« 桜に思う、いろいろ。 | メイン | ●回帰する時間、心の旅 ―東山魁夷― »

April 21, 2017

色褪せない芸術『岩田ガラス』とおすすめ展覧会『生誕100年 長沢節展』


いつも美術趣味をご覧いただきましてありがとうございます。

先日のブログ、彩美版®新作・小倉遊亀筆「初夏の花」はご覧いただけましたか。
透(すき)のボディに白砡(しろぎょく)が潔く、ツツジの伸びやかさを一層強調しているかのような存在感のあるこのガラス花器が、岩田久利(ひさとし)氏の手になるものであることはご存知でしたでしょうか。


本日は、「初夏の花」画中のガラス花器制作者、ガラス芸術家・岩田久利先生についてです。
遊亀が陶磁器を愛好していたことはよく知られていますが、1980年「耀」、1980年「椿」など遊亀の静物画には特徴的なガラス花器がたびたび登場します。
これらはみな遊亀がコレクションしていた、岩田久利氏によるガラス芸術です。


今回の彩美版®「初夏の花」制作を機に、久利氏の二女でいらっしゃる岩田マリさんとお会いする機会に恵まれ、たくさんの作品を拝見することができました。
そこでこれまで持っていたガラスのイメージがくつがえされてしまいました。
また、マリさんより貴重なお話がうかがえましたのでご紹介いたします。


ガラスは、食器、窓や蛍光灯などの工業製品も含めると、私たちの生活にとても身近な素材です。一般的にガラスにイメージするものといえば、「透明」「割れやすい」「冷たい」「静」などが想起されることと思います。
しかし、久利氏の父・藤七氏よりはじまる岩田家のガラス芸術は、それだけではないガラスの多面的な魅力を教えてくれます。
その魅力の真髄は、真逆にも「鮮やかな色(透明・不透明あり)」「重厚感(何層にもなり厚みがある)」「躍動感」でした。
(さらに制作時に直面するガラスの特徴、「柔らかさ」「熱さ(環境も含む)」についてはガラスを扱う困難さ、どのようにしてガラス芸術が生みだされるかに至る大事な特徴なではありますが、ここでは語りきれません。)


岩田家のガラス芸術の歴史を簡単にですがご紹介します。(以下敬称略)


■日本の色ガラス芸術のパイオニア 父・岩田藤七
(明治26年・1893年生まれ)

明治大正時代、板ガラスなど実用製品が躍進の一途を辿っていたガラス工業界。それに比べ、"ガラス工芸"は江戸時代以降途絶え不毛の時代を迎えます。
数十年の空白期の後、藤七は、現代ガラスのパイオニアとして色ガラスによる宙吹きの作品を作り始めます。
日本においては古来より陶器の作品が好まれ、茶道の影響もあり高いレベルの作品とされている中で、藤七はガラスの作品を日本の美術界にアートとして認められるよう努力を続け、近代ガラス工芸を日本の美術界に位置付けるに至ります。


代表作「貝」は、藤七ならではの大胆な気質だからこそなせる技だったといいます。
作品は今も日生劇場、ホテルオークラのオークバー(現在はリニューアル工事中)、メトロポリタン美術館(NY)、国立近代美術館などで観ることができます。


■「ガラス芸術」へ高めた功績者・岩田久利
(大正14年・1925年生まれ)

父・藤七の長男として生まれ幼い頃よりガラスに携わります。
久利は東京美術学校工芸部図案科卒業、その他、科学的基礎やガラス組成についても学び、藤七の築いたものをさらに極めていきます。
久利の作品は、端正・優美、高い技術に裏付けされた理知的な作品といわれ、初期の緻密な作風にはじまり、50歳代にはこれでもかと技術を凝らした根気のいる作品を、60歳代からは、線が細くなっていく身体とは対照的に壮大な自然をモチーフに力強い作風へと昇華します。


久利氏の作品は、幾何学模様のミニマムでモダンなデザイン的なものもあれば、ごつごつした大地や岩を髣髴とさせるプリィミティブなものまで多彩な創造性が魅力的でもあります。

iwataglass.jpg岩田久利作 〈第十回日展出品作〉 制作:昭和29年

1960年代には、家庭における食器、照明などのガラス製品が普及します。
特に岩田ガラスが生みだしたガラス照明は、一世を風靡します。金赤(ガラスの金赤は可愛らしいピンク色)でフリルをまとったガラス照明は結婚式の引き出物として多くつかわれていた、とのこと。
もしかしたら皆さまのご自宅にあるかもしれません。


今なお新しさが感じられる、岩田久利氏の作品を下記よりホームページにてご覧ください!


