July 14, 2017

大正時代のガーデニング男子


 梅雨だというのに、東京では雨があまり降りません。うだるような暑さが続き木々や草花も心なしか元気がないように見えます。水が足りないのではないでしょうか。我が家の子どもがまだ幼い頃は、家庭菜園が人気で、我が家でも地元自治体が運営する菜園を借りて野菜を育てていました。植物を育てるのは手間がかかるもの、夏場は水やりが大変です。水道が離れた場所にあり重いバケツを運んで何往復もしたものでした。

 ここ数年でしょうか、ガーデニングを楽しむ男性が増えてきているとの話題を耳にしました。そういえば、NHK「趣味の園芸」の講師はイケメン俳優の三上真史さんでしたし、作家いとうせいこうさんのエッセイをもとにして作られた田口トモロヲさん主演のNHKBSプレミアムドラマ「植物男子ベランダー」も、かなりディープな内容で人気だそうです。

 私自身はガーデニングにそれほど興味があるわけではないのですが、植物好きの家族のおかげで緑に囲まれた生活を送っています。リビングのど真ん中には、天井にとどかんばかりのウンベラータという観葉樹が鎮座し、四方に大きく枝葉をひろげています。ウンベラータの大きな葉は繊細でなるべく触らないようにしなけれなならないのですが、さほど広くない我が家のリビングですから、どこに行こうとしてもかならずこの樹の枝先ぎりぎりを通過しなければならず、不便を強いられています。それでも、活き活きとした植物たちに囲まれた空間には不便を上回る快適さと心を満たす歓びがあります。ことに室内にいながら樹下に憩う爽快さは、何物にも代えがたいものがあります。簡単な水やりでも続けていると、植物への愛情が自然と湧きあがってくるのが不思議です。

 ところでガーデニング、すなわち園芸は当初身分や教養の高い限られた人たちの趣味だったそうです。盆栽も含めていわゆる文人の嗜みの一つでした。江戸時代後期には一大ブームが興り、貴賤を問わずひろく愛好されたました。様々な花の品種が作出され園芸にかかわる出版も盛んでした。余談ですが、私はこうした園芸ブームと日本画の主題としての草花には、もちろん総てにあてはる訳ではないですが、なんらかの関連性があるのではないかと考えています。例えば酒井抱一や弟子鈴木其一ら江戸琳派の作品に多い花卉画は、園芸ブームという同時代性も併せて考えてみるべきではないでしょうか。機会があればもう少し深く探ってみたいと思います。

 話を戻します。近代日本を代表する文人の一人森鴎外(1862~1922)は園芸のスペシャリストでした。医学者らしく研究熱心で極めて高度な専門的知識を身に着けていたそうです。著名な植物学者牧野富太郎とも園芸を通じた親交がありました。自邸観潮楼(現在文京区立鴎外記念館のある場所)の裏庭は鴎外が園芸を楽しむ場所でした。毎日のように庭に下りて草花の生育状況を観察していたようです。鴎外がつけていた日記には草花の記述がしばしば登場します。また、花の開花記録である「花暦」を記しています。

 鴎外の弟子を自認していた一人に作家永井荷風(1879~1959)がいますが、荷風もまた園芸を好む男子の一人でした。荷風は随筆『偏奇館漫録』にこう記しています。

 「余花卉(かき)を愛すること人に超えたり。病中猶年々草花を種まき日々水を灌ぐ事を懈(おこた)らざりき。」


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断腸亭にほど近い余丁町の抜弁天。
荷風は大正6年12月の縁日に沈丁花一鉢を買い求め、自邸の窓下に植えている。



 断腸亭という彼の号の由来も花とかかわっています。大久保余丁町(現新宿区余丁町)の実家の庭園に咲いていた断腸花(秋海棠の別名)を好み、自らの書斎に名づけたのでした。断腸花は秋の花ですが、夏の花としては紫陽花と椎の花を特に好みました。

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荷風が好んだ夏の花、紫陽花。


 荷風の日記『断腸亭日乗』には草花の記述がしばしば出てきます。多くは季節の花の開花記録ですが、自ら雑草を抜き、種をまき、球根を植え、根分けをしたというような具体的園芸の記述もあります。また時には、樹医のようこともしています。大正9年に移り住んだ古いペンキ塗りの洋館、偏奇館には椎の老樹がありましたが、その樹に蟻がついて弱ったのを手入れして甦らせたのです。夏はこの椎の木の下で読書をするのが彼のお気に入りでした。

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偏奇館跡地に立つ泉ガーデンタワー。


 草花を好んだ荷風でしたが、偏奇館の庭は人から見れば、荒れ放題だったようです。しかし荷風自身は、綺麗に手入れされた庭園より手をあまりかけず荒廃した雰囲気に雅趣を見出したのでした。『断腸亭日乗』大正6年12月1日の記録にはこう記されています。

 「蝋梅(ろうばい)の黄葉末落尽さゞるに枝頭の花早くも二三輪開きそめたり。予今年は病のため更に落葉を掃(はら)はざりしが、今になりては荒果てたる庭のさま却て風趣あり。」

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偏奇館庭園を偲ぶ:道源寺に隣接する六本木坂上児童遊園の樹立。


 麻布市兵衛町にあった偏奇館は戦災で焼け、その跡地には今、泉ガーデンタワーが聳え立っています。泉屋博古館分館のすぐ裏手です。この周辺は大規模開発により荷風が住んでいたころとはすっかり様子が変わってしまいました。私は、荷風が通った道源寺坂にわずかに残る面影をみつけ心に刻みました。坂下の西光寺の木芙蓉が、午後の陽射しを浴びて可憐な花を咲かせていました。

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麻布道源寺坂。


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道源寺坂に咲く木芙蓉。




【夏の花いろいろ】※クリックするとリンク先の記事に飛びます。
ツツジ: 小倉遊亀 《初夏の花》
ガクアジサイ: 中村岳陵 《八仙花》
セイヨウアジサイ: 山口蓬春 《榻上の花》

スイレン: クロード・モネ 《睡蓮の池》


【お知らせ】
■ロビー展「私たち、自然保護しています。」を日本自然保護協会様にご紹介いただきました

6月22日付当ブログで、自然保護活動がテーマの当社ロビー展の記事を掲載しましたが、このロビー展の概要を、協力いただいた日本自然保護協会様に同会ホームページでご紹介いただきました。以下リンクからご覧いだだけます。

公益財団法人日本自然保護協会(企業連携)http://www.nacsj.or.jp/partner/2017/06/4629/

June 2, 2017

屋上の庭園 ~モネの世界へ~

いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。


先週、この場で当社新商品「クロード・モネ/睡蓮の池」のご案内をさせて頂きましたが、その絵柄と同じ風景を楽しめる場所があります。もちろん、この絵画の舞台となったフランス・ノルマンディー地方ジヴェルニー村を訪問すれば、モネが造った実際の風景を観ることができます。しかし今回はもっとお手軽に、ビールでも飲みながら鑑賞できるスポットをご紹介したいと思います。

場所は東京都池袋の西武百貨店9階屋上にあります。昭和時代、百貨店の屋上といえば遊園地が定番だったイメージがありますが、娯楽の多様化や少子化などの影響で、多くの施設が姿を消し、最近ではあまり見かけなくなりました。一方、近年の百貨店業界においては、集客の要として屋上をリニューアルして、効果を上げている所も多いようです。



そして、こちら池袋西武百貨店の屋上は2015年に「食と緑の空中庭園」として、リニューアルオープンしました。'空のほとりで逢いましょう'をコンセプトにモネが愛したノルマンディーの「ジヴェルニ―の庭」、そしてモネ晩年の大作「睡蓮」にインスピレーションを得て造園されたものです。

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煙突はご愛嬌



そして庭園のシンボルとして造った「睡蓮の庭」には、睡蓮を浮かべ、四季折々の自然の姿が美しく写し出されます。

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時間帯によってはミストがでます



庭園内には世界の料理と、アルコールが提供される「レストラン&バー」、バラエティ豊かなメニューが楽しめる10店舗のフードショップが展開されています。訪れる全ての人がモネの世界観に包まれ、上質な時間と空間を楽しむことができるはずです。

May 19, 2017

暖かな陽射しの五月 ~日比谷公園より~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。


 気候良く、暖かかな陽射しが心地よい今日この頃。私は季節の移ろいを確かめに、日比谷公園に足を運んでみました。日比谷公園は都心に位置する有名な公園で、日本を代表する都市公園のひとつ。歴史も古く、野外音楽堂や日比谷公会堂などの施設も有しており、園内は多くの人で賑わっており、公園の中央にある大きな噴水が出迎えてくれました。

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日比谷公園「噴水広場」の噴水


 噴水とは、文字通り「水を噴出するもの」とされますが、改めて世界を見渡してみると、著名な公園には必ずと言って良いほど噴水のある広場があることに気付かされます。ラスベガスの噴水ショーや、シンガポールのマーライオン、イタリアのスペイン広場、ドイツブリュッセルの小便小僧など。ただ単純に水を上に噴き上げるだけの噴水もあれば、二段噴水~三段噴水など複数の噴水で迫力ある景観もあり、また夜になるとライトアップが美しい噴水、音楽に合わせて踊る噴水など、多種多様な姿で、ときに楽しく、ときに優しく癒してくれる存在ですね。
 また、公園のいたるところでは季節の花々が咲いており、特に黄色のバラが目を惹き、緑と噴水を背景にした情景がとても印象的でした。

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黄色のバラ


 もうすぐ梅雨の季節が始まります。せっかくの晴れた日は外へ出て、季節の移り変わりを楽しめればと思います。


March 31, 2017

迷路の町と朝倉彫塑館

 文化勲章を彫刻家として初めて受賞した朝倉文夫(1883〜1964年)。東京は台東区谷中にある朝倉文夫のアトリエ兼住まい(朝倉文夫自身の設計)は現在、朝倉彫塑館として彼の作品と建物の見学ができる。2008年には敷地全体が国の名勝に指定された人気のスポットである。彫塑館の入口から見る黒塗りの鉄筋コンクリートの壁は厳めしいが、館内は一変して竹や真綿を使った明るい色彩になる。室内には大きなガラス窓から注ぐ陽光と、モダンなデザインの照明、曲線を生かした有機的な壁面などで暖かく柔らかさを感じる。高さ8.5メートルの大きなアトリエには人物がメインに展示してあるが、中でも「墓守」は私の好きな作品である。朝倉は自作についてあまり語らなかったそうであるが、「墓守」については「家のものが将棋を指すのを見て無心に笑っているところをとらえた」と残している。朝倉がトルストイに例えた墓守の姿は、西洋美術であれば矍鑠(かくしゃく)と威厳に満ちた彫刻になろ。しかし、この老人像の髭の下から前歯が2本のぞいて笑った口や、足袋を履いた足、そして全体を包むぬとぬととした肌触りなどがいかにも日本的であり身近に感じる。

若葉の芽吹きもちらほら、朝倉彫塑館。
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 アトリエを通り抜け中庭に面した木造住居欄に入る。中庭にはそのほとんどを占める様に池がある。池には大きくて平たい石があり、何でも真鶴の海石と伝えられているらしい。寝転んで昼寝をしたら、さぞや気持ちよさそうである。各部屋はこの池をぐるりと巡る様に升形に配置されている。天井まで届く書棚が並んだ書斎、出窓に半円のソファーがある応接室などを巡り、階段を上がって2階、3階と進む。さらにオリーブの木が葉を茂らせている屋上に出る。屋上にはかつて大根やトマトなどを育てた園芸実習の場があったそうだ。この空中庭園からは、谷中、千駄木、根津が気持ちよく見渡せる。最後の部屋はもと東洋蘭の温室で、今はネコ達の彫刻の部屋になっている。朝倉はネコが良い、深い愛情がこもっている。朝倉は学費が払えないで美術をあきらめざるを得ない者たちを塾に向かえたそうである。その懐の深さが感じられる素敵な彫塑館であった。
 さて、この界隈は古くからの家々が軒を連ねる細い道が交差して、一歩路地に入るとほとんど迷路である。迷子になる不安を覚えながら道を進んでいくと、大きなガラス窓に囲まれたモダンなお店に出た。彫塑館の裏手にあるチョコレート専門店「ショコラティエ イナムラ ショウゾウ」である。シンプルな装飾の店内は明るく、喫茶コーナーは人でいっぱいの人気店である。素材にこだわったパウンドケーキのクラシックショコラを購入する。このチョコレートレートケーキは、しっとりとして濃厚な味わいであった。谷中の町は新旧が入り交じった楽しさがある。

March 24, 2017

ギャラリー「都道府県の花」 ―皇居をめぐる花の輪


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。


 先日、皇居周辺を散策してきました。皇居の周りは約5キロで、その距離感と信号がなく止まらずに一周できるので、日本でもっとも人気のあるジョギングコースとしても親しまれています。当日もたくさんのランナーの方々が走っていました。


 皆様は、この周回コースの歩道100メートル毎に都道府県の花のプレート(石板)が埋め込まれていることはご存知でしょうか(正確には47都道府県と2つの花の輪と千代田区のプレートの計50枚)。このプレートは通称「花の輪タイル」と言うのだそうです。スタートは皇居正門のある二重橋にあります。北海道の道花「はまなす」が彫られたプレートより、反時計回りに南下し、最後に沖縄県の県花「デイゴ」で一周します。と言われても、自分の住んでいる所の花も知らない方が多いのではないでしょうか。かくいう私も知りませんでしたので、この際一周して47都道府県全てのプレートを確認することにしました。


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花の輪タイル (左)北海道・はまなす (右)沖縄・デイゴ


 一周を5キロと考えると長い道のりとお思いでしょうが、いざ歩き始めれば100メートル毎に次々とプレートが現れるので、写真を撮りながら歩いていると、思いのほか忙しいことになってしまいました。さながら、ギャラリー「都道府県の花」です。プレートを逃さないように下ばかり見ていると、皇居周辺の景色をゆっくり楽しむことができないという、大変悩ましい状況です。それでも、少し寄り道をして千鳥ヶ淵緑道に入ってみると、3月上旬頃に咲く大寒桜が咲いていました。その実、千鳥ヶ淵の桜はその大部分がソメイヨシノで、今では東京屈指の桜の名所となり、多くの方々に親しまれています。間もなく迎えるシーズンにはライトアップもされますので、夜遅くまで楽しめます。


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千鳥ヶ淵の大寒桜


 さて、無事に47都道府県すべてのプレートの写真を撮り、お陰様で自分の県花も確認することができました。プレートを追いかけながら、歩いているとあっという間の一周です。こちらのプレート、ランナーの中には1km毎のラップを計ることや、居場所の確認に使われている方もいるそうです。確かに何県のプレートは何々門の所にあるなどと覚えておけば便利ですね。


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花の輪案内板


 少しずつ陽気も暖かくなり、東京では桜の開花宣言が出されました。お花見も兼ねて、スタンプラリー感覚で皇居一周を歩いてみることをお薦めします。全てのプレートを確認することができれば、きっと達成感を得られることでしょう。


February 10, 2017

「全国カレンダー展」雑記


 今回はカレンダーのお話です。

 68回目を迎える「全国カレンダー展」が、1月14日(土)~1月18日(水)に、ゲートシティ大崎で開催されました。同時に「全国カタログ展」も同じ会場で開催、併せて見ごたえある展示会となっていました。(一社)日本印刷産業連合会とフジサンケイビジネスアイ主催の全国カレンダー展は、回数で分かる通り歴史あるコンテスト・展示会です。展示されているのは様々な会社や団体が発行する企業・販促カレンダーを中心に、個人購入の販売カレンダーも含め多様です。応募数の減少傾向は否めませんが、今回は600点程で、その中から選ばれた400点程が展示され、さらに選び抜かれた69点が入賞の栄誉を受けました。

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 印刷会社からの出品が多く、弊社も毎年いくつもの得意先企業のカレンダー製作に携わり、出品させていただいています。カレンダー展の長い伝統にも密接に関わってきました。現在企業カレンダーは、かつての異常な豪華さはないものの、依然企業の顔としての役割は担っており、特に近年はコーポレートコミュニケーション(企業の広報活動)ツールとして再認識されている側面があります。

 コンテスト入賞作品は当然こうした企業文化を伝える意義深いものが多く、グレードの高い仕様で製品化されていますが、受賞の脚光を浴びていなくても、企業としてのアイデンティティを表現する意図が伝わり、面白く見入ったものも多くありました。
 例えば自動車の修理・整備を行う某会社のカレンダーは、「武骨なカッコよさ」を表現すべく、コンクリート壁のようなセメントの板を地に、表紙はタイヤの跡のみが走り、本文各月は大胆にデフォルメされた欧州車のイラストが描かれたデザイン。個人的に気に入ったテイストでした。

 某ミシンメーカーのカレンダーは、そのミシンで作成したキルティングなどのソーイングアート作品を紹介。自社製品の可能性や楽しみを伝える役割を果たしています。
 また、自然風景写真はカレンダーとして最も人気の高いモチーフですが、それだけにたくさんの企業で作られており、その中でどう差別化し特徴を出せるかが問題です。某電気メーカーは「流れ」をコンセプトに川のシリーズを設定し、川の風景と動物を捉えた「川 と命」をテーマに写真選定。他社とは一味異なる統一感を持った構成に上がっていました。
 装飾品という形をとりながら、さり気なくお客様に長期にわたってメッセージを伝える・・・企業カレンダーにはそういう穏やかな訴求力があり、アート性と企業のアピールを如何にスマートに両立させるかがポイントです。

 他社製作のカレンダーにスペースを割きましたが、最後に弊社の入賞カレンダーもご紹介いたします。日本商工会議所会頭賞及び金賞を受賞した清水建設(株)は、グラフィックデザイナー・上條喬久氏に依頼して制作を続けている、WINDSCAPE MINDSCAPEシリーズ。絵柄は一貫して建設をイメージした窓から見る心象風景を表現。今回は平面分割でできたシンプルな形を質感ある色彩で描いたアート作品です。紙製のリングを使用したスケッチブック風のスタイルです。

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清水建設株式会社

 
 銀賞に輝いた(株)資生堂の2017資生堂ビルカレンダーは、グラフィックデザイナー・仲條正義氏のタイポグラフィカレンダーで、仲條氏のオリジナル制作のタイプフェイスで構成。B1サイズ・1枚タイプのカレンダーで、好みで選べるように表裏異なる色で作られています。暦配列の既成概念を崩し、それを判読する楽しさがあり、数字だけでデザインされた洒落たインテリアポスターとして飾れます。資生堂の先鋭的な企業文化をイメージさせます。

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株式会社 資生堂


 展示会場で、小さな男の子と彼を抱っこしたお父さんがカレンダーを1枚1枚めくりながら歓声を上げていました。見ていたのは筆者が担当した(公財)東日本鉄道文化財団の鉄道博物館カレンダー(奨励賞受賞)。同館所蔵の歴史を刻む数々の列車の模型を撮影して構成し、各写真に列車のもつ特色を暗示する落書きのような線画イラストを愛らしく絡めています。こうして感嘆を持って見てもらえるんだと、心が温まりうれしくなりました。

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公益財団法人東日本鉄道文化財団(鉄道博物館)

January 27, 2017

仙人の住んだところ、豊島区千早周辺の隠れ家的なスポットを訪ねて。

  東京は豊島区、要町駅からほどなくの千早という地区の住宅街に、熊谷守一の美術館がある。静かな街並を歩いて行くと、突然コンクリート打ちっ放し3階建ての美術館が現れる。正面の大きな壁面には、輪郭を彫り込んで描いたアリ達がおり、その脇に「クマガイモリカズ」とクギで書いたような文字が彫ってある。何とも温かで、この美術館の画家を想わせる素敵な壁画が訪れる人を出迎えてくれる。館内の展示スペースはあまり広くはないが、落ち着いていて、ゆっくりと作品が鑑賞できる。1階は油絵を中心に、掛軸、ブロンズなどが並び、画家が生前使用していた品々も展示されている。2階は墨絵や書を中心に展示。現在3階では熊谷守一の版画が展示されている(〜2017年2月12日まで)。
  熊谷守一は1880年(明治13年)に岐阜県で生まれ、東京美術学校(現東京藝術大学)西洋画科選科に入学する。二科会などで活動をし、1932年に今の美術館のある、この千早の地に移り住んだ。晩年、文化勲章の受賞が内定をしたが、これを辞退してしまう。その理由の一つは「これ以上、人が来ては困る」という事であった。「画壇の仙人」とも呼ばれた画家は、草木が生い茂り虫や鳥たちが訪れるお気に入りの自宅で、家族と過ごし、傑作を生み出して行く。そしてこの美術館は熊谷守一が住んでいた自宅の跡地に建てられた。
  建物の1階には喫茶室がある。ここには守一のご令嬢で画家の榧(かや)さんの作品も展示してある。以前、北アルプスの燕岳に登って燕山荘に泊まった時に、榧さんの作品が飾られているのを見た記憶が蘇って来た。


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来訪者を迎えてくれる熊谷守一美術館の壁画。


  さて仙境を後にして、池袋方面へ向かう。立教大学の手前の住宅街に、これまたひっそりとチョコレートで有名な「テオブロマ ビス」がある。こちらのショップには店内にカフェスペースがあり、また外のテラスでもランチをいただく事ができる。陽気が良ければテラスでいただくランチのパニーニはとても美味しいが、大寒のころではちょっと厳しい。人気商品、小箱シリーズのチョコレート「ジャリ」を買って帰る。「ジャリ」は、外側のコーティングがカリカリッとした食感で、まさに砂利道を歩く感触。代々木公園を散歩していたときに見つけた砂利を再現して作ったというから、うなずける。


December 9, 2016

横山大観旧宅及び庭園が国史跡・名勝へ


 当部では半世紀以上も複製画事業に取り組んでおりますが、その初期の頃から長きにわたり大変お世話になっております『横山大観記念館』につきまして、此度の喜ばしいお知らせをこの場を借りて改めてご連絡させて頂きます。


 東京都は上野池之端に佇む『横山大観記念館』。横山大観画伯のご自宅兼画室及び庭園は、貴重な文化財であることから、今年2016年11月に「横山大観旧宅及び庭園」として国の史跡・名勝の両方に指定される運びとなりました。


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画像提供:横山大観記念館


木造二階建ての数寄屋風日本家屋。文化庁文化審議会による指定答申では、
① 横山大観画伯が自ら指示して造営(デザイン)している点。
② 横山大観画伯の思想・感性が大きく反映されている点。
③ 実際に創作が行われた場であり、その素材となったものも多くあると考えられる点。
などが評価されたそうです。


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画像提供:横山大観記念館


これもひとえに、この旧宅及び庭園を「記念館」として一般公開し、保存・維持に努められた『横山大観記念館』理事長である横山隆様をはじめ、関係者の皆さまのご尽力による、近代美術界への多大なる賜物と存じます。


【横山大観記念館のご紹介】

kinenkan_maingate.jpg住 所 東京都台東区池之端1-4-24
電 話 03-3821-1017

休館日 毎週月~水
長期休館 夏期休館、冬期休館あり
開館時間 10:00~16:00(入館は閉館30分前まで)
入館料 大人 550円
    団体割引(20名様以上)450円
    小学生 200円
    障がい者料金 大人450円、子人100円
    年間パスポート 1,500円

最寄駅 東京メトロ千代田線「湯島」から徒歩7分
     東京メトロ銀座線「上野広小路」、都営大江戸線「上野御徒町」から徒歩12分
     JR「上野」「御徒町駅」から徒歩15分
     京成線「京成上野」から徒歩15分

ホームページ http://members2.jcom.home.ne.jp/taikan/




 当部商品・横山大観画伯「霊峰飛鶴」をご紹介いたします。我々も微力ながら、この貴重な文化財産の益々の発展を祈念し、今後も事業展開に努めてまいる所存です。




彩美版®
彩美版 横山大観 《霊峰飛鶴》
販売価格 120,000円+税


 昭和28年(1953年)に横山大観画伯の澄み切った境地が描かれた吉祥作品。金泥で刷かれた瑞光を背景に、富士の前に鶴が群れをなし飛翔しています。


<仕様体裁>
◆共通仕様
監修 公益財団法人横山大観記念館
原画 公益財団法人横山大観記念館所蔵
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り(本金泥使用)
用紙 特製絹本
限定 950部(軸装、額装の合計)
証明 監修者検印入り証書を貼付

◆軸装仕様
画寸 天地39.5cm×左右52.5cm
軸寸 天地135cm×左右72.1cm
表装 三段表装
箱  柾目桐箱、タトウ付
 
◆額装仕様
画寸 天地39.2cm×左右52.8cm
額寸 天地58.7cm×左右72cm
重量 約3.6kg
額縁 特製木製金泥仕上げ、アクリル付(国産、ハンドメイド)


※「彩美版」は共同印刷株式会社の登録商標です。


横山大観《霊峰飛鶴》(軸装)


横山大観《霊峰飛鶴》(額装)


<関連記事> 横山大観記念館にて

November 18, 2016

秋日和、名家伝来の禅画と「つばきやま」界隈


 この秋、禅画がブームである。秋晴れの日、細川家に伝来する文化財を展示している永青文庫に仙厓義梵(せんがい ぎぼん)の禅画を見に行くことにしました。仙厓義梵は江戸時代後期の臨済宗の僧侶で、ユーモアある禅画を描いている。



 東京は文京区。近くに流れるのは神田川であるが、江戸川橋という駅で下車する。既にお昼時、まずは食事をしてから展覧会に臨むことにする。神楽坂方面に向かって上る坂が大きく曲がり始める手前に「マティーニバーガー」はある。こちらはニューヨーク生まれで、デザインの仕事をされていたオーナーが経営しているハンバーガーショップ。ニューヨークではマティーニを片手にハンバーガーを食べるとのことだが本当であろうか。お店に並んでいるマティーニグラスはどう見てもダブルの量、ちょっとランチで飲むというには困難である。ハンバーガーの種類はアメリカの地名にちなんでいる。ベーコン、オニオン、バーベキューソスのウェストサイドをオーダー。只管打座でじっと待つこと、出てきた料理はベーコンがカリッとして、ビーフ100%のパテはジューシーでとても美味しくボリュームもある。
 お店の雰囲気も、オーナーも感じがとても良いお店です。

「マティーニバーガー」のカウンターの後には、ウォッカの瓶がアーティステックに飾られている。
「マティーニバーガー」のカウンターの後には、ウォッカの瓶がアーティステックに飾られている。



 さてお腹もくちくなったので、いざ永青文庫へ。永青文庫は椿山荘がある小高い台地の上にある。明治の時代、軍人・政治家の山縣有朋(やまがた ありとも)が「つばきやま」と呼ばれていたこの一帯を買い取り、邸宅として「椿山荘」と名付けた。今ではホテル椿山荘東京として生まれ変わっている緑豊かな斜面と神田川の間を通り、急峻な胸突坂を上る。坂の右側には、かつて松尾芭蕉が住んでいた関口芭蕉庵がある。上りきった左手の鬱蒼と茂った木々の奥に瀟酒な白い洋館が見える。ここが永青文庫である。文武両道にすぐれた細川家に伝来する歴史資料や美術品を保存、展示している。建物は4階から2階が展示スペースとなっており、「平成28年度秋冬季展 仙厓ワールド」(~2017年1月29日まで開催中:期間中展示替えあり)では、4階は仙厓の掛軸など、3階は仙厓の茶碗やアジアの器など、2階では明、清時代の文房四方(筆、墨、硯、紙)などが展示されており、仙厓の素朴な表現や墨の文化をテーマにしている。

庭から永青文庫の玄関を望む
庭から「永青文庫」の玄関を望む。

 仙厓の禅画は一切衆生を極楽往生へと誘ってくれるありがたい絵かと思いきや、まるで無垢な子供の描いた絵のようである。大猫と、目を回した不思議な生物が描かれている「竜虎図」を見た衝撃は、もう「え〜!」なのである。正しく「ゆるキャラ」のようなユニークさがある。仙厓の絵に臨む際は、古伊賀水指 銘「破袋(やぶれぶくろ)」を愛でるかのように、歪みをも楽しむ数寄者の心持ちが肝要であるか。解説で賛の訳や絵の内容をわかり易く説明しているので、親切でありがたい。仙厓は難解な公案(禅問答)をわかり易く庶民に伝えるために、楽しいタッチで禅画を描いたのかもしれない。公案は会社の会議でも使える。「指月布袋図」(布袋さんが月を指さしている図)の意味するといわれていること(月=悟り、指=教典、悟りは教典の教えの遥か遠くにある。)を元に、「計画数字そのものを追うのではなく、その先にあるのが本当の目標です。皆さんで業務に励みましょう。」なんて訓示してみようかしら。



 永青文庫を後に、講談社野間記念館との細い道を抜け、椿山荘の正門へ出る。その向かいには、特徴的な容姿と大きさ(金属製の巨大な鳥が、大きな翼を広げて地上に降り立った姿?)で知られている「カトリック東京カテドラル関口教会」がそびえている。カテドラルとはカテドラ(司教座)のある教会のことで、関口はこの辺りの地名である。この教会は有名な建築家の丹下健三が設計し、1964年に落成した。建物の壁面は垂直に近い角度で空から落ち込み、美しいカーブを描いている。外壁はステンレス張りになっており、陽光にまぶしくキラキラと輝いている。美しい建築に見惚れているうちに秋の日はつるべ落としに黄昏れて来た。関口台地の坂を下って元来た江戸川橋駅へと向かう。本日はお腹も目も心も満たされ、心願成就と相成り、すばらしい一期一会に感謝し帰路についたのでありました。


October 28, 2016

山種美術館「速水御舟の全貌」展


 山種美術館で開催中の展覧会『速水御舟の全貌』ブロガー内覧会に参加して参りました。

 近代日本画の巨匠、横山大観や下村観山などに激賞され、若くして日本美術院の同人となり、数々の素晴らしい作品を世に送り出して40歳でその短い生涯を閉じた天才、速水御舟。

 山種美術館は近代日本画では初めて重要文化財に指定された《名樹散椿》や《炎舞》をはじめ速水御舟作品の充実したコレクションでも知られており、今回の展覧会は美術館開館50周年を記念して、山種美術館所蔵の御舟作品をはじめ、公立美術館からも名作を一堂に揃えた、まとまって御舟作品を見ることができる素晴らしい機会です。


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 展覧会は、入ってすぐの《鍋島の皿に柘榴》(1921年)から始まり、群青と不思議な構図に引き込まれる《洛北修学院村》(1918年)、御舟が若いころに描いた《萌芽》(1912年)、墨画なのにまるで色彩があるかのように感じられる《木蓮(春園麗華)》(1926年)、昭和モダンな《花の傍》(1932年)など、目を見張る作品の連続ですが、私の一枚は《名樹散椿》です。


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《名樹散椿(めいじゅちりつばき)》 1929年 紙本金地・彩色 山種美術館所蔵


 通常は霞などの表現に部分的に用いるという砂子を全面に蒔いた「蒔きつぶし」による背景は、制作するのにかなりの手間と費用を要する技法だそうですが、その分金泥や箔押しとは違う鈍い独特の輝きがあり、それがボリュームのある椿の樹と相まってとても美しい作品でした。ぐにゃりと曲がった椿の枝はデフォルメしているのかと思われましたが、実際にこのようなものがあったそうです。


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金色の表現比較。左から金箔、金泥、撒きつぶしの技法による。
御舟はこれらの金を作品によって使い分けている。


 こうした徹底した制作姿勢や、執拗なまでの写実主義、緊張感ある作風、その時々である方向性を極めようと集中して作品を制作している様子から、神経質そう...と勝手なイメージを持っていた速水御舟ですが、実は家族や友人を大事にし、おちゃめなところも持ち合わせた人物だったということが伺えるエピソードを聞き、意外だったのと同時に親近感が湧いてきました。

 山崎館長が「一人の画家の展覧会とは思えないですよね」とお話しされたとおり、展覧会を通してみると、短期間に御舟の作風が様々に変化しているのがよくわかります。でもその一方で、根底に流れる何か「御舟らしさ」のようなものが、どの時代でも変わることなくあるように感じられ、それゆえ決して違う人が描いたとは思えない印象が残り、御舟の多彩さが際立つ展覧会でした。


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《炎舞》 1925年 絹本・彩色 山種美術館所蔵


 山種美術館のカフェでは展覧会の会期中、作品をモチーフにした和菓子を頂くことができます。
 《花の傍(かたわら)》をイメージしたストライプの綺麗なもの、《翆苔緑芝(すいたいりょくし)》をイメージした紫陽花と兎など、どれも綺麗で迷ってしまいましたが、私は《炎舞》をイメージしたお菓子を頂戴し、美味しく、美しいお菓子に目でも舌でも芸術を味わいました。


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黒い懐紙に炎を表現したオレンジが美しい《炎舞》をイメージしたお菓子。
食べるのがもったいない。


 後期の後半には御舟最大の問題作であった《京の舞妓》や《菊花図》が展示されるので、また観に足を運びたいと思います。




※ 掲載画像はブロガー内覧会において特別に許可をいただき撮影したものです。




【展覧会情報】

開館50周年記念特別展 「速水御舟の全貌」

2016年10月8日(土)~12月4日(日)
前期:10月8日~11月6日、後期:11月8日~12月4日
山種美術館
東京都渋谷区広尾3-12-36
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2016/gyoshu.html


October 21, 2016

藤牧義夫とモダン都市東京


 藤牧義夫をご存じだろうか。

 群馬県館林市出身の天才的版画家藤牧義夫(1911~1935失踪)の活動期間は、昭和初期のわずか数年に過ぎない。明確な記録が残っているのは昭和6年(1931)から10年(1935)までの5年間、この短い期間に藤牧は精力的かつ濃密な創作活動を行い、同時代の創作版画関係者の注目を集めた。藤牧は新進の商業デザイナーとして活躍する傍ら、昭和7年(1932)、小野忠重(版画家、版画史研究者/1909~1990)らの呼びかけで生まれた新版画集団に参加し同集団の発行する版画誌や展覧会を主な作品発表の場として活動した。新版画集団のメンバー中最も若年であったが、すぐに頭角を現し抜きんでた存在となり、昭和8年(1933)の第14回帝展(帝国美術院美術展覧会・東京府美術館)で《給油所》が入選し一段と注目を集める。当時版画雑誌『白と黒』を出版していた料治熊太(号「朝鳴」/1899~1982)も藤牧を高く評価していた一人である。藤牧また創作版画の創生期から活躍する恩地孝四郎、平塚運一や彼らに続く世代である畦地梅太郎ら一流作家とも親交があった。

 活動のピークに突如失踪という悲劇的な結末が訪れる。昭和10年9月2日、雨の降る夜を最後に彼の姿を見たものはない。弱冠24歳の若者であった。
 戦後長く忘れられた存在であった藤牧が再び注目されるようになったのは、銀座の画廊「かんらん舎」を主宰する大谷芳久氏が開いた遺作展(昭和52年/1978)が切っ掛けである。作品は小野忠重の協力で集められた。遺作展の準備過程で未発表の白描絵巻3巻の存在も明らかになった。この時展示された版画作品の主だったものは東京国立近代美術館が一括購入し、白描絵巻3巻(《絵巻隅田川》2巻、《申孝園》1巻)は東京都現代美術館が購入することになる。

 藤牧が活躍した時代は、関東大震災により破壊された東京が、いわゆる「帝都復興事業」によりモダン都市として再生された時代と重なっている。
 大正12年(1923)9月1日に発生した地震とその直後の大火災で東京は徹底的に破壊され、江戸の面影を色濃く残していた古い東京は壊滅した。山本権兵衛首相は直ちに「帝都復興」事業に着手、帝都復興院が設置された。総裁は内務大臣後藤新平、後藤の推薦で東京市長に就任し復興事業を推進したのは、満鉄総裁、鉄道院総裁を歴任した中村是公(よしこと)である。中村は夏目漱石の親友としても知られる。

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 後藤がまとめた復興計画の主だったものとしては、放射状と環状を組み合わせた近代的道路網の整備(靖国通りや明治通りなど)、耐震性と不燃性を備えた鉄の橋(清洲橋や永代橋など)や小学校(中央区泰明小学校や台東区小島小学校など)の建設、緑地を備えた大規模公園(墨田公園、浜町公園、錦糸公園)の整備などが挙げられる。公の事業と並行して民間でも次々と新しい大規模建築が建設された。

 この時期の建築はその後の戦火をくぐり抜け意外なほどの数が現存している。例えば国会議事堂、上野の東京国立博物館、国立科学博物館、日本橋の三越、髙島屋、日比谷公会堂、銀座和光、教文館など枚挙に暇がない。

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 ちなみに、小石川の当社ビル群や小石川植物園本館もまさにこの時代に建設されたものであり、また当社前から春日通りへと上がる播磨坂(さくら並木)は、後藤の都市計画に基づき建設された環状道路(環状3号)の名残である。

 藤牧は鉄とコンクリートとガラスによる新たなランドマークが続々と誕生する躍動的新生都市・東京の今をわくわくとした気持ちで描き続けた。少し長くなるが藤牧の言葉を紹介する。
(原文旧字旧仮名は新字新仮名に変更)

 「都会風景―その姿は複雑であり、単純であり、或は壮大に、或は明快に、或は力強く、或は速力をもって、われわれに迫ってくる、それはつねにより高く、より能率的に動いて居る。そして、われわれがスケッチブックを持って歩くとき、これらのすべては自分のものだ。
 われわれはモット、モットこの美しさを見つめなければならない。その無限に新鮮な形態を思ふままに賛美し、且つこの近代的な都市美を形成するところの鉄を感じ、コンクリートの皮膚を感じ、更にギラギラと輝くガラスをながめて、その立体美にくい入るのだ。今われわれはこの近代的都市美を版画によって、最も適切に、ハッキリと表現することの出来るのを何よりも大きな悦びとする。」

(1933年9月1日、『総合美術研究』5、「木版画実習[都会風景]」より)


 2020年に開催される東京オリンピックにむけて都内各地で新たな建築工事が急増している。前回の東京オリンピック(1964)の舞台、神宮外苑の国立競技場はあっさりと破壊されてしまった。昭和初期に建設されたモダン都市東京のランドマークもこれから多数が破壊され、新たな建物に置き換わっていくのだろう。

 《白描絵巻(絵巻隅田川)》(白鬚橋から西村勝三像周辺まで)の冒頭に、藤牧は以下の文章を記している。
 「未来すみだ川 橋の発達によりて川の面は何十年後遂に覆はれ昔日のおもかげを偲ふ事不可能になるにや、余写生中この予感あり、幸いにいまだ橋少なし精出して写生を勉むべしとす 昭和九年十月下旬考 義夫」
 藤牧は、鉄、コンクリート、ガラスといった最新の材料と優れたデザインにより構成される近代都市美に感動するとともに、近代都市のランドスケイプが常に流動的で変化が速いこともよく理解していた。藤牧の作品には疾走するようなスピード感が感じられる。日々の感動をダイレクトに画面に描写するため、絵筆を使うように彫刻刀を自在に駆使して版画を描き続けた。

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 藤牧を記念する碑が、故郷館林にある。藤牧が最注目されるきかっけを作った大谷氏による遺作展の売上の一部を原資として昭和53年(1978)、藤牧が好んで訪れた城沼(じょうぬま)の畔に建てられたものだ。黒い御影石に藤牧の版画《冬の城沼》をもとにしたブロンズのプレートがはめ込まれ、その下に藤牧の、熱き情熱が迸る言葉が刻まれている。


 
「時代に生きよ 時代を超えよ」

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【参考文献】
・『季刊 すみだがわ』'80第7号から'81第10号 隅田川クラブ(1980年12月~1981年9月)
・『別冊太陽』No.54 SUMMER '86 平凡社(1986年6月)[洲之内徹「藤牧義夫 隅田川絵巻]
・大谷芳久著『藤牧義夫 眞僞』 学藝書院(2010年11月)
・駒村重吉著『君は隅田川に消えたのか―藤牧義夫と版画の虚実』 講談社(2011年5月)
・『生誕100年 藤牧義夫』群馬県立館林美術館・神奈川県立近代美術館編 求龍堂(2011年7月)




【付記】(2016.10.24改稿)

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藤牧義夫《鉄の橋》の取材地について

 《鉄の橋》は、昭和8年(1933)9月発行の『新版画』第10号(新版画集団)に貼りこまれた作品だが、同年8月に発刊された『総合美術体系』第3号に写真版で掲載の版画《橋梁》の原版の一部に手を入れて摺られたものと考えられている。《橋梁》は黒一色で摺られた作品だが、《鉄の橋》は画面の上部に空色の手彩色1色が加えられている。簡潔で力強いモノクロームの版に鮮やかな空色の手彩が美しいコントラストを見せ、強い印象を与える傑作である。
 力強い鉄の橋を、疾走するオートバイが渡ろうとしている。その緊迫したスピード感も作品の魅力のひとつである。余談だが、国産初の量産オートバイ、宮田製作所のアサヒAA号が登場したのは本作と同じ昭和8年(1933)だそうだ。当時約4万台が販売されてという。藤牧は時代の花形である航空機のファンであり、また作品中にしばしば自動車が登場する。オートバイも当時とすれば時代の先端的存在であったろうから、力強く疾走するオートバイに藤牧が魅かれたとしても不思議はない。
 藤牧は《橋梁》の制作意図について以下のように語っている。
 「これは鉄の橋梁がもつ力強さに美を感じ、その美を強調するために出来るだけ簡素な線で鉄の強さを頭におきながら、最後まで同じ気持ちで彫ったものだ。道路もスケッチした時は工事中で、大変汚れていたが、そのままをスケッチ通りに彫った。用具(刀)は三角ノミでグイグイと押して行き、画面全部の構成が済んでから簡単に丸ノミで浚った。」
(1933年9月1日、『総合美術研究』5、「木版画実習[都会風景]」より)

 取材地については、私の調べた範囲では今のところ明確に特定されてはいないようだ。(最新の研究成果により特定されている可能性はある。)
 藤牧の版画作品中恐らく最高傑作と思われる《赤陽》(東京国立近代美術館)は前述の大谷氏の調査により上野松坂屋の屋上から湯島方面を眺めた風景であることが判明している。また大作《白描絵巻》4巻も大谷氏らの克明な調査で詳細が明らかになっている。
 現場に幾度も足を運び、他の藤牧作品や昭和初期の写真資料等に照らし合わせるなどの独自調査の結果、《鉄の橋》(《橋梁》)の取材地は、江東区佐賀の松永橋付近である可能性がでてきた。考察を簡略に付記する。



 取材地を特定する際の手がかりとなるのは主に以下の5点だろう。


 ① 中央に描かれた鉄の橋の構造的特徴。
 ② トラスの左右に歩道が設置されている。
 ③ 向こう岸の右奥に高く巨大な煙突2本と高い建築が描かれている。
 ④ 向こう岸の左右に倉庫のような切妻平屋の建物が並んでいる。
 ⑤ 左側の建物群の奥に煙突が2本描かれている。


橋の構造は、専門的には「1径間鋼製トラス橋」というもののようだ。
江東区内に多数現存する「震災復興橋梁」はいずれも鋼鉄製のトラス橋だが、ほとんどは左右のトラスが鋼鉄の横桁で結合された構造である。
この横桁が省かれたトラス橋は少なくとも三つ建造されたことが判明している。その内二つ(緑橋、平久橋)は現存し一つ(松永橋)は平成11年(1999)に新たな橋に架け換えられている。




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◇平久橋 昭和2年(1927)竣工(現存)
場所:江東区牡丹三丁目~木場一丁目間(平久川)
構造:1径間鋼製トラス橋
江東区牡丹と江東区木場を結ぶ橋。
①と②の条件は一致している。
③は木場側には藤倉電線(現フジクラ)の巨大な深川工場と富士アイスの深川工場があった。
藤倉電線の工場敷地は概ね現在深川ギャザリアがある場所にあたる。工場には当時高い煙突があったが写真で見る限りその本数や配置、周囲の建物の外観等は版画と一致しないようだ。
富士アイスの外観や正確な場所については調査中。
④、⑤に関連する情報としては、木場側の袂に江東区立平久小学校がある。平久小学校は昭和3年(1928)平久尋常小学校として現在地に開校している。




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◇緑橋 昭和4年(1929)竣工(現)
場所:江東区佐賀一丁目~福住一丁目間(大島川西支川)
構造:1径間鋼製トラス橋
江東区福住の首都高9号深川線の福住ランプの横にある。歩道とトラスの位置関係は作品と一致しない。鉄鋼のトラスが道路と歩道の双方を挟む構造になっている。
首都高9号線は、油堀川(運河)を埋め立てて造られたものであるから、藤牧の時代には緑橋のすぐ横、上流側に油堀川があった。③の高い煙突を持つ建物の存在は確認されていない。④、⑤も同様。




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◇松永橋 昭和4年(1929)竣工(平成11年(1999)架替)
場所:江東区佐賀二丁目~福住二丁目間(大島川西支川)
構造:1径間鋼製トラス橋⇒1径間鋼製ガーター橋
緑橋のすぐ上流、仙台堀と大島川西支川が交差する場所のあたりにある。
残念なことに平成11年に架け替えられ、藤牧の時代とは構造・外観が変わっている。
①以前の橋は写真で確認したところ、平久橋とほぼ同じ外観であり、作品と一致していると言える。②の条件も満たしている。

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③佐賀側の右奥に、仙台堀を挟んで浅野セメントの巨大な工場があった。両者の距離は200mほど。
浅野セメントの工場は、藤牧が好んで描いたモチーフのひとつであり、《鉄の橋》(《橋梁》)の右奥に描かれた高い建物と外観が良く似ている。高い煙突の配置も一致しているように思う。

④佐賀側の左右は三井倉庫の敷地である。
写真資料により少なくとも戦後間もなくから2000年代初頭まで切妻平屋の倉庫が多数立ち並んでいたことが確認されている。戦前の状況は確認できていないので追加調査が必要。

⑤松永橋は隅田川の河畔と200mほどしか離れていない。松永橋から向こう岸の箱崎の建物が間近に見える。藤牧の《白描絵巻 試作》(浜町公園から相生橋まで)には箱崎(現中央区)の風景が精密に描写され、多数の倉庫や煙突が描かれている。だが、煙突と手前の建物を比較すると箱崎の煙突にしては大きすぎるかもしれない。推測になるが三井倉庫(当時の名称は東神倉庫か)に煙突があったかもしれない。さらなる検証が必要である。

以上、④⑤は追加検証が必要だが、ひとまず松永橋付近が取材地である可能性がある。




松永橋にほど近い浅野セメントと清洲橋は藤牧が好んで描いたモチーフである。松永橋は清洲橋に対し、浅野セメントを挟んでほぼ対角の位置にある。追加調査は必要だが、《鉄の橋》あるいは《橋梁》の取材地が松永橋付近である可能性は十分あると言えよう。

October 14, 2016

秋・上野の森でゴッホの傑作と出会う


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。清涼の秋気が身にしみる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
 今回は上野で開催中の東京都美術館「ゴッホとゴーギャン展」と、上野の森美術館「デトロイト美術館展」をご紹介いたします。
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 「ゴッホとゴーギャン展」はゴッホ(1853~1890)とゴーギャン(1848~1903)が友情を結び合い1888年の10月に南仏アルルで共同生活を始めるも、結局生い立ちも作風も大きく異なる二人は仲違いし、ゴッホの「耳切り事件」で終わりを迎えた史実にスポットを当てて企画された展覧会です。
 現実の世界から着想を得て力強い筆触と鮮やかな色彩で作品を生み出すゴッホ。目に見えない世界を装飾的な線と色面で表現するゴーギャン。二人の偉大な芸術家の誕生と出会いから、アルルでの破局、その後も続いた交流と影響を60点余りの作品を通じて振り返ります。これまであるようでなかったゴッホ、ゴーギャンの関係性に焦点を当てた展覧会は、二人の偉大な巨匠の作品と芸術を改めて知るとても貴重な機会といえるでしょう。
 わたくしは中でもゴッホの自他ともに認める最高傑作のひとつ《収穫》に深く心を動かされました。南仏の麦畑を主題にした調和の取れた風景はゴッホの心の一時の平穏が投影された興味深い作品です。
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 一方「デトロイト美術館展」は、1885年の美術館創立以来、同時代の画家の作品を積極的に収蔵し造り上げた近代絵画コレクションの中から、印象派、ポスト印象派、20世紀美術の選りすぐりの名品を紹介する美術展です。モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、マティス、ピカソ等のこれぞ名画と呼ぶべき作品が集結し、心ゆくまで芳醇な美の世界に浸れます。
 中でも本展覧会のメインビジュアルにもなったゴッホの《自画像》に注目です。ゴッホが残した数ある《自画像》の中でも、1887年に制作された本作は、印象派や日本の版画に強く影響を受けた作風で、画家が自らの魂の激しさを描き上げ、人間の魂のもっとも根源的なものにまで到達しえた正に奇跡の名画です。

 芸術の秋の到来を迎え、皆さまもぜひ上野の森に足をお運びになり、豊かな美の世界をご堪能ください。



【展覧会情報】

●ゴッホとゴーギャン展
会場 東京都美術館
会期 2016年10月8日(土)から12月18日(日)まで
    ※休室日=月曜日
時間 9:30~17:30
※毎週金曜他、20時まで(詳しくは美術展公式HPをご覧下さい)


●デトロイト美術館展
会場 上野の森美術館
会期 2016年10月7日(金)から2017年1月21日(土)まで
    ※休館日=10月21日(金)のみ
時間 9:30~16:30
※毎週金曜と10月22日(土)は20時まで


October 7, 2016

秋、食べる芸術『お菓子調進所 一幸庵』を訪ねて


いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。
季節は秋です。
朝方少しひんやりすると、ふかふかの落葉に包まれたくなる東山魁夷の《行く秋》を思い起こします。
しかし、秋はなにより味覚を楽しみたい!
そこで共同印刷、手土産利用頻度ナンバーワン「栗ふくませ」を販売する和菓子店、弊社からは播磨坂を上ったところ小石川5丁目にあります『お菓子調進所 一幸庵』さんをご紹介したいと思います。


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こちらの風情ある外観「一幸庵」さん店舗は、茗荷谷駅からは徒歩5分。
名物はわらびもち、栗蒸し羊羹など顔となる名品を多々生みだし、夕方に寄ると売り切れてしまっていることも珍しくない人気沸騰中の老舗和菓子店です。
店主・水上力(みずかみちから)さんはロサンゼルスの美術館でのワークショップ、講演会など技術の継承にも精力的にご活躍され、今年のバレンタインデーにはテレビ番組でも番組史上初の和菓子職人として特集されるなど、世界を舞台に脚光をあびる稀有な存在でいらっしゃいます。
先日お忙しい中にも関わらず、一幸庵店主・水上力さんにお会いすることができましたのでその感動をお伝えいたします!


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水上力氏は昭和23年、戦前より名高い和菓子職人の家に生まれます。
自身の道を進むと決意し大学卒業後には京都と名古屋で修業を積み1977年に一幸庵を創業されました。
以来、繊細で芸術的な和菓子をつくり続け辿りついたのが、「お茶のうまさを引き立てる和菓子」だといいます。
特に日本の季節を四季のみならず、日本古来の節「七十二候(しちじゅうにこう)」という細分化された暦をコンセプトに72の季節の情景を表現した和菓子は前代未聞、うっとりするような芸術品です。


それを目で味わうことができるブランドブック、『IKKOAN』も今大変話題になっております。
こちらは水上氏のお菓子に魅せられた方々がクラウドファンディングにより資金を集め、日本の和菓子を世界に発信するため作られた、これまた大変美しい本なのです。(2016年グッドデザイン賞受賞)
去る今年の造本装幀コンクールにも出品されておりました。お茶の美味を引き立てる水上氏のお菓子そのもののように主張しすぎない紙の質感、和菓子のフォルムを思い起こさせるかわいくて現代的なタイトルロゴには本当に見入ってしまいました。


このように和菓子の世界で芸術的な表現をされている水上氏に質問させて頂いたのは、
「目で見ているだけでも満たされる美しい和菓子ばかり。グローバルな視点をもち日本人にとって大切な和菓子の存在を世界へ発信されている水上氏は、日々どのような物事からインスピレーションを得て和菓子づくりに反映されていらっしゃいますか?また休日は何をされていますか?」
ということ。

その問いに水上氏は、
「たまに駅前のスーパーに買い物に行ったり、予約が取れたら食事にでかけたり。休みの日は半径5メートルでの生活。身近な四季の変化、例えば桜や紅葉、つゆ草など自然の細かい変化に気付くなど感性は常に養うようにしています」とのこと。
しかしある時期には積極的にさまざまなカルチャーから刺激を受けていたとのお話。
「青山や銀座のブティックのショーウィンンドーをみては色使いを勉強したり」
「一番ショックを受けたのは、パリでフォション本店に行った時。ワンダーランドだと思った、独特な色使いを和菓子に取り入れられないか、と思ったね」とのこと。
40代で世界を見ていたら今日本にはいなかったかもしれない、とも。


『IKKOAN』七十二候のうち六十九候に「雉始雊(きじはじめてなく)」という和菓子がありますが、それについての興味深い裏話も教えて頂きました。
「サモトラケのニケ(勝利の女神ニーケーの彫像)、ナイキのロゴ、社名の由来にもなっている彫像をルーブル美術館でみたことが印象に残っていてこんなデザインが出来上がった」とのお話。
「雉始雊(きじはじめてなく)」は、白一面の雪景色に一声鳴いて降り立った雉により雪に彩りが加わる情景が見たてられた繊細かつ鮮やかな和菓子。
雉は強い発色でシャープな流線型、はかなくもあり斬新で格好良いのです。写真でお見せできないのが残念ですが、そのセンスには脱帽です。
「和菓子の世界は制約が無く何をやってもいいからね」とのこと。色々お伺いしていくとやはり絵画や版画もお好きだとのこと、水上氏の感性やインスピレーションにはやはり半径5メートル以上のものが詰まっているようです。


また、文化的レベルの高い世界各国のパティシエから称賛をうけ、教えを請われている水上氏ですが、
「日本文化は明治維新以降、欧米への劣等感など引きずっているものもあるがグローバルになろうと思えばなれる。ただしこちらは草食、相手は肉食だから最低限の知識をもってきちんと日本文化を理論武装していかないと」とおっしゃいます。
「日本人は五感で食べるし、腹八分目の文化。お腹一杯にならなくてもその分誰かに分けてあげられるんだよ」とのお話。
またバレンタインにはもっと和菓子を贈る人が増えて欲しい、と。「古来日本人は毎日歌を詠んで贈っていたのだから...」
水上氏だからこそ語ることができるグローバルな視点には改めて日本文化の魅力をひしひしと感じさせられます。


そしてやはり、職人でいらしゃいます。
栗の下処理をしている水上氏、動きはとても早く大量の栗をあっという間にさばいていきます。
素早い動作、刃が入る瞬間だけ別のリズムになります。
失礼ながら手先が震えているのかと思ったほど。ではなくほんの一瞬あまりにも柔らかく繊細なタッチに変化するのでした。
その感性やお味にはもちろんですが、何より手さばきに驚嘆させられました。


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皆様も是非お近くに寄られた際は、食欲の秋、食べる芸術を楽しんでみてください!!


一幸庵(いっこうあん)
東京都文京区小石川5-3-15
※営団地下鉄丸の内線:茗荷谷駅より徒歩5分
Tel: 03-5684-6591

一幸庵ブランドブック『IKKOAN』

September 30, 2016

鈴木其一展を観る


 東京六本木のサントリー美術館で開催中の「鈴木其一(すずききいつ)」展に行ってまいりました。鈴木其一の画業を紹介する大規模な展覧会ですが、私の一枚は、やはり展覧会のメインビジュアルにもなっている「朝顔図屏風」です。

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 琳派様式を江戸で再興した師・酒井抱一の亡き後、独自の画風を確立していった其一が完成させた《朝顔図屏風》は、金地に流れるように絡まり合う緑の蔦と、鮮やかな朝顔の色彩が目を惹くと同時に、その大きさ、ボリュームも印象的で、デザイン性が高く切れ味鋭い其一の表現は、独創的でまさに「COOL!」という感想でした。

 雑誌『和楽』10・11月号の琳派特集では、「かつて忘れられた存在であったのが、その独創的な作品から注目を集め、近年改めて人気を得た作家」・伊藤若冲と比較し、その存在、技術の高さから「ポスト若冲の一番手」としての鈴木其一を紹介しています。
 展覧会訪問日は平日でしたが、混雑と言ってよいほどの来場者に鈴木其一の注目の度合いを感じ、たしかに「これから其一がくるかもしれない...」という気配を感じさせる展覧会でした。

 10月5日からの後期展示では、《夏秋渓流図屏風》や《風神雷神図襖》などが展示されます。
 私も、もう一度観に行こうかと思っています。


★ 「鈴木其一展」、作者の遊び心と色彩感覚が印象的な「描表装(かきびょうそう)」の展示コーナーに出品されている「歳首の図」は当社彩美版®で販売しております!


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彩美版®
鈴木其一 《歳首の図(さいしゅのず)》
販売価格 90,000円+税


<仕様体裁>
原画 細見美術館(京都)所蔵
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 描表装
軸寸 天地175.3×左右47cm
箱  柾目桐箱、タトウ入り
証明 原画所蔵者の検印入り証紙を桐箱に貼付
発行 共同印刷株式会社
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

September 16, 2016

坐ることを拒否する椅子に拒否された話


 東京の青山、表参道には美術書が豊富な青山ブックセンターや、ワタリウム美術館のショップなどがある。また美術館やギャラリーもある。昨日まで続いた雨模様も今日は久方ぶりに晴れたので、青山、表参道の散策を楽しむことにした。

 先ずは表参道の路地を入った所にある「岡本太郎記念館」から始める。ここは芸術家、岡本太郎が自宅兼アトリエとして暮らしていた場所である。門を入ってすぐ横に、カフェ「a Piece of Cake」があるので人心地を付くことにする。注文したパンケーキセットは、メープルシロップ、大きめのバター、ジャム、そしてたっぷりのホイップクリームが添えられている。大きく開放的なガラス窓からは、庭の眺めが良い。ふと建物の上の方を見ると、「太陽の塔」が2階のバルコニーから庭を覗いている。

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パンケーキにはa Piece of Cakeの焼き印

 記念館の扉にある足裏の形の把手をつかんで中に入と、館内には岡本太郎の等身大の人形や、さまざまな立体、平面作品が展示されている。美術館に来たというよりは、太郎さんの家に遊びに来たという感覚である。制作に使用したアトリエが残されていて、巨大なキャンバスがいくつも棚にしまわれている。イーゼルに立てかけられた作品や、机に並べられた絵筆を見ていると、今でも岡本太郎の息づかいを感じるよう。2階の企画展「岡本太郎の沖縄」(~2016年10月30日まで)では、岡本太郎が返還前の沖縄を撮影した写真が展示されている。

 こちらの記念館の小さな庭はとても居心地がよい。うっそうと植物が茂った庭には、精霊のような不思議な作品が点在している。そして小さな広場には「坐ることを拒否する椅子」が並べてある。この椅子は座面が丸く凸型になっており、そこに目や口が凸凹と付いているので、とても落ち着いて坐れない。この椅子が坐ることを拒否することに、断固拒否して無理無理坐ってみた。立ち上がってみると、お尻が濡れている。昨日降った雨が、座面の窪みに溜まっていたようである。美術館の作品というものは、黙っておとなしく鑑賞者に見られて居るモノであるが、岡本太郎が生み出したアート達は違う。彼らも何かを仕掛けて来るから油断がならない。いい年をした大人が濡れたお尻を抱えたままでは、青山、表参道をうろつくこともままならない。始めたばかりであるが、ほうほうの体で帰途についた。



September 2, 2016

残暑お見舞い申し上げます


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 9月に入りましたがまだまだ残暑が厳しい日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。天候に左右され体調を崩しがちな陽気ですが、どうかお体をご自愛くださいませ。

 暑さで寝苦しかった夜が、ここのところ朝晩と少し冷え込み始め、鈴虫でしょうか虫の鳴き声を耳にします。蝉の鳴き声から秋の気配を感じる今日この頃でございます。

 今回は、秋の情緒が感じられる彩美版®をご紹介いたします。





彩美版®
酒井抱一 《月に兎》
販売価格 90,000円+税


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<仕様体裁>
原画 松岡美術館所蔵
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
証明 原画所蔵者検印入り証書を貼付
画寸 天地80cm×左右35cm
軸寸 天地172.9cm×左右51cm
表装 三段表装
箱  柾目桐箱、タトウ付
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




【今日の谷根千+上野界隈】

上野公園の東京都美術館では「再興第101回再興院展」東京展が開催中です。


再興第101回日本美術院展(再興院展

■会期:2016年9月1日(木)~9月16日(金)
■時間:9:30~17:30(入場は16:30まで)
    ※最終日16日の入場は13:30まで、閉会は14:30
■休館:9月5日(月)
■料金:一般900円(700円)※( )内は団体料金(10名以上)
    70歳以上の方700円
    学生以下・障害者手帳をお持ちの方と付添(1名) 無料


July 25, 2016

神楽坂界隈で川合玉堂を思う


 こんにちは。なかなか梅雨の明けない関東ですが、暑い夏はもうすぐですね。
 今週末は神楽坂のお祭りです。今年は7月27日から二日間がほおずき市、29日からの二日間が阿波踊りの日程で、毘沙門天を中心に一年のうちでも大変賑やかな数日間を迎えます。


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 ちょっと散歩に出かければ、あちこちでお祭りの準備をしており、こちらもウキウキした気分になってきます。


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 さてそんな神楽坂界隈は、かつて矢来町(やらいちょう)といえば鏑木清方 、若宮町(わかみやちょう)といえば川合玉堂のことを指し、他にも新小川町は藤田嗣治誕生の地であったりと、近代日本画の巨匠たちにもゆかりの地であったりします。
 川合玉堂は自然の中に暮らす人々の生活を数多く描き、個人的には晩年の住まいもあった奥多摩の人、というイメージが強いのですが、実は東京・牛込若宮町(現在の新宿区若宮町)に画業70年のおよそ半分以上となる40年余りも暮らしていました。
 周囲は、歌舞伎の中村吉衛門をはじめ由緒ある家が並ぶ屋敷町だったそうですが、この界隈は現在でも、賑わう神楽坂にほど近いところにありながら、大変静かな高級住宅地となっています。
 長流閣と呼ばれた玉堂邸は、東京大空襲で焼失してしまいましたが、とても立派なお屋敷だったようで、《行く春》や《紅白梅》、《彩雨》などの名作もここで描かれたのかと思うと、もし残っていれば...と残念です。

 日本画家ゆかりの神楽坂界隈、この週末はお祭りと散策にお出かけされてはいかがでしょうか。



彩美版®
川合玉堂 《三保富嶽之図》 軸装・額装
販売価格(各) 90,000円+税

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<仕様体裁>
 技 法 彩美版®
 用 紙 特製絹本
 監修及び原画所蔵 玉堂美術館
 証 明 監修者検印入り証紙を貼付
 解 説 小澤萬里子(玉堂美術館館長)
【額装】
 額 縁 赤松材使用特製木製額(国産、ハンドメイド)
 画 寸 天地28.2×左右45.2cm
 額 寸 天地44.1×左右69cm
 重 量 約2.2kg
 付属品 黄布袋、吊紐
【軸装】
 表 装 三段表装(国産、ハンドメイド)
 画 寸 天地28.4×左右45.3cm
 軸 寸 天地117.9×左右64.6cm
 収 納 柾目桐箱、タトウ入り

July 8, 2016

都心の最高峰から坂を上り下りして、トレンディーな街で日本の美を再発見した事。


 東京23区の最高峰(自然の地形で)愛宕山。その高さは約26m。その頂上にある愛宕神社は、徳川家康公の命により防火の神様として祀られたのがはじまりという。愛宕神社へは、大鳥居をくぐった先の激坂「出世の石段」を上る。江戸の昔、三代将軍徳川家光公が愛宕山の源平の梅を見て、「誰か馬に乗ってあの梅を取ってこい!」というむちゃな命令に、曲垣平九郎(まがき・へいくろう)なる家臣が、見事に馬で石段を上り下りして梅を献上したという。今も昔も上司の無理な命令に応えた部下が出世の階段を上るのは、世の常か...。

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愛宕山の「出世の石段(男坂)」は降りる方が怖い。


 この愛宕山を上り越して桜田通りへ出から、更に江戸見坂なる激坂を上る。坂が大きく曲がる所に「菊池寛実記念 智美術館(きくち・かんじつきねん ともびじゅつかん)」がある。こちらは実業家の菊池寛実のご息女で、現代陶芸コレクターの菊池智のコレクションを母体とした現代陶芸の美術館である。展示会場へはガラスの手摺り(ガラス作家・横山尚人制作)が美しい螺旋階段を下りて地下へ行く。現在開催中の展覧会は「秋山 陽 アルケーの海へ」(7月24日まで開催中 ※アルケーとは原初、根源の意味)。

 秋山陽(あきやま・よう)は現代陶芸の最先端を走り続けている作家。その陶芸作品は、土に潜む生命力引き出したような有機的な怪しさと、圧倒的な存在感がある。何か太古の生物の化石ではないかと見まがう作品は、いわゆる陶芸とはまるで思えない。また展示会場の演出もすばらしく、鑑賞者は太古の海底に眠る作品達の間を漂うに巡る。会場の積極的な演出姿勢には、美術館の陶芸作品に向ける熱い想いを感じる。美術館の1階にはフレンチ・レストラン「ヴォワ・ラクテ」(フランス語で天の川の意味)がある。瑞々しい緑の庭を見ながらいただくランチは見た目も美しい。ホタテのポワレのランチをいただく。場所柄かお客さんも上品で、自分一人浮いているか...。

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レストランの庭は緑が鮮やか。


 美術館を出て大倉集古館(2019年まで改修工事中)の脇の坂を上がって六本木一丁目駅方面へ向かう。駅の手前、旧住友麻布別邸の跡地には「泉屋博古館分館(せんおくはくこかん ぶんかん)」が建っている。こちらは住友家第15代当主で、数寄者としても知られている住友吉左衛門友純(ともいと)(号春翠)が蒐集した美術品を中心に所蔵している京都「泉屋博古館」の分館。「泉屋(いずみや)」は江戸時代の住友家の屋号である。現在開催中の、バロン住友の美的生活「数寄者住友春翠--和の美を愉しむ」(8月5日まで開催中)は、住友家の当主が集めた東洋美術の逸品が展示されている。屏風、絵巻、茶道具、陶磁器など住友当主自らの美意識で集めた品々が見られる。
 
 港区のこの辺りは外国の方も多くトレンディースポットが集まる街であるが、日本の美にも目を向けて見たら、さらにこの街を楽しむ事が出来た。



May 27, 2016

上野の春、意を決して大型展覧会へ足を運ぶ


このブログをご覧いただいている皆様も足を運ばれたでしょうか、先日会期は終了しましたが話題となった東京都美術館「生誕300年記念若冲展」へ行って参りました。

本展は東京では初めて《釈迦三尊像》と《動植綵絵》が一堂に会した注目の展覧会とあって大変な来場者数でしたが、私もお目当ての若冲作品を一目見ようと行列に参加、会場の熱気を存分に味わって参りました。

経験したことのないほどの長蛇の列にくじけそうになりながらもいよいよ入場、するとすぐさま美術品のもつ強いオーラに引き寄せられます。
じっくりと鑑賞したいところ後ろ髪を引かれながらも、今回のお目当てである1799年若冲の晩年に描かれた《百犬図》、ワンコ達のところへ直行。
日本画の有名な作品の中でも犬が描かれたものは多くありますが、こちらはなんと59匹もの犬が描かれているため見逃すわけにはいきません。犬たちがコロコロとじゃれ合っている様子の連続、犬好きにはたまらない作品です。
描かれた犬の顔は、まるで猿か猫のような、また違う生き物では?と思わせる不思議な顔つきですが、魅力は筋肉や関節、威嚇、甘えなどの行動でしょうか、確かに犬、嘘がないのです。
そして、この作品の何匹かは後ろ姿で描かれています。その可愛らしさについては犬好きな方なら共感して頂けるでしょう。
後姿が絵になるのは犬か猫くらいでは?と思ったりもします。

犬についてはさておき、これだけの人を惹きつけるパワーの一つ、色彩については他の作品に比べると落ち着いた色味ですが毛の一本ごとが緻密に描写され、白の濃淡だけをとっても驚くほどの見ごたえがありました。
若冲の作品では絵絹の裏面に施した裏彩色など効果的に技法が盛り込まれ、表情が様々描き分けられていると言われています。
遠目にもはっきりとわかる鮮やかな色の濃度やぽってりとした厚みにはやはり釘付けになってしまい、単純に色というには画家に申し訳ない気持ちにすらなります。
実は当社の「彩美版®」についても同じように、複製画が出来上がるまでにはこだわりがあります。
作品に込められた表現の意図を解釈したうえで、本金箔や本金泥を使用し、膠の質感までも追及するために、何度も校正をかさねて出来上がります。
さらに作品を活かすための額装も試作を繰り返し、完成されます。
このようにひとつひとつに妥協なくこだわり、仕上げられたものにはやはりそのものなりのオーラが宿ると思っております。
絶妙なバランスであったり、ディテールのこだわりの積み重ねが醸しだす雰囲気であり、さらに時を経ていればその分の佇まいがあります。
当社の「彩美版®」でも魅力的な佇まいをもっと感じていただけるものにし皆様にお届けしたい!日本画の画材である岩絵の具の物質的な特徴、長所も短所をもっと知りたい!
と身が引き締まった思いがした展覧会となりました。
この時期の展覧会は足が遠のいておりましたが意を決して足を運んだ甲斐がありました。



