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October 9, 2015

秋を探して-田園を巡る旅


 早や10月、季節が深まってきましたね。当社周辺の銀杏並木もほんのりと色づいてまいりました。今年は10月8日が二十四節気の「寒露」にあたり、晩秋の始まりの日です。夏の喧騒のなごりは消えて、ついこの間までの暑さがうそのように朝晩少し肌寒さを覚えるようになりました。移ろい行く季節に柄にもなく、ふと感傷的気分が心を去来したりします。

20151009OOTANBA_chestnut.jpg 秋は実りの季節、豊かな自然の恵みが嬉しくて、食いしん坊揃いの我が家では今、柿や梨、みかん、栗など沢山の秋の果実が食卓を彩っています。写真は「大丹波」という、一粒が普通の三倍ほどもある大きな栗です。
 9月末の休日に、この「大丹波」を求めて、いつものように自転車で千葉県の印旛地方へ出かけてきました。あいにく前日までは雨で、当日もどんよりとした曇り空でしたので、久しぶりの谷津道はところどころ泥濘んでいました。帰宅してから自転車にこびりついた泥を拭い落とすのが大変でしたが、澄んだ田園の空気を思いっきり肺の奥底まで吸い込みながら、気持ちよく走ることができました。

20101009autumn_countryside.jpg 印旛へ行くにあたり、気がかりなことがひとつありました。今年9月10日から11日にかけて、関東や東北地方を襲った豪雨の被害です。
 利根川の下流域、印旛沼から霞ヶ浦にかけては「香取の海」と呼ばれた、古の広大な内海のなごりです。そのため土地が低くかつては大雨のたびに印旛沼が溢れて洪水を引き起こしていました。
 今回の豪雨の際は、印旛沼周辺では大規模な洪水は起きませんでしたが、付近の稲田は冠水したところもあったようで、収穫直前の黄金色に実った稲穂が、無残にもすべて倒れ伏す様子が確認されました。

20151009Shinkawa_river.jpg この日は家を出た時刻が遅く、買い物を終えてから直ぐに帰らねばなりませんでしたので、翌週末に改めて、爽やかに晴れた空のもと、印旛から利根川まで往復約100kmの道を走ってみました。
 田んぼの傍らを流れる新川はもとの穏やかな容貌を取戻し、美しい秋空を映しつつゆったりと流れていました。土手に沿って植えられた河津桜の並木は既に大方葉を落とし、春の華やかな川辺と同じ場所とは信じられないくらい、寒々とした景色に変わっていましたが、群れ飛ぶ赤とんぼや土手を跳ねるトノサマバッタなどの虫たちが、無数に息づく小さな命の存在を実感させてくれました。

20151009Persimmon.jpg 空はすっきりと晴れ渡り、美しく繊細な絹雲がかかっていました。秋空の青さは夏の青とは明らかに異なるほんのりと白を混ぜたような柔らかな青です。そこに純白の絹糸の束を浮かべたかのような、しみじみと心に沁み入る秋空の風情は、私がこの季節を愛する所以のひとつです。
 農家の庭先で見つけた小さな秋。たわわに実る柿の実の艶やかな橙色が青空に照り映えていました。思わず自転車を止めて見入ってしまいました。

 田園の美しさは、先祖代々その土地に根ざして暮らす人たちの日々の営みが自然とともに創り上げてきたものです。季節や日々の天候の変化、植物の成長などによって毎日異なる様相を見せるその景色は、例え毎週通ったとしても味わい尽くすことは出来ません。

20151009Inbanuma_lake.jpg 美しい景色に見惚れてゆっくり走りすぎたようです。利根川の畔に到着した頃には既に午後3時を回り、陽は大分西に傾いていました。印旛沼から流れ出た長門川が利根川に注ぐ河口堰の傍らで遅い昼食を摂った後、少しペースを速めて長門川沿いの道を遡り上印旛沼に出ました。湖畔では薄に良く似た葦の穂が、夕方の日の光を受けて銀色に輝いていました。

20151009sunset.JPG 当初は甚兵衛大橋の袂を抜け、印旛捷水路沿いの自転車道を使い佐倉城近くの下印旛沼へ出ようと考えていたのですが、予定を切り上げ家路を急ぎました。
 田んぼの真ん中を貫く小さな野川に沿った細道を急ぎ走るうちについに日が落ちてしまいました。周囲に人口の明かりは一切設置されておらず、唯一の灯りは自転車の頼りない小さなライトのみ、数メートル先の路面も全く見えずいささか心細い思いをしました。
 ようやく家に辿り着いたころには、とっぷりと暮れていました。それでも久しぶりの田園の旅は、私の心を暖かく満たしてくれました。


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