1㎝×厚み3.0㎝
重 量 4.0㎏
発 行 共同印刷株式会社

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

May 19, 2017

暖かな陽射しの五月 ~日比谷公園より~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。


 気候良く、暖かかな陽射しが心地よい今日この頃。私は季節の移ろいを確かめに、日比谷公園に足を運んでみました。日比谷公園は都心に位置する有名な公園で、日本を代表する都市公園のひとつ。歴史も古く、野外音楽堂や日比谷公会堂などの施設も有しており、園内は多くの人で賑わっており、公園の中央にある大きな噴水が出迎えてくれました。

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日比谷公園「噴水広場」の噴水


 噴水とは、文字通り「水を噴出するもの」とされますが、改めて世界を見渡してみると、著名な公園には必ずと言って良いほど噴水のある広場があることに気付かされます。ラスベガスの噴水ショーや、シンガポールのマーライオン、イタリアのスペイン広場、ドイツブリュッセルの小便小僧など。ただ単純に水を上に噴き上げるだけの噴水もあれば、二段噴水~三段噴水など複数の噴水で迫力ある景観もあり、また夜になるとライトアップが美しい噴水、音楽に合わせて踊る噴水など、多種多様な姿で、ときに楽しく、ときに優しく癒してくれる存在ですね。
 また、公園のいたるところでは季節の花々が咲いており、特に黄色のバラが目を惹き、緑と噴水を背景にした情景がとても印象的でした。

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黄色のバラ


 もうすぐ梅雨の季節が始まります。せっかくの晴れた日は外へ出て、季節の移り変わりを楽しめればと思います。


May 12, 2017

行く春


 春から夏へと季節の移り目を迎えました。今年は春らしい日が短く、冬からいきなり夏になったかのような印象すらあります。
 私ごとですが、三月から四月にかけては冬に逆戻りしたような寒さに震え、厚手のウール・ジャケットを着こんでいました。日中は温かくても朝晩冷え込むため、着るものに迷う日が多かったように記憶しています。今や、日によっては30度近くまで上がる暑さに耐えられず、麻ジャケットのクールビズスタイルで過ごしています。
 タイトルの「行く春」は去りゆく春を惜しむ想いが込められた俳句の季語ですが、今年に限って言えば「いつ春?」が私の本音です。





 閑話休題、私は連休最後の一日、趣味のバードウォッチングを楽しむため千葉県習志野市の谷津干潟を訪れました。かつて東京湾(江戸湾)にはそこここに広大な干潟があり、豊かな海の幸を育んでいました。そのほとんどが60、70年代いわゆる高度経済成長期に埋め立てられ、工場地帯へと変わっていきました。谷津干潟は、隣接する船橋沖の三番瀬とともに東京湾に残る最後の干潟のひとつです。1993年に保護すべき貴重な湿地としてラムサール条約に登録されました。

 今頃の谷津干潟の主役は、シギやチドリの仲間です。その多くはシベリアなど北の繁殖地と中国南部から東南アジアにかけての南の越冬地との渡りの途中、一時的に日本に立ち寄る「旅鳥(たびどり)」です。ちょうど満潮となる時間帯でしたが、津田沼高等学校に隣接する南東側の岸壁近くの杭や浅瀬に集まったシギやチドリの群を間近に観察することができました。なかでも鮮やかな赤茶色の翼に、歌舞伎の隈取を想わせる白黒模様の顔が印象的なキョウジョシギや、やや小柄で首から胸にかけてオレンジの羽根が目立つメダイチドリが印象的でした。そこから少し歩いた北東の岸近くでは、下向きの弧を描く細く長い嘴が特徴的なチュウシャクシギが干潟を突いてカニを捕えるところを観ることが出来ました。

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キョウジョシギ   ※画像をクリックすると大きな画像で見ることが出来ます。(以下同じ)


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メダイチドリ


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チュウシャクシギ

 さきほども申し上げた通り、これらの鳥たちは南から北へ帰る渡りの途中、我が国でしばし翼を休める旅鳥です。キョウジョシギやメダイチドリはムクドリよりやや小さい20㎝前後の大きさです。チュウシャクシギはだいぶ大きく40㎝余りありますが、それでも多くのカモ類より一回り二回りも小さな体です。彼らが挑む、数千kmから1万km以上にも及ぶ命を懸けた旅路を想うと、深い感動を覚えずにはいられません。





 今からおよそ330年前、元禄2年(1689)の春、松尾芭蕉(1644~1694)は深川の芭蕉庵を引き払い、弟子の曾良とともにおくの細道の旅に出立しました。深川から舟に乗り千住で陸に上がって見送りの親しい人々と別れる際に詠んだのが、有名な次の一句です。去りゆく春を惜しむ想いを表現したものと言われます。


 行く春や鳥啼き魚の目は泪
 ゆくはるや、とりなきうおのめはなみだ


 おくの細道への旅立ちの日は、新暦の5月16日にあたります。まさに今頃のことだったのですね。芭蕉はこの折の心境を「上野谷中の花の梢又いつかはと心ぼそく」と吐露しています。すなわち「上野や谷中の桜を再び観ることができるのはいつだろうか」と心細く思ったということです。生きて帰れる保証もないおよそ5か月間、600里(約2,400km)にも及ぶ長い旅路です。自ら望んだこととは言え、老境(とは言ってもまだ40代!)の芭蕉には、相応の覚悟があったことでしょう。「行く春や」の句には、そうした気持ちが重ねられているように感じられます。





 若い時分には、過ぎ去った春はまた必ずまた巡って来るものと信じ、身近な老人たちの警句に耳を傾けることなく安閑と過ごしてきました。しかし年を重ねた今、人生に必ずまたということは無いのだというシンプルな真実を認めざるを得ません。「今を生きる」ことを大事にしていきたいと思います。







関連記事:鳥帰る春 -谷津干潟にて(2017年3月3日)


April 27, 2017

●回帰する時間、心の旅 ―東山魁夷―


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。

 弊社ではこの度、東山魁夷マスターピース コレクションTMの第5弾として『白馬の森』の一斉販売を開始いたしました。本作品は本紙にアクリルガラスを直接貼り合わせることで、作品全体に清らかな透明感と深い奥行き感を与える、新感覚の美術工芸作品です。

 『白馬の森』は、連作「白い馬の見える風景」の中の一作で魁夷屈指の名作です。

 「ある時、一頭の白い馬が、私の風景の中に、ためらいながら、小さく姿を見せた。すると、その年(1972年)に描いた18点の風景の全てに、小さな白い馬が現れたのである。」

 画家の分身ともいえる白馬を、魁夷は戦前のドイツ留学直後の苦悩と不安に揺れ動いていた時期に一度描き上げました。それからおよそ30年後、ゆかりの深いドイツを再訪した魁夷は帰国後、魂の赴くままにまた再び白馬を描きます。戦前と戦後、直線的な時間と回帰する時間が画家の中で融け合い、やすらぎを求める気持ちと平和への切ない祈りが、一頭の白馬に奇蹟のように結実します。幻想的な森の奥深くから精霊のように浮かび上がる白馬は、常に見る者の心を深く捉えて離しません。

 『白馬の森』を完成し、画家は歴史的超大作、唐招提寺障壁画に着手します。この作品には障壁画完成までの長い道のりを思い、決意と精進を誓う魁夷の心の祈りも込められているのかもしれません。

 東山魁夷の神秘的な空間芸術を皆さまも是非お手元でお楽しみ下さい。


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【東山魁夷 マスターピース コレクションTM 『 白馬の森 』】
販売価格 500,000円+税
限定500部発行

■仕様体裁
監 修 東山すみ
技 法 彩美版®プレミアム
額 縁 特注銀浮き出し加工木製額(シルバーフレーム/背面メタリック梨地)
画 寸 天地44.3×左右65.2㎝(15号)
額 寸 天地62.2×左右83.1×厚さ3.7㎝
重 量 約4.9㎏
原画所蔵 長野県信濃美術館 東山魁夷館
解 説 松本猛(長野県信濃美術館 東山魁夷館前館長)
発 行 共同印刷株式会社
※作品についてのお問い合わせ:共同印刷(株)アート&カルチャー部 TEL.03-381-2290


 茨城県水戸市の茨城県近代美術館で人気を博した「東山魁夷 唐招提寺障壁画展」が、4月22日(土)より愛知県豊田市の豊田市美術館で開催されております。唐招提寺御影堂では現在修繕工事が行われており、そのため通常は非公開となっている障壁画が美術館で特別展示されています。東山芸術の頂点を示す大作「唐招提寺障壁画御影堂全68面」に、貴重なスケッチや下絵などで美術史に残る名作の全貌が紹介されています。制作に10年を要した作品の、構想から完成に至るまでの足跡を念入りにたどる、必見の催しといえましょう。

 皆さまも初夏のおだやかな陽気に誘われて、東山芸術の真髄に触れ、こころ豊かな気分に浸ってみてはいかがでしょうか。

 そして実は共同印刷で制作した東山作品の複製絵画が、展覧会場で特別販売されております。新作『白馬の森』や人気の『緑響く』『行く秋』『静映』などの彩美版®プレミアム作品が販売スペースに飾られ、会場で東山芸術の感動を胸にした多くのお客様にご覧いただいています。共同印刷の彩美版®プレミアムは東山魁夷の美しい風景を、さらに魅力的に鑑賞していただける新感覚の美術工芸技法です。展覧会場にいらっしゃった際は、ぜひ展示コーナーまで足をお運び下さい。


【展覧会情報】
「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」

会場 豊田市美術館
愛知県豊田市小阪本町8-5-1
会期 2017年6月11日(日)まで
月曜休館(5月1日除く)
時間 10:00~17:30


 昨今、お客さまから額裏の証明書に貼付されたセキュリティシールについて、お問い合わせをいただくことも多く、改めてこの場を借りてご説明をさせていただきます。

 共同印刷株式会社が独自に開発したセキュリティシールが、作品の真贋の判定を行います。お試しにお手持ちのスマートフォンなどで「彩」美版の銀色シールをフラッシュを焚いて撮影して下さい。KP(KYODO PRINTING)の文字が確認できましたら、その作品は真正な共同印刷発行の美術作品です。

 さあ、GWももう間近。皆さまどうぞ良い休日をお過ごし下さい。


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April 7, 2017

正統を極め、異端に戯れる


 今、華々しく脚光を浴びる幕末~明治の絵師、河鍋暁斎(かわなべきょうさい / 1831-1889)。折しも現在渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで展覧会「これぞ暁斎!」が開催され、あらためてその画力の天才ぶりを多くの人に見せつけています。正直、私は暁斎について知っているつもりでいながら、それはほんの一部に過ぎないとここ最近知らされました。

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河鍋暁斎記念美術館

 私の住むさいたま市のすぐ隣の蕨市に、公益財団法人 河鍋暁斎記念美術館があります。ずっと以前から知ってはいたものの、暁斎のイメージが妖怪や魑魅魍魎を得意とするどこかおどろおどろしい画風の異端画家という印象で、臆病な私は何となく足が向きませんでした。しかしマスコミで紹介される暁斎作品を目にする機会が重なり、見方が偏っていたと気づかされました。温かく穏やかな休日に思い立ち、初めて記念美術館を訪れてみました。

 暁斎の曾孫である河鍋楠美館長が1977年に創設した美術館で、今年 40周年となります。住宅地の中にさり気なくあり、自宅を改装したアットホームな気さくさが何故か暁斎らしいと思えてしまいました。展示室は3つあり、第1、第2展示室で2か月毎に内容を変えた企画展を開催しています。この日は「暁斎・暁翠 旅と風景」という展覧会で、第1展示室は墨絵を中心とした旅の風景スケッチが、のどかに楽しそうに描かれ、娘の暁翠(1868-1935)の作品とともに並んでいました。

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第1展示室

 第2展示室には数々の鮮やかな錦絵の展示。東京の名所絵や東海道中の双六など人気が高かったと推測する作品が並んでいました。あまり知らなかったのですが、別の絵師との合作も多く、例えば三代広重が風景を描き、その中にたくさんの人物を暁斎が描いたりしています。第1、第2展示室を通じ暁斎が基本を重視した作家であり、端正な作品も多く描いていたことがわかります。第3展示室は肉筆着色作品の複写が展示され、力強さと緻密さを備えた画力を感じ取れました。

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第2展示室

 暁斎は日本の美術史上から忘れられた時期が続いたといいます。純粋に観賞用の絵画だけでなく、庶民に受ける風刺画や漫画も注文に応じて拒まず描いており、それが異端視された要因にあるのかもしれません。しかし浮世絵の歌川国芳に入門し、のちに狩野派を習得し、さらに流派に捉われず多様な画法を学び、幅広い分野の画題を独自の視点で表現、その芸術は、正統を含むいずれの分野も極めた一級のものでした。特に海外で高く評価され、国外に多くの完成品があります。渋谷の大規模な展覧会も英国在住のゴールドマン氏のコレクションで、暁斎の多彩な才能を知ることができます。今の私が想う暁斎の魅力は、猫や蛙を始めとする擬人化された動物の可愛らしさや、群衆の争いを愉快に描くスラップスティック・コメディの世界など、ユーモラスな世相のカリカチュアライズですが、その着想を描出する、修練を積んだ技術に裏打ちされたエスキースの巧さに圧倒されます。

 記念美術館は肉筆、版画の完成品以外に下絵・画稿類の豊富な所蔵が特徴的で、暁斎の創作過程や力量を伺い知ることができます。テーマを変えて展示される折々に、散歩がてらぶらりと訪れ、静かに過ごすのにも良い場所です。



■公益財団法人 河鍋暁斎記念美術館

住 所 埼玉県蕨市南町4-36-4  TEL 048-441-9780
開 館 10時~16時
定休日 木曜 毎月26日~末日 年末年始 
入場料 一般320円、中・高・大学生210円、小学生以下105円
団体20名以上割引有・要予約、かえる友の会会員は210円、美術館友の会会員は無料
※特別展開催時は別料金


March 24, 2017

ギャラリー「都道府県の花」 ―皇居をめぐる花の輪


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。


 先日、皇居周辺を散策してきました。皇居の周りは約5キロで、その距離感と信号がなく止まらずに一周できるので、日本でもっとも人気のあるジョギングコースとしても親しまれています。当日もたくさんのランナーの方々が走っていました。


 皆様は、この周回コースの歩道100メートル毎に都道府県の花のプレート(石板)が埋め込まれていることはご存知でしょうか(正確には47都道府県と2つの花の輪と千代田区のプレートの計50枚)。このプレートは通称「花の輪タイル」と言うのだそうです。スタートは皇居正門のある二重橋にあります。北海道の道花「はまなす」が彫られたプレートより、反時計回りに南下し、最後に沖縄県の県花「デイゴ」で一周します。と言われても、自分の住んでいる所の花も知らない方が多いのではないでしょうか。かくいう私も知りませんでしたので、この際一周して47都道府県全てのプレートを確認することにしました。


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花の輪タイル (左)北海道・はまなす (右)沖縄・デイゴ


 一周を5キロと考えると長い道のりとお思いでしょうが、いざ歩き始めれば100メートル毎に次々とプレートが現れるので、写真を撮りながら歩いていると、思いのほか忙しいことになってしまいました。さながら、ギャラリー「都道府県の花」です。プレートを逃さないように下ばかり見ていると、皇居周辺の景色をゆっくり楽しむことができないという、大変悩ましい状況です。それでも、少し寄り道をして千鳥ヶ淵緑道に入ってみると、3月上旬頃に咲く大寒桜が咲いていました。その実、千鳥ヶ淵の桜はその大部分がソメイヨシノで、今では東京屈指の桜の名所となり、多くの方々に親しまれています。間もなく迎えるシーズンにはライトアップもされますので、夜遅くまで楽しめます。


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千鳥ヶ淵の大寒桜


 さて、無事に47都道府県すべてのプレートの写真を撮り、お陰様で自分の県花も確認することができました。プレートを追いかけながら、歩いているとあっという間の一周です。こちらのプレート、ランナーの中には1km毎のラップを計ることや、居場所の確認に使われている方もいるそうです。確かに何県のプレートは何々門の所にあるなどと覚えておけば便利ですね。


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花の輪案内板


 少しずつ陽気も暖かくなり、東京では桜の開花宣言が出されました。お花見も兼ねて、スタンプラリー感覚で皇居一周を歩いてみることをお薦めします。全てのプレートを確認することができれば、きっと達成感を得られることでしょう。


March 16, 2017

新作・小倉遊亀「初夏の花」のご案内


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
 朝夕と寒暖差ある今日この頃毎、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 それでも日中は日差しが段々と暖かく感じられる様になりました。初夏の様な少し汗ばむ日もありましたが、うららかな陽気に誘われて桃や桜などの花が咲き始め鳥の囀りが響き、冬が明けてだんだんと春の訪れを感じられる季節になりました。

 さてこの度当社は、日本画家・小倉遊亀の「初夏の花」複製画の販売を開始いたしました。エディションは限定200部です。

 鮮やかな橙色のテーブル、満開に咲き誇るミツバツツジの桃色、ゴツゴツとした味わい深い三宝柑の黄色。華やかなミツバツツジのが生けられた躍動感があり華麗なガラス花器は、ガラス芸術家・岩田久利氏の作品です。同じ芸術家として遊亀は、久利氏の自らの芸術に厳格で真摯に取り組む姿勢に対し共感し、懇意にしていたといいます。それぞれに配された彩りの会話を楽しむような感じで深く観察して筆をとっていたのでしょうか。

 彩り溢れいきいきとした輝きが描かれた作品の鼓動を、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。是非お手元でお楽しみください。




彩美版®
小倉遊亀 《初夏の花 》
販売価格 190,000円+税


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<仕様体裁>
監修 有限会社 鉄樹
原画 名都美術館 所蔵
解説 鬼頭美奈子(名都美術館 主任学芸員)
限定 200部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り、プラチナ泥使用
用紙 版画用紙
額縁 特注木製額純銀箔仕上げ、交織つむぎマット、アクリル付き
証明 著作権者承認印を奥付と画面左下部に押印
画寸 天地45.5×左右38.4㎝
額寸 天地65.6×左右58.5㎝
重量 3.7㎏
発行 共同印刷株式会社


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


March 10, 2017

ひとあし早い満開の桜 ~静岡県熱海市より~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。

 私は先日、静岡県熱海市へ遠征してきました。ちょうどこの日は風も無く空気が澄んでいて、透明感あふれる朝日のグラデーションがとても美しく感じられました。

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透明感あふれる朝日のグラデーション


 そもそも朝焼けや夕焼けが赤っぽく見えるのはなぜでしょう?調べてみると、あの有名なイギリスの物理学者、アイザック・ニュートンが発見した太陽光の現象にありました。ニュートンは太陽光をプリズム(ガラスや水晶の多面体)に通すと虹のような連続した光の色の帯が現れる現象を発見し、これをスペクトルと名付けました。

 日中の太陽は白く輝いて見えますね。これは赤から紫まで7色のスペクトルが大気によって散乱され重なり合った結果として白く見えています。そのスペクトルが地上に到達するまでに空気の層を通る時間の違いによって、長ければ赤く、短ければ青く散乱するため、空は時間に応じて様々な表情を私たちへ届けてくれるという原理だそうです。

 ...ちょっと難しいですね。空を見上げるときは、難しいことや嫌なこと等は何も考えず、ただ無心に見上げるだけで良いと思います。心が洗われることが大切だと思います。

 静岡県からの帰り道は、今まさに桜が満開でした。と言ってもソメイヨシノではなく、『大寒桜(おおかんざくら)』という品種で、2月末~3月上旬にかけて見頃を迎える早春の桜です。ひとあし早い満開の桜に癒されました。

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満開の大寒桜


 当社近隣にある桜並木のソメイヨシノは、蕾が顔を出し始めています。美しく咲き誇る満開のソメイヨシノが待ち遠しい三寒四温の今日この頃。寒い日と暖かな日が交互にやってきて体調管理も大変ですね。皆さまもう暫くは上着を羽織ながら温かくして、お身体ご自愛ください。



February 10, 2017

「全国カレンダー展」雑記


 今回はカレンダーのお話です。

 68回目を迎える「全国カレンダー展」が、1月14日(土)~1月18日(水)に、ゲートシティ大崎で開催されました。同時に「全国カタログ展」も同じ会場で開催、併せて見ごたえある展示会となっていました。(一社)日本印刷産業連合会とフジサンケイビジネスアイ主催の全国カレンダー展は、回数で分かる通り歴史あるコンテスト・展示会です。展示されているのは様々な会社や団体が発行する企業・販促カレンダーを中心に、個人購入の販売カレンダーも含め多様です。応募数の減少傾向は否めませんが、今回は600点程で、その中から選ばれた400点程が展示され、さらに選び抜かれた69点が入賞の栄誉を受けました。

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 印刷会社からの出品が多く、弊社も毎年いくつもの得意先企業のカレンダー製作に携わり、出品させていただいています。カレンダー展の長い伝統にも密接に関わってきました。現在企業カレンダーは、かつての異常な豪華さはないものの、依然企業の顔としての役割は担っており、特に近年はコーポレートコミュニケーション(企業の広報活動)ツールとして再認識されている側面があります。

 コンテスト入賞作品は当然こうした企業文化を伝える意義深いものが多く、グレードの高い仕様で製品化されていますが、受賞の脚光を浴びていなくても、企業としてのアイデンティティを表現する意図が伝わり、面白く見入ったものも多くありました。
 例えば自動車の修理・整備を行う某会社のカレンダーは、「武骨なカッコよさ」を表現すべく、コンクリート壁のようなセメントの板を地に、表紙はタイヤの跡のみが走り、本文各月は大胆にデフォルメされた欧州車のイラストが描かれたデザイン。個人的に気に入ったテイストでした。

 某ミシンメーカーのカレンダーは、そのミシンで作成したキルティングなどのソーイングアート作品を紹介。自社製品の可能性や楽しみを伝える役割を果たしています。
 また、自然風景写真はカレンダーとして最も人気の高いモチーフですが、それだけにたくさんの企業で作られており、その中でどう差別化し特徴を出せるかが問題です。某電気メーカーは「流れ」をコンセプトに川のシリーズを設定し、川の風景と動物を捉えた「川 と命」をテーマに写真選定。他社とは一味異なる統一感を持った構成に上がっていました。
 装飾品という形をとりながら、さり気なくお客様に長期にわたってメッセージを伝える・・・企業カレンダーにはそういう穏やかな訴求力があり、アート性と企業のアピールを如何にスマートに両立させるかがポイントです。

 他社製作のカレンダーにスペースを割きましたが、最後に弊社の入賞カレンダーもご紹介いたします。日本商工会議所会頭賞及び金賞を受賞した清水建設(株)は、グラフィックデザイナー・上條喬久氏に依頼して制作を続けている、WINDSCAPE MINDSCAPEシリーズ。絵柄は一貫して建設をイメージした窓から見る心象風景を表現。今回は平面分割でできたシンプルな形を質感ある色彩で描いたアート作品です。紙製のリングを使用したスケッチブック風のスタイルです。

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清水建設株式会社

 
 銀賞に輝いた(株)資生堂の2017資生堂ビルカレンダーは、グラフィックデザイナー・仲條正義氏のタイポグラフィカレンダーで、仲條氏のオリジナル制作のタイプフェイスで構成。B1サイズ・1枚タイプのカレンダーで、好みで選べるように表裏異なる色で作られています。暦配列の既成概念を崩し、それを判読する楽しさがあり、数字だけでデザインされた洒落たインテリアポスターとして飾れます。資生堂の先鋭的な企業文化をイメージさせます。

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株式会社 資生堂


 展示会場で、小さな男の子と彼を抱っこしたお父さんがカレンダーを1枚1枚めくりながら歓声を上げていました。見ていたのは筆者が担当した(公財)東日本鉄道文化財団の鉄道博物館カレンダー(奨励賞受賞)。同館所蔵の歴史を刻む数々の列車の模型を撮影して構成し、各写真に列車のもつ特色を暗示する落書きのような線画イラストを愛らしく絡めています。こうして感嘆を持って見てもらえるんだと、心が温まりうれしくなりました。

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公益財団法人東日本鉄道文化財団(鉄道博物館)

January 20, 2017

ぶらり鎌倉材木座海岸へ


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。


 皆様は鎌倉観光といえば何を思い浮かべるでしょうか?「大仏」「鶴岡八幡宮」「建長寺」「小町通り」など、沢山の見所があります。どこも比較的足を運びやすく、いつ何時に訪れても、多くの人で賑わっています。そのような中、先日私は「材木座海岸」周辺を散策してきました。位置は鎌倉の南東部、ヨットハーバーで有名な逗子マリーナがすぐ隣にあります。初めての鎌倉観光でこの場所を選択する人は少ないかもしれません。鎌倉駅からは少し遠く、アクセスがしにくい場所です。バスも出ていますが、皆様ご存知の通り鎌倉はシーズンによっては大渋滞しますので、鎌倉の街並みを見ながらブラリ散歩の旅をお薦めします。


 材木座海岸という地名は、鎌倉時代に材木取引の場として設置された座があったことに由来しています。また、この海岸では鎌倉時代、宋との貿易港で日本最古の築港でもある和賀江島(わかえじま)があった所で、今でも鎌倉時代の陶片などが発見されたりします。西側にある滑川を挟んでその先の由比ヶ浜まで続く海岸は、昨年大ヒットした映画「シン・ゴジラ」でまさにゴジラが上陸した場所として話題となりました。


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 こちらの海岸から一本内側に入ると「光明寺」があります。光明寺は寛元元年(西暦1243年)に、時の執権北条経時の帰依を受けた浄土宋代三代祖然阿良忠上人により創建されました。現在の本堂は元禄11年(1698年)建立で、国の重要文化財に指定されています。また、ひときわ大きな山門は鎌倉に現存する最大の山門で、見所のひとつとなっています。


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 海岸の国道134号線沿いには、昨年7月に複合施設「材木座テラス」がオープンしました。湘南といえば夏ですが、「年間を通してビーチライフを1日中楽しむ」というのがコンセプトのようです。お洒落なカフェや雑貨店などが入っており、ゆっくり過ごすことができます。私は3階にあるレストランに立ち寄ってみました。お店のスペースの半分近くがテラス席という非常に開放的な造りで、目の前に広がる海を存分に感じることができました。


 材木座エリアは観光客も比較的少なく、非常に静かな場所となっています。のんびり散歩がてら訪れてみてはいかがでしょうか。


January 13, 2017

【新作版画】森田りえ子《お雛あそび》のご案内


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。


 寒中お見舞いを申し上げます。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 小寒に入り、いっそうの寒さが加わり「寒の入り」を迎えました。これから冬本番となりますが、どうかお体をご自愛くださいませ。


 さてこの度当社は、日本画家・森田りえ子画伯によるオリジナル版画「お雛あそび」を発売いたしました。エディションは限定100部です。
 ひな祭りは、3月3日の「上巳(じょうし)の節句」「桃の節句」とも呼ばれ、女児のある家で、その幸福と成長を祈って行われる行事です。この作品は本金箔地に凛としたお顔の男雛と女雛が立ち、かたわらに子供を守る狗筥(いぬばこ)が置かれています。そして満開の桃の花がふりそそぎ、雅で和やかな世界が伺えます。


 華やかさと穏やかさに溢れたこの版画は、森田画伯の貴重な作品(オリジナル版画)の一つに数えられるもので京都の老舗版画工房で制作されました。版式はシルクスクリーン(セリグラフ)です。鳥の子和紙に本金箔を手張りし、47版47色を重ねて、鮮やかで微細な色彩表現を実現しました。杉の木目の美しさを引き立たせた浮造り(うづくり)仕上げと近江織金襴の筋回しを施し、作品の世界を華やかに演出しております。


 作品一枚一枚に画伯直筆のサインが入り印章が捺印されます。オリジナル版画として特別に制作された希少性の高い逸品を、是非お手元でお楽しみください。






オリジナル版画
森田りえ子 《お雛あそび 》
限定 100部制作
価格 320,000円+税


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<仕様体裁>
■版画
作者 森田りえ子
題名 お雛あそび
制作 2016年
画寸 425×294㎜
限定 100部
版式 シルクスクリーン
版数 47版47色
用紙 鳥の子和紙、手張り本金箔
署名 作者直筆サイン、印章
工房 K.T.M.printers


■装丁
額縁 杉材浮造り仕上、近江織金襴筋廻し、アクリル付き
額寸 626×480㎜
重量 約2.6㎏


■解説
草薙奈津子(平塚市美術館館長)


■発行
共同印刷株式会社


・本金箔は手張りのため一枚一枚の風合いが異なり、仕上がりは均一ではありません。
・当社が独自に開発したセキュリティーシールを奥付に貼付しています。スマートフォンなどで、作品が当社(KP)が発行する真正な作品であることを判定できます。

January 5, 2017

酉年によせて-バードウォッチングの勧め


 皆様、明けましておめでとうございます。
 本年もよろしく本ブログをご愛顧のほどお願い申し上げますとともに、今年一年の皆様のご多幸をお祈り申し上げます。
 さて今年は酉年ということで、鳥に因んだ小話をさせていただきます。


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隅田川のユリカモメ


 以前あることを調べるため、明治16年に作成された小石川の地図を眺めておりましたら、今当社が建つ場所に大きな池のようなものがあることに気づきました。当社が初めて小石川に社屋を構えたのは明治31年(1898)ですから、それ以前のことです。
 特徴のあるその形を以前どこかで見たことがあるように思い暫し考えたところ、千葉県市川市新浜(にいはま)にある宮内庁の御猟場(新浜鴨場)の元溜(もとだまり)と呼ばれる池に酷似していることを思い出しました。すなわち、当社の敷地内にかつて鴨の猟場があったのです。


 江戸時代以来、明治期までの小石川地区は、ほぼ現在の千川通りにあたる場所を流れていた谷端川(やばたがわ/別名「礫川」)を挟んで両側に水田が広がっていました。大型の渡鳥が飛来し越冬する場所であったことから、将軍家の鴨場や鶴場が設けられたとのことです。今では想像できないほど自然豊かな田園地帯だったのです。その面影は小石川植物園に残っています。


 鶴はさておき、鴨は今でも毎年東京に渡ってきます。例えば当社の近くで言えば上野の不忍池は渡り鳥の観察地(探鳥地)として知られています。渡ってくる鴨の種類は年によりその数の割合が異なりますが、近年はアニメの人気キャラクター、ダフィー・ダッグに良く似たキンクロハジロが優勢のようです。その姿ですが、比較的小柄で腹部を除くほぼ全体が黒い羽で覆われており、後頭部には冠羽と呼ばれる飾りのような羽があります。眼の色は黒い羽によく映える黄色。むくむくとして愛らしいその姿は一度観たら忘れられません。


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不忍池のキンクロハジロ


 酉年の今年、バードウォッチングを体験してみてはいかがでしょうか。道具はひとまず倍率7倍前後の双眼鏡と鳥類図鑑があれば十分です。初心者の方には比較的観察が容易な、海辺の鳥たち(鴨や鴫、千鳥、カモメなど)がお勧めです。鳥を観察するところ、探鳥地はもちろんお近くの鳥が観られる場所でよいのですが、東京湾周辺であれば、施設が充実している大田区の東京都立東京港野鳥公園や千葉県習志野市の谷津干潟自然観察センターがお勧めです。どちらも専門のレンジャーが常駐しています。また、高倍率の望遠鏡(フィールドスコープ)が設置されていますので、手ぶらで楽しむことも可能です。


 あなたもキュートな鳥たちの魅力にはまってみませんか。


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野島崎灯台上空を舞うトビ




【東京都立東京港野鳥公園】
東京都大田区東海3-1
電話:03-3799-5031
アクセス:東京モノレール「流通センター」より徒歩15分
入園料:中学生150円、高校生以上370円、65歳以上180円、小学生以下無料
開園時間:2月~10月 9:00~17:00(入園は16:30まで)
     11月~1月 9:00~16:30(入園は16:00まで)
休園日:毎週月曜日(月曜日が祝日または都民の日の場合、翌火曜日休園)
    年末年始


【谷津干潟自然観察センター】
※谷津干潟はラムサール条約登録湿地です。
千葉県習志野市秋津5-1-1
電話:047-454-8416
アクセス:JR京葉線「南船橋駅」または「新習志野駅」より徒歩20分
入館料:高校生以上大人300円、65歳以上150円、中学生以下無料
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は次の平日)、年末年始


※詳細は各施設へお問い合わせください。




【1月10日追記】
1月8日(日)に谷津干潟でバードウォッチングをしてきました。最初は曇り、途中から強い雨となり視界は終始あまり良くありませんでしたが、1時間半ほどの滞在で以下10種の鳥を観ることができました。


ハマシギ、セイタカシギ、ヒドリガモ、オナガガモ、コガモ
オオバン、ユリカモメ、ハクセキレイ、ムクドリ、メジロ
※使用機材:双眼鏡(8×30※)※倍率×対物レンズの口径






-画家の夢見る世界への誘い-
彩美版® 上村淳之 《四季花鳥図》
販売価格 160,000円+税


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※背景の銀色をシルクスクリーンで再現しています。


【仕様体裁】
原画 近畿日本鉄道株式会社所蔵 松伯美術館委託
監修 上村淳之、松伯美術館
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
限定 300部 
画寸 天地25.2cm×左右65cm
額寸 天地41.4cm×左右81cm
重量 約2.3kg
用紙 版画用紙
額縁 特製木製銀泥額、アクリル付(国産、ハンドメイド)
証明 監修者の承認印押印証紙を額裏に貼付
発行 共同印刷株式会社



※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


December 22, 2016

伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)生誕三百年記念作品のご案内


 今年も残すところあとわずか。あっという間の一年でした。
 寒さも一段と厳しくなってまいりましたので、皆さまどうぞくれぐれもお気を付け下さい。


 2016年は伊藤若冲の生誕三百年を記念し、各地で記念展がとり行われております。中でもこの春、上野の東京都美術館で開催された展覧会は、代表作《釈迦三尊像》三幅(相国寺蔵)及び《動植綵絵(どうしょくさいえ)》三十幅(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)が特別出品されたこともあって大盛況で幕を閉じました。この《釈迦三尊像》と《動植綵絵》は、若冲自ら相国寺に寄進した作品群ですが、明治維新後《動植綵絵》は相国寺から皇室に献上され今に至ります。両者が東京で一堂に会するのは史上初めてだったとのことです。


 引き続きこの秋、若冲が生涯を過ごした京の地、京都市美術館でも若冲展が開催され人気を博しました。勢いは衰えることなく12月に入り京都国立博物館で「特別陳列 生誕300年伊藤若冲」が、そして若冲と縁の深い相国寺の承天閣美術館では「生誕300年記念 伊藤若冲展[後期]」が行われています。両美術館ともに、それ以前に開催された若冲展では見られなかつた貴重な作品が多数展示されており大変な話題を呼んでおります。


 おかげさまで弊社発行の若冲生誕三百年記念作品《日出鳳凰図》も好評をいただき、なんと今年の弊社年間売上数のベスト1位に輝きました。これもひとえに皆様のおかげと深く感謝する次第です。特筆すべきは軸装のご注文のお客様が圧倒的に多かったことで、掛軸作品に対するお客様の潜在的ニーズがあるということも再認識いたしました。


 《日出鳳凰図》は若き若冲の気概あふれる傑作です。旭日と鳳凰に焦点を絞った大胆な構図が青年期の若冲の比類なき才能を感じさせ、その定評ある細密な描写が作品の完成度の高さを証明します。酉年の新しい年を迎えるにあたり、慶祝の日にふさわしい華やかで独創的な吉祥画といえましょう。




彩美版®
伊藤若冲 《日出鳳凰図》
販売価格 110,000円+税


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<仕様体裁>
原画 米国・ボストン美術館所蔵
解説 河野元昭(美術史家、東京大学名誉教授)
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 三段表装(本表装)
画寸 94.0×33.0㎝
軸寸 183.0×52.5㎝
箱  柾目桐箱、タトウ付
※ご希望により額装のご注文も承ります。
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




お客さまからは、画中の署名と印章の読み方についてお問い合わせをいただくことが多く、この場を借りて簡単にご説明をさせていただきます。


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署名は居士(こじ)、藤(伊「藤」)、汝鈞(若冲の名「じょきん」)画と記されています。
署名の下には印が上下二段に捺されており、上の白文方印は「藤汝鈞印」(左回りに)、下の朱文法印は「若冲」(号)が刻印されております。


作品への興味とご理解を深めていただき、本作をご愛蔵いただければ幸いです。
末筆ですが、皆さまどうぞ良いお年をお迎え下さい。

December 9, 2016

横山大観旧宅及び庭園が国史跡・名勝へ


 当部では半世紀以上も複製画事業に取り組んでおりますが、その初期の頃から長きにわたり大変お世話になっております『横山大観記念館』につきまして、此度の喜ばしいお知らせをこの場を借りて改めてご連絡させて頂きます。


 東京都は上野池之端に佇む『横山大観記念館』。横山大観画伯のご自宅兼画室及び庭園は、貴重な文化財であることから、今年2016年11月に「横山大観旧宅及び庭園」として国の史跡・名勝の両方に指定される運びとなりました。


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画像提供:横山大観記念館


木造二階建ての数寄屋風日本家屋。文化庁文化審議会による指定答申では、
① 横山大観画伯が自ら指示して造営(デザイン)している点。
② 横山大観画伯の思想・感性が大きく反映されている点。
③ 実際に創作が行われた場であり、その素材となったものも多くあると考えられる点。
などが評価されたそうです。


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画像提供:横山大観記念館


これもひとえに、この旧宅及び庭園を「記念館」として一般公開し、保存・維持に努められた『横山大観記念館』理事長である横山隆様をはじめ、関係者の皆さまのご尽力による、近代美術界への多大なる賜物と存じます。


【横山大観記念館のご紹介】

kinenkan_maingate.jpg住 所 東京都台東区池之端1-4-24
電 話 03-3821-1017

休館日 毎週月~水
長期休館 夏期休館、冬期休館あり
開館時間 10:00~16:00(入館は閉館30分前まで)
入館料 大人 550円
    団体割引(20名様以上)450円
    小学生 200円
    障がい者料金 大人450円、子人100円
    年間パスポート 1,500円

最寄駅 東京メトロ千代田線「湯島」から徒歩7分
     東京メトロ銀座線「上野広小路」、都営大江戸線「上野御徒町」から徒歩12分
     JR「上野」「御徒町駅」から徒歩15分
     京成線「京成上野」から徒歩15分

ホームページ http://members2.jcom.home.ne.jp/taikan/




 当部商品・横山大観画伯「霊峰飛鶴」をご紹介いたします。我々も微力ながら、この貴重な文化財産の益々の発展を祈念し、今後も事業展開に努めてまいる所存です。




彩美版®
彩美版 横山大観 《霊峰飛鶴》
販売価格 120,000円+税


 昭和28年(1953年)に横山大観画伯の澄み切った境地が描かれた吉祥作品。金泥で刷かれた瑞光を背景に、富士の前に鶴が群れをなし飛翔しています。


<仕様体裁>
◆共通仕様
監修 公益財団法人横山大観記念館
原画 公益財団法人横山大観記念館所蔵
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り(本金泥使用)
用紙 特製絹本
限定 950部(軸装、額装の合計)
証明 監修者検印入り証書を貼付

◆軸装仕様
画寸 天地39.5cm×左右52.5cm
軸寸 天地135cm×左右72.1cm
表装 三段表装
箱  柾目桐箱、タトウ付
 
◆額装仕様
画寸 天地39.2cm×左右52.8cm
額寸 天地58.7cm×左右72cm
重量 約3.6kg
額縁 特製木製金泥仕上げ、アクリル付(国産、ハンドメイド)


※「彩美版」は共同印刷株式会社の登録商標です。


横山大観《霊峰飛鶴》(軸装)


横山大観《霊峰飛鶴》(額装)


<関連記事> 横山大観記念館にて

December 2, 2016

早雪の雪花 ~首都圏で54年ぶりに11月の積雪を観測~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。

 紅葉が色づき始めた奥多摩の山道から撮影した写真です。穏やかな気候で、澄んだ空気にとても癒されました。



奥多摩の紅葉


 そんな秋めく最中にもかかわらず、先週(2016年11月24日)は突如、東京都心で11月としては54年ぶりの積雪が観測されました。この季節外れの雪は「紅葉の中に雪が降る」という、首都圏ではなかなか見ることの出来ない赤・黄色と白のコントラストが美しく映えわたりました。
 そこで今回は、「雪」をテーマにご紹介いたします。

 皆さんは「雪」と聞いて、どのような雪を思い浮かべますか?住んでおられる地域や、幼少期の記憶などから「雪」と言っても様々とは思いますが、実は「雪」にはびっくりするくらい沢山の種類があることをご存知でしょうか。
 以下、その数ある中から、一部を抜粋しましたのでご覧ください。

【降る時期で変わる雪の名前】
・ 初雪(はつゆき)...夏を過ぎて初めて降る雪。
・ 早雪(そうせつ)...例年の初雪の時期より早く降る雪。
・ 初冠雪(はつかんせつ)...夏を過ぎて初めて山を白く染める雪。
・ 名残雪(なごりゆき)...春近くに冬の季節を名残惜しむように降る雪。
・ 残雪(ざんせつ)...春になっても溶けずに残っている雪。
・ 万年雪(まんねんゆき)...富士山等、標高の高い山岳地帯に1年中溶けない雪。
・ 三白(さんぱく)...正月の三が日(1月1日、2日、3日)に降る雪。

【降り方や状態で変わる雪の名前】
・ 細雪(ささめゆき)...細やかにまばらに降る雪。
・ 粉雪(こなゆき)...粉のようにさらさらとした細かい雪。
・ 粒雪(つぶゆき)...粒になっている雪。積もるのが特徴です。
・ 牡丹雪(ぼたんゆき)...雪の結晶が集まって「ぼたんの花」のように固まって降る雪。
・ 綿雪(わたゆき)...綿をちぎったような大きな雪。牡丹雪よりやや小さめ。
・ にわか雪...一時的に降ってすぐやむ雪。にわか雨の雪バージョン。
・ 風花(かざばな)...晴れているのに、風上から風に舞ってキラキラと飛んでくる雪。
・ 霰(あられ)...直径5mm未満の氷の粒。
・ 雹(ひょう)...直径5mm以上の氷の塊。あられの大きいバージョンです。

【積もり方で変わる雪の名前】
・ 新雪(しんせつ)...積もりたての雪。結晶の形がまだ残っているのが特徴。
・ しまり雪...積もって数日経って結晶が壊れ、固く締まった雪。
・ どか雪...短時間に一気に積もる雪。
・ 衾雪(ふすま雪)...一面に降り積もった雪。
・ 雪持(ゆきもち)...枝や葉に雪が積もっている様子。
・ 松の雪(まつのゆき)...松の木に積もった雪。
・ 撓雪(しおりゆき)...降り積もって木や枝をたゆませる雪。
・ 友待つ雪(ともまつゆき)...次の雪が降るまで健気に溶けないで残っている雪。

【その他、色々な雪の名前】
・ 銀世界(ぎんせかい)...雪が美しく降り積もり、辺り一面が真っ白になった様子。
・ 白雪(しらゆき、はくせつ)...真っ白で美しい雪の様子を表すことば。
・ 雪花、雪華(せっか)...雪の結晶、または雪が降る様子を花にたとえたことば。
・ 深雪(みゆき)...雪が深く積もって美しい様子。
・ 小雪(こゆき)...少しだけ降ったり積もったりする雪。
・ 瑞雪(ずいせつ)...おめでたい印とされる雪。
・ 雪明り(ゆきあかり)...積もった雪の反射で、日が落ちても薄明るくなっている状態。

 いかがでしょうか。雪は降り方や積もり方、雪の状態などによってたくさんの種類に分けて表現されていることが解ります。美しいことばの数々。同じ雪でもこれだけ多くの呼び名があるのは、四季の自然を楽しむ日本ならではの情緒なのかもしれませんね。

 年末を控え、日に日に寒さの増す今日この頃。皆さまお身体ご自愛ください。
 さいごに、先日ご逝去された日本画家・後藤純男画伯を偲び、画伯の作品より「秋の談山神社」「大和 雪のしじま」の当社彩美版を、謹んでご案内させて頂きます。

 ※ しじま:静まりかえって、物音ひとつしないこと。静寂。




彩美版®
後藤純男 《秋の談山神社 多武峰》
販売価格  240,000円+税


後藤純男「秋の談山神社 多武峰」


<仕様体裁>
原画 後藤純男美術館所蔵
監修 後藤純男美術館
解説 行定俊文(後藤純男美術館館長)
限定 500部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り、本金泥使用
用紙 版画用紙(かきた)
額縁 特製木製額金泥仕上げ、アクリル付き
画寸 36.0cm × 72.5cm(20号)
額寸 57.0cm × 93.5cm
重量 約6.1kg
証明 監修者の承認印入り証書を貼付
発行 共同印刷株式会社




彩美版®
後藤純男 《大和・雪のしじま》
販売価格  240,000円+税


後藤純男「大和・雪のしじま」


<仕様体裁>
原画 後藤純男美術館所蔵
監修 後藤純男美術館
解説 行定俊文(後藤純男美術館館長)
限定 500部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 版画用紙(モロー)
額縁 特製木製額金泥仕上げ、アクリル付き
画寸 37.0cm×73.0cm(20号)
額寸 58.0cm×94.0cm
重量 約6.2kg
証明 監修者の承認印入り証書を貼付
発行 共同印刷株式会社


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

November 25, 2016

未来を見つける祭典


 それは去る9月下旬の雨の日、買い物から戻った妻が、「そこの公園にシートで覆われた荷物の端からすっごく大きな靴が覗いていたよ。」と物珍し気に話していました。想像すると極めて奇妙な光景ですが、ああ、とピンときました。「さいたまトリエンナーレ2016」は開催前に妻の発見から幕を開けました。
 9月24日から12月11まで79日間続くアートイベントで、さいたま市が初めて取り組む国際芸術祭。現在既に終盤に入ろうとしています。ディレクター・芹沢高志氏の掲げた「未来の発見!」をテーマに市内各所で多様な文化関連プロジェクトが展開されてきました。アートプロジェクトでは、国内外で活躍するアーティスト34組が参加。内容は多岐にわたり私もすべてを体験出来ていませんが、大きくは3地域に分けられた各所の展示をぶらぶら鑑賞した一部を紹介します。



 冒頭の作品は、武蔵浦和駅~中浦和駅周辺地域にある西南さくら公園に置かれた「さいたまビジネスマン」。ラトビアの作家、アイガルス・ビクシェ氏による強化ポリウレタン製の10m近い彫刻作品です。仏陀の涅槃の像を想わせるかのように芝生に横たわり、体中に虫が這っても動じないサラリーマンの姿は悲しいような滑稽なような・・・しかし心を和ませます。

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アイガルス・ビクシェ 《さいたまビジネスマン》


 すぐ近くにある会場「旧部長公舎」は70年代に建てられたレトロモダンな邸宅。4軒それぞれでアーティストがインスタレーションを公開しています。写真家・野口里佳氏は、故郷さいたまを独自の視点で取材した映像作品の投影と展示。高田安規子+政子姉妹は縄文期にベイエリアだったこの場所の海の痕跡や絶滅危惧種の生き物の切り絵装飾で家を再生。松田正隆+遠藤幹夫+三上亮の俳優不在の演劇インスタレーションは、実際にかつて2006年まで何組もの家族が営んだ生活の記憶を、今もその時代に生活しているような室内で、物音・声などで重層的に再現。過ぎ去った日常への郷愁と共に、姿の見えない人の生々しい気配に恐怖心を覚えたのは私だけでしょうか。
 真っ白な空間に変えた邸宅内で展開される鈴木桃子氏の鉛筆ドローイングパフォーマンスは、開催前から作者が室内に緻密に描き続けてきた壮大な生命の増殖(火の鳥)が、ある時点から観客によって消されて何もない空間に帰るというプロセスをたどります。

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鈴木桃子 《アンタイトルド・ドローイング・プロジェクト》


 この地域でもう1つ外せないのは、日比野克彦氏の「種は船プロジェクトin さいたま」。日本各地を巡り人をつないできた朝顔の種の形をした船・TANeFUNeは前年にプレイベントで埼玉の川を航行。このトリエンナーレでは、金沢と横浜からやってきた「種は船」作品の2艘が、別所沼公園のワークショップに参加した人たちの手で埼玉バージョンとして塗り替えられ、公園の池に美しく浮かべられています。海のないさいたま市で「水のさいたま」の記憶を積み込んで、さて次はどこへ向かうのでしょうか。

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日比野克彦 《種は船プロジェクトinさいたま》


 与野本町駅~大宮駅周辺、岩槻駅周辺も、開催される場である建物の特色(歴史・背景)と絡めたコンセプチュアルな展示内容は深く印象的。岩槻の旧埼玉県立民俗文化センターは集中してたくさんのインスタレーション作品に出会える場で、個人的に興味深かったのは「犀の角がもう少し長ければ歴史は変わっていただろう」という川埜龍三氏の作品です。現在われわれが住んでいる世界を「さいたまA」とし、架空に存在する並行世界「さいたまB」で発見された奇妙な埴輪群とその発掘現場の様子を展示する「歴史改変SF美術作品」。中心にあるのは、犀の形をした巨大な犀型埴輪です。思わず笑顔を誘う作品で、本当にこんな世界がすぐ隣にあったら・・・という夢とロマンへの少年的憧れを刺激します。

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川埜龍三 《犀の角がもう少し長ければ歴史は変わっていただろう》


 このトリエンナーレを象徴する「息をする花」の作者、韓国のチェ・ジョンファ氏作「サイタマンダラ」は、市民が消費を通じて自動的に制作に参加してしまう作品で、芸術は物事の捉え方次第で成立することを再認識しました。ご紹介した以外でも、各作家はさいたまという地の特色を研究し、作品イメージを紡ぎだし創出しています。もちろん理解しやすい作品・しにくい作品はあるものの、各々の「未来の発見!」の解釈が垣間見えてきます。おそらく身近で体験したこのイベントに触発され、表現活動を始める未来のアーティストもいるのではと思います。3年後はどんなテーマでどんな表現が見られるか、楽しみにしています。





■さいたまトリエンナーレ2016
会期:2016年9月24日(土)~12月11日(日)[79日間]
鑑賞無料(一部の公演、上映を除く)
定休日:水曜日
主な開催エリア:与野本町駅~大宮駅周辺、武蔵浦和駅~中浦和駅周辺、岩槻駅周辺
開場時間:10:00~18:00(最終入場17:30)
主催:さいたまトリエンナーレ実行委員会
ディレクター:芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)
URL:https://saitamatriennale.jp/


November 18, 2016

秋日和、名家伝来の禅画と「つばきやま」界隈


 この秋、禅画がブームである。秋晴れの日、細川家に伝来する文化財を展示している永青文庫に仙厓義梵(せんがい ぎぼん)の禅画を見に行くことにしました。仙厓義梵は江戸時代後期の臨済宗の僧侶で、ユーモアある禅画を描いている。



 東京は文京区。近くに流れるのは神田川であるが、江戸川橋という駅で下車する。既にお昼時、まずは食事をしてから展覧会に臨むことにする。神楽坂方面に向かって上る坂が大きく曲がり始める手前に「マティーニバーガー」はある。こちらはニューヨーク生まれで、デザインの仕事をされていたオーナーが経営しているハンバーガーショップ。ニューヨークではマティーニを片手にハンバーガーを食べるとのことだが本当であろうか。お店に並んでいるマティーニグラスはどう見てもダブルの量、ちょっとランチで飲むというには困難である。ハンバーガーの種類はアメリカの地名にちなんでいる。ベーコン、オニオン、バーベキューソスのウェストサイドをオーダー。只管打座でじっと待つこと、出てきた料理はベーコンがカリッとして、ビーフ100%のパテはジューシーでとても美味しくボリュームもある。
 お店の雰囲気も、オーナーも感じがとても良いお店です。

「マティーニバーガー」のカウンターの後には、ウォッカの瓶がアーティステックに飾られている。
「マティーニバーガー」のカウンターの後には、ウォッカの瓶がアーティステックに飾られている。



 さてお腹もくちくなったので、いざ永青文庫へ。永青文庫は椿山荘がある小高い台地の上にある。明治の時代、軍人・政治家の山縣有朋(やまがた ありとも)が「つばきやま」と呼ばれていたこの一帯を買い取り、邸宅として「椿山荘」と名付けた。今ではホテル椿山荘東京として生まれ変わっている緑豊かな斜面と神田川の間を通り、急峻な胸突坂を上る。坂の右側には、かつて松尾芭蕉が住んでいた関口芭蕉庵がある。上りきった左手の鬱蒼と茂った木々の奥に瀟酒な白い洋館が見える。ここが永青文庫である。文武両道にすぐれた細川家に伝来する歴史資料や美術品を保存、展示している。建物は4階から2階が展示スペースとなっており、「平成28年度秋冬季展 仙厓ワールド」(~2017年1月29日まで開催中:期間中展示替えあり)では、4階は仙厓の掛軸など、3階は仙厓の茶碗やアジアの器など、2階では明、清時代の文房四方(筆、墨、硯、紙)などが展示されており、仙厓の素朴な表現や墨の文化をテーマにしている。

庭から永青文庫の玄関を望む
庭から「永青文庫」の玄関を望む。

 仙厓の禅画は一切衆生を極楽往生へと誘ってくれるありがたい絵かと思いきや、まるで無垢な子供の描いた絵のようである。大猫と、目を回した不思議な生物が描かれている「竜虎図」を見た衝撃は、もう「え〜!」なのである。正しく「ゆるキャラ」のようなユニークさがある。仙厓の絵に臨む際は、古伊賀水指 銘「破袋(やぶれぶくろ)」を愛でるかのように、歪みをも楽しむ数寄者の心持ちが肝要であるか。解説で賛の訳や絵の内容をわかり易く説明しているので、親切でありがたい。仙厓は難解な公案(禅問答)をわかり易く庶民に伝えるために、楽しいタッチで禅画を描いたのかもしれない。公案は会社の会議でも使える。「指月布袋図」(布袋さんが月を指さしている図)の意味するといわれていること(月=悟り、指=教典、悟りは教典の教えの遥か遠くにある。)を元に、「計画数字そのものを追うのではなく、その先にあるのが本当の目標です。皆さんで業務に励みましょう。」なんて訓示してみようかしら。



 永青文庫を後に、講談社野間記念館との細い道を抜け、椿山荘の正門へ出る。その向かいには、特徴的な容姿と大きさ(金属製の巨大な鳥が、大きな翼を広げて地上に降り立った姿?)で知られている「カトリック東京カテドラル関口教会」がそびえている。カテドラルとはカテドラ(司教座)のある教会のことで、関口はこの辺りの地名である。この教会は有名な建築家の丹下健三が設計し、1964年に落成した。建物の壁面は垂直に近い角度で空から落ち込み、美しいカーブを描いている。外壁はステンレス張りになっており、陽光にまぶしくキラキラと輝いている。美しい建築に見惚れているうちに秋の日はつるべ落としに黄昏れて来た。関口台地の坂を下って元来た江戸川橋駅へと向かう。本日はお腹も目も心も満たされ、心願成就と相成り、すばらしい一期一会に感謝し帰路についたのでありました。


November 11, 2016

雲上の世界へ


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。


 先日、中央アルプスの千畳敷へ行ってきました。中央高速道路を走り、長野県駒ヶ根ICを降りて約10分、菅の台バスセンターが見えてきます。これより先、一般車両は通行禁止となっており、路線バスに乗り換えます。蛇行する山道をゆっくりと進み、徐々に標高が上がっていくと木々が紅葉に彩られてきます。そんな景色に見とれているうちに、「しらび平駅」に到着です。ここから日本一高い駅「千畳敷駅」まで、駒ヶ岳ロープウェイで一気に標高1,000m近く上がります。すると、そこはもう標高2,600m、雲上の世界。森林限界を超え、高い木は生えていません。そしてこの駅を出ると待っていたのは、眼前に広がる大迫力の岩の壁。氷河が山肌を削り取りできた千畳敷カールの眺めは圧倒的で、荒々しい岩山に抱かれているような感覚に陥ります。特に紅葉の時期は日本でも屈指の美しさと言われています。残念ながら、訪れた10月末頃の山の上は冬支度に入っていましたが、それでも晴天で最高の景色を満喫することができました。眼下に広がる雲海を見下ろしながら飲むコーヒーは大変美味でした。


日の出(宝剣岳山頂より)
日の出(宝剣岳山頂より)


 翌朝は日の出に合わせ、宝剣岳(2,931m)頂上を目指しました。明け方の頂上付近は、この時期としては少し暖かいかなと思いつつも、岩肌は凍っており慎重に歩みを進めます。頂上まで辿りつくと、他の登山客はおらず山頂からの眺めを独り占めすることができました。岩の影で風を避けながら少し待っていると、連なる南アルプスの向こう側から太陽がゆっくり昇ってきました。周りの山々が光で徐々に赤く染まり、富士山もはっきり確認できて、なんとも神秘的な光景です。西側には中央アルプスの主稜線がどこまでも見えて、その先に日本百名山のひとつ空木岳(うつぎだけ)を望むことができました。思わず一歩を踏み出しそうになりましたが、今回はそのまま千畳敷へと下山しました。


空木岳
空木岳(2,864m)


千畳敷カール
千畳敷カール 


 「千畳敷」は高山植物の宝庫としても知られており、小一時間で周遊できる遊歩道も整備されています。駒ヶ岳ロープェイは通年営業をしていますので、四季折々の大自然を気軽に楽しむことができます。
 かつてはアルピニストのみに許された雲上の別世界へ、足を運んでみませんか。

November 4, 2016

四季を感じる


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 秋の気配から急に寒さが厳しくなって参りました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 寒くなると一層並木や林や森や野山が色づき赤や黄色と紅葉し始め、を私たちの目を楽しませてくれます。

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 先日、福島県の裏磐梯五色沼周辺の散策し、秋の景色を楽しみながらハイキングをしました。踏みしめる足元の枯葉の音、遠く聴こえる鳥の囀り、冷たく澄んだ空気の匂い、小さな渓流の水の冷たさ、目に映る青い沼と紅葉と、季節を感じ楽しみました。

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 紅葉を楽しむ「紅葉狩り」の文化は平安時代にはじまったそうです。身近に感じられる秋を和歌や俳句、紅葉を手にして美人画や風景画として残し、秋を楽しむ知恵を私たちは古来から引き継いでいるのでしょう。日本の四季が素晴らしく感じられる今日この頃です。

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【商品紹介】


彩美版®
奥田元宋 《秋渓淙々》 特別版
販売価格 120,000円+税


奥田元宋《秋渓淙々》特別版

<仕様体裁>

監修 奥田小由女(人形作家、日展理事長、日本芸術院会員)
原画 水野美術館所蔵(長野県長野市)
限定 500部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 版画用紙
額縁 木製金泥仕上げ、アクリル付
画寸 天地26.5cm×左右60.5cm
額寸 天地40.0cm×左右74.0cm
重量 約2.5kg
証明 著作権者承認印を奥付に押捺
発行 共同印刷株式会社




彩美版®
奥田元宋 《秋耀白雪》
販売価格 180,000円+税


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<仕様体裁>

監修 奥田小由女(人形作家、日展理事長、日本芸術院会員)
原画 ホテル賀茂川荘所蔵(広島県竹原市)
限定 300部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 版画用紙(モロー)
額縁 特製木製額金銀泥仕上げ(国産、ハンドメイド)
画寸 38cm×53cm
額寸 53cm×68.5cm
重量 約3.3kg
証明 著作権者承認印を奥付に押捺
発行 共同印刷株式会社


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

October 28, 2016

山種美術館「速水御舟の全貌」展


 山種美術館で開催中の展覧会『速水御舟の全貌』ブロガー内覧会に参加して参りました。

 近代日本画の巨匠、横山大観や下村観山などに激賞され、若くして日本美術院の同人となり、数々の素晴らしい作品を世に送り出して40歳でその短い生涯を閉じた天才、速水御舟。

 山種美術館は近代日本画では初めて重要文化財に指定された《名樹散椿》や《炎舞》をはじめ速水御舟作品の充実したコレクションでも知られており、今回の展覧会は美術館開館50周年を記念して、山種美術館所蔵の御舟作品をはじめ、公立美術館からも名作を一堂に揃えた、まとまって御舟作品を見ることができる素晴らしい機会です。


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 展覧会は、入ってすぐの《鍋島の皿に柘榴》(1921年)から始まり、群青と不思議な構図に引き込まれる《洛北修学院村》(1918年)、御舟が若いころに描いた《萌芽》(1912年)、墨画なのにまるで色彩があるかのように感じられる《木蓮(春園麗華)》(1926年)、昭和モダンな《花の傍》(1932年)など、目を見張る作品の連続ですが、私の一枚は《名樹散椿》です。


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《名樹散椿(めいじゅちりつばき)》 1929年 紙本金地・彩色 山種美術館所蔵


 通常は霞などの表現に部分的に用いるという砂子を全面に蒔いた「蒔きつぶし」による背景は、制作するのにかなりの手間と費用を要する技法だそうですが、その分金泥や箔押しとは違う鈍い独特の輝きがあり、それがボリュームのある椿の樹と相まってとても美しい作品でした。ぐにゃりと曲がった椿の枝はデフォルメしているのかと思われましたが、実際にこのようなものがあったそうです。


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金色の表現比較。左から金箔、金泥、撒きつぶしの技法による。
御舟はこれらの金を作品によって使い分けている。


 こうした徹底した制作姿勢や、執拗なまでの写実主義、緊張感ある作風、その時々である方向性を極めようと集中して作品を制作している様子から、神経質そう...と勝手なイメージを持っていた速水御舟ですが、実は家族や友人を大事にし、おちゃめなところも持ち合わせた人物だったということが伺えるエピソードを聞き、意外だったのと同時に親近感が湧いてきました。

 山崎館長が「一人の画家の展覧会とは思えないですよね」とお話しされたとおり、展覧会を通してみると、短期間に御舟の作風が様々に変化しているのがよくわかります。でもその一方で、根底に流れる何か「御舟らしさ」のようなものが、どの時代でも変わることなくあるように感じられ、それゆえ決して違う人が描いたとは思えない印象が残り、御舟の多彩さが際立つ展覧会でした。


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《炎舞》 1925年 絹本・彩色 山種美術館所蔵


 山種美術館のカフェでは展覧会の会期中、作品をモチーフにした和菓子を頂くことができます。
 《花の傍(かたわら)》をイメージしたストライプの綺麗なもの、《翆苔緑芝(すいたいりょくし)》をイメージした紫陽花と兎など、どれも綺麗で迷ってしまいましたが、私は《炎舞》をイメージしたお菓子を頂戴し、美味しく、美しいお菓子に目でも舌でも芸術を味わいました。


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黒い懐紙に炎を表現したオレンジが美しい《炎舞》をイメージしたお菓子。
食べるのがもったいない。


 後期の後半には御舟最大の問題作であった《京の舞妓》や《菊花図》が展示されるので、また観に足を運びたいと思います。




※ 掲載画像はブロガー内覧会において特別に許可をいただき撮影したものです。




【展覧会情報】

開館50周年記念特別展 「速水御舟の全貌」

2016年10月8日(土)~12月4日(日)
前期:10月8日~11月6日、後期:11月8日~12月4日
山種美術館
東京都渋谷区広尾3-12-36
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2016/gyoshu.html


October 21, 2016

藤牧義夫とモダン都市東京


 藤牧義夫をご存じだろうか。

 群馬県館林市出身の天才的版画家藤牧義夫(1911~1935失踪)の活動期間は、昭和初期のわずか数年に過ぎない。明確な記録が残っているのは昭和6年(1931)から10年(1935)までの5年間、この短い期間に藤牧は精力的かつ濃密な創作活動を行い、同時代の創作版画関係者の注目を集めた。藤牧は新進の商業デザイナーとして活躍する傍ら、昭和7年(1932)、小野忠重(版画家、版画史研究者/1909~1990)らの呼びかけで生まれた新版画集団に参加し同集団の発行する版画誌や展覧会を主な作品発表の場として活動した。新版画集団のメンバー中最も若年であったが、すぐに頭角を現し抜きんでた存在となり、昭和8年(1933)の第14回帝展(帝国美術院美術展覧会・東京府美術館)で《給油所》が入選し一段と注目を集める。当時版画雑誌『白と黒』を出版していた料治熊太(号「朝鳴」/1899~1982)も藤牧を高く評価していた一人である。藤牧また創作版画の創生期から活躍する恩地孝四郎、平塚運一や彼らに続く世代である畦地梅太郎ら一流作家とも親交があった。

 活動のピークに突如失踪という悲劇的な結末が訪れる。昭和10年9月2日、雨の降る夜を最後に彼の姿を見たものはない。弱冠24歳の若者であった。
 戦後長く忘れられた存在であった藤牧が再び注目されるようになったのは、銀座の画廊「かんらん舎」を主宰する大谷芳久氏が開いた遺作展(昭和52年/1978)が切っ掛けである。作品は小野忠重の協力で集められた。遺作展の準備過程で未発表の白描絵巻3巻の存在も明らかになった。この時展示された版画作品の主だったものは東京国立近代美術館が一括購入し、白描絵巻3巻(《絵巻隅田川》2巻、《申孝園》1巻)は東京都現代美術館が購入することになる。

 藤牧が活躍した時代は、関東大震災により破壊された東京が、いわゆる「帝都復興事業」によりモダン都市として再生された時代と重なっている。
 大正12年(1923)9月1日に発生した地震とその直後の大火災で東京は徹底的に破壊され、江戸の面影を色濃く残していた古い東京は壊滅した。山本権兵衛首相は直ちに「帝都復興」事業に着手、帝都復興院が設置された。総裁は内務大臣後藤新平、後藤の推薦で東京市長に就任し復興事業を推進したのは、満鉄総裁、鉄道院総裁を歴任した中村是公(よしこと)である。中村は夏目漱石の親友としても知られる。

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 後藤がまとめた復興計画の主だったものとしては、放射状と環状を組み合わせた近代的道路網の整備(靖国通りや明治通りなど)、耐震性と不燃性を備えた鉄の橋(清洲橋や永代橋など)や小学校(中央区泰明小学校や台東区小島小学校など)の建設、緑地を備えた大規模公園(墨田公園、浜町公園、錦糸公園)の整備などが挙げられる。公の事業と並行して民間でも次々と新しい大規模建築が建設された。

 この時期の建築はその後の戦火をくぐり抜け意外なほどの数が現存している。例えば国会議事堂、上野の東京国立博物館、国立科学博物館、日本橋の三越、髙島屋、日比谷公会堂、銀座和光、教文館など枚挙に暇がない。

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 ちなみに、小石川の当社ビル群や小石川植物園本館もまさにこの時代に建設されたものであり、また当社前から春日通りへと上がる播磨坂(さくら並木)は、後藤の都市計画に基づき建設された環状道路(環状3号)の名残である。

 藤牧は鉄とコンクリートとガラスによる新たなランドマークが続々と誕生する躍動的新生都市・東京の今をわくわくとした気持ちで描き続けた。少し長くなるが藤牧の言葉を紹介する。
(原文旧字旧仮名は新字新仮名に変更)

 「都会風景―その姿は複雑であり、単純であり、或は壮大に、或は明快に、或は力強く、或は速力をもって、われわれに迫ってくる、それはつねにより高く、より能率的に動いて居る。そして、われわれがスケッチブックを持って歩くとき、これらのすべては自分のものだ。
 われわれはモット、モットこの美しさを見つめなければならない。その無限に新鮮な形態を思ふままに賛美し、且つこの近代的な都市美を形成するところの鉄を感じ、コンクリートの皮膚を感じ、更にギラギラと輝くガラスをながめて、その立体美にくい入るのだ。今われわれはこの近代的都市美を版画によって、最も適切に、ハッキリと表現することの出来るのを何よりも大きな悦びとする。」

(1933年9月1日、『総合美術研究』5、「木版画実習[都会風景]」より)


 2020年に開催される東京オリンピックにむけて都内各地で新たな建築工事が急増している。前回の東京オリンピック(1964)の舞台、神宮外苑の国立競技場はあっさりと破壊されてしまった。昭和初期に建設されたモダン都市東京のランドマークもこれから多数が破壊され、新たな建物に置き換わっていくのだろう。

 《白描絵巻(絵巻隅田川)》(白鬚橋から西村勝三像周辺まで)の冒頭に、藤牧は以下の文章を記している。
 「未来すみだ川 橋の発達によりて川の面は何十年後遂に覆はれ昔日のおもかげを偲ふ事不可能になるにや、余写生中この予感あり、幸いにいまだ橋少なし精出して写生を勉むべしとす 昭和九年十月下旬考 義夫」
 藤牧は、鉄、コンクリート、ガラスといった最新の材料と優れたデザインにより構成される近代都市美に感動するとともに、近代都市のランドスケイプが常に流動的で変化が速いこともよく理解していた。藤牧の作品には疾走するようなスピード感が感じられる。日々の感動をダイレクトに画面に描写するため、絵筆を使うように彫刻刀を自在に駆使して版画を描き続けた。

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 藤牧を記念する碑が、故郷館林にある。藤牧が最注目されるきかっけを作った大谷氏による遺作展の売上の一部を原資として昭和53年(1978)、藤牧が好んで訪れた城沼(じょうぬま)の畔に建てられたものだ。黒い御影石に藤牧の版画《冬の城沼》をもとにしたブロンズのプレートがはめ込まれ、その下に藤牧の、熱き情熱が迸る言葉が刻まれている。


 
「時代に生きよ 時代を超えよ」

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【参考文献】
・『季刊 すみだがわ』'80第7号から'81第10号 隅田川クラブ(1980年12月~1981年9月)
・『別冊太陽』No.54 SUMMER '86 平凡社(1986年6月)[洲之内徹「藤牧義夫 隅田川絵巻]
・大谷芳久著『藤牧義夫 眞僞』 学藝書院(2010年11月)
・駒村重吉著『君は隅田川に消えたのか―藤牧義夫と版画の虚実』 講談社(2011年5月)
・『生誕100年 藤牧義夫』群馬県立館林美術館・神奈川県立近代美術館編 求龍堂(2011年7月)




【付記】(2016.10.24改稿)

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藤牧義夫《鉄の橋》の取材地について

 《鉄の橋》は、昭和8年(1933)9月発行の『新版画』第10号(新版画集団)に貼りこまれた作品だが、同年8月に発刊された『総合美術体系』第3号に写真版で掲載の版画《橋梁》の原版の一部に手を入れて摺られたものと考えられている。《橋梁》は黒一色で摺られた作品だが、《鉄の橋》は画面の上部に空色の手彩色1色が加えられている。簡潔で力強いモノクロームの版に鮮やかな空色の手彩が美しいコントラストを見せ、強い印象を与える傑作である。
 力強い鉄の橋を、疾走するオートバイが渡ろうとしている。その緊迫したスピード感も作品の魅力のひとつである。余談だが、国産初の量産オートバイ、宮田製作所のアサヒAA号が登場したのは本作と同じ昭和8年(1933)だそうだ。当時約4万台が販売されてという。藤牧は時代の花形である航空機のファンであり、また作品中にしばしば自動車が登場する。オートバイも当時とすれば時代の先端的存在であったろうから、力強く疾走するオートバイに藤牧が魅かれたとしても不思議はない。
 藤牧は《橋梁》の制作意図について以下のように語っている。
 「これは鉄の橋梁がもつ力強さに美を感じ、その美を強調するために出来るだけ簡素な線で鉄の強さを頭におきながら、最後まで同じ気持ちで彫ったものだ。道路もスケッチした時は工事中で、大変汚れていたが、そのままをスケッチ通りに彫った。用具(刀)は三角ノミでグイグイと押して行き、画面全部の構成が済んでから簡単に丸ノミで浚った。」
(1933年9月1日、『総合美術研究』5、「木版画実習[都会風景]」より)

 取材地については、私の調べた範囲では今のところ明確に特定されてはいないようだ。(最新の研究成果により特定されている可能性はある。)
 藤牧の版画作品中恐らく最高傑作と思われる《赤陽》(東京国立近代美術館)は前述の大谷氏の調査により上野松坂屋の屋上から湯島方面を眺めた風景であることが判明している。また大作《白描絵巻》4巻も大谷氏らの克明な調査で詳細が明らかになっている。
 現場に幾度も足を運び、他の藤牧作品や昭和初期の写真資料等に照らし合わせるなどの独自調査の結果、《鉄の橋》(《橋梁》)の取材地は、江東区佐賀の松永橋付近である可能性がでてきた。考察を簡略に付記する。



 取材地を特定する際の手がかりとなるのは主に以下の5点だろう。


 ① 中央に描かれた鉄の橋の構造的特徴。
 ② トラスの左右に歩道が設置されている。
 ③ 向こう岸の右奥に高く巨大な煙突2本と高い建築が描かれている。
 ④ 向こう岸の左右に倉庫のような切妻平屋の建物が並んでいる。
 ⑤ 左側の建物群の奥に煙突が2本描かれている。


橋の構造は、専門的には「1径間鋼製トラス橋」というもののようだ。
江東区内に多数現存する「震災復興橋梁」はいずれも鋼鉄製のトラス橋だが、ほとんどは左右のトラスが鋼鉄の横桁で結合された構造である。
この横桁が省かれたトラス橋は少なくとも三つ建造されたことが判明している。その内二つ(緑橋、平久橋)は現存し一つ(松永橋)は平成11年(1999)に新たな橋に架け換えられている。




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◇平久橋 昭和2年(1927)竣工(現存)
場所:江東区牡丹三丁目~木場一丁目間(平久川)
構造:1径間鋼製トラス橋
江東区牡丹と江東区木場を結ぶ橋。
①と②の条件は一致している。
③は木場側には藤倉電線(現フジクラ)の巨大な深川工場と富士アイスの深川工場があった。
藤倉電線の工場敷地は概ね現在深川ギャザリアがある場所にあたる。工場には当時高い煙突があったが写真で見る限りその本数や配置、周囲の建物の外観等は版画と一致しないようだ。
富士アイスの外観や正確な場所については調査中。
④、⑤に関連する情報としては、木場側の袂に江東区立平久小学校がある。平久小学校は昭和3年(1928)平久尋常小学校として現在地に開校している。




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◇緑橋 昭和4年(1929)竣工(現)
場所:江東区佐賀一丁目~福住一丁目間(大島川西支川)
構造:1径間鋼製トラス橋
江東区福住の首都高9号深川線の福住ランプの横にある。歩道とトラスの位置関係は作品と一致しない。鉄鋼のトラスが道路と歩道の双方を挟む構造になっている。
首都高9号線は、油堀川(運河)を埋め立てて造られたものであるから、藤牧の時代には緑橋のすぐ横、上流側に油堀川があった。③の高い煙突を持つ建物の存在は確認されていない。④、⑤も同様。




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◇松永橋 昭和4年(1929)竣工(平成11年(1999)架替)
場所:江東区佐賀二丁目~福住二丁目間(大島川西支川)
構造:1径間鋼製トラス橋⇒1径間鋼製ガーター橋
緑橋のすぐ上流、仙台堀と大島川西支川が交差する場所のあたりにある。
残念なことに平成11年に架け替えられ、藤牧の時代とは構造・外観が変わっている。
①以前の橋は写真で確認したところ、平久橋とほぼ同じ外観であり、作品と一致していると言える。②の条件も満たしている。

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③佐賀側の右奥に、仙台堀を挟んで浅野セメントの巨大な工場があった。両者の距離は200mほど。
浅野セメントの工場は、藤牧が好んで描いたモチーフのひとつであり、《鉄の橋》(《橋梁》)の右奥に描かれた高い建物と外観が良く似ている。高い煙突の配置も一致しているように思う。

④佐賀側の左右は三井倉庫の敷地である。
写真資料により少なくとも戦後間もなくから2000年代初頭まで切妻平屋の倉庫が多数立ち並んでいたことが確認されている。戦前の状況は確認できていないので追加調査が必要。

⑤松永橋は隅田川の河畔と200mほどしか離れていない。松永橋から向こう岸の箱崎の建物が間近に見える。藤牧の《白描絵巻 試作》(浜町公園から相生橋まで)には箱崎(現中央区)の風景が精密に描写され、多数の倉庫や煙突が描かれている。だが、煙突と手前の建物を比較すると箱崎の煙突にしては大きすぎるかもしれない。推測になるが三井倉庫(当時の名称は東神倉庫か)に煙突があったかもしれない。さらなる検証が必要である。

以上、④⑤は追加検証が必要だが、ひとまず松永橋付近が取材地である可能性がある。




松永橋にほど近い浅野セメントと清洲橋は藤牧が好んで描いたモチーフである。松永橋は清洲橋に対し、浅野セメントを挟んでほぼ対角の位置にある。追加調査は必要だが、《鉄の橋》あるいは《橋梁》の取材地が松永橋付近である可能性は十分あると言えよう。

October 14, 2016

秋・上野の森でゴッホの傑作と出会う


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。清涼の秋気が身にしみる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
 今回は上野で開催中の東京都美術館「ゴッホとゴーギャン展」と、上野の森美術館「デトロイト美術館展」をご紹介いたします。
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 「ゴッホとゴーギャン展」はゴッホ(1853~1890)とゴーギャン(1848~1903)が友情を結び合い1888年の10月に南仏アルルで共同生活を始めるも、結局生い立ちも作風も大きく異なる二人は仲違いし、ゴッホの「耳切り事件」で終わりを迎えた史実にスポットを当てて企画された展覧会です。
 現実の世界から着想を得て力強い筆触と鮮やかな色彩で作品を生み出すゴッホ。目に見えない世界を装飾的な線と色面で表現するゴーギャン。二人の偉大な芸術家の誕生と出会いから、アルルでの破局、その後も続いた交流と影響を60点余りの作品を通じて振り返ります。これまであるようでなかったゴッホ、ゴーギャンの関係性に焦点を当てた展覧会は、二人の偉大な巨匠の作品と芸術を改めて知るとても貴重な機会といえるでしょう。
 わたくしは中でもゴッホの自他ともに認める最高傑作のひとつ《収穫》に深く心を動かされました。南仏の麦畑を主題にした調和の取れた風景はゴッホの心の一時の平穏が投影された興味深い作品です。
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 一方「デトロイト美術館展」は、1885年の美術館創立以来、同時代の画家の作品を積極的に収蔵し造り上げた近代絵画コレクションの中から、印象派、ポスト印象派、20世紀美術の選りすぐりの名品を紹介する美術展です。モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、マティス、ピカソ等のこれぞ名画と呼ぶべき作品が集結し、心ゆくまで芳醇な美の世界に浸れます。
 中でも本展覧会のメインビジュアルにもなったゴッホの《自画像》に注目です。ゴッホが残した数ある《自画像》の中でも、1887年に制作された本作は、印象派や日本の版画に強く影響を受けた作風で、画家が自らの魂の激しさを描き上げ、人間の魂のもっとも根源的なものにまで到達しえた正に奇跡の名画です。

 芸術の秋の到来を迎え、皆さまもぜひ上野の森に足をお運びになり、豊かな美の世界をご堪能ください。



【展覧会情報】

●ゴッホとゴーギャン展
会場 東京都美術館
会期 2016年10月8日(土)から12月18日(日)まで
    ※休室日=月曜日
時間 9:30~17:30
※毎週金曜他、20時まで(詳しくは美術展公式HPをご覧下さい)


●デトロイト美術館展
会場 上野の森美術館
会期 2016年10月7日(金)から2017年1月21日(土)まで
    ※休館日=10月21日(金)のみ
時間 9:30~16:30
※毎週金曜と10月22日(土)は20時まで


October 7, 2016

秋、食べる芸術『お菓子調進所 一幸庵』を訪ねて


いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。
季節は秋です。
朝方少しひんやりすると、ふかふかの落葉に包まれたくなる東山魁夷の《行く秋》を思い起こします。
しかし、秋はなにより味覚を楽しみたい!
そこで共同印刷、手土産利用頻度ナンバーワン「栗ふくませ」を販売する和菓子店、弊社からは播磨坂を上ったところ小石川5丁目にあります『お菓子調進所 一幸庵』さんをご紹介したいと思います。


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こちらの風情ある外観「一幸庵」さん店舗は、茗荷谷駅からは徒歩5分。
名物はわらびもち、栗蒸し羊羹など顔となる名品を多々生みだし、夕方に寄ると売り切れてしまっていることも珍しくない人気沸騰中の老舗和菓子店です。
店主・水上力(みずかみちから)さんはロサンゼルスの美術館でのワークショップ、講演会など技術の継承にも精力的にご活躍され、今年のバレンタインデーにはテレビ番組でも番組史上初の和菓子職人として特集されるなど、世界を舞台に脚光をあびる稀有な存在でいらっしゃいます。
先日お忙しい中にも関わらず、一幸庵店主・水上力さんにお会いすることができましたのでその感動をお伝えいたします!


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水上力氏は昭和23年、戦前より名高い和菓子職人の家に生まれます。
自身の道を進むと決意し大学卒業後には京都と名古屋で修業を積み1977年に一幸庵を創業されました。
以来、繊細で芸術的な和菓子をつくり続け辿りついたのが、「お茶のうまさを引き立てる和菓子」だといいます。
特に日本の季節を四季のみならず、日本古来の節「七十二候(しちじゅうにこう)」という細分化された暦をコンセプトに72の季節の情景を表現した和菓子は前代未聞、うっとりするような芸術品です。


それを目で味わうことができるブランドブック、『IKKOAN』も今大変話題になっております。
こちらは水上氏のお菓子に魅せられた方々がクラウドファンディングにより資金を集め、日本の和菓子を世界に発信するため作られた、これまた大変美しい本なのです。(2016年グッドデザイン賞受賞)
去る今年の造本装幀コンクールにも出品されておりました。お茶の美味を引き立てる水上氏のお菓子そのもののように主張しすぎない紙の質感、和菓子のフォルムを思い起こさせるかわいくて現代的なタイトルロゴには本当に見入ってしまいました。


このように和菓子の世界で芸術的な表現をされている水上氏に質問させて頂いたのは、
「目で見ているだけでも満たされる美しい和菓子ばかり。グローバルな視点をもち日本人にとって大切な和菓子の存在を世界へ発信されている水上氏は、日々どのような物事からインスピレーションを得て和菓子づくりに反映されていらっしゃいますか?また休日は何をされていますか?」
ということ。

その問いに水上氏は、
「たまに駅前のスーパーに買い物に行ったり、予約が取れたら食事にでかけたり。休みの日は半径5メートルでの生活。身近な四季の変化、例えば桜や紅葉、つゆ草など自然の細かい変化に気付くなど感性は常に養うようにしています」とのこと。
しかしある時期には積極的にさまざまなカルチャーから刺激を受けていたとのお話。
「青山や銀座のブティックのショーウィンンドーをみては色使いを勉強したり」
「一番ショックを受けたのは、パリでフォション本店に行った時。ワンダーランドだと思った、独特な色使いを和菓子に取り入れられないか、と思ったね」とのこと。
40代で世界を見ていたら今日本にはいなかったかもしれない、とも。


『IKKOAN』七十二候のうち六十九候に「雉始雊(きじはじめてなく)」という和菓子がありますが、それについての興味深い裏話も教えて頂きました。
「サモトラケのニケ(勝利の女神ニーケーの彫像)、ナイキのロゴ、社名の由来にもなっている彫像をルーブル美術館でみたことが印象に残っていてこんなデザインが出来上がった」とのお話。
「雉始雊(きじはじめてなく)」は、白一面の雪景色に一声鳴いて降り立った雉により雪に彩りが加わる情景が見たてられた繊細かつ鮮やかな和菓子。
雉は強い発色でシャープな流線型、はかなくもあり斬新で格好良いのです。写真でお見せできないのが残念ですが、そのセンスには脱帽です。
「和菓子の世界は制約が無く何をやってもいいからね」とのこと。色々お伺いしていくとやはり絵画や版画もお好きだとのこと、水上氏の感性やインスピレーションにはやはり半径5メートル以上のものが詰まっているようです。


また、文化的レベルの高い世界各国のパティシエから称賛をうけ、教えを請われている水上氏ですが、
「日本文化は明治維新以降、欧米への劣等感など引きずっているものもあるがグローバルになろうと思えばなれる。ただしこちらは草食、相手は肉食だから最低限の知識をもってきちんと日本文化を理論武装していかないと」とおっしゃいます。
「日本人は五感で食べるし、腹八分目の文化。お腹一杯にならなくてもその分誰かに分けてあげられるんだよ」とのお話。
またバレンタインにはもっと和菓子を贈る人が増えて欲しい、と。「古来日本人は毎日歌を詠んで贈っていたのだから...」
水上氏だからこそ語ることができるグローバルな視点には改めて日本文化の魅力をひしひしと感じさせられます。


そしてやはり、職人でいらしゃいます。
栗の下処理をしている水上氏、動きはとても早く大量の栗をあっという間にさばいていきます。
素早い動作、刃が入る瞬間だけ別のリズムになります。
失礼ながら手先が震えているのかと思ったほど。ではなくほんの一瞬あまりにも柔らかく繊細なタッチに変化するのでした。
その感性やお味にはもちろんですが、何より手さばきに驚嘆させられました。


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皆様も是非お近くに寄られた際は、食欲の秋、食べる芸術を楽しんでみてください!!


一幸庵(いっこうあん)
東京都文京区小石川5-3-15
※営団地下鉄丸の内線:茗荷谷駅より徒歩5分
Tel: 03-5684-6591

一幸庵ブランドブック『IKKOAN』

September 30, 2016

鈴木其一展を観る


 東京六本木のサントリー美術館で開催中の「鈴木其一(すずききいつ)」展に行ってまいりました。鈴木其一の画業を紹介する大規模な展覧会ですが、私の一枚は、やはり展覧会のメインビジュアルにもなっている「朝顔図屏風」です。

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 琳派様式を江戸で再興した師・酒井抱一の亡き後、独自の画風を確立していった其一が完成させた《朝顔図屏風》は、金地に流れるように絡まり合う緑の蔦と、鮮やかな朝顔の色彩が目を惹くと同時に、その大きさ、ボリュームも印象的で、デザイン性が高く切れ味鋭い其一の表現は、独創的でまさに「COOL!」という感想でした。

 雑誌『和楽』10・11月号の琳派特集では、「かつて忘れられた存在であったのが、その独創的な作品から注目を集め、近年改めて人気を得た作家」・伊藤若冲と比較し、その存在、技術の高さから「ポスト若冲の一番手」としての鈴木其一を紹介しています。
 展覧会訪問日は平日でしたが、混雑と言ってよいほどの来場者に鈴木其一の注目の度合いを感じ、たしかに「これから其一がくるかもしれない...」という気配を感じさせる展覧会でした。

 10月5日からの後期展示では、《夏秋渓流図屏風》や《風神雷神図襖》などが展示されます。
 私も、もう一度観に行こうかと思っています。


★ 「鈴木其一展」、作者の遊び心と色彩感覚が印象的な「描表装(かきびょうそう)」の展示コーナーに出品されている「歳首の図」は当社彩美版®で販売しております!


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彩美版®
鈴木其一 《歳首の図(さいしゅのず)》
販売価格 90,000円+税


<仕様体裁>
原画 細見美術館(京都)所蔵
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 描表装
軸寸 天地175.3×左右47cm
箱  柾目桐箱、タトウ入り
証明 原画所蔵者の検印入り証紙を桐箱に貼付
発行 共同印刷株式会社
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

September 23, 2016

アメリカの休日

 
 秋の風情がなかなか顔を見せない残暑厳しい9月初旬、少し気分を変えてみようと、近年話題のジョンソンタウンを初めて訪れてみました。

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 場所は埼玉県入間市。国道463号をひたすら西へ走ると、彩の森入間公園の向かいに白い木造の建物群が現れました。青い看板にJOHNSON TOWNの文字。そして星条旗がなびいています。敷地に入っていくと、三角屋根に横張りの板壁、そしてポーチがついたアメリカの家屋そのものが立ち並んでいます。ノスタルジックなアメリカ映画や古き良き時代を描いたアート作品などで目にした家々の現物が目の前にあり、違うとわかっていても異国の空間に迷い込み、その空気を吸っているような錯覚を覚えます。カフェや手作り雑貨等たくさん並ぶお店がそのイメージを倍加させ、ディスプレイされた商品やレトロな看板が明るい楽しさ、愛らしさを訴えかけてきます。家と家の間に高い塀のない開放的な空間。そうでありながら静かに暮らす人々の日常が保たれているとのこと。

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 約2.5haに60棟ものアメリカ風建築が並ぶこの地区は、国土交通省主催の平成27年度都市景観大賞の都市景観部門で大賞を受賞しました。1945年、戦後GHQが入間基地にあった陸軍航空士官学校を接収してジョンソン基地とし、朝鮮戦争勃発時には民間にも米軍ハウスをつくるよう要請。たくさんのハウスが建てられたものの、基地返還後は老朽化・荒廃化しました。しかし民間会社により「進駐軍ハウス」は改修・保全され、それを模した新たな「平成ハウス」も設計・建築され、インフラ・植樹整備、コミュニティ支援等多岐にわたり地区の再生・活性化が図られました。アメリカ風の自由で文化的な空気に惹かれ生活する家族で活気に満ちた風土が培われ、文化遺産としても見直されているということです。

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 時間がたつのも忘れてゆるゆる散策。港町でもリゾート地でもない埼玉県の何気ない場所に目いっぱい「本物」の異国の風情が?という感覚的ギャップにわくわくするインパクトを受けた日でした。変わり映えのしない日常風景に飽きたとき、是非また気軽に行けるアメリカで休日を過ごしたいと思いました。


 
■ジョンソンタウン

埼玉県入間市東町1-6-12   
TEL 04-2962-4450(ジョンソンタウン管理事務所)
店舗のみ見学可

September 16, 2016

坐ることを拒否する椅子に拒否された話


 東京の青山、表参道には美術書が豊富な青山ブックセンターや、ワタリウム美術館のショップなどがある。また美術館やギャラリーもある。昨日まで続いた雨模様も今日は久方ぶりに晴れたので、青山、表参道の散策を楽しむことにした。

 先ずは表参道の路地を入った所にある「岡本太郎記念館」から始める。ここは芸術家、岡本太郎が自宅兼アトリエとして暮らしていた場所である。門を入ってすぐ横に、カフェ「a Piece of Cake」があるので人心地を付くことにする。注文したパンケーキセットは、メープルシロップ、大きめのバター、ジャム、そしてたっぷりのホイップクリームが添えられている。大きく開放的なガラス窓からは、庭の眺めが良い。ふと建物の上の方を見ると、「太陽の塔」が2階のバルコニーから庭を覗いている。

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パンケーキにはa Piece of Cakeの焼き印

 記念館の扉にある足裏の形の把手をつかんで中に入と、館内には岡本太郎の等身大の人形や、さまざまな立体、平面作品が展示されている。美術館に来たというよりは、太郎さんの家に遊びに来たという感覚である。制作に使用したアトリエが残されていて、巨大なキャンバスがいくつも棚にしまわれている。イーゼルに立てかけられた作品や、机に並べられた絵筆を見ていると、今でも岡本太郎の息づかいを感じるよう。2階の企画展「岡本太郎の沖縄」(~2016年10月30日まで)では、岡本太郎が返還前の沖縄を撮影した写真が展示されている。

 こちらの記念館の小さな庭はとても居心地がよい。うっそうと植物が茂った庭には、精霊のような不思議な作品が点在している。そして小さな広場には「坐ることを拒否する椅子」が並べてある。この椅子は座面が丸く凸型になっており、そこに目や口が凸凹と付いているので、とても落ち着いて坐れない。この椅子が坐ることを拒否することに、断固拒否して無理無理坐ってみた。立ち上がってみると、お尻が濡れている。昨日降った雨が、座面の窪みに溜まっていたようである。美術館の作品というものは、黙っておとなしく鑑賞者に見られて居るモノであるが、岡本太郎が生み出したアート達は違う。彼らも何かを仕掛けて来るから油断がならない。いい年をした大人が濡れたお尻を抱えたままでは、青山、表参道をうろつくこともままならない。始めたばかりであるが、ほうほうの体で帰途についた。



September 9, 2016

山から海へ~鎌倉アルプス


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。

 先日、アルプスを登ってきました。と言っても、標高3,000mを超える日本アルプスではく、鎌倉アルプスへ行ってきました。鎌倉にアルプス?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、都内近郊の日帰りハイキングコースとして人気で、雑誌などで取りあげられることも多いのです。

 スタートは北鎌倉駅より徒歩約15分「建長寺」となります。「建長寺」は北条時頼が創建したお寺で、鎌倉五山第一位と日本では最も古い禅寺です。見所が多いお寺ではありますが、今回は境内を足早に突き進むことにします。すると、人気も無くなり半増坊への参道が現れます。ここから始まる、急な階段を一気に登りきると見晴台に到着です。(写真1)

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写真1 建長寺 半僧坊への参道


 見晴台からは、先ほどいた建長寺が小さく見えます。奥には鎌倉の街並みと、さらに相模湾が見渡せます。こうして眺めると、鎌倉の街が三方を山に囲まれ、さらに前方は海という特徴的な地形を確認することができます。まさに天然の要害です。源頼朝が鎌倉に幕府を開いた理由が分かります。(写真2)

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写真2 見晴台からの眺望


 この見晴台を抜けると、いよいよ本格的な山道が始まります。結構な急斜面や岩場もありますので、基本的には登山靴で臨みたい所です。足元に気をつけながら、しばらく進んでいくと鎌倉アルプスの最高峰、標高159mの太平山山頂に辿り着きます。

 ハイキングコースのゴールは瑞泉寺となっていましたが、余力があったので、このまま八幡宮を抜けて由比ヶ浜まで向かうことにしました。八幡宮前から伸びる若宮大路は、改修されてから初めて歩きます。(写真3)

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写真3 若宮大路


 由比ヶ浜に到着して海水に触れると、山の上から海まで歩いてきたという達成感に浸ることができました。山から海へ鎌倉を縦走する今回のコース。思いのほかハードですが、自然と鎌倉の街並みを存分に楽しむことのできる贅沢なコースです。動きやすい格好で出かけてみてはいかがでしょうか。


September 2, 2016

残暑お見舞い申し上げます


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 9月に入りましたがまだまだ残暑が厳しい日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。天候に左右され体調を崩しがちな陽気ですが、どうかお体をご自愛くださいませ。

 暑さで寝苦しかった夜が、ここのところ朝晩と少し冷え込み始め、鈴虫でしょうか虫の鳴き声を耳にします。蝉の鳴き声から秋の気配を感じる今日この頃でございます。

 今回は、秋の情緒が感じられる彩美版®をご紹介いたします。





彩美版®
酒井抱一 《月に兎》
販売価格 90,000円+税


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<仕様体裁>
原画 松岡美術館所蔵
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
証明 原画所蔵者検印入り証書を貼付
画寸 天地80cm×左右35cm
軸寸 天地172.9cm×左右51cm
表装 三段表装
箱  柾目桐箱、タトウ付
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




【今日の谷根千+上野界隈】

上野公園の東京都美術館では「再興第101回再興院展」東京展が開催中です。


再興第101回日本美術院展(再興院展

■会期:2016年9月1日(木)~9月16日(金)
■時間:9:30~17:30(入場は16:30まで)
    ※最終日16日の入場は13:30まで、閉会は14:30
■休館:9月5日(月)
■料金:一般900円(700円)※( )内は団体料金(10名以上)
    70歳以上の方700円
    学生以下・障害者手帳をお持ちの方と付添(1名) 無料


August 26, 2016

海が見えるレトロな電車「江ノ電」


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。気付けば8月も下旬。夜には虫の鳴き声も聴こえてきて、秋の気配が近づいてきました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。残暑お見舞い申し上げます。

 さて、私は先日、テレビや映画でもお馴染みの鎌倉レトロ電車「江ノ島電鉄」に乗ってきました。地元民に限らず多くの観光客にも愛されている通称"江ノ電"は、1902年(明治35年)に開業。鎌倉駅から藤沢駅までの10キロを結ぶ(約34分)、車内から美しい海や自然の景色を眺めることのできるレトロな電車です。

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 写真は、私が「鎌倉高校前駅」で途中下車したときに撮影したものです。ちょうど夕暮れ時で、「江ノ電が走る踏切」、「穏やかに波打つ海辺」、「江の島の夕陽」をとても綺麗に撮影することができました。

 ローカル鉄道にもかかわらず、年間乗客は1,700万人にも達するとのこと。また江ノ電の駅のうち「極楽寺駅」と「鎌倉高校前駅」は『関東の駅100選』にも選定されています。その情景の美しさはもちろん、電車に揺られ"非日常を感じさせてくれる優しいひと時"が、人々を惹き付けてやまない江ノ電の魅力なのだと感じました。

 暑い夏が過ぎゆく今日この頃、きっと皆さまの心身も少しお疲れなのではと思います。そんなときは都会の喧騒を離れ、何も考えず江ノ電の心地よさに身を委ね、心癒されてみてはいかがでしょうか。


August 19, 2016

始まりの秋を探して


 いわゆる月遅れのお盆の時期(8月13日~16日)には、多くの方が夏休みを取り、帰省や家族旅行に出かけられたことでしょう。現代の感覚ですと8月は夏のイメージだと思いますが、日本古来の伝統に従えば、秋の始まる季節です。実際、二十四節季の「立秋」が8月7日(2016年の場合)ですから8月は概ね秋と言って過言ないでしょう。お盆(盂蘭盆会うらぼんえ)にしても伝統的には秋の行事とされ、俳句では秋を表わす季語とされています。そうであれば、「夏休み」と言い慣わされたお盆のお休みは、本来「秋休み」というべきなのかもしれません。

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 閑話休題。季節が巡るこの時期、訪れたばかりの秋の気配を探して田園の細道を辿る自転車の小旅行に出かけてきました。照りつける太陽の光の、身を焦がすような熱さを嫌い、しばらく足が遠のいていましたが、久しぶりに走る谷津(やつ)沿いの小路は、通い慣れているはずなのに新鮮な魅力に溢れていました。

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 谷津とは、北総地方に広く見られる台地に挟まれた細長い低湿地の地形で、江戸期まで存在した広大な内海のなごりです。古くから開墾され主に稲田(谷津田)として用いられています。谷津のほぼ中央付近には小川が流れ、台地と谷津の境目を地形に沿って曲がりくねる古道(谷津路)が走っています。谷津路沿いの台地側には点々と農村集落があり、集落の境目あたりには古い石の野仏が祭られています。いずれの仏様も今なお大切に御守りされていることが一目でわかります。

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 小川の土手など谷津田の周辺には葛や蘆、荻、野アザミなどの秋草が繁茂し、沢山のシオカラトンボが飛び回っていました。それはまるで、酒井抱一(1761~1829)が描いた《秋草図》を彷彿とさせる光景でした。

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 この日は雲間から青空が少し覗くといった曇り勝ちの天候で真夏に比べれば暑さも和らぎ、過ごしやすい一日でした。走りながら仰ぎ見れば、秋らしい巻雲が翩翻と空に浮かび、谷津田の上を数羽の白鷺が悠然と飛翔していました。重く頭を垂れて豊かに実った黄金色の稲穂は、今更ながら「豊穣の秋」という言葉を思い起こさせてくれました。お盆明けには稲刈りが行われるそうです。帰り道、農家の庭先で見つけたのは栗の木。まだ青いけれど大きな毬(いが)がたわわに実っていました。

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 秋が更に深まれば、小川沿いの谷津路は無数の昆虫たちに覆われます。それはあたかも虫たちの謝肉祭の如く、生命の最後の焔を輝かせ踊り続けるのです。その頃には、小川に沿って繁茂する荻の美しい銀色の穂波が風にそよぎ、はるか彼方まで続く光景が見られることでしょう。

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彩美版®、限定200部
上村松園 《初秋》 軸装・額装
販売価格(各)120,000円+税


<仕様体裁>
原画 古川美術館(名古屋)所蔵
監修 上村 淳之(日本画家・日本芸術院会員)
解説 古川美術館 学芸課
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 特殊絹本
限定 200部
証明 監修者承認印・限定番号入り証書を貼付
発行 共同印刷株式会社




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■額装仕様
額装 特注木製額金泥仕上げ、しぐれ袖織りマット、アクリル付き
画寸 縦43.5cm×横53.0cm
額寸 縦63.0cm×横72.5cm
重量 約4.5kg



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shoen_shoshu_kiribox.jpg■軸装仕様
箱書 上村松園(シルクスクリーン印刷)
表装 三段表装
材料 天地:利休茶色無地
   中廻:浅葱鼠色地流水文緞子
   風帯・一文字:白茶色地唐花唐草文金襴
   軸先:新牙
   箱:柾目桐箱、タトウ付き
画寸 縦43.5cm×横53.0cm 
軸寸 縦139.0cm×横72.2cm






【監修 上村淳之(うえむらあつし)】

1933年上村松篁の子として京都に生まれる。
松園を祖母に親子三代続いての画業に進む。
現在、日本芸術院会員。京都市立芸術大学名誉教授。
上村家三代の作品を展示する松伯美術館の館長も務める。
2013年には文化功労者として顕彰された。



【古川美術館のご紹介】

 古川美術館は、初代館長古川為三郎が長年にわたって収集し大切にしてきた美術品を、「私蔵することなく広く皆様に楽しんでいただきたい」という想いからその寄付を受け、平成3年11月に開館しました。
 所蔵品は2,800点にのぼり、美人画、花鳥画などの近代日本画を中心として、油彩画、陶磁器、工芸品、また西洋中世の彩飾写本など、多岐にわたります。現在は所蔵品を中心とした企画展示を行うとともに、美術講演会やワークショップなど、幅広い活動をしています。
 また、分館として初代館長が愛した数寄屋建築の居宅を、平成7年より公開、様々な企画を開催しています。

名古屋市千種区池下町2丁目50番地
ホームページ:http://www.furukawa-museum.or.jp/
お問い合わせ:052-763-1991


※古川美術館についてはこちらの過去記事もご参照ください。
なお記事中でご紹介した企画展は、既に終了しております。開催中及び今後開催の展覧会につきましては美術館のホームページにてご確認くだるようお願い申し上げます。


夏の出張、西から北へ美術館めぐり(2015年7月24日)
古川美術館vol.1 「大観・玉堂・龍子 三巨匠展」(2007年11月28日)
古川美術館vol.2 「茶の湯 インテリアデザイナー内田繁の世界」(2007年11月30日)
古川美術館vol.3 "おもてなしの心"(2007年12月3日)


August 5, 2016

九州で「東山魁夷展」を見る


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。8月に入り暑さも佳境に入りました、連日の30度超えで、筆者も体調管理に四苦八苦しております。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。熱中症にも十分お気をつけ下さい。

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 さて私は先日、福岡太宰府にある九州国立博物館で「東山魁夷 自然と人、そして町」展を鑑賞してまいりました。会場に着いて先ず何よりも驚いたのは博物館のユニークな形状。波打つ屋根に総ガラス貼りの先鋭的なデザインです。真横から見ると鳥の頭のようなところが入口になっており、中に入るとそこは吹き抜けの心地よいアトリウム空間となっております。圧倒されました。見事です。設計は福岡県久留米市出身の菊竹清訓(1928-2011)。黒川紀章らとメタボリズムを先導したモダニズムの建築家です。今はなき上野不忍池ほとりの奇想のホテル(ホテルCOSIMA)の設計者といえば、東京にお住まいの方で思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。それは樅の木の形状の高層ホテルで当時流行りのガンダムを思わせる斬新すぎる建造物でした・・・

 閑話休題。2012年の北海道・宮城県巡回展以来の大レトロスペクティブと位置付けられる本展覧会は、東山魁夷(1908-1999)の画業の変遷を代表作でたどるとともに、東山芸術の頂点を示す大作「唐招提寺御影堂障壁画全68面」を特別展示するという必見の展覧会です。制作に10年を要したという画伯入魂の唐招提寺の障壁画は、ほぼ70メートルにも及ぶという長大なものであり、唐招提寺の開祖、鑑真和上の苦難の足跡になぞらえ中国や日本の壮大な自然を、抒情と幻想を内に秘めた静謐な風景として見事に描き切っています。地元奈良でも一年に数日間しか公開されないという記念碑的な作品群を、間近に鑑賞できるのはまことに貴重な機会といえましょう。国民的画家と謳われた東山魁夷の名作がずらりと並ぶ充実の展覧会には九州だけでも15万人の来場者が見込まれているとのこと。真夏の暑い盛りではありますが、皆さまも東山芸術の神髄に触れこころ豊かな気分に浸ってみてはいかがでしょうか。

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 そして実は共同印刷が制作した東山作品の複製絵画が地元福岡の弊社代理店の協力の下、会場出口で販売されております。展覧会メイン・ビジュアルの「緑響く」や「行く秋」「静映」などの彩美版®プレミアム作品が出口右横の販売スペースに飾られ、東山芸術の感動を胸にした大勢のお客様にお立ち寄りいただいております。弊社の彩美版®プレミアムは東山魁夷の美しい風景をさらに魅力的に鑑賞していただける新感覚の美術工芸技法です。ご興味のある方は展覧会場に足をお運びの際、是非ご覧になってみて下さい。



【特別展「東山魁夷 自然と人、そして町」】

会場 九州国立博物館
   福岡県太宰府市石坂4-7-2
会期 2016年8月28日(日)まで。月曜休館(祝日を除く)
時間 9:30~17:00
※巡回展:2016年9月17日(土)-10月30日(日) 広島県立美術館






【弊社新作のご案内】

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東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《 行く秋 》

販売価格 500,000円+税
限定350部発行



<仕様体裁>
監修 東山すみ
解説 松本 猛(長野県信濃美術館 東山魁夷館前館長)
原画 長野県信濃美術館 東山魁夷館所蔵
技法 彩美版®プレミアム
額縁 特注銀泥木製額プラチナカラー ハンドメイド浮き出し加工
画寸 天地45.9×左右65.2㎝(15号)
額寸 天地63.9×左右83.2×厚さ3.7㎝
重量 約5.3㎏
発行 共同印刷株式会社
※作品についてのお問い合わせ:共同印刷(株)アート&カルチャー部 TEL.03-381-2290


July 29, 2016

「『尋常小学算術』と多田北烏」を読んで


 いつも美術趣味をご覧頂きありがとうございます。

 手前みそですが、印刷愛がわいた本をご紹介いたします。

 今回、タイトルにあります本「『尋常小学算術』と多田北烏-学びはじめの算数教科書のデザイン-(発行:風間書房2014年2月)」にて、昭和の美しい教科書と多田北烏ついて知り、印刷というひとつの表現技法にとても愛着がわいてしまいました!

 多田北烏(ただ ほくう)は、資料が少ないゆえにあまり情報を知られていない存在ではありますが、美術出版の先駆者として昭和に活躍した美術家でした。
 北烏がデザイナーでありアートディレクターを務めた教科書、「尋常小学算術」は、1935年から1940年(昭和10年から昭和15年)にかけて使われた
低学年向けの初めての児童用教科書で国語に続いて初めてカラー印刷されたものだそうです。

 とにかくこちらの美しい画像をご覧ください。

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(画像4点 巻頭のカラー資料より転載)


 画像にある通り、とても教科書とは思えないほど情緒的なのです。

 なぜこのように美しいのか。

 弟子の風間四郎の言葉によると(当時の共同印刷の製版者)
 「印刷で効果が上がる原画、印刷しやすい原画」を目指したからだということです。

「挿絵画家として著名になっても、なおタブロー画家として認められようと、苦悶した画家も多かった。北烏が個人所有となるタブローよりも、庶民の生活を彩る美術、労働者との共同意識を重視したのは、当時としては特異な態度であったが、その原点となる背景は後述することにする。」(p.92より抜粋)

 とあるように、北烏は、単なる原画作家ではなく、印刷方法の原理を理解し、方法を指示したり、画家と印刷技術者との共同の芸術としてとらえていたという事でした。
 印刷で表現しきれないものは初めから描かなかった、ということです。
 まるで浮世絵版画の絵師のようです。
 戦前、デザイナーにとって印刷はまさしく表現だったことがうかがえる内容でした。

 また北烏の芸術観は現代美術の範囲に及んでいます。
 「元来私は従来の絵の具のみが絵画の永久な表現形式では決してない、将来吾々の感度がいよいよ高まり益々複雑になって来ると、更に更に変った形式が発明され、要求されて来ると思いますが、そうした場合の一形式として、此の物で描くという方法が盛んになるかと思うのです。
 例えば音で描く、光で描く、物で描く、これはまだ少し漠然としていますが空間に描く、或いは言葉で描く、或いはこれ等のものを綜合して描く、というようなものです。」(p.94より抜粋)

 この時代、北烏が語っている芸術論にも感銘を受けました!



<出典>

『尋常小学算術』と多田北烏
-学びはじめの算数教科書のデザイン-

著者: 上垣渉、阿部紀子 著
発行: 風間書房(2014/02/20)
定価: 本体7,000円+税
ISBN: 978-4-7599-2020-8


※本稿中の引用・転載につきましては、著者様と発行元様の御許可をいただいております。
謝して御礼申し上げます。


July 25, 2016

神楽坂界隈で川合玉堂を思う


 こんにちは。なかなか梅雨の明けない関東ですが、暑い夏はもうすぐですね。
 今週末は神楽坂のお祭りです。今年は7月27日から二日間がほおずき市、29日からの二日間が阿波踊りの日程で、毘沙門天を中心に一年のうちでも大変賑やかな数日間を迎えます。


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 ちょっと散歩に出かければ、あちこちでお祭りの準備をしており、こちらもウキウキした気分になってきます。


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 さてそんな神楽坂界隈は、かつて矢来町(やらいちょう)といえば鏑木清方 、若宮町(わかみやちょう)といえば川合玉堂のことを指し、他にも新小川町は藤田嗣治誕生の地であったりと、近代日本画の巨匠たちにもゆかりの地であったりします。
 川合玉堂は自然の中に暮らす人々の生活を数多く描き、個人的には晩年の住まいもあった奥多摩の人、というイメージが強いのですが、実は東京・牛込若宮町(現在の新宿区若宮町)に画業70年のおよそ半分以上となる40年余りも暮らしていました。
 周囲は、歌舞伎の中村吉衛門をはじめ由緒ある家が並ぶ屋敷町だったそうですが、この界隈は現在でも、賑わう神楽坂にほど近いところにありながら、大変静かな高級住宅地となっています。
 長流閣と呼ばれた玉堂邸は、東京大空襲で焼失してしまいましたが、とても立派なお屋敷だったようで、《行く春》や《紅白梅》、《彩雨》などの名作もここで描かれたのかと思うと、もし残っていれば...と残念です。

 日本画家ゆかりの神楽坂界隈、この週末はお祭りと散策にお出かけされてはいかがでしょうか。



彩美版®
川合玉堂 《三保富嶽之図》 軸装・額装
販売価格(各) 90,000円+税

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<仕様体裁>
 技 法 彩美版®
 用 紙 特製絹本
 監修及び原画所蔵 玉堂美術館
 証 明 監修者検印入り証紙を貼付
 解 説 小澤萬里子(玉堂美術館館長)
【額装】
 額 縁 赤松材使用特製木製額(国産、ハンドメイド)
 画 寸 天地28.2×左右45.2cm
 額 寸 天地44.1×左右69cm
 重 量 約2.2kg
 付属品 黄布袋、吊紐
【軸装】
 表 装 三段表装(国産、ハンドメイド)
 画 寸 天地28.4×左右45.3cm
 軸 寸 天地117.9×左右64.6cm
 収 納 柾目桐箱、タトウ入り

July 15, 2016

ひとときの造形美


 5月にご紹介したさきたま古墳公園に続き、7月の梅雨の晴れ間に、同じ行田市の「古代蓮の里」を訪れました。

 日曜日の朝8時前に着いたのですが、公園の通常駐車場はいっぱいで、隣の臨時駐車場に案内されました。園内に入ると、極めて静かなのに既にたくさんの人々がカメラを手に集まっています。私自身初めて見る、ピンクの蓮の花が一面に咲き誇る壮観な蓮池でした。蓮の開花時間は午前6時頃からで、7時~9時頃が満開だそうです。いずれの花も大きく美しい彩りで端正な姿を誇示していました。

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 ただ、よく見ると、つぼみの状態もあれば、散りかけている花もあります。大して蓮に関心を持っていなかった私は、古代蓮会館の展示を観覧して初めて蓮の花の命が4日間であると知りました。何日目の花なのかによって、開花の状態が変わっているということでした。自然が作るひとときの美。そして連綿とつながっていく命のサイクル。殊に行田蓮と呼ばれる古代蓮は、原始的な形態をもつ1400~3000年前の蓮と言われ、偶然現代に蘇り命を宿し続けています。

 思いがけず蓮に魅了されたのですが、真にここを訪れた目的は、先ほどの古代蓮会館の展望台に上がることです。そこへ上がるにも整理券が配られ、1時間ほど館内を観て待ちました。ようやくエレベーターに乗り展望台へ到着。人々は一角を見下ろして皆感嘆の声をあげています。昨年ギネスに登録された世界一大きい田んぼアートの2016年版が見ごろを迎えたのです。

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 水田をキャンバスに、様々な種類の稲を絵具として、巨大なドラゴンが目を惹く絵柄が描かれていました。今年30周年を迎える人気ゲームシリーズ「ドラゴンクエスト」がテーマで、「勇者・ドラゴン・スライム」それに「古代蓮」を加えたオリジナルデザインとなっています。色彩はまだこれから濃くなっていくそうですが、前年の写真に比べ、鮮やかな黄色が一層目立ち、カラフルな印象を受けます。

 田植えは一般体験・ボランティア合わせ延べ約1500人が参加し、6月に2日間で行われたとのこと。館内に展示されている、細かい升目に緻密に引かれた作画のラインとおびただしい数のポイントの設計図を見ると頭が痛くなりそうでした。

 地上で見ると色の模様はわかるものの、具象性は認識できません。結構な重労働だったのではと、ますます作業の苦労と疲労に感情移入してしまいました。しかし計算通り絵柄が現れた時の喜びは、作業した皆さんにとって極上のものなのでしょう。

 田んぼアートの見ごろは7月中旬~10月中旬(色彩のピークは7月中旬~8月中旬)です。こちらも限られた命の造形。自然とのコラボレーションによるひとときのアートです。ぼんやりと万物の無常を意識した暑い一日でした。



【古代蓮の里】

住所 埼玉県行田市小針2375番地1
電話 048-559-0770

○公園は年間終日開園・休業日なし
○古代蓮会館
営業時間:通常期 9時~16時30分
     6月下旬~8月上旬 7時~16時30分
休業日: 通常期 月曜日(祝日は営業)、
     祝日の翌日(土・日曜日の場合は営業)
     6月下旬~8月上旬 なし
入場料: 大人(高校生以上) 個人400円(団体320円)
     子供(小・中学生) 個人200円(団体160円)


July 8, 2016

都心の最高峰から坂を上り下りして、トレンディーな街で日本の美を再発見した事。


 東京23区の最高峰(自然の地形で)愛宕山。その高さは約26m。その頂上にある愛宕神社は、徳川家康公の命により防火の神様として祀られたのがはじまりという。愛宕神社へは、大鳥居をくぐった先の激坂「出世の石段」を上る。江戸の昔、三代将軍徳川家光公が愛宕山の源平の梅を見て、「誰か馬に乗ってあの梅を取ってこい!」というむちゃな命令に、曲垣平九郎(まがき・へいくろう)なる家臣が、見事に馬で石段を上り下りして梅を献上したという。今も昔も上司の無理な命令に応えた部下が出世の階段を上るのは、世の常か...。

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愛宕山の「出世の石段(男坂)」は降りる方が怖い。


 この愛宕山を上り越して桜田通りへ出から、更に江戸見坂なる激坂を上る。坂が大きく曲がる所に「菊池寛実記念 智美術館(きくち・かんじつきねん ともびじゅつかん)」がある。こちらは実業家の菊池寛実のご息女で、現代陶芸コレクターの菊池智のコレクションを母体とした現代陶芸の美術館である。展示会場へはガラスの手摺り(ガラス作家・横山尚人制作)が美しい螺旋階段を下りて地下へ行く。現在開催中の展覧会は「秋山 陽 アルケーの海へ」(7月24日まで開催中 ※アルケーとは原初、根源の意味)。

 秋山陽(あきやま・よう)は現代陶芸の最先端を走り続けている作家。その陶芸作品は、土に潜む生命力引き出したような有機的な怪しさと、圧倒的な存在感がある。何か太古の生物の化石ではないかと見まがう作品は、いわゆる陶芸とはまるで思えない。また展示会場の演出もすばらしく、鑑賞者は太古の海底に眠る作品達の間を漂うに巡る。会場の積極的な演出姿勢には、美術館の陶芸作品に向ける熱い想いを感じる。美術館の1階にはフレンチ・レストラン「ヴォワ・ラクテ」(フランス語で天の川の意味)がある。瑞々しい緑の庭を見ながらいただくランチは見た目も美しい。ホタテのポワレのランチをいただく。場所柄かお客さんも上品で、自分一人浮いているか...。

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レストランの庭は緑が鮮やか。


 美術館を出て大倉集古館(2019年まで改修工事中)の脇の坂を上がって六本木一丁目駅方面へ向かう。駅の手前、旧住友麻布別邸の跡地には「泉屋博古館分館(せんおくはくこかん ぶんかん)」が建っている。こちらは住友家第15代当主で、数寄者としても知られている住友吉左衛門友純(ともいと)(号春翠)が蒐集した美術品を中心に所蔵している京都「泉屋博古館」の分館。「泉屋(いずみや)」は江戸時代の住友家の屋号である。現在開催中の、バロン住友の美的生活「数寄者住友春翠--和の美を愉しむ」(8月5日まで開催中)は、住友家の当主が集めた東洋美術の逸品が展示されている。屏風、絵巻、茶道具、陶磁器など住友当主自らの美意識で集めた品々が見られる。
 
 港区のこの辺りは外国の方も多くトレンディースポットが集まる街であるが、日本の美にも目を向けて見たら、さらにこの街を楽しむ事が出来た。



July 1, 2016

名もなき池


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。先日岐阜県関市にある「根道神社」の、とある池まで行ってきました。最近まで特に観光名所では無かったらしいですが、ここ数年インターネットやメディアを通じて少しずつ話題となっている場所です。反響を受けて関市のホームページにも、「名もなき池」として観光案内が掲載されています。



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 さて、何が話題かというと神社入り口にある池が、まるで印象派画家クロード・モネの代表作《睡蓮》に似ていると評判なのです。そのことで「名もなき池」から通称「モネの池」として大変注目されているのです。山間の道を川沿いに走り現地へ着いてみれば、長閑な景色の中に唐突に人だかりが見えて、すぐに場所は確認できました。池を囲むように人の輪が出来ていました。



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 池の透明度は抜群で、山からの湧水により青く透き通っていて、水草や池の底まではっきりと見えます。透明度が高いのは湧水の元となっている山体が流紋岩類で構成されており、水に養分を含まず微生物が育たないことが原因のようです。太陽の光が水面に反射してキラキラ輝いている下を、色鮮やかな鯉たちが、まるで宙に浮いているかの如く、悠々と泳いでいます。



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 池自体はそんなに大きくはないのですが、立ち位置、目線の確度によって、色合いが変わり違う表情を見せてくれます。まさに動くモネの絵が目の前に現れたかのようで、いつまで眺めていても飽きることはありませんでした。



【根道神社(ねみちじんじゃ)】

所在地  岐阜県関市板取下根道上448
アクセス  白谷観音前バス停から徒歩4分






 モネの「睡蓮」連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈された記念碑的な作品であり、平和を象徴する歴史的価値ある大作です。パリのオランジュリー美術館はこの「睡蓮」連作大装飾画のために創設され、≪印象派の殿堂≫と呼ばれています。
 《睡蓮、水のエチュード-雲》は、睡蓮と朝焼けの水面に映える雲の情景が、微妙なニュアンスに富む青、緑、紫、白、赤などが入り交る、モネならではの彩りの世界で描かれた作品です。本作品は第一室に飾られた「雲」の全画面より作品のハイライト部を、フランス国立美術館連合・グランパレ(RMN‐GP)の画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。

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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom


彩美版®
クロード・モネ 《睡蓮、水のエチュード-雲》
限定 200部
価格 128,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
画寸 28.3×91㎝
額寸 38.2×100.8cm
重量 3.3kg
額縁 特製木製デコレーション金箔額
原画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監修・解説 千足 伸行(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)
発行 共同印刷株式会社

June 24, 2016

緑と水が豊かな上田市を訪れて


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 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 すっきりしない天気が続きますが、梅雨の晴れ間に遠く澄み渡る青い空が見え少し強い日差しを浴びると、これから本格的な夏が到来するんだなと感じられるこの頃です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 先日、長野県上田市に寄る機会がありました。上田市は長野県の東部に位置し、北は上信越高原国立公園の菅平高原、南は八ケ岳中信高原国定公園に指定されている美ヶ原高原などの2,000メートル級の緑溢れる山々に囲まれ、里山と清らかな水の流れる川に育まれた自然豊かなところです。豊かな自然環境に加え全国的にも稀な少雨地帯であることを生かし農業・商業・工業が盛んな地域です。

 私が見学させていただいた工房では昔ながらの技法で掛軸や屏風、襖など修復していました。中でも柿渋を使い襖に刷毛で塗り込んで補強・修繕する作業を通し、「こういった仕事に携れて幸せです」と職人方の気持ちがとても心に響きました。

 長野県上田市の名城・上田城は真田信繁(幸村)の父、真田昌幸によって築城され徳川軍を二度にわたり撃退した難攻不落の城としてよく知られています。上田城は盆地の高台に位置する広大な敷地に、見事な石垣で地盤を築き上げています。今は敷地内に城跡と櫓などが残っていますが、石垣の様子から立派な城だったのだろうと伺えます。

 散策をしていると上田城の石垣の周辺は、紫陽花が見ごろを迎えていました。


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さて今回は、当社彩美版®ラインナップの中から紫陽花を題材にした作品をご紹介します。



彩美版®
中村岳陵 《八仙花》
販売価格 120,000円+税


梅雨の合間でしょうか、静かに咲く額紫陽花の横で麦藁とんぼが羽を休めています。静謐な世界を澄んだ色彩で描き、画家の凛とした画風が窺えます。

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<仕様体裁>
原画 華鴒大塚美術館所蔵
解説 谷岡 清(美術評論家)
技法 彩美版®
画寸 天地42.6cm×左右52.6cm
額寸 天地60.7cm×左右70.8cm
重量 約3.6kg
用紙 特製絹本
額縁 特製木製額、アクリル付(国産、ハンドメイド)

※ この作品は軸装もございます。
※ 「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


June 17, 2016

梅雨の晴れ間に~北鎌倉・明月院(紫陽花寺)より


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。

 梅雨。一年のうちほんの数週間、雨が滴り、草木や花が命の盛りを迎える季節です。私は6月の晴れた日、北鎌倉にある『明月院』へアジサイ散策に行って参りました。

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 明月院は通称「アジサイ寺」とも称され、濃い青色に染まるヒメアジサイは「明月院ブルー」と親しまれています。6月の今まさに境内に咲き誇る約3,000株のヒメアジサイは見ごろを迎えており、一目見ようと訪れた多くの参拝客で賑わっていました。

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 アジサイの語源については諸説ありますが、「藍色が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」が変化したものという説が有力で、青い小花が集まって咲くことからこの名が付けられたとされています。また、花色は開花から日を経るにつれ徐々に変化する性質から「七変化」や「八仙花」とも呼ばれています。

 皆さまのすぐそばにも紫陽花は咲いています。鮮やかな色彩にしっとりと目を向け、美しく情緒溢れる梅雨の恵みを楽しんでみてはいかがでしょうか。





■福源山明月院のご紹介

所在地  〒247-0062 神奈川県鎌倉市山ノ内189
拝観時間 9:00~16:00(6月のみ8:30~17:00まで)
拝観料  300円 ※但し、6月は高校生以上500円、小中学生:300円
無休  
アクセス 北鎌倉駅より徒歩約9分、鎌倉駅より徒歩約29分、

June 10, 2016

小説家と挿絵画家

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泉鏡花「草迷宮」の舞台、三浦半島の長者ヶ崎と秋谷の海岸

 歌集に用いられた華やかな料紙や《源氏物語絵巻》などの美しい絵巻に見るように、装幀や挿絵への強い拘りは日本文学の古くからの伝統であろう。出版文化が花開いた江戸期においては浮世絵師が挿画や装幀を手掛け、文学と絵画は極めて緊密な繋がりを保っていた。
 明治に入ってもこの伝統は受け継がれ、当初は浮世絵師の流れを汲む日本画家がこうした役割を担っていた。明治中期に黒田清輝(くろだせいき1866~1924)らの活躍で西洋画の人気が高まると、洋画家が小説や雑誌、新聞等の出版物の装幀を手掛ける例が増加してきた。小説家のなかには装幀に拘る者も少なくなかったから、この時代の小説の装幀は今では考えられないほど贅をこらし華やかに装飾されたものが多い。例えば明治28年(1895年)に創刊された博文館の『文芸倶楽部』は大衆向け文芸雑誌であったが、毎号木版や石版(リトグラフ)による美しい口絵が添えられていた。

 博文館編輯局の一員として『文芸倶楽部』誌上に作品を発表し、一躍新進作家として広く知られるようになったのが、泉鏡花(いずみきょうか1873~1939)である。
 泉鏡花は近世以来、独特の芸術文化が栄えた金沢の出身で、父親が加賀象嵌(ぞうがん)の彫金師、母親が加賀藩お抱えの能楽師の家柄という芸術的血筋を色濃く受け継いだ。尾崎紅葉(おざきこうよう1868~1903)に憧れ弟子入りし、小説家としての道を歩み始めた。明治28年(1895年)から明治30年(1897)にかけて、紅葉を中心とした文学者集団である硯友社(けんゆうしゃ)と深いつながりのあった博文館(当社の前身は博文館印刷工場)の書籍編輯に携わるとともに、同年発刊された同社の文芸雑誌『文芸倶楽部』誌上に作品を発表、「外科室」が評論家に絶賛され一躍新進作家として注目を集めることになった。

 この『文芸倶楽部』創刊号の口絵は浮世絵師の流れを汲む日本画の水野年方(みずのとしかた1866~1908)が描いたものであるが、年方の弟子としてその挿絵の仕事を継承したのが、後に美人画の大家として画壇に重きをなした鏑木清方(かぶらききよかた1878~1972)である。清方は東京神田の生まれ、父條野採菊(じょうのさいぎく1832~1902)は戯作者でジャーナリストを兼ね、東京日日新聞(現・毎日新聞)創立者の一人。鏑木は母方の姓。清方は、父の勧めで13歳で年方に入門したが、当時年方は、父採菊が創刊した『やまと新聞』の挿絵を手掛けていた。清方は入門数年後には、師の仕事を引き継ぎ、新聞、雑誌等の挿絵画家として活動を始めた。特に『文芸倶楽部』には明治36年(1903年)以後400点近い作品を提供している。このように鏡花と清方は共に『文芸倶楽部』誌を舞台に活躍し、後に終生にわたる深い絆で結ばれるが、この時はすれ違いで出会っていない。
 博文館を辞した鏡花は、明治33年(1900年)1月に春陽堂に入社する。この両社はライバル関係にあった。春陽堂が当時出版していた文芸雑誌『新小説』の編輯局に所属し2月に発行された同誌に発表したのが代表作のひとつ「高野聖(こうやひじり)」であり、この作品で一層評価を高め人気作家の仲間入りをした。
 二人が出会うのはその翌年8月のことである。切っ掛けは、春陽堂から出版された小説「三枚続」の挿絵を清方が依頼されたことだが、安田財閥の御曹司、安田善之助邸で二人は初めて面会、その翌月には鏡花が書き上げたばかりの原稿を持参し清方宅を訪ねている。意気投合した二人は生涯の友となった。爾来、鏡花文学には清方の口絵・挿絵が定番となり数々の傑作が世に送り出されることになる。
 出会う以前から鏡花文学に傾倒していた清方は、口絵・挿絵としてではなく、独立した自己の作品テーマとしても、鏡花文学を取り上げた。昭和2年(1927年)の作品《註文帳》である。鏡花の小説は、二人が出会う少し前の明治34年(1901年)4月に『新小説』に発表された作品であるが、清方は門下を集めた「郷土展」に墨画淡彩、全13図の作品を発表している。

 清方に遅れること6年後の明治40年(1907年)に初めて鏡花と出会い、以後鏡花文学には無くてはならない存在となった装幀者が小村雪岱(こむらせったい1887~1940)である。雪岱は川越出身、東京美術学校日本画科を卒業後、美術雑誌『國華(こっか)』の古画複製図版(当時は木版刷)の制作に携わっていた。雪岱自身が『鏡花先生のこと』という文章に書き記しているが、当時まだ21歳の若者で、鏡花文学の愛読者であった雪岱が、医学博士久保猪之吉(くぼいのきち1874~1939/京都帝大福岡医科大教授)に依頼された浮世絵師「豊国の描いた日本で最初に鼻茸を手術した人の肖像」の模写の仕事のために久保の宿泊していた宿屋に通っていたところ、たまたま久保夫人を訪ねてきた鏡花夫妻と出会ったのであった。「雪岱」の画号は鏡花が名づけてくれたものである。
 雪岱が初めて手掛けたのは、大正3年(1914年)に刊行された『日本橋』(千章館)である。雪岱の回想によると、「中々に註文の難しい方で、大体濃い色はお嫌いで、茶とか鼠の色は使え」なかった。また鏡花は、「自己というものを常にしっかり持った名人肌の芸術家」であり、世間常識では変人と言っていいほど神経質だった反面、「大変愛嬌のあった方で、その温かさが人間鏡花として掬(く)めども尽きぬ滋味を持っておられた」という。(引用部分は『鏡花先生のこと』より)

 人間的魅力に溢れた鏡花を慕い、多くの芸術家や文化人が鏡花のもとに集った。明治期の「鏡花会」や昭和3年(1928年)から始まった「九九九会(くうくうくうかい)」がそうした会の代表である。
 鏡花と言えば、幽霊や化物など超自然的存在を描いた幻想文学で知られる通り、怪奇、怪異譚の愛好者であったが、知人、友人を集めて、怪談を語る会合をしばしば主催していた。明治期には、欧米で流行した「スピリチュアリズム(心霊主義)」の影響もあり、江戸時代に流行ったいわゆる「百物語」が復活し大流行した。明治42年(1909年)に刊行された『怪談会』(柏舎書楼)は、前年に向島有馬温泉で開催された鏡花主催の「化物会」の内容を書籍化したものと推定されているが、鏡花が序文を記し、鏡花に加えて清方夫妻がそれぞれ怪談を寄稿している。
 この『怪談会』にはもう一組の著名な画家夫妻が寄稿しているのだが、それは洋画家の岡田三郎助(おかださぶろうすけ1869~1939)とその妻で小説家、劇作家の八千代(1883~1962)である。岡田もまた、鏡花と終生にわたる深い絆を持った画家であった。最初の出会いがいかなるものかは浅学にして不明であるが、明治41年(1908年)に春陽堂から刊行された『草迷宮』の口絵は岡田によるものであり、確かではないが二人の共作としては最も早い時期のものではないだろうか。
 大正14年(1925年)から刊行開始された『鏡花全集』(春陽堂刊)は、鏡花のたっての希望で岡田三郎助が装幀を手掛けた。美しいタイポグラフィは雪岱によるものである。編輯者には小山内薫(岡田八千代の実兄)、谷崎潤一郎、里見弴、水上瀧太郎、久保田万太郎、芥川龍之介ら錚々たるメンバーが名を連ねている。

 このように長く深い交流を続けた鏡花ら四人であったが、昭和14年(1939年)、岡田と鏡花が相次いでこの世を去り、雪岱も翌年、53歳の若さで亡くなってしまった。一人残された清方は、既に老境にあった昭和26年(1951年)、若き日の鏡花との出会いを懐かしみ《小説家と挿絵画家》という作品を描いている。




彩美版®
鏑木清方 《 朝涼(あさすず) 》
販売価格 180,000円+税


 鏑木清方は、大正12年当時帝展審査員として画壇に重きをなしていましたが、東京・本郷龍岡町の自宅で関東大震災に遭遇しました。この《朝涼》は翌々年(大正14年)、震災後初めて開催された第6回帝展に発表され、清方の画業の転機となる重要な作品といわれています。

 金沢八景の別荘でひと夏を過ごしたある日の早朝の空に、残月が淡くかかるのを見つけ、長女をモデルとして描いたものです。清らかな女性のすらりとした立ち姿、たおやかな手つき、背景に蓮の花を配す造形は、安らかに心を落ち着かせる風情を漂わせます。


朝涼


<仕様体裁>

原画 鎌倉市鏑木清方記念美術館 所蔵
限定 100部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 特製絹本
装丁 三段表装
材料 天地 白茶無地
   中廻薄茶綿ムラ経
   一文字・風帯 牙地唐花唐草文金襴
   軸先 朱塗頭切
   箱  柾目桐箱、タトウ入り
画寸 天地100.0×左右38.5cm
軸寸 天地169.0×左右57.0cm


June 3, 2016

新作・東山魁夷《緑響く》のご案内


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただきまことにありがとうございます。

 弊社は、東山魁夷 マスターピース コレクション™として東山画伯の代表作《緑響く》を制作し、この度発売いたしました。本コレクションは、作品にアクリルガラスを直接圧着することで画面に透明感と奥行きを与える、新感覚の美術工芸絵画です。

 《緑響く》は長野県茅野市八ヶ岳中信高原国定公園にある御射鹿池を題材に描かれました。魁夷の心の祈りを表すかのように一頭の白馬が静かに歩みを進める森閑とした幻想的な光景と、それを鏡のように映す神秘的な水面の美。オーケストラとピアノの旋律が木霊する安らぎの絵画は、魁夷芸術の頂点『唐招提寺壁画』完成の2年後に描かれた円熟期の作品です。画家は自ら「もし長い年月を共に歩み、喜びと悲しみを共にする好伴侶に巡り合えたとすれば、その仕合せは計り知れないものがあるだろう。」と語り、「その大きな喜びの一つはモーツァルトの音楽との邂逅」にあったと述べています。

 本作は魁夷と言えば白馬、白馬といえば魁夷と言われるほどに永年愛され続け、近年某社のコマーシャルで更に人気に火がついた、これぞ正しくファン待望の作品です。今回の複製にあたっては、原画の繊細な色合いを巧みに表現する最新の技法「彩美版®プレミアム」を採用することで、特に森と湖の深緑の美しさを引き出し、深い森の奥行き感、透き通った水面をより魅力的に再現することを可能としました。

 画面は空間を格調高く引き立たせ、和洋を問わず空間に映える15号ワイドサイズで制作(原画の約70%大)、モダンな国産木製額で装丁。額装はハンドメイドの浮き出し加工、枠は高級シルバー仕上げ、前面を梨地メタリックグレーに仕上げ魁夷の世界観を十全に表現しています。東山家の正式な監修と許諾を得て、エディションは500部限定(額裏の奥付に承認印とシリアル番号入り)で、皆さまのご注文をお待ちしています。

 魁夷が愛した奥蓼科の神秘的な風景を、皆さまも是非お手元でお楽しみ下さい。



東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《緑響く》
販売価格 500,000円+税


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<仕様体裁>
原画 長野県信濃美術館 東山魁夷館所蔵
監修 東山すみ
解説 松本猛(美術評論家、前・長野県信濃美術館 東山魁夷館館長)
技法 彩美版®プレミアム
限定 500部
画寸 47.0×62.5㎝
額寸 62.5×83.0㎝
額縁 特注木製額ハンドメイド浮き出し加工
重量 約5.3㎏

■当社ニュースリリース(2016年5月25日付)へのリンク
「東山魁夷 マスターピース コレクション™第3弾 《 緑響く 》を限定500部で発売」



※本作品についてのお問合わせは、以下までお願いいたします。
共同印刷株式会社 アート&カルチャー部
電話 03-3817-2290(平日・月~金の10:00から17:00まで)
FAX 03-3817-2288

May 27, 2016

上野の春、意を決して大型展覧会へ足を運ぶ


このブログをご覧いただいている皆様も足を運ばれたでしょうか、先日会期は終了しましたが話題となった東京都美術館「生誕300年記念若冲展」へ行って参りました。

本展は東京では初めて《釈迦三尊像》と《動植綵絵》が一堂に会した注目の展覧会とあって大変な来場者数でしたが、私もお目当ての若冲作品を一目見ようと行列に参加、会場の熱気を存分に味わって参りました。

経験したことのないほどの長蛇の列にくじけそうになりながらもいよいよ入場、するとすぐさま美術品のもつ強いオーラに引き寄せられます。
じっくりと鑑賞したいところ後ろ髪を引かれながらも、今回のお目当てである1799年若冲の晩年に描かれた《百犬図》、ワンコ達のところへ直行。
日本画の有名な作品の中でも犬が描かれたものは多くありますが、こちらはなんと59匹もの犬が描かれているため見逃すわけにはいきません。犬たちがコロコロとじゃれ合っている様子の連続、犬好きにはたまらない作品です。
描かれた犬の顔は、まるで猿か猫のような、また違う生き物では?と思わせる不思議な顔つきですが、魅力は筋肉や関節、威嚇、甘えなどの行動でしょうか、確かに犬、嘘がないのです。
そして、この作品の何匹かは後ろ姿で描かれています。その可愛らしさについては犬好きな方なら共感して頂けるでしょう。
後姿が絵になるのは犬か猫くらいでは?と思ったりもします。

犬についてはさておき、これだけの人を惹きつけるパワーの一つ、色彩については他の作品に比べると落ち着いた色味ですが毛の一本ごとが緻密に描写され、白の濃淡だけをとっても驚くほどの見ごたえがありました。
若冲の作品では絵絹の裏面に施した裏彩色など効果的に技法が盛り込まれ、表情が様々描き分けられていると言われています。
遠目にもはっきりとわかる鮮やかな色の濃度やぽってりとした厚みにはやはり釘付けになってしまい、単純に色というには画家に申し訳ない気持ちにすらなります。
実は当社の「彩美版®」についても同じように、複製画が出来上がるまでにはこだわりがあります。
作品に込められた表現の意図を解釈したうえで、本金箔や本金泥を使用し、膠の質感までも追及するために、何度も校正をかさねて出来上がります。
さらに作品を活かすための額装も試作を繰り返し、完成されます。
このようにひとつひとつに妥協なくこだわり、仕上げられたものにはやはりそのものなりのオーラが宿ると思っております。
絶妙なバランスであったり、ディテールのこだわりの積み重ねが醸しだす雰囲気であり、さらに時を経ていればその分の佇まいがあります。
当社の「彩美版®」でも魅力的な佇まいをもっと感じていただけるものにし皆様にお届けしたい!日本画の画材である岩絵の具の物質的な特徴、長所も短所をもっと知りたい!
と身が引き締まった思いがした展覧会となりました。
この時期の展覧会は足が遠のいておりましたが意を決して足を運んだ甲斐がありました。



彩美版® 軸装
伊東若冲 《日出鳳凰図》

販売価格 110,000円+税


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<仕様体裁>

原画 米国・ボストン美術館所蔵
解説 河野元昭(美術史家、東京大学名誉教授)
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 三段表装(本表装)
画寸 94.0×33.0㎝
軸寸 183.0×52.5㎝
箱  柾目桐箱、タトウ付
※ご希望により額装のご注文も承ります。
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




そして、日本画で使用される岩絵具の原料、鉱石また鹿膠などに思いを巡らし国立科学博物館の鉱物コーナー、動物剥製コーナーへも立ち寄りました。
地球館の剥製コーナーは年に一度は足を運ぶ私のパワースポットです。
都会にいながらここでは生き物にしかない神秘や大きさが感じらるのでお勧めです!
またこちらのミュージアムショップにて、当社共同印刷のご近所に本社を構えるカロラータさんの、生物が本来持つ真の美しさを正しく伝えるリアルさにこだわり抜かれたぬいぐるみ、ホッキョククマを購入。動物の個性がみごとにデザインされたぬいぐるみに感服です。


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国立科学博物館の動物剥製コーナー


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カロラータさんのリアルなぬいぐるみ


■国立科学博物館 常設展
http://www.kahaku.go.jp/
※開館情報はHPをご覧ください。

May 20, 2016

週末の横浜散歩のススメ


 こんにちは。
 お天気の良い週末、横浜美術館で開催中の「複製技術と美術家たち―ピカソからウォーホールまで」展に行ってまいりました。

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 本展は、写真印刷や映像などの「複製技術」が普及し誰もが複製を通じて美術を楽しむことができる時代に、20世紀の欧米を中心とする美術家たちがどのような芸術のビジョンを持って作品を作っていたか、を検証する展覧会です。テーマとしては少々難解ですが、難しいことはさておき芸術家たちが複製技術をその目や手を通じてどのような形で解釈し、表現したか、さまざまな形を見ることができて興味深いものがあります。

 ピカソやマティスからウォーホールまで時代を追って、相当な数の作品が展示されていますが、中でも印刷物でも良く目にするマティスの「ジャズ」の色彩の美しさが個人的にはとても印象に残りました。

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アンリ・マティス《サーカス》(詩画集『ジャズ』より)
1947年/シルクスクリーン、紙(書籍)/42.5×65.0cm(用紙)/富士ゼロックス版画コレクション



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パウル・クレー《ホフマン的な場面》
1921年/リトグラフ、紙/31.7×22.8cm/富士ゼロックス版画コレクション



 同時開催の「しなやかさとたくましさ―横浜美術館コレクションに見る女性の眼差し 」
 「アメリカ写真の展開:1860年代-1940年代」。こちらも上村松園、小倉遊亀、片岡球子など近代日本画家から、コムデギャルソンの川久保玲など現代のアーティストまで網羅し、充実した内容で見応えのあるものになっていますし、写真展もその時代のにおいが感じられる写真が数多く展示されています。

 横浜美術館は館内が広く、展示作品も企画展~コレクション展まで観るとかなりのボリュームになるので、ゆっくり時間を取っていかれるのが良いかと思います。鑑賞が終わったら近くのカフェでのんびりとお茶をしたり、山下公園や中華街までお散歩したりするのも良いかもしれませんね!

 久しぶりに行った横浜・みなとみらい界隈は、都内にはない開放的な空気感であふれ、とても気持ちの良い時間を過ごした一日でした。



【展覧会情報】
富士ゼロックス版画コレクション×横浜美術館
複製技術と美術家たち-ピカソからウォーホルまで

会場 横浜美術館
   横浜市西区みなとみらい3-4-1
会期 2016年4月23日(土)~6月5日(日)
開館 10:00~18:00(入館は17:30まで)
※5月27日(金)は20:30まで開館(入館は20:00まで)
休館 木曜日
主催 横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
協賛 富士ゼロックス株式会社
後援 横浜市
協力 横浜高速鉄道株式会社、横浜ケーブルビジョン、
   FMヨコハマ、首都高速道路株式会社
企画協力 横田茂ギャラリー

May 13, 2016

さきたま古代探検


 埼玉県の誕生は、明治4年11月14日、埼玉県設置の大政官布告が出された時で、当初の管轄区域の中で最も広い郡が埼玉郡でそれが県名となりました。埼玉郡は当初は前玉郡(さきたまぐん)という表示もされ、前玉神社もさきたま古墳群そばにあり、埼玉(さきたま)の地こそ埼玉郡の中心地と考えられ、ここが県名発祥の地とされました。

 その場所、「さきたま古墳公園」に、GW連休の好天気の中初めて訪れました。行田市街地から南東約1㎞にある広さ約37haの地に、5世紀後半から7世紀初めまでに作られた9基の大型古墳が集まっています。駐車場に着く直前、草の生い茂ったなだらかな山が見え、胸がわくわくしました。それは二子山古墳というこの公園内で最も面積の大きな前方後円墳です。通常は周囲の堀に水があるのかもしれませんが、現在長期整備中のようで、水は見当たりませんでした。

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◆丸墓山古墳
 
 園内には芝生広場があり、5月4日に行われる火祭りのため用意されたわらの古代住居が建っていました。当日神話に模し、ここに火が放たれ燃やされるそうです。この広場からは四方に古墳が見渡せますが、目立つのは日本一の円墳と言われる丸墓山古墳です。高さ約19mで、階段で登頂できます。頂上からの眺めはなかなかのもので、ここからあの「のぼうの城」忍城(現在は行田市郷土博物館)も見渡せます。実際、1590年豊臣秀吉にこの城を水攻めで落とすよう命を受けた石田三成は、この丸墓山古墳頂上に陣を張ったそうです。(水攻めで沈まなかったこの城は「浮き城」と呼ばれました。)

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◆笑う埴輪

 古墳すべてを見て回りましたが結構な運動になります。園内には埼玉県立さきたま史跡博物館があり、古墳から発掘された埴輪や副葬品が展示されています。展示物の中でも稲荷山古墳から出土した「金錯銘鉄剣」は剣身の両面に115文字の銘文が記され歴史的価値の高い発見として話題となり、「画文帯環状乳神獣鏡」などとともに国宝となっています。それにしても、豊富で多様な埴輪に感じる古代人の造形センスは、あらためて見てもユーモラスで愛らしく、遠い昔の創作という気がしません。

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◆八幡山古墳石室

 この地域には古墳公園以外にもいくつか古墳はあり、それぞれ貴重な価値のあるもので、その中の1基に立ち寄ってみました。さきたま古墳群の北東方向、八幡山公園の一角にある「八幡山古墳」です。周辺は工場・住宅地でこんなところに古墳?とそれらしい場所が見つけられず迷ったのですが、さり気ない案内看板を見つけ、何とか辿り着きました。盛り上がった草地の上に、石を積んだ石室が露出し、奈良の石舞台に似ていることから「関東の石舞台」と呼ばれています。確かに独特の存在感があります。

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◆八幡山古墳石室内部

 入口には扉が設置されていますが、開いていて内部に入れます。中は昼でも暗くて、あまり居心地がよくありません。羨道、前室、中室、奥室と続きますが最後の奥室は真っ暗ということもあり、入る勇気はありませんでした。なお、本来古墳内にあるはずの石室が露出しているのは、昭和初期に沼の干拓に墳丘盛土が使われてしまったためで、石室がむき出しになった時点で事の重要性に気づいた当時の村長が保存へと動き埼玉県指定史跡となりました。古墳の規模は推定直径80m・高さ9.5mの円墳で石室全長16.7m。ちなみに、ここを築いたのは聖徳太子側近の舎人だったと考えられているそうです。

 遥かな古代のロマンに浸った一日でした。帰宅してから子供の高校日本史の教科書を見ると、さきほど史跡博物館で見た「金錯銘鉄剣」がしっかり掲載され、なるほどと展示物の重要性をあらためて認識しました。



■埼玉県立さきたま史跡の博物館
埼玉県行田市埼玉4834   TEL 048-559-1111(代表)
開館時間 9時~16時30分(入館受付は16時まで)
     7月1日~8月31日 9時~17時(入館受付は16時30分まで)
休館日 月曜日 (祝日、振替休日、埼玉県民の日(11月14日)を除く)
    12月29日~1月3日
観覧料 一般 個人200円 団体120円
    高校生・学生 個人100円 団体60円
    中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方(付き添い1名含む) 無料

■八幡山古墳石室
埼玉県行田市藤原町1-27-2
公開日 土曜日、日曜日および祝日(年末年始を除く)
公開時間 10時~16時

April 28, 2016

日本民藝館を訪れた事及び、大きな屋敷で靴を持って歩き回った事。


 一度は訪れてみたいと思いながら、なかなか行くことのない場所が誰にでも一つ二つはあるのではないだろうか。私にとっても「東京タワー」と「日本民藝館」は正しくそれであった。しかしブログの掲載が差し迫って来た事もあり、この機に「日本民藝館」の方を訪れてみる事にした。

 東京の若者の街、渋谷から井の頭線に乗り2番目の駅の駒場東大前で降りると、ほど近いところに「日本民藝館」はある。民衆の用いる日用品の美に着目した柳宗悦(やなぎむねよし:1889〜1961年)は「民藝」という新しい美の概念の普及と、「美の生活化」を目指す活動をし、柳氏が収集した古今東西の工芸品を展示しているのがこの民藝館である。

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瓦と白い壁が美しい、日本民藝館の入り口


 この民藝館の本館の建物は柳氏自身が設計を手がけた和風意匠を基調とした特徴的な建物で、登録有形文化財にもなっている。玄関の引き戸を開け中に入ると、上がりかまちで靴を脱ぎスリッパに履き替えてチケットを買う。玄関を入った正面には2階へと続く大きな木製の階段が存在感を放っている。展示室は1階、2階にある複数の部屋に分かれている。木のぬくもりと白い壁のコントラストが美しく、階段の吹き抜けを中心に開放感のある館内はとても居心地が良い。この時点で訪問して良かったと思ってしまう。

 この度の展示は、創設80周年特別展として日本民藝館所蔵の「朝鮮工芸の美」(6月12日の日曜日まで開催)と題して、国内屈指の質と量を誇るという民藝館所蔵の朝鮮時代の工芸品(陶磁器、木工品、石仏、掛軸など様々な品)を展示している。朝鮮時代の工芸といえば白磁と漆塗木工品ぐらいのイメージしかない浅薄な私であったが、展示物の幅の広さに驚いた次第である。

 白磁に対して、ゴロッと黒い蝋石製面取薬煎(19世紀末)。草虫図(19世紀)の掛軸に描かれているのは、ハチ、チョウ、セミ、カエルなどの生き物達で、西洋のモチーフとは違った、日本と共通する小さきものに対する慈悲を感じる。変わったところでは、木製の枕(鼓のように両端が広く平らで、真中がくびれている)は、頭をのせる面が小さく(直径10cmぐらい)これでは、寝返りをうったら床に頭をぶつけてしまう。「たわし」の形も変わっており、「こけし」の様に縦に長い。朝鮮と日本の視点の違いと共通点を楽しめる展覧会であった。

 民藝館を出たすぐ近くには、旧前田家本邸洋館のある駒場公園がある。緑の樹々が多いこの都会のオアシスには日本近代文学館もあり、館内の「BUNDAN COFFEE&BEER」で食事が出来る。BUNDANの名に相応しく店内には天井にとどく書棚が並び、約2万冊の書籍があるという。こちらではメニューも作家にちなんでおり、コーヒーの品書きは「芥川」や「寺田寅彦の牛乳コーヒー」など、食事は「ハードボイルド・ワンダーランド(村上春樹)の朝食セット」や「シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイ」と遊び心が溢れている。僕は「シャーロック〜パイ」にしたよワトスン君といった体で昼食をいただく事に。

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シャーロッキアンではないが、シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイを注文

 公園の中心の建物「旧前田家本邸洋館」は、加賀百万石の第16代当主であった前田利為(まえだとしなり)侯爵の本邸として昭和4年に建てられた。建物はイギリスのチューダー様式で、地下1階、地上2階、延床面積約2,930平方メートルという豪邸である。隣には連絡通路で行き来できる和館もある。入場無料との事なので洋館を見学する。まずは玄関(といっても私のアパートの延床面積の約半分ぐらいある)で靴を脱いでスリッパに履き替え(今日はやたらに靴を脱ぐ日である。この後、和館を訪れた際も靴を脱ぐのであった。)、靴は設置してあるビニール袋に入れて持ち歩く。

 この館とにかく部屋数が多い。食堂が大小2部屋、サロン、書斎、家族の各部屋の他に、女中室が4部屋と女中溜、小使室、従者室、執事室が1部屋ずつある。その他の部屋も合わせると30以上にもなる。静かな館内を散策していると、どこからか「ネコふんじゃった」のぎこちなさのあるピアノのメロディーが聞こえてくる。館内をぐるぐる回っていると方向感覚も危うくなる。それにしても、人のほとんど居ない大きなお屋敷の中を部屋から部屋へと靴を持って歩き回っている自分の姿に、どろぼうになった様な気持ちになるのであった。


April 22, 2016

いざ、怪しい館へ


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。

 さて本日取り上げるのは、伊豆半島の城ケ崎近く、大室山ふもとにある「怪しい少年少女博物館」です。一風変わったネーミングに惹きつけられ、以前より通りすぎる度に気にはなっていたのですが、先日ついに立ち寄ってみました。名前からはどのようなものを展示しているのか想像がつきません。博物館前にペンギンの体に人の顔がついた奇怪な巨像が立っているので、否が応でも目立っているのです。建屋は昔の学校風で、入る前から怪しげな雰囲気を醸しだしていて期待も高まります。

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 いよいよ入場してみれば、展示物の多さに圧倒されます。確かに怪しすぎて思わずニヤリとしてしまいます。まず目に入ってくるのはショーケースに並ぶ昭和ファッションをまとったマネキンの数々。その中に混ざって昔懐かしいおもちゃ、フィギュア、生活雑貨が所狭しに展示されています。例えば「野球板第1号、なめ猫、月光仮面、アイドルフィギュア、紙芝居、アイスキャンデー販売の自転車、ブラウン管テレビ、鯉のぼり、日本人形などなどなどなどなど」といったようなものです。

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 なにが何だか分からないと思いますが、特定のテーマや時代背景に沿ったかたちで展示されているのではありません。とにかく色々な物が多少のジャンル分けがあるだけで、良い意味で適当に陳列されています。あえて言えば「驚安の殿堂ドンキホーテ」をイメージしていただければ分かりやすい?かもしれません。その数の多さに、もはや「怪しい」を超え、摩訶不思議な空間に仕上がっています。

 2階にも展示スペースがあり、ファミコンをプレイできる場所の横にある螺旋階段を上ります。2階は、一応オカルト系のジャンルでまとめられているようで、なんと藁人形の打ち付けスポットがあります。来場者の思いが込められた藁人形が多数打ち付けられていました。もちろん、「藁人形と釘」はこちらの怪しい博物館で購入可能です。

 怪しい「少年少女博物館」は昭和の文化、特にサブカルチャー満載の博物館でした。私でも十分懐かしい感じがして相当楽しめたのですが、団塊の世代あたりの方たちがご覧になれば、胸が熱くなること間違いなしだと思います。かなりディープなスポットでしたが、私にはこの博物館の近くにもう一箇所気になる施設がありました。「まぼろし博覧会」。受付の方に訊ねてみるとやはり姉妹館のようで、さらにディープな感じに仕上がっているそうです。次回周辺を訪れた時は、是非立ち寄ってみたいと思います。



【怪しい「少年少女博物館」の情報】
所在地  静岡県伊東市富戸街道下1029-64
電 話  0557-51-8800
休館日  年中無休
開館時間 9:00~17:00まで (入館は16:30まで)
入館料金 大人1,000円 小・中学生600円
アクセス 伊豆急行「城ケ崎海岸駅」より徒歩10分


April 15, 2016

【新作】 クロード・モネ 《ヴェトゥイユのモネの庭》


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
 陽気が暖かくなってきましたね。先日は小雨がぱらついたり空模様はスッキリしませんでしたが、桜の満開の時期を迎え各方面賑わっているのではないでしょうか。小石川界隈はハナミズキが咲きだし、桜の花ばなの間からは青々とした葉が垣間見え、初夏の気配が感じられます。

 さて本日ご紹介する彩美版®は、今年没後90年を迎えたクロード・モネの名作「ヴェトゥイユのモネの庭」です。
 モネ一家が住む家を背景に青く澄んだ空の下、道を挟んでセーヌ川へと下る斜面に設けられた庭には、佇む子供たちの背丈をこえた向日葵が陽の光を浴び咲き誇っています。眩しい日差しが全て輝かせ、光の色彩を愛する画家の世界を感じられます。

 制作にあたり、三菱一号館美術館の高橋明也館長に、監修と解説を頂戴いたしました。





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彩美版®
クロード・モネ 《ヴェトゥイユのモネの庭》

限定 200部
価格 115,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り 
画寸 52.2×42㎝
額寸 65.4×55.2cm
重量 2.9kg
額縁 木製デコレーション金箔額
原画 ワシントン・ナショナル・ギャラリー(National Gallery of Art, Washington D.C.)所蔵
監修・解説 高橋明也(三菱一号館美術館館長)
発行 共同印刷株式会社




 こちらもモネの代表作として世界的に名高い傑作です。
 モネの「睡蓮」連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈された記念碑的な作品であり、平和を象徴する歴史的価値ある大作です。収蔵先のオランジュリー美術館は「睡蓮」連作大装飾画のために創設された≪印象派の殿堂≫と呼ばれています。
 《睡蓮、水のエチュード-雲》は、睡蓮と朝焼けの水面に映える雲の情景が、微妙なニュアンスに富む青、緑、紫、白、赤などが入り交る、モネならではの彩りの世界で描かれた作品です。本作品は第一室に飾られた「雲」の全画面より作品のハイライト部を、フランス国立美術館連合・グランパレ(RMN‐GP)の画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。

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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom


彩美版®
クロード・モネ 《睡蓮、水のエチュード-雲》
限定 200部
価格 128,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
画寸 28.3×91㎝
額寸 38.2×100.8cm
重量 3.3kg
額縁 特製木製デコレーション金箔額
原画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監修・解説 千足 伸行(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)
発行 共同印刷株式会社




【今日の谷根千】

◇文京区立森鴎外記念館
特別展
「私がわたしであること ―森家の女性たち 喜美子、志げ、茉莉、杏奴―」

会期:2016年4月9日(土)~6月26日(日)
※会期中の休館日:5月24日(火)
開館時間:10時~18時(最終入館17時半)
※6月の金曜日は20時まで開館(最終入館19時半)
観覧料:一般500円(20名以上の団体:400円)
※中学生以下、障がい者手帳ご提示の方と同伴者1名まで無料

文京区立森鴎外記念館
東京都文京区千駄木1-23-4
電話 03-3824-5511


◇根津神社
文京つつじ祭り
第47回 平成28年4月9日(土)~5月5日(木)
境内にある約2,000坪のつつじ苑には約100種3,000株のツツジが咲き誇り、甘酒茶屋、植木市、露店等もたくさん並びます。


根津神社
〒113-0031東京都文京区根津1-28-9
tel 03-3822-0753(9:00~17:00)

April 8, 2016

満開の桜と四季の花々~小石川植物園より~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。
 春麗らかに、弊社近隣の桜並木(播磨坂)では今年も「文京区さくらまつり」が開催され、多くの人で賑わっています。実は、文京区小石川の弊社近隣にはもう一つ大きな自然公園があることはご存知でしょうか。今回は『小石川植物園』をご紹介いたします。

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 通称『小石川植物園』と呼ばれ親しまれているこの施設は、正式名称を『東京大学大学院理学系研究科付属植物園』、すなわち東京大学が植物学に関する様々な研究・教育を行っている教育学習施設です。この植物園は日本で最も古い植物園であるだけでなく、世界でも有数の歴史を持つ植物園のひとつです。

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 面積は161,588㎡(48,880坪)で、台地、傾斜地、低地、泉水地などの地形を利用して様々な植物が配置されており、植物標本は約70万点、また植物学関連図書は約2万冊あり、内外から多くの植物研究者に活用されています。

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 6年ほど前(2010年7月)、"世界最大の花"を咲かせるというサトイモ科の植物「ショクダイオオコンニャク」が開花したことも話題となりました。直径約1メートル×高さ1.5メートルのその花は子供が両手で抱えきれないほどの大きさで、インドネシア・スマトラ島で絶滅危惧種に指定されているほど貴重な植物。1993年に種をまいて17年目に開花するという素晴らしい成果が印象に残っています。

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 長い歴史を物語る数多くの由緒ある植物たち。美しい四季の移ろいを感じ取ることができる小石川植物園へぜひ足をお運びください。



【小石川植物園

約320年前の貞享元年(1684年)に徳川幕府が設けた「小石川御薬園(こいしかわおやくえん)」がこの植物園の遠い前身で、明治10年、東京大学が設立された直後に付属植物園となり一般にも公開されてきました。

住 所  東京都文京区白山3丁目7番1号
開 園  10:30~16:30(入園は16:00まで)
料 金   一般:400円、小中学生:130円、その他、団体割引有。
休 園  年末年始、月曜日(月曜が祝日の場合はその翌日)   
交 通  都営三田線「白山駅」より徒歩約7分
     東京メトロ南北線「本駒込駅」より徒歩約13分
     東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」より徒歩約15分


April 1, 2016

私たちはローリングストーン

 
 春は門出の季節、学校を巣立った全国各地の若者たちが新社会人として新たな人生を歩みはじめました。私たちも初々しい大勢の若人を新たな仲間として迎えました。若者たちの未来に幸多からんことを心より祈ります。

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 さて、今月は当社の前身のひとつである美術印刷専門の印刷工場、精美堂の創設110周年にあたります。精美堂は、後に当社初代社長となる大橋光吉(1875~1946)により、明治39年(1906)4月に設立されました。

 精美堂設立の目的は、当時光吉が行っていた美術出版事業の合理化を目的としたものです。光吉は、明治37年(1904)に日本葉書会を設立し、月刊誌「ハガキ文学」とコレクション対象となる趣味性の強い絵葉書を刊行していました。

 この絵葉書は、和田英作、中村不折、鏑木清方など当時の一流画家に依頼した原画をもとに石版(リトグラフ)や木版でつくられた極めて芸術性の高いものでした。今で言えばハガキサイズのミニ版画に相当します。この時代、すなわち日露戦争期の絵葉書ブームに乗り、光吉の美術出版事業は大いにに当たりました。当初石版や木版刷は外注でしたので、事業の伸長により内製化による合理化が求められ精美堂が設立されました。

 現代の私たちが取り組むアート&カルチャー事業は、半世紀以上も前の昭和33年(1958)、印刷技術の向上を目的として始められた油画の複製技術開発を端緒としています。今日主力とする「彩美版®」は、最新の精密なデジタル画像加工技術と伝統的な職人の手仕事による版画技法を融合させ、それぞれの特長を最大限に活かした複合的版画技法(ミックスドメディア)です。

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■最初の彩美版®、菱田春草《落葉》

 彩美版®は20世紀の終り、平成11年(1999)から研究開発が始まり平成15年(2003)の秋、足かけ5年にわたる研究の成果として最初の商品が上梓されました。それから今年で14年目を迎えますが、弛まぬ技術改良により長足の進歩を遂げ、著名画家や美術研究者など、美術のプロフェッショナルから高い評価を受けるまでに成長しました。現在の評価に甘んじることなく、更に上を目指して改良を続けてまいります。

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■2015年発売の東山魁夷《静映》には彩美版®プレミアムという新技術が使われています。



 私たちはローリングストーン。転がる石の如く苔むすことなく、常に新鮮な好奇心とチャレンジ精神を忘れず、時代に即して変わり続け、新たな価値を生み出し続けられるチームでありたいと願っています。



March 25, 2016

安田靫彦展(東京国立近代美術館)

 
 20160325sakuramatsuri.jpg いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。春本番を迎え、東京ではいよいよ桜も芽吹き始めました。今年は各地で平年より早く桜が開花しているとのことですが、皆さまのお住まいの地ではいかがでしょうか。

 共同印刷とは目と鼻の先の桜の名所、文京区播磨坂の桜も来週には満開の時期を迎えます。普段はひと気の少ない閑静な並木道も、この時期には多くの方が桜見物にいらっしゃいます。坂道に点在する素敵なレストランで美味しい食事を召し上がり、春の行楽を満喫なさるのはいかがですか。都内有数の名勝・小石川植物園もすぐ傍です。お近くまでいらした時はぜひ足をお運び下さい。最寄駅は丸の内線の茗荷谷駅です。





20160325yukihiko_ex.jpg さて、東京・竹橋の東京国立近代美術館では23日より日本画家、安田靫彦(1884-1978)の回顧展が開催されております。靫彦は歴史画家の第一人者として、近代日本画の興隆と発展に重要な足跡を残しました。その偉大な功績を称え昭和48年(1973年)には文化勲章を受章、東京藝術大学教授や日本美術院理事長の要職を務め、良寛の研究者としても活躍しました。

 明るく澄んだ色彩と簡潔な構図、巧緻な鉄描線はまさに名人芸。時代考証も綿密なその作品は、主題となった歴史人物への共感に溢れています。展示の六曲屏風『黄瀬川の陣』(重要文化財)や名作『飛鳥の春の額田王』を実際この目にし、今回特に深い感銘を受けました。

 100点を超える画家の代表作が揃う本展覧会は、靫彦芸術の真髄に触れる絶好の機会です。東京展のみの開催となるこの貴重な展覧会に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。



【安田靫彦展について】

会場 東京国立近代美術館
会期 3月23日(水)より5月15日(日)まで (月曜休館、3/28・4/4・5/2は開館)
時間 10:00~17:00 (金曜日は20時まで)




 当社では、上記「安田靫彦展」に出品の《梅花定窯瓶》と《花の酔》を含む靫彦作品の彩美版®をお取扱いしております。全て令息安田建一氏が監修されました。カタログを用意しておりますので、ご興味のあるお客さまはどうぞご遠慮なくお申し付け下さい。


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安田靫彦 《梅花定窯瓶 ばいかていようへい
軸装・額装
販売価格 (各) 本体120,000円+税

<仕様体裁>
原画 豊田市美術館所蔵 ※「安田靫彦展」に出品(展示期間3/23~4/17)
監修 安田建一
解説 豊田市美術館
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 300部
用紙 特漉和紙
画寸 天地46.0×左右39.0センチ
軸寸 天地140.0×左右58.7㎝
額寸 天地64.2×左右57.5㎝
発行 共同印刷株式会社




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安田靫彦 《花の酔》
軸装
販売価格 本体150,000円+税

<仕様体裁>
原画 宮城県美術館所蔵 ※「安田靫彦展」に出品(展示期間3/23~4/17)
監修 安田建一
解説 庄司淳一(宮城県美術館学芸員)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 200部
用紙 代用絹本
画寸 天地80.0×左右32.0㎝
軸寸 天地173.0×左右49.0㎝
発行 共同印刷株式会社




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安田靫彦 《菖蒲》
軸装・額装
販売価格 (各) 本体120,000円+税

<仕様体裁>
原画 古川美術館所蔵
監修 安田建一
解説 草薙奈津子(平塚市美術館館長)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 300部
用紙 特漉和紙
画寸 天地39.6×左右52.6㎝
軸寸 天地133.0×左右69.5㎝
額寸 天地60.2×左右73.3㎝
発行 共同印刷株式会社


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

March 18, 2016

女子力UP!の展覧会「PARISオートクチュール展」


 こんにちは。今週は三菱一号館美術館で開催中の「PARISオートクチュール展」に行ってまいりました。

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三菱一号館美術館入口


 「オート・クチュール」とは19世紀のパリで誕生した、顧客の注文に合わせてデザイナー主導で仕立てる高級服のことです。展覧会では、時代の変遷に合わせてシャネル、ディオール、バレンシアガ、ゴルチエ等、誰もが一度は耳にしたことのある高級メゾンのデザイナーによる芸術ともいうべき素晴らしい手仕事の数々を見ることができます。

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スケッチ


 様々な素材を使用し、複雑で、時に究極にシンプルに仕立てられたドレスや洋服の作品群や、クチュリエたちの手を写した写真などから、デザイナーの溢れ出る感性と、時に鋭く訴えかけてくるものを感じることができた展覧会でした。

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ゴルチエ

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シャネル


 来場者はほぼ100%女性。国籍問わず多数の来場者で賑わっており、年配の方から若い女性までみなさん、華やかなドレスにため息をついたり、自分が若かりし頃の時代の流行を思い起こして同行者とお話したり、凝ったドレスに目をこらしたりながら、作品に見入っている様子が印象的でした。

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美術館中庭


 出口の特設ショップにいたるまで、老いも若きも女子の心をグッとつかむファッションの世界に連れて行ってくれる展覧会です。もちろん男性の方々もぜひ。三菱一号館美術館のある丸の内界隈はファッションに感度の高いお店が揃う街でもあるので、展覧会帰りにショッピングも楽しいかもしれませんね。



【PARIS オートクチュール ―世界に一つだけの服】

 会 場  三菱一号館美術館
      東京都千代田区丸の内2-6-2
      電話 03-5777-8600

 会 期  2016年3月4日(金)から5月22日(日)まで

 休 館  月曜 但し、祝日及び5月2日、5月16日は開館

 開館時間 10:00~18:00 祝日を除く金曜及び会期最終週の平日は20時まで
      ※入館は閉館30分前まで

 入場料(当日券) 一般1,700円、高校・大学生1,000円、小・中学生500円
      ※3月15日~31日学生無料ウィーク


March 11, 2016

In My Town・・・ポエジーな休日


 旅気分で足を伸ばして美術館やギャラリーを訪れるのも楽しいですが、ごく身近な場所を見渡してみると、ほんのりアートの薫りに出会えるスポットがあります。休日にさいたま市の自宅近辺で目にしたそんな場所を紹介します。

 JR武蔵浦和駅西口近く、子供が通っていた小学校のすぐそばにあるお店、器ギャラリーハセガワ。小ぶりな店構えですが、気づいてみると洒落たセンスにあふれたお店で、小さな吊り看板やOPENを示す手作りディスプレイは味わい深いものがあります。外からは大きなウインドウ越しに、格子状の棚に置かれたやきものの商品が見られ、どれも愛らしくオリジナリティある作品。お雛様の陶器の置物もありました。お店の中も形や色、デザインが個性的ながら使い易そうなやきものが品よく並んでいます。ひとつひとつ手作りでできた陶器は当然全く同じものは2つなく、商品というより作品と呼べるものです。

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 ショップを営むのは長谷川正治さん、松浦唱子さんでお二人とも通常は千葉の富津市で陶芸家として活躍されています。お二人以外にも全国各地の作家さんの作品が置かれていますが、もともとは常滑のセラミックアートスクールで陶芸を一緒に学んだ方たちで、その後各地に移ったものの、やきもの市などで交流を続け、陶器を仕入れているそうです。

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 お店には、なかなかこうは描けない脱力系のオリジナルイラストポストカードも置いています。無垢の力ともいうべき示唆に富んだ作品群は、やきものの無心の様相にマッチすると感じました。何気なく通り過ぎる道に、趣深い作品世界の広がる場所がある。そんな印象を受けました。



 もう一つですが、JR中浦和駅東側にある、以前は毎週のように訪れた別所沼公園。子供が成長してからは、何年も行っていませんでしたが、ここにもアートスポットがあります。彫刻家 中野四郎の作品「掛けた女」や、メキシコ州から贈られた「風の神の像(エヘーカトル・ケッツアルコアトル)」などもですが、はずせないのは2004年に園内に建てられた「ヒアシンスハウス(風信子荘)」という小さな家。詩人・建築家の立原道造(大正3年~昭和14年)が24歳で夭折する1年前に構想した別荘です。道造は東大建築学科で学び、在学中に辰野賞(奨励賞)を3度も受賞。同時に詩歌においても少年時代から才能を示し、著名な作家たちが名を連ねる「四季」同人となって活躍、第1回中原中也賞を受賞しました。そんな彼の未完の夢がこの小さな空間であり、没後65年後に、地元の建築家、文芸家たちの協力で、道造の遺したスケッチをもとに作り上げられました。

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 河津桜が少しだけ咲く日曜の午後、人々が思い思い寛ぐ穏やかな公園の空気の中にその家は溶け込んでいました。大きな窓から、沼と、河津桜も見えます。緑豊かな季節なら木々の爽やかな息遣いが感じられたでしょう。据え付けの机や椅子もベッドも彼のスケッチを忠実に再現しています。木の温もりの中に、そよ風が渡る自然を感じる家。道造はこんな心地よい秘密めかした空間を望んでいたのかと深い共感を覚えました。この家は芸術・文化の催しにも活用されているようです。過去の詩人の想いが何十年もの時を超えて人々に継承され実現する、その情熱の結集力に感動を覚えました。

 すぐそばにある見知った場所も、気づかないうちに変化し、アートに根ざした憩いの場として存在感を増していた・・・時を想い、感慨にふける日でした。

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■器ギャラリーハセガワ
 さいたま市南区沼影1-5-20  TEL 048-837-0639
 営業日 木・金・土  (イベント開催時は変更の場合有り)
 営業時間 13時~18時 (不定休)


■ヒアシンスハウス
 さいたま市南区別所沼公園内  
 開室日 水・土・日・祝(年末年始は休室)
 開室時間 10時~15時

March 8, 2016

小川芋銭と牛久の河童たち


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。先日、牛久市ゆかりの日本画家、小川芋銭(うせん)の記念館「雲魚亭」に行って参りました。


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 近くには河童伝説で有名な牛久沼があります。牛久沼の由来は諸説あるようですが、金竜寺に「怠け者の小僧が牛になってしまい、沼に身投げをした。そこから<牛を沼が食った><牛食う沼>と変わり、その沼が牛久沼と呼ばれるようになった」という言い伝えがあります。沼には昔から河童が住んでいるといわれており、周辺には河童にまつわる伝説がいくつも残っています。

 そして、牛久沼を愛し、そのほとりで農業を営みながら画業を続けていたのが、日本美術院同人として活躍した小川芋銭です。画号の「芋銭」は、自分の絵が芋を買う銭になれば、という思いによるとのことです。元来牛久藩大目付の長男として生まれた芋銭は、周りの人たちから学者として尊敬されるほど、豊かな教養を備えていました。農村の風物や水辺の生き物を好んで描いており、特に河童を多く描いたことから「河童の芋銭」と親しまれています。「雲魚亭」は晩年に建てられた、居宅兼画室です。ここに移り数か月後、芋銭は病に倒れ亡くなりました。現在は小川芋銭記念館として芋銭の作品や遺品を一般公開しています。少し歩けば、芋銭のお墓のあるお寺「得月院」があります。小川家の墓の中でもひと回り大きな墓石なので、すぐに分かります。


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 牛久市は河童を観光、地域作りのテーマとして掲げており街全体が河童で溢れています。「雲魚亭」がある側の牛久駅西口の別名は「河童口」となっています。駅前のバス停留所には河童のキャラクターが描かれているバスが停まっていました。下を向けば、マンホールに河童、橋の上に河童の像、かっぱ松、そして芋銭を敬慕する人たちによって建てられた河童の碑。街を散策すれば、まだまだ河童が見つかりそうです。牛久沼まで足を延ばせば、本物に出会えるかもしれませんね。



【牛久市小川芋銭記念館 雲魚亭】
開館日 屋内公開は土曜日、日曜日、休日
平日は、屋外見学のみ
開館時間 9:00~17:00(4月1日~9月30日)
     9:00~16:00(10月1日~3月31日)
休館日 毎週月曜日(月曜日が休日の場合は翌日)及び12月28日~1月4日


March 4, 2016

童画に込めた巨匠達の想いと、東京都板橋区赤塚を散策した事について


 東京をほぼ南北に走る都営地下鉄三田線は地下鉄といいながら、志村坂上駅より北上すると地上に出て高架線を走り、終点の西高島平駅に着く。よって地下鉄の車両はどこから入れるのだろう?と考え込まなくても良い。この辺りは昭和40年代に建てられたマンモス団地「高島平団地」で知られている。団地の総戸数は1万を越えるという。

 さて西高島平駅から南西方向に十数分歩くと「板橋区立美術館」がある。美術館は赤塚城本丸跡の公園内にあり、訪れた時は紅白の梅の花が咲き始めていた。こちらでは3月27日まで「描かれた大正モダン・キッズ 婦人之友社『子供之友』原画展」が開催されている。「子供之友」は幼児から小学生向けの生活教育雑誌として「婦人之友」の創業者、羽二とも子、吉一が1914年(大正3年)に創刊し、1943年(昭和18年)の休刊までの30年間発行された。本誌は創刊より絵画主任を務めた北澤楽天や、竹久夢二、武井武雄、村山知義などの第一線の芸術家達の作品を発表し続けた、芸術性の高い雑誌である。展示は作家ごとにまとめられており、貴重な原画が展示されている。いわゆる絵画作品とは違い、印刷原稿として描き起こされたものなので、絵の回りには引き出し線で「色は思ひきつて 鮮やかに」などの指定が残っている。こういう肉筆の指示を見ると版下原稿入稿世代の印刷マンとしては懐かしくてじんと来る。

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梅の花咲く美術館入り口

 挿絵のスタイルの変遷も芸術表現の移り変わりと重なっており、創刊始めの北澤楽天の描いたサンタクロースは正しく白ひげの仙人のようで恐ろしいが、竹久夢二の作品は夢二調の細やかで繊細な線と淡い色彩で、はかなげである。時代は下って、ベルリン留学を経て当時の前衛芸術活動をリードした村山知義はシンプルな線と面で構成されたモダンな表現をしている。「童画」という言葉を創出した武井武雄は、東京美術学校(現東京芸術大学)を出た後、自活するための仕事として雑誌の挿絵制作を始めたが、彼の作品は均一の太さの線で、木や葉を装飾的に描いている。本展示作品の私のお気に入りは、村山知義の「リボンときつねとごむまりと月」である。シルクハットを被りタキシードを着た三日月と、リボンとごむまりの三人がステーキを食べているテーブルの奥に、きつねの一行がお土産を持って遠ざかっているという何ともかわいく、シュールで稲垣足穂と宮沢賢治を混ぜたような大正モダニズムアートである。その他、岡鹿之助や安井曾太郎が自らの絵の解説を書いていたり、マティスの作品を掲載したりと、「子供之友」は子供向けとは思えないほどの本物の芸術志向であった。

 なお、「板橋区立美術館」の男子トイレにはマルセル・デュシャンの「泉」がある。といってもそれは中国人アーティストの牛波氏の「泉水」という作品で、かつてデュシャンが既製品の便器をそのまま美術品として提示したが、それをまたもとの使用できる便器として再提示した作品である。この作品は壁に付いた鏡により真上からそのフォルムを見る事が出来る(用を足しながらも見られる...)。

 さて美術館を出て東武東上線の下赤塚方面へ続く「東京大仏通り」をしばらく行って脇道に入ると乗蓮寺というお寺に出る。徳川家康より10石の朱印地を拝領したという由緒あるこのお寺には正しく「東京大仏」という高さ13m、重さ32トンの青銅で出来た巨大な大仏(阿弥陀如来)が建立されている。全体的につやつやと黒光りして、シャープな身体の線のスマートな大仏様である。境内には他にも「旧藤堂家染井屋敷石造物」という不思議な石造が配置されている。これら天邪鬼石造、婆々石造、大黒石造などの姿からは、歴史と信仰を感じさせてくれる。

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青空とスマートな大仏様

 お寺を出て、更に脇道を進んだ二股の付け根に「板橋区立赤塚植物園」がある。入園はただのようなので入ってみる。広さは約1ヘクタールと、それほど大きくはないが、起伏のある丘陵地をうまく生かした造りになっている。この植物園に入ってまず目を引くのは白い樹皮が美しい「ユーカリ」の巨木である。その高さは管理舎の屋根を遥かに越える。「ユーカリ」がこんなにも大きくなるとは知らなかった。今の季節園内では「フクジュソウ」や「スノードロップ」が咲いている。「フクジュソウ」が群生して黄色い花を咲かせている可憐な姿に春の訪れを感じた一日であった。




 今回は童画の展覧会を訪れたが、童画といえば東山魁夷も「コドモノクニ」などの雑誌に童画を描いていた時期がありました。日本画の巨匠として崇高な自然風景の作品を数多く描いた東山魁夷ですが、心温まり童心のある作品も描いています。この度ご紹介する「金太郎」も正しくそのような作品です。大きな熊にまたがり、斧を持った小さな金太郎。でもその表情は口元も眉もきりっとして、しっかりとした眼差しを向けています。彩美版®プレミアムの美しい額装は、和室にも洋室にもマッチします。絵画としての美しさばかりでなく、お子様の健やかなご成長を願ってお部屋にお飾りください。


東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《金太郎》
販売価格 180,000円+税


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<仕様体裁>
限定: 500部
技法: 彩美版®プレミアム
証明: 著作権者承認印、限定番号入り証書を額裏に貼付け
額装: 特注木製額ハンドメイド浮き出し加工
画寸: 33.3×30.0cm
額寸: 48.5×45.0×4.0cm
重量: 約2.6kg
発行: 共同印刷株式会社

February 19, 2016

春一番


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
 立春を迎え路地の水仙や梅の花が目に留まり春の気配を感じますが、まだまだ寒さが厳しく厚手のコートや手袋が手放せません。その寒さから一変、先週末東京都心は3月~5月中旬並みの陽気となり春一番の観測がされました。急な陽気の変化に驚かされますが、体調を崩さないよう皆様ご自愛くださいませ。

 そんな春の陽気に誘われ、荒川の土手沿いから散策し西新井大師へ行って参りました。境内には梅が見ごろを迎え、都内ではめずらしい寒桜が咲き誇っていました。頬にうける風はまだヒンヤリと冷たいですが、春の訪れを感じました。


【西新井大師】
〒123-0841 東京都足立区西新井1丁目15-1
03-3890-2345(代)受付・電話対応時間 9:00~16:30


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 さて今回は、当社「彩美版®」から春の訪れを感じさせる作品3点をご紹介いたします。お求め、お問い合わせは、こちらの当社代理店までどうぞ!