彩美版® 軸装
伊東若冲 《日出鳳凰図》

販売価格 110,000円+税


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<仕様体裁>

原画 米国・ボストン美術館所蔵
解説 河野元昭(美術史家、東京大学名誉教授)
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 三段表装(本表装)
画寸 94.0×33.0㎝
軸寸 183.0×52.5㎝
箱  柾目桐箱、タトウ付
※ご希望により額装のご注文も承ります。
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




そして、日本画で使用される岩絵具の原料、鉱石また鹿膠などに思いを巡らし国立科学博物館の鉱物コーナー、動物剥製コーナーへも立ち寄りました。
地球館の剥製コーナーは年に一度は足を運ぶ私のパワースポットです。
都会にいながらここでは生き物にしかない神秘や大きさが感じらるのでお勧めです!
またこちらのミュージアムショップにて、当社共同印刷のご近所に本社を構えるカロラータさんの、生物が本来持つ真の美しさを正しく伝えるリアルさにこだわり抜かれたぬいぐるみ、ホッキョククマを購入。動物の個性がみごとにデザインされたぬいぐるみに感服です。


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国立科学博物館の動物剥製コーナー


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カロラータさんのリアルなぬいぐるみ


■国立科学博物館 常設展
http://www.kahaku.go.jp/
※開館情報はHPをご覧ください。

April 28, 2016

日本民藝館を訪れた事及び、大きな屋敷で靴を持って歩き回った事。


 一度は訪れてみたいと思いながら、なかなか行くことのない場所が誰にでも一つ二つはあるのではないだろうか。私にとっても「東京タワー」と「日本民藝館」は正しくそれであった。しかしブログの掲載が差し迫って来た事もあり、この機に「日本民藝館」の方を訪れてみる事にした。

 東京の若者の街、渋谷から井の頭線に乗り2番目の駅の駒場東大前で降りると、ほど近いところに「日本民藝館」はある。民衆の用いる日用品の美に着目した柳宗悦(やなぎむねよし:1889〜1961年)は「民藝」という新しい美の概念の普及と、「美の生活化」を目指す活動をし、柳氏が収集した古今東西の工芸品を展示しているのがこの民藝館である。

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瓦と白い壁が美しい、日本民藝館の入り口


 この民藝館の本館の建物は柳氏自身が設計を手がけた和風意匠を基調とした特徴的な建物で、登録有形文化財にもなっている。玄関の引き戸を開け中に入ると、上がりかまちで靴を脱ぎスリッパに履き替えてチケットを買う。玄関を入った正面には2階へと続く大きな木製の階段が存在感を放っている。展示室は1階、2階にある複数の部屋に分かれている。木のぬくもりと白い壁のコントラストが美しく、階段の吹き抜けを中心に開放感のある館内はとても居心地が良い。この時点で訪問して良かったと思ってしまう。

 この度の展示は、創設80周年特別展として日本民藝館所蔵の「朝鮮工芸の美」(6月12日の日曜日まで開催)と題して、国内屈指の質と量を誇るという民藝館所蔵の朝鮮時代の工芸品(陶磁器、木工品、石仏、掛軸など様々な品)を展示している。朝鮮時代の工芸といえば白磁と漆塗木工品ぐらいのイメージしかない浅薄な私であったが、展示物の幅の広さに驚いた次第である。

 白磁に対して、ゴロッと黒い蝋石製面取薬煎(19世紀末)。草虫図(19世紀)の掛軸に描かれているのは、ハチ、チョウ、セミ、カエルなどの生き物達で、西洋のモチーフとは違った、日本と共通する小さきものに対する慈悲を感じる。変わったところでは、木製の枕(鼓のように両端が広く平らで、真中がくびれている)は、頭をのせる面が小さく(直径10cmぐらい)これでは、寝返りをうったら床に頭をぶつけてしまう。「たわし」の形も変わっており、「こけし」の様に縦に長い。朝鮮と日本の視点の違いと共通点を楽しめる展覧会であった。

 民藝館を出たすぐ近くには、旧前田家本邸洋館のある駒場公園がある。緑の樹々が多いこの都会のオアシスには日本近代文学館もあり、館内の「BUNDAN COFFEE&BEER」で食事が出来る。BUNDANの名に相応しく店内には天井にとどく書棚が並び、約2万冊の書籍があるという。こちらではメニューも作家にちなんでおり、コーヒーの品書きは「芥川」や「寺田寅彦の牛乳コーヒー」など、食事は「ハードボイルド・ワンダーランド(村上春樹)の朝食セット」や「シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイ」と遊び心が溢れている。僕は「シャーロック〜パイ」にしたよワトスン君といった体で昼食をいただく事に。

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シャーロッキアンではないが、シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイを注文

 公園の中心の建物「旧前田家本邸洋館」は、加賀百万石の第16代当主であった前田利為(まえだとしなり)侯爵の本邸として昭和4年に建てられた。建物はイギリスのチューダー様式で、地下1階、地上2階、延床面積約2,930平方メートルという豪邸である。隣には連絡通路で行き来できる和館もある。入場無料との事なので洋館を見学する。まずは玄関(といっても私のアパートの延床面積の約半分ぐらいある)で靴を脱いでスリッパに履き替え(今日はやたらに靴を脱ぐ日である。この後、和館を訪れた際も靴を脱ぐのであった。)、靴は設置してあるビニール袋に入れて持ち歩く。

 この館とにかく部屋数が多い。食堂が大小2部屋、サロン、書斎、家族の各部屋の他に、女中室が4部屋と女中溜、小使室、従者室、執事室が1部屋ずつある。その他の部屋も合わせると30以上にもなる。静かな館内を散策していると、どこからか「ネコふんじゃった」のぎこちなさのあるピアノのメロディーが聞こえてくる。館内をぐるぐる回っていると方向感覚も危うくなる。それにしても、人のほとんど居ない大きなお屋敷の中を部屋から部屋へと靴を持って歩き回っている自分の姿に、どろぼうになった様な気持ちになるのであった。


April 15, 2016

【新作】 クロード・モネ 《ヴェトゥイユのモネの庭》


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
 陽気が暖かくなってきましたね。先日は小雨がぱらついたり空模様はスッキリしませんでしたが、桜の満開の時期を迎え各方面賑わっているのではないでしょうか。小石川界隈はハナミズキが咲きだし、桜の花ばなの間からは青々とした葉が垣間見え、初夏の気配が感じられます。

 さて本日ご紹介する彩美版®は、今年没後90年を迎えたクロード・モネの名作「ヴェトゥイユのモネの庭」です。
 モネ一家が住む家を背景に青く澄んだ空の下、道を挟んでセーヌ川へと下る斜面に設けられた庭には、佇む子供たちの背丈をこえた向日葵が陽の光を浴び咲き誇っています。眩しい日差しが全て輝かせ、光の色彩を愛する画家の世界を感じられます。

 制作にあたり、三菱一号館美術館の高橋明也館長に、監修と解説を頂戴いたしました。





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彩美版®
クロード・モネ 《ヴェトゥイユのモネの庭》

限定 200部
価格 115,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り 
画寸 52.2×42㎝
額寸 65.4×55.2cm
重量 2.9kg
額縁 木製デコレーション金箔額
原画 ワシントン・ナショナル・ギャラリー(National Gallery of Art, Washington D.C.)所蔵
監修・解説 高橋明也(三菱一号館美術館館長)
発行 共同印刷株式会社




 こちらもモネの代表作として世界的に名高い傑作です。
 モネの「睡蓮」連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈された記念碑的な作品であり、平和を象徴する歴史的価値ある大作です。収蔵先のオランジュリー美術館は「睡蓮」連作大装飾画のために創設された≪印象派の殿堂≫と呼ばれています。
 《睡蓮、水のエチュード-雲》は、睡蓮と朝焼けの水面に映える雲の情景が、微妙なニュアンスに富む青、緑、紫、白、赤などが入り交る、モネならではの彩りの世界で描かれた作品です。本作品は第一室に飾られた「雲」の全画面より作品のハイライト部を、フランス国立美術館連合・グランパレ(RMN‐GP)の画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。

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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom


彩美版®
クロード・モネ 《睡蓮、水のエチュード-雲》
限定 200部
価格 128,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
画寸 28.3×91㎝
額寸 38.2×100.8cm
重量 3.3kg
額縁 特製木製デコレーション金箔額
原画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監修・解説 千足 伸行(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)
発行 共同印刷株式会社




【今日の谷根千】

◇文京区立森鴎外記念館
特別展
「私がわたしであること ―森家の女性たち 喜美子、志げ、茉莉、杏奴―」

会期:2016年4月9日(土)~6月26日(日)
※会期中の休館日:5月24日(火)
開館時間:10時~18時(最終入館17時半)
※6月の金曜日は20時まで開館(最終入館19時半)
観覧料:一般500円(20名以上の団体:400円)
※中学生以下、障がい者手帳ご提示の方と同伴者1名まで無料

文京区立森鴎外記念館
東京都文京区千駄木1-23-4
電話 03-3824-5511


◇根津神社
文京つつじ祭り
第47回 平成28年4月9日(土)~5月5日(木)
境内にある約2,000坪のつつじ苑には約100種3,000株のツツジが咲き誇り、甘酒茶屋、植木市、露店等もたくさん並びます。


根津神社
〒113-0031東京都文京区根津1-28-9
tel 03-3822-0753(9:00~17:00)

April 8, 2016

満開の桜と四季の花々~小石川植物園より~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。
 春麗らかに、弊社近隣の桜並木(播磨坂)では今年も「文京区さくらまつり」が開催され、多くの人で賑わっています。実は、文京区小石川の弊社近隣にはもう一つ大きな自然公園があることはご存知でしょうか。今回は『小石川植物園』をご紹介いたします。

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 通称『小石川植物園』と呼ばれ親しまれているこの施設は、正式名称を『東京大学大学院理学系研究科付属植物園』、すなわち東京大学が植物学に関する様々な研究・教育を行っている教育学習施設です。この植物園は日本で最も古い植物園であるだけでなく、世界でも有数の歴史を持つ植物園のひとつです。

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 面積は161,588㎡(48,880坪)で、台地、傾斜地、低地、泉水地などの地形を利用して様々な植物が配置されており、植物標本は約70万点、また植物学関連図書は約2万冊あり、内外から多くの植物研究者に活用されています。

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 6年ほど前(2010年7月)、"世界最大の花"を咲かせるというサトイモ科の植物「ショクダイオオコンニャク」が開花したことも話題となりました。直径約1メートル×高さ1.5メートルのその花は子供が両手で抱えきれないほどの大きさで、インドネシア・スマトラ島で絶滅危惧種に指定されているほど貴重な植物。1993年に種をまいて17年目に開花するという素晴らしい成果が印象に残っています。

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 長い歴史を物語る数多くの由緒ある植物たち。美しい四季の移ろいを感じ取ることができる小石川植物園へぜひ足をお運びください。



【小石川植物園

約320年前の貞享元年(1684年)に徳川幕府が設けた「小石川御薬園(こいしかわおやくえん)」がこの植物園の遠い前身で、明治10年、東京大学が設立された直後に付属植物園となり一般にも公開されてきました。

住 所  東京都文京区白山3丁目7番1号
開 園  10:30~16:30(入園は16:00まで)
料 金   一般:400円、小中学生:130円、その他、団体割引有。
休 園  年末年始、月曜日(月曜が祝日の場合はその翌日)   
交 通  都営三田線「白山駅」より徒歩約7分
     東京メトロ南北線「本駒込駅」より徒歩約13分
     東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」より徒歩約15分


March 25, 2016

安田靫彦展(東京国立近代美術館)

 
 20160325sakuramatsuri.jpg いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。春本番を迎え、東京ではいよいよ桜も芽吹き始めました。今年は各地で平年より早く桜が開花しているとのことですが、皆さまのお住まいの地ではいかがでしょうか。

 共同印刷とは目と鼻の先の桜の名所、文京区播磨坂の桜も来週には満開の時期を迎えます。普段はひと気の少ない閑静な並木道も、この時期には多くの方が桜見物にいらっしゃいます。坂道に点在する素敵なレストランで美味しい食事を召し上がり、春の行楽を満喫なさるのはいかがですか。都内有数の名勝・小石川植物園もすぐ傍です。お近くまでいらした時はぜひ足をお運び下さい。最寄駅は丸の内線の茗荷谷駅です。





20160325yukihiko_ex.jpg さて、東京・竹橋の東京国立近代美術館では23日より日本画家、安田靫彦(1884-1978)の回顧展が開催されております。靫彦は歴史画家の第一人者として、近代日本画の興隆と発展に重要な足跡を残しました。その偉大な功績を称え昭和48年(1973年)には文化勲章を受章、東京藝術大学教授や日本美術院理事長の要職を務め、良寛の研究者としても活躍しました。

 明るく澄んだ色彩と簡潔な構図、巧緻な鉄描線はまさに名人芸。時代考証も綿密なその作品は、主題となった歴史人物への共感に溢れています。展示の六曲屏風『黄瀬川の陣』(重要文化財)や名作『飛鳥の春の額田王』を実際この目にし、今回特に深い感銘を受けました。

 100点を超える画家の代表作が揃う本展覧会は、靫彦芸術の真髄に触れる絶好の機会です。東京展のみの開催となるこの貴重な展覧会に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。



【安田靫彦展について】

会場 東京国立近代美術館
会期 3月23日(水)より5月15日(日)まで (月曜休館、3/28・4/4・5/2は開館)
時間 10:00~17:00 (金曜日は20時まで)




 当社では、上記「安田靫彦展」に出品の《梅花定窯瓶》と《花の酔》を含む靫彦作品の彩美版®をお取扱いしております。全て令息安田建一氏が監修されました。カタログを用意しておりますので、ご興味のあるお客さまはどうぞご遠慮なくお申し付け下さい。


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安田靫彦 《梅花定窯瓶 ばいかていようへい
軸装・額装
販売価格 (各) 本体120,000円+税

<仕様体裁>
原画 豊田市美術館所蔵 ※「安田靫彦展」に出品(展示期間3/23~4/17)
監修 安田建一
解説 豊田市美術館
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 300部
用紙 特漉和紙
画寸 天地46.0×左右39.0センチ
軸寸 天地140.0×左右58.7㎝
額寸 天地64.2×左右57.5㎝
発行 共同印刷株式会社




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安田靫彦 《花の酔》
軸装
販売価格 本体150,000円+税

<仕様体裁>
原画 宮城県美術館所蔵 ※「安田靫彦展」に出品(展示期間3/23~4/17)
監修 安田建一
解説 庄司淳一(宮城県美術館学芸員)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 200部
用紙 代用絹本
画寸 天地80.0×左右32.0㎝
軸寸 天地173.0×左右49.0㎝
発行 共同印刷株式会社




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安田靫彦 《菖蒲》
軸装・額装
販売価格 (各) 本体120,000円+税

<仕様体裁>
原画 古川美術館所蔵
監修 安田建一
解説 草薙奈津子(平塚市美術館館長)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 300部
用紙 特漉和紙
画寸 天地39.6×左右52.6㎝
軸寸 天地133.0×左右69.5㎝
額寸 天地60.2×左右73.3㎝
発行 共同印刷株式会社


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

March 18, 2016

女子力UP!の展覧会「PARISオートクチュール展」


 こんにちは。今週は三菱一号館美術館で開催中の「PARISオートクチュール展」に行ってまいりました。

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三菱一号館美術館入口


 「オート・クチュール」とは19世紀のパリで誕生した、顧客の注文に合わせてデザイナー主導で仕立てる高級服のことです。展覧会では、時代の変遷に合わせてシャネル、ディオール、バレンシアガ、ゴルチエ等、誰もが一度は耳にしたことのある高級メゾンのデザイナーによる芸術ともいうべき素晴らしい手仕事の数々を見ることができます。

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スケッチ


 様々な素材を使用し、複雑で、時に究極にシンプルに仕立てられたドレスや洋服の作品群や、クチュリエたちの手を写した写真などから、デザイナーの溢れ出る感性と、時に鋭く訴えかけてくるものを感じることができた展覧会でした。

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ゴルチエ

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シャネル


 来場者はほぼ100%女性。国籍問わず多数の来場者で賑わっており、年配の方から若い女性までみなさん、華やかなドレスにため息をついたり、自分が若かりし頃の時代の流行を思い起こして同行者とお話したり、凝ったドレスに目をこらしたりながら、作品に見入っている様子が印象的でした。

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美術館中庭


 出口の特設ショップにいたるまで、老いも若きも女子の心をグッとつかむファッションの世界に連れて行ってくれる展覧会です。もちろん男性の方々もぜひ。三菱一号館美術館のある丸の内界隈はファッションに感度の高いお店が揃う街でもあるので、展覧会帰りにショッピングも楽しいかもしれませんね。



【PARIS オートクチュール ―世界に一つだけの服】

 会 場  三菱一号館美術館
      東京都千代田区丸の内2-6-2
      電話 03-5777-8600

 会 期  2016年3月4日(金)から5月22日(日)まで

 休 館  月曜 但し、祝日及び5月2日、5月16日は開館

 開館時間 10:00~18:00 祝日を除く金曜及び会期最終週の平日は20時まで
      ※入館は閉館30分前まで

 入場料(当日券) 一般1,700円、高校・大学生1,000円、小・中学生500円
      ※3月15日~31日学生無料ウィーク


March 4, 2016

童画に込めた巨匠達の想いと、東京都板橋区赤塚を散策した事について


 東京をほぼ南北に走る都営地下鉄三田線は地下鉄といいながら、志村坂上駅より北上すると地上に出て高架線を走り、終点の西高島平駅に着く。よって地下鉄の車両はどこから入れるのだろう?と考え込まなくても良い。この辺りは昭和40年代に建てられたマンモス団地「高島平団地」で知られている。団地の総戸数は1万を越えるという。

 さて西高島平駅から南西方向に十数分歩くと「板橋区立美術館」がある。美術館は赤塚城本丸跡の公園内にあり、訪れた時は紅白の梅の花が咲き始めていた。こちらでは3月27日まで「描かれた大正モダン・キッズ 婦人之友社『子供之友』原画展」が開催されている。「子供之友」は幼児から小学生向けの生活教育雑誌として「婦人之友」の創業者、羽二とも子、吉一が1914年(大正3年)に創刊し、1943年(昭和18年)の休刊までの30年間発行された。本誌は創刊より絵画主任を務めた北澤楽天や、竹久夢二、武井武雄、村山知義などの第一線の芸術家達の作品を発表し続けた、芸術性の高い雑誌である。展示は作家ごとにまとめられており、貴重な原画が展示されている。いわゆる絵画作品とは違い、印刷原稿として描き起こされたものなので、絵の回りには引き出し線で「色は思ひきつて 鮮やかに」などの指定が残っている。こういう肉筆の指示を見ると版下原稿入稿世代の印刷マンとしては懐かしくてじんと来る。

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梅の花咲く美術館入り口

 挿絵のスタイルの変遷も芸術表現の移り変わりと重なっており、創刊始めの北澤楽天の描いたサンタクロースは正しく白ひげの仙人のようで恐ろしいが、竹久夢二の作品は夢二調の細やかで繊細な線と淡い色彩で、はかなげである。時代は下って、ベルリン留学を経て当時の前衛芸術活動をリードした村山知義はシンプルな線と面で構成されたモダンな表現をしている。「童画」という言葉を創出した武井武雄は、東京美術学校(現東京芸術大学)を出た後、自活するための仕事として雑誌の挿絵制作を始めたが、彼の作品は均一の太さの線で、木や葉を装飾的に描いている。本展示作品の私のお気に入りは、村山知義の「リボンときつねとごむまりと月」である。シルクハットを被りタキシードを着た三日月と、リボンとごむまりの三人がステーキを食べているテーブルの奥に、きつねの一行がお土産を持って遠ざかっているという何ともかわいく、シュールで稲垣足穂と宮沢賢治を混ぜたような大正モダニズムアートである。その他、岡鹿之助や安井曾太郎が自らの絵の解説を書いていたり、マティスの作品を掲載したりと、「子供之友」は子供向けとは思えないほどの本物の芸術志向であった。

 なお、「板橋区立美術館」の男子トイレにはマルセル・デュシャンの「泉」がある。といってもそれは中国人アーティストの牛波氏の「泉水」という作品で、かつてデュシャンが既製品の便器をそのまま美術品として提示したが、それをまたもとの使用できる便器として再提示した作品である。この作品は壁に付いた鏡により真上からそのフォルムを見る事が出来る(用を足しながらも見られる...)。

 さて美術館を出て東武東上線の下赤塚方面へ続く「東京大仏通り」をしばらく行って脇道に入ると乗蓮寺というお寺に出る。徳川家康より10石の朱印地を拝領したという由緒あるこのお寺には正しく「東京大仏」という高さ13m、重さ32トンの青銅で出来た巨大な大仏(阿弥陀如来)が建立されている。全体的につやつやと黒光りして、シャープな身体の線のスマートな大仏様である。境内には他にも「旧藤堂家染井屋敷石造物」という不思議な石造が配置されている。これら天邪鬼石造、婆々石造、大黒石造などの姿からは、歴史と信仰を感じさせてくれる。

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青空とスマートな大仏様

 お寺を出て、更に脇道を進んだ二股の付け根に「板橋区立赤塚植物園」がある。入園はただのようなので入ってみる。広さは約1ヘクタールと、それほど大きくはないが、起伏のある丘陵地をうまく生かした造りになっている。この植物園に入ってまず目を引くのは白い樹皮が美しい「ユーカリ」の巨木である。その高さは管理舎の屋根を遥かに越える。「ユーカリ」がこんなにも大きくなるとは知らなかった。今の季節園内では「フクジュソウ」や「スノードロップ」が咲いている。「フクジュソウ」が群生して黄色い花を咲かせている可憐な姿に春の訪れを感じた一日であった。




 今回は童画の展覧会を訪れたが、童画といえば東山魁夷も「コドモノクニ」などの雑誌に童画を描いていた時期がありました。日本画の巨匠として崇高な自然風景の作品を数多く描いた東山魁夷ですが、心温まり童心のある作品も描いています。この度ご紹介する「金太郎」も正しくそのような作品です。大きな熊にまたがり、斧を持った小さな金太郎。でもその表情は口元も眉もきりっとして、しっかりとした眼差しを向けています。彩美版®プレミアムの美しい額装は、和室にも洋室にもマッチします。絵画としての美しさばかりでなく、お子様の健やかなご成長を願ってお部屋にお飾りください。


東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《金太郎》
販売価格 180,000円+税


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<仕様体裁>
限定: 500部
技法: 彩美版®プレミアム
証明: 著作権者承認印、限定番号入り証書を額裏に貼付け
額装: 特注木製額ハンドメイド浮き出し加工
画寸: 33.3×30.0cm
額寸: 48.5×45.0×4.0cm
重量: 約2.6kg
発行: 共同印刷株式会社

February 19, 2016

春一番


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
 立春を迎え路地の水仙や梅の花が目に留まり春の気配を感じますが、まだまだ寒さが厳しく厚手のコートや手袋が手放せません。その寒さから一変、先週末東京都心は3月~5月中旬並みの陽気となり春一番の観測がされました。急な陽気の変化に驚かされますが、体調を崩さないよう皆様ご自愛くださいませ。

 そんな春の陽気に誘われ、荒川の土手沿いから散策し西新井大師へ行って参りました。境内には梅が見ごろを迎え、都内ではめずらしい寒桜が咲き誇っていました。頬にうける風はまだヒンヤリと冷たいですが、春の訪れを感じました。


【西新井大師】
〒123-0841 東京都足立区西新井1丁目15-1
03-3890-2345(代)受付・電話対応時間 9:00~16:30


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 さて今回は、当社「彩美版®」から春の訪れを感じさせる作品3点をご紹介いたします。お求め、お問い合わせは、こちらの当社代理店までどうぞ!


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前田青邨 《 紅白梅 》
販売価格(額・軸) 各190,000円+税



 淡く下地に金泥を刷いた画面に、琳派に由来する垂らし込みの技法で、華やかな紅白梅が描かれています。リズミカルにデザイン化された幹と枝は、光琳の紅白梅図屏風を連想させます。よく観ると濃い紅色、淡い紅色、白色と異なる色の花を咲かせた三本の樹々が、あたかも家族のように互いを抱きあいながら、複雑に絡み上方へと伸びています。香り高い梅の花が一面に咲きこぼれ、上品で華やかな青邨独特の画面をつくりあげています。



<仕様体裁>
■基本情報
監修: 平山郁夫
原画: 公益財団法人石橋財団 石橋美術館 所蔵
解説: 石橋美術館
技法: 彩美版(R)・シルクスクリーン
用紙: 和紙
限定: 300部
証明: 著作権者承認印入り奥付及び所蔵者承認印入り証紙を貼付
■額装仕様
画寸: 天地43.9×左右60.3cm
額寸: 天地65.5×左右81.9cm
重量: 約5.8kg
額縁: 木製金泥仕上げ特製額(ハンドメイド、国産)
※この作品は掛軸もございます。



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安田靫彦 《 梅花定窯瓶(ばいかていようへい) 》
販売価格(額・軸) 各120,000円 +税



 赤い壁を背景に置かれた白い壺に、紅白の梅の枝が活けられています。
 梅は靫彦が最も愛した花と言われます。壺(瓶)は中国・宋時代を代表する定窯の白磁です。あたたか味のある乳白色の釉に特徴があります。
 色彩、構図とも一見さりげない感じながら緻密に計算されており、明快で絶妙な調和をもたらしています。気品高く深い精神性を感じる靫彦芸術が、この一作に凝縮されています。



<仕様体裁>
■基本情報
監修: 安田建一
原画: 豊田市美術館 所蔵
解説: 豊田市美術館
技法: 彩美版®・シルクスクリーン
用紙: 和紙
限定: 300部
証明: 著作権者承認印入り奥付を貼付
■額装仕様
額縁: 木製白茶仕上げ特製額(ハンドメイド、国産)
画寸: 天地45.3cm×左右38.6cm(8号)
額寸: 天地64.2cm×左右57.5cm
重量: 約3.7kg
※この作品は掛軸もございます。




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小倉遊亀 《 梅 》
販売価格 190,000円 +税

※この作品は額装仕様のみです。


 金箔を背景に鮮やかな絵付け文様の古壺に紅白の梅の枝が活けられています。華麗な色彩で構成された小倉画伯独特の画風が眼に鮮やかです。画中から春を告げる芳しい香りが漂ってくるかのようです。
 壺は(古赤絵酒次)は小倉画伯が愛蔵した磁器で、中国・明代に景徳鎮の窯で製作されたものです。上絵付けの技法で赤を主体に緑や黄色で華やかな模様が描かれており、わが国では「古赤絵」と呼ばれています。



<仕様体裁>
■基本情報
監修: 有限会社 鉄樹
解説: 谷岡 清(美術評論家)
技法: 彩美版®・シルクスクリーン、本金箔使用
用紙: 版画用紙(かきた)
限定: 200部
証明: 著作権者承認印を画面左下部と奥付に押印
■額装仕様
額縁: 木製金泥仕上げ特製額(ハンドメイド、国産)
画寸: 天地41.0cm×左右28.5cm(6号)
額寸: 天地59.0cm×左右46.5cm
重量: 約2.4kg


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


February 12, 2016

日本の中心、日本橋(にほんばし)


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。今回のテーマは「日本橋」です。


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 「日本橋(にほんばし)」は、東京都中央区に流れる「日本橋川」に架かる石造りの橋で、この地域の地名でもあります。江戸時代から「五街道(東海道、日光街道、奥州街道、中山道、甲州街道)」の起点として、郵便や銀行の発祥の地として、世界屈指の繁華街として日本の中心を担ってきました。


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 橋中央部の青銅製の街路灯には、幻獣「麒麟(きりん)」が鎮座しています。「麒麟」は神話に現れる伝説上の四霊獣(「応龍」「麒麟」「鳳凰」「霊亀」)のひとつ。平和を象徴する四霊獣の中でも【信義】を意味することから「日本橋」にふさわしいモチーフとして選ばれたとされています。厳つい顔なのに実はとても心の優しい生き物であるとされる麒麟。凛として、まるで東京の守護神のような出で立ちが印象的です。一方で、橋の両端にある「獅子像」は、奈良県の手向山八幡宮にある狛犬などを参考にして製作されたそうです。


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 橋の寿命は1,000年と言われていますが、震災や空襲などにより幾度となく架け替えを余儀なくされ、現在の橋は19代目、明治44年(1911年)に開橋したものです。平成11年(1999年)には国の重要文化財(建造物)にも指定されました。しかし、高度成長期、昭和39年(1964年)の東京オリンピックの開催にあわせて首都高速道路が作られたことで、街のシンボルである「日本橋」の上空が覆われたままになっており、都市景観の在り方を含めた多くの議論を抱えているという実情もあるようです。

 そんな中、平成16年(2004年)、旧東急日本橋店の跡地に新しい商業施設「COREDO日本橋(日本橋一丁目ビルディング)」がオープン。また都内の川を結ぶ"水の道"プロジェクトとして平成23年(2011年)にはかつての舟運都市を彷彿とさせる「船着場」が完成しました。近い将来、日本橋はかつての景観と賑わいを取り戻し、昔から引き継がれる「伝統」と、新しい魅力で未来を切り開く「革新」が共存する街として、世界中から多くの人々が訪れる街になることでしょう。

 2020年の東京オリンピックへ向け、名実ともに世界への懸け橋になることを望みます。

January 8, 2016

桜と目黒川と個性的なお店の事

 あけましておめでとうございます。本年も美術趣味をご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。読者の皆様には、良きごエン(猿)に恵まれ、災いがサル(猿)年でありますよう心よりお祈り申し上げます。

 さて、本年の第一回目のブログは、少々早いようですが春にまつわる花の絵から始めたいと存じます。新年早々何を浮かれているのかとご叱責を賜るかもしれませんが「冬来たりなば春遠からじ」と申します通り、今の寒さの先には春の喜びが待っております。

 東京の南側に世田谷区、目黒区、品川区を流れ、東京湾に注ぐ目黒川があります。目黒川沿いには個性的でオシャレなお店が並び、若者のデートスポットとしても有名です。また中目黒駅周辺の川沿いにはソメイヨシノが植えられており、春になると桜祭りが開催されるなど多くの人でにぎわいます。人が多いところが苦手な私は、まだ閑散としている冬の間にこの川を訪れる事にしました。

 中目黒駅から歩いてほど近い場所に、「郷(さと)さくら美術館 東京」がございます。この美術館は桜を描いた作品の常設展示室を設けて「いつでも桜が見られる美術館」として多くの方に親しまれています。また外観がとてもユニークな建物で(2012年グッドデザイン賞受賞)、ぱっと見は真っ黒な箱の様にに見えますが、近寄って良く見ると外壁のパネル一枚一枚が桜をモチーフにした模様にくり貫かれています。こちらの美術館では特別展「中島千波の世界」※が開催されています。中島千波画伯といえば、「桜の千波」と評されているほど桜の絵の大家です。

 まず美術館に入って驚くのは、一階のフロアにぐるりと並べられた大画面の桜の屏風です。まばゆい金の明るさの「素桜神社の神代櫻」や2015年に完成させたばかりの「石部の櫻」などの四曲一隻の屏風が5点、堂々と展示され日本各地の桜の巨樹を居ながらにして鑑賞できる様は、まさに桜花爛漫、春到来なのであります。個人的には薄暗い背景に、ほのかに桜の花が輝いている「樹霊淡墨櫻」がとても好きです。作品の解説には千波画伯の言葉と、描かれた花についてわかり易く書かれており、より作品を知る事が出来て楽しめます。この展覧会では1〜3階のフロアごとにテーマが分けられ、「おもちゃ」シリーズや「人物」など、中島画伯の幅広い画業に触れる事が出来ます。各階へはエレベータで移動でき、外光の差し込む明るいトイレ、適度な展示スペースなど、とても居心地が良く鑑賞疲れもありません。郷さくら美術館は福島県郡山市にもあり、そちらの方が先に開館いたしました。そちらの美術館へも是非、訪れてみたいものです。

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郷さくら美術館のアーティスティックな黒い外壁


 さて絵画鑑賞の後は、目黒川沿いを散策する事にします。個性的なショップが並ぶこの界隈でも特に楽しいお店がColobockle(コロボックル)さん。昔ながらの一軒家を改装した店内には、絵本作家の立本倫子さんのハンドメイド感たっぷりの絵本や文具が並びます。立本さんが作り出す、不思議で楽しいキャラクターが描かれた品々はどれも欲しくて迷います。目黒川沿いを池尻方向へ進んで行くと、西郷山公園近くの川沿いに昨年の11月に開店したばかりのチョコレートショップ「green bean to bar chocolate」(グリーン ビーン トゥ バー チョコレート)があります。ブルーの外壁にヨーロピアンな外装。ここはカカオ豆からチョコレートになるまでの全行程をお店に併設されたファクトリーで行っているこだわりのチョコレート専門店。カカオ豆と砂糖の2つの材料で作られるチョコレートバー。アニスの香りのガナッシュなどの各種ボンボンショコラ。マダガスカル産カカオ豆を材料にしたカカオティーといったちょっと変わったものも売っています。店内でチョコレートドリンクを飲む事も出来るので、散策に疲れたら一休みにももってこい。

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カカオティーとボンボンショコラ



 最後にお勧めしたいのは、国道246の陸橋脇にある「一般財団法人 日本地図センター」。こちらのビルの1階には様々な地図が売っているので地図好きにはたまらない所である。私も以前「デジタル標高地形図 東京都区部」と「デジタル標高地形図用3Dメガネ(紙製103円税込)」を購入した事がある。帰宅したら早速、今日の行程を3Dメガネをかけて標高地図で見てみよう。西渋谷台地と目黒川との高低差約20mもの崖線がクキッリと浮かび上がってくる事であろう。

※ 郷さくら美術館 特別展「中島千波の世界」 開催中〜2月28日(日)まで。場所、休館日などは美術館の情報をご覧ください。



【中島千波画伯版画のご紹介】

当代随一の人気画家として知られる中島千波画伯が、京都・東山にある高台寺の桜樹を描いた作品です。
高台寺は豊臣秀吉の妻ねね(北政所)が秀吉の菩提を弔うために創建した名刹ですが、古くから桜の名所として知られています。独特の華やかで妖艶な世界をお楽しみください。




リトグラフ版画
中島千波 《春日和》
販売価格 320,000円+税


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<仕様体裁>
作者直筆サイン、落款印入り
限定:200部
技法:リトグラフ
用紙:ベランアルシュ
版・色数:32版32色
額縁:特製木製額金泥仕上げ・アクリル付き
画寸:41.0×53.0cm
額寸:64.0×75.5cm
重量:約3.8kg
発行:共同印刷株式会社

December 25, 2015

年の瀬の風物詩~上野アメ横


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。今年も残すところわずかとなってきました。皆様は年越しに向けての準備はいかがでしょうか。東京の年の瀬の風物詩と言えば、「アメ横」を思い浮かべる方は多いでしょう。何気に当社前のバス停から直通で、上野公園行きのバスに乗ればあっという間の所にあります。と言う訳で、私は年末の雰囲気を味わいにアメ横へ行って参りました。

 「アメ横」は戦後の闇市から始まった、長さ400mの商店街です。名称の由来として、当時から様々な物品が売られ、特に飴を売り捌く店が200軒以上あった。またアメリカ進駐軍の放出物資を売る店も多かったことから「アメヤ横丁」と呼ばれ、さらに「アメ横」と略称されることが多くなったと言われているそうです。


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 さて当日は入り口付近ではさほど混雑しておらず、拍子抜けしたのも束の間。奥に進むにつれて混雑具合が増し、生鮮売り場の並ぶたたき売りの声が飛び交う辺りは、かなり混雑していました。魚屋さんの威勢の良いダミ声を聞くと、アメ横にいることを実感します。そして今年は「爆買い」が流行語になるなど外国人観光客の買い物の様子がニュースになっていましたが、アメ横でも外国人の方々がたくさん買い物をしている姿が目につきました。また最近は中国韓国系のお店が増えて、よりアジア色が強くなったような気もします。


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 買い物に夢中になっていると見落としがちですが、商店街の一角に「魔利支天 徳大寺」という 江戸時代から続いている歴史あるお寺があります。 活気ある商店街にいるとは思えないほど静かな場所です。ここのお寺は厄を除いて、運を開く守護神だそうです。買い物の合間のひと時、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。年末最後のお買い物はアメ横へ。活気ある雰囲気を楽しみに訪れてみて下さい。

 それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。

December 18, 2015

【新作】 小倉遊亀《爛漫(らんまん)》のご案内


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。12月も半ばに入りそろそろ年末・年越しの季節になってまいりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。外気がポカポカとして10月や11月の様な陽気で冬らしくない日が続きますが、それでも朝晩は冷え込むこの季節、体調を崩しがちになるかと思います。どうぞ皆様、体をご自愛くださいませ。


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 弊社界隈に隣接する小石川植物園内は、この暖かい陽気のせいか色づいた草花が12月でも紅葉を満喫する事ができます。正門から鮮やかな黄色い葉が眩しいイチョウの木。並木道を抜けると紅く艶やかな葉を茂らせたメグスリノキの木が目に留まります。園内は紅葉を楽しんで散策している方も多く、散り積もった落ち葉を踏みながら楽しそうに歩いている親子もいて心和みます。

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20151218komiti.jpg 【小石川植物園のご案内】

正式名称 東京大学大学院理学系研究科付属植物園
     ※国指定名勝及び史跡
所在地  東京都文京区白山3丁目7番1号
電 話  03-3814-0138
FAX  03-3814-0139
入園料  大人(高校生以上)400円
小人(中学生、小学生)130円
開園期間 1月4日~12月28日
休園日  月曜(月曜が祝日の場合はその翌日
月曜から連休の場合は最後の祝日の翌日が休園日)
開園時間 午前9時~午後4時30分(但し入園は午後4時まで)
アクセス ・都営地下鉄三田線 白山駅下車 A1出口 徒歩約10分
     ・東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅下車 出入口1 徒歩約15分
     ・都営バス(上60)大塚駅~上野公園線 白山2丁目下車 徒歩約3分



 さて弊社ではこの度、小倉遊亀《爛漫(らんまん)》の彩美版®を販売開始いたします。この作品は、小倉遊亀の母校の奈良女子大学の講堂の緞帳原画として描かれたました。奈良女子大学の五階から見た若草山の山並みを背景に満開に咲き誇る巨木の桜が描かれ、左の上手に東大寺、右下手に興福寺の五重塔が見え、春の奈良の情景が伺えます。
画面いっぱいに咲きほこる桜は力強く、桜の華やかさと共に凛とした美しさと清さに溢れ画家の思いが込められています。その原画の持つ微妙なニュアンスや画家の筆遣いといった絵の鼓動を当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。是非お手元でお楽しみください。

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彩美版®
小倉遊亀 《 爛漫 》

販売価格 200,000円+税
限定250部発行


<仕様体裁>
原 画 国立大学法人 奈良女子大学(京都国立近代美術館寄託)
監 修 有限会社 鉄樹
解 説 柳原正樹(京都国立近代美術館館長)
限 定 250部
技 法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
用 紙 版画用紙(かきた)
額 縁 特注木製シルバー仕上げ、アクリル付き
証 明 著作権者承認印を奥付と画面左下部に押印
画 寸 天地28.4×左右68.0㎝(15号大)
額 寸 天地48.6×左右88.2㎝
重 量 4.3㎏
発 行 共同印刷株式会社

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


December 11, 2015

墨東の過去・現在・未来-永井荷風と藤牧義夫の視線


 「墨東」と呼ばれる隅田川の東側の地域、すなわち東京スカイツリーが聳える向島や本所・深川には江戸時代以来の運河がいく筋も流れ、そのこには大正末から昭和の初めにかけての震災復興事業で架けられたモダニズム様式による鋼鉄の橋が数多く残っています。

20151211sumidaandskytree.JPG 近未来的な超高層建築の代表とでも言うべき聳え立つ東京スカイツリーを背景として、下町が醸す江戸の残り香と鋼鉄の橋が映すモダン都市東京の残影が重なり合うこの地は、過去・現在・未来が溶け合った独特の風情を漂わせています。多くの芸術家がこの地に魅せられ、作品のモチーフとしました。

 例えば、東京小石川に生まれ育った「墨東奇譚」や「すみだ川」などの小説で知られる作家永井荷風(1879~1959)は、作品を通じて、失われゆく江戸の名残の欠片をひとつひとつ慈しむように拾い集めました。この地をモチーフにした随筆、「深川の散歩」、「元八まん」等では、新しい鋼鉄の橋が次々と架けられ、コンクリートの道路が作られるなど急速に江戸の風情を失いながらモダン都市へと変貌を遂げる東京を描きとどめました。当時五十代半ばであった荷風は、過去・現在・未来を重ね合わせ、その幻視を作品に描き留めた、過去へ向かう時の旅人だったのでしょう。

 一方、昭和初期の画壇に彗星のごとく現れ忽然と消えた天才的版画家、藤牧義夫(1911~1935失踪)もこの地に魅せられた芸術家の一人です。群馬県館林に生まれ育った藤牧は、十六歳で上京しデザイン会社に勤務する傍ら、表現主義的作風の版画作品で画壇に鮮烈な印象を与えました。1935年、弱冠二十四歳で失踪した彼の画業は四十年余り後、画廊「かんらん舎」の大谷芳久氏により再発掘されるまでほぼ忘れ去られていました。活動期間が極めて短いこともあり現存作品はわずかです。

20151211shirahige_bridge.JPG 私がその中で特に注目している作品が「絵巻隅田川」です。奇しくもこの作品は、荷風が随筆「深川の散歩」や「元八まん」を執筆したのと同じ昭和9年(1934)に描かれました。細い墨線による「白描」と呼ばれる技法を用い、白鬚橋から相生橋にかけての隅田川両岸の景色(注)を細部に至るまで克明に描写していますが、一見して見たままをただ写したように見えながら、映画の撮影技法にヒントを得たと思われる驚くべき奇想が隠されています。二十三歳の若き天才画家が胸に秘めた、情熱の火照りを今なお宿すこの絵巻は、一瞬にして私の魂を鷲掴みにしてしまいました。

20151211kiyosu_bridge.JPG 絵巻の冒頭に彼はこう記しています。

 「未来すみだ川 橋の発達によりて
 川の面は何十年後遂に覆はれ昔日のおもかげを
 偲ふ事不可能となるにや、余写生中
 この予感あり、幸いにいまだ橋少なし
 精出して写生を勉むべしとす
 昭和九年十月下旬考  義夫」


 隅田川両岸の景色が新たに架けられたモダンな橋梁により変貌を遂げたように、何十年後の未来は現在の景色を偲ぶことができないほど変化するであろうという予感を抱きつつ、写生に励んだという、制作中の藤牧の心境が書かれていますが、この絵巻を描くに至ったきっかけとなったのは、江戸時代の版画家、歌川豊春と葛飾北斎の作品であったことが指摘されています。

 藤牧もまた過去・現在・未来を重ね合わせた幻視を「絵巻隅田川」という作品に描き留めた時の旅人として、未来へ旅立ったのでしょうか。



(注)白鬚橋から三囲神社までを描いた完成作二巻と浜町公園から相生橋までを描いた試作とも言うべき一巻とに分かれ、前者は東京都現代美術館、後者は館林市立資料館に所蔵されている。


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December 4, 2015

日本の商業デザインのパイオニア「杉浦非水・翠子展」のご紹介~白根記念 渋谷区郷土博物館・文学館より~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。紅白歌合戦の出場歌手も発表され、いよいよ年末の気配が感じられてきました。その会場であるNHKホールをはじめ、渋谷には様々なスポットが数多く点在しています。今回のブログでは、渋谷の街の通史やゆかりの文学者に関する貴重な資料を展示している博物館、『白根記念 渋谷区郷土博物館・文学館』をご紹介いたします。

20151204shibuya_museum.jpg 『白根記念 渋谷区郷土博物館・文芸館』は、昭和45年、区立中央図書館内に設置された「郷土資料室」が前身です。その後、昭和49年に故白根全忠氏から区に寄贈された宅地と邸宅をもとに、区に関する資料の保管・展示の場として利用に供されてきた「白根記念郷土文化館」を全面改築したもので、郷土の歴史と文化を学び、新たな"渋谷らしさ"の創造を目指す施設として平成17年に生まれ変わりました。

 地上2階、地下2階の館内では、渋谷区に関係する歴史・民俗・考古学・文学などがテーマ毎に構成されています。年2~3回の特別展を開催するほか、収蔵資料を検索できる情報コーナーや戦前の住宅再現などのほか、本物の江戸時代の道具や縄文土器に直接触れたり、実際に年度の上に縄文模様を付ける体験も出来ます。

20151204sugiura_flier.jpg 現在は特別展「杉浦非水・翠子展」を開催中。日本の商業デザインの先駆者で、三越やカルピス、地下鉄開通ポスターなどの広告で知られる杉浦非水と、その妻で歌人の翠子は、戦前から戦後にかけ、それぞれの分野で先駆的な活躍をしました。展示では日本の近代の歩みとともに、二人の作品の数々を見ることができます。開催期間は、2016年1月11日(月・祝)まで。

 いつの時代も行き交う人で賑わう渋谷の街並み。現在は渋谷ヒカリエの開業を機に再開発も本格化しています。そこには様々な人による様々な功績があるという歴史背景を知ることで、より一層、渋谷への魅力が深まることでしょう。





【白根記念 渋谷区郷土博物館・文学館】

住 所 〒150-0011 東京都渋谷区東四丁目9-1
入館料  一般:100円(80円)/小中学生:50円(40円)
    ※(  )内は10名以上の団体料金
    ※60歳以上の人、障害のある人と付き添いの人は無料
会 館 午前11時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休 館 月曜日(休日の場合はその直後の平日)・年末年始
電 話 03‐3486‐2791
交 通 渋谷駅から
    都バス「日赤医療センター行き(学03)」(東口54番) 国学院大学前下車2分
    ハチ公バス「恵比寿・代官山循環」郷土博物館・文学館下車
公式HP http://www.city.shibuya.tokyo.jp/edu/koza/12kyodo/kyodoindex.html

October 23, 2015

密やかに咲く


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。朝晩の冷え込みと富士山の初冠雪の便りを聞くと、冬の到来も間もなくであることを意識いたします。体調を崩しやすい季節でもあり、皆様どうぞご自愛くださいませ。



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 このところ秋晴れの爽やかな天候が続いていますが、散策の途中に立ち寄ったお寺の境内で、密やかに咲く山茶花(さざんか)が目に留まりました。瑞々しい青い葉の間から清楚に咲く花に凛とした空気が漂っていました。寒くなると花木に触れる機会が少なくなりがちではありますが、季節ならではの楽しみ方がありますね。

 さて今回は、当社彩美版®のラインナップのなかから小倉遊亀の《山茶花》をご紹介いたします。静謐な画調の中から瑞々しい感性と凛とした精神性が感じられる逸品です。


小倉遊亀 《山茶花》
彩美版®、軸装・額装
販売価格(各) 180,000円+税


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●額装仕様


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●軸装仕様


<仕様・体裁>
監修 鉄樹
解説 細野正信(美術史家)
原画 滋賀県立近代美術館所蔵
技法 彩美版®、シルクスクリーン
装丁 軸装・額装
限定 300部発行

<軸 装>
軸装 三段表装、柾目桐箱付
画寸 天地47㎝×左右53㎝
軸寸 天地143㎝×左右73㎝

<額 装>
額縁 木製金泥箔仕上げ、アクリル付
画寸 天地47㎝×左右53㎝
額寸 天地63㎝×左右70㎝
重量 約3.2kg




【今日の谷根千】

地下鉄「千駄木駅」近くにある森鴎外記念館の情報です。
現在、以下の特別展が開催されています。


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特別展 「ドクトル・リンタロウ―医学者としての鴎外」

文京区立 森鴎外記念館
所在 東京都文京区千駄木1-23-4
電話 03-3824-5511

会期 2015年10月3日(土)~12月6日(日)
休館 10月27日(火)、11月24日(火)
時間 10:00~18:00(入館は17時30分まで)
※11月6・7・8日(金土日)は20時まで開館(入館は19時30分まで)
料金 一般500円(20名以上の団体は400円/人)
   中学生以下は無料


October 16, 2015

紅葉の季節を迎える小石川後楽園


20151016entrance.jpg いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。弊社の所在地である文京区小石川付近には、東京ドーム、ラクーア、小石川植物園など様々な施設や観光名所があります。その中でも今回は、都内屈指の美しい紅葉名所として知られる「小石川後楽園」を"一足早く"ご紹介いたします。

 小石川後楽園は江戸時代初期に水戸徳川家の江戸上屋敷内につくられた築山泉水回遊式(池を中心にした回廊型の造り)の日本庭園(大名庭園)であり、国の特別史跡及び特別名勝に指定されている都立公園です。
 寛永6年(1629)初代藩主頼房が庭の造営に着手し、二代光圀に引き継がれました。園名は中国・北宋時代の文人、范仲淹(989~1052)が著した『岳陽楼記』中の一節「天下の憂いに先んじて憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ(先憂後楽)」に因んで光圀が命名したそうです。

20151016kourakuen_park.jpg 7万平方メートル以上の広大な園内には、梅、松、桜、ツツジ、花菖蒲、稲、ススキなど数多くの植物が植えられ、四季を通じて情緒溢れる景色が広がっています。今の季節は写真の通り緑豊かな木々に囲まれている様子ですが、11月に入るとイロハモミジやハゼ、ケヤキ、イチョウなどが紅葉し、通天橋や紅葉林などの紅葉が緻密に計算された園内に所狭しと趣深く色づきます。特に、京都・嵐山を再現した大堰川付近は、多くの木々が色づく絶景ポイントとなります。

20151018maccha_tea.jpg 歩き疲れたら、園内にあるお食事処『涵徳亭美都屋(かんとくていみとや)』へ。ランチのお弁当だけでなく、甘味やお茶、お酒もあるので、天下の庭園を眺めながらのんびりと過ごすこともできます。間もなく紅葉の季節。この名園で美しく長閑な時間をお過ごし頂ければ幸いです。



※「小石川~」と冠したのは、岡山の「後楽園」と区別する為です。隣接する野球場はその名にちなみ『後楽園球場(現:東京ドーム)』と名づけられました。



【都立小石川後楽園】

所在地 東京都文京区後楽1-6-6
電 話 03-3811-3015
入 園 9:00~16:30(閉園17:00)
休 園 年末年始(12月29日~翌年1月1日)
入園料 一般:300円、65歳以上:150円
    小学生・都内中学生は無料。
    その他、団体割引有。
交 通 後楽園駅(丸ノ内線・南北線)より徒歩8分
    飯田橋駅(JR、大江戸線・東西線・有楽町線・南北線)より徒歩8分


October 2, 2015

東京都美術館で「モネ展」開催中


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。10月に入りやっと秋らしくなってまいりました。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。私は先日、上野の東京都美術館で「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」に行って参りました。

 ルノワールと人気を二分する印象派の巨人、クロード・モネ(1840-1926)。パリのマルモッタン・モネ美術館には画家が最期まで手元に置いた貴重な作品の数々が所蔵されています。十代で描いた風刺絵-地元で大変な人気を得てモネは画家として立つ自信を得た-、画家の没後に発見された家族の肖像画、モネが集めた同時代の画家たちの作品-ルノワールが鉛筆で描いたリヒャルト・ワーグナーの肖像はワグネリアン必見!-等々、モネの人生や人物像を知る上で欠かせない作品ばかりです。モネの歴史的コレクションで、貴方はますますモネの世界に惹きつけられることでしょう。