岩田家のガラス芸術
HP : http://www.iwataglassart.com


■岩田久利氏の長女でいらっしゃる、ガラス芸術家・イワタルリ氏の個展のご案内です。

イワタルリ展 
開催場所 SAVOIR VIVRE サボア・ヴィーブル 東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F
開催日時 2017年6月23日(金)から7月2日(日)まで
詳細につきましてはホームページにてご確認ください。
HP : SAVOIR VIVRE



【オススメ展覧会のご案内】

岩田ガラスの会社ロゴ、包装紙をデザインしたのが、「スタイル画」デッサンの名手・長沢節(せつ)氏でした。
久利氏は、画家、文芸家、俳優などジャンルを超えたお付き合いがあったといいます。
東京文京区弥生美術館にて、今年4月23日で閉校するセツ・モードセミナー公式の、最後の展覧会として下記展覧会が開催されています。
ファッションイラストレーターの先駆けであった節の〈スタイル画〉は鉛筆のほか毛筆で描かれた作品もあります。毛筆書に慣れ親しんだ世代だからこそ為し得るものなのでしょうか、「セツ美学」あふれる流麗なイラストは必見です!



IWATAlogo.jpg左上:岩田ガラス・ロゴ(長沢節)
setsu.jpg右下:岩田ガラス・包装紙(画:長沢節)


『生誕100年 長沢節展』- デッサンの名手、セツ・モードセミナーのカリスマ校長 - 

長沢節は1917年生まれ、文化学院卒、20歳で挿し絵画家としてデビュー。
太平洋戦争前より池袋近く要町の芸術家村・通称「池袋モンパルナス」に暮らす。
終戦後アメリカ兵より流れてきたヴォーグやハーパス・バザーを参考にみようみまねで洋服を描く。節の描くファッショナブルな女性像は〈スタイル画〉と呼ばれファッション界もリードする存在となる。
1954年より美術学校セツ・モードセミナーを主宰。(設立当初は「長沢節スタイル画教室」)
卒業生は、金子国義、山本耀司、安野モヨ子など。



dior.jpgwoman1.jpg
左上:C.ディオール「マリ・クレール」1998年6月号 掲載原画
右下:女性デッサン 1960年代


■開催要項■
会場:弥生美術館 1~2階会場
住所:東京都文京区弥生2-4-3
会期:2017年4月1日(金)~6月25日(日)
休館日:毎週月曜日 ただし、5月1日(月)は臨時開館
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料:一般900円(800円) 大高生800円(700円) 中小生400円(300円)
※竹下夢二美術館と併せての料金。()内は20名様以上の団体割引料金
TEL:03(3812)0012 FAX:03(3812)0699
HP : http://www.yayoi-yumeji-museum.jp

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://bijutsu-shumi.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/2061

コメントを投稿

※いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前に
このブログのオーナーの承認が必要になることがあります。
承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらくお待ちください。

※お問い合せについては、「お問い合せ」からアクセスしてください。
こちらのコメント欄には個人情報に関する内容は記載しないでください。

プロフィール

共同印刷株式会社SP&ソリューションセンター アート&カルチャー部では、日本画を中心とした複製画や版画の制作、販売をてがけています。制作の裏側や、美術に関係したエッセーを続々とアップしていきます。尚、このサイトの著作権は共同印刷株式会社又は依頼した執筆者に帰属します。

<   May 2017
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
 
 
 
 
 
 
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
 
 
 
 
 
 
ページの先頭に戻る