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前田青邨 《 紅白梅 》
販売価格(額・軸) 各190,000円+税



 淡く下地に金泥を刷いた画面に、琳派に由来する垂らし込みの技法で、華やかな紅白梅が描かれています。リズミカルにデザイン化された幹と枝は、光琳の紅白梅図屏風を連想させます。よく観ると濃い紅色、淡い紅色、白色と異なる色の花を咲かせた三本の樹々が、あたかも家族のように互いを抱きあいながら、複雑に絡み上方へと伸びています。香り高い梅の花が一面に咲きこぼれ、上品で華やかな青邨独特の画面をつくりあげています。



<仕様体裁>
■基本情報
監修: 平山郁夫
原画: 公益財団法人石橋財団 石橋美術館 所蔵
解説: 石橋美術館
技法: 彩美版(R)・シルクスクリーン
用紙: 和紙
限定: 300部
証明: 著作権者承認印入り奥付及び所蔵者承認印入り証紙を貼付
■額装仕様
画寸: 天地43.9×左右60.3cm
額寸: 天地65.5×左右81.9cm
重量: 約5.8kg
額縁: 木製金泥仕上げ特製額(ハンドメイド、国産)
※この作品は掛軸もございます。



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安田靫彦 《 梅花定窯瓶(ばいかていようへい) 》
販売価格(額・軸) 各120,000円 +税



 赤い壁を背景に置かれた白い壺に、紅白の梅の枝が活けられています。
 梅は靫彦が最も愛した花と言われます。壺(瓶)は中国・宋時代を代表する定窯の白磁です。あたたか味のある乳白色の釉に特徴があります。
 色彩、構図とも一見さりげない感じながら緻密に計算されており、明快で絶妙な調和をもたらしています。気品高く深い精神性を感じる靫彦芸術が、この一作に凝縮されています。



<仕様体裁>
■基本情報
監修: 安田建一
原画: 豊田市美術館 所蔵
解説: 豊田市美術館
技法: 彩美版®・シルクスクリーン
用紙: 和紙
限定: 300部
証明: 著作権者承認印入り奥付を貼付
■額装仕様
額縁: 木製白茶仕上げ特製額(ハンドメイド、国産)
画寸: 天地45.3cm×左右38.6cm(8号)
額寸: 天地64.2cm×左右57.5cm
重量: 約3.7kg
※この作品は掛軸もございます。




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小倉遊亀 《 梅 》
販売価格 190,000円 +税

※この作品は額装仕様のみです。


 金箔を背景に鮮やかな絵付け文様の古壺に紅白の梅の枝が活けられています。華麗な色彩で構成された小倉画伯独特の画風が眼に鮮やかです。画中から春を告げる芳しい香りが漂ってくるかのようです。
 壺は(古赤絵酒次)は小倉画伯が愛蔵した磁器で、中国・明代に景徳鎮の窯で製作されたものです。上絵付けの技法で赤を主体に緑や黄色で華やかな模様が描かれており、わが国では「古赤絵」と呼ばれています。



<仕様体裁>
■基本情報
監修: 有限会社 鉄樹
解説: 谷岡 清(美術評論家)
技法: 彩美版®・シルクスクリーン、本金箔使用
用紙: 版画用紙(かきた)
限定: 200部
証明: 著作権者承認印を画面左下部と奥付に押印
■額装仕様
額縁: 木製金泥仕上げ特製額(ハンドメイド、国産)
画寸: 天地41.0cm×左右28.5cm(6号)
額寸: 天地59.0cm×左右46.5cm
重量: 約2.4kg


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


February 12, 2016

日本の中心、日本橋(にほんばし)


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。今回のテーマは「日本橋」です。


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 「日本橋(にほんばし)」は、東京都中央区に流れる「日本橋川」に架かる石造りの橋で、この地域の地名でもあります。江戸時代から「五街道(東海道、日光街道、奥州街道、中山道、甲州街道)」の起点として、郵便や銀行の発祥の地として、世界屈指の繁華街として日本の中心を担ってきました。


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 橋中央部の青銅製の街路灯には、幻獣「麒麟(きりん)」が鎮座しています。「麒麟」は神話に現れる伝説上の四霊獣(「応龍」「麒麟」「鳳凰」「霊亀」)のひとつ。平和を象徴する四霊獣の中でも【信義】を意味することから「日本橋」にふさわしいモチーフとして選ばれたとされています。厳つい顔なのに実はとても心の優しい生き物であるとされる麒麟。凛として、まるで東京の守護神のような出で立ちが印象的です。一方で、橋の両端にある「獅子像」は、奈良県の手向山八幡宮にある狛犬などを参考にして製作されたそうです。


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 橋の寿命は1,000年と言われていますが、震災や空襲などにより幾度となく架け替えを余儀なくされ、現在の橋は19代目、明治44年(1911年)に開橋したものです。平成11年(1999年)には国の重要文化財(建造物)にも指定されました。しかし、高度成長期、昭和39年(1964年)の東京オリンピックの開催にあわせて首都高速道路が作られたことで、街のシンボルである「日本橋」の上空が覆われたままになっており、都市景観の在り方を含めた多くの議論を抱えているという実情もあるようです。

 そんな中、平成16年(2004年)、旧東急日本橋店の跡地に新しい商業施設「COREDO日本橋(日本橋一丁目ビルディング)」がオープン。また都内の川を結ぶ"水の道"プロジェクトとして平成23年(2011年)にはかつての舟運都市を彷彿とさせる「船着場」が完成しました。近い将来、日本橋はかつての景観と賑わいを取り戻し、昔から引き継がれる「伝統」と、新しい魅力で未来を切り開く「革新」が共存する街として、世界中から多くの人々が訪れる街になることでしょう。

 2020年の東京オリンピックへ向け、名実ともに世界への懸け橋になることを望みます。

February 5, 2016

アート鑑賞「わたし流」


 皆様、いつも「美術趣味」をご覧いただき有難うございます。さて、本日はアート鑑賞をテーマにお送りします。
 私は社会人となって以来今日まで、仕事としてアートと向き合う毎日を送っていますが、プライベートでは仕事とは異なるアプローチで、気軽に楽しくアート作品を「鑑賞」しています。手前味噌ながら、「わたし流」の楽しみ方を簡単にご紹介いたします。


1.頭をからっぽにして、作品と向き合う。

 美術館に展示されている作品には、説明プレートが添えられていますよね。必ず記載されているのは、作品名に作者名、制作年や材質、原寸等のスペックの三項目です。学芸員の方による解説が添えられていることもあります。
 素直に考えれば、これらはすべて、作品を正しく理解するために欠かせない情報なのですが、私は「頭をからっぽにして、作品と向き合う」ことを旨としていますので、作品と向き合う前にこのプレートを見ることは敢えて避けています。
 少し気取った表現をすれば、作品鑑賞は私にとって作品との真剣勝負です。予め色々な情報がインプットされてしまうと、自分自身の未熟さもあり、ともすれば「先入観」という名の色眼鏡をかけて作品を眺めてしまいかねません。真剣勝負の場に雑念を持ち込むことは、作品やそれを制作した作者に対して失礼なのではないかと思うのです。(学芸員の皆様ごめんなさい。わたしの未熟さ故です。)
 作品は、作者が封じた繊細な電波を自ら発しています。わたしのアンテナがその微細な電波をキャッチできるよう、日頃から感度を高める努力を重ねるとともに、雑音となりかねない余計な情報は極力排除し、真っ白な気持ちで作品と相対したいと思うのです。未熟なりに素直な、生のままの感性を、言わば「童心」を大切にしたいと考えています。


2.自分の感性を大事にする。

 「自分の感性を大事にする」とは、どういうことでしょうか。
 どなたにも経験あることだと思うのですが、著名な画家や評論家が素晴らしいと讃えたアート作品が、自分にはどこが良いのか解らない、あるいはそれほどの出来とは感じられなかったりすることがあります。ともすれば、「自分は未熟なのだ」と自分の感性を恥じてしまいがちです。
 でも、例えば音楽や演劇、文芸作品ならどうでしょう?「好き嫌い」という自分自身の感性の物差しでもっと気軽に評価できますよね。アート作品も同じでよいと思うのです。他人の感じ方を鵜呑みにする必要はありません。自分の感性を信じましょう。
 ちなみに最近のわたしのお気に入りは「現代美術」です。自己判定による今の自分のレベルは「現代美術超初心者」です。だからこそ「現代美術」が面白いのです。
 正直に申し上げて、作者の意図を正しく理解できていないだろうなと自覚しています。ですが、自分の素のままの感性を信じて向き合えば、面白い!と感じる作品に出合うことができます。
 感性を磨く努力も怠ってはなりません。矛盾するようですが、感じ方は経験を積むことで変わるものです。様々なアート体験を重ねることで、見えなかったものが見えてくるということです。その「成長過程」もまた面白いのです。
 ひねくれて感覚の鈍い大人に育ってしまいましたが、今思えば無垢な子ども時代は、今よりはるかに感受性豊かでした。アート作品にダイレクトに反応し、魂を揺すぶられるような強烈な感動を覚えることも、しばしばでした。「現代美術」作品と向き合うことで童心に還り、再び打ち震えるほどの感動を体験したいと願っています。


3.これは!と思った作品は徹底的に深堀する

 大学で美術史を学んだ経験を活かし、仕事でかかわりあう作品は「熟覧」と言われる作品実物の詳細な調査を行うとともに、出来うる限り多くの文献資料や証言等を集めて分析するのを常としています。場合によっては、作品のモチーフとなった場所を実際に訪れて作者の視線を辿る、フィールドワーク(実地調査)を行うこともあります。
 プライベートで出会った作品についても、これは!と言う作品は同様の調査を行うことがあります。言わばパズルのピースを一つ一つ探し拾い集めて、自分なりの作品像を再構成する作業です。気になる作品は次々に疑問が湧いてきますので、知りたいという欲求が高まってきます。研究というほど大げさなものではなく、ただ自分自身の「好奇心」を満たしたいがための事、所詮は趣味ですから。
 文献調査よりフィールドワークの方が楽しいことは、言うまでもありません。作品にまつわる情報の収集だけでなく、その土地の名産や料理も合わせて楽しむことができます。
昨年の12月に、「墨東の過去・現在・未来-永井荷風と藤牧義夫の視線」(2015年12月11日)という記事を載せましたが、あれは永井荷風や藤牧義夫の作品にかかわるフィールドワークをベースにしてまとめたものです。
 荷風は、二編の随筆、「深川の散歩」と「元八まん」に描かれた深川地区を作品に描かれた通りに辿るフィールドワークを複数回、藤牧義夫は「隅田川絵巻」を描く際に彼が歩んだであろうルートを辿り、藤牧の視線を追体験するフィールドワークを一回行いました。
 藤牧の調査の際は、「相生橋から浜町公園まで」と「三囲神社から白鬚橋まで」の隅田川沿いのルートを徒歩で辿りました。ついでと言ってはなにですが、藤牧もスケッチの途中に立ち寄って食べたであろう「長命寺のさくら餅」を家族へのお土産に買って帰りました。
 いずれの調査でも、作品その他の資料だけでは見えてこない様々な発見があり、それにより新たな疑問も出てきました。少し暖かくなってきたらまたフィールドワークに出かけたいと思っています。

20160205fieldwork.jpg※左上から時計回りに、三囲神社裏門、清洲橋(藤牧義夫「絵巻隅田川」の調査より)、元八幡・富賀岡八幡宮(永井荷風「元八まん」の調査より)、岡本太郎《太陽の塔》(現代美術)


 以上が「わたし流」鑑賞法のあらましですが、一言で言えば、「頭でっかちにならず、ハートで感じようぜっ!」ということです。「鑑賞」と表現するのが申し訳ないくらい「娯楽」に振った楽しみ方ですね。「正しい鑑賞法」あるとすればその真逆かもしれません。でも私の辞書には「楽しくなくちゃアートじゃない!」という言葉があります。「わたし流」が、皆様のアートライフを充実する一助になれば幸いです。

January 29, 2016

兵庫県立美術館「ジョルジョ・モランディ」展


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。寒波の影響で日本全国がこの冬一番の寒さを迎えました。皆さまも健康には十分ご留意下さい。

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 さて私は先日、関西出張の折、神戸の兵庫県立美術館まで足を延ばし「ジョルジョ・モランディ-終わりなき変奏-」展に行って参りました。一部で「幻の美術展」と呼ばれるこの展覧会は、2011年の震災の影響で取り止めになっていたもので、わが国では17年振りとなる待望のレトロスペクティブ(回顧展)です。

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 ジョルジョ・モランディ(1890-1964)は20世紀イタリアを代表する静物画の画家として知られます。自然を円筒・円柱・球によって扱うと語ったセザンヌを師と仰ぎ、何の変哲もない壜や容器、花瓶といった日常的なモチーフを繰り返し描き、フォルムの探求を続けました。モランディの絵画世界では机上の器の配置、距離と奥行、光の濃淡、色彩と陰影が微細かつ精妙に変化します。幾何学的立体のヴァリーエーション(変奏)による、形態と色彩の差異の現前こそがモランディ芸術の核心といえましょう。

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 本展覧会は画家の故郷ボローニャにあるモランディ美術館の協力のもと、イタリアと日本の美術館、個人コレクションから約100点の魅惑の作品が展示されております。映画好きの私は、図らずも小津安二郎(1903-1963)が同じテーマ、同じキャストで撮り続けた相似形の構図をも想起し(「晩春」、「東京物語」etc.)、偉大なる芸術の共時性に心が震えました。構図を探求することで、孤独に自己の芸術を追い求めた二人の巨匠は、今でも多くの人を惹きつけてやみません。

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 今回、私が兵庫県立美術館を訪れたもうひとつの理由は、敬愛する安藤忠雄氏が設計した代表的な建築物であるということ。館内には安忠特有の通路が張り巡らされ、綿密に計算されたその動線を辿ると、普段は滅多に気付くことのない、建物の空間の間、光、空気が判然と知覚されます。一旦外に出で海側の通路に出れば、展示棟とギャラリー棟の2棟が隣接のなぎさ公園と精妙に一体化する様も体感でき、やはり来て良かったという深い満足感を得ました。モランディと安藤忠雄の稀有なる出会いに、至福のひと時を過ごすことが出来ました。


 本展覧会はこの後、東京と岩手に巡回します(下記情報をご覧下さい)。2016年注目の展覧会に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。



「ジョルジョ・モランディ-終わりなき変奏-」展

会場 兵庫県立美術館
会期 2016年2月14日(日)まで
休館 月曜日
時間 10:30~18:00 金曜・土曜は20時まで

※巡回スケジュール
2月20日-4月10日 東京ステーション・ギャラリー
4月16日-6月5日 岩手県立美術館


January 22, 2016

春を待つ鎌倉へ


 こんにちは。東京は積雪で始まった一週間となりました。

 きりりと寒い日が続く中、今週は鎌倉へ行ってまいりました。快晴の日とはいえ1月の寒い平日、鎌倉大仏も改修中で布を被っているそうですが、駅周辺には大勢の観光客がいました。今回私が訪問した瑞泉寺は、鶴岡八幡宮の東、中心部の喧騒を離れ鎌倉宮より徒歩13分ほど行ったところにあるとても静かな寺院です。山門を通り、うっそうと木が茂る道を進んでいくと、小さな本殿と庭園のある境内に着きます。


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瑞泉寺境内


 瑞泉寺は、円覚寺開山の仏光国師(無学祖元)の孫弟子である夢窓国師が開山し、足利尊氏の四男で初代鎌倉公方の足利基氏以降、鎌倉公方足利家の菩提寺となった格式ある寺院です。仏殿背後にある庭園は、岩盤を彫刻的手法によって庭園とした「岩庭」とも呼ぶべき造りで、書院庭園のさきがけをなすものでもあり、現在鎌倉に残る鎌倉時代唯一の庭園だそうです。鎌倉石を大きく彫った洞(天女洞)はとても見応えがありました。


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天女洞


 夢窓国師は優れた作庭家でもあったそうで、瑞泉寺のほかに、現在国の特別名勝・名勝に指定されている京の天竜寺、苔寺で知られる西芳寺、美濃の虎渓山永保寺なども夢窓国師が作ったお庭だそうです。とても季節感を感じる場所で、境内にはたくさんの種類の木が植えられており、いまは綺麗に刈り込まれた木々の合間に椿と南天の実の赤がよく映え、またところどころ小さく膨らむ黄梅のつぼみが印象的でした。


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真っ赤な実をつけた南天


 寺院の入り口の門に掲示されていた句にも春を待つ心が感じられます。


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高浜虚子の句「時ものを解決するや春を待つ」


 お寺に向かう道中、見上げると視線の先に梅の花がぽつぽつと咲いていて、ほんのりと良い香りが漂い、まだまだ寒い1月ではありますが少しだけ春の足音の聞こえる鎌倉でした。


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咲き始めた白梅の花

January 15, 2016

山猫の森から

 
20160115entrance_door.jpg 宮沢賢治の作品から店名を起用する例は多々あると思いますが、ここまで自然に作品と現実の印象がシンクロしてしまうことはあまりないのでは...。今回伺ったギャラリーの感想です。

 お正月が終わってすぐの連休初日、寒いながらも穏やかに晴れた気候にほだされ、思いついて越生まで車を走らせました。梅林が見られたら幸運と思いつつ、道に迷いながら辿り着いてみると、さすがにまだ早く、花の気配は全くありませんでした。

 越生梅林を通過する埼玉県道61号からあじさい街道へ入り山林の中の細道を上がっていくと、右手にロッジのような一軒家が見えてきます。門前には、猫のシルエットが乗る年季の入った金属とガラス玉のオブジェ風アーチがあり、「山猫軒」という文字が形作られていました。宮沢賢治の「注文の多い料理店」に登場する店の名前ですが、この場所にあるとまさしく幻想譚の世界そのもの。古びたたたずまいにやや気後れしながら、門を通り階段を上がると建物の扉も巨大な山猫の笑い顔でした。靴をスリッパに履き替えて入ってみると、そこはパンやお菓子、その他グッズが並ぶプチ賑やかなスペースで、外観とのギャップに一瞬異界に入り込んだ印象を受けます。

20160115yamanekoken.jpg 開けかけたガラス戸の奥の部屋に絵が掛かっているのが見えたので、入って行くと何点かの展示作品と共に岩田壮平画伯の、金地に赤い椿を描いた小品もありました。その右の部屋はグランドピアノといくつかのテーブル席が設置された広いメインホール。木材で組まれた高い天井には天窓から光が差し込んでいます。柱や壁にはさり気なく絵画作品が展示されています。さらに吹き抜けの正面のロフトは2階の空間となっており、こちらにも作品が並んでいました。こことつながる右側のロフトに多数のスピーカーが置かれ、静かな音楽が流れています。暖炉には火がくべられ、テーブルのお客さんも寛いだ感じで静かに飲食を楽しんでいます。私は古代米の野菜カレーとコーヒーを賞味した後、展示作品を鑑賞させていただきました。現在「倶楽部山猫絵画展」(越生での田植えを通して出会った日本画のグループ展)が開催されており、岩田画伯を含む総勢24人の作家さんの多様な作品が展示されています。いずれも、テーマ・作風ともに日本画という枠にとらわれていない若々しさが感じられるアート作品です。

20160115gallery_and_cafe.jpg 展示作品もさることながら、和と洋の要素を持ったレトロ感あるこの建物自体に強く興味がわき、オーナーの南さんに建物の来歴を伺ったところ、驚くべきことに、南さんご自身の手で平成元年に建てられたということでした。当時大きく紹介された建築雑誌2誌を見せていただきました。釘を1本も使わない伝統工法で、1,000本もの楔を作って組んでいるそうで、大変な手間暇がかかったとのこと。しかしそれはそれで充実した楽しい時間だったそうです。仲間の方たち40人ほどの協力をいただいて作り上げた家は、外装、内装に様々な人々の個性あるこだわりの意匠・造形が見られます。建物自体が複数の造形家のコラボレートによるアートといえるかもしれません。

20160115Second_floor.jpg ここにはもう1つ神秘的な場所がありました。亡き奥様の名のついた千代文庫です。農業、田舎暮らし、植物 他様々な蔵書とともに、宮沢賢治の手書き原稿の複製も置いています。隠し部屋のような造りの空間に、「~料理店」に登場する一番最後の部屋を連想しました。

 お土産に、入口付近にあったオーナーおすすめのカンパーニュ(田舎パン)を買って帰りました。帰り際、ハンモックのあるオープンテラスを見ると、暖かい時期に是非また来たいと思いました。


 
■ギャラリィ&カフェ 山猫軒

所 在 埼玉県入間郡越生町龍ヶ谷町137-5
電 話 049-292-3981
営業時間 11時~19時
営業日 金、土 日 祝日のみオープン
企画展示 倶楽部山猫絵画展(2016年1月1日~2月28日)


January 8, 2016

桜と目黒川と個性的なお店の事

 あけましておめでとうございます。本年も美術趣味をご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。読者の皆様には、良きごエン(猿)に恵まれ、災いがサル(猿)年でありますよう心よりお祈り申し上げます。

 さて、本年の第一回目のブログは、少々早いようですが春にまつわる花の絵から始めたいと存じます。新年早々何を浮かれているのかとご叱責を賜るかもしれませんが「冬来たりなば春遠からじ」と申します通り、今の寒さの先には春の喜びが待っております。

 東京の南側に世田谷区、目黒区、品川区を流れ、東京湾に注ぐ目黒川があります。目黒川沿いには個性的でオシャレなお店が並び、若者のデートスポットとしても有名です。また中目黒駅周辺の川沿いにはソメイヨシノが植えられており、春になると桜祭りが開催されるなど多くの人でにぎわいます。人が多いところが苦手な私は、まだ閑散としている冬の間にこの川を訪れる事にしました。

 中目黒駅から歩いてほど近い場所に、「郷(さと)さくら美術館 東京」がございます。この美術館は桜を描いた作品の常設展示室を設けて「いつでも桜が見られる美術館」として多くの方に親しまれています。また外観がとてもユニークな建物で(2012年グッドデザイン賞受賞)、ぱっと見は真っ黒な箱の様にに見えますが、近寄って良く見ると外壁のパネル一枚一枚が桜をモチーフにした模様にくり貫かれています。こちらの美術館では特別展「中島千波の世界」※が開催されています。中島千波画伯といえば、「桜の千波」と評されているほど桜の絵の大家です。

 まず美術館に入って驚くのは、一階のフロアにぐるりと並べられた大画面の桜の屏風です。まばゆい金の明るさの「素桜神社の神代櫻」や2015年に完成させたばかりの「石部の櫻」などの四曲一隻の屏風が5点、堂々と展示され日本各地の桜の巨樹を居ながらにして鑑賞できる様は、まさに桜花爛漫、春到来なのであります。個人的には薄暗い背景に、ほのかに桜の花が輝いている「樹霊淡墨櫻」がとても好きです。作品の解説には千波画伯の言葉と、描かれた花についてわかり易く書かれており、より作品を知る事が出来て楽しめます。この展覧会では1〜3階のフロアごとにテーマが分けられ、「おもちゃ」シリーズや「人物」など、中島画伯の幅広い画業に触れる事が出来ます。各階へはエレベータで移動でき、外光の差し込む明るいトイレ、適度な展示スペースなど、とても居心地が良く鑑賞疲れもありません。郷さくら美術館は福島県郡山市にもあり、そちらの方が先に開館いたしました。そちらの美術館へも是非、訪れてみたいものです。

20160108sato_sakura_museum.jpg
郷さくら美術館のアーティスティックな黒い外壁


 さて絵画鑑賞の後は、目黒川沿いを散策する事にします。個性的なショップが並ぶこの界隈でも特に楽しいお店がColobockle(コロボックル)さん。昔ながらの一軒家を改装した店内には、絵本作家の立本倫子さんのハンドメイド感たっぷりの絵本や文具が並びます。立本さんが作り出す、不思議で楽しいキャラクターが描かれた品々はどれも欲しくて迷います。目黒川沿いを池尻方向へ進んで行くと、西郷山公園近くの川沿いに昨年の11月に開店したばかりのチョコレートショップ「green bean to bar chocolate」(グリーン ビーン トゥ バー チョコレート)があります。ブルーの外壁にヨーロピアンな外装。ここはカカオ豆からチョコレートになるまでの全行程をお店に併設されたファクトリーで行っているこだわりのチョコレート専門店。カカオ豆と砂糖の2つの材料で作られるチョコレートバー。アニスの香りのガナッシュなどの各種ボンボンショコラ。マダガスカル産カカオ豆を材料にしたカカオティーといったちょっと変わったものも売っています。店内でチョコレートドリンクを飲む事も出来るので、散策に疲れたら一休みにももってこい。

20160108chocolate.jpg
カカオティーとボンボンショコラ



 最後にお勧めしたいのは、国道246の陸橋脇にある「一般財団法人 日本地図センター」。こちらのビルの1階には様々な地図が売っているので地図好きにはたまらない所である。私も以前「デジタル標高地形図 東京都区部」と「デジタル標高地形図用3Dメガネ(紙製103円税込)」を購入した事がある。帰宅したら早速、今日の行程を3Dメガネをかけて標高地図で見てみよう。西渋谷台地と目黒川との高低差約20mもの崖線がクキッリと浮かび上がってくる事であろう。

※ 郷さくら美術館 特別展「中島千波の世界」 開催中〜2月28日(日)まで。場所、休館日などは美術館の情報をご覧ください。



【中島千波画伯版画のご紹介】

当代随一の人気画家として知られる中島千波画伯が、京都・東山にある高台寺の桜樹を描いた作品です。
高台寺は豊臣秀吉の妻ねね(北政所)が秀吉の菩提を弔うために創建した名刹ですが、古くから桜の名所として知られています。独特の華やかで妖艶な世界をお楽しみください。




リトグラフ版画
中島千波 《春日和》
販売価格 320,000円+税


chinami_harubiyori400pix.jpg




<仕様体裁>
作者直筆サイン、落款印入り
限定:200部
技法:リトグラフ
用紙:ベランアルシュ
版・色数:32版32色
額縁:特製木製額金泥仕上げ・アクリル付き
画寸:41.0×53.0cm
額寸:64.0×75.5cm
重量:約3.8kg
発行:共同印刷株式会社

December 25, 2015

年の瀬の風物詩~上野アメ横


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。今年も残すところわずかとなってきました。皆様は年越しに向けての準備はいかがでしょうか。東京の年の瀬の風物詩と言えば、「アメ横」を思い浮かべる方は多いでしょう。何気に当社前のバス停から直通で、上野公園行きのバスに乗ればあっという間の所にあります。と言う訳で、私は年末の雰囲気を味わいにアメ横へ行って参りました。

 「アメ横」は戦後の闇市から始まった、長さ400mの商店街です。名称の由来として、当時から様々な物品が売られ、特に飴を売り捌く店が200軒以上あった。またアメリカ進駐軍の放出物資を売る店も多かったことから「アメヤ横丁」と呼ばれ、さらに「アメ横」と略称されることが多くなったと言われているそうです。


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 さて当日は入り口付近ではさほど混雑しておらず、拍子抜けしたのも束の間。奥に進むにつれて混雑具合が増し、生鮮売り場の並ぶたたき売りの声が飛び交う辺りは、かなり混雑していました。魚屋さんの威勢の良いダミ声を聞くと、アメ横にいることを実感します。そして今年は「爆買い」が流行語になるなど外国人観光客の買い物の様子がニュースになっていましたが、アメ横でも外国人の方々がたくさん買い物をしている姿が目につきました。また最近は中国韓国系のお店が増えて、よりアジア色が強くなったような気もします。


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 買い物に夢中になっていると見落としがちですが、商店街の一角に「魔利支天 徳大寺」という 江戸時代から続いている歴史あるお寺があります。 活気ある商店街にいるとは思えないほど静かな場所です。ここのお寺は厄を除いて、運を開く守護神だそうです。買い物の合間のひと時、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。年末最後のお買い物はアメ横へ。活気ある雰囲気を楽しみに訪れてみて下さい。

 それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。

December 11, 2015

墨東の過去・現在・未来-永井荷風と藤牧義夫の視線


 「墨東」と呼ばれる隅田川の東側の地域、すなわち東京スカイツリーが聳える向島や本所・深川には江戸時代以来の運河がいく筋も流れ、そのこには大正末から昭和の初めにかけての震災復興事業で架けられたモダニズム様式による鋼鉄の橋が数多く残っています。

20151211sumidaandskytree.JPG 近未来的な超高層建築の代表とでも言うべき聳え立つ東京スカイツリーを背景として、下町が醸す江戸の残り香と鋼鉄の橋が映すモダン都市東京の残影が重なり合うこの地は、過去・現在・未来が溶け合った独特の風情を漂わせています。多くの芸術家がこの地に魅せられ、作品のモチーフとしました。

 例えば、東京小石川に生まれ育った「墨東奇譚」や「すみだ川」などの小説で知られる作家永井荷風(1879~1959)は、作品を通じて、失われゆく江戸の名残の欠片をひとつひとつ慈しむように拾い集めました。この地をモチーフにした随筆、「深川の散歩」、「元八まん」等では、新しい鋼鉄の橋が次々と架けられ、コンクリートの道路が作られるなど急速に江戸の風情を失いながらモダン都市へと変貌を遂げる東京を描きとどめました。当時五十代半ばであった荷風は、過去・現在・未来を重ね合わせ、その幻視を作品に描き留めた、過去へ向かう時の旅人だったのでしょう。

 一方、昭和初期の画壇に彗星のごとく現れ忽然と消えた天才的版画家、藤牧義夫(1911~1935失踪)もこの地に魅せられた芸術家の一人です。群馬県館林に生まれ育った藤牧は、十六歳で上京しデザイン会社に勤務する傍ら、表現主義的作風の版画作品で画壇に鮮烈な印象を与えました。1935年、弱冠二十四歳で失踪した彼の画業は四十年余り後、画廊「かんらん舎」の大谷芳久氏により再発掘されるまでほぼ忘れ去られていました。活動期間が極めて短いこともあり現存作品はわずかです。

20151211shirahige_bridge.JPG 私がその中で特に注目している作品が「絵巻隅田川」です。奇しくもこの作品は、荷風が随筆「深川の散歩」や「元八まん」を執筆したのと同じ昭和9年(1934)に描かれました。細い墨線による「白描」と呼ばれる技法を用い、白鬚橋から相生橋にかけての隅田川両岸の景色(注)を細部に至るまで克明に描写していますが、一見して見たままをただ写したように見えながら、映画の撮影技法にヒントを得たと思われる驚くべき奇想が隠されています。二十三歳の若き天才画家が胸に秘めた、情熱の火照りを今なお宿すこの絵巻は、一瞬にして私の魂を鷲掴みにしてしまいました。

20151211kiyosu_bridge.JPG 絵巻の冒頭に彼はこう記しています。

 「未来すみだ川 橋の発達によりて
 川の面は何十年後遂に覆はれ昔日のおもかげを
 偲ふ事不可能となるにや、余写生中
 この予感あり、幸いにいまだ橋少なし
 精出して写生を勉むべしとす
 昭和九年十月下旬考  義夫」


 隅田川両岸の景色が新たに架けられたモダンな橋梁により変貌を遂げたように、何十年後の未来は現在の景色を偲ぶことができないほど変化するであろうという予感を抱きつつ、写生に励んだという、制作中の藤牧の心境が書かれていますが、この絵巻を描くに至ったきっかけとなったのは、江戸時代の版画家、歌川豊春と葛飾北斎の作品であったことが指摘されています。

 藤牧もまた過去・現在・未来を重ね合わせた幻視を「絵巻隅田川」という作品に描き留めた時の旅人として、未来へ旅立ったのでしょうか。



(注)白鬚橋から三囲神社までを描いた完成作二巻と浜町公園から相生橋までを描いた試作とも言うべき一巻とに分かれ、前者は東京都現代美術館、後者は館林市立資料館に所蔵されている。


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December 4, 2015

日本の商業デザインのパイオニア「杉浦非水・翠子展」のご紹介~白根記念 渋谷区郷土博物館・文学館より~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。紅白歌合戦の出場歌手も発表され、いよいよ年末の気配が感じられてきました。その会場であるNHKホールをはじめ、渋谷には様々なスポットが数多く点在しています。今回のブログでは、渋谷の街の通史やゆかりの文学者に関する貴重な資料を展示している博物館、『白根記念 渋谷区郷土博物館・文学館』をご紹介いたします。

20151204shibuya_museum.jpg 『白根記念 渋谷区郷土博物館・文芸館』は、昭和45年、区立中央図書館内に設置された「郷土資料室」が前身です。その後、昭和49年に故白根全忠氏から区に寄贈された宅地と邸宅をもとに、区に関する資料の保管・展示の場として利用に供されてきた「白根記念郷土文化館」を全面改築したもので、郷土の歴史と文化を学び、新たな"渋谷らしさ"の創造を目指す施設として平成17年に生まれ変わりました。

 地上2階、地下2階の館内では、渋谷区に関係する歴史・民俗・考古学・文学などがテーマ毎に構成されています。年2~3回の特別展を開催するほか、収蔵資料を検索できる情報コーナーや戦前の住宅再現などのほか、本物の江戸時代の道具や縄文土器に直接触れたり、実際に年度の上に縄文模様を付ける体験も出来ます。

20151204sugiura_flier.jpg 現在は特別展「杉浦非水・翠子展」を開催中。日本の商業デザインの先駆者で、三越やカルピス、地下鉄開通ポスターなどの広告で知られる杉浦非水と、その妻で歌人の翠子は、戦前から戦後にかけ、それぞれの分野で先駆的な活躍をしました。展示では日本の近代の歩みとともに、二人の作品の数々を見ることができます。開催期間は、2016年1月11日(月・祝)まで。

 いつの時代も行き交う人で賑わう渋谷の街並み。現在は渋谷ヒカリエの開業を機に再開発も本格化しています。そこには様々な人による様々な功績があるという歴史背景を知ることで、より一層、渋谷への魅力が深まることでしょう。





【白根記念 渋谷区郷土博物館・文学館】

住 所 〒150-0011 東京都渋谷区東四丁目9-1
入館料  一般:100円(80円)/小中学生:50円(40円)
    ※(  )内は10名以上の団体料金
    ※60歳以上の人、障害のある人と付き添いの人は無料
会 館 午前11時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休 館 月曜日(休日の場合はその直後の平日)・年末年始
電 話 03‐3486‐2791
交 通 渋谷駅から
    都バス「日赤医療センター行き(学03)」(東口54番) 国学院大学前下車2分
    ハチ公バス「恵比寿・代官山循環」郷土博物館・文学館下車
公式HP http://www.city.shibuya.tokyo.jp/edu/koza/12kyodo/kyodoindex.html

November 27, 2015

映画祭の季節 ―第2回広島国際映画祭―


20151127hiroshima_movie_fes.JPG 日ごとに寒気加わる時節となりました。今年も残すところあとひと月です。皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 10月には、山形(山形国際ドキュメンタリー映画祭)、京都(京都国際映画祭)そして東京(東京国際映画祭)で国際色豊かな映画祭が執り行われました。現在、東京ではアジア映画を中心に特集が組まれた≪東京フィルメックス≫が有楽町で行われております。

 そこで今回は、昨年よりスタートし今年は更に充実した特集プログラムが組まれた≪第2回広島国際映画祭≫をご紹介いたします。

20151127hiroshima_movie_fes2.JPG 復興と希望の象徴である街、広島を舞台に世界一の映画祭を目指すと高らかにに宣言する≪広島国際映画祭≫。 第1回の昨年は広島県出身の映画監督・長谷川和彦にスポットを当て本格映画祭へのスタートを切り注目を集めました。

 バージョンアップした本年は、国外の映画祭で話題となっている作品の日本プレミアから、いま勢いのある日本の若手監督たちの特集上映、シネフィルの殿堂シネマテーク・フランセーズとの初の協賛企画に、質の高い作品を集めた短編映画のコンペティションなど注目のプログラムが目白押し。他にも広島出身の人気アーティストPerfumeのドキュメンタリー作品や、広島に因んだ作品の上映など関連ゲストも交え、新しい発見と出会いのある賑やかな映画祭となりました。

 中でも、ドキュメンタリーとフィクションの間を往還する不思議なテイストのポルトガル映画、ミゲル・ゴメス監督作品『アラビアン・ナイト』全三部作(日本プレミア)と、「今後20年間上映されることはない」(主催者言)という大変貴重な上映に立ち合うことができた、究極のプライヴェート・フィルム、フイリップ・ガレル監督作品『水晶の揺籠』(国内初上映)、人気俳優の染谷将太主演、古代魚ポリプテルス・エンドリケリーが実に印象的な濱口竜介監督作品『不気味なものの肌に触れる』(短編2013年制作)の三作が、私にとって特筆すべき収穫でした。

20151127hiroshima_movie_fes3.JPG 私自身広島を訪れるのも何十年振りかのことでしたので、映画祭を楽しむ傍ら、限られた時間ではありますが活気ある広島の市内を探索し、過去と現在が共存する広島の街のさまざまな表情を新たに発見することが出来ました。それは先人たちが生きた証、今を生き抜くため力、人と人との絆・・・。

 結びに、これからの期待も込めて≪広島国際映画祭≫には、地方都市開催の国際映画祭として優れて評価の高い≪山形国際ドキュメンタリー映画祭≫にも負けない、強い個性と革新的な魅力、ポジティブな力を国内外に発信していってもらいたいと思います。

※写真:上から、①②映画祭会場風景 ③平和通りのイルミネーション

≪第2回広島国際映画祭映画祭≫
会期:11月20日(金)~23日(月)
会場:NTTクレドホール、広島市映像文化ライブラリー他
次回映画祭(第3回)開催は平成28年を予定。

≪第16回東京フィルメックス≫
会期:11月21日(土)~12月4日(金)
会場:11月21日(土)~29日(日)有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇
   11月28日(土)~12月4日(金)有楽町スバル座(「特集上映ツァイ・ミンリャン」)
詳しくは http://www.filmex.net

    


November 20, 2015

展覧会図録について思う


 皆さんは展覧会に行くと図録を購入されますか?私は気に入った展覧会の図録はだいたい購入するようにしています。この場合、展覧会を見た興奮と勢いで「購入してしまう」と言う方が正しいかもしれません。装丁も、それぞれに凝っていたり、素敵なものが多いので、買ってしまう、というのもあります。

20151120books.jpg たった今、展覧会で目にした素晴らしい作品の数々を、いつでも、何度でも見返すことが出来る!という満足感と共に、分厚〜い図録を揚々と携えて帰ってくるのですが、熱が冷めるのは早いもので、帰って眺めるのはほんの数回で、ましてや解説を含めて隅々まで読み尽くしたものなど一体いくつあったか...いや、無いのではなかろうかと思うのです。私に購入された図録達にとっては悲しい運命です。実家に帰れば、これまでに買い集めた図録が、もはや本棚の中でインテリアの一部と化して、もう何年も開かれることなく寂しげに並んでいます。

 ですが最近、私の中での図録の位置付けが少しだけ変わってきました。この仕事に携わるようになってから、作品調査をする上で貴重な資料となることが、何よりの理由ではありますが、見返すたびに新しい発見があり、また読み物としても面白い本だなぁと思うのです。(何を今さら、と思う方、すみません...)

20151120rinpa.jpg ちなみに最近読んで面白かったのは、京都国立博物館で開催中の「琳派 京を彩る」展の図録です。琳派400年の今年、京都で大いに盛り上がっているこの展覧会に訪問したので、先の例に漏れず厚さ2センチはある図録を購入して帰りました。

 巻頭の河野元昭先生のお話、「琳派私的旅行」は、国宝級の作品を多数収録する雅で重厚感ある図録のイメージとは裏腹に、誠に失礼ながら巻頭にもかかわらずかなりラフな旅行記になっており、図録をみているというよりもちょっとしたエッセイを読んだような楽しさがありました。ともすれば堅苦しくなりがちな本の内容に向かう心を、ゆるく解きほぐしてくれるような効果があって、「琳派」というテーマと自分を少し近づけてくれたように思われました。

 そんなこんなで、最近の私にとって図録は、一過性のものではなく何度でも見返して楽しい、作品や作家と自分を近づけてくれる、そんな存在になってきました。先日実家に帰った際に、久しぶりに過去の図録を開いてみました。展覧会を見たときのことや、自分があの頃何に興味があり、どんな作品が好きだったか、そんなことを少し思い出したり、新たな魅力ある作品を発見したりして、ああ、やっぱり買ってよかったなぁ、と思ったのでした。

 皆さんは購入した図録、どうされていますか?私と同じように本棚に眠っているのであれば、時々は見返してみると、あの美術館にまた行きたいな、またあの人の作品を見てみたいな、と思うものがきっと見つかるかもしれません。



琳派誕生400年記念
特別展覧会「琳派 京を彩る」

会期:平成27年10月10日(土)~11月23日(月・祝)
場所:京都国立博物館


November 13, 2015

タイムスリップ-大正浪漫


20151113TanakaHouse1.jpg 秋の気配を徐々に心身に感じる11月初旬、川口市にある「旧 田中家住宅」を訪れました。ここは以前来たことがあり、そのとき強い印象を受け、是非再度見てみたい場所でした。一言でいえば大正時代の和洋折衷による邸宅で、国の有形文化財に登録されています。これほど見ごたえのある古い時代の文化財に気軽に入り込めるのは大きな魅力だと思います。

 田中家は麦麹味噌の醸造業と木材商で財を築き、四代目田中徳兵衛によってこの邸宅が建てられました。大正13年(1923)に完成した木造煉瓦造3階の洋館、昭和9年(1934)に増築した和館の他、茶室、池泉回遊式庭園などで構成されています。塔のようにそびえる洋館の外観は独特の様相で、その存在感を示しています。重みのある茶褐色のレンガに緑青の青味とアーチのついた白色系の窓枠が映える色彩、よく見ると重厚なシンボルが施された意匠など、荘厳で重厚な美しさです。

20151113TanakaHouse2.jpg 内部はまた秀逸でした。全部については語れませんが、いくつか挙げます。洋館1階の玄関は大きな神棚のスペースがあり目を惹きます。優雅な応接室の隣に来客用玄関があり、そこには美しいステンドグラスが設置されています。2階は階段の上に書斎や段差のある蔵があり、和館の2階にもつながっているようで、趣ある和室が隣接し、迷路のような幻想感。眺望を重視し、3階に大広間があります。いずれも年代物の美しい調度品に彩られています。アールデコ風の照明も見逃せないポイントです。目を惹いたのは、階段のスペースにある、部屋と部屋をつなぐバルコニーのような踊り場。残念ながら非公開場所につながっておりそこには立てませんが、何に使ったのか不思議な造りに感じました。

20151113TanakaHouse3.jpg 1階に降りて和館に行くと、日本間は全37畳で、やはり贅をつくしたことがうかがえる本格的な数奇屋造。障子の桟のラインもきれいですが、思わず見入ったのは、桂月山人と記された松林桂月の絵を掘った桐の欄間や、額装されているいくつかの桂月の山や植物の水墨画作品です。本物?と感嘆させられました。邸宅を出て、中心に池をもつ庭園を回ってみると、よく整備されて落ち着きのある庭で、庭そのものだけでなく、ここから見た邸宅の外観も美しい光景です。離れの茶室は戦後作られた比較的新しい建物で、和館の日本間とともに現在も茶会や句会などに利用されています。

20151113TanakaHouse4.jpg 時代を反映した意匠を施した建築物には限りない魅力を感じます。建物という空間の中に入り込むと、その時代にタイムスリップしたようにも感じられ、その時代の人たちの生活や視線を想い、深い感慨を覚えます。この旧田中家はその醍醐味をたっぷり味わわせてくれる場所でした。



国登録有形文化財
旧 田中家住宅 (川口市立文化センター分館)

所在 埼玉県川口市末広1-7-2   
問い合わせ 文化財センター TEL 048-222-1061
公開時間 9時30分~16時30分
休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は、その直後の平日)
    祝日の翌日(その日が休日または月曜日の場合は、直後の平日)
    年末年始(12月29日~1月3日)
入場料 一般 個人200円 団体1人160円
    小・中学生 個人50円 団体1人40円

November 6, 2015

ジョゼフ・コーネルの部屋を訪れた事

 
 コーネルの箱が好きである。


 ジョゼフ・コーネルは、1903年にニューヨークの裕福な家庭に生まれた。しかし父を亡くすと、家族を養うために学業を辞め織物会社で働かなければならなくなった。そして彼は家の地下室をアトリエにして箱を作り始めた。

 彼の箱は蚤の市ででも買って来た様な古びた外装で、中にはコルク玉、女優のブロマイド、図鑑から切り抜かれた動物たち、割れたグラス、地図、貝殻などが並べられている。彼の箱は言うなればガラクタのいっぱい詰まった、あるいは、それすらあまり入っていない箱である。彼の作品を目にして2秒で立ち去る人もいるが、私はそれをずっと見ていたい。彼の箱の前に立つと、既になくなってしまったチョコレートの箱の匂いを嗅ぐような、甘い寂寥感を感じる。私は中でもホテルシリーズの様なモチーフが少ないものが好きである。箱(=部屋)の中にある、かすかな手がかりから隠れた物語を探すのである。空っぽのホテルの部屋で数時間前に起こった事件を想像し、ずっと昔に起こったホテルの歴史に想いを馳せてみる。

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© OSAMU INOUE, 2015
自宅の風呂場をコーネル風にしてみた...



 千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館で現在開催中の「絵の住処(すみか)--作品が暮らす11の部屋--」(2016年1月11日まで)で、ジョゼフ・コーネルの作品が見られるというので訪れる事にした。今回は立体、平面含め16点もの作品が、展示されている。「ジョセフ・コーネルの部屋」と題された一室には彼の作品だけが展示されている。その中の一つに《無題(ピアノ)》があった。箱の内側に楽譜が貼ってあり、3段に仕切られた棚には楽譜を貼付けたマッチ箱の様なものが置いてある。そして甘く切ないオルゴールの音色がエンドレスで聞こえて来る。元はモーツアルトの「ピアノ・ソナタ ハ長調(K.545)」が奏でられたそうだが、音楽に全く造詣がない私には、それかどうかわからない。しかし国内にこれだけの数のコーネルのコレクションを持っているとは、実にすばらしく、ありがたい事である。コーネルの箱をまだご覧になられた事がない方は、是非この機会に彼の部屋を訪れていただきたい。ただ彼の箱の世界に閉じ込められて、出られなくならない様にご注意いただきたい。

 ちなみにコーネルについての書物で、私のお気に入りは以下。「コーネルの箱」(チャールズ・シミック著、柴田元幸訳、株式会社文藝春秋発行)は、コーネルの箱の写真とシミックの幻想的な詩とが織りなす、まさに迷宮的世界で逸品。洋書の「Joseph Cornell : Navigating the Imagination」(Lynda Roscoe Hartigan著)は彼の作品がたっぷりと掲載されている。

 さて彼の部屋に長居をしすぎたため、少々コーネル疲れを起こした。隣接するレストラン「ベルヴェデーレ」で昼食を取る事にする。ここでは千葉の地のものを取り入れた料理をいただける。美術館のレストランに相応しく、前菜の盛り合わせの皿は画家のパレットの様にカラフルで、出て来る品々が皆目で見て美しく、そして美味しい。窓からは緑に囲まれた池の景色が楽しめる。ただし休日のランチは混雑するので、早めに入った方が良さそう。

20151106ViewFromRestaurant.jpg
© OSAMU INOUE, 2015
レストランの窓から、樹々に囲まれる池を眺める



 食後に池の畔で一休みする事にする。池には白鳥が居る。白鳥というものは翼を広げて立ち上がる(元から二本足で立っているが)とかなり大きい。鳴き声も騒がしく威圧的とまで言える。一羽がこちらに向かって迫って来る。白鳥に追われ引き上げる事にした。


 尚、DIC川村記念美術館と言えば、マーク・ロスコの部屋(心臓の中の様に赤い)やフランク・ステラの部屋(体育館の様に広い)も、とてもすばらしいです。



【DIC川村記念美術館のご案内】

所在 千葉県佐倉市坂戸631番地
電話 0120-498-130(フリーダイヤル)
開館 9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館 月曜日、但し祝日の場合は開館し翌平日休館
   年末年始、展示替期間
料金 その時の展示内容により変わります。
   詳細は美術館へお問い合わせください。
交通 ◆JR佐倉駅より
   南口の「DIC川村記念美術館バス停」より無料送迎バスあり(乗車約20分)
   ◆京成成佐倉駅より
   南口の「シロタカメラ」前より無料送迎バスあり(乗車約30分)

October 30, 2015

こみちの先に~山口蓬春記念館


20151030Alley.JPG いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。爽やかな秋晴れの日、葉山の方へ足を運びました。海沿いの道を進み、御用邸の手前一色海岸付近までくると、意識することもなく海側に立派な建物「神奈川県立近代美術館 葉山館」が見えてきます。

 しかし、今回の目的地はそちらではありません。その反対側、山側の電柱を意識しなければ分からないくらい控えめに、「山口蓬春記念館」の案内があります。今回の目的地です。しかし、ぱっと見る限りそれらしい建屋は見えません。すると「蓬春こみち」の看板が目に入り、車も入れない所を案内のまま道なりに進みます。開けた場所に「山口蓬春記念館」の入り口が見えてきます。一歩入った瞬間から静かな雰囲気、そしてよく手入れのされているお庭の先に立派な日本邸宅が現れます。

20151030HoshunYamaguchi_Memorial_Hall2.JPG 記念館は先生が昭和46年77歳で亡くなるまで、23年間を過ごしたご自宅が改装されています。受付を済ませると記念館の案内とともに、なんとお菓子を貰いました。これは後でのお楽しみです。玄関で靴を下駄箱へ納め、スリッパに履き替えて入場します。建屋としては大変立派なのですが、美術館の感覚で入ると少しこじんまりしています。しかしそれが良く、まるで本当にご自宅にお邪魔しているような感覚に陥ります。

20151030HoshunYamaguchi_Memorial_Hall1.JPG 展示スペースは、小さな展示室が3室ほど。そして、後は建屋そのものの見学です。各部屋に大きな窓ガラスがあり、お庭を眺めることができます。画室には画材がそのままおいてあり、あたかも今もそこで制作が行われているような印象を受けます。

 別館には一度スリッパを脱ぎ、外履きに履き替えて向かいます。2階に喫茶スペースがあり、コーヒーやお茶を無料で楽しめます。入館時に貰ったお菓子をいただき、窓の外に見える葉山の海岸を眺めると落ち着きます。大変居心地がよく、いつまでも留まっていたいと思える至福のひとときでした。




【山口蓬春記念館のご案内】

所在 神奈川県三浦郡葉山町一色2320
電話 046-875-6094
開館 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館 毎週月曜日(祝日・休日の場合は開館し翌日休館)
   展示替え期間、館内整備日、年末年始
料金 一般600円、高校生以下無料(団体割引等もあります)
   年間入館券1,800円
交通 ◆JR「逗子駅」より
   京浜急行バス3番乗り場
   「海岸回り葉山行(逗12)」または
   「海岸回り福祉文化会館行(逗11)」乗車(約18分)、
   「三ヶ丘・神奈川県立近代美術館前下車」下車 徒歩2分

   ◆京急「新逗子駅」より
   南口2番乗り場
   「海岸回り葉山行(逗12)」または
   「海岸回り福祉文化会館行(逗11)」乗車(約18分)、
   「三ヶ丘・神奈川県立近代美術館前下車」下車 徒歩2分
   ※土日、休祝日は大変混み合いますのでご注意ください。

※より詳しい情報につきましては、山口蓬春記念館へお尋ねください。


October 23, 2015

密やかに咲く


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。朝晩の冷え込みと富士山の初冠雪の便りを聞くと、冬の到来も間もなくであることを意識いたします。体調を崩しやすい季節でもあり、皆様どうぞご自愛くださいませ。



20151030sazanka.jpg


 このところ秋晴れの爽やかな天候が続いていますが、散策の途中に立ち寄ったお寺の境内で、密やかに咲く山茶花(さざんか)が目に留まりました。瑞々しい青い葉の間から清楚に咲く花に凛とした空気が漂っていました。寒くなると花木に触れる機会が少なくなりがちではありますが、季節ならではの楽しみ方がありますね。

 さて今回は、当社彩美版®のラインナップのなかから小倉遊亀の《山茶花》をご紹介いたします。静謐な画調の中から瑞々しい感性と凛とした精神性が感じられる逸品です。


小倉遊亀 《山茶花》
彩美版®、軸装・額装
販売価格(各) 180,000円+税


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●額装仕様


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●軸装仕様


<仕様・体裁>
監修 鉄樹
解説 細野正信(美術史家)
原画 滋賀県立近代美術館所蔵
技法 彩美版®、シルクスクリーン
装丁 軸装・額装
限定 300部発行

<軸 装>
軸装 三段表装、柾目桐箱付
画寸 天地47㎝×左右53㎝
軸寸 天地143㎝×左右73㎝

<額 装>
額縁 木製金泥箔仕上げ、アクリル付
画寸 天地47㎝×左右53㎝
額寸 天地63㎝×左右70㎝
重量 約3.2kg




【今日の谷根千】

地下鉄「千駄木駅」近くにある森鴎外記念館の情報です。
現在、以下の特別展が開催されています。


20151030ougai_museum.jpg


特別展 「ドクトル・リンタロウ―医学者としての鴎外」

文京区立 森鴎外記念館
所在 東京都文京区千駄木1-23-4
電話 03-3824-5511

会期 2015年10月3日(土)~12月6日(日)
休館 10月27日(火)、11月24日(火)
時間 10:00~18:00(入館は17時30分まで)
※11月6・7・8日(金土日)は20時まで開館(入館は19時30分まで)
料金 一般500円(20名以上の団体は400円/人)
   中学生以下は無料


October 16, 2015

紅葉の季節を迎える小石川後楽園


20151016entrance.jpg いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。弊社の所在地である文京区小石川付近には、東京ドーム、ラクーア、小石川植物園など様々な施設や観光名所があります。その中でも今回は、都内屈指の美しい紅葉名所として知られる「小石川後楽園」を"一足早く"ご紹介いたします。

 小石川後楽園は江戸時代初期に水戸徳川家の江戸上屋敷内につくられた築山泉水回遊式(池を中心にした回廊型の造り)の日本庭園(大名庭園)であり、国の特別史跡及び特別名勝に指定されている都立公園です。
 寛永6年(1629)初代藩主頼房が庭の造営に着手し、二代光圀に引き継がれました。園名は中国・北宋時代の文人、范仲淹(989~1052)が著した『岳陽楼記』中の一節「天下の憂いに先んじて憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ(先憂後楽)」に因んで光圀が命名したそうです。

20151016kourakuen_park.jpg 7万平方メートル以上の広大な園内には、梅、松、桜、ツツジ、花菖蒲、稲、ススキなど数多くの植物が植えられ、四季を通じて情緒溢れる景色が広がっています。今の季節は写真の通り緑豊かな木々に囲まれている様子ですが、11月に入るとイロハモミジやハゼ、ケヤキ、イチョウなどが紅葉し、通天橋や紅葉林などの紅葉が緻密に計算された園内に所狭しと趣深く色づきます。特に、京都・嵐山を再現した大堰川付近は、多くの木々が色づく絶景ポイントとなります。

20151018maccha_tea.jpg 歩き疲れたら、園内にあるお食事処『涵徳亭美都屋(かんとくていみとや)』へ。ランチのお弁当だけでなく、甘味やお茶、お酒もあるので、天下の庭園を眺めながらのんびりと過ごすこともできます。間もなく紅葉の季節。この名園で美しく長閑な時間をお過ごし頂ければ幸いです。



※「小石川~」と冠したのは、岡山の「後楽園」と区別する為です。隣接する野球場はその名にちなみ『後楽園球場(現:東京ドーム)』と名づけられました。



【都立小石川後楽園】

所在地 東京都文京区後楽1-6-6
電 話 03-3811-3015
入 園 9:00~16:30(閉園17:00)
休 園 年末年始(12月29日~翌年1月1日)
入園料 一般:300円、65歳以上:150円
    小学生・都内中学生は無料。
    その他、団体割引有。
交 通 後楽園駅(丸ノ内線・南北線)より徒歩8分
    飯田橋駅(JR、大江戸線・東西線・有楽町線・南北線)より徒歩8分


October 9, 2015

秋を探して-田園を巡る旅


 早や10月、季節が深まってきましたね。当社周辺の銀杏並木もほんのりと色づいてまいりました。今年は10月8日が二十四節気の「寒露」にあたり、晩秋の始まりの日です。夏の喧騒のなごりは消えて、ついこの間までの暑さがうそのように朝晩少し肌寒さを覚えるようになりました。移ろい行く季節に柄にもなく、ふと感傷的気分が心を去来したりします。

20151009OOTANBA_chestnut.jpg 秋は実りの季節、豊かな自然の恵みが嬉しくて、食いしん坊揃いの我が家では今、柿や梨、みかん、栗など沢山の秋の果実が食卓を彩っています。写真は「大丹波」という、一粒が普通の三倍ほどもある大きな栗です。
 9月末の休日に、この「大丹波」を求めて、いつものように自転車で千葉県の印旛地方へ出かけてきました。あいにく前日までは雨で、当日もどんよりとした曇り空でしたので、久しぶりの谷津道はところどころ泥濘んでいました。帰宅してから自転車にこびりついた泥を拭い落とすのが大変でしたが、澄んだ田園の空気を思いっきり肺の奥底まで吸い込みながら、気持ちよく走ることができました。

20101009autumn_countryside.jpg 印旛へ行くにあたり、気がかりなことがひとつありました。今年9月10日から11日にかけて、関東や東北地方を襲った豪雨の被害です。
 利根川の下流域、印旛沼から霞ヶ浦にかけては「香取の海」と呼ばれた、古の広大な内海のなごりです。そのため土地が低くかつては大雨のたびに印旛沼が溢れて洪水を引き起こしていました。
 今回の豪雨の際は、印旛沼周辺では大規模な洪水は起きませんでしたが、付近の稲田は冠水したところもあったようで、収穫直前の黄金色に実った稲穂が、無残にもすべて倒れ伏す様子が確認されました。

20151009Shinkawa_river.jpg この日は家を出た時刻が遅く、買い物を終えてから直ぐに帰らねばなりませんでしたので、翌週末に改めて、爽やかに晴れた空のもと、印旛から利根川まで往復約100kmの道を走ってみました。
 田んぼの傍らを流れる新川はもとの穏やかな容貌を取戻し、美しい秋空を映しつつゆったりと流れていました。土手に沿って植えられた河津桜の並木は既に大方葉を落とし、春の華やかな川辺と同じ場所とは信じられないくらい、寒々とした景色に変わっていましたが、群れ飛ぶ赤とんぼや土手を跳ねるトノサマバッタなどの虫たちが、無数に息づく小さな命の存在を実感させてくれました。

20151009Persimmon.jpg 空はすっきりと晴れ渡り、美しく繊細な絹雲がかかっていました。秋空の青さは夏の青とは明らかに異なるほんのりと白を混ぜたような柔らかな青です。そこに純白の絹糸の束を浮かべたかのような、しみじみと心に沁み入る秋空の風情は、私がこの季節を愛する所以のひとつです。
 農家の庭先で見つけた小さな秋。たわわに実る柿の実の艶やかな橙色が青空に照り映えていました。思わず自転車を止めて見入ってしまいました。

 田園の美しさは、先祖代々その土地に根ざして暮らす人たちの日々の営みが自然とともに創り上げてきたものです。季節や日々の天候の変化、植物の成長などによって毎日異なる様相を見せるその景色は、例え毎週通ったとしても味わい尽くすことは出来ません。

20151009Inbanuma_lake.jpg 美しい景色に見惚れてゆっくり走りすぎたようです。利根川の畔に到着した頃には既に午後3時を回り、陽は大分西に傾いていました。印旛沼から流れ出た長門川が利根川に注ぐ河口堰の傍らで遅い昼食を摂った後、少しペースを速めて長門川沿いの道を遡り上印旛沼に出ました。湖畔では薄に良く似た葦の穂が、夕方の日の光を受けて銀色に輝いていました。

20151009sunset.JPG 当初は甚兵衛大橋の袂を抜け、印旛捷水路沿いの自転車道を使い佐倉城近くの下印旛沼へ出ようと考えていたのですが、予定を切り上げ家路を急ぎました。
 田んぼの真ん中を貫く小さな野川に沿った細道を急ぎ走るうちについに日が落ちてしまいました。周囲に人口の明かりは一切設置されておらず、唯一の灯りは自転車の頼りない小さなライトのみ、数メートル先の路面も全く見えずいささか心細い思いをしました。
 ようやく家に辿り着いたころには、とっぷりと暮れていました。それでも久しぶりの田園の旅は、私の心を暖かく満たしてくれました。


October 2, 2015

東京都美術館で「モネ展」開催中


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。10月に入りやっと秋らしくなってまいりました。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。私は先日、上野の東京都美術館で「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」に行って参りました。

 ルノワールと人気を二分する印象派の巨人、クロード・モネ(1840-1926)。パリのマルモッタン・モネ美術館には画家が最期まで手元に置いた貴重な作品の数々が所蔵されています。十代で描いた風刺絵-地元で大変な人気を得てモネは画家として立つ自信を得た-、画家の没後に発見された家族の肖像画、モネが集めた同時代の画家たちの作品-ルノワールが鉛筆で描いたリヒャルト・ワーグナーの肖像はワグネリアン必見!-等々、モネの人生や人物像を知る上で欠かせない作品ばかりです。モネの歴史的コレクションで、貴方はますますモネの世界に惹きつけられることでしょう。

 中でも注目は何と言っても《印象、日の出》です。印象派の由来となった著名な作品ですが、東京で鑑賞できるのは21年振りとのこと。わたしは昼間の喧騒を避け、夜間の特別展示でじっくりと作品を鑑賞いたしましたが、想像していたより小振りな作品にもかかわらず、名画の放つオーラと統一感、細部の光と色彩の豊かさに思わず息を飲み、その場で足が釘付けになりました。尚、この作品は会期中ひと月しか展示されませんので、《印象、日の出》を目的に訪れる方はくれぐれもご注意下さい(展示は10月18日まで)。同20日からは、これまた滅多に館外には出ないという《ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅》が特別展示されます。

 他にもモネが生涯愛したジヴェルニーの庭園を描いた一連の作品も展示されており、《睡蓮》や《しだれ柳》、《(日本風の)太鼓橋》や《バラの道や庭》等々、マルモッタンの貴重なコレクションでモネの豊かな創造の世界を堪能することができます。わたしは特にモネ最晩年の作品に、コンテンポラリー絵画にも通じる、モチーフを描くというよりは見るという行為そのものを描出するような、写実を離れ印象/抽象の世界をより強く志向する姿勢を感じ、深い感銘を覚えました。

 芸術の秋にふさわしい、見応えあるモネの展覧会に皆さまもぜひ足をお運び下さい。


【展覧会情報】

マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 「印象、日の出」から「睡蓮」まで


会場 東京都美術館
会期 2015年12月13日(日)まで
   ※休室日=月曜日(10/21・11/2・11/23を除く)、
    10/13(火)、11/24(火)
時間 9:30~17:30 (金曜、10/31-11/2は20時まで)
※ただし「印象、日の出」展示期間は10/18(日)までです。
 期間中の土・日・休日は21時まで特別開館します。


 なお、弊社では文中でも触れたモネの代表作《印象、日の出》の複製画を大小2つのサイズでお取扱いしております。好評発売中の『睡蓮、水のエチュード-雲』ともども、貴方様のお部屋のインテリアとして、また大切な方への記念品や贈り物としてお勧めいたします。




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モネ《印象、日の出》
※上の画像は10号サイズ版です。


モネ 《印象、日の出》
①F3号  販売価格 25,000円+税
②F10号 販売価格 40,000円+税


<仕様体裁>
技法 アートレリーフTM
画寸 ①F3号/②F10号
額寸 ①36.0×41.5cm/②62.5×70.0㎝
重量 ①1.2kg/②3.6kg
額縁 特製木製洋額
原画 マルモッタン美術館所蔵
発行 共同印刷株式会社





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モネ《睡蓮、水のエチュードー雲》
※画像をクリックするとより大きな画像が別画面で開きます。
Photo © RMN-Grand Palais (musēe de l`Orangerie) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNP artcom



モネ 《睡蓮、水のエチュード-雲》
販売価格 128,000円+税


<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
画寸 28.3×91㎝(30号大)
額寸 38.2×100.8cm
重量 3.3kg
額縁 特製木製デコレーション金箔額
原画 オランジュリー美術館所蔵
発行 共同印刷株式会社


September 25, 2015

読書の秋


 空高く、秋を感じる季節となってまいりました。シルバーウィークは連日晴天に恵まれ、お出かけ日和でしたね。次回このような大型連休が訪れるのは11年後だそうです。

20150925autumn_sky.jpg
 さて、私は特に予定のない連休でしたので、久しぶりに集中して幾冊かの本を読みました。今日はその中の一冊、山口晃(やまぐちあきら)著「ヘンな日本美術史」をご紹介したいと思います。山口晃氏といえば、現在と過去がミックスされたような都市鳥瞰図が代表作の現代アーティストですが、結論から言うとこの方の絵画解説がとても面白いのです。

 タイトルの「ヘンな日本美術史」は、「変な(=ふしぎな)日本美術・史」というような意味合いだそうです。現代人が見ると何でこんな風に描いてあるのだろう?、どうやったらこんな風に描けたのだろうか?という疑問に答えるように、《鳥獣戯画》や雪舟、《洛中洛外図》、河鍋暁斎などの作品を古い順に取り上げ、独自の目線による解釈を踏まえて解りやすく紐解いています。

20150925autumn_clouds.jpg
 山口さんの解説を読んでいると、一見何でもない絵や、価値を見落としてしまいそうな作品がとても魅力に見えてきました。作品に関連して登場する過去の人達だけでなく、現代画家のモノの捉え方も垣間見た感じがしてとても面白かったです。美術史本とはいえ、気軽に読める内容なので、秋の夜長の一冊にいかがですか?

山口晃著「ヘンな日本美術史」
ISBN:978-4396614379

出版社:祥伝社
発売日:2012年10月31日
判 型:四六判ソフト(256ページ)
定 価:1,800円+税

September 18, 2015

Nostalgia for 深谷


20150918fukaya_station.jpg 関東にも凄まじい水害をもたらした台風を中心に、雨が降り続いた週でしたが、ようやく太陽が蘇った休日、高崎線に乗って深谷を訪れました。深谷と言えばレンガの街。深谷駅は東京駅に良く似た赤レンガで覆われ、中心市街地にも古いレンガ造りの建物が残っています。深谷の日本煉瓦製造会社で造られたレンガは東京駅や司法省(現法務省)、日本銀行(旧館)など日本を代表する建物に使用されていたとのことでした。

20150918nanatsuume_yokocho.jpg 深谷の街は休日ということもあってか、非常に静かでのどかです。レトロな骨董屋もあれば若者向けの洒落たコミュニティ・スペースも目にします。旧中山道沿いに古いレンガの煙突が見えてきます。「七ツ梅」という、酒造の煙突で、ここが本日訪れたかった場所です。七ツ梅は江戸時代を代表する銘酒のひとつで、元禄7年(1694年)創業し、以来三百年の歴史を持つ県内1、2を競う老舗蔵元でしたが、2004年廃業、現在は一般社団法人まち遺し深谷が、この施設の保存・運営・管理を行っています。

 敷地内の母屋、店蔵、精米蔵、釜屋の建物があらたに様々な店舗やホールとして活用されています。「とうふ工房」(手作りとうふ)、「深谷宿本舗」(手作りBOXマーケット)、「カフェ七ツ梅結い房」(コーヒー、カレー)「よろずの郷」(木工所)、「鬼義」(鬼瓦工房)などなど個性あるお店が集まっています。店舗はいつも全部開いているわけではなく、この日もいくつか閉まっていました。

20150918fukaya_cinema.jpg そんな中、七ツ梅の中核にあるのが「深谷シネマ」で、風情いっぱいの街の映画館です。この酒造跡に最初にできたのがこの深谷シネマだそうです。上映作品に穏やかな叙情を感じるのは気のせいでしょうか。今回は入りませんでしたが、いずれ是非映画を鑑賞したいと思います。



20150918sugata_syoten1.jpg そして「須方書店」という古書店の店内を物色しました。ギターのBGMが流れ、正面奥に、酒桶の蓋に見える巨大な丸い板が壁を覆っています。興味深い古本もいくつかあり、レコードも置いていました。手に取るのも気後れする和装の古書もあれば、書名は読めないものの装丁のデザインが目を惹く明治時代の古書も置いていました。売る側も買う側も本に接するのを楽しむ空間と感じました。様々な本が置かれる中で、本とは無関係に机上にディスプレイされたオブジェをアートとみるかどうか気になる内装でした。

20150918sugata_shoten2.jpg 古い民家や蔵をあらたに活用する試みはしばしば見られ、私自身とても惹きつけられます。特にこの七ツ梅横丁敷地の建物は極めて古く、歴史的・文化的に興味深い様相で、味わいに溢れていますが、老朽感がシュールすれすれの印象を受ける側面もあります。深谷に息づくノスタルジーの美学を象徴するかの様な濃い空間を体感しました。

September 11, 2015

東山魁夷の美を追求する


 名前を知らない人はいないぐらい、東山魁夷画伯は日本を代表する著名な画家です。日本芸術院会員、文化勲章受章者であり、皇居新宮殿大壁画《朝焼けの潮》や奈良唐招提寺の壁画制作、また美術の教科書に作品《道》が掲載されていた事を記憶している方もいらっしゃるのではないでしょうか。深い精神性を秘めたその風景画は、今なお人々の心を引きつけてやまない国民的な人気画家です。

 この度、良きご縁に恵まれ東山魁夷画伯の新作品を「東山魁夷 マスターピース コレクションTM」として世に送り出す事となりました。その作品の名は《静映(せいえい)》。今年の春、北陸新幹線開通の記念として長野駅の東西自由通路に設置された「壁画 静映」の事を思い浮かべる方々も多いと存じます。信州を訪れた方を見守る縦2m×横10mの巨大な壁画の元になった作品は、長野県信濃美術館 東山魁夷館にある《静映》です。信州をこよなく愛した東山魁夷は、斑尾高原にある希望湖(のぞみこ)を取材し、それを元に《静映》を完成させました。作品は夏の朝の静謐な空気に包まれる森の木々と、鏡の様な湖面が描かれており、東山ブルーと云われた独特の美しい青の色彩の世界が存分に表されています。

 今回、この美しい風景画を表現するにあたり、アクリルガラスに直接本紙(絵柄)を接着させるという技法で作品の持つ美しさを引き出しています。森の木々の重なりや奥行き感、湖面の透明感やブルーの色合いなどが、すばらしく表現されています。また、アクリルガラスはUVカット仕様の高価なものを用い、紫外線や空気からの本紙の劣化を保護してくれています。額装も特注木製額に本紙が浮き出した様に見える、今までにない様な特別な仕様です。日本間からマンションの洋間まで広くマッチするシンプルで高級感ある額装で、サイズも見応えのある大きさです。その完成度は、著作権者のお墨付きをいただきました。正に美しさの極致に達したのではと自負しております。今までの複製画表現とは違った、新鮮な作品をお楽しみください。


東山魁夷 マスターピー ス コレクションTM
東山魁夷 《静映》

販売価格 500,000円+税


<仕様体裁>
監 修 東山すみ
原 画 長野県信濃美術館 東山魁夷館 所蔵
限 定 300部
額 縁 特注木製額シルバー仕上げ、ハンドメイド浮き出し加工
画寸法 天地40.6cm×左右81.4cm
額寸法 天地58.6cm×左右99.4cm×厚み3.5cm
重 量 6.0kg



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■作品本体が浮き出るデザイン額装は、今までにない臨場感を感じていただけます。




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■ 額の裏に貼られる奥付には限定番号が入り、著作権者の承認印が押されます。  
また、当社が開発したセキュリティーシールも奥付に貼られ、シールをスマートフォンなどのカメラでフラッシュを用いて撮影すると、画面上に特定の文字が浮き出て見える事で真贋が判断できます。


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■監修の証として、画面左下部に「ATELIER KAII HIGASHIYAMA」のマークが入ります。


September 4, 2015

海風薫る~横須賀美術館へ


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。最近はだいぶ涼しくなってきましたが先月の暑さも残るある日、私は横須賀美術館へ行って参りました。

20150904yokosuka1.JPG 車で向かうと三浦半島を国道16号線で南へ下り、途中から海沿いのコースを走ります。すると、美術館数キロ手前の馬堀海岸沿いを真っ直ぐ伸びる道路脇壁面に、多くの絵が描かれているのが目に入ってきます。「うみかぜ画廊」と呼ばれ地域の学生たちの作品が展示されています。約700mに渡り画廊は続き、「海や港と横須賀」をイメージした作品は、横須賀市立総合高校の美術部の生徒、卒業生のみなさんが制作したものです。運転しながらですと、気になってしまいますので駐車して、散歩がてら楽しむのが良いでしょう。

20150904yokosuka2.JPG そこからさらに南、観音崎方面へ進み山間を抜けた場所へでると、右側に広い芝生の広場とその奥に水色を基調とした洒落たデザインの建物が現れます。正面の海と背後の山に挟まれた自然豊かな場所に横須賀美術館は建てられています。自然に囲まれた場所になじむように建てられた建造物は自然の一部であるかのように違和感なく風景に溶け込んでいます。

20150904yokosuka3.JPG 目の前一面に広がる海がなんとも開放的な雰囲気で、吹き抜けの展示ギャラリーは自然光を取り込むために鉄の内壁に穴が開けられおり、また塩害を防ぐためにガラスで包まれています。これにより、外観がガラスに覆われた特徴的な構造となっています。そしてコチラの美術館は、なんと屋上にも出ることができます。東京湾を見渡せば大きなタンカーが絶えず行き来しており、対岸に房総半島を望み、空気が澄んでいる時は東京スカイツリーまで見ることができるようです。
無料で使用できる望遠鏡も設置されています。

 横須賀市の美術品収集が始められたのは、1985年のことです。その後、1996年に朝井閑右衛門の作品が一括して市に寄贈され、そのことがきっかけで、美術館建設が具体化することとなりました。さらに1998年には、谷内六郎夫人・達子氏から週刊新潮表紙絵が多数寄贈されました。1999年には、美術館基本計画策定委員会によって美術作品の収集対象が、近現代の絵画、版画、彫刻とされ、以下の基準によって収集を進めました。

・横須賀・三浦半島にゆかりのある(出身、居住、在住等)作家の作品
・横須賀・三浦半島を題材とした作品
・「海」を描いた作品
・日本の近現代美術を概観できる作品

 その後、市制施行100周年記念事業の一環として、2007年4月28日、横須賀美術館が開館しました。絵画、彫刻を中心に、約5千点の日本の近現代美術の作品を所蔵しています。

 評判のよいレストランも併設されているので食事を楽しんだり、芝の広場に寝転んだり、周囲の散策も良いでしょう。少し歩けば観音崎灯台や走水といった名所もあります。海風に吹かれながら、のんびりリラックスできる美術館だと思いますので、リゾート気分を満喫しに足を運んでみてはいかがでしょうか。



【横須賀美術館について】

所在 神奈川県横須賀市鴨居4-1
電話 046-845-1211
開館 10:00-18:00
休館 毎月第1月曜日(祝日の場合は開館)、12月29日~1月3日
料金 ()は20名以上の団体
   ・常設展
     一般
      310円(250円)
     高校生・大学生・65歳以上の方
      210円(160円)
     中学生以下は無料
   ・企画展 展覧会により異なりますので美術館へお問い合わせください。
     中学生以下は無料
アクセス
   ・JR横須賀線「横須賀駅」下車、「観音崎」行きバス乗車(35分)、
     「観音崎京急ホテル・横須賀美術館前」停留所で下車、徒歩2分
   ・京浜急行「浦賀駅」下車、「観音崎」行きバス乗車(15分)、
     「観音崎」停留所下車、徒歩5分


※詳細な情報につきましては美術館へお問い合わせください。


August 28, 2015

【新作】 上村松園 《初秋》 のご案内


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。暦では「処暑」を迎え、暑さもすこし和らぎ始め、秋の気配を感じられる季節となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 夕暮れ時に蜩(ひぐらし)の鳴き声が聞こえ始めると、夏の終わりの知らせのを告げられたかのように耳へ響きます。

 さて本日ご紹介する作品は、生誕140周年記念として制作いたしました上村松園《初秋(しょしゅう)》の彩美版®です。秋草の露を気にしてか、着物の袖をひるがえした女性の立ち姿。しなやかな腕から指先にかけての優雅な動きに柔らかな表情、明るく美しい衣装の着物に萩の花。細部にいたるまで凛とした清廉な趣が漂い、理想の美人画を追究し続けた松園ならではの画格が堪能できます。是非お手元でお楽しみ下さい。



彩美版®、限定200部
上村松園 《初秋》 軸装・額装
販売価格(各)120,000円+税


<仕様体裁>
原画 古川美術館(名古屋)所蔵
監修 上村 淳之(日本画家・日本芸術院会員)
解説 古川美術館 学芸課
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 特殊絹本
限定 200部
証明 監修者承認印・限定番号入り証書を貼付
発行 共同印刷株式会社


【監修 上村淳之(うえむらあつし)】

1933年上村松篁の子として京都に生まれる。
松園を祖母に親子三代続いての画業に進む。
現在、日本芸術院会員。京都市立芸術大学名誉教授。
上村家三代の作品を展示する松伯美術館の館長も務める。
2013年には文化功労者として顕彰された。



【古川美術館のご紹介】

 古川美術館は、初代館長古川為三郎が長年にわたって収集し大切にしてきた美術品を、「私蔵することなく広く皆様に楽しんでいただきたい」という想いからその寄付を受け、平成3年11月に開館しました。
 所蔵品は2,800点にのぼり、美人画、花鳥画などの近代日本画を中心として、油彩画、陶磁器、工芸品、また西洋中世の彩飾写本など、多岐にわたります。現在は所蔵品を中心とした企画展示を行うとともに、美術講演会やワークショップなど、幅広い活動をしています。
 また、分館として初代館長が愛した数寄屋建築の居宅を、平成7年より公開、様々な企画を開催しています。

名古屋市千種区池下町2丁目50番地
ホームページ:http://www.furukawa-museum.or.jp/
お問い合わせ:052-763-1991


※古川美術館についてはこちらの過去記事もご参照ください。
なお記事中でご紹介した企画展は、既に終了しております。開催中及び今後開催の展覧会につきましては美術館のホームページにてご確認くだるようお願い申し上げます。


夏の出張、西から北へ美術館めぐり(2015年7月24日)
古川美術館vol.1 「大観・玉堂・龍子 三巨匠展」(2007年11月28日)
古川美術館vol.2 「茶の湯 インテリアデザイナー内田繁の世界」(2007年11月30日)
古川美術館vol.3 "おもてなしの心"(2007年12月3日)


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■額装仕様
額装 特注木製額金泥仕上げ、しぐれ袖織りマット、アクリル付き
画寸 縦43.5cm×横53.0cm
額寸 縦63.0cm×横72.5cm
重量 約4.5kg



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shoen_shoshu_kiribox.jpg■軸装仕様
箱書 上村松園(シルクスクリーン印刷)
表装 三段表装
材料 天地:利休茶色無地
   中廻:浅葱鼠色地流水文緞子
   風帯・一文字:白茶色地唐花唐草文金襴
   軸先:新牙
   箱:柾目桐箱、タトウ付き
画寸 縦43.5cm×横53.0cm 
軸寸 縦139.0cm×横72.2cm



August 21, 2015

中世歴史博物館「神奈川県立金沢文庫」のご紹介


20150821Kanazawa_Bunko_museum.JPG

 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。まだまだ残暑厳しい日々が続いております。熱中症など、皆さまお身体ご自愛ください。

 さて、今回ご紹介させて頂くのは、京浜急行の金沢文庫駅から徒歩12分、浄土式庭園が復元されている国指定史跡・称名寺境内からトンネルでつながる素敵な歴史博物館「神奈川県立金沢文庫」です。「金沢文庫」(かなざわぶんこ、古くは「かねさわぶんこ」)は、鎌倉時代中期に幕府の重鎮として活躍した北条実時が設けた武家の文庫で、所在地は神奈川県横浜市金沢区金沢町。金沢流北条氏が領し、のちに館や菩提寺である称名寺を建立するなど、この金沢の地を本拠としていたことが名称の由来です。<

 明治30年(1897年)、伊藤博文らによって称名寺大宝院跡に再建されるも関東大震災でいちどは失われましたが、昭和5年(1930年)に国の図書館令に基づき神奈川県の運営する最初の県立図書館として復興しました。称名寺から移管された古い書物や仏像・絵画・工芸品をはじめとして、鎌倉・横浜に関する郷土資料や浮世絵まで多数収集しております。平成2年に新館が完成し、歴史博物館として積極的に展覧会を開催しています。

h27_07_exhibition_s.jpg 現在は企画展「東の正倉院 金沢文庫」が開催中。鎌倉時代の豊かな文物を伝える金沢文庫は、しばしば奈良の正倉院にも喩えられており、本展示では、仏像、工芸品、古書、古文書などを通して、金沢文庫と金沢北条氏の菩提寺である称名寺の草創の物語が紹介されています。
(2015年9月27日(日)まで)

 「海の公園」や「横浜八景島シーパラダイス」「金沢動物園」など、レジャー施設の多い横浜市金沢区ですが、その地域のルーツにあたる神奈川県立金沢文庫にもお寄りいただき、歴史探訪のひとときをお過ごしになってはいかがでしょうか。



【神奈川県立金沢文庫】

住 所 神奈川県横浜市金沢区金沢町142
電 話 045-701-9069
開 館 9:00~16:30(入館は16:00まで)
休 館 毎週月曜日(9月20日は除く)、9月24日(木)
入館料 20歳以上250円、20歳未満・学生150円、65歳以上・高校生100円
    中学生以下・障害者の方は無料
アクセス 京急線「金沢文庫駅」下車徒歩12分
     シーサイドライン「海の公園南口駅」下車徒歩10分
展覧会 開催中:企画展「東の正倉院 金沢文庫」~9月27日(日)まで開催
    次 回:特別展「仏教説話の世界」2015年10月2日(金)~11月15日(日)
    ※詳細は以下の公式ホームページをご参照下さい。 
公式HP http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm


August 7, 2015

若者よ、夢に向かって走れ!


 先日関西方面への出張の帰路、少し寄り道して京都嵯峨野の車折神社(くるまざきじんじゃ)に参拝してまいりました。

 車折神社は画聖・富岡鉄斎が一時宮司を務めていたところで、車軒文庫に多数の鉄斎作品が伝わっています。以前私たちはこちらのお許しをいただき、鉄斎の《宝船》という作品を彩美版にさせていただきました。その時以来、八年振りの再訪です。

20150807Geinou_Jinja.JPG 今回は、車折神社境内にあり芸能関係者から厚い崇敬を集める芸能神社に参拝し、念願叶って俳優となった若い友人の初舞台の成功と、役者としての成長を祈願することでした。友人は中学の頃から演劇の道を志し、プロの役者になる夢に向かってがんばってきました。今年あるプロの劇団のオーディションに合格し、精進の甲斐あってこの秋ついに初舞台を踏むことになりました。

 今はまだ、夢へと続くであろう道の入口に立ったばかりの彼ですが、この数か月で周囲が驚くほど目覚ましい成長を遂げました。プロの世界は厳しく、劇団の一員となれば必ず役がもらえるわけではありません。本番の舞台に立つには、稽古を通じて実力を認められ、信頼されなければなりません。顕著な実績を持つ素晴らしい先輩方との出会いが、彼を大きく成長させたのでしょう。

 普段はのんびり屋の彼のどこに、こんなに強い意志の力が秘められていたのだろうと正直驚いていますが、連日の厳しい稽古で肉体的には極限近くにまで追い込まれながら、精神的にはかつてないほど充実しているようです。活き活きと輝く表情にそれがよく表れています。夢に向かって必死に走る彼の未来が、大きく開けることを願って止みません。

 演劇に限らず、文化芸術の世界で日夜身を削る努力を重ね、夢を掴もうともがいている沢山の若者たちがいます。彼らこそが、我が国のこれからの文化芸術を担っていく存在となるはずです。私たちは事業を通じ、こうした若者たちの支援につながる活動を継続して行っていきたいと考えております。




【車折神社のご紹介】

所在地 京都市右京区嵯峨朝日町23
電 話 075-861-0039
ご祭神 清原頼業公
    天宇受売命(芸能神社)
最寄駅 嵐電「車折神社駅」


July 31, 2015

品川の原美術館で「サイ・トゥオンブリー」展を見る


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。夏も真っ盛り、連日の30度超えで、私の周りでは体調を崩す方が大勢いらっしゃいます。皆さまも体調管理には十分お気をつけ下さい。

20150731CyTwombly_Ex.jpg さて私は先日、アメリカ現代絵画の巨匠サイ・トゥオンブリーの展覧会を東京品川の原美術館にて鑑賞してまいりました。いつもは品川駅より第一京浜をてくてく歩いていくのですが、その日はちょっと気分を変えて最寄りの京急北品川駅より向かいました。国道を渡り、ゆるやかな坂道を上り始めるとそこはもう閑静な高級住宅街。ゆったりした街並みは自然環境にも配慮が行き届き、歩いているだけでも気持ちが豊かに高揚します。駅からも10分程度のアクセスですので、徒歩で訪問の際は、一度このルートを通ってみてはいかがでしょうか。

20150731hara_museum.jpg 原美術館は昭和初期のモダニズムハウスを改装し、1979年に私立の現代美術館の草分けとして開館。御殿山の一角の高級住宅街に位置するロケーションが、今も贅沢な気品を漂わせます。40年近くにも亘り、国内外のコンテンポラリーアートを地道に紹介してきたそのスタンスは国内外で高く評価されております。

 今回の目的は「サイ・トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」展-20世紀の抽象絵画を牽引した米国ヴァージニア州出身のアーティスト、サイ・トゥオンブリー(Cy Twombly, 1928-2011)の日本初の企画展です。「描画された詩」とも評される絵画作品70点を一堂に揃え、画家の半世紀にわたる作風の変遷を回顧します。2001年ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞受賞後、キャリアピークを迎えた2003年、ロシア・エルミタージュ美術館をスタートし、欧米各国を巡回した伝説のレトロスペクティブが画家の没後、新たに企画再構成されました。

 キュレーターの方達の本展への熱意が伝わってくるようで、見応えは十分です。描線の戯れが印象的な初期作品から、イタリアに拠点を持つことで作風が独自の発展を遂げ、鮮やかな色彩を獲得するに至った後期作品まで、華やかさや激しさを禁欲的に表層にとどめる画家の強固なスタイルに深い感銘を覚えました。2011年に惜しくも移住の地であるローマに没した画家への哀悼が、一転して刺激的な「祝祭の場」へと変容してしまう、アートの喚起する偉大な力を本展でもまざまざと実感いたしました。

 他にも館内には、奈良美智のガジェット作品や宮島達男の電光アート、ジャン・ピエール=レイノーのクリーン・ルーム等のミュージアム・コレクションが常設され、どれも美術館の静謐な空間に悠然と融けこんでおり心が安らぎます。

 以上、ご紹介の「サイ・トゥオンブリー」展の会期も残すところあとひと月。真夏の暑い盛りではありますが、クールで一見シンプル、だがとても奥が深い...そんな現代アートの展覧会に皆さまもぜひ足をお運び下さい。



【展覧会情報】

「サイ・トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」

会場 原美術館
   東京都品川区北品川4-7-25
会期 8月30日(日)まで。
   月曜休館(祝日を除く)
開館 11:00~17:00(水曜は20時まで)


July 24, 2015

夏の出張、西から北へ美術館めぐり


 皆様こんにちは。東京もついに梅雨明けとなり、いよいよ夏本番となって参りました。私の先週は出張続きで、名古屋と北海道へ、それぞれ新作の打ち合わせに行って参りました。


20150724isaburou_memorial_museum.JPG 週の前半は名古屋へ。

 訪問先の古川美術館さんは名古屋市内にあり、実業家であった古川為三郎氏のコレクションの数々を見ることができる美術館です。現在は夏をテーマにした企画展が開催されており、この日猛暑の戸外とはうらはらに、涼しい館内で画家達が切り取った様々な「夏」をゆったりと鑑賞しました。作品に付いている丁寧な解説を読みながら絵を見ていると、明治から昭和頃の夏の匂いをも感じられるような気がして、とても素敵な展覧会でした。



201150724TeaSet.jpg 仕事を終えてから、直ぐ近くにある別館の為三郎記念館でお茶とお菓子を頂戴しました。
 為三郎氏のご自宅であった数寄屋造りの建物の内部を拝見することができ、お庭に沿って作られたお席では喫茶もできます。殆どのお部屋に季節のお花が丁寧に飾られ、暑い中でその凛とした感じがとても美しく、印象的でした。夏だけという大きな氷の入ったお抹茶に、ホッと一息、涼を頂いて帰りました。


 週の後半は北海道の富良野へ。

20150724gotousumio_artmuseum.JPG 関西に台風が直撃する中、それを避けるように飛行機は順調に私たちを羽田から旭川空港へ運んでくれました。こちらは湿気がなく大変爽やかな気候で、レンタカーで一路、上富良野の後藤純男美術館さんへ。

 着いて早々、団体バスで到着した観光客の方々と一緒に促されるまま館内へ。後藤純男画伯の迫力ある大画面の風景画に囲まれながら、館長自らが「日本画とはどのようなものか」「後藤純男画伯の作品について」ご説明くださいます。そのお話が大変魅力的でついつい引き込まれてしまい、早く絵を見たい!という気持ちになってゆきます。ほんの少しのお話でも生の声で説明を聞くだけで、こんなにも興味をそそられ、観る側の姿勢が変わるものかと感心してしまいました。

 また、後藤画伯の素晴らしい作品はもちろん、館内では周囲の雄大な景色を見ながら地元の食材を使ったお食事ができたり、一度チケットを購入すれば出入りが自由だったりと、来訪者が美術館を楽しむための仕掛けが色々となされていて、そのホスピタリティからか館内は多くのお客様でにぎわっていました。

20150724kamifurano1.JPG 一仕事終えて近くにあるラベンダー畑で有名な富田ファームを訪れてみました。爽やかな晴れ間の中、丁度見ごろのラベンダーと色とりどりのお花が美しく咲いて、とても絵になる景色でした。今だけ、というラベンダーの切り花をお土産に買って帰り、自宅でドライフラワーにしているのですが、北海道の爽やかな香りがほんのりお部屋に広がりムシムシとした東京の空気を洗ってくれます。


 そんなこんなで、体力は要りましたが実りの多い一週間でした。どちらも大変素敵な美術館ですので、お近くにお越しのことがあれば、立ち寄ってみられてはいかがでしょうか。それぞれの美術館に所蔵されている作品は、目下、総力挙げて製作中です。秋頃からの新作でご覧いただけるものもございますので、どうぞご期待ください!



July 17, 2015

緑の参道、穏やかな日


20150717hikawa_jinja.jpg 梅雨真っ只中の7月、2週続けて日曜日に大宮公園を訪れました。なぜ2回来たのかは後ほどお話しします。大宮公園といえば氷川神社。2000年以上の歴史をもち、大いなる宮居として、大宮の地名の由来になった関東一円の信仰を集める日本有数の古社です。本日は参拝が目的ではないのですが、あらためて神社へ続く参道を踏みしめました。氷川参道は旧中山道から南北に2kmのび、道の両側にケヤキ並木が続く美しい参道です。厚い曇り空に覆われた日でしたが、緑が爽やかで雄大な景観を印象付けてくれました。

 境内に入らず、参道右から大宮公園に入り少し歩くと小型動物園があります。ツキノワグマやブチハイエナ、種々のサル、鳥類などがいました。ケナガクモザルのアクロバティックな動きは見ていて飽きないし、対照的に造り物と見まごうようなヤクシマヤギの静止した姿も心和みます。ここにはカピバラもいて、眺めているとその落ち着きはらった所作や周囲に動じない穏やかな表情に、世俗を超えた悟りの姿を垣間見た気がしました。しかし本日は動物園で癒されるのが目的ではなく、程なくここを後にしました。

20150717GalleryElPoeta.jpg 大宮公園入り口まで戻ると、すぐ向いに、ギャラリー「エル・ポエタ」があります。こちらが本日の目的地でした。小ぶりな印象の外観ながら、扉を開けるとスペインの田舎風漆喰壁と煉瓦が使われた重厚感ある内装となっています。35年を超える老舗画廊で、詩人を意味する名に相応しく、洒落たコンテンポラリーアートや水彩を中心に展示会を開催しています。

20150717SatokoOzawa_Works.jpg この日は、小沢郷子さんという作家の個展開催中でした。いずれの作品も赤という色彩を使用して形作った抽象画作品です。色面というテーマから展開される様々な表現の作品は静かな「気」を内在させ、抽象画でありながら自然の一部を切り取った具象画のようにも感じられます。技法としては、オイルパステル、水彩、アクリルなどの画材を併用したミクストメディア。個展はこの日7月5日が最終日でした。翌週からはまた別作家の個展が開催されるとのことで、その作品も是非観たいと思い、ギャラリーのオーナーに翌週も伺うことを約束しました。

20150717DaisukeKoyama_Works.jpg 翌週の日曜は梅雨が明けていないにも関わらず、打って変わって猛烈な日照り。汗をぬぐいながら再びエル・ポエタを訪れると、コヤマ大輔さんという作家の水彩画作品による個展初日でした。東京藝術大学日本画科出身のコヤマ氏は確かな技術に裏打ちされた非常に完成度の高い水彩画を描いています。海外の著名な水彩画作家を連想させる味わいある表現にしばし見入ってしまいました。ご本人はまだ40歳に満たない若さなのですが。今後が期待される作家ですし、さいたま市の浦和出身・在住とのことで親近感を感じました。

 この日はすぐ前にあるNACK5スタジアムで大宮アルディージャの試合の日らしく、外へ出るとオレンジ色の人だらけ。浦和在住の私は目立たぬよう穏やかに通り抜けて帰途につきました。



■Gallery エル・ポエタ

所 在  さいたま市大宮区高鼻町2-285-8
電 話  048-644-9877
営業時間 11時~18時
定休日  不定休

※コヤマ大輔さんの個展は7月20日(月・祝)まで開催。

July 10, 2015

恵比寿の長い坂と前田青邨展


 久方ぶりに恵比寿駅に降りた。ビールの貨物駅として開業したこの駅の周辺には美味しいビールを飲ませてくれる店も多い。今日はこの駅の近くにある山種美術館で、前田青邨(せいそん)の生誕130周年を記念した展覧会を開催していると聞き、訪れてみることにした。そして叶うなら帰りにビールで喉を潤そうと、この地の利を最大限に活用する計画で臨んだ。

 駒沢通りに出て青山方面に向かうとすぐに長い坂に出る。果てが見えないような坂であるが、この頂にまだ見ぬ山種美術館がそびえているはずなので、汗をかきかき上って行く。この坂の辺りは住所でいえばオシャレの代名詞でもある広尾。坂の両側にも小洒落たレストランや、雑貨店がある。途中、巨大なダビデ像が立っているビルの前を通り過ぎ、ようやく坂の頂を制覇して山種美術館にたどり着く。

 展覧会名に「生誕130周年記念 前田青邨と日本美術院 −大観・古径・御舟−」※1とある。まずは展示会場に入る前に、エントランスにある「Cafe 椿」で一休みする事に。ここでは今回の展覧会のオリジナル和菓子が楽しめる。私は前田青邨筆《蓮台寺の松蔭》にちなんだ「こころざし」という練り菓子と抹茶のセットをたのんだ。「こころざし」は松蔭が読んでいる書物を模した形になっており、シナモンの香りと上品な甘みが抹茶の爽やかな渋味に合う。他にも速水御舟筆《炎舞》をイメージした「ほの穂」や、横山大観筆《作右衛門の家》を題材にした「青葉」など、色鮮やかで宝石のように美しい和菓子があって目移りする。

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「Cafe 椿」の美しい練り菓子


 一息ついたのでそろそろ作品鑑賞に移る事にする。この度の展覧会はタイトルに日本美術院とあるように前田青邨だけではなく、横山大観、速水御舟、平山郁夫など日本美術院で活躍した日本画の巨匠達の貴重な作品が一同に見られる。青邨の大作も間近で見られ、その筆使いや金の色使いなど、つぶさに観察でき大変勉強になる。なお、公益財団法人日本美術院が主催運営する院展は、今年の秋で再興第100回という大きな節目を迎える。本展覧会は現代日本画の巨匠の作品を見られる貴重な展覧会である※2。

 美術館からの帰り道、ソフトクリームの看板が目立つ雰囲気の良さそうなカフェがあったので入ってみる。元気の良い女性3人が切り盛りしていたこの店の中の壁は全て本棚になっており、そこには大量の写真集がきれいに収まっている。オーダーをすれば自由に閲覧できるようだ。後で知ったのだが、ここは「写真集食堂めぐたま」という変わった名前のお店で、壁の写真集は写真評論家の飯沢耕太郎氏の蔵書5,000冊だそうである。ちなみに私の隣のお客には、お店の人が「ねこまんま」をしきりにお勧めしていたようである。「ねこまんま」といえば、ご飯に鰹節をのせて醤油をたらしたあれだと思うのだが...。

 広尾、恵比寿といえばオシャレなお店が軒を連ねる所といったイメージをいだいていたが、この界隈は自家製のぬか漬けを売っている八百屋さんや、昔ながらのガチャガチャが置いてある雑貨店などもまだ現役でがんばっている。庶民的で昭和な商店も所々に顔を出す不思議な場所である。帰りに駅前でも魚屋さんが威勢よく、今風のカフェのマスターと魚の調理の仕方を話していた。良い感じに暮れかかって来たので、私も喉を潤しに行くことにした。

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ガチャガチャのある雑貨屋(ガチャガチャは私が子どもの頃に呼んでいた名前で、一般名称はカプセルトイ)


※1 「生誕130周年記念 前田青邨と日本美術院 −大観・古径・御舟−」展は山種美術館で2015年8月23日まで開催しているとの事です。
※2 再興第100回院展は9月1日(火)に東京都美術館から始まり各地を巡ります。また当社はこの図録の制作・製造を請け負っております。






【関連商品のご紹介】

今年、生誕130周年を迎える日本画の巨匠、前田青邨。
当社でもこの記念すべき年に新作高級複製画「牡丹」を制作いたしました。
富貴の象徴でもある牡丹が、色鮮やかな五彩花文壺に生けられた名作です。
華やかで気品ある本作品を皆様のご家庭にも是非どうぞ。



彩美版®
前田青邨 《牡丹》 軸装・額装
本体価格 (各)190,000円+税

<仕様体裁>
監修: 小山 硬(日本画家、日本美術院同人)
解説: 川口直宜(美術評論家、前・泉屋博古館分館長)
限定: 200部
技法: 彩美版®、シルクスクリーン手刷り、本金泥使用

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


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【軸装】
表装: 三段表装、柾目桐箱・タトウ付き
箱書: 小山 硬(シルクスクリーン刷り)
画寸: 天地41.1cm×左右53.0cm
額寸: 天地136.5cm×左右72.1cm




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【額装】
額縁: 特注木製額金泥仕上げ、金モール織マット、アクリル付き
画寸: 天地41.1cm×左右53.0cm
額寸: 天地59.2cm×左右71.0cm
重量: 3.3kg

July 3, 2015

鎌倉の名所、竹の寺・報國寺


20150703houkokuji_sanmon.JPG いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。

 今年も半年があっという間に過ぎ、7月に入りました。梅雨の合間を縫って、先日私は鎌倉の報國寺に参拝して参りました。観光地を格付けするミシュラン・グリーンガイドで三ツ星を獲得し、近年海外からの旅行客も増えている人気のお寺です。

 鎌倉駅から鶴岡八幡宮の前を通り過ぎて、さらに金沢街道をてくてく歩くこと30分。アクセスはあまり良くないのですが、それでも足を伸ばす方が多いようです。ちなみに鎌倉のお寺で三ツ星を獲得しているのは報國寺と東慶寺の二寺のみです。

 報國寺は足利、上杉両氏の菩提寺として栄えました。開山は五山文学を代表する天岸慧広(仏乗禅師)です。仏乗禅寺は、中国より招聘された円覚寺の開山・無学祖元に師事し、のちに中国へ渡って修行した高僧です。開山自筆と伝えられる「東帰集」や、自ら使用した「天岸」、「慧広」の木印は国の重要文化財で、鎌倉国宝館に保管されています。孟宗竹の竹林が有名で、「竹の寺」とも言われています。

20150703tikurin.JPG お寺はわりとこじんまりしており、門をくぐり少し進むと「竹の庭」入口があります。入るとすぐに竹林が現れ、そこはもう別世界です。目の前一面に緑の世界が広がり、まっすぐ空に向かって伸びる竹は日光を遮り、空気がひんやりと涼しい感じがします。

 竹はよく見ると一本一本太くて大変立派です。風が吹けば竹がざわめき、木々の合間を木漏れ日が揺れ幻想的です。そして竹を分ける一本道を進んで行くと、奥の方に建屋が見えてきます。庭には「休耕庵」という茶席が設けられており、お茶を頂くことができます。ここで美しい竹林をぼんやりと眺めているだけで、心が和み癒されます。なんとも贅沢な時間です。

 鎌倉のお寺の中でも独特な雰囲気を醸し出す竹の寺・報國寺。是非訪れて、その空気感を肌で感じてみて下さい。心も体もリフレッシュされること間違いなしです。




【報國寺のご案内】

山 号  功臣山
宗 派  臨済宗建長寺派
創 建  建武元年(1334年)
所 在  鎌倉市浄明寺2-7-4
電 話  0467-22-0762
拝観時間 9:00~16:00
拝観料  200円
アクセス JR「鎌倉駅」東口より
・タクシーで約7分
・バスで約12分※
 ※京浜急行バス(5番のりば)
 鎌23系統「鎌倉霊園正面大刀洗」行き
 鎌24系統「金沢八景駅」行き
 鎌36系統「ハイランド循環」行き
 のいずれかに乗車のこと
・徒歩で約30分


June 26, 2015

新作・モネ《睡蓮、水のエチュード-雲》のご案内


20150626ajisai.jpg いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。関東圏内は梅雨入りしましたが、時折ザーっと降る夏の夕立のような雨が降りあまり梅雨らしくない空模様がつづいています。それでも路地や庭先等に咲く菖蒲や紫陽花、芍薬に目に留めては雨が似合う花が咲く季節なんだなと感じ、心和みます。
 写真は先日「あじさいまつり」が開かれていた、文京区白山にある白山神社境内の紫陽花です。







20150626suiren2.jpg いつもの谷根千界隈からすこし足を運んで上野恩賜公園へ向かって散策途中、公園の南西側にある不忍池にたどり着きました。三分された池は、北は上野動物園の水上動物園、西はボート池、南は蓮の池となっています。蓮の池は青々と池の水面を茂る蓮の葉が目に眩しく、ワイルドに!群生している葉の隙間から花のつぼみが見る事ができました。花はこれから7月中旬~8月上旬にかけて見頃を迎えるそうです。湿った空気と暑さの中での散策でしたが、時折吹く風や木陰に入るとヒンヤリ気持ちよく、遠くの空の雲の様子に夏の気配感じながら公園を後にしました。

20150626suiren1.jpg さて弊社ではこの度、モネ畢生の大作《睡蓮、水のエチュード-雲》の彩美版®を発売します。原画は印象派を代表する画家クロード・モネの集大成、オランジュリー美術館所蔵の《睡蓮》連作大装飾壁画8作品のひとつです。モネ《睡蓮》連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈されたという歴史的な作品であり、オランジュリー美術館は《睡蓮》連作大装飾画のために創設された「印象派の殿堂」です。

 《睡蓮、水のエチュード-雲》は、睡蓮と朝焼けの水面に映える雲の情景が、微妙なニュアンスに富む青、緑、紫、白、赤などが入り交る、モネならではの彩りの世界で描かれた作品です。本作品は第一室に飾られた「雲」の全画面より作品のハイライト部を、フランス国立美術館連合・グランパレ(RMN‐GP)の画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。



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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) /
Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom



彩美版®
クロード・モネ 《 睡蓮、水のエチュード-雲 》
Claude Monet
Les Nymphéas, Étudu d'eau:Les Nuages
販売価格 128,000円+税
限定200部発行



<仕様体裁>
原 画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監 修 千足 伸行(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)
限 定 200部
技 法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
用 紙 キャンバス
額 縁 木製デコレーション金箔額(国産ハンドメイド)、アクリル付き
画 寸 天地28.3×左右91㎝(30号)
額 寸 天地38.2×左右100.8㎝
重 量 3.3㎏
発 行 共同印刷株式会社

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


June 19, 2015

鎌倉の小町通りから。「鎌倉市鏑木清方記念美術館」


20150619kaburaki_artmuseum_entrance.jpg いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。梅雨入りした今日この頃、鎌倉界隈では紫陽花が大変見頃の季節がやってまいりました。私は先日、常日頃より当部の商品企画に際してお世話になっている美術館、「鎌倉市鏑木清方記念美術館」へ行って参りました。鎌倉の小町通りから、ほんのすこし奥へ入った処にひっそりと趣きのある美術館。あらためて皆さまへご紹介いたします。

 「鎌倉市鏑木清方記念美術館」は、近代日本画の巨匠、鏑木清方(かぶらききよかた)画伯※のご遺族から鎌倉市へ「鎌倉市にその画業と創作の場を後世に伝えて欲しい」という趣旨のもと多くの美術作品や資料が寄贈され、画伯終焉の地である鎌倉雪ノ下の旧跡地をそのまま改装して平成10年4月に開館しました。

20150619masking_tape.JPG また、館内では『紫陽花マスキングテープ』や『ねこ・あじさい(陶ボタン)』など素敵なお土産の品々が並んでいたり、子ども参加プログラム『天然岩絵具で描いてみよう』を開催するなど、「来館者へほっこりした時間を過ごして頂きたい。」という美術館の想いが優しく出迎えてくれます。 現在は特別展『美の伝承-清方と弟子たち-』が開催中(5月23日~6月28日)。今から100年前の大正4年、鏑木清方と門人たちによって組織された「郷土会」を紹介するこの展示会は、「巣立った後もふるさと(清方)を忘れまい」という弟子たちの温かな雰囲気が伝わってくる素敵な展示会となっています。

20150619neko_ajisai.jpg 館内の丁寧にお手入れされた中庭には可愛らしい紫陽花が咲いています。鏑木清方はとくに紫陽花を好み、「紫陽花舎(あじさいのや)」という雅号も使っていたそうです。鎌倉に来た際は、古都鎌倉の風情溢れるこの美術館に、ぜひ足を運んでみてください。

※鏑木清方は明治11年生まれ。昭和29年に文化勲章を受章した年よりこの鎌倉に画室を設け、昭和47年に亡くなるまでの間を過ごされました。享年93。



20150619kaburaki_artmuseum_maingate.jpg【鎌倉市鏑木清方記念美術館】
住所  〒248-0005 鎌倉市雪ノ下1-5-25
電話  0467-23-6405
開館  9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館  月曜日(ただし祝日は開館)
入館料 一般200円~300円
    小・中学生100~150円
    ※時期によって異なります。
アクセス 鎌倉駅東口から徒歩7分(小町通りを鶴岡八幡宮方面へ)
公式HP http://www.kamakura-arts.or.jp/kaburaki/


【関連商品のご紹介】

彩美版®
鏑木清方 《 朝涼(あさすず) 》
販売価格 180,000円+税



 鏑木清方は、大正12年当時帝展審査員として画壇に重きをなしていましたが、東京・本郷龍岡町の自宅で関東大震災に遭遇しました。この《朝涼》は翌々年(大正14年)、震災後初めて開催された第6回帝展に発表され、清方の画業の転機となる重要な作品といわれています。

 金沢八景の別荘でひと夏を過ごしたある日の早朝の空に、残月が淡くかかるのを見つけ、長女をモデルとして描いたものです。清らかな女性のすらりとした立ち姿、たおやかな手つき、背景に蓮の花を配す造形は、安らかに心を落ち着かせる風情を漂わせます。


朝涼


<仕様体裁>

原画 鎌倉市鏑木清方記念美術館 所蔵
限定 100部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 特製絹本
装丁 三段表装
材料 天地 白茶無地
   中廻薄茶綿ムラ経
   一文字・風帯 牙地唐花唐草文金襴
   軸先 朱塗頭切
   箱  柾目桐箱、タトウ入り
画寸 天地100.0×左右38.5cm
軸寸 天地169.0×左右57.0cm

June 12, 2015

日曜の午後、東京湾を望む


20150612BeachPark1.jpeg ここは最近お気に入りの東京湾に臨む小さな公園です。近未来的な海の風景がパノラマチックに広がり、来るたびにきっと夜景が綺麗だろうなと思うのですが、未だ夜に訪れたことはありません。たまにランナーが駆け抜けるのを除けば、ほとんど訪れる人がいない隠れ家的スポットです。



20150612BeacPark4.jpeg 海を望むベンチに座ると真正面が羽田空港です。直線距離にして12、3kmあるでしょうか、大気の薄いベールを透して、独特の形をした管制塔の姿が滲むようにぼんやりと眺められます。公園上空には羽田へ降りる航空機の着陸ルートがあり、大型ジェット旅客機が徐々に高度を下げながら、行儀良くほぼ等間隔の連なりで次々と目の前を通りすぎていきます。



20150612BeachPark2.jpeg 羽田のやや右側には平成24年(2012)に開通し東京湾の新名所として知られる東京ゲートブリッジが見え、さらに右へと首を廻らせば、都内の高層ビル群と葛西臨海公園が間近に望めます。海上には大型の運搬船や漁船、タグボートなどに混じって、時折夢の島マリーナを拠点とするヨットの姿も見えます。



20150612BeacPark3.jpeg さて、この風景を眺めなら聴くならどんな音楽が合うでしょうか?好みは人それぞれですが、今までの私なら無条件でジャズだと思っていました。例えばハービー・ハンコックの名盤「処女航海」なんかぴったりだと思いませんか?ところが最近、ある現代美術の映像作品に出会ってから、クラシック音楽もいいじゃないかと思えるようになってきました。



 ジャズが合うと決めつけて他は一顧だにしなかったかつての自分は、いわば食わず嫌いだったと反省しています。決めつけずに色々と試してみたほうが楽しみが広がるようですね。所詮は趣味の問題なのですから。

 ちなみに、私の眼を開いてくれた作品、ミヤギフトシ《オーシャン・ビュー・リゾート》は、6月28日まで東京都現代美術館で開催中の「他人の時間」展で観ることができます。沖縄の離島の風景にベートーヴェン《弦楽四重奏曲第15番イ短調 第三楽章》の旋律が見事に調和しています。他にも、香港の映画スター、トニー・レオン(梁朝偉)が出演した複数の映画の名シーンをコラージュして全く別の映像作品に仕立て上げたホー・ツーニェン《名前のない人》や、明治期に米国人地質・鉱山学者が北海道夕張川で行った地質資源調査の研究をテーマに創り上げられた深い余韻の残るサウンド・インスタレーション、mamoru《THE WAY I HEAR,B.S.LYMAN 第五章 協相のためのポリフォニー》など五感を刺激する素晴らしい作品が多数出品されています。

 「現代美術」はちょっとハードルが高いかなと思った食わず嫌いな貴方にも、是非チャレンジしていただければ幸いです。

※各画像はクリックすると拡大できます。



【他人の時間|TIME OF OTHERS】

会場:
  東京都現代美術館
  東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
電話:
  03-5777-8600(ハローダイヤル)
会期:
  6月28日(日)まで
開館時間:
  10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:
  月曜日


※詳細は東京都現代美術館のホームページ等でご確認ください。

June 5, 2015

奇想の美術館でバネット・ニューマンを見る


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。6月に入り、夏真っ盛りの陽気となりましたが、西の方からは徐々に梅雨の足音も近付いてきました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

20150605mihomuseum_entrance.JPG さて私は先日、予てより念願のMIHO MUSEUM(ミホミュージアム)で「バネット・ニューマン-十字架の道行き-」展を鑑賞してまいりました。MIHO MUSEUMは滋賀県琵琶湖の南、湖南アルプスの山中に位置する雄大なスケールと景観を誇る美術館です。私はその立地から知る人ぞ知るの秘境美術館をイメージして行ったのですが、JR石山駅からバスで50分の辺鄙な山地にありながらも、来場者は数多く、あまつさえ外国人観光客の観光コースとなっていることに(!)驚きを感じました。

20150605mihomuseum_entrance2.jpg 美術館の広大な敷地は、入口のレセプション棟からトンネルを抜け、半地下の南北に広がる美術館にまで続きます。美術館の設計はルーヴル・ピラミッドで有名なI.M.ペイ。シャープで幾何学的なデザインの作風から「幾何学の魔術師」の異名を持つアメリカを代表する建築家です。写真の幾何学模様のガラス屋根に建築家ペイの個性が表れております。
 美術館を訪れて改めて分かったことは、優れた景観や展示内容はもちろん、特にホスピタリティに優れた美術館であるということでした。休憩時利用のレストランやティールームの応対とメニューは卓越しており、私が買い求めたパンや菓子でも、農薬や化学肥料を一切使わない天然素材の食材とのこと。一口噛めば粉の違いがはっきりと分かる、滋味あふれる、本物の味わいの美味しさでした。

20150605mihomuseum3.JPG 興奮のあまり?話しが些か脱線いたしましたが、今回の鑑賞の目的はバネット・ニューマン(1905‐70)です。ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコらとともにアメリカ抽象表現主義を牽引したニューマンは、《アンナの光》という代表作が近年まで日本の美術館に所蔵されていたこともあり、日本の現代美術愛好家に親しまれております。ニューマンの作風は線と色彩の配列のみで、崇高なイメージを創造するというもの。一見シンプルな構図の作品の表層からも、困難なテーマに挑み続けた作家の生涯が決して平坦なものではなかったことがうかがわれます。私が考えるニューマン作品の鑑賞の要件は、独り絵の前に佇み、作品を見詰め、問い掛け、その作品と共振すること。それだけ。そうすることではじめて作家の精神・作品の核心に近づくことが出来るものと信じております。

20150605mihomuseum4.JPG 今回来日の作品は、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する全14点の連作《十字架の道行き》。「十字架の道行き」とは、本来キリストの受難を図像化した宗教画の伝統的な主題のひとつですが、ニューマンは独自の作風で8年の歳月を掛けて連作を描き続けました。作品は時代・国籍・人種・宗教を超越し、優れた芸術のみが持ちうる崇高な精神性や、至上の聖性を顕現するに至りました。「レマ・サバクタニ(神よ、なぜ私をお見捨てになったのですか)」の副題に隠された、作品に秘められた根源的な問い掛けからも、本連作が20世紀抽象絵画の到達点と呼ばれるに相応しい、マスターピースであるということが言えましょう。

 同時開催の『曽我蕭白「富士三保図屏風」と日本美術の愉悦』では表題の《富士三保図》がとにかく圧巻です。代表作《群仙図屏風》と趣向は違いますが、六曲一双の屏風に描かれたダイナミックなスケールの富士の眺望は、奇想の画家と謳われる曽我蕭白の壮大なイマジネーションを充分に堪能させるものでありました。

 今回は限られた時間でしたので、ミュージアム・コレクションの日本美術や世界各地の古代美術品をじっくり鑑賞する余裕はなかったのですが、美術館収蔵の名品の数々はどれも美術館の静謐な空間と調和して、泰然とした輝きを放っておりました。

 ご紹介の「バネット・ニューマン」展の会期も今月7日(日)までと残すところあと僅かですが、展示替え休館をはさみ、7月4日(土)からはこれまた注目の「生誕300年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村」展が東京のサントリー美術館よりムーブオーバーいたします。夏の暑い盛り、雄大な山々の健やかな自然に囲まれた美術館に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。



【展覧会情報】

「バネット・ニューマン-十字架の道行き-/曽我蕭白「富士三保図屏風」と日本美術の愉悦」展

会  場 MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)
     滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
会  期 6月7日(日)まで、8日より展示替え休館。
     ※7月4日(土)より「若冲と蕪村」展開催-会期8月30日(日)まで
休  館 月曜(祝日を除く)
開館時間 10:00~17:00


May 29, 2015

日本一高いビル―大阪・あべのハルカス探訪記


 十数年ぶりに出張で大阪に行く機会ができ、せっかくなので高いところから街を眺めてみようと、昨年オープンした日本一の超高層ビル、あべのハルカスの展望台へ行ってみました。

20150529harukasu_Observatory.jpg 16階から高速エレベーターに乗りガラス張りの天井を眺めていると、あっという間に60階の展望台に到着。高所恐怖症の私には地上300メートル、四方が一面ガラス張りの世界はどうにも足がすくむ思いでしたが,周囲に高い建物もなく遠方まで見通すことができるので、とても気持ちの良いところでした。途中、足元がガラス張りになっているところをへっぴり腰で近寄ってみたりしながら、眼下の景色を満喫しました。

20150529harukasu_Observatory2.jpg その後、16階の「あべのハルカス美術館」で、企画展「昔も今も、こんぴらさん。」をやっていたのでこちらも覗いてみました。長きにわたり庶民から厚い信仰をあつめる讃岐の「こんぴらさん」で知られる金刀比羅宮。ここに所蔵される貴重な絵画や彫刻、民俗資料などを紹介しています。私はこんぴらさんに行ったことはありませんが、入ってすぐに展示されていた「象頭山社頭並大祭行列図屏風」(伝狩野清信筆)には、江戸時代の人たちがこんぴらさんを参拝する様子が描かれており、そこからとても楽しそうな様子が伺われて一緒に旅をしているような感覚を味わいました。

20150529konpirasan.jpg また、円山応挙の障壁画「遊虎図」は、ひとつひとつを見ると少し可愛げのある、丸く太った猫のようなトラが描かれているのですが、東面、北に2面、西面に各4面ずつある襖の展示は、とてもボリュームがあり見応えがありました。テーマからして、入場者はご年配の方々が多いのかと思いきや、若い人も結構いたのが意外でした。入口に可愛い犬のフィギュアが置いてあったりと、若い人でもちょっと寄ってみようかな、という気にさせる仕掛けもされていたように思います。



May 22, 2015

野外のアート散策


 ゴールデンウィークも過ぎ去り、急に暖かく(いや、暑く)なってまいりました。皆様体調管理に気をつけてお過ごしいただきたいと思います。天気の良い日は気持ものびのびとし、戸外に出かける機会も多くなってきます。私自身も、休日ふらりと出かけ、今回は野外で鑑賞できるパブリックアート=彫刻に視点を置いて観て回りました。

20150522saitama_oozoranisumu.jpg 自宅から程近くにあるさいたま新都心は、話題のコクーンシティで賑わいを見せています。新都心駅西側のぺデストリアンデッキは、ランドアクシスタワー、合同庁舎を経て、日本郵政庁舎まで1.2キロほど続きますが、休日は賑わいから外れひっそりとしています。その歩道や広場のところどころにさり気なく立体造形作品が顔を見せています。2000年に完成したこの新都心を特徴づけるデッキの近未来的様相に合わせ計画的に設置されたアートらしく、多様な作品が点在していますが、特に作家と小学生たちのコラボレーションによるというオブジェ作品群が心に響きました。

20150522saitama_hosinisumu.jpg 小さくて愛らしく素朴性を持つ様々な夢の動物が並んでいたり、たくさんの子どもたちの作品を外から貼り付けて球体に形作った作品など、その場所と違和感のない立体が、目と心を愉しませる役割を果たしています。よく注意をしないと気付かないものも多く、こんなところにこんな彫刻発見!という散策の醍醐味を味わえます。発見できていないものもまだまだあるだろうと思いつつ本日はここを後にしました。



20150522kasukabe_jeans_summer.jpg 少し足をのばして、彫刻のある街づくりを標榜する春日部市を訪れてみました。目に付いたのは春日部駅東側の古利根公園橋にある数々の人体彫刻。佐藤忠良、舟越保武など著名な彫刻家を含む格調高い作品群が配置されています。その他駅前通りにも色々な彫刻が見られ、図書館や文化会館、市役所等にも設置されています。彫刻を身近に感じられる、美しく個性的な街づくりで人々に文化的なゆとりやうるおいをもたらそうという春日部市の事業により、1990年代に20体以上が設置されたようです。

20150522kasukabe_tabibitokokage.jpg 叙情性を感じたのはまちなみ公園にある池田宗弘作「旅人・樹陰」という古い自転車を前にたたずむ人の彫刻で、実際に緑豊かな木の下に設置されています。また、2人の離れた少女たちが見えない糸でつながった糸電話で話をしている廣嶋照道作「あのね」(公園橋通り)も懐かしさと深遠な意味を感じました。まだまだ見るべき作品があるはずとは思いながら、帰路につきました。

 野外彫刻は都市計画とも密接に関わるもので、時代・街の景観や目指す効果により設置される彫刻作品の傾向・内容は大きく変わります。さいたま新都心と、春日部駅周辺は明らかに景観が異なり、目指すイメージ、もたらせるものに差異があると思われます。文化的香りが異なる2つの街にとって、それぞれに適合した異なるパブリックアートは、街の重要なファクターとして生命を宿し息づいていました。


May 15, 2015

北陸で巡る2つの個性的な美術館、 及び食と温泉も堪能した事。


 北陸新幹線が今年の3月に開業して富山、金沢が時間的に近くなった。高かったハードルがぐっと下がったのを機に、気になっていた2つの美術館を訪れる事にした。石川県金沢市にある「金沢21世紀美術館」と、富山県下新川郡入善町にある「下山(にざやま)芸術の森 発電所美術館」である。

 東京駅からAM7:20発の北陸新幹線「かがやき」に乗ると、約2時間半後のAM9:54には金沢駅に着いた。この列車は途中の長野駅を出ると、停車するのは富山駅と金沢駅だけである。糸魚川を過ぎて富山県に入って行くと左手の車窓からは立山連峰が白く残雪をかぶって見えて来るので、修学旅行の学生のように心が浮き立って来る。まずは前田利家が治めた加賀百万石の城下町を金沢駅から南東方向へ続く広い道を歩き始める。

 大きな交差点にぶつかり道を渡ると活気のある「近江町市場」に出る。人気スポットとなったこの市場の店々の間を通ると、岩牡蠣、紅ずわい蟹などの海の幸、竹の子などの山の幸が所狭しと並んでいる。店先で食材を調理して提供している店もある。美味しそうな匂いに後ろ髪を引かれつつも先を急ぐ。金沢城址を整備して作られた広くてきれいな「金沢城公園」の中を通り抜けて「兼六園」の案内所前に出る。泣く子も黙る超メジャースポットの「兼六園」には寄らず「金沢城公園」と「兼六園」に挟まれた道を更に進むとそこに「金沢21世紀美術館」があった。

 「金沢21世紀美術館」はヴェネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞ほか数多くの賞を受賞している今話題の妹島和世と西沢立衛のユニット=SANAAが設計した建物である。上空からこの建物を見ると円盤の中に四角や丸の箱が詰め込まれたような独特の構造になっている。展示会場に入る前にまずは腹ごしらえをすることにする。ここにはおしゃれなレストランがあるのだが、お昼時に混雑する事は必至なので早めに昼食を済ませる(近江町市場での我慢はこのためである)。この美術館のレストランは白を基調としたモダンな空間で、建物の曲線に沿った大きな窓から外光が入って来るのでとても明るく、緑の多い外の景色も楽しめる。ゆったりとした席でブリオシュのポタージュグラタンセットとうオシャレなランチをいただいた。前の席では一人お婆さんが、心なし所在なげにジュースを飲んでいた。

20150515pool.jpg 食事が済んだので、まずは入場料を支払って、これを見るために来たという作品に向かう。
 レアンドロ・エルリッヒの《スイミング・プール》。美術館のほぼ中央の中庭にある約縦3m×横4mのこの小さなプールの底は空気のある部屋になっており、観客は地下の通路を通ってそこから水面を見上げることが出来る。プールサイドから作品を鑑賞する者は、水の層を通して、下から見上げている観客を見る事になる。揺らめく水面を通して見るその世界は原理的には単純であるにも関わらす、光や色彩、そして作品の中に取り込まれる観客の動きという要素が複雑に絡み合い、いつまで見ていても飽きることがない。プールの底に差し込む光の波紋も奇跡の様に美しい。

 また美術館をぐるりと囲む庭に設置されているオラファー・エリアソンの《カラー・アクティヴィティ・ハウス》は、3色のガラスの曲面を渦巻き状の家の様にした作品である。観客は作品の中に入り込む事で作品の一部になり、それを外から見ている別の観客が鑑賞する(中の観客も外の観客を鑑賞する)。これらの作品に共通しているのは、鑑賞者が作品に干渉する事で相互作用が起こり、作品が常に流動的な変化をして行く。絵画を一方的に鑑賞する展覧会とは違った双方向の鑑賞スタイルである。

 今ご紹介した作品の他にも恒久展示作品と呼ばれているアートが幾つかある。天井が四角くくり貫かれて、そこから見える空(ペタリと空の写真がはってあるようにも見える)を鑑賞するジェームズ・タレルの《ブルー・プラネット・スカイ》。非常に個人的な作品鑑賞の展示形態をしているピピロッティ・リストの《あなたは自分を再生する》。この作品は個室トイレの中にあり(よって基本的には一人しか鑑賞できない)、洋式便器の前にある円盤状のクリスタルに映し出される映像(血液、汗、排泄物など)を奇妙な音楽と共に鑑賞するというまさに神秘体験。恒久展示作品はいずれも、「どう見えるか、どう理解するか」を見る人に問いかけて来るが、それは頭でっかちなコンセプトアートではなく、目で感じて、心が楽しめるアートである。

 この美術館には入場料のいらない交流ゾーンと呼ばれているスペースがあり、建物の中をドーナツ状に包んでいる。市民が公園感覚で訪れては立ち去って行く、人々に開かれた参加交流型の美術館である。また、託児室やキッズスタジオ(子どもが主体となって作品を制作する空間)などもあり、誰もが訪れ易く出来ており、新しい美術館の可能性を提案している。(※恒久展示作品の一部は無料の交流ゾーンから見ることも出来る。また企画展の内容などにより恒久作品の見られるものが変わってくるので、望みの作品が見られるか事前に確認して訪れた方が間違いない。)

 さて美術館に大変満足したので、今度は街と歴史を堪能したいと思う。金沢城公園から北の方向に百万石通りを進み、浅野川を渡ると国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている「ひがし茶屋街」に出る。昔ながらの古い家々には「木虫籠(きむすこ)」と呼ばれている出格子がついており、タイムスリップでもしたように街並を散策出来る。また、川を渡り返して河口方向に入った所には、同じく重要伝統的建造物群保存地区の「主計町茶屋街(かずえまちちゃやがい)」がある。こちらも川沿いに昔ながらの茶屋が並ぶ風情ある通りである。明治の中頃には多いににぎわったとされ、隣町に住んでいた泉鏡花の作品にもこの辺一帯の事が書かれているそうである。そう聞くと、古い街並の路地の奥にはなにやら妖気めいた気配を感じる。

 歴史ある城下町を散策していたら、宵闇が迫り涼しい風が吹いて来る。続いてはやはり食を堪能しない訳にはいかない。新鮮な海の幸を食べさせてくれるお店を教えてもらい入る。この店はオーダーしたものを自分の前にあるコンロで焼いて食すスタイルらしい。メニューを見ると「ガス海老」、「ゲンゲ干物」、「金時草(きんじそう)のおひたし」といったあまり聞き慣れない品がある。「ガス海老、ゲンゲとはどのようなものか?」と店の主人に聞くと、「ガス海老はガス海老だ、ゲンゲは不細工な深海魚だ。」との返事。ともかく北陸ならではのもののようなのでを食してみようと、岩牡蠣とそれら3つを注文する。

 ゲンゲは正しく不細工な魚で、これが干物にしてあるからミステリードキュメントに出てくるような小さい人魚のミイラみたいである。味はししゃもに近い感じか...。ガス海老は甘みがあり、かりっと塩焼きにして殻まで食べた。ガス海老は鮮度が落ちるのが早いために東京近辺にはあまり出回っていないようである。金時草は加賀野菜と呼ばれているものの一つで、見た目のぬめりっぽさから想像できないシャキシャキとした歯ごたえがあった。地元の美味しいものと石川県加賀市にある橋本酒造の十代目という酒をちびりちびりとやりながら、金沢の夜は更けて行った。

 次の日は富山湾を見ながら第2の美術館「下山(にざやま)芸術の森 発電所美術館」を目指した。まずは能登半島の付け根の辺りにある高岡へ行き、そこから富山湾内の西側の氷見へ移動する。高岡では「高岡御車山祭(たかおかみくるまやままつり)」という祭りの日の昼前に着いたので、街の通りで祭りの準備が進められていた。

 豊臣秀吉が時の天皇を聚楽第に迎える際に使用した御所車にルーツを発するという歴史のある祭りである。私が偶然見た山車も黒塗りに螺鈿細工がきらびやかに光る格式のあるものであった。石川、能登は江戸時代より美術工芸を奨励した事もあり、その技術がふんだんに生かされているのであろう。さらに氷見では名物「氷見うどん」と「ホタルイカの沖漬け」をいただいた。氷見うどんは普通のうどんと、にゅうめんとの中間ぐらいの細いうどんである。これがあっさりとした薄味の汁に入っているので、するすると喉を通って行く。また「ホタルイカの沖漬け」は、イカの旨味がギュッと詰まった濃厚な味で、小さな一匹でご飯がぐいぐい食べられる美味しさであった。

 腹を満たして富山湾を東の方へぐいぐい移動する。富山市の海岸線にある「古志の松原」付近からは、立山連峰が望めて大変風光明媚である。さらに東に移動して滑川を過ぎると湾は北に曲がり始める。その先の魚津の辺りの海岸線は蜃気楼が見える事でも有名である。残念ながら私は見る事が叶わなかったが、確かに沖の方では海と空が一つに解け合ってねっとりとしている様は、現実的ではないような現象が起きるのに相応しい場所である。

20150515NizayamaForestArtMuseum.jpg さらに東に向かい、黒部川を越えて入善に入ると、そこは黒部川が作り出した広大な扇状地が広がっている田園地帯になる。この田園の中に目指す第2の場所、「下山(にざやま)芸術の森 発電所美術館」がある。取り壊される予定だった水力発電所を美術館として再生したという珍しい施設である。施設は展示会場の発電所美術館、レストラン棟、展望塔、アトリエなどいくつかの建物が分散してある。大正時代のレンガ造りの趣を残す発電所美術館は河岸段丘の下側にあり、上から引かれた巨大な導水管が2本、館内に口を開けて残っている。その他にも巨大なタービンをはじめ発電設備が残されており、そちらを見学するだけでも楽しい。水力発電所と美術館の両方が好きな私には一粒で二度美味しい美術館である。

 展示スペースは広く天井の高さも約10mあるので、立体作品の企画展が多いそうであるが、今回は開館20周年記念展という事で過去の企画展開催作家26名の作品が平面、立体交えながら展示されていた。駅から遠いせいか、人が少なくて美術館の建物自体と作品を心行くまで鑑賞できたのも嬉しい。美術館を出て河岸段丘に取り付けられた急峻な階段を上るとレストラン棟、展望塔等がある。大変残念なことにレストラン(お茶だけの様)はまだ開店していなかったが、そこからは扇状地を一望できそうな眺めの良いテラスもあった。気を取り直して展望塔に登る。頂からは目の前に残雪の立山連峰が望める。立山連峰を背景に田園の中に佇むレンガ造りの建物はとても美しかった。

 さて旅の終わりに、近くの日帰り温泉で疲れを流して行く事にする。浴場の大きな窓からは、初夏の日差しが燦々と入って来る。お湯は滑らかで透明感があり、肌にしっくりとなじむ。飲料用の温泉を口に含むと鉄分とナトリウムの味がした。風呂上がりに休憩した食堂からは立山連峰の山々がくっきりと見える。帰りの駅に行く途中、日本三奇橋といわれた愛本橋を渡ってみる。橋の上から上流を見ると山々の雪解け水が豪快に流れて来る。下流を望むと扇状地の田んぼに水の恵みをもたらし、富山湾に注いで行く広々した川の流れがある。新幹線に乗る黒部川宇奈月温泉駅に着き、立山連峰を望む青空のもと、ご当地キャラのジャンボ~ル三世(入善は巨大なスイカが特産)が印刷されたスイカ最中を食しながら東京行きの新幹線の到着を暫し待った。

 東京に帰ってすぐ、本屋で宮本輝が今年4月に出版したばかりの「田園発 港行き自転車」(集英社)という本に出会った。この本に出て来る場所が富山県、入善、愛本橋というように、今回の旅と妙な共通点があった。この本を読んでいただければ、私の駄文で伝わらない、富山湾から入善にかけての雰囲気を感じていただけると思う。



May 8, 2015

世界一大きな加須の「ジャンボこいのぼり」


Carpstreamer1.JPG いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。私はゴールデン・ウィークに「加須市民平和祭」に行ってきました。「加須市」は埼玉県の市町村では唯一、北関東3県である群馬県・栃木県・茨城県と接する市で、鯉のぼりの生産量は全国1位を誇ります。ちなみに読み方は「かぞ」です。


 お目当てはこの平和祭で揚がる、世界一大きい「ジャンボこいのぼり」。なんと全長100メートル、重量330kg!建設用のクレーンで揚げるようですが、想像を超える大きさです。日本一の名産地をアピールしようと始まったのが、このジャンボこいのぼり遊泳だそうです。

Carpstreamer3.JPG 「ジャンボこいのぼり」は昭和63年、地元青年会議所の協力のもとに作られ、毎年5月3日の市民平和祭で、会場の利根川河川敷緑地公園で遊泳が行われます。平成18年5月には、サッカー・ワールドカップ・ドイツ大会の日本代表初戦の地、カイザースラウテルンの大空を雄大に泳ぎました。現在は平成25年に作られた「ジャンボこいのぼり4世」となります。

 天候に左右されるイベントでしたが、当日は晴天に恵まれ、絶好の鯉のぼり日和となりました。端午の節句に相応しく、早朝から家族連れを中心に多くの人で賑わい、観客席となる土手はあっという間に埋まっていきました。地元の方の出し物や露店、テレビ・新聞社など報道機関の取材もあり、会場は大変な盛り上がりでした。

Carpstreamer2.jpg そして、いよいよ巨大なクレーンが動き出し、口から伸びたロープが吊り上げられると、大きな歓声があがりました。この口の部分だけで直径10mもあり、人がとても小さく感じられます。口から徐々に空気が入って鯉のぼりの形になり、ゆっくりと風になびきます。



 下に見える鯉のぼりも、実際はかなり大きなサイズです。屋根よりはるか高く、怪獣のごとく泳ぐ「ジャンボこいのぼり」の様は圧巻でした。遊泳時間は30分。風をうけて大変気持ちよさそうでした。


April 24, 2015

こころ健やかに


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。春の穏やかな陽気に、草花もより一層芽吹いて新緑の季節を迎えようとしています。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 田畑の準備に春の雨...最近は雨の激しく夏の夕立のようですが、先日の局所的な雷雨(雹も降ってきました)の後、空に虹がかかってとても幻想的でした。さっきまで雷の音で怖がっていた近所の子供たちも、空を見上げては「虹だよ~!」と嬉しそうに声をあげていました。

 さて今回は端午の節句にちなみ、当社彩美版®ラインナップのなかから、日本美術院同人で文化勲章を受章された守屋多々志画伯の《金太郎》をご紹介いたします。右手に大きな鉞、左手で立派な兜を抱え込むようにしている小さな金太郎。その堂々とした態度と、元気でヤンチャ感じがうかがえる上目遣いの瞳。頼もしいような意地らしいような、凛々しい逞しい子供の姿に守屋画伯の温かな思いが伝わってきます。

守屋多々志画伯略歴

1912年 岐阜県大垣市に生れる。
1930年 上京し、同じ岐阜県出身の前田青邨に師事する。
1931年 東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科に入学。
    在学中に特待生となる。(1936年卒業)
1941年 再興第28回院展に《継信忠信》が初入選する。
1954年 総理府留学生としてイタリアに留学。(2年)
1960年 鎌倉円覚寺金堂の天井画《白龍》を完成させる。
1974年 日本美術院同人に推挙される。
1979年 第34回春の院展に《金太郎》を出品。
    高野山金剛峰寺別院の襖絵を3年かけて完成させる。
1981年 カトリック教会東京大司教区の依頼により屏風《ジェロニモ天草四郎》を制作。
    ヴァチカンでヨハネ・パウロ2世に謁見し献呈する。
1984年 在日ヴァチカン大使館にて聖シルベストロ教皇騎士団勲章の伝達を受ける。
1991年 神社本庁の依頼により《平成御大礼絵巻》の制作に着手し翌年完成。
1994年 モロッコの首都ラバトの王宮ギャラリーとパリのルーヴル美術館新館において
    「平成御大礼絵巻海外特別展」が開催される。
1996年 文化功労者の顕彰を受ける。
2001年 大垣市守屋多々志美術館が開館する。
    文化勲章を受章。
2003年 逝去。享年91。




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守屋多々志 《金太郎》
販売価格
(軸・額共通) 90,000円+税

<仕様・体裁>
原画 第34回春の院展出品作品(1979制作)
解説 川瀬邦聡(大垣市守屋多々志美術館学芸員)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 和紙

■軸装仕様
表装 三段表装
材料 天地 利久無地
   中廻 濃茶地横段文緞子
   風帯・一文字 牙地小花唐草文金襴
   軸先 新牙
   箱  柾目桐箱・タトウ付
画寸 天地36.5㎝×左右45.0㎝
軸寸 天地125.5㎝×左右63.0㎝

■額装仕様
額縁 木製金泥仕上げ、アクリル付
画寸 天地35.9㎝×左右44.5㎝
額寸 天地54.1㎝×左右62.8㎝
重量 約3.3kg




■今日の谷根千界

①第46回文京つつじまつり

期間 2015年4月11日(土)~5月6日(休・水)
・つつじ苑開苑:まつり期間中の9時~17時30分
・つつじ苑入苑:寄進料200円
会場 根津神社(03-3822-0753/文京区根津1-28-9)

②特別展 「谷根千"寄り道"文学散歩」

会期 2015年4月24日(金)~7月12日(日)
会場 文京区立森鴎外記念館 
開館 10:00~18:00(最終入館は17時30分)
※6月、7月の毎週金曜日は20時まで開館(最終入館は19時30分)
会期中の休館日:5月26日(火)、6月23日(火)
観覧料 一般500円(20名以上の団体:400円)中学生以下無料


April 17, 2015

艶やかで美しい金沢箔の工芸品「箔一」ご紹介


20150417hakuichi_goldleaf.jpg いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。桜も散り春本番かと願いたいところですが、冷たい雨が肌寒い今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 私は先日、表参道の裏道散策をいたしました。大通りの賑やかさとは一変し、独特の静けさがある裏通りは、グルメやファッションの穴場が多く、新しい発見をする楽しみがあります。この度は、ひときわ黄金の輝きを放ちつつも、ひっそりと佇む素敵な店舗を発見したのでご紹介いたします。


20150417hakuichi_tumbler.jpg HAKUICHI「箔一」。その名の通り、金箔を施した工芸品を数多く取り扱っている店舗です。私はその美しさに惹かれ、店舗内にお邪魔してお話しを伺いました。

 日本における金箔のシェアが99%という金沢の中でも、唯一の金箔総合メーカーであるこの「箔一」は1975年に創業。当初は「箔屋と呼ばれる箔材料を卸す仕事」に留まっていたようですが、オイルショック後の不況によって材料である箔業界が大ダメージを受けたことをきっかけに「日本の伝統工芸の継続・繁栄のためにできること」として「金沢箔工芸品の独自製造」に着手したそうです。


 現在は更に新たな価値を創造するべく、建築業界(東京スカイツリーや成田国際空港ターミナルの装飾)、化粧品業界(エステ金箔)、食品業界(食用金箔)等々、幅広く展開しています。当部の事業においても、今後何かしら共同作業ができれば幸いと思いました。

 お話しを伺った後、「桜の形をした金箔が浮かぶお茶」をご馳走になり、春の暖かい気分を満喫することが出来ました。豪華絢爛、華やかな金箔工芸品の品々。表参道に来た際はぜひ裏通り散策をして、この美しい店舗に足を運んでみてはいかがでしょうか。


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HAKUICHI「箔一」
 住 所 〒107‐0062 東京都港区南青山5‐7‐21 芥川青山ビル1階
 公式HP http://www.hakuichi.co.jp/


April 10, 2015

江戸の花見と上野の桜


20150410kaneiji.JPG 昔から桜の名所として知られる上野恩賜公園とその周辺は、明治維新を迎えるまでは全域が東叡山寛永寺の境内でした。公園の平面プランは寛永寺であった当時とあまり大きく変わっていません。京成上野駅のある側に正面口(総門)となる黒門があり、噴水広場のあたりには寺の中心となる根本中堂がありました。さらに奥となる東京国立博物館がある場所には本坊があり、上野動物園や東京都美術館、東京芸術大学、西洋美術館、科学博物館などがある公園周辺には多くの子院が立ち並んでいました。戊辰の役の戦火でほとんどの堂宇が焼け落ちましたが、清水観音堂(重要文化財、1631年建立)は奇跡的に当時のまま残されています。

20150410kiyomizudou.JPG 寛永寺は江戸城の鬼門を守護するために、天海(1536?~1643)が二代将軍徳川秀忠よりこの地を与えられ寛永二年(1625)に本坊を建立したのが始まりです。天海は奈良・吉野の桜をこよなく愛し、わざわざ吉野山から桜を取り寄せて植樹したと伝えられています。

その後、儒学者・林羅山(1583~1657)が三代家光より上野忍岡の一画を与えられ、私塾や文庫、孔子廟を建てました。羅山は孔子廟の垣根に沢山の桜樹を植えるとともに私塾を「桜峰塾」と名づけました。「桜ヶ峰」と呼ばれたその場所は、今「西郷隆盛像」があるあたりで、江戸時代には山内でもひときわ桜樹が多い場所として知られました。

 こうして上野の山一帯は江戸第一の桜の名勝と言われるようになり、多くの花見客で賑わいました。江戸後期の天保年間に刊行された「江戸名所図会」にはその有様が以下の通り記されています。今から180年ほど前の上野の花見の様子ですが、現在と全く変わるところがありませんね。

『抑(そもそも)当山ハ江戸第一の桜花の名勝にして、一山花にあらずと云所なし。いにしへ、台命によりて和州吉野山の地勢を模し植させらるゝか。故に花に速あり遅ありて、山上山下盛をわかてり。弥生の花盛には、都鄙の老若貴となく賤となく、日毎に袖を連てここに群遊し、花のために尺寸の地を争ふて、帷幕を張筵席を設く。詩歌管弦ハ鶯声に和し、錦衣繡裳ハ花影に映し、愛玩賞咏日の暮を志らず。』(「江戸名所図会」巻5 東叡山寛永寺)



 上野の山にも数多く植えられている「ソメイヨシノ(染井吉野)」は、江戸時代にエドヒガン系のサクラとオオシマザクラを掛けあわせて作出されたと言われ、当時は古来有名な吉野山の桜にあやかり「吉野桜」と呼ばれたそうです。人工交配で生れたソメイヨシノは種子では増えず接木で増やすため、すべての個体が同じ遺伝子を持つクローンです。それまで主流だった野生種のヤマザクラと比べて、花が華やで成長も早いことから人気となり全国に広まりました。今では、わたしたちが眼にする桜のほとんどがソメイヨシノであることは皆様もよくご存知のこととと存じます。

20150410_komatsunomiya.JPG 先月の半ば、ソメイヨシノの原木が発見されたとの報道がありましたが、皆様お気づきでしたでしょうか。千葉大学で植物分子遺伝学を研究されている中村郁郎教授のグループが上野恩賜公園の「小松宮親王像」周辺の桜を調査し、ソメイヨシノの原木の可能性が高い木を発見し、三月下旬に玉川大学で開催された日本育種学会春季大会で発表しました。詳細は「上野公園の'ソメイヨシノ'原木候補について」というタイトルで学会ホームページに掲載されておりますので、ご興味を持たれた方はそちらをご覧ください。

20150410syokubutsuen.jpg さてソメイヨシノを作出した植木屋とはどんな人物だったでしょうか。元筑波大学教授・岩崎文雄先生の研究によれば、江戸・駒込染井村(現在の豊島区駒込七丁目付近)に住んだ、伊藤伊兵衛政武(1667~1757)であると考えられるそうです。伊兵衛は八代将軍吉宗(1684~1751)に重用され、将軍家の植木職を務めました。現在小石川植物園の入口近くにあるソメイヨシノの古木は、伊兵衛が植えたものと推定されるそうです。小石川植物園は江戸幕府が設置した小石川薬種園の跡で当社のお向かいにあります。

20150410somei.JPG 吉宗は質素倹約を旨とする享保の改革を押し進めるとともに、飛鳥山や向島の隅田川に桜を植樹し庶民に憩いの場を提供しました。都内にある古くからの桜の名所は、歴代将軍の整備によるところが少なくありませんが、ことに吉宗の果たした役割は大きかったと言えるでしょう。

April 3, 2015

四月―春到来


20150403sakura_matsuri.JPG いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。春本番を迎え、東京ではいよいよ桜も満開となりました。写真は当社の近傍、桜の名所・文京区播磨坂の桜並木です。この時期、普段は人気の少ない播磨坂も≪文京さくらまつり≫と銘打ち、たくさんの人が桜見物にいらっしゃいます。小石川植物園もすぐ目の前にありますし、近隣の素敵なレストランで美味しい食事を楽しめば、春の行楽を満喫できます。最寄駅は丸の内線の茗荷谷駅です。お近くにいらした時は是非足をお運び下さい。



20150403harimazaka.JPG そして一方、東京日本橋では今年も恒例の「第70回 春の院展」が開催されております。敗戦後の昭和20年の第一回展から、本年で70回目の記念イヤーを迎えます。院展(日本美術院展覧会)とは、公益財団法人日本美術院が主催運営する歴史ある公募展です。本年も理事長であられる松尾敏男画伯をはじめとした同人(どうにん)の先生方の作品と、厳しい審査を経て選ばれた300余りの入選作が一同に会する充実した展覧会をご覧いただけます。日本画の大家から若手作家までその最新作が一同に並び、日本画の最新トレンドをうかがい知ることもできます。



20140403haruno_inten.JPG おかげさまで弊社は毎年、院展作品集と絵葉書の制作を承っております。筆者も撮影からお手伝いさせていただき、例年のこの時期は大変充実した至福の時を過ごさせていただいております。

 下記に記しました通りこの展覧会は11月まで日本全国を巡回いたします。日本画壇を常にリードする美術展に皆様もぜひ足をお運び下さい。




【第70回春の院展(東京展)】
会場 日本橋三越本店本館・新館7階ギャラリー
会期 4月6日(月)まで
時間 10:00~19:00 (最終日は17時30分まで)
※以後全国巡回4~11月、名古屋、秋田、仙台、福井、倉敷、
福岡、広島、松江、神戸、さくら(栃木)




 なお、東京の会場では春の院展第70回の特別企画として、第35回以降の図録作品集の表紙絵35点が展示されております。中でも那波多目功一先生の「春日」(第60回春の院展作品集表紙絵)につきましては、弊社にて版画(リトグラフ)のお取り扱いがございます。今を盛りと咲き誇る桜の花が時節に相応しい優美な作品です。ご興味のあるお客さまには、カタログもご用意いたしましたので、どうぞご遠慮なくお申し付け下さい。



版画 那波多目功一 《春日(はるひ)》
販売価格 本体180,000円+税



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<仕様体裁>
版式 リトグラフ(画面に作家のサイン、落款入り)
制作 版画工房フジグラフィックス
限定 100部
用紙 ベランアルシェ紙
色数 18版×18色
画寸 天地24cm×左右28.4cm(3号大)
額寸 天地47.2cm×左右50.8cm
額縁 国産特注木製額金泥仕上げ、アクリル付き
重量 約2.4kg

発行 共同印刷株式会社


March 27, 2015

森のイノセントワールド


20150327g_entrance.jpg 温かさと寒さがせめぎ合う3月。まだまだ寒さが勝るこの日、埼玉県伊奈町の高校で開催された中学生の剣道大会を観戦したあと、高校の近くにあった気になるギャラリーを訪れました。

 「寧(ねい)」という名のカフェギャラリーです。表札のある門の奥はうっそうとした自然味豊かな雑木林で、なかなか建物が現れず小径がなければ森に迷いこんだような印象です。



 お稲荷さんの小さなお堂の先にテラスと土壁の洒落たカフェの建物が現れました。入口がどこか迷いつつ、素朴な木の扉をあけると抽象的な平面作品が飾られているギャラリー空間に出会え、ほっとしました。

20150327gallery_display.jpg この日は日本在住のフランス人女流作家、エザール・ドミニックさんの個展が開催されていました。作品は和紙を墨で滲ませたモノトーンので世界で、木目を版画のように墨で写し取った作品もあります。
題して「ウツス"deplacement"」(3月25日終了済み)。



20150327DominiqueHezard_works.jpg 美しい森のような庭の佇まいが眺められるカフェで、薪をくべた本物の暖炉に温まりながら、キーマカレーセットをいただいたあと、歴史ありそうな隣の母屋で行われているドミニックさんのインスタレーション展を見せていただきました。




 ところどころ畳をはずして重ね、外したところには和紙を置いたり、木目を写した和紙作品が壁に掛けられていたり。整然とした緊張感の中に和の落ち着いた温もりを感じる作品でした。作者と話をしたところ、作家としての思いはあるものの、それを饒舌に説明することなく、鑑賞者それぞれの感じ方をしてもらえたらということです。

20150327cats_hall.jpg そのあと、接客いただいた浜野茂則さんという画家であるオーナーが作成した、猫堂という猫の頭を彷彿させる小さなお堂を鑑賞。中には猫に関わる様々な制作物が置かれ、不思議な世界観を放っています。ドミニックさんとは対照的なイメージで、剝き出しの情熱が伝わってきます。



 このカフェギャラリー全体のたたずまいは、浜野さんの味わいある作品の個性と別世界の展示イベントが不可思議に同居し、無垢な懐かしさに先鋭的で端正な安らぎが重なる幻想空間の趣きです。



■イノセントアートギャラリー&カフェ「寧」

 所 在  埼玉県伊奈町大針635-4
 電 話  048-723-7371
 営業時間 11時~19時
 定休日  木曜日

なお、3月27日(金)より4月8日(水)まで、写真展「タペストリー&キャンバスで表現する!」を開催しています。

March 20, 2015

長野県、善光寺のそばの名所


20150320_kaii_seiei500pix.jpg 先の3月14日、北陸新幹線が開業となった。富山、金沢などが時間的に近くなるので是非とも訪れてみたい。ところで今まで終着駅であった長野駅は中間地点の駅となるのであるが、この度の北陸新幹線開業を契機に長野県の魅力を発信する拠点「信州HUB STATION」となることを目指して改良工事が進められていた。その一環として、東日本旅客鉄道(株)、鉄建建設(株)、(株)ステーションビルMIDORIにより、同駅の東西自由通路の吹き抜け上部に「壁画 静映」が設置された。「壁画 静映」は、長野県信濃美術館が所蔵する東山魁夷作「静映」をもとに制作されたものである。この壁画作品は縦2メートル、横10メートルにもなる大きなもので、当社もこの壁画作品のアクリルパネル制作部分に携わることが出来た。

 「静映」は長野県の斑尾高原に佇む「希望湖(のぞみこ)」を題材としている。木々の緑と空の青、それを映し出す澄んだ水面。それらが東山魁夷作品の特徴でもある美しいブルーの世界で描かれている。長野駅を訪れた際には、是非ご覧いただきたい。東山魁夷の作品は長野県信濃美術館の東山魁夷館に多く所蔵されている。しかもこの美術館は善光寺のすぐそばに建っている。長野に来てこの二つの名所を見逃すのはもったいない。

 まずは善光寺を訪れてみる。「牛に引かれて善光寺参り」の故事で知られている善光寺は千四百年も前に創建されたという。善光寺の御開帳(善光寺前立本尊御開帳)という有名な行事は、数え年で7年に一度行われるそうである。秘仏の御本尊様の身代わりとして全く同じ姿の「前立本尊」様を本堂に遷して、その右の御手に結ばれた善の綱を回向柱(えこうばしら)という柱にも結び、この柱を人々が触れることで仏の慈悲が伝わるという。今年は御開帳の年で、4月5日から5月31日まで行っているとのこと。六百万人以上の人が参拝することもあるという。

 ずっと以前の私ごとになるが、善光寺本堂の地下には真っ暗な回廊があり、そのどこかにある鍵に触れられた人は幸せになるという話を聞いた。その時、私も潜ってみたことがある。それはお戒壇巡りといわれるもので、本堂の地下にある。回廊の中は本当に真っ暗で何も見えない。だが前を行く人が「ここに鍵があるから触れ」と言ってくれた。鍵は「極楽の錠前」と言い、その真上には御本尊様がおられ、錠前を通して結縁を果たし往生の際にお迎えに来ていただける約束が出来るそうである。人に鍵のありかを教えられては、ありがたみも、ご利益も半減と思ったが、人の情けもこれまたご利益。ありがたく人様の力で鍵に触らせていただいた。

 善光寺の参道を歩くのもまた楽しい。広く緩やかな坂になった道沿いには信州ならでは、そばの店が多い。ちなみに長野県とは全く関係なさそうであるが、メロンパンをお勧めしている小さなパン屋があったので、数十年ぶりにメロンパンを買ってみた。帰りの新幹線で間食しようと思う。

 善光寺のそばにある長野県信濃美術館東山魁夷館にも行ってみる。信州の風景を愛した東山魁夷の作品を常設展示しているこの美術館は、落ち着いた雰囲気で、丁度よい大きさである。日本画の他にも、水墨画や版画等もあり、いろいろな東山作品を楽しむことが出来る。私は大作の風景画も好きであるが、絵本になった「コンコルド広場の椅子」の版画が好きである。東山魁夷は「静映」の他にも、蓼科高原御射鹿池(みしゃかいけ)を描いた「緑響く」、乗鞍高原の霧氷を描いた「霧氷の譜」など、いくつも長野を取材した作品がある。描かれた作品とその場所を訪ねてみるのも、おもしろいかもしれない。善光寺の御開帳と、北陸新幹線開業が重なって誠に喜ばしい長野。是非皆様にも訪れていただきたい。

20150320_meron_pan500pix.jpg さていろいろと寄り道をしたため、帰りの新幹線の発車まで時間がなく、ゆっくりと食事をする時間もなくなってしまった。ホームの立ち食いそば屋で野沢菜そばを食べ、これで信州そばを食べたとする。新幹線に乗ってから、先ほど買い求めたメロンパンを食すことにする。が、飲み物なしでメロンパンを食べるのは、あまりにも剣呑である。車内販売のワゴンが来るのを待つことにするが、こういう時に限って車内販売はなかなか来ない...。やっとのことコーヒーを買い準備が整う。(ちなみに私は新幹線ではコーヒーを買うので座席は通路側のC席と決めている。)さて、心置きなくメロンパンを食す。見た目の色は、わりと茶っぽく、ごつごつしていて岩石の様。外はカリッ、中はふんわりしていて確かに美味しかった。後で知ったのだが、このパン屋さんはチェーン店で東京の私の住んでいる街の近くにもお店があった...。 

共同印刷ニュースリリース(2015年3月4日):
《 壁画 静映 》の大型パネルを制作、長野駅に新設の東西自由通路に展示される





ちなみに当社の商品にも東山魁夷の複製作品があるのでご紹介したい。


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東山魁夷 《渓聲(けいせい)》
販売価格 250,000円+税


緑青の樹々の間に白い滝が音もなく落ちる様は、いかにも象徴的な深山の風景を活写した優作。

技法 岩絵具方式
限定 1,000部
額縁 特製ステンレス額、クロス張タトウ付き
証明 著作権者承認印がある証紙を額裏面に貼付
画寸 天地380mm×左右530mm
額寸 天地574mm×左右724mm
重量 約5kg

March 13, 2015

絵になる風景 - 私の富士三景


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。冬晴れの日、富士山のビュースポットを巡ってきました。

20150313_fuji_view_spot1.jpg 一か所目。写真を見てお分かりだと思いますが、「三保の松原」へ。世界遺産にも登録され、寒い中大勢の人で賑わっていました。海岸線の松林の向こうに、富士山の裾野までが視野に入る眺めは、古くは平安時代から景勝地として庶民に愛されてきました。そして、数多くの作家の画題にも取り上げられています。文化勲章作家である川合玉堂画伯が描いた「三保富嶽之図」は弊社商品としてもご用意させていただいております。


20150313_fuji_view_spot2.jpg 二か所目。こちらはライブカメラからの映像をご覧になったことがある方も多いでしょう。富士山と駿河湾の景色は安藤広重の東海道五十三次にも描かれ、東海道由比宿と興津宿の間に位置する「サッタ(薩埵)峠」。古くから旅人が行き交うこの峠は、その急峻な地形から東の箱根峠越え、西の鈴鹿峠越えと並ぶ道中の難所でした。今もなおサッタ峠は、東名高速道路、国道1号、東海道本線が1箇所に集中し、日本の東西交通の要衝となっています。





20150313_fuji_view_spot3.jpg 三か所目。先の二か所から富士山の眺めを存分に楽しんだ後、箱根へ向かう途中に見つけました。国道138号線の神奈川県と静岡県の県境にある「乙女峠」からの眺めです。全くのノーマークでしたが、富士山を間近に感じることができるポイントです。ここからの富士山は、左右がほぼ均等な美しい形で、まるで絵に描いたようです。曲がりくねった道が続く中、木々が途切れる非常に短い間から見ることができます。目印は「ふじみ茶屋」というお茶屋さんがある目の前です。



 富士山のビュースポットは、数えきれないほどたくさんあります。有名どころは抑えつつ、自分だけのお気に入りスポットを見つけるのも楽しいかもしれません。



March 6, 2015

早春を迎えて


いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
桃の節句を迎え、陽気もようやく春めいて来ました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
それでも春とはまだ名ばかりで寒さがぶり返す時期でもあります。どうか皆様お体をご自愛下さいませ。

20150306oogannon_ume.jpg小石川界隈に近い「梅の大観音」と呼ばれている光源寺(こうげんじ)駒込大観音(こまごめおおがんのん)の境内は、梅の花が咲き誇り見ごろを迎えています。一雨ごとに暖かさも増し草木の芽吹きが感じられる今日この頃です。

さて本日ご紹介する1枚は、生誕130年記念として制作いたしました前田青邨「牡丹」」の複製画です。華やかに咲き誇る牡丹、たらしこみで描かれた葉が冴えわたり朱の模様が美しい五彩花文壺。画伯の眼に感じられたものの、その美しさを私達も感じられるのではないでしょうか。是非お手元でお楽しみ下さい。



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彩美版® 前田青邨 《牡丹》 軸装・額装
販売価格 190,000円+税


<仕様体裁>
監修 小山 硬(日本画家・日本美術院同人)
解説 川口直宜(美術評論家、前泉屋博古館分館長)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り、本金泥使用
用紙 和紙
限定 200部
証明 著作権者承認印・限定番号入り証書を貼付

■額装仕様
額装 特注木製額金泥仕上げ、金モール織マット、アクリル付き
画寸 縦41.1cm×横53.0cm(10号)
額寸 縦59.2cm×横71.0cm
重量 約3.3kg

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■軸装仕様
箱書 小山 硬(シルクスクリーン印刷)
表装 三段表装
材料 天地:利休茶地木瓜唐草紋緞子
   中廻:薄茶地二重蔓唐花唐草紋緞子
   風帯・一文字:白茶地唐花唐草紋金襴
   軸先:新牙
   箱:柾目桐箱、タトウ付き
画寸 縦41.1cm×横53.0cm(10号) 
軸寸 縦136.5cm×横72.1cm



【監修者プロフィール】
小山 硬(おやまかたし

昭和9年(1934) 熊本県生まれ。
東京藝術大学に学び、卒業後前田青邨に師事する。
昭和36年(1961) 再興第46回院展で《潮(網)》が初入選。
昭和46年(1971) 再興第56回院展出品《天草》及び昭和53年(1978)再興第63回院展出品《洗礼》が日本美術院賞(大観賞)受賞。
昭和54年(1979) 日本美術院同人に推挙。
愛知県立芸術大学教授、日本美術院評議員を務める。
平成25年(2014) 瑞宝中綬章を受章。
現在日本美術院同人、監事。愛知県立芸術大学名誉教授。



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February 27, 2015

東京都庭園美術館リニューアルオープン


20150227_ReneLalique_work.jpg 2011年より約3年間という長期間の改修工事を経て、2014年11月、港区白金台の「東京都庭園美術館」がリニューアルオープンしました。四季折々の自然に囲まれた閑静な美術館。私は昔からのファンで再開を心待ちにしておりました。

 「東京都庭園美術館」本館は、香淳皇后の叔父にあたる朝香宮鳩彦王が皇籍離脱までお過ごしになられた邸宅で「旧朝香宮邸」とも呼ばれています。ヨーロッパの装飾様式であるアール・デコ様式を用いて1933年に建てられました。主な部屋の内装基本設計はフランスの装飾美術家:アンリ・ラパンが担当、また正面玄関にある女性像のガラスレリーフや大客室のシャンデリアなどはフランスの宝飾デザイナー兼ガラス工芸家:ルネ・ラリックの作品です。この優雅な装飾がなされた歴史的建造物は建物そのものが美術品と呼べるほど貴重であり、迎賓館などで使用された後、1983年に都立美術館として一般公開が開始されました。

20150227teien_art_museum.jpg 現在は、開館30周年を記念した展覧会『幻想絶佳:アール・デコと古典主義』を開催中です(4月7日(火)まで開催中)。同展は前述の「アール・デコ(1910年代半ばから1930年代にかけてヨーロッパで流行・発展した装飾様式)」をテーマに、古典主義のアール・デコ作家たちのが生みだした幻想とイマジネーション溢れる世界を、家具・磁器・銀器・ガラス・ドレス・絵画・彫刻などを通じて紹介するものです。また、当時のサロンや博物館で行われた生活空間を再現するようなアンサンブル展示をはじめ、植物からの引用や有機的な曲線の「アール・ヌーボー」に対し、直線と円などを組み合わせた幾何学パターンが特徴の「アール・デコ」との相違点に着目した解説映像など、様式の魅力を多角的な展示から観て感じ取ることができる構成になっています。

20150227teien_art_museum_interior.jpg JR目黒駅から徒歩7分、白金台駅から徒歩6分というアクセスしやすい立地にある「東京都庭園美術館」。現在も庭園エリアは工事を行っておりますが、2015年春には随時公開を予定しているそうです。改修された新館には、カフェ「Café du Palais(カフェ ド パレ)」やミュージアムショップ「Noir(ノワール)」も併設され、庭園風景を一望できます。暖かな春のアート散歩としてお薦め。ぜひ一度足を運んでみてください。



東京都庭園美術館
・ 住所 〒108-0071 東京都港区白金台5丁目21番9号
・ 公式HP http://www.teien-art-museum.ne.jp/

February 20, 2015

日本橋人形町界隈とドイツパンの名店


 先日、家内と日本橋人形町界隈を廻ってきました。日本橋人形町は日本橋の東側に位置し、日本橋川と隅田川に囲まれた一帯です。人形町という町名は人形関連の仕事に携わる人々が多く暮らしていたことに由来します。江戸の初めより歌舞伎や人形芝居の小屋、見世物小屋などが立ち並ぶ歓楽街で多くの人々で賑わいました。演劇の殿堂・明治座や安産祈願で有名な水天宮があります。人形町で特に人気なのが「甘酒横丁」で昔ながらの風情を漂わせるお店が数多く軒を連ねています。行列ができる人気の老舗として有名な卵丼の「玉ひで」やすき焼きの「人形町今半」もこのあたりです。

 私たちが人形町を訪れたのは甘酒横丁の少し先、浜町緑道(りょくどう)沿いにあるドイツパンの名店が目当てでした。そのお店タンネさんは都内でも珍しい南ドイツのパン専門店です。1993年創業といいますから今年で22年となります。江戸の風情を色濃く残す人形町界隈とドイツパンのお店は一見変わった取り合わせのようですが、明治時代を思い起こす洋館風の店構えがしっくりと街に馴染んでいました。

 店内には魅力的なパンやクーヘン(ケーキ)が幾種類も並べられ、どれを買おうかと思わず迷ってしまいました。(カタログの写真を数えたらなんと95種類もありました!)またテーブル席(イートイン)が設けられていてドリンクとソーセージなどのプレートと一緒に購入したパンをその場で食べることができます。私たちは独特の酸味が味わい深いライ麦の黒パンを、これまた絶品のハーブ・ソーセージとともに美味しくいただきました。

 タンネさんはスウェーデンのエクスペリエンス・デザイナー、ジョセフィン・ヴァリエ氏が行うプロジェクト「リビング・アーカイヴ」(人と天然酵母を廻るストーリーや知識を交換、共有するアーカイブ)に参加されています。ヴァリエ氏のプロジェクトは2月1日まで六本木の「21_21デザインサイト」で開催された企画展「活動のデザイン」で紹介されタンネさんの天然酵母も出品されていました。会期中に行われた作家を囲むトークイベントには職人さんもコメンテーターとして参加されたとのことです。私がお店に伺った日には出品された天然酵母でつくったパンも販売されていました。

ドイツパンのお店 タンネ
場所 東京都日本橋浜町2-1-5
電話 03-3667-0426
時間 平日8:00~19:00、土8:45~18:00(日曜、祝日はお休み)




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 さて、間もなくお雛祭りですね。今年は琳派四百年の記念イヤーということで琳派がらみの様々な展覧会、イベントが開催されます。そこで当社ラインナップのなかから江戸琳派の祖、酒井抱一が描いたお雛さまをご紹介いたします。

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彩美版®・酒井抱一 《紙雛図》 軸装/額装
販売価格 各90,000円+税


<仕様体裁>
原画 逸翁美術館 所蔵
技法 彩美版®
本紙 特製絹本
証明 奥付に所蔵美術館の承認印を押捺
発行 共同印刷株式会社

■軸装仕様
表装 三段表装
材料 天地:無地
   中廻:焦茶二重蔓牡丹緞子
   風袋・一文字:新金襴
   軸先:為塗り
   箱:柾目桐箱、タトウ付き
画寸 縦70.0cm×横28.2cm
軸寸 縦161.0cm×横44.0cm

■額装仕様
額装 特注木製和額、アクリル付き
画寸 縦70.0cm×横28.2cm
額寸 縦87.5cm×横42.3cm
重量 約2.4kg

※ 「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。
※ ドイツパンの写真はイメージ画像です。

February 13, 2015

東京都美術館「新印象派」展

20150213tobikan.jpg いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。2月に入り一段と冷え込んでまいりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 私は先日、上野の東京都美術館で「新印象派-光と色のドラマ」展に行って参りました。19世紀後半の絵画の革新運動「新印象派」にスポットライトを当て、スーラ、シニャックに始まる運動の流れを時代を追って入念に検証し、20世紀フォーヴィズムの画家マティスにまでつなげる、「色彩表現の変化の軌跡」を仔細にたどった実に気宇壮大な展覧会です。

 モネやルノワール、セザンヌに代表されるフランス印象派は、光のきらめきや色の彩度を追求し、きめ細やかな筆触で自然や風景をキャンバスに描き上げました。その様式を新印象派の画家たちは、光や色彩の科学的理論に基づく点描画として更に発展させました。惜しくも早逝したスーラに代わり、理論家のポール・シニャックを運動のキーマンとし、本展覧会はその運動の生成と発展を多彩な展示作品により、あたかもドラマを見るように巧みに描き上げます。鑑賞者の目の中に混ざるように配置された作品の細密な点が、光と色彩のモニュメントを築き上げるがごとく、私には新印象派の歴史が腑に落ちるように伝わってきました。

20150213neo-impressionism.jpg 中でも注目はやはり、新印象派を牽引したジョルジュ・スーラ(1859‐1891)の作《セーヌ川、クールブヴォワにて》でしょうか。揺れる水面と陽光の移ろいをスタティックに描出し、観るものの佇まいを正すような印象的な作品です。スーラは生来寡作であり、31才の若さで亡くなったため、残された作品は少ないのですが、シカゴ美術館が所蔵する門外不出の《グランドジャット島の日曜の午後》(1886年最後の印象派展出品作)をはじめとして、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの《アニエールの水浴》、オルセー美術館の《サーカス》など、どれも質の高い作品ばかりであり、近年改めて注目を浴びている画家のひとりです。


 今話題の展覧会に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。




【「新印象派-光と色のドラマ」展】
会 場 東京都美術館
会 期 2015年1月24日(土)から3月29日(日)まで(月曜休室)
時 間 9:30~17:30(金曜は20時まで)




 なお、弊社では文中でも触れたスーラの代表作である、《グランドジャット島の日曜の午後》のアートレリーフ™複製画をお取扱いしております。貴方のお部屋のインテリアとして、大切な方への記念品、贈り物としてお勧めいたします。


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ジョルジュ・スーラ 《グランドジャット島の日曜の午後》
販売価格 50,000円+税

<仕様体裁>
技法 アートレリーフ™※
画寸 M15号
額寸 63.5×83.0cm
重量 4.3kg
額縁 特製木製洋額
原画 シカゴ美術館所蔵
発行 共同印刷株式会社

※アートレリーフ™とは
原画を思わせる絵の具の盛り上がりや筆のタッチを忠実に再現し、キャンバスに仕上げた特殊な複製画です。絵の表面の盛り上がりを直に触ってお楽しみいただけます。


February 6, 2015

冬の長瀞で山羊に和む


20150206PNB-1253_entrance.jpg 寒風にいたぶられる1月末、季節外れの長瀞に出かけました。シーズンではないため、花園ICも国道も実にすんなりと通り抜けてきました。冬枯れのほんのり赤味を帯びたグレイトーンの山々は雲間から日の光を部分的に浴びて美しい輝きを見せていました。本来ライン下り、カヌー、ラフティングの名所である皆野町。今はひっそりとし、荒川上流の澄んだ水は季節に関わらず連綿と流れているものの、人のいない河原は静かな水音のみが響き、時が静止したかのような落ち着きを覚えました。

20150206tsugumi_zuanten_works.jpg そんな親鼻橋の河原近くに、「PNB-1253」という洒落た名前のブック・カフェ・ギャラリーがありました。ラフな手作り看板や地味めな建物外装が、際どくアート感を滲み出しています。この日は『〈継組図案店〉デザイン工房・継組tsugumi』と称して、アルミパネル、折り紙、テキスタイルなどのデザインを展示していました。作者はたかはしふみこさんという秩父在住のデザイナーだそうです。自然をモチーフにした連続性のあるデザインは形も色彩も非常に高いセンスを感じます。理屈ではない恣意的好みを配慮した図案の本質を見る気がしました。(2月11日まで開催)

20150206PNB-1253_shop.jpg すっきりしたギャラリースペースの奥の、味わいある店内は、リラックス空間そのもの。ブックコーナーは、オーナーの好みの写真集や詩集、少年文学などが置かれ、珈琲を飲みながら好きな本の頁を捲ることができます。自分の書棚のような親近感を覚えました。全面サッシの外は素朴な野と雑木林の風景。その敷地には飼われている山羊くんがのんびりリラックスしていました。彼の存在がこの場所の雰囲気を象徴するかのようです。空には光を浴びた雲がゆっくり流れていました。

20150206butti_the_goat.jpg このギャラリーでは保坂彩樹という写真家の個展がくり返し開催されているようでした。
モノの存在の不可思議を、さり気ない対象を通じてシンプルに捉え、抑制した色調にフィルム現像・手焼きの温もりが加わる独特の作風です。オーナーに尋ねると案の上、保坂氏はオーナーご本人でした。もともと商業カメラマンとして働いていたが芸術表現としての写真に専念すべく2008年に自然豊かなこの地で、このカフェギャラリーを立ち上げ、撮影活動の傍らカフェという人を集める場を営み、作品発表の場にしているとのことでした。写真に用途を持たせて利用したくないという意向の言葉が印象的でした。

 企業カレンダー制作に携わる筆者としては気になり、最後にもし企業カレンダーに作品を起用させてほしいとオファーが来たらどうするか尋ねると、それはそれで嬉しいことなので、企画内容を検討し、納得できればお引き受けしたいということでほっとしました。

 帰りは近くにある「埼玉県立自然の博物館」に寄り、閉館前の短時間にあわただしく鑑賞しましたが、ここはここで意外に面白く、よりじっくり見たいと思いました。



■PNB-1253
住  所 埼玉県秩父郡皆野町大字下田野1253-1
電  話 0494-62-6323
営業時間 11時~19時(冬季は18時30分まで)
定 休 日 水曜日・第一木曜日


January 30, 2015

新年、大阪、新世界紀行。


 年明け早々に大阪へ行って来た。
 新大阪から御堂筋線に乗って「なんば」方面を目指す。電車の中には何やら笹の枝に鯛や小判、米俵の飾りが付いたものを手にしている人が多く乗っている。サラリーマンの集団であったり、ご夫婦であったり。何かと思いながら駅で降りて道に出ると、笹飾りを持った人がぞろぞろ歩いている。さては縁日か祭りかと、野次馬根性で人の流れの方向に一緒に付いて行くことにした。人々は屋台でにぎわう道を抜け、今宮戎(いまみやえびす)神社という所に入って行く。境内は活気で満ちており、「商売繁盛で笹もってこい♪〜」という節回しの付いた掛け声が鳴り響いている。盛り上がったコンサート会場のようだ。

20150130ebisu.jpg 私が訪れた日は1月9日で、たまたま十日戎(とおかえびす)の宵宮祭にあたったのであった。参拝者は古くなった笹飾り(福笹というものらしい)を神社に納め、新しい福笹に小宝(鯛や小判などの縁起物の飾り)を有償で付けてもらい、今年の商売繁盛を願う。私はこの風習の事を知らなかったのだが、関西ではかなりメジャーなイベントのようである。行事を知らなかった私であるが、なぜか「商売繁盛で笹もってこい♪〜」の節だけは記憶の奥にあった。

 関西の人は恵比寿神を親しみを込めて「えべっさん」と呼んでいる。これはこの地域の人の相手に対する親しみの心や、柔らかさといった気質に関係しているのかもしれない。まずは、このブログをお読みいただいている諸兄諸姉が今年一年、商売繁盛になりますようにお祈りいたします。

20150130tsuutenkaku.jpg さて「えべっさん」を後に、新世界界隈に向かう。昭和な雰囲気が今なお残っているこの街には、レトロな映画館がまだあったりする。新世界のランドマークといえば「通天閣」。声に出したときに「ツー、テン、カク」と滑舌の良い響きが独特である。将棋棋士の阪田三吉(正しくは吉の上が土です)も「サカ・タ・サン・キチ」と、やはり響きが良い。通天閣の下には阪田三吉の偉業をたたえた王将碑がある。

 通天閣は、命名した儒学者の藤沢南岳が込めた意味のように「天に通じる高い建物」といった外観。通天閣を設計したのは内藤多仲(ないとうたちゅう)という方で、東京タワーの設計もしている。塔の高さは地上100m、現在の通天閣は2代目で1956年(昭和31年)に完成した。初代通天閣は1912年(明治45年)に完成。上部の塔はエッフェル塔、下部は凱旋門とう形をしていたとのこと。残された写真を見るととてもエキゾチックな外観で、古典SF映画のジョルジュ・メリエス的世界が体現されている。さらに当時はルナパークという遊園地とロープウェイで結ばれていたというから、正しくレトロフューチャーなSFの世界か。是非とも個性的な初代の通天閣を見てみたかった。

 ところで新世界の近くには大阪市立美術館がある。せっかくなので開催中の「中国の彫刻」展(2月8日まで開催中)を見に行くことにした。この美術館は天王寺動物園のすぐ隣にある。もと住友家の本宅があった所に建てられたこの美術館は、シンメトリーで直線的なデザインの外観がすばらしい。さらに、ホールに吊るされているシャンデリアがまた美しい。大きなホールは、正面に大理石の階段があり、高い天井には巨大なシャンデリアが2基、暖かいオレンジの輝きを放っている。ホールを見るだけでも一見の価値がある。

 「中国の彫刻」展に展示されているのは南北朝時代の北魏から明時代までの仏教、道教の石造など。正直かなり地味かなと期待せずに入ったのだが、思った以上の収穫であった。その時代の地方色豊かな表現がされた石造たちは、個性的で奔放。ある意味不出来なものもあるが、かえってそこから素朴で偽りのない信仰心を感じる。そして技術がなく技巧に走っていないが故の自由さがほとばしっていて感動した。解説にも「バランスの悪い所もあるが、おおらかで暖かみのある地方性豊かな愛すべき仏像」というような内容が書いてあり、学芸員の方の展示物に対する愛情を感じることが出来た。

 地域色が豊かな事が、文化、芸術、生活、心の豊かさにつながっているのだと、今回個性的な街、大阪で強く感じた。


January 23, 2015

新商品・小倉遊亀《観自在》発売のお知らせ


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。

 さて今年は日本画家・小倉遊亀画伯の生誕120周年にあたります。当社はこれを記念し、小倉画伯の《観自在(かんじざい)》の彩美版®を発売いたしました。
 画業の究極の境地を、軽やかに浮遊する観世音菩薩の姿に託した《観自在》は昭和43年(1969年)の再興第53回院展に出品され、小倉芸術のひとつの頂点を示すものとして広く知られた名作です。現在は画伯の故郷大津市にある、滋賀県立近代美術館に所蔵されています。


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彩美版®・小倉遊亀 《観自在》
販売価格230,000円+税



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<仕様体裁>
原画 滋賀県立近代美術館所蔵
監修 有限会社 鉄樹
解説 高梨純次(公益財団法人秀明文化財団参事)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り、本金泥及び岩絵具(白緑)使用
用紙 和紙
限定 200部(軸装、額装の合計)
証明 著作権者承認印を画面左下と奥付に押捺、当社開発セキュリティーシールを奥付に貼付※

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。
※「セキュリティーシール」の詳細につきましては以下をご覧ください。
2014年10月31日ニュースリリース:http://www.kyodoprinting.co.jp/release/2014/20141031-1517.html




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<軸装仕様>
表装 三段表装
   天地:白茶無地
   中廻:薄利久地大牡丹唐草文緞子
   風帯・一文字:白茶地霞雲金襴
   軸先:新牙
   箱:柾目桐箱、タトウ付き
   箱書 小倉遊亀画伯揮毫の文字をシルクスクリーンで再現
画寸 天地73.0cm×左右45.0cm
軸寸 天地161.5cm×左右64.5cm


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<額装仕様>
額縁 別注木製額金泥仕上げ、アクリル付き
   マット:薄利久大牡丹唐草文緞子(軸装「中廻」と共通)
画寸 天地73.0×左右45.0cm
額寸 天地89.5cm×左右61.5cm
重量 4.4kg





【余談】

 昨今、鉄道に関するニュースを耳にすることが多くなっています。全国各地で鉄道に関するイベントが開催され、博物館もオープンしています。東京駅開業100周年を記念した「suica」騒動は皆様のご記憶にも新しいと思います。本稿執筆中に「suica」追加販売分の詳細について発表がされていましたが、なんにせよ本当に欲しい人が入手できるようになり、良かったと思います。

 昨年はリニアモーターカーが2027年品川―名古屋間全線開業を目指して、着工されました。JR東海で試乗チケットを抽選販売したところ、倍率は100倍を超えたとか。面白いところでは、静岡県の大井川鉄道で機関車トーマスが線路を走り、注目を集めました。こちらも乗車チケットはあっという間に売り切れだったようです。

 いろいろな鉄道関連のニュースで頭にすりこまれていたのか、気が付けば私も立て続けに「横浜原鉄道模型博物館」、「大宮鉄道博物館」へ訪問していました。大人も子どもも楽しめる場所になっていますので、ご家族で来られている方が多かったです。

 そして今年は3月14日にいよいよ北陸新幹線開通、また春頃には京都に鉄道博物館が開業します。鉄道に関するイベントは、老若男女問わず関心が高いと思います。都市と都市が鉄道でつながって、人やモノの流れが活発になり景気が上向けば良いですね。なにより鉄道ファンの方々にとっては、当分忙しい日が続きそうです。


January 16, 2015

日々穏やかに


20150116camellia_red.jpg いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

まだまだ寒さが厳しい日が続きますが、陽だまりの中を歩くと寒さも和らぎ大分暖かく感じられるよううな陽気になってきました。皆様いかがお過ごしでしょうか。暦は「小寒」これから「大寒」と寒さが体にしみますが、水仙の花などの草木を目にすると少しだけ春の気配を感じます。

20150116camellia_white.jpg ついこの間は山茶花が見ごろでしたが、椿も冬からよく目にするようになりました。艶やかな赤色、気品ある白色の花が青く澄み渡った冬空によく映えます。よく似ている山茶花は椿の近縁種だそうです。両者は区別がしにくいのですが、簡単な見分け方があります。花が平開(大きく)開いて咲いて花びらが個々に散るのが山茶花。花が平開せずお椀のような形で咲き、花が散る時は萼(がく)と雌しべだけ木に残して花が丸ごと落ちるのが椿です。花の咲いている様子からもなんの花か解るものですが、木々の下の様子を見てどんな花か推測して判明して気づく事がとても楽しく感じます。

 身近に木々や花を愛で楽しむひと時を。



【小石川植物園のご案内】

正式名称 東京大学大学院理学系研究科付属植物園
     ※国指定名勝及び史跡
所在地  東京都文京区白山3丁目7番1号
電 話  03-3814-0138
FAX  03-3814-0139
入園料  大人(高校生以上)400円/小人(中学生、小学生)130円
開園期間 1月4日~12月28日
休園日  月曜(月曜が祝日の場合はその翌日、月曜から連休の場合は最後の祝日の翌日が休園日)
開園時間 午前9時~午後4時30分(但し入園は午後4時まで)
アクセス ・都営地下鉄三田線 白山駅下車 A1出口 徒歩約10分
     ・東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅下車 出入口1 徒歩約15分
     ・都営バス(上60)大塚駅~上野公園線 白山2丁目下車 徒歩約3分

January 9, 2015

初詣


 皆さま、新年明けましておめでとうございます。
 この年末年始は全国的に強い寒気に見舞われ、ことに日本海側では強風と大雪の荒れた天候となりました。帰省したのもつかのま、雪掻きに追われ元朝参りどころではなかった方も多かったようですね。

20150109_ootori_torii.jpg 私はと言えばこの正月、東京・台東区の鷲(おおとり)神社に参拝して参りました。鷲神社は開運、殖産、商売繁盛に御神徳の高い神様として崇められ「おとりさま」の名で親しまれています。十一月の酉の日に行われる例祭「酉の市」も有名です。

 皆様にとって今年が良い年でありますように、心よりお祈り申し上げます。
 引き続き本年も「美術趣味」に変わらぬご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。




20150109_ootori_jinja.jpg【鷲(おおとり)神社】
所在地  東京都台東区千束三丁目18番7号
アクセス 東京メトロ日比谷線「入谷駅」または「三ノ輪駅」より徒歩10分

December 26, 2014

巨大壁画・秋田の行事


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。
 いよいよ年の瀬も近づき、年内最後の更新です。

 さて、先日巨大壁画・藤田嗣治作「秋田の行事」が飾られている秋田県立美術館へ行って参りました。
 「たった一枚の絵を観に行く。旅に出る理由は簡単でいいと思います。」
たしかそんなフレーズで、数年前JR大人の休日倶楽部キャッチコピーで紹介され、女優の吉永小百合さんが一枚の絵画を観るために旅へ出るというものです。まさにその場所でしか観られない絵画の圧倒的な迫力を感じるために、思いきって観に行く。そんな姿を描いた広告でした。

20141226akita_museum_of_art.JPG 所蔵の秋田県立美術館は、藤田嗣治作品を中心とする秋田の資産家・平野政吉コレクションと、現代の芸術表現の場としての県立ギャラリーを持ち、秋田の文化を伝え、訪れる方々に芸術の感動と、芸術と共にいきることの喜びを届けることを目的に開設されました。現在の建屋は2012年にリニューアルオープンした新美術館で、世界的建築家の安藤忠雄氏設計のもと、コンクリート打ちっぱなしの斬新なデザインとなっています。カフェスペース眼前に広がる池から旧美術館も望むことができる造りになっています。

 藤田嗣治はフランスで最も有名な日本人画家と言われ、平野政吉の依頼によって描き上げたのが、制作当時、世界最大を誇った巨大壁画「秋田の行事」です。大きさはなんと縦3.65メートル、横20.5メートルの巨大な作品です。こんな大きな作品を藤田はなんとたったの15日で描き上げてしまったとのことです。秋田の自然、風俗、祭り、産業、歴史・・・時代の空気、人々の息遣いまで描き切った大作ですが、日本人であればどこか懐かしい感じさえします。

 そして、来年(2015年)秋には藤田を題材にした日本フランス合作映画「FOUJITA」(小栗康平監督・主演オダギリジョー)が公開予定となっており、なにかと話題になりそうな年です。

 それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。

December 19, 2014

生誕200年を記念し東京・丸の内で開催中の「ミレー展」


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。
今年も残すところ後わずかとなりました。皆さまも気忙しい日々をお過ごしのことと思います。

20141219mitsubishi_museum2.jpg 私は先日、東京丸の内の三菱一号館美術館で開催中の「ミレー展」へ行って参りました。自然・農民・労働をモチーフに、厳格で力強い写実的な描写を取り入れながら登場人物に崇高な愛情を注いだ、フランスの国民画家ジャン=フランソワ・ミレーの傑作群をまとめて見る貴重な展覧会でありました。

 会場の三菱一号館美術館は丸の内界隈でもひと際目を引く、瀟洒な赤煉瓦作りの美術館として有名です。この秋、10月に開幕した「ミレー展」は、つい先日私が訪れた時も老若男女を問わず大盛況でした。

20141219ex_millet_display.jpg 日本では明治期より洋行帰りの画家たちを通じてミレーの知名度が広まり、一般庶民にまで浸透し、現在のミレー人気に至りました。一方、アメリカのボストンでは早くも19世紀の半ばからミレーの人気が高まり、市民愛好家たちが競って質の高いミレー作品を所蔵したとのことです。後年それらの作品が、ボストン美術館のコレクションの中核となり、今回の展覧会でもミレー作品だけで25点が出品されました。

 自然を深く愛したミレー(1814‐1875)はフランス、ノルマンディー地方の農村生まれ。若くして画家を志しましたが、世に認められずしばらく不遇を託ちます。1849年、35歳の年にパリ近郊のバルビゾン村に居を構え、農民たちの田園生活を描くことに傾注、ミレー芸術が大きく開花するにつれ世間の評価も高まり、後年にはフランス画壇の傑出した存在となりました。

 本展覧会の目玉は「ボストン美術館三大ミレー」を謳う《種をまく人》、《羊飼いの娘》、《刈り入れ人たちの休息》3作品の公開です。特に《種まく人》(「を」を取った方が画題にインパクト有り!)は、表現の激しさと荒らしさ、暗い色調の画面、背景と人物とのコントラストが主役の農民を英雄的に浮き立たせ、リアリズムを超えた記念碑的/神話的なアウラを放ち、鑑賞者に深い感銘を与えます。この素晴らしい展覧会に、皆様もぜひ足をお運び下さい。



【ボストン美術館 ミレー展 ― 傑作の数々と画家の真実】

 会 場  三菱一号館美術館
      東京都千代田区丸の内2−6−2
      電話 03-5777-8600

 会 期  2014年10月17日(金)から2015年1月12日(月)まで
 休 館  月曜(祝日を除く)、年末年始12月29日(月)から1月1日(木・祝)まで
      ※「ミレー展」好評により12月27日(土)、28日(日)は特別開館
 開館時間 10:00~18:00 ※金曜は20時まで
 入場料(当日券) 一般1,600円、高校・大学生1,000円、小・中学生500円




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 当社ではミレーのもうひとつの代表作である《落穂拾い》の複製画をお取扱い致しております。お部屋のインテリアはもちろん、貴方の大切な方への記念品や贈り物としてお進めいたします。

ジャン=フランソワ・ミレー 《落穂拾い》
販売価格 30,000円+税


<仕様体裁>
原 画  仏・オルセー美術館所蔵
技 法  アートレリーフTM
画 寸  F5号
額 寸  44.0×52.0cm
重 量  2.1kg
額 縁  特製木製額、アクリル付き
発 行  共同印刷株式会社

アートレリーフTMについて
油絵のマチエール(画肌)を再現することを目的として当社が独自に開発した特殊な樹脂加工技術です。
パレットナイフを使った大胆な表現による絵の具の盛り上がりや画筆の繊細なタッチなど、油絵独特の画面の質感を立体的に再現することができます。仕上げに木枠に張ったキャンバスを用い、あたかも実際に油絵の具でキャンバスに描いたかのうような質感を再現しています。
当社のアートレリーフTM複製画は小・中・高等学校の教材や美術館の展示用レプリカ等にも用いられています。

December 12, 2014

漫画と盆栽の町


 さいたま市北区盆栽町にある大宮盆栽村は、その昔、東京の文京区団子坂付近に住んでいた多くの盆栽職人が関東大震災を契機にこの土地に移り住み、たくさんの盆栽園を有する自治共同体となったのが始まりで、現在も世界的な盆栽の聖地と言われています。今季一番の急激な寒波が訪れたその日、その盆栽村に近接する2つの公立美術館を訪れました。

 閑静な住宅街は石畳と木目のマップ標識で統一され綺麗に整理された印象です。庭の敷地にいくつもの盆栽鉢が見える盆栽園も目にします。住宅の1つの様にさり気なく溶け込む「さいたま市立漫画会館」に到着。一部工事中でしたが、普通に観覧できました。入場は無料です。

20141212manga_museum.jpg この美術館は1966年に創設された日本初の漫画に関する公立美術館です。近代風刺漫画の先駆者で、日本初の職業漫画家といわれる北沢楽天の晩年の住居跡に建てられました。楽天は英字新聞社で西洋漫画の手法を学び、当時評価が低かった風刺画を、近代漫画として確立させました。その活躍ぶりは語り尽くせぬもので、明治から昭和にわたり、新聞や雑誌で、政治・社会の世相を巧みに捉えた風刺漫画や、ユーモラスなコマ漫画などを描き、後継の多くの漫画家に影響を与えました。ここには楽天の晩年の作品や愛用品が常設され、画室もそのまま保存されています。生前からあった日本庭園も鑑賞でき、穏やかな晩秋の風情を楽しめました。

20141212manga_museum_garden.jpg この日は企画展として、「さいたま市民漫画展2014」の展示会初日でした(2015年2月15日まで開催)。この漫画展は小学生から一般まで、国内外・プロアマを問わず作品を募集し、審査するコンテストです。毎年開催され来年30回目を迎える、全国で最も長く続いている漫画応募展です。11月に先行して同じ展示会を別の公共施設で開催済みということもあり、あまり鑑賞者は来ていませんでした。実は恥ずかしながら今回初入賞した筆者の作品も展示されています。今回の募集テーマは「しあわせ」でしたが、展示された小学生の素直な「しあわせ」観は、あらためてほのぼのとした気分にさせてくれました。

20141212oomiya_bonsai_museum.jpg ここから北へ数分歩くと「さいたま市大宮盆栽美術館」があります。こちらの建物も付近の住宅と違和感ない容姿で佇んでいます。盆栽文化を広く人々に親しんでいただくことを目指して、2010年に開館しました。盆栽というと、高齢者の渋い趣味という印象をもっていましたが、ここに展示されている作品は、そういうイメージよりも作品としての秀逸さに目を奪われます。

 展示室は、盆栽に関する知識を記載した解説パネルと季節に合わせて選定された盆栽がブース毎に展示されています。たくさんの美しく赤い実のなった作品が印象的でした。

 続いて「座敷飾り」として3種類の異なるスタイル(真・草・行)の床の間の見本が設営され、各部屋の特徴に合わせて、盆栽と掛軸が展示されています。掛軸と盆栽は密接に関わりあると感じました。

20141212bonsai_museum_garden.jpg 最後に戸外の盆栽庭園を鑑賞。常に40~50点の名品が見られます。ただひたすら寒かったので、スピーディーに見て廻り、建物内に戻りました。残念ながらこの日は展示替え期間で企画展示の開催はありませんでした。

 盆栽は人が自然に働きかけ、一緒に作り上げていく生きた芸術作品。優れた作品にはそこへ到達し維持するために想像を超えた根気がいるのではと敬服します。



■さいたま市立漫画会館

 さいたま市北区盆栽町150番地   
 TEL 048-633-1541
 開館時間 9:00~16:30
 休館日  月、祝日の翌日 年末年始

 
■さいたま市大宮盆栽美術館

 さいたま市北区土呂町2-24-3
 TEL 048-780-2091
 開館時間 11月~2月=9:00~16:00  3月~10月=9:00~16:30
 休館日  木曜(祝日の場合は開館) 年末年始 臨時休館あり
 観覧料  300円(20名以上の団体料金200円)


December 5, 2014

開業100年記念「東京駅」と、銀座をぶらぶらした事


 今月、2014年12月で東京駅が開業して100年を迎えるそうである。2012年には、開業当時の姿が再建されて話題となった。東京駅の丸の内駅舎は、1914年(大正3年)に完成した建物であり、その設計は、日本銀行本店(旧館)など数々の重要文化財となる建物の設計を手がけた辰野金吾によるものである。

 東京駅開業100年記念を迎えるにあたり、東京ステーションギャラリーでは、プレイベント的な「探検!発見!東京駅」という展覧会をやっているというので見に行く事にした(こちらは11月30日で終了)。東京ステーションギャラリーは東京駅丸の内駅舎の中にある美術館である。改修前は丸の内側の中央辺りに入り口があったのだが、行ってみるとシャッターが下りている。不覚にも今日は休みかと落胆し、ブログは別のテーマを探さなければと重い足で切符を買って帰ろうとしたら、ギャラリーの入り口が丸の内北口改札前に移っていたのを発見。気を取り直して入場券を券売機で購入し、まずエレベーターで3階まで上がる。

20141205Stainedglass.jpg 今回の展覧会では、2012年のイベントで行われたプロジェクションマッピング(建物など立体物に映像を投影する技術)が、1/20の大きさの丸の内駅舎の模型に映し出されるのが見られた。また復原前と後の駅舎の断面模型なども展示されていて、東京駅につて楽しく学べる事が出来た。ギャラリーの内装は、建設当時の構造用レンガ壁がむき出しになっており、歴史と趣がある。またフロアを下に移動するための八角形の回り階段の天井には、旧ギャラリーのアールデコ調のハイカラなシャンデリアがつり下げられている。美術館2階にあるミュージアムショップに入る手前には、北口ドームの八角形の回廊があり、この回廊から1階のホールを見渡すと、なんだか優越感を覚える。東京ステーションギャラリーは、美術館の建築自体が楽しめる所でもあった。なお、東京ステーションギャラリーでは12月13日〜2015年3月1日の期間、東京駅開業百年記念「東京駅100年の記憶」が開催されるとの事。

 さて東京駅を八重洲側から出て、銀座方面へ向かう事にする。山手線の高架線に沿って有楽町に向かって歩く。この高架線の下にはいろいろなお店が入っており非常に楽しい。しかしギャラリーで立ちっぱなしだったのでちょっと一休みしたい。銀座2丁目に古くからやっている十一房珈琲店がある。店先の焙煎機で焙煎した豆で珈琲を提供してくれる純喫茶で、また焙煎した豆も売っている。店内は落ち着いた雰囲気で、真空管アンプから流れるジャズの音色に、ほっとする場所である。ガスレンジの青い炎でコトコトと沸かされたお湯で、ゆっくりと丁寧にネルドリップで入れてくれた珈琲は美味しい。チェーン店のコーヒーショプが増えて、純粋な喫茶店が減って行く中、貴重なお店になった。ぜひとも喫茶店文化を残して行ってほしいと切に願う。さて家で飲むため、キリマンジャロのフレンチローストを買って出る。

 中央通りに出て、新橋方面に向かう事にする。この通りは正しく銀座の中心的な通り。ブランドショップや松屋、三越、和光などのデパートが並ぶ。和光の凝ったショウウィンドウを眺め、歩行者天国になった大通りの真中をさらに進む。松坂屋があった場所は再開発中で、ぽっかりと大きな空間が出来ている。銀座でこのスペースの空間があるという事が、何かシュールな感じさえする。

20141205Souvenir.jpg ほとんど新橋に近い銀座8丁目に、臙脂色のおしゃれなビルが建っている。資生堂パーラー本店が入っている建物である。このビルの地下には資生堂ギャラリーというスペースがあり、いろいろな企画の展覧会を行っている。今回は写真家アラーキーで親しまれている「荒木経惟」の「往生写集」展が開かれていた(12月25日まで開催)。展示会場には、強烈な色彩の写真が展示されている。ソフトビニール製らしい足の生えた深海魚に食われる人形の頭、どくどくしいまでに鮮やかな花、花、花、と、それに飲み込まれて行く人形達など。エロスとタナトスに満ち溢れた世界が展開している。地下の迷宮から地上に戻ると、そこは大人のお菓子の国。1階の資生堂パーラーショップにてお土産を探す。資生堂パーラーは1902年に誕生との事なので、100年以上の歴史がある。お気に入りのチーズケーキを購入する事にした。このチーズケーキは、一口サイズぐらいのブロックに、チーズがごろっと入ったような、チーズの美味しさがそのまま楽しめるシンプルで深い味わいのモノ。今日は東京、銀座の歴史と文化を楽しんだ一日であった。



 今回訪れた東京駅に関連して、当社商品にも鉄道画家の富田利吉郎作「東京駅」のリトグラフがあるのでご紹介します。赤煉瓦の趣を詳細なタッチで描いたこの作品は、駅舎の屋根が、戦災復興をした当時の三角屋根になっている。戦後の昭和生まれの世代(私も...)にはなじみのある、だが今は見られなくなった懐かしい姿である。この記念の機会に是非ご覧ください。なお、富田利吉郎の作品には、かわいらしい木造駅舎の原宿駅もあります。

【冨田利吉郎 略年譜】
大正8年 山形県新庄市に生まれる。
双台社研究所でデッサンを学んだ後日本画家・福田豊四郎に師事。
昭和31年 新制作協会日本画部(現在の創画会)に初出品。
昭和40年 日本橋丸善にて初の個展開催。
昭和44~47年 新宿ステーションビル、ギャラリー・アルカンシェルにて「蒸気機関車のある風景」展開催(通算4回)。
昭和49~56年 ギャラリー・アルカンシェルにて「停車場のある風景」展を開催(通算8回)。
平成3年 オリジナル・リトグラフ《東京駅》、《原宿駅》を制作
平成7年 3月逝去。享年76。
著書に、画集「蒸気機関車のある風景」(ノーベル書房)、画集「停車場のある風景」(講談社)など。


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オリジナル・リトグラフ
富田利吉郎 《東京駅》、《原宿駅》
販売価格 各95,000円+税


<仕様体裁>
作者 富田利吉郎
限定 各180部
技法 オリジナル・リトグラフ(作者自身が描版)
版数 各14版・14色
用紙 ヴェラン・アルシュ
額縁 木製金箔仕上げ(国産、ハンドメイド)
画寸 41×47cm
額寸 60.5×66.5cm 
重量 約2.2kg
発行 共同印刷株式会社

November 28, 2014

冬の晴れ間と七色の雲


201411skyandwater.JPG 「冬晴」という季語があります。
 冬の空といえば鈍い灰色の雲が垂れ込めた曇天をイメージするように晴れ間が少ないことから、冬には珍しく心浮き立たせるほど晴れ渡った美しい青空を表現したものです。

 今週は雨や曇りの天気が続きましたが、昨日、今日はおだやかな小春日和となりました。ことに昨日は雲ひとつない晴天に恵まれ、久々に澄んだ美しい青空を堪能しました。

201411iridescent_clouds.JPG 残念ながらまた天気は下り坂で来週は雨との予報、冬晴れの青空が恋しく思われます。


 雲ひとつなく澄み渡った青空はたしかに美しいものですが、自称「雲評論家」の私としては、光の変化によって様々な表情を見せる雲も、青空に少しも引けを取らない魅力を持つものだと思います。晴れた空に浮かぶ雲の美しさは両者の魅力を兼ね備えているだけに格別です。

201411sunset_edogawa.JPG 週末の楽しみであるサイクリングの途中、無心に自転車を走らせているとき、ふと見上げた雲の美しさに思わずペダルを止めることも度々です。ことに「彩雲」と呼ばれる真珠の輝きにも似た七色の光を帯びた雲の美しさは、一度眼にすればけっして忘れられないものとなるでしょう。





 さて今回は当社「彩美版®」ラインナップのなかから、日展で活躍し花鳥画家として名をはせた金島桂華画伯の作品《冬晴》をご紹介します。




彩美版 金島桂華 《冬晴》
販売価格 軸装・額装(各)120,000円+税


晴れた青空と清らかな冷気。
ブナの林に響き渡る澄んだ小鳥の鳴き声。
透明な「冬晴」の美しさ。


【金島桂華(かなしまけいか)略歴】
1892年 広島県福山市に生まれる。
1906年 大阪の西家桂州に師事し「桂華」の雅号をもらう。
1911年 後に竹内栖鳳の画塾「竹杖会」に入会し研鑽を積む。
1925年 第6回帝展で特選受賞。
1935年 大阪高島屋で初の個展開催。
1959年 日本芸術院会員となる。
1960年 日展理事となる。
1961年 錦紅会展に本作「冬晴」を出品
1962年 高野山奥之院襖絵制作に着手。
1969年 京都文化功労賞を受賞。
1974年 逝去。享年82。


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《冬晴》はこちらの販売店でお求めになれます。


<仕様体裁>

■軸・額共通仕様
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
原画 華鴒大塚美術館(岡山)
限定 200部
用紙 和紙
証明 著作権者及び作品所蔵者の承認印入り証紙を貼付
解説 平野重光(美術評論家)

■軸装仕様
画寸 天地38.5×左右52.5cm
軸寸 天地133.5×左右72cm
表装 三段表装(国産、ハンドメイド)
箱  柾目桐箱、タトウ入り

■額装仕様
画寸 天地38.5×左右52.5cm
額寸 天地58.5×左右72.5cm
重量 約4.0kg
額縁 特製木製額、アクリル付(国産、ハンドメイド)

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

November 21, 2014

山茶花の咲く頃


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 先週の金曜日、11月7日は立冬でした。ついこの間までの暖かさが一変し、手先が凍えるような寒さになってきましたね。これから日一日と寒さが厳しくなりますので、マフラーや手袋をして体を冷やさない様ご自愛ください。

 昔から立冬の頃には山茶花(さざんか)が咲き始めると言われますが、当社のお向かいにある小石川植物園内の山茶花が青々とした葉の間に白や淡いピンクの花を咲かせています。寒空の下、凛として花を咲かせ私達の目を楽しませてくれます。



 そこで今回は小倉遊亀「山茶花」をご紹介します。静謐な画調の中から画家の瑞々しい感性が溢れる逸品を是非お手元に。



彩美版® 小倉遊亀 《山茶花》
販売価格 180,000円+税(軸・額共通)


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<使用体裁>

■軸・額共通
監修 有限会社 鉄樹
原画 滋賀県立近代美術館所蔵
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 和紙
限定 300部(軸・額合計)
証明 画中及び奥付シールの2箇所に著作権者承認印捺印

■軸装仕様
画寸 天地47.3×左右53.3cm
軸寸 天地143×左右73.5cm
表装 三段表装(国産・ハンドメイド)
箱  柾目桐箱、タトウ付

■額装仕様
画寸 天地47.4×左右53.5cm
額寸 天地63.8×左右70cm
重量 約3.2kg
額縁 特製木製額、アクリル付(国産・ハンドメイド)

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。



【今日の谷中千】201411_ohgai_kinennkann.jpg
東京千駄木の森鴎外記念館では以下の展覧会が開催されています。
来週月曜日までですのでご興味のある方はお早めにお出かけ下さい。

流行をつくる ―三越と鴎外―

文京区立森鴎外記念館
東京都文京区千駄木1-23-4
電話 03-3824-5511


会 期 2014年11月24日(月・祝)まで
開館時間 10時~18時(最終入館17時半) 
観覧料 一般500円(20名以上の団体:400円)
※中学生以下、障がい者手帳ご提示の方と同伴者1名まで無料

November 14, 2014

紅葉の中に佇む 滋賀県立近代美術館より


201411_Siga_ModernArtMuse.JPG 皆さま、滋賀県にある「びわこ文化公園」をご存じでしょうか。この公園は琵琶湖や比叡山、湖南アルプスを望む湖南丘陵地一帯を滋賀県が都市公園として整備を進めているものです。その中でも県立近代美術館、県立図書館、県埋蔵文化財センター等を含む地域は「文化ゾーン」と呼ばれ、茶室や日本庭園、こども広場や催し広場など、多くの人のふれあいの場として利用されています。



201411_YukihikoYukiEx_Banner.JPG わたしは開館30周年を迎える県立近代美術館の特別展『「遊亀と靫彦」-師からのたまもの・受け継がれた美-』へ行って参りました。国内で最も小倉遊亀作品を所蔵している滋賀県立近代美術館において、今年は小倉遊亀生誕120年、安田靫彦生誕130年という記念年ということもあり、大規模な展示会が開催されています。現在、自然に囲まれたこの公園は美しく紅葉が色づいています。ぜひ足を運んで秋を堪能してみてはいかがでしょうか。





 当社は、来月12月の発売を目標として滋賀県立近代美術館が所蔵する小倉遊亀画伯の名作を彩美版®にて刊行する準備を進めております。詳細は近日発表いたしますのでご期待ください。



【遊亀と靫彦-師からのたまもの・受け継がれた美-】
会 場: 滋賀県立近代美術館
     〒520‐2122 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740‐1
     TEL:077‐543‐2111
会 期: 2014年10月11日(土)~11月24日(月・祝) 毎週月曜休館
観覧料: 一般1,100円、高大生800円、小中生600円 団体割引あり

November 7, 2014

新作 石踊達哉《星河(せいが)》のご案内


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただきまことにありがとうございます。
 当社はこの度、石踊達哉画伯の作品《星河》を彩美版®で再現し販売を開始いたしました。

 当社が2004年に発行した石踊画伯の名作《秋草》(彩美版®、限定200部)は、おかげさまで好評のうちに完売いたしました。お客さまの更なるご要望にお応えし、このたび刊行した新作《星河》は、画伯がミレニアムの年(2000年)に描いた記念すべき秋野の風景です。野に繁る秋草と昇る月という、琳派の画家たちが好み江戸期の人々を魅了した画題が、画伯の現代的な感覚と卓越した技巧で見事に表現されております。

 萩が風にそよぎ、女郎花(おみなえし)や桔梗、紅色に鏤められた吾亦紅(われもこう)が咲き乱れ、輝く月、満天の星と溶け合いひとつになる―金色に染まる秋の野原、移ろいゆく季節の輝きを共同印刷が誇る「彩美版®」の技法で再現いたしました。金色に光り輝く月、緩やかに流れる黄金の光の河の再現には、特に本金泥を使用しております。

 作品はご自宅の居間や応接室・事務所など、どこにでも飾り映えのする10号サイズで制作。画面にマッチした国産ハンドメイド金泥仕上げの額に収め、200部限定でご用意いたしております。

 星降る夜、月に照らされ、昼間のように明るい秋の野辺の景。華やかで儚(はかな)い幻想的な美しさを、是非皆さまのお手元でご堪能ください。

 なお、本作より当社が独自に開発したセキュリティシールを証紙に貼付いたします。「彩」の文字が入った銀色のセキュリティシールは、専用判定器やスマートフォン、デジタルカメラを使って作品の真贋が判定出来ます。お客さまにはどうぞご安心の上、お買い求めください。
※スマートフォンのカメラ機能でフラッシュ撮影していただきますと、撮影したセキュリティシールの画像に「KP」の文字が浮き上がります。
ニュースリリース http://www.kyodoprinting.co.jp/release/2014/20141031-1517.html




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彩美版® 石踊達哉 《 星河 》

販売価格 160,000円+税
限定200部発行



<仕様体裁>
ishiodori_seiga_seal.jpg監 修 石踊達哉(題字も)
解 説 谷岡 清(美術評論家)
技 法 彩美版®)、シルクスクリーン手刷り、本金泥使用
用 紙 版画用紙
証 明 著作権者検印入り証紙を額裏に貼付(セキュリティシール併用)
額 縁 木製金泥仕上げ、アクリル付き(国産、ハンドメイド)
画 寸 天地42.6×左右52.8㎝(10号)
額 寸 天地61.6×左右72.0㎝
重 量 約3.4㎏
発 行 共同印刷株式会社
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

October 31, 2014

自転車散歩-江戸の風情が残る行徳界隈


 自転車を使った気ままな散歩、ポタリングが人気を集めている。江戸川を挟み東京に隣接する千葉県の行徳(ぎょうとく)はかつて多くの旅人が行き交い繁昌した宿場だった。自転車ならではの機動性を活かし江戸の風情が今も残る行徳の町を散歩してみた。



gyoutoku_benten201410.JPG 浦安市に隣接する市川市行徳地区は地下鉄東西線が開通して以来東京のベットタウンとして発展し駅の南側(海側)に向かって新しい街並が拡大している。バードウォッチングが好きな方であれば海側に宮内庁の新浜鴨場(御猟場)と市川野鳥の楽園があることをご存知であろう。東京ディズニーランドや葛西臨海公園にもほど近い。新興住宅地のイメージが強いが、本来の行徳は駅北側の旧江戸川と並行する行徳街道(県道6号線)沿いの本行徳を中心とした地域で、今も江戸の風情を残す古い町屋や社寺、古祠が多く残る。海側には、かつて遠浅の干潟を利用した大規模な塩田があった。駅前の弁天公園のあたりは弁財天を祠る鎮守の森で江戸時代は小島であったともいわれる。

 行徳は江戸から房総、常陸(現在の茨城県)方面への旅の起点となり多くの旅人や物資が行き交う交通の要所であった。今で言えば首都圏観光ガイドにあたる江戸時代末期に出版された『江戸名所図会』※には当時の行徳の賑わいが以下のように記されている。

 『行徳船場 大江戸小網町三丁目行徳河岸といえるより此地まで船路三里八丁あり。房総の駅路にして旅亭あり。故に行人絡繹(こうじんらくえき/「路行く人の往来が絶えない様」の意)として繁昌の地なり。殊更(ことさら)正五九月(1月、5月、9月)は成田不動尊へ参詣の人夥しく賑い大方ならず。』(「江戸名所図会」第7巻)

※江戸名所図会(えどめいしょずえ)
全7巻。1~3巻は天保5年(1834)、4~7巻は天保7年(1836)の刊行。江戸神田雉子町の名主を務めた斎藤長秋、莞斎、月岺の親子三代により編纂され、月岺が刊行した。挿図は長谷川雪旦。江戸文化の研究者必携の名著とされる。ちくま学芸文庫に収められているほか、原本は国立国会図書館デジタルコレクションに収録されインターネットで一般に公開されている。





常夜灯
gyoutoku_jouyatou201410.JPG 江戸市中には縦横に運河が張り巡らされ水運が盛んであったから、船を使う行徳経由のルートは人気が高く江戸から成田山新勝寺へお参りする人々で大いに賑わった。船着場の新河岸跡には『江戸名所図絵』に描かれた江戸末期、文化九年(1812)の常夜灯(市川市指定文化財)が今も残り周辺は公園として整備されている。この行徳ルートを開いたのは徳川家康と言われている。家康は新たに小名木川と新川という二つの運河を開削し日本橋と行徳の間を直接船でつなぐルートを設けた。行徳は古くから製塩業が盛んで家康は軍事的見地からこれを重視し厚く保護したと言われる。



笹屋うどん跡
sasaya_201410.JPG 当時行徳名物として親しまれたのは新河岸からほど近くの行徳街道沿いにあった笹屋うどんである。『江戸名所図絵』行徳河岸の挿絵にも「名物さゝやうんとん(饂飩)」と描かれている。笹屋のいわれは、「石橋山の合戦に敗れて安房へ落ち延びる途上行徳に着いた源頼朝一行を、うどん屋の仁兵衛がうどんでもてなし、頼朝から源氏の家紋「笹竜胆」を拝領し以後屋号を「笹屋」としたと伝えられる。残念ながら廃業して久しく、名物うどんがどんなものであったかはわからないが※、江戸時代の建物や太田南畝の筆になるという看板が今も大切保存されている。(看板は市川歴史博物館に展示)
※看板には「御膳ほしうどん」と書かれており、干麺を使ったものであったようだ。



徳願寺
tokuganji_201410.JPG 「行徳千軒寺百軒」といわれるほど数多い寺院を代表するのは、寺町通りにある徳願寺だろう。同寺は家康の帰依を受けて慶長十五年(1610)に開創され四百年余の歴史を持つ。本尊は運慶作と伝える阿弥陀如来像で江戸城に祀られていたものを当寺に移したといわれる。現存の山門と鐘楼は安永四年(1775)の建築でこちらも市川市指定文化財となっている。



成田道(なりたみち)
teramati_st_201410_02.jpg 江戸から成田方面へ向かう道には、千住、小岩を経て江戸川を船で渡り現在の千葉街道(国道14号線)を通り市川、船橋を経由して成田街道(国道296号線)へ抜ける陸側のルートと、日本橋小網町(現在の箱崎付近)行徳河岸から行徳の新河岸まで船を使い、行徳から船橋までは現在の「寺町通り」や県道179号線を経由して船橋に至る海側のルートがあり、どちらも「成田道」と呼ばれた。(両者は船橋宿の入口で一つに交わる。)



権現道(ごんげんみち)
gongenmiti_201410.JPG 行徳街道と並行するように行徳地区を縦断する「権現道」と呼ばれる狭い路地は、東金御殿へ向かう家康が通ったと言い伝えられている古道だ。行徳街道成立以前からあったといわれ、この道に沿って多くの寺社や小祠が立ち並ぶ。
 古い歴史を持つ道だが地域住民にとっては今も大切な生活道であり、車が行き交う表通りを避けてこの小路を利用する方が多いようだ。







 日本橋から行徳までは地下鉄東西線で20分余り、都心から近く手軽に楽しめる行徳はお勧めだ。行徳駅や一つ隣の南行徳駅に置かれている無料のレンタサイクルが利用できる。また市川市が作成した「歴史的街並の散歩道」と題するガイドマップを是非携帯したい。イラストで描かれた地図には見どころが満載されている。市川市役所文化振興課で無料配布されているほか市川市のホームページからダウンロードすることもできるので是非活用されたい。



October 24, 2014

小江戸美術散策


 翌日は関東に台風が直撃すると目されていた曇り空の休日、気分だけでも晴れやかにと、久しぶりに好きな街・川越を訪れてみました。

 いうまでもなく川越は、小江戸の異名を持つ通り江戸時代の城下町の風情が色濃く残されており、歴史を刻まれた建物やそれを大切にする景観づくりがとても魅力的です。私にとっては街そのものがアートであり、心和むドリームランドです。見るものが尽きない中で、今日は美術館を中心に散策することにしました。

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 氷川神社と新河岸川のすぐそばにヤオコー川越美術館がありました。2012年開館の新しい美術館です。小ぶりながらその洗練された未来的外観は不思議な存在感があります。直線の建物に緩やかな曲線の道を組み合わせた、計算された造形美。建築設計は、世界的建築家・伊東豊雄氏の手によるそうで、建築雑誌などにも紹介され、海外からも建物を見に訪れる方がいらっしゃるそうです。

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 展示作品は、写実絵画の巨匠、三栖右嗣(みす ゆうじ/1927~2010)画伯の作品で、美術館自体、画伯の記念館となっています。迫真の写実的描写で桜花や人物画を描いていますが、とりわけ今回の展示では一連の林檎の作品が取り上げられていました。単なる静物としてではなく、自然風景の中にある生命体として、その生と死、再生を見つめ続け、作品にしています。150号大の大判・モノトーンのリトグラフ<林檎の樹>は墨画のように勢いある筆致やはねが迫力いっぱいで目をひきました。シャープな三栖画伯の作風はA.ワイエスを連想しますが、やはり画伯も敬愛していたようでした。

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 この美術館とは対照的に、川越に根付く歴史を想わせる山崎美術館は、全く異なる味わいがありました。江戸時代から続く菓子店・亀屋のオーナー山崎家が、その蔵や工場を改造して、1982年に開館した美術館です。川越藩のお抱え絵師だった日本画壇の巨星・橋本雅邦の作品コレクションを中心に公開しています。3つほどの部屋に分かれており、もと土蔵らしき1番目の部屋には和菓子の木型や技法書など、続く2番目の部屋には浮世絵、ランプ、千両箱など骨董品が展示されています。

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 さらに3番目は、格子戸をあけ靴を脱いで上がる広い部屋です。ここで橋本雅邦や他の日本画家作品が鑑賞できるのですが、他に花瓶類やアール・ヌーボー調の食器なども展示されています。博物館のような印象ですが、美術館を設立した六代山崎嘉七氏の、コレクションは全てお見せしたいというサービス精神が伝わります。雅邦の作品はこの日、恵比寿、大黒、兎、蓬莱山、そして昇龍の5点が展示されていました。昇龍は雅邦60代半ば頃の作品で、波頭を蹴って天空に昇る龍をスピード感あふれる構図と筆致で描いています。

 本物の歴史ある建物は心にしみる風情があります。鑑賞後は展示室の前で亀屋の最中とお茶をいただき、それをしみじみ味わいました。

 散策を続け、お土産に「いも恋」を買っていたときは小雨だった天気も帰り道は豪雨となりました。翌週は川越まつりがあると知り、1週ずらせば良かったと思う反面、道がすいていてラッキーだったのだと思い込むことにしました。





■ヤオコー川越美術館
 住 所 川越市氷川町109-1
 電 話 049-223-9511

 開 館 10時~17時
 定休日 月曜(祝日の場合は翌日)
 料 金 一般300円、高・専・大学生200円、
     中学生以下無料(団体20人以上は100円引き)


■山崎美術館
 住 所 川越市仲町4-13
 電 話 049-224-7114

 開 館 9時30分~17時
 定休日 木曜(祝日の場合開館)、展示替期間
 料 金 一般500円、高・大学生350円、
     小・中学生200円(団体10人以上は割引あり)

October 17, 2014

あをによし奈良の都の旅もよし。 飛鳥、そして平城宮跡を巡ってみた事。


 奈良県に行く用事が出来たついでに、飛鳥の遺跡と平城宮跡を巡ってみる事にした。奈良を訪れたのは詰襟学生服を着ていた中学生の修学旅行以来なので、かれこれ30年以上経つ。

 まずは飛鳥の遺跡を巡ってみたい。歩いて回るのは難しいと思い、橿原という駅でレンタサイクルを借りる計画を立てた。出発場所の大和西大寺駅の窓口で、駅員から切符を買おうと思うが、まず橿原(かしはら)という字が読めない。こういう時はいつものごとく、ごにゃごにゃっと頭の言葉を濁して後の原(ハラ)を力強く発音して切り抜ける。なんとか駅員から切符を買って橿原駅に到着。車重が20kgはありそうなママチャリ(変速ギアなし)を借りて秋晴れの飛鳥路をスタートした。この自転車、時速15kgも出るとクランクが空回りし、ちょっとした坂でも立ちこぎしないと上がれないスローな乗り物である。

20141017sakahuneisi.jpg まずは一番訪れてみたかった「酒舟石(さかふねいし)」に到着。周りをうっそうとした竹林に囲まれた小高い丘の上に鎮座するこの不思議な岩には、いくつもの溝が彫ってある。案内板によると、酒や薬、油などを作るときに使った道具といわれていたり、庭園の施設という説もあるとの事。今もって謎の遺跡のよう。岩には石割りの工具跡が残っているが、これは作られた時のものではなく、その後に石の一部を誰かが持って行った跡だとか。完全な形を見られないのは大変残念。この遺跡の下には平成12年に発見されて話題になった亀型石造物と小判型石造物がある。小判型石造物に溜まった水が亀型石造物の頭に流れ込み、亀の胴体を水で満たして尻尾の辺りからさらに流れ出る構造になっているなかなか凝った作りのもの。

 「酒船石」を後にして、落ち着いた佇まいの飛鳥の里をうねうねと自転車は進み、有名な「石舞台古墳」に到着。ここは観光スポットとして、かなり人が多く訪れている。周りを緩やかな山々に囲まれた巨大な天井石の姿は、現代彫刻が展示しているかのよう。遠く下の方には銀ネズ色に輝く家々の瓦屋根が見える。次は古墳のある高台から一気に下り、聖徳太子生誕の地とされる「橘寺」の「二面石」を見学。岩に彫られた二つの顔は人の心の善悪二相を表したものといわれているらしい。「橘寺」を下った所に雑貨屋さんがあったので一休みする。ここでは明日香村の果物や野菜のジェラードが食べられる。古代米(黒米)味を食べたかったのだが残念ながら売り切れ、あすかルビーというイチゴのジェラードを注文する。食感は非常にねっとりとしているが、甘すぎず、イチゴの爽やかさを味わえた。元気を取り戻し、さらに「亀石」、「鬼の雪隠(せっちん)」、「鬼の俎板(まないた)」を見て回り巨石遺跡を堪能した。

 今夜宿をとる大和西大寺に戻り夕食を摂った後、夕闇の平城宮跡に散歩に出かける。かつて天皇が国家儀式を執り行った第一次大極殿(だいごくでん)がライトアップされて明るく輝いているのが遠くから見える。近づいて見ると大極殿はかなり巨大であった。遥か南の方向にも明るく輝く朱雀門が見える。そこを目指して暗くなって人もまばらな道を進んでみる。平城宮跡は巨大な広場のようになっており、夜になるとかなり暗く、人もあまり通らない。いつまでも続く寂しい道を一人歩いていると、芥川の羅生門ではないが盗人でも出ないかと不安になって来た。明るく照らされた朱雀門に無事たどり着き、ほっと一息。かつての旅人も街の門にたどり着いた時はこのように安堵を覚えたのではあるまいか。

20141017daigokudenn.jpg 翌日、すっかり明るくなった平城宮跡に再度訪れてみた。広々とした平野に大極堂(平成22年復元)と朱雀門(平成10年復元)がかなり離れて向かい合っている。その間を近鉄奈良線が通っている景色も、のんびりとしていて良い。せっかくなので平城宮跡資料館という建物に入ってみると、ボランティアの方から展示物の説明をしていただけた。時間があまりない旨お伝えすると、その時間に収まるように要領よく説明していただけ、大変助かった。次に昨夜は外から見た第一次大極殿の中に入ってみる。高い天井を見上げると美しい蓮の花が描かれている。なんと日本画家の上村淳之先生が原画を描かれたとの事。さらに四周に巡る小壁に描かれている四神(玄武、朱雀、青龍、白虎)・十二支も淳之先生の筆によるもの。先生がこれらを描かれたのは厳冬の時期で、高い足場を組み、そこに登って描かれ大変なご苦労があったそうです。(なお繊細で色鮮やかな上村淳之先生の花鳥画は当社商品にもございますので下記をご参照ください。)大極殿を出て平城宮跡の草原に立て遥か山々を見やる。緑と水が豊富な奈良の地は、やわらかな空気に包まれて、まさしく良い土地であった。



追伸
 現在、東京近代美術館で開催中(2014年9月23日~11月3日)の菱田春草展。重要文化財の「落葉」は残念ながら13日で展示替えのため見られなくなったようですが、当社商品の「落葉」はまだ多少残っています。よろしければこちらも参照ください。



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彩美版® 菱田春草 《落葉》 左隻/右隻

【販売価格】

■15号
左右・各  本体価格 200,000円+税
左右セット 本体価格 380,000円+税

■25号
左右・各  本体価格 250,000円+税
左右セット 本体価格 480,000円+税


【仕様体裁】
原画 永青文庫所蔵(熊本県立美術館寄託)、重要文化財指定
技法 彩美版®
限定 左隻/右隻 各150部
画寸 25号 34.6×80.3cm / 15号 28.3×65.2cm
額寸 25号 52.5×98.5cm / 15号 46.0×83.0cm
額縁 特製木製額、アクリル付き(国産、ハンドメイド)
証明 所蔵者の承認印押印証紙を額裏に貼付
発行 共同印刷株式会社





-画家の夢見る世界への誘い-
彩美版® 上村淳之 《四季花鳥図》
販売価格 160,000円+税



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※背景の銀色をシルクスクリーンで再現しています。


【仕様体裁】
原画 近畿日本鉄道株式会社所蔵 松伯美術館委託
監修 上村淳之、松伯美術館
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
限定 300部 
画寸 天地25.2cm×左右65cm
額寸 天地41.4cm×左右81cm
重量 約2.3kg
用紙 版画用紙
額縁 特製木製銀泥額、アクリル付(国産、ハンドメイド)
証明 監修者の承認印押印証紙を額裏に貼付
発行 共同印刷株式会社



※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


October 10, 2014

箱根・岡田美術館


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。

okada_museum.JPG 先週土曜日、10月4日で開館1周年を迎えた岡田美術館へ行ってきました。場所は箱根小涌園、有名な温泉アミューズメント施設「ユネッサン」の隣にあります。箱根と言えば彫刻の森美術館、ガラスの森美術館、POLA美術館、成川美術館、など多種多様な美術館がたくさんありますが、こちらも見ごたえのある個性的な美術館でした。

okada_fuujinraijin.JPG 表門を入ると、館内に展示されている「風神雷神図」がガラス超しに目に飛び込んできます。こちらは日本画家福井江太郎氏の「風・刻」という作品で、縦12メートル、横30メートルにも及ぶ大壁画です。そして、この絵を挟んだ階段の上にはなんと源泉掛け流しの足湯カフェがあります。足湯に入り、お茶を飲みながらゆっくり鑑賞できるようになっています。入場者は無料で楽しむことができるという、なんとも箱根らしいサービスです。

 館内に入り入場チケット購入前に携帯電話、カメラはロッカーに預けます。展示室前に飛行機へ搭乗する時などに通る金属探知機をくぐります。かなり厳重なチェックになっている印象です。全5階からなるこちらの美術館の展示面積は、およそ5,000㎡にも及ぶとのことです。収蔵品の中心は、近世・近代の日本画と、東アジア(日本・中国・韓国)の陶磁器ですが、そのほかにも幅広い時代・分野の作品が展示されています。

 今回の訪問目的である企画展「大観・春草・御舟と日本美術院の画家たち」は開館一周年記念展として開催されていました。目玉作品は横山大観の「霊峰一文字」、速水御舟の「木蓮」。横山大観の「霊峰一文字」は、縦1m、長さ9mという絹地に、湧き上がる黒雲から姿を現す霊峰富士の雄姿を描いた大作です。大正15年(1926)人形浄瑠璃の舞台の引幕として使われて以来、ほとんど世に知られないまま秘蔵されていました。岡田美術館の所蔵となり、昨年秋の開館を機に展示されたとのことです。また、新たに収蔵された速水御舟「木蓮」もしばらく行方不明になっていた期間があり、実に34年ぶりの公開だそうです。32歳の御舟が初の個展に出品した一幅で、代表作「炎舞」(山種美術館蔵)などとともに展示され、近代日本水墨画の名作と評価されています。

 これら2点の他にも、日本美術院で活動した画家たちの作品が一堂に展示されています。明治から昭和にかけて日本画の近代化を先導した画家たちの、華やかで革新的な作品を、箱根観光と合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。



【岡田美術館】

神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
電話 0460-87-3931

■開催中の展覧会

開館一周年記念
大観・春草・御舟と日本美術院の画家たち

会  期:2014年10月4日~2015年3月31日
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休 館 日:会期中無休(ただし12月31日、1月1日は休館)
入 館 料:一般・大学生2,800円 小中高生1,800円

October 3, 2014

秋の情景


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
 天気が不安定で夏のような暑さの日や肌寒い日もありましたが、「秋分の日」が過ぎようやく秋の気配が感じられますね。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 先日、近所の公園へ足を運びました。過ごしやすいせいか、ランニングやウォーキング・ジョギングをされている方が多く、見るからに「スポーツの秋」を感じさせられました。公園周辺を散策していますと、土手沿いに鮮やかな朱色の彼岸花が咲き連なっていました。緑の草木を背景にし、より一層際立つ朱い色に目を奪われました。何気ない場所で見つけた秋の風景。小さな発見ですが心が和みます。

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 さて今回は、朱色が美しく秋に輝く奥田元宋「秋耀白雪(しゅうようはくせつ)」の彩美版をご紹介いたします。青く澄んだ空に雪山の彼方から、一条の光が優しく水面に注ぎます。燃えるような「赤」色が一層輝き、描かれている一筆一筆にに画家の情熱が窺えます。





彩美版 奥田元宋 《秋耀白雪》
限定部数 300部
販売価格 180,000円+税



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<仕様体裁>
監修 奥田小由女(人形作家、日展副理事長、日本芸術院会員)
原画 ホテル賀茂川荘所蔵(広島県竹原市)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 版画用紙(モロー)
証明 著作権者承認印を奥付に押印
額縁 特製木製額金銀泥仕上げ(国産、ハンドメイド)
画寸 38cm×53cm
額寸 53cm×68.5cm
重量 約3.3kg
発行 共同印刷株式会社
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


September 26, 2014

江戸の奇才、北斎。


 雨が降るたびに少しずつ涼しさを肌で感じる今日この頃、わたしは上野の森美術館で開催されている『ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎』へ行って参りました。

 皆さんもよくご存じの作品「富嶽三十六景」シリーズが多数出品されているこの企画展は、2008年から数えて3回目であり今回はいよいよ最終回とのこと。小雨の中にもかかわらず大勢の来館者で賑わっていました。作品を前にしたとき、驚くべきはその色彩の鮮やかさ、そして淡い色彩の美しさでした。ボストン美術館の浮世絵作品は門外不出と言われ、近年までほとんど公開されたことがなかったために保存状態が極めて良好なのだそうです。それにしてもここまで美しいとは。

 大半が日本初公開ということで、様々な作品とその表現を楽しむことができます。たとえば「水」ひとつとってもその描き方は様々で、「大海原の荒々しい波の作品」があったと思えば「穏やかな波打ち際の作品」もあり、また「山の奥地に佇む滝の姿」と、同じ「水」でもここまで違うものかと、多岐に富んだ北斎を楽しむことができました。厳選された優品約450点。浮世絵ファンならずとも魅了するこの展示会、芸術の秋のひとときを堪能されてはいかがでしょう。



【展覧会情報】

ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎
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会 場 上野の森美術館
    東京都台東区上野公園1−2
会 期 2014年9月13日(土)~11月9日(日)
時 間 午前10時―午後5時(金曜日は午後8時まで)
    *入館は閉館の30分前まで
休館日 9/16(火)、9/29(月)、10/6(月)、
    10/14(火)、10/20(月)、10/27(月)


September 19, 2014

生誕140年 「菱田春草展」


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。
 いよいよ9月23日(火)より、東京国立近代美術館にてこの秋注目の「菱田春草展」が行われます。近代日本画の礎を築き日本画の革新に挑んだ、美術史に輝く大変重要な作家の回顧展です。

 菱田春草は明治7年(1874年)長野県飯田市に生まれ、草創期の東京美術学校を卒業後、岡倉天心の組織した日本美術院の設立に参加(明治31年)、「朦朧体(もうろうたい)」と呼ばれる線抜きの描法を横山大観と共に創始し、一躍名を馳せました。インド・欧米に外遊し彼の地で作品展を開催、帰国後の明治39年(1906年)日本美術院の移転に伴い茨城県五浦(いづら)に移住し苦難の制作活動を続けるも、病のため再度上京して代々木に転居しました。後年は、病魔と闘いながらも和洋折衷の装飾的な画風による色彩の絵画を目指し、独自の日本画を確立しました。惜しむらくは院展の再興(大正3年)を見ずして、明治44年(1911年)満37歳の若さで他界しました。

 春草の生誕140年を記念する今回の展覧会の話題は、短い生涯の間に描かれた重要文化財4点、《王昭君》《賢首菩薩》《落葉》《黒き猫》の全てが出品展示されることです。特に《落葉》については、重文の《落葉》(永青文庫蔵)とともに《落葉》と題された同時期制作の作品が全て出品されます。《落葉》連作5点の展示はまたとない試みと言えましょう(※作品の展示期間にご注意下さい)。他にも春草の画業を理解する上で重要な100点を超える作品が出品されるとのこと。質量とも充実のラインアップで春草の目指した新たな日本画の創造過程が一望出来ることでしょう。この貴重な展覧会に、皆様ぜひ足をお運び下さい。



【菱田春草展情報】

会場 東京国立近代美術館
会期 2014年9月23日(火)から11月3日(月)まで
休館 月曜(祝日を除く)、10月14日(火)
時間 10:00~17:00 ※金曜は20時まで




 尚、弊社では春草の代表作である《落葉》の彩美版をお取扱いいたしております。
 サイズは2種(15号/25号)ご用意いたしました。お好みでお選びいただけます。カタログもございますので遠慮なくお申し付け下さい。



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彩美版® 菱田春草 《落葉》 左隻/右隻

【販売価格】

■15号
左右・各  本体価格 200,000円+税
左右セット 本体価格 380,000円+税

■25号
左右・各  本体価格 250,000円+税
左右セット 本体価格 480,000円+税


【仕様体裁】

技 法 彩美版®
限 定 左隻/右隻 各150部
画 寸 25号 34.6×80.3cm / 15号 28.3×65.2cm
額 寸 25号 52.5×98.5cm / 15号 46.0×83.0cm
額 縁 特製木製額、アクリル付き(国産、ハンドメイド)
原 画 永青文庫所蔵(熊本県立美術館寄託)、重要文化財指定
証 明 所蔵者の承認印押印証紙を額裏に貼付
発 行 共同印刷株式会社

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

September 12, 2014

実りの秋


aki_bare.JPG このところ全国的に不順な天候がつづいていますが、一昨日の東京は1時間に100mm以上という記録的な大雨が降り、あちこちで冠水被害がありました。
 秋らしい爽やかな晴天を恋しく思っていたら、その想いが通じたのか今朝の小石川は久しぶりの青空に恵まれました。夏の濃い青とは明らかに異なる、柔らかな水色の青が心に沁みます。






nobori.JPG 秋は稲などの穀物や木の実、果実が実る時期であり、そうした恵みに感謝し豊饒を祝う祭りの季節です。当社周辺では今、街路に沿って近くの簸川(ひかわ)神社の秋祭りを知らせる幟が掲げられています。

 ※簸川神社は江戸時代には氷川明神と呼ばれた旧小石川村の鎮守です。今は文京区千石二丁目に鎮座しますが古くは当社のお向かい現在の植物園内にありましたが、江戸時代前期の承応年間、この地に徳川将軍家の白山御殿が設けられることになり今の地に遷座したと伝えられます。




inaho.JPG 豊かな稔りの季節を迎えた北総の谷津田です。既に稲刈りが始まっていました。見渡す限り広がる稲穂の波は黄金色に色づき重く穂を垂れて収穫の日を待っています。






 秋はこうした恵のお陰で、一際食べ物がおいしい季節でもあります。サンマの塩焼き、松茸ご飯、秋茄子の素揚げに新蕎麦。数え上げたら限りがありません。食いしん坊の私にとっては待ちに待っていた嬉しい季節の到来です。豊かな秋の実りに感謝しつつ心行くまで味わいたいものですね。

September 5, 2014

さり気なくアートな空間で一息


 お盆も終わり、夏もそろそろ名残惜しそうに後ろ姿を見せようとする頃、ふらりと映画を観に行き(るろうに剣心~京都大火編)、途中で終わった感が名残惜しく、続編を見ねばと思いつつ、さらにふらりと近くにあるアルピーノ村に立ち寄りました。

G_inside_20140905.jpg アルピーノ村とは、さいたま新都心にある、フレンチやイタリアンのお店や、お花屋さん、お菓子屋さんなどが大通りをはさんで並ぶ店舗空間で、(たぶん)知る人ぞ知る人気スポットです。実はこれが初めての訪問ですが、それぞれのお店の何ともさり気なくお洒落な佇まいが気持ちを和ませます。ヨーロッパの素敵な邸宅を想わせる「お菓子やさん」という洋菓子店に入ると、その奥に、「あるぴいの銀花ギャラリー」という画廊があります。

G_inside2_20140905.jpg 画廊といってもかしこまった感じはなく、菓子店の空間の延長で、ちょっとアートに触れられるという印象です。その時は「アイデアを具現化する-生活の道具 考案と制作と展示」という催しでした。椅子やラック、ハンガー、状差し、花瓶、カットボードなど、ユニークに設計されたデザインが、職人的技術で美しく味わい深く製品化されていました。町田市の工房団地に集まった4人の若い作家さんたちの作品だそうで、作家さんが気さくにお話をしてくれました。

karakurin_20140905.jpg ギャラリーのオーナーの方は、「画廊というと限られた人々が訪れる場になりがちだが、菓子店舗とつなげ、その境界をなくすことで、より幅広く子どもも含めたくさんの方に、気軽に作品に接してもらえることを意図した」とおっしゃっていました。そしてこのアルピーノ村の各お店には、このギャラリーと関わるアートやデザイン作品がさり気なく置かれているそうです。「お菓子やさん」にも、テーブル等なるほどと思わせる家具類が見られますが、何といっても目を惹くのが、レジの後ろ上部に掛けられた、井村隆先生の金属加工によるシリーズ作品「カラクリン」。レトロなSF的オブジェは、柔らかな手作り感と無骨さがあり、生命を吹き込まれたようで、夢と温もりにあふれています。

 さらにこのアルピーノ村を語る上で外せないのが、鈴木悦郎先生の作品だそうです。悦郎先生は大正生まれの画家・イラストレーターで、雑誌『ひまわり』『それいゆ』などの挿絵や本の装幀、バレエ美術など幅広い分野で知られています。昨年惜しくも亡くなられたということですが、お店の2階も(式場の空間のようですが)見せていただき、数点の悦郎先生の抽象作品が飾られていました。確かにお店全体を形作るVI表現というか、さり気ない装飾や包装紙、袋などの愛らしいデザインは鈴木悦郎先生の手によるものです。

 1969年に最初にフレンチレストラン「アルピーノ」が誕生し、徐々に発展してきたそうで、このギャラリーも老舗の歴史を持つわけですが、全くそういうイメージはなく、お菓子の可愛くてフレッシュな美味しさが、そのままギャラリーに息づいているようです。



■あるぴいの銀花ギャラリー
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 さいたま市大宮区北袋町1-130

 電  話 048-647-2856
 営業時間 11時~18時  
 定 休 日 火曜日

August 29, 2014

お盆の真中に東京の真中に行った事、及び自分の行動範囲はあまり変わらないことを自覚した件。


 この夏もお盆が来た。東京ではこの時期、帰省や旅行でビジネス街は人が少なくなる。そこでこの機会にいつもは人が多い東京の真中で、閑散とした街を楽しんでみようと出かける事にした。まず東京の真中とはどの辺かということになるが、ここは江戸からの中心地、皇居の辺りをそれとする事にした。皇居の住所は東京都千代田区千代田1-1だそうで、いかにも真中っぽい。

 まずは東京駅から皇居を望む。辰野金吾の設計により大正時に建てられた東京駅は、赤レンガと特徴的なドームが美しい。鉄道画家として活躍した富田利吉郎の作品「東京駅」に、そのモダンな駅舎が精緻に描かれている(本作品は当社にリトグラフの在庫がある)。行幸通りの広い道を皇居に向かい、和田倉門を過ぎて皇居の周りを時計回りとは逆に進む。皇居を一周すると約5Kmとの事。さすがにいつもはランナーでいっぱいのこの道も、走っている人はまばらで空いている。大手門、平川門を左に見ながら毎日新聞社のビル前を過ぎた所で竹橋の横断歩道を渡る。ここから緩い坂を登り、警視庁第一機動隊と書かれた怖そうな標識を過ぎ、東京国立近代美術館と、その隣の国立公文書館をやり過ごし、少し進んだ所に今回訪れてみたかった場所、東京国立近代美術館工芸館がある。

kenmochi_chair.jpg レンガ造り2階建てのゴシック様式の建物は歴史と趣があり、旧近衛師団司令部の庁舎を保存活用したそうである。工芸館という名の通りここでは主に近代美術の工芸、デザイン作品を展示している。重要無形文化財の保持者などの優れた技術と高い芸術性を持った作品が、観覧料大人は210円と非常にリーズナブルな金額で見られるすばらしい所である。しかも普段から割と空いている。今回は「もようわくわく」という様々な模様をテーマにした展示会を開催していた(2014年8月31日まで)。中でも漆を幾層にも塗り重ね、模様などを彫刻する「彫漆」の作品は、その技法と表現の妙が新鮮であった。ところで館内には所々に観覧者が休めるように椅子が置いてあるのだが、こちらがまた良い。重厚な厚板材で作られたもの、うさぎの形の様なかわいらしいものなど様々。私のお気に入りは、剣持勇の藤丸椅子。藤で編まれた丸っとした形状の中央に色鮮やかなクッションがのっている。シンプルで美しいデザインに感嘆する。

sakurada_trench.jpg さて涼しい工芸館を出て、じりじりと暑い日が差す中、皇居の道に戻り反時計回りに進む。千鳥ヶ淵の在日英国大使館の威厳ある建物を右手に見ながら半蔵門に向かう。半蔵門の辺りから霞ヶ関方面を望むと、桜田濠の深い水の色と周りの木々の緑、そして緩いカーブを描いた凹凸のある地形とが不思議な景色を見せてくれる。道は下りになり右手に国立劇場、最高裁判所が見えてくる。最高裁判所の前にある三宅坂小公園に三人の女性像が設置されている。彫刻家として活躍した菊池一雄が制作した広告記念像だそうである。広告が日本の産業文化に貢献した実績を記念し、広告功労者を顕彰する記念碑として日本電報通信社(現在の「電通」)が建てたものだそうだ。裁判所の前にあるので、正義や平等に関係する女神像かと漠然と思っていたのだが、全くの思い違いであった。いつもながらの思い込みを反省する。その背後には、「渡辺崋山生誕地」と書かれている立て札が目立たなく立っている。江戸後期の藩士、蘭学者で文人画家としても名を成した崋山は、高い写実表現の作品を描いている(残念ながら、こちらは当社に複製画はない)。

 さらに足を進めると右手に国会議事堂に続く幅の広い道が現れる。国会議事堂の前には、その名もずばり「国会前庭」という公園が北地区と南地区に分かれてある。この公園はかねてより休日に行くと非常に空いているのだが、お盆の時期は全く閑散としている。緑の多い公園に小川や池などが散在して、正しく都会のオアシス的な場所である。場所柄かトイレもきれいなので、たまに立ち寄る時は使わせてもらっている。都会生活では、「きれいなトイレがどこにあるか知っている事はとても重要な事である」と個人的に思う。公園の中程では都会の喧騒もそれほどでなく、国会議事堂のすぐ前という大都会にいる事を忘れてしまう。

 さてそろそろ皇居一周も終わりに近づいている。坂を下り終えると警視庁のある桜田門がある。門をくぐって左に進めばスタートした和田倉門に着くが、真っ直ぐ有楽町方面に向かう事にした。丸の内にフランスのクリスタルメーカー「バカラ」の店舗がある。工芸館では日本の優れたガラス工芸に触れてきたので、西洋のガラス工芸にも触れるのが良い。まだまだ残暑厳しい街に向かう。しかしよくよく考えてみたら、今日訪れた所は普段も割と空いている所であった。

 余談ではあるが今年の秋、9月23日から東京国立近代美術館で近代日本画の巨匠、菱田春草の生誕140周年を記念して大回顧展が開催される。この展覧会では菱田春草の代表的な作品が集結し、重要文化財4点全てが出品される。中でも大作「落葉」の連作5点も全て見られるとあって大変楽しみである(当社の複製画、彩美版®にも重要文化財の本作品がある)。

August 22, 2014

涼を求めて


mizunone_ten.jpg いつも美術趣味をご覧頂きありがとうございます。

 お盆休みも過ぎましたが、まだまだ残暑が厳しいですね。街中を歩いていても日陰を見つけてはそちらに移り、水分補給と休憩をはさみながら暑さを凌ぐ毎日が続いております。そのような中、この暑さを忘れさせてくれるような展覧会が開催されていると聞きおよび、涼を求めて足を運んできました。

 「広重から千住博まで」と銘打ち山種美術館にて開催中の展覧会「水の音」。この山種美術館では年中様々なテーマの企画展が催され、私もよく訪問しますが、まさにこの時期にうってつけの展覧会と思われます。本展は画面から感じられる「水の音」に焦点を当て、川、海、滝、雨の主題に沿って厳選した作品を通して、近世から現代までの画家たちの試みを振り返ることを主旨としています。

 展示室に入ると最初に目に入ってくるのは、奥村土牛先生の「鳴門」。海に渦巻く渦潮が画面いっぱいに描かれており、入場と同時に涼しさを感じさせてくれます。また、「鳴門」と同じくポスターに載っている千住博先生の描いた「滝」シリーズは、その水飛沫にマイナスイオンを浴びているような感覚にとらわれました。今回厳選されている水をテーマとした作品群は、絵画を目で楽しむだけでなく、まさに「水の音」を耳で、または体で感じられるようなものとなっていました。

 併設するカフェでは、展示5作品をテーマにした和菓子が販売されています。味は勿論のこと、細かい細工で作品の再現性も素晴らしいものとなっています。美術鑑賞後の余韻にひたりながら、一服してみてはいかがでしょうか。



【展覧会】
 水の音 -広重から千住博まで-

会 場: 山種美術館 
     東京都渋谷区広尾3-12-36

期 間: 2014年7月19日(土)―9月15日(月・祝)
開 館: 午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料: 一般1,000円(800円)・大高生800円(700円)・中学生以下無料
     ※ ()内は20名以上の団体料金および前売料金
     ※ 障害者手帳、被爆者手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。

お問い合わせ先:ハローダイヤル03-5777-8600(受付時間8:00‐22:00)

August 8, 2014

行く夏を惜しむ


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いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
昨日は「立秋」、暦の上では秋を迎えました。

連日30度を超える気温が続きまだまだ真夏のような暑さですが、ふと空を見上げると澄んだ青空が少し高くなり、入道雲の上にはいわし雲やうろこ雲が重なり、塩辛トンボや麦藁トンボが軽やかに飛ぶ姿が見られるようになりました。去る夏の後姿と訪れた秋の憂いを帯びた眼差しが交差する季節の移ろいを、しみじみと感じます。
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お盆を前に各所で夏を送る行事が盛んですね。
ここ東京の小石川、千駄木界隈では「こんにゃく閻魔」の別名で知られる源覚寺境内で「ほおずき市」が、伝通院では「朝顔市」、光源寺駒込大観音では「ほおずき市」が開かれます。眩い朱色のほおずきに清楚な色合いを見せる朝顔と私たちの目を楽しませてくれます。


華やかな祭の後に漂う、そこはかとない哀愁にも似た余韻を残して夏は去って行きます。





さて今回は暮らしの中にある、なにげないひと時の幸せを感じさせる作品をご紹介いたします。

上村松園 《虹を見る》
限定 300部発行
販売価格 140,000円+税



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<仕様体裁>
監修 上村淳之
原画 京都国立近代美術館所蔵
技法 彩美版(R)、シルクスクリーン手刷り
用紙 特製絹本
額縁 特製木製和額、アクリル付(国産、ハンドメイド)
画寸 天地32.5×左右65.5cm
額寸 天地49.5×左右82cm
重量 3.4kg
発行 共同印刷株式会社

※「彩美版(R)」は共同印刷株式会社の登録商標です。


August 1, 2014

夏のアートフェスティバル in 六本木


 今日から8月。いよいよ夏本番ですね。この時期は子供たちの姿をよく見かけます。楽しい楽しい夏休み。皆さんも休暇はとられましたか。

 さて、わたしは六本木・森アーツセンターギャラリーへ足を運び、日本スペイン交流400周年の記念事業として開催されている特別展『建築家ガウディ×漫画家井上雄彦 シンクロする創造の源泉』を観てきました。時代、国境、ジャンルを超えた奇跡のコラボレーション展です。

 ガウディ直筆のスケッチや図面、大型の建築模型やガウディがデザインした家具等、貴重な作品が約100点出品される他、3面スクリーンによるシアター映像、プロジェクション・マッピングによる演出、床への装飾等、様々な趣向を凝らして展開されていました。

 そして、井上雄彦が描くガウディ。実際に一ヶ月間バルセロナへ滞在し、ガウディの建築作品のひとつカサ・ミラ内にアトリエを構え、40点描き下ろし作品を完成させたそうです。ガウディの独創的な建築技術、それがどのように生まれたのか。その壮大な人生、インスピレーションの源泉とは。井上雄彦が見て感じたものを、マンガ風に表現したパネルが並び、その世界観は見る者を惹き込みます。

 尚、現在六本木では、『テレビ朝日・六本木ヒルズ夏祭りSUMMER STATION』も開催中。森美術館の展望台の前には「ポケモン」、六本木ヒルズの広場には「たくさんのドラえもん」が出迎えてくれます。喜ぶ子供たちの笑顔も、たくさん見ることができますよ。



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建築家ガウディ×漫画家井上雄彦
シンクロする創造の源泉 展


六本木ヒルズ森タワー52階の森アーツセンターギャラリーにて、7月12日~9月7日まで開催中。58日間限定です。夏休みを使ってぜひ訪問してください。

July 25, 2014

新作モネ「睡蓮、朝」のご案内

 
いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただきまことにありがとうございます。
弊社ではこの度、モネ畢生の大作「睡蓮、朝」複製画の販売を開始いたします。

本年は≪印象派≫の呼称が誕生してから140年の記念イヤーとなります。パリに誕生した印象派はモネの作品『印象、日の出』から命名されました。この「印象派誕生140周年」を記念し、印象派を代表する画家クロード・モネの集大成、オランジュリー美術館所蔵の「睡蓮」連作大装飾壁画より、「朝」を企画制作いたしました。

モネの「睡蓮」連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈された記念碑的な作品であり、平和を象徴する歴史的価値ある大作です。収蔵先のオランジュリー美術館は「睡蓮」連作大装飾画のために創設された≪印象派の殿堂≫と呼ばれています。

「睡蓮、朝」は柔らかな朝の光の中でまどろむような穏やかさの中に、青・緑・紫・白・赤が彩られた印象的な作品。原画は左右が13メートル近くの巨大な作品ですが、本作は特にニュアンスに富んだ見事な色彩の左半面を、フランス国立美術館連合・グランパレの画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法で再現いたしました。

画面をご自宅の居間や事務所にも飾りやすい30号のワイドサイズに仕上げ、気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。

モネが愛したジヴェルニーの庭の朝を、皆さま是非お手元でお楽しみ下さい。




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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) /
Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom


クロード・モネ 《 睡蓮、朝 》
Claude Monet  Les Nympéas:Matin

販売価格 128,000円+税
限定200部発行


■仕様体裁
原 画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監 修 千足 伸行(成城大学名誉教授/美術評論家)
限 定 200部
技 法 彩美版(R)、シルクスクリーン手摺り
用 紙 キャンバス
額 縁 木製デコレーション金箔額(国産ハンドメイド)、アクリル付き
画 寸 天地28.3×左右91㎝(30号)
額 寸 天地38.2×左右100.8㎝
重 量 3.3㎏
発 行 共同印刷株式会社

※「彩美版(R)」は共同印刷株式会社の登録商標です。

July 11, 2014

万華鏡三昧


kaleidoscope_museum_entrance.jpg浦和にほど近い川口に、日本一の万華鏡コレクター、大熊進一氏が館長を務める日本万華鏡博物館があると知り、ちょっとわくわくしながら見に行きました。

川口駅近くのマンション1階にあるこの博物館は、狭いこともあり、事前に予約が必要です。また、「見る」コースと、自分で「作る」コースがあり、今回は「見る」だけにしました。でも、館長自ら万華鏡の歴史や種類について丁寧に説明いただき、内容の濃い閲覧になりました。

kaleidoscope_museum_exhibition.jpg万華鏡というと、神秘的で魔法的、不可思議で怪しい世界というイメージがあり、先ほどのわくわく感もそんなところに起因していたのだと思いますが、館長の話は科学的かつ文化的で、万華鏡の構造の違いにより現れる模様の違いや、時代による万華鏡の扱いの変遷についてなど、現物を前に理解・体感することができました。

万華鏡は1816年にスコットランドで発明され、すぐに世界に広まり、3年後には日本で見られた記録があるそうです。当初は非常に高級な科学的工芸品で、裕福な家に置かれた嗜好品でしたが、素材や作りが簡易化され、特に戦後、工芸品からおもちゃとして広まったようです。その他、国により表面のデザインはその国らしさが出ていることなど興味深く拝聴しました。戦後占領下にあった日本で、万華鏡玩具がアメリカ向けに作られ、輸出されていましたが、その表面には「MADE IN OCCUPIED JAPAN」と書かれており、日本が戦争を背景にした日陰の時代があったことを偲ばせます。

1980年頃より万華鏡はより精巧な鏡の開発に伴い、玩具からアート作品として発展することとなり、万華鏡作家による新たに美しい鏡の世界が生み出されています。展開される模様、スコープ全体の形状両面でいかにオリジナリティが出せるかがアートとして問われる要素だということです。
3d_kaleidoscope.jpgこの博物館で作られたいくつかのオリジナルの万華鏡(ベアーズ・スコープ)は、ダンボールを加工して作られていたり、立体的な円形状で変化していくように見える模様の中で一瞬クマのキャラクターが現れたり、なかなか面白い趣向のアート作品でした。

最後に見せていただいたスコープは透明な偏光板の破片を素材にし、自然の光を偏光作用で虹色に見せてくれる万華鏡でした。戸外で散歩しながら除くとその景観を美しい色彩と模様に変えます。科学的な仕組みとはいえ、やはり万華鏡は魔法に満ちた神秘的な道具に思えます。特にデジタル全盛の時代にも古来から仕組みを大きく変えず続いているそのアナログ世界は、子供の頃と変わらずなぜか心を魅了するのです。



■日本万華鏡博物館

埼玉県川口市幸町2-1-18-101
電話 048-255-2422 FAX 048-255-2423
開館 10:00~18:00(予約制、毎正時ごと予約可能)
定休 不定休
料金 見るコース 1,000円 
   作るコース初級 1,500~3,000円
   作るコース上級 6,000~8,000円

July 4, 2014

歴史のとけ込む不思議な街と、レトロフューチャーなタワーについて

 琵琶湖は日本一大きな湖であるという。その大きな湖の北東に長浜という街がある。旅の行程の都合で初めて訪れたが、とても魅力的な街であった。

まだ日が傾く前から宿でさっと一風呂浴びて、街の散策に出かける事にした。湖畔から街の中心に向かって歩いてゆくと、電車の線路脇におしゃれな洋館が見える。現存する日本最古の鉄道駅舎(旧長浜駅舎)だそうで、今は資料館になっている。建物には、優しいクリーム色の壁面にレンガ飾りが付いた窓が並んでいる。瓦葺の屋根にもレンガ造りの煙突が突き出ている。色も、形もとてもかわいらしい。自分の街にこのような駅舎があったら自慢である。

 さらに歩みを進めると、古い町並みが碁盤の目のように続いている。家々の壁が年季の入った黒い板塀で出来ている所がある。船板塀というらしい。

 街の繁華街までやってくると、何やら歴史を感じる、威厳のある建物がある。黒壁ガラス館というガラス細工を展示・販売している所らしい。明治時代に建てられた第百三十銀行長浜支店の建物を保存、使用しているとの事。店内には、指先程の小さい昆虫のガラス細工から、かなり値の張りそうな豪華なグラス類まで取り揃えており、とても楽しめる。今では訪れる方も増え、芸術性も高い長浜のガラス工芸も、関係者の方のご努力によってここまで創られて来たというから大変感心する。そこに住む方々の力で地域産業がアートとしても花咲いた貴重な成果である。この辺り一帯はおしゃれなガラス工芸のショップや、昔ながらの町のお店、歴史を感じる寺院などが渾然一体となり、ノスタルジーを誘う街並になっている。nagahama_Tower.jpg

 しかし長浜での出会いの中でも印象深いのが、長浜タワーである。そのレトロフューチャーな趣と、センスは秀逸である。建物は昭和の小振りなデパート風で、ギザギザ屋根のブルーのラインがアクセントとして効いている。そしてこの建物の一番の特徴ともいえるのがタワー(鉄塔)である。大きな電波塔のようなものが建物のてっぺんに付いており、そこには長浜タワーと看板文字が掛かっている。まさに昭和の夢と希望、哀愁を誘う記念碑的建造物である。



 黄昏の川沿いを歩いていくと、橋のたもとにビアガーデンがあった。長濱浪漫ビールという地ビールを飲ませてくれるお店だそうである。

Roman_beer.jpg 夕飯をここで済ませていく事にする。店内は広々として、落ち着いた雰囲気である。築100年以上の米蔵を改装して造られたそうで、店内にはビールの金属製の樽が並んでいる。ここでは日本地ビール協会金賞を受賞したエールや、ピルスナーなど4種類の地ビールが楽しめる。料理も地元の食材を使ったものを取り揃えており、夕食代わりに頼んだ近江牛のまぜご飯も美味しかった。
このまぜご飯の中に、何か赤くてやわらかい見慣れないものが入っている。かわいい店員さんに聞いてみると名物「赤こんにゃく」との事。こんにゃくといえば、灰色系で地味な色と思い込んでいた頭には、新鮮な驚きであった。

 ここの店員さんもそうだが、長浜で働いている若い人達は、とても元気がある。自分が働いている街と仕事に自信があるように感じる。

 宵の街をさわやかな風に吹かれながら宿に戻る。部屋の窓からは宵闇の湖畔にお城が見える。昭和に再興されたそうだが、秀吉が居城として初めて築いた長浜城である。秀吉の遺産を見ながら思う。この街は、戦国から明治、昭和とそれぞれの時代が今に生き続け、自然にとけ込んでいる。今日は、すばらしい長浜ワールドを堪能させてもらった。


June 27, 2014

元祖あじさい寺 鎌倉・明月院


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いつも美術趣味をご覧頂きましてありがとうございます。

先月掲載の当ブログにて紹介させていただいた、「元祖あじさい寺・明月院」に行って参りました。その名の通り、境内には青や水色で統一された約2500株のあじさいが一斉に咲き乱れ、まさに圧巻の一言。あじさいシーズン6月の開園時間は通常期の9時から8時30分となっており、全国各地から訪れる多くの観光客を迎えています。

「明月院」は平安後期、この地の武将山内俊道の供養の為に、嫡子経俊が創建した明月庵が始まりです。約百年後に北条時頼建立の最明寺を、時宗が開山に蘭渓道隆を迎え禅興寺として再興。更に百年後、室町には関東管領上憲方が庵を院に改め、禅興寺の塔頭に併せ支院の首位に置き、寺容を整えました。そして、明治初年に禅興寺が廃寺となると明月院だけが残り現在に至っています。

meigetsu_ajisai2.jpg当日は小雨が降る中、混雑を避けるために朝一番に出かけ北鎌倉の駅を降りました。円覚寺を左手に確認して、線路沿いを歩いていくと明月院へ続く道が左に分かれます。途中、葉祥明美術館の洋館を見ながら300メートルほど行くと、明月院に辿り着きます。朝一にも関わらず大変な混雑で、お目当ての写真撮影ポイントである山門前の階段は、人が多すぎてなかなかシャッターをきることができませんでした。しかし、至るところに咲いているあじさいは雨に濡れて輝きを増し、神秘的な光景となって眼前に広がっていました。

meigetsu_ajisai1.jpg明月院の境内に植えられている、あじさいのほとんどは「姫あじさい」という日本の古来種です。花が優美ということから名付けられたもので、小振りで可憐です。姫あじさいは色が変化しないのが特徴で、淡い青から日ごとに青さを増していきます。その見事な青色は「明月院ブルー」とも呼ばれるそうです。



【鎌倉・明月院のご案内】

 山 号  福源山
 宗 派  臨済宗建長寺派  
 所 在  神奈川県鎌倉市山ノ内189
 電 話  0467-24-3437
 拝観料  300円
 時 間  9:00~16:00(6月中 8:30~17:00)
 アクセス JR北鎌倉駅より徒歩10分

June 20, 2014

紫陽花だより

ajisai3.jpgいつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
梅雨の晴れ間に目を細め、遠く空に積乱雲を見つけると、今さらながら「もう夏なんだなあ...」と感じてしまいます。
皆様いかがお過ごしでしょうか。



ajisai2.jpgここ文京区小石川界隈は、道行く先々に紫陽花がきれいに咲き始めました。
つい先日、近くの白山神社境内で「あじさいまつり」が開催されていました。雨に濡れた紫陽花はことに風情がありますね。



ajisai1.jpg私の住まい近くでもあちらこちらに紫陽花が咲き始めてます。紫陽花の色と言えば「青」「赤」色と2色しかないと思っていましたが、今は白や淡い緑色の紫陽花がありとても驚きました。色とりどりの咲いているのを見るのは目にも心にも楽しいものです。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


さて今回は、当社ラインナップの中から紫陽花を題材にした 中村岳陵「八仙花」と山口蓬春「榻上の花」の2作品をご紹介いたします。



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中村岳陵 《八仙花》
販売価格 120,000円+税


梅雨の合間でしょうか、静かに咲く額紫陽花の横で麦藁とんぼが羽を休めています。静謐な世界を澄んだ色彩で描き、画家の凛とした画風が窺えます。

<仕様体裁>
原画 華鴒大塚美術館所蔵
解説 谷岡 清(美術評論家)
技法 彩美版(R)
画寸 天地42.6cm×左右52.6cm
額寸 天地60.7cm×左右70.8cm
重量 約3.6kg
用紙 特製絹本
額縁 特製木製額、アクリル付(国産、ハンドメイド)

※ この作品は軸装もございます。
※ 「彩美版」は共同印刷の登録商標です。






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山口蓬春 《榻上の花(とうじょうのはな)》
販売価格 160,000円+税


窓際の椅子(「榻(とう)」)には白いポットに生けた紫陽花と洋梨が、色鮮やかな色彩で描かれています。カーテンの模様・床や壁の色や構成に画家の独創的な感性が光ります。

<仕様体裁>
原画 東京国立近代美術館所蔵
監修 山口蓬春記念館
解説 笠 理砂(山口蓬春記念館)
限定 200部
技法 彩美版(R)IWA-E
画寸 天地52.5cm×左右33.5cm
額寸 天地69cm×左右50cm
重量 約2.5kg
用紙 版画用紙
額縁 特製木製額金箔仕上げ、アクリル付(国産、ハンドメイド)
証明 著作権者承認印入り証紙を額裏に貼付

※「彩美版」は共同印刷の登録商標です。
※「彩美版IWA-E」は日本画特有の画材、岩絵具の質感と色調を再現するために生み出された画期的な技法です。(当社特許保有)
日本画の画材として用いられる胡粉や方解石を細かく砕いた「岩胡粉」(岩絵具の一種)をふんだんに使用し、岩絵具特有のざらざらとした質感、風合いをつくりだしました。

June 6, 2014

東京都美術館 バルテュス展


いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。
現在、東京・上野の東京都美術館では「バルテュス展」が行われております。日本では1993年のレトロスペクティブ@東京ステーション・ギャラリー以来、約20年振りの回顧展となります。

バルテュス(本名バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ)は、ポーランド人貴族の末裔として1908年にパリで生まれました。フランスを拠点にヨーロッパ絵画の伝統を独学で学び、特にイタリア・ルネサンスの影響を受けました。抽象絵画全盛の時代に、具象画の道を寡黙に歩み、「20世紀最後の巨匠」として不動の地位を確立しました(2001年逝去)。兄が著名な作家・思想家のピエール・クロソフスキー(「ロベルトは今夜」)であることや、詩人リルケとの特別な関係も芸術家としての血筋の確かさをうかがわせます。

バルテュス夫人の節子さん自らが今回の展覧会にご尽力され、晩年の画家の東洋の美に対する愛着もうかがわれる展示内容となり、これまでの難解で近づき難い画家というイメージを払拭し、ある種の親近感と、ミステリアスな作風への好奇心をそそる興味深い展覧会となりました。少女を描いた«夢見るテレーズ» (今展覧会のメインビジュアル)、«美しい日々»、 «読書するカティア»、猫をテーマとした«猫たちの王» 、«地中海の猫»といった一連の代表作の展示に加え、作家の竟の住処スイス「グラン・シャレ」のアトリエが再現され、愛蔵品の数々や晩年の貴重な写真が公開されるなど、正しくバルテュス展の決定版といえる充実した内容です。

あれは1990年頃のことでしたでしょうか、老舗出版社の写真グラビア誌の担当をさせていただいた当時、(多分)雑誌初のバルテュスのインタヴュー特集が組まれました。入稿された真新しい原稿から、霧に包まれた謎の画家バルテュスの素顔に接し、特別な幸福感に浸ったのを昨日のように思い出します・・・

注目の「バルテュス展」の会期は6月20日(金)まで。初夏の心地よい陽気に誘われて、緑豊かな上野公園を散策がてら、ご鑑賞されてはいかがでしょうか。



【展覧会情報】
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「バルテュス展」
会場 東京都美術館
会期 2014年4月19日(土)から6月22日(日)まで
※月曜日は休室
時間 9:30~17:00
※金曜は20時まで

May 30, 2014

初夏の田園を旅する


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初夏の陽気に誘われて北総の谷津道を自転車でたどる約90kmの小旅行に出かけてきました。一日戸外で過ごすと真っ黒に日焼けするほど強い陽射しですが、一旦木陰に入れば吹く風も爽やかな気持ちよい気候です。カエルのコーラスを伴奏に青々とした苗の列が田面(たのも)を渡る風に揺れています。
※各写真をクリックすると拡大します。


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「ケーン、ケーン」
突如響き渡る鳥の鳴き声。色鮮やかなオスの雉子が眼に飛び込んできました。今は雉子の繁殖期です。雉子が鳴くのはライバルが自分のテリトリーに入らぬよう縄張りを宣言しているのだとか。この日はいつもより多くの雉子を眼にしました。

さて、谷津田に沿った細道を走り抜けて行き着いた先は、印旛沼湖畔の「双子公園」です。双子公園は北印旛沼と南印旛沼をショートカットする「印旛捷水路(いんばしょうすいろ)」の南側の端に設けられ、印旛沼を周遊するサイクリストの休憩場所として親しまれています。
印旛沼は江戸時代まで南関東に存在した内海「香取の海」の名残で、かつては地を這う巨龍を思わせる広大な湖でした。戦後、食糧増産のための農地拡大や治水・利水を目的として大規模な干拓事業が行われ、その姿を大きく変貌させました。

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現在は北印旛沼、南印旛沼の二つに大きく別れ、両者を狭い水路が繋いでいます。昭和41年、台地を掘り割り北側と南側をショートカットする「印旛捷水路」の開削工事が行われていた折に現場からナウマン象の化石が発見されました。学術的にも貴重な発見であったことから、後日出土地のほど近くに双子公園が整備されると記念モニュメントが置かれました。

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双子公園を後にして印旛捷水路沿いの自転車道をたどり、北印旛沼に出ました。北印旛沼は龍の頭にあたり歪んだ四角形の形をしています。湖畔に立って北の方角を眺めると50kmほど離れた筑波山の姿がくっきりと見えます。

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湖畔に佇み、青い空にぽっかりと浮かんだ白い雲を眺めていたら日常の煩わしい悩みをすっかり忘れてしまいました。体は疲れましたが心は軽やか、洗いたての気分です。ここからもう少し足を伸ばして利根川沿いのサイクリングコースへ抜けることも可能ですが、今日はもう十分満足しました。そろそろ家路につくことにしましょう。

May 23, 2014

浦和のギャラリー散策


g_yanagisawa2.jpg 初夏の陽気が日々天気図を占め、心も開放的となる時期となってきました。穏やかな風と明るい日差しに誘われ、さいたま市浦和駅西口近辺を散策しました。

平安時代に創建されたと言われる古刹・玉蔵院。喧騒から無縁の地を中心に、その周辺の石畳はさりげない趣を印象づけます。そんな石畳が続く裏門通りは、つい立ち止まって見入るレトロで風情豊かな装いのお店も多く見られます。「やじろべえ珈琲店」「手焼きせんべい三代目満作」「和浦酒場」などなど。つぎはぎな印象の銭湯「稲荷湯」も好きな外観です。

g_yanagisawa1.jpg そして訪れたのは中山道沿いにある、老舗ギャラリー、「柳沢画廊」。現代抽象画中心で現代版画から現代美術全般の企画展を開催している画廊です。この日も小ぶりで品の良い空間に、現代美術が並んでいました。筆塚稔尚(ふでづかとしひさ)という作家さんの個展開催中でした。「muragimo」という、質感ある様々な色の紙に有刺鉄線のハートが組み合わされた小さな作品が壁面に多数並べられていたり、質感ある空間に三角状の対象が浮かぶ木版画作品など、静けさの中にチクリとした刺激を感じるような印象の抽象造形作品でした。
 
rafu.jpg (たぶん)オーナーの方に、ご挨拶がてらこのあたりの画廊についてお尋ねしたところ、1軒面白いギャラリーがあると紹介してくれました。毎年年始に参拝する調神社のすぐ近くにある「楽風(らふ)」という喫茶ギャラリーです。早速行ってみました。

 「青山茶舗」という老舗の日本茶店。その奥の敷地に120年前に建てられた納屋を改装、1階は日本茶カフェ、2階はギャラリーとなっています。知らなければ絶対勝手に入りこまないと思う場所にあり、本物の時代性をまとう内・外装を前に、懐かしい空間がもたらす癒しの力を感じずにはいられません。

raku2.jpg 1角には入れ替わりのワンクリエーター展示販売コーナーがあり、この日は手編みのバッグ、小物、アクセサリーが並べられていました。テーブル上の手作り感ある小物も目を和ませます。冷抹茶の洋菓子セットを美味しくいただき、ここを後にしました。そう、この日はあいにく2階のギャラリーは休廊でした。しかしこの喫茶室、そして作品らしき人形が置かれた緑豊かな庭も、まさにギャラリー空間として楽しめ、それで満足してしまったのでした。2階のギャラリーはまたあらためて鑑賞するのを楽しみにとっておきます。


■柳沢画廊
 さいたま市浦和区高砂2-14-16
 TEL 048-822-2712
 営業時間11時~19時
 定休日 水曜 年末年始 夏期

■楽風(らふ)
 さいたま市浦和区岸町4-25-12
 TEL 048-825-3910
 営業時間10時~19時
 定休日 水曜 年末年始 お盆

May 16, 2014

由緒正しい銭湯とコンテンポラリーアートの関係及び、団子坂の飴細工の事。


 銭湯のギャラリーがあると聞いたので、行ってみようと思った。

 そこでゴールデンウィークのある晴れた日に、東京の台東区、谷中に出かけた。ギャラリーの名前はSCAI THE BATHHOUSE(スカイ ザ バスハウス)と言う。まさしくバスハウス(=公衆浴場)そのものの外見であるが、中を改装してコンテンポラリーアート(現代美術)を展示しているギャラリーであった。

bath_house.jpgSCAI THE BATHHOUSE(スカイ ザ バスハウス)の入り口は、まさしく銭湯そのまま

 暖簾をくぐり、入り口を入ると小さな箱を重ねたような下駄箱が並んでいる。靴は脱がずにさらに中に進むと、昔は番台から脱衣場のあった辺りまでを貫いて、大きな空間にして作品を展示している。左の展示スペースを見ると一段高くなっており、椅子が置かれ居間のようになっている。その壁面には河原温の「日付絵画」が掲げられていた。制作した日付を書いたその作品は色が黒っぽいものでなく、初めて見る鮮やかな赤いバージョンであった。あのショッキングな「浴室」シリーズを描いた河原温の作品が、もと銭湯で展示してあるというのも、なにか運命めいたものを感じる。銭湯にでも行くような軽い気持ちでふらりとやって来たが、河原温の作品に出会うとは思ってもみなかったので少々驚いた。ここは襟を正して、気を引き締め拝見させていただく事にした。

 さらに次の展示室に進む。そこは天井が高く遥か上の方に窓があり、開放感のある部屋になっていた。明るい光のもといくつかの作品がぽつぽつと展示してある。浴槽があったと思われるあたりには壁があり、事務所になっているので見る事がかなわない。どのように改築しているのか大変興味がそそられる。以前の建物をどの程度生かしているのか。富士山のペンキ絵はかつてあったのか、あったのであれば今も飾っているのであろうかなど興味は尽きない。

 このギャラリーでは国内外の最先鋭のアーティストを紹介しているそうである。古き良き銭湯とコンテンポラリーアートが仲良く同居しているのは、新しい芸術の発信と、古き良き下町が混在する上野界隈にぴったりなように感じた。

 さてギャラリーを出る。まだ日は長いのでもう少し足を伸ばしてみる事にした。谷中霊園を右手に見ながら道は大きく左に曲がり千駄木方面に向かっている。この辺りは寺院が多く風情がある。外国の旅行者も多く、のんびりと門前の石に腰掛けて休んでいたりしている。また若い人が出している新しいお店もあり、おしゃれな自転車屋や、カフェなどもあり飽きが来ない。

 団子坂を登って頂上にたどり着く辺り、森鴎外記念館のちょっと手前に飴細工のお店があった。店内は様々な動物の飴細工が展示してあり、ムンワリとした甘い香りで満たされている。飴細工の動物たちをよく見ると、白いウサギがいろいろなポーズをしているシリーズがある。商品札に「あめぴょん」と書いてある。店員さんが出てきて、このお店の一番人気であると教えてくれる。さらに「あめぴょん」のようにかわいらしい店員さんの説明によれば、メニューの中から選んで注文すれば、目の前で飴細工の実演をしていただけるとの事。メニューには十二支やインコ、鳳凰、クワガタや人魚まである。やはり形が複雑で色数が多いものほど値段が高いようである。どのように作るのか大変興味はあるものの、一人の客(おじさん)のために飴細工を作っていただくのは、見る方も、見られる方もやや気まずいのではないかと思い、ここはご遠慮願ったしだいである。「ハートあめぴょん」を一つ購入してお店を出る。

amepyon.jpg飴細工の白ウサギ、ハートを抱いた「ハートあめぴょん」

 さらに白山方面に向かい道を進める。途中、窓ガラスの内側に沿って水を流している仕掛けの歯科があった。何となく中が見えるのだが、水のせいで室内が歪んで見えてカーテンの役割をしているようである。

 さて、そろそろお腹も空いて来たので遅い昼食を取る事にした。東洋大学を過ぎた辺りにちょうど良い感じのレストランがあった。イタリア料理「シシリア食堂」とある。外観は明るいコバルトブルーで、今日の気持ちよい青空ととても良く合う。残念ながらランチはほとんど売り切れており、トマトソースのスパゲッティのランチ一つだけであった。しばし待って出て来た料理はトマトソースをからめた細めのスパゲッティに、バジルソースが縞模様にかかっている。トマトの鮮やかな赤、バジルの濃いグリーン、お皿の白のコントラスがイタリア国旗の色彩になっており目にも美しい。初夏を感じさせる今日にはぴったりのランチであった。食後のコーヒーを飲み終えてお店を出る。都営地下鉄の白山駅まではすぐである。

May 9, 2014

花の寺・長谷寺


いつも「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。

新緑が芽吹き、爽やかな風が心地よい季節になってきました。ゴールデンウィーク絶好のお散歩日和に鎌倉、花の寺として親しまれる「長谷寺」に行って参りました。

「長谷寺」は特に6月頃の紫陽花が有名なお寺で、傾斜地を利用した眺望散策路があります。散策路の周辺には40種類以上約2500株の紫陽花が群生しており、梅雨の季節には多くの観光客が訪れます。鎌倉の紫陽花の名所としては、昔から北鎌倉の「明月院」が知られていますが、最近では明月院を鎌倉の「元祖あじさい寺」、長谷寺を「新あじさい寺」と呼ぶ向きもあるそうです。

hasedera_sanmon.jpg最寄駅の江ノ電長谷駅から徒歩5分「長谷観音」交差点を左折すると、すぐに「長谷寺」の山門が見えてきます。長谷寺の参道は門前町らしく、土産物を売る店や蕎麦屋などが軒をつらねており、大変賑わっていました。境内に入ると百花繚乱、「牡丹」「躑躅(ツツジ)」「藤」「石楠花(シャクナゲ)」など様々な花が庭園を彩り、素晴らしい景色が広がっていました。花の寺と言われる所以を感じさせます。

botan.jpg長谷寺の正式名称は、「海光山慈照院長谷寺」といいます。本尊の十一面観音像は、歴史のある木造の仏像としては日本最大級(9.18m)で、全身に金箔が施されており、まばゆいばかりです。目の前にするとその大きさに圧倒されます。


sea_kamakura.jpgまた、長谷寺は「海光山」の山号のとおり、境内からの海の眺望が素晴らしいお寺です。見晴台に立つと由比ヶ浜を中心に湘南の海岸線を一望することができます。近くには「高徳院(鎌倉大仏)」もあり見所はつきません。皆様も足を運ばれ、春の鎌倉を堪能されてはいかがでしょうか。


【海光山慈照院長谷寺】

 宗 派 浄土宗
 所在地 神奈川県鎌倉市長谷3-11-2
 電 話 0467-22-6300

 夏時間 3月~9月   8:00~17:00 ( 閉山17:30 )
 冬時間 10月~2月   8:00~16:30 ( 閉山17:00 )
 拝観料 大人300円 小人(小学生)100円
 アクセス 江ノ電「長谷駅」より徒歩5分



さて、今回は奥村土牛画伯の作品「紅白牡丹」を紹介させていただきます。庭園内でも見頃を迎え、訪れる人々の目をひときわ惹きつけていました。この作品はこちらの販売店でお求めになれます。

奥村土牛 《紅白牡丹》
販売価格 128,000円+税


 
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<仕様体裁>
原画 メナード美術館所蔵
監修 奥村正
技法 彩美版(R)、シルクスクリーン手刷り
用紙 和紙
額装 特製木製額金泥仕上げ(国産、ハンドメイド)
画寸 39.5×53.0cm
額寸 57.0×71.0cm
重量 約2.7kg

※この作品は同価格で軸装仕様もご用意しています。
※「彩美版」は共同印刷株式会社の登録商標です。


April 25, 2014

晩春の光


いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

心地よい風が頬をなで、ここ最近は初夏を思わせる陽気で汗ばんだりと早い季節の移り変わりを感じる今日この頃です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

hanamizuki.jpg小石川界隈は樹木が多く道行く花壇は紫陽花やツツジが植えられています。晩春の光を浴びて今はいツツジが鮮やかに咲いき見頃な時期ですね。よくそのツツジ花壇にはハナミズキも植えられ、白や赤色の花が咲き誇っていました。花のように見えるのは実はガクが変形したものだそうです。草花の不思議を感じながら、これから過ごしやすい季節に足を運んで散策もいいですね。

さて今回は、端午の節句にちなんで安田靫彦「菖蒲」と、東山魁夷「金太郎」の複製画をご紹介いたします。

安田靫彦 《菖蒲》 軸・額
販売価格 120,000円+税


金地に描かれた色鮮やかな「菖蒲」。歴史画の大家、安田靫彦画伯の秘められた名作を再現いたしました。本作は画伯81歳の晩年に描かれた作品で、凛とした菖蒲が気品を感じさせます。

この作品はこちらの販売店でお求めになれます。

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<仕様体裁>

原画 古川美術館所蔵
監修 安田建一
解説 草薙奈津子(平塚市美術館館長)
技法 彩美版(R)、シルクスクリーン
用紙 和紙
限定 300部
画寸 40×53cm
額寸 60.2×73.3cm
重量 約2.6kg
額縁 木製金泥仕上げ、アクリル付き(国産、ハンドメイド)
証明 著作権者承認印入り証紙を貼付
発行 共同印刷株式会社

※「彩美版」は共同印刷株式会社の登録商標です。
※本作品は軸装もご用意しております。額装と同価格です。



東山魁夷 《金太郎》 軸・額
販売価格 90,000円+税


小さな金太郎の気丈な姿を、東山魁夷画伯独自のやさしいタッチで描かれた「金太郎」。子供の健やかな成長を切に願う思いが伝わってきます。

この作品はこちらの販売店でお求めになれます。


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<仕様体裁>

原画 長野県信濃美術館・東山魁夷館所蔵
監修 東山すみ
解説 谷岡 清(美術評論家)
技法 彩美版(R)、シルクスクリーン、本金泥手彩色
用紙 和紙(鳥の子)
額縁 特製木製額(国産、ハンドメイド)
限定 1,000部
画寸 33×30cm
額寸 51×48cm
重量 約2.5kg
証明 監修者承認印入り証紙を貼付、監修者空押し(エンボス)を画面に刻印
発行 共同印刷株式会社

※「彩美版」は共同印刷株式会社の登録商標です。
※本作品は軸装もご用意しております。額装と同価格です。




【今日の谷根千】

①根津神社 文京つつじまつり
第45回 平成26年4月5日~5月6日開催
つつじ苑入苑は期間中の9時~17時30分(18時完全閉苑)
境内には約100種3000株のツツジが咲き、見頃な時期くを迎えています。
〒113-0031東京都文京区根津1-28-9
tel 03-3822-0753(受付時間9:00~17:00)



②暁の劇場―鴎外が試みた、或る演劇
akatsukinogekijou.jpg
2014年 4月 26日~ 2014年 6月 22日
会期 2014年4月26日(土)~6月22日(日)
※会期中の休館日 5月27日(火)
会場 文京区立森鴎外記念館 展示室1、2
開館時間 10時~18時(最終入館17時30分)
     ※6月中の金曜日は20時まで開館(最終入館19時30分)
観覧料 一般600円(20名以上の団体:480円)、
中学生以下、障がい者手帳ご提示の方と同伴者1名まで無料

April 18, 2014

祐天寺「アクセサリーミュージアム」


accesory-museum.JPGいつも「美術趣味」をご訪問いただきありがとうございます。

春風が心地よい午後。祐天寺駅から歩いて数分。閑静な住宅街の一角に、「アクセサリーミュージアム」という小さな美術館を発見しました。中は別世界。煌びやかな空間が広がります。

アールデコ、ヴィクトリアン、アールヌーボー...といった1830年代から2000年代までのコスチュームジュエリー(※)の数々が、時代毎に6つの部屋から整然と構成されており、一つ一つの作品の美しさをゆっくり堪能することができます。
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伝統的な手細工による、本物の世界。その美しさに見惚れてしまいます。「ほんものの放つオーラを感じ、よりリアルな感動を味わっていただきたい。」そんな田中元子館長の想いが結実した、まるで宝石箱のように感じました。定期的に「アクセサリー教室」なども開催されているようです。お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄り頂き、美しい箱の中を覗き込んでみてはいかがでしょうか。kameo.JPG

※コスチュームジュエリーとは、貴金属や宝石等の高価材料を使ったジュエリーではなく、ファッション性を重視して作られた装身具のこと。この移り変わる時代のファッショントレンドは、人々をいつの時代も美しく飾ってきました。


 
アクセサリーミュージアム

公式ウェブサイト http://acce-museum.main.jp

住 所 東京都目黒区上目黒4-33-12
電 話 03-3760-7411  FAX 03-3794-8811

開 館 10:00~17:00(最終入場16:30)※特別イベントの場合は変更になることがあります。
定休日 月曜日、第4・5日曜日、5月連休、8月休館(1日~31日)、年末年始
入館料 一般1,000円/学生(小学生以上)600円
アクセス 東急東横線/渋谷から元町・中華街方面「祐天寺駅」下車西口徒歩約6分
※専用駐車場はありませんが、近隣にパーキングがあります。
  

April 11, 2014

森美術館 アンディ・ウォーホル展


いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。
現在、東京・六本木の森美術館では「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」が行われております。日本では約20年振りの回顧展となります。

roppongiポップアートのスーパースター、アンディ・ウォーホルは1928年にアメリカ合衆国ペンシルべニア州生まれ。第二次大戦後、興隆するアメリカの消費社会と大衆文化をテーマに、平面、立体、映像等さまざまなジャンルとメディアを横断し表現したマルチアーチストとして、一躍時代の寵児となりました。1987年に59歳で病没しましたが、死後も名声に翳りはなく、現代アートの頂点として今も君臨し続けています。

今回の展覧会では、代表作の«キャンベル缶» «マリリン・モンロー»はもちろんのこと、作家の出身地ピッツバーグにあるアンディ・ウォーホル美術館の膨大な収蔵品約400点が一挙に公開され、ウォーホルの全容が明らかになりました。若かりし頃の貴重なドローイングから、ポップアートを代表する彫刻作品、日本未公開作を含む実験映像、他の有名アーチストとのコラボレーション、ウォーホル自身の私的アーカイブ、伝説のアートスタジオ「ファクトリー」の原寸大再現等々見所は沢山、まさしく国内史上最大の回顧展と言えましょう。

因みにタイトルの‹永遠の15分›とはウォーホルの言葉、「人は誰でも生涯のうちに15分だけ有名になれる」と、後にこれを反転させた「15分で誰でも有名になれる」という彼の警句に由来します。

大好評のレトロスペクティブも会期はあと残すところ5月6日(火)まで。六本木ヒルズ見物と併せて鑑賞されることをお薦めいたします。


【展覧会情報】

「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分

会場 六本木・森美術館
    東京都港区六本木6-10-1
    六本木ヒルズ森タワー 53F
    電話:03-5777-8600 (ハローダイヤル)

会期 2014年 2月1日(土) から 5月6日(火・休)まで
    ※会期中無休
時間 10:00 ~ 22:00 ※火曜は17時まで(4/29、5/6を除く)