 中でも注目は何と言っても《印象、日の出》です。印象派の由来となった著名な作品ですが、東京で鑑賞できるのは21年振りとのこと。わたしは昼間の喧騒を避け、夜間の特別展示でじっくりと作品を鑑賞いたしましたが、想像していたより小振りな作品にもかかわらず、名画の放つオーラと統一感、細部の光と色彩の豊かさに思わず息を飲み、その場で足が釘付けになりました。尚、この作品は会期中ひと月しか展示されませんので、《印象、日の出》を目的に訪れる方はくれぐれもご注意下さい(展示は10月18日まで)。同20日からは、これまた滅多に館外には出ないという《ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅》が特別展示されます。

 他にもモネが生涯愛したジヴェルニーの庭園を描いた一連の作品も展示されており、《睡蓮》や《しだれ柳》、《(日本風の)太鼓橋》や《バラの道や庭》等々、マルモッタンの貴重なコレクションでモネの豊かな創造の世界を堪能することができます。わたしは特にモネ最晩年の作品に、コンテンポラリー絵画にも通じる、モチーフを描くというよりは見るという行為そのものを描出するような、写実を離れ印象/抽象の世界をより強く志向する姿勢を感じ、深い感銘を覚えました。

 芸術の秋にふさわしい、見応えあるモネの展覧会に皆さまもぜひ足をお運び下さい。


【展覧会情報】

マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 「印象、日の出」から「睡蓮」まで


会場 東京都美術館
会期 2015年12月13日(日)まで
   ※休室日=月曜日(10/21・11/2・11/23を除く)、
    10/13(火)、11/24(火)
時間 9:30~17:30 (金曜、10/31-11/2は20時まで)
※ただし「印象、日の出」展示期間は10/18(日)までです。
 期間中の土・日・休日は21時まで特別開館します。


 なお、弊社では文中でも触れたモネの代表作《印象、日の出》の複製画を大小2つのサイズでお取扱いしております。好評発売中の『睡蓮、水のエチュード-雲』ともども、貴方様のお部屋のインテリアとして、また大切な方への記念品や贈り物としてお勧めいたします。




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モネ《印象、日の出》
※上の画像は10号サイズ版です。


モネ 《印象、日の出》
①F3号  販売価格 25,000円+税
②F10号 販売価格 40,000円+税


<仕様体裁>
技法 アートレリーフTM
画寸 ①F3号/②F10号
額寸 ①36.0×41.5cm/②62.5×70.0㎝
重量 ①1.2kg/②3.6kg
額縁 特製木製洋額
原画 マルモッタン美術館所蔵
発行 共同印刷株式会社





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モネ《睡蓮、水のエチュードー雲》
※画像をクリックするとより大きな画像が別画面で開きます。
Photo © RMN-Grand Palais (musēe de l`Orangerie) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNP artcom



モネ 《睡蓮、水のエチュード-雲》
販売価格 128,000円+税


<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
画寸 28.3×91㎝(30号大)
額寸 38.2×100.8cm
重量 3.3kg
額縁 特製木製デコレーション金箔額
原画 オランジュリー美術館所蔵
発行 共同印刷株式会社


July 31, 2015

品川の原美術館で「サイ・トゥオンブリー」展を見る


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。夏も真っ盛り、連日の30度超えで、私の周りでは体調を崩す方が大勢いらっしゃいます。皆さまも体調管理には十分お気をつけ下さい。

20150731CyTwombly_Ex.jpg さて私は先日、アメリカ現代絵画の巨匠サイ・トゥオンブリーの展覧会を東京品川の原美術館にて鑑賞してまいりました。いつもは品川駅より第一京浜をてくてく歩いていくのですが、その日はちょっと気分を変えて最寄りの京急北品川駅より向かいました。国道を渡り、ゆるやかな坂道を上り始めるとそこはもう閑静な高級住宅街。ゆったりした街並みは自然環境にも配慮が行き届き、歩いているだけでも気持ちが豊かに高揚します。駅からも10分程度のアクセスですので、徒歩で訪問の際は、一度このルートを通ってみてはいかがでしょうか。

20150731hara_museum.jpg 原美術館は昭和初期のモダニズムハウスを改装し、1979年に私立の現代美術館の草分けとして開館。御殿山の一角の高級住宅街に位置するロケーションが、今も贅沢な気品を漂わせます。40年近くにも亘り、国内外のコンテンポラリーアートを地道に紹介してきたそのスタンスは国内外で高く評価されております。

 今回の目的は「サイ・トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」展-20世紀の抽象絵画を牽引した米国ヴァージニア州出身のアーティスト、サイ・トゥオンブリー(Cy Twombly, 1928-2011)の日本初の企画展です。「描画された詩」とも評される絵画作品70点を一堂に揃え、画家の半世紀にわたる作風の変遷を回顧します。2001年ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞受賞後、キャリアピークを迎えた2003年、ロシア・エルミタージュ美術館をスタートし、欧米各国を巡回した伝説のレトロスペクティブが画家の没後、新たに企画再構成されました。

 キュレーターの方達の本展への熱意が伝わってくるようで、見応えは十分です。描線の戯れが印象的な初期作品から、イタリアに拠点を持つことで作風が独自の発展を遂げ、鮮やかな色彩を獲得するに至った後期作品まで、華やかさや激しさを禁欲的に表層にとどめる画家の強固なスタイルに深い感銘を覚えました。2011年に惜しくも移住の地であるローマに没した画家への哀悼が、一転して刺激的な「祝祭の場」へと変容してしまう、アートの喚起する偉大な力を本展でもまざまざと実感いたしました。

 他にも館内には、奈良美智のガジェット作品や宮島達男の電光アート、ジャン・ピエール=レイノーのクリーン・ルーム等のミュージアム・コレクションが常設され、どれも美術館の静謐な空間に悠然と融けこんでおり心が安らぎます。

 以上、ご紹介の「サイ・トゥオンブリー」展の会期も残すところあとひと月。真夏の暑い盛りではありますが、クールで一見シンプル、だがとても奥が深い...そんな現代アートの展覧会に皆さまもぜひ足をお運び下さい。



【展覧会情報】

「サイ・トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」

会場 原美術館
   東京都品川区北品川4-7-25
会期 8月30日(日)まで。
   月曜休館(祝日を除く)
開館 11:00~17:00(水曜は20時まで)


July 10, 2015

恵比寿の長い坂と前田青邨展


 久方ぶりに恵比寿駅に降りた。ビールの貨物駅として開業したこの駅の周辺には美味しいビールを飲ませてくれる店も多い。今日はこの駅の近くにある山種美術館で、前田青邨(せいそん)の生誕130周年を記念した展覧会を開催していると聞き、訪れてみることにした。そして叶うなら帰りにビールで喉を潤そうと、この地の利を最大限に活用する計画で臨んだ。

 駒沢通りに出て青山方面に向かうとすぐに長い坂に出る。果てが見えないような坂であるが、この頂にまだ見ぬ山種美術館がそびえているはずなので、汗をかきかき上って行く。この坂の辺りは住所でいえばオシャレの代名詞でもある広尾。坂の両側にも小洒落たレストランや、雑貨店がある。途中、巨大なダビデ像が立っているビルの前を通り過ぎ、ようやく坂の頂を制覇して山種美術館にたどり着く。

 展覧会名に「生誕130周年記念 前田青邨と日本美術院 −大観・古径・御舟−」※1とある。まずは展示会場に入る前に、エントランスにある「Cafe 椿」で一休みする事に。ここでは今回の展覧会のオリジナル和菓子が楽しめる。私は前田青邨筆《蓮台寺の松蔭》にちなんだ「こころざし」という練り菓子と抹茶のセットをたのんだ。「こころざし」は松蔭が読んでいる書物を模した形になっており、シナモンの香りと上品な甘みが抹茶の爽やかな渋味に合う。他にも速水御舟筆《炎舞》をイメージした「ほの穂」や、横山大観筆《作右衛門の家》を題材にした「青葉」など、色鮮やかで宝石のように美しい和菓子があって目移りする。

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「Cafe 椿」の美しい練り菓子


 一息ついたのでそろそろ作品鑑賞に移る事にする。この度の展覧会はタイトルに日本美術院とあるように前田青邨だけではなく、横山大観、速水御舟、平山郁夫など日本美術院で活躍した日本画の巨匠達の貴重な作品が一同に見られる。青邨の大作も間近で見られ、その筆使いや金の色使いなど、つぶさに観察でき大変勉強になる。なお、公益財団法人日本美術院が主催運営する院展は、今年の秋で再興第100回という大きな節目を迎える。本展覧会は現代日本画の巨匠の作品を見られる貴重な展覧会である※2。

 美術館からの帰り道、ソフトクリームの看板が目立つ雰囲気の良さそうなカフェがあったので入ってみる。元気の良い女性3人が切り盛りしていたこの店の中の壁は全て本棚になっており、そこには大量の写真集がきれいに収まっている。オーダーをすれば自由に閲覧できるようだ。後で知ったのだが、ここは「写真集食堂めぐたま」という変わった名前のお店で、壁の写真集は写真評論家の飯沢耕太郎氏の蔵書5,000冊だそうである。ちなみに私の隣のお客には、お店の人が「ねこまんま」をしきりにお勧めしていたようである。「ねこまんま」といえば、ご飯に鰹節をのせて醤油をたらしたあれだと思うのだが...。

 広尾、恵比寿といえばオシャレなお店が軒を連ねる所といったイメージをいだいていたが、この界隈は自家製のぬか漬けを売っている八百屋さんや、昔ながらのガチャガチャが置いてある雑貨店などもまだ現役でがんばっている。庶民的で昭和な商店も所々に顔を出す不思議な場所である。帰りに駅前でも魚屋さんが威勢よく、今風のカフェのマスターと魚の調理の仕方を話していた。良い感じに暮れかかって来たので、私も喉を潤しに行くことにした。

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ガチャガチャのある雑貨屋(ガチャガチャは私が子どもの頃に呼んでいた名前で、一般名称はカプセルトイ)


※1 「生誕130周年記念 前田青邨と日本美術院 −大観・古径・御舟−」展は山種美術館で2015年8月23日まで開催しているとの事です。
※2 再興第100回院展は9月1日(火)に東京都美術館から始まり各地を巡ります。また当社はこの図録の制作・製造を請け負っております。






【関連商品のご紹介】

今年、生誕130周年を迎える日本画の巨匠、前田青邨。
当社でもこの記念すべき年に新作高級複製画「牡丹」を制作いたしました。
富貴の象徴でもある牡丹が、色鮮やかな五彩花文壺に生けられた名作です。
華やかで気品ある本作品を皆様のご家庭にも是非どうぞ。



彩美版®
前田青邨 《牡丹》 軸装・額装
本体価格 (各)190,000円+税

<仕様体裁>
監修: 小山 硬(日本画家、日本美術院同人)
解説: 川口直宜(美術評論家、前・泉屋博古館分館長)
限定: 200部
技法: 彩美版®、シルクスクリーン手刷り、本金泥使用

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


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【軸装】
表装: 三段表装、柾目桐箱・タトウ付き
箱書: 小山 硬(シルクスクリーン刷り)
画寸: 天地41.1cm×左右53.0cm
額寸: 天地136.5cm×左右72.1cm




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【額装】
額縁: 特注木製額金泥仕上げ、金モール織マット、アクリル付き
画寸: 天地41.1cm×左右53.0cm
額寸: 天地59.2cm×左右71.0cm
重量: 3.3kg

June 26, 2015

新作・モネ《睡蓮、水のエチュード-雲》のご案内


20150626ajisai.jpg いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。関東圏内は梅雨入りしましたが、時折ザーっと降る夏の夕立のような雨が降りあまり梅雨らしくない空模様がつづいています。それでも路地や庭先等に咲く菖蒲や紫陽花、芍薬に目に留めては雨が似合う花が咲く季節なんだなと感じ、心和みます。
 写真は先日「あじさいまつり」が開かれていた、文京区白山にある白山神社境内の紫陽花です。







20150626suiren2.jpg いつもの谷根千界隈からすこし足を運んで上野恩賜公園へ向かって散策途中、公園の南西側にある不忍池にたどり着きました。三分された池は、北は上野動物園の水上動物園、西はボート池、南は蓮の池となっています。蓮の池は青々と池の水面を茂る蓮の葉が目に眩しく、ワイルドに!群生している葉の隙間から花のつぼみが見る事ができました。花はこれから7月中旬~8月上旬にかけて見頃を迎えるそうです。湿った空気と暑さの中での散策でしたが、時折吹く風や木陰に入るとヒンヤリ気持ちよく、遠くの空の雲の様子に夏の気配感じながら公園を後にしました。

20150626suiren1.jpg さて弊社ではこの度、モネ畢生の大作《睡蓮、水のエチュード-雲》の彩美版®を発売します。原画は印象派を代表する画家クロード・モネの集大成、オランジュリー美術館所蔵の《睡蓮》連作大装飾壁画8作品のひとつです。モネ《睡蓮》連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈されたという歴史的な作品であり、オランジュリー美術館は《睡蓮》連作大装飾画のために創設された「印象派の殿堂」です。

 《睡蓮、水のエチュード-雲》は、睡蓮と朝焼けの水面に映える雲の情景が、微妙なニュアンスに富む青、緑、紫、白、赤などが入り交る、モネならではの彩りの世界で描かれた作品です。本作品は第一室に飾られた「雲」の全画面より作品のハイライト部を、フランス国立美術館連合・グランパレ(RMN‐GP)の画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。



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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) /
Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom



彩美版®
クロード・モネ 《 睡蓮、水のエチュード-雲 》
Claude Monet
Les Nymphéas, Étudu d'eau:Les Nuages
販売価格 128,000円+税
限定200部発行



<仕様体裁>
原 画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監 修 千足 伸行(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)
限 定 200部
技 法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
用 紙 キャンバス
額 縁 木製デコレーション金箔額(国産ハンドメイド)、アクリル付き
画 寸 天地28.3×左右91㎝(30号)
額 寸 天地38.2×左右100.8㎝
重 量 3.3㎏
発 行 共同印刷株式会社

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


June 12, 2015

日曜の午後、東京湾を望む


20150612BeachPark1.jpeg ここは最近お気に入りの東京湾に臨む小さな公園です。近未来的な海の風景がパノラマチックに広がり、来るたびにきっと夜景が綺麗だろうなと思うのですが、未だ夜に訪れたことはありません。たまにランナーが駆け抜けるのを除けば、ほとんど訪れる人がいない隠れ家的スポットです。



20150612BeacPark4.jpeg 海を望むベンチに座ると真正面が羽田空港です。直線距離にして12、3kmあるでしょうか、大気の薄いベールを透して、独特の形をした管制塔の姿が滲むようにぼんやりと眺められます。公園上空には羽田へ降りる航空機の着陸ルートがあり、大型ジェット旅客機が徐々に高度を下げながら、行儀良くほぼ等間隔の連なりで次々と目の前を通りすぎていきます。



20150612BeachPark2.jpeg 羽田のやや右側には平成24年(2012)に開通し東京湾の新名所として知られる東京ゲートブリッジが見え、さらに右へと首を廻らせば、都内の高層ビル群と葛西臨海公園が間近に望めます。海上には大型の運搬船や漁船、タグボートなどに混じって、時折夢の島マリーナを拠点とするヨットの姿も見えます。



20150612BeacPark3.jpeg さて、この風景を眺めなら聴くならどんな音楽が合うでしょうか?好みは人それぞれですが、今までの私なら無条件でジャズだと思っていました。例えばハービー・ハンコックの名盤「処女航海」なんかぴったりだと思いませんか?ところが最近、ある現代美術の映像作品に出会ってから、クラシック音楽もいいじゃないかと思えるようになってきました。



 ジャズが合うと決めつけて他は一顧だにしなかったかつての自分は、いわば食わず嫌いだったと反省しています。決めつけずに色々と試してみたほうが楽しみが広がるようですね。所詮は趣味の問題なのですから。

 ちなみに、私の眼を開いてくれた作品、ミヤギフトシ《オーシャン・ビュー・リゾート》は、6月28日まで東京都現代美術館で開催中の「他人の時間」展で観ることができます。沖縄の離島の風景にベートーヴェン《弦楽四重奏曲第15番イ短調 第三楽章》の旋律が見事に調和しています。他にも、香港の映画スター、トニー・レオン(梁朝偉)が出演した複数の映画の名シーンをコラージュして全く別の映像作品に仕立て上げたホー・ツーニェン《名前のない人》や、明治期に米国人地質・鉱山学者が北海道夕張川で行った地質資源調査の研究をテーマに創り上げられた深い余韻の残るサウンド・インスタレーション、mamoru《THE WAY I HEAR,B.S.LYMAN 第五章 協相のためのポリフォニー》など五感を刺激する素晴らしい作品が多数出品されています。

 「現代美術」はちょっとハードルが高いかなと思った食わず嫌いな貴方にも、是非チャレンジしていただければ幸いです。

※各画像はクリックすると拡大できます。



【他人の時間|TIME OF OTHERS】

会場:
  東京都現代美術館
  東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
電話:
  03-5777-8600(ハローダイヤル)
会期:
  6月28日(日)まで
開館時間:
  10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:
  月曜日


※詳細は東京都現代美術館のホームページ等でご確認ください。

プロフィール

共同印刷株式会社SP&ソリューションセンター アート&カルチャー部では、日本画を中心とした複製画や版画の制作、販売をてがけています。制作の裏側や、美術に関係したエッセーを続々とアップしていきます。尚、このサイトの著作権は共同印刷株式会社又は依頼した執筆者に帰属します。

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