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August 29, 2014

お盆の真中に東京の真中に行った事、及び自分の行動範囲はあまり変わらないことを自覚した件。


 この夏もお盆が来た。東京ではこの時期、帰省や旅行でビジネス街は人が少なくなる。そこでこの機会にいつもは人が多い東京の真中で、閑散とした街を楽しんでみようと出かける事にした。まず東京の真中とはどの辺かということになるが、ここは江戸からの中心地、皇居の辺りをそれとする事にした。皇居の住所は東京都千代田区千代田1-1だそうで、いかにも真中っぽい。

 まずは東京駅から皇居を望む。辰野金吾の設計により大正時に建てられた東京駅は、赤レンガと特徴的なドームが美しい。鉄道画家として活躍した富田利吉郎の作品「東京駅」に、そのモダンな駅舎が精緻に描かれている(本作品は当社にリトグラフの在庫がある)。行幸通りの広い道を皇居に向かい、和田倉門を過ぎて皇居の周りを時計回りとは逆に進む。皇居を一周すると約5Kmとの事。さすがにいつもはランナーでいっぱいのこの道も、走っている人はまばらで空いている。大手門、平川門を左に見ながら毎日新聞社のビル前を過ぎた所で竹橋の横断歩道を渡る。ここから緩い坂を登り、警視庁第一機動隊と書かれた怖そうな標識を過ぎ、東京国立近代美術館と、その隣の国立公文書館をやり過ごし、少し進んだ所に今回訪れてみたかった場所、東京国立近代美術館工芸館がある。

kenmochi_chair.jpg レンガ造り2階建てのゴシック様式の建物は歴史と趣があり、旧近衛師団司令部の庁舎を保存活用したそうである。工芸館という名の通りここでは主に近代美術の工芸、デザイン作品を展示している。重要無形文化財の保持者などの優れた技術と高い芸術性を持った作品が、観覧料大人は210円と非常にリーズナブルな金額で見られるすばらしい所である。しかも普段から割と空いている。今回は「もようわくわく」という様々な模様をテーマにした展示会を開催していた(2014年8月31日まで)。中でも漆を幾層にも塗り重ね、模様などを彫刻する「彫漆」の作品は、その技法と表現の妙が新鮮であった。ところで館内には所々に観覧者が休めるように椅子が置いてあるのだが、こちらがまた良い。重厚な厚板材で作られたもの、うさぎの形の様なかわいらしいものなど様々。私のお気に入りは、剣持勇の藤丸椅子。藤で編まれた丸っとした形状の中央に色鮮やかなクッションがのっている。シンプルで美しいデザインに感嘆する。

sakurada_trench.jpg さて涼しい工芸館を出て、じりじりと暑い日が差す中、皇居の道に戻り反時計回りに進む。千鳥ヶ淵の在日英国大使館の威厳ある建物を右手に見ながら半蔵門に向かう。半蔵門の辺りから霞ヶ関方面を望むと、桜田濠の深い水の色と周りの木々の緑、そして緩いカーブを描いた凹凸のある地形とが不思議な景色を見せてくれる。道は下りになり右手に国立劇場、最高裁判所が見えてくる。最高裁判所の前にある三宅坂小公園に三人の女性像が設置されている。彫刻家として活躍した菊池一雄が制作した広告記念像だそうである。広告が日本の産業文化に貢献した実績を記念し、広告功労者を顕彰する記念碑として日本電報通信社(現在の「電通」)が建てたものだそうだ。裁判所の前にあるので、正義や平等に関係する女神像かと漠然と思っていたのだが、全くの思い違いであった。いつもながらの思い込みを反省する。その背後には、「渡辺崋山生誕地」と書かれている立て札が目立たなく立っている。江戸後期の藩士、蘭学者で文人画家としても名を成した崋山は、高い写実表現の作品を描いている(残念ながら、こちらは当社に複製画はない)。

 さらに足を進めると右手に国会議事堂に続く幅の広い道が現れる。国会議事堂の前には、その名もずばり「国会前庭」という公園が北地区と南地区に分かれてある。この公園はかねてより休日に行くと非常に空いているのだが、お盆の時期は全く閑散としている。緑の多い公園に小川や池などが散在して、正しく都会のオアシス的な場所である。場所柄かトイレもきれいなので、たまに立ち寄る時は使わせてもらっている。都会生活では、「きれいなトイレがどこにあるか知っている事はとても重要な事である」と個人的に思う。公園の中程では都会の喧騒もそれほどでなく、国会議事堂のすぐ前という大都会にいる事を忘れてしまう。

 さてそろそろ皇居一周も終わりに近づいている。坂を下り終えると警視庁のある桜田門がある。門をくぐって左に進めばスタートした和田倉門に着くが、真っ直ぐ有楽町方面に向かう事にした。丸の内にフランスのクリスタルメーカー「バカラ」の店舗がある。工芸館では日本の優れたガラス工芸に触れてきたので、西洋のガラス工芸にも触れるのが良い。まだまだ残暑厳しい街に向かう。しかしよくよく考えてみたら、今日訪れた所は普段も割と空いている所であった。

 余談ではあるが今年の秋、9月23日から東京国立近代美術館で近代日本画の巨匠、菱田春草の生誕140周年を記念して大回顧展が開催される。この展覧会では菱田春草の代表的な作品が集結し、重要文化財4点全てが出品される。中でも大作「落葉」の連作5点も全て見られるとあって大変楽しみである(当社の複製画、彩美版®にも重要文化財の本作品がある)。

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