June 16, 2017

木の森の生命たち


 私の住む区内にちょっと気になる「美術館」があると知り、天気の良い休日を見計らって訪れることにしました。初夏の日差しが急に増してきたと感じながら、自転車で、もたもたペダルをこぎ、閑静な住宅街の中を何となくこのあたりだろうと目途をつけたものの、そう甘くはなく右往左往。ようやくそれらしき建物を見つけました。(もう一度すんなり行ける自信がありません。)

 美術館と言っても大きな住宅の風情。しかし入口の意匠はとても神秘的で、樽に乗った馬の首の彫刻があり、壁にかかった味わいある木の板には、M●KKINKANと読みづらいロゴが記されていました。ここはしまずよしのりさんという彫刻家の作品を展示する、モッキンカン木の森美術館です。

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木の森美術館入口

 館長である奥様のリコさんに案内されて入ると、大小様々な木彫りの彫刻が所狭しと置かれています。楽器を奏でる動物や巨大な顔面などインパクトある作品や、小さく可愛い不思議な人形類などとともに、額装された絵や小さなスケッチも壁を覆っていました。
 しまず先生はとても多才な方で、書や詩も書き、童話も作られます。小さな彫刻作品はアニメーション制作に使用したもの。ご自身で微妙に人形を動かしては撮影しコンピュータのソフトで作り上げたオリジナルアニメ作品がたくさんあります。

 正式な展示室である2階に上がるとさらに圧倒されます。様々な木彫りの作品は皆大きく、生命が宿っているかのように生き生きして佇んでいます。殆どが大きな木から彫りだされた一木造の作品で、モチーフも様々。巨大なアゲハチョウやトンボが宙を舞っていたり、羽を畳んだ妖精が眠っていたり、夥しくざわめくキノコと笛を吹く少年、祈りを捧げる森の精など、異界に住む住人が集合したようです。

 女性が馬車に乗った作品は未完成とのことですが、館長に促され背後から女性を見ると、たくさんの子供に乳を与えている動物の姿が現れました。表と裏が異なる造形になっている作品で作者のユーモラスな面が伺えます。作品の様相は制作年によっても変化しているようで、それも楽しめる要因です。初期からの膨大な作品はここ以外に米蔵の倉庫に保管されているとのこと。絵画作品中心に展示された小さな部屋もあり、無垢でファンタスティックな世界は私の心の琴線に触れ、何度も見入ってしまいました。

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賑やかな彫刻展示風景

 しまず先生は、1944年東京都生まれで、幼少は長野育ち。その後浦和に移り美術に没頭。高校卒業後作家活動に入り、絵画からレリーフ、そして独学で彫刻を始め、長野県での制作活動を経て70歳を超える今も精力的に制作を続けています。

 お会いして様々なお話を伺いました。哲学を感じる大人向けの寓話、なかでもサラリーマンを経験していないしまず先生だからこそ、サラリーマンの風習の奇異さが目に付く内容のお話は不気味でした。今の世は「無邪気さ」や「他愛ないこと」が少なくなったこと、しかし「人間はそんな少年時代がすべてを決定づける」ことなど、あらためて確かにと共感できる言葉にも接しました。

 しまず先生の作品は多様ですが、その作品には共通して、人間は自然と対立するものではなく、自然の一部だと捉えた思想が投影されています。「森から放たれた原木と対峙し、その原木に宿る『生命の立体』を見出し、迷うことなく彫り出す。彫り起こされた『生命の立体』はやがて連なり新たな森を形成する。」

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作品「羽化する少女」

■モッキンカン木の森美術館
さいたま市南区大谷口593
TEL 048-881-0524
営業時間10時~17時
定休日 木曜
Web  http://www.unpopu.com/cho/index.html

April 7, 2017

正統を極め、異端に戯れる


 今、華々しく脚光を浴びる幕末~明治の絵師、河鍋暁斎(かわなべきょうさい / 1831-1889)。折しも現在渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで展覧会「これぞ暁斎!」が開催され、あらためてその画力の天才ぶりを多くの人に見せつけています。正直、私は暁斎について知っているつもりでいながら、それはほんの一部に過ぎないとここ最近知らされました。

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河鍋暁斎記念美術館

 私の住むさいたま市のすぐ隣の蕨市に、公益財団法人 河鍋暁斎記念美術館があります。ずっと以前から知ってはいたものの、暁斎のイメージが妖怪や魑魅魍魎を得意とするどこかおどろおどろしい画風の異端画家という印象で、臆病な私は何となく足が向きませんでした。しかしマスコミで紹介される暁斎作品を目にする機会が重なり、見方が偏っていたと気づかされました。温かく穏やかな休日に思い立ち、初めて記念美術館を訪れてみました。

 暁斎の曾孫である河鍋楠美館長が1977年に創設した美術館で、今年 40周年となります。住宅地の中にさり気なくあり、自宅を改装したアットホームな気さくさが何故か暁斎らしいと思えてしまいました。展示室は3つあり、第1、第2展示室で2か月毎に内容を変えた企画展を開催しています。この日は「暁斎・暁翠 旅と風景」という展覧会で、第1展示室は墨絵を中心とした旅の風景スケッチが、のどかに楽しそうに描かれ、娘の暁翠(1868-1935)の作品とともに並んでいました。

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第1展示室

 第2展示室には数々の鮮やかな錦絵の展示。東京の名所絵や東海道中の双六など人気が高かったと推測する作品が並んでいました。あまり知らなかったのですが、別の絵師との合作も多く、例えば三代広重が風景を描き、その中にたくさんの人物を暁斎が描いたりしています。第1、第2展示室を通じ暁斎が基本を重視した作家であり、端正な作品も多く描いていたことがわかります。第3展示室は肉筆着色作品の複写が展示され、力強さと緻密さを備えた画力を感じ取れました。

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第2展示室

 暁斎は日本の美術史上から忘れられた時期が続いたといいます。純粋に観賞用の絵画だけでなく、庶民に受ける風刺画や漫画も注文に応じて拒まず描いており、それが異端視された要因にあるのかもしれません。しかし浮世絵の歌川国芳に入門し、のちに狩野派を習得し、さらに流派に捉われず多様な画法を学び、幅広い分野の画題を独自の視点で表現、その芸術は、正統を含むいずれの分野も極めた一級のものでした。特に海外で高く評価され、国外に多くの完成品があります。渋谷の大規模な展覧会も英国在住のゴールドマン氏のコレクションで、暁斎の多彩な才能を知ることができます。今の私が想う暁斎の魅力は、猫や蛙を始めとする擬人化された動物の可愛らしさや、群衆の争いを愉快に描くスラップスティック・コメディの世界など、ユーモラスな世相のカリカチュアライズですが、その着想を描出する、修練を積んだ技術に裏打ちされたエスキースの巧さに圧倒されます。

 記念美術館は肉筆、版画の完成品以外に下絵・画稿類の豊富な所蔵が特徴的で、暁斎の創作過程や力量を伺い知ることができます。テーマを変えて展示される折々に、散歩がてらぶらりと訪れ、静かに過ごすのにも良い場所です。



■公益財団法人 河鍋暁斎記念美術館

住 所 埼玉県蕨市南町4-36-4  TEL 048-441-9780
開 館 10時~16時
定休日 木曜 毎月26日~末日 年末年始 
入場料 一般320円、中・高・大学生210円、小学生以下105円
団体20名以上割引有・要予約、かえる友の会会員は210円、美術館友の会会員は無料
※特別展開催時は別料金


November 25, 2016

未来を見つける祭典


 それは去る9月下旬の雨の日、買い物から戻った妻が、「そこの公園にシートで覆われた荷物の端からすっごく大きな靴が覗いていたよ。」と物珍し気に話していました。想像すると極めて奇妙な光景ですが、ああ、とピンときました。「さいたまトリエンナーレ2016」は開催前に妻の発見から幕を開けました。
 9月24日から12月11まで79日間続くアートイベントで、さいたま市が初めて取り組む国際芸術祭。現在既に終盤に入ろうとしています。ディレクター・芹沢高志氏の掲げた「未来の発見!」をテーマに市内各所で多様な文化関連プロジェクトが展開されてきました。アートプロジェクトでは、国内外で活躍するアーティスト34組が参加。内容は多岐にわたり私もすべてを体験出来ていませんが、大きくは3地域に分けられた各所の展示をぶらぶら鑑賞した一部を紹介します。



 冒頭の作品は、武蔵浦和駅~中浦和駅周辺地域にある西南さくら公園に置かれた「さいたまビジネスマン」。ラトビアの作家、アイガルス・ビクシェ氏による強化ポリウレタン製の10m近い彫刻作品です。仏陀の涅槃の像を想わせるかのように芝生に横たわり、体中に虫が這っても動じないサラリーマンの姿は悲しいような滑稽なような・・・しかし心を和ませます。

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アイガルス・ビクシェ 《さいたまビジネスマン》


 すぐ近くにある会場「旧部長公舎」は70年代に建てられたレトロモダンな邸宅。4軒それぞれでアーティストがインスタレーションを公開しています。写真家・野口里佳氏は、故郷さいたまを独自の視点で取材した映像作品の投影と展示。高田安規子+政子姉妹は縄文期にベイエリアだったこの場所の海の痕跡や絶滅危惧種の生き物の切り絵装飾で家を再生。松田正隆+遠藤幹夫+三上亮の俳優不在の演劇インスタレーションは、実際にかつて2006年まで何組もの家族が営んだ生活の記憶を、今もその時代に生活しているような室内で、物音・声などで重層的に再現。過ぎ去った日常への郷愁と共に、姿の見えない人の生々しい気配に恐怖心を覚えたのは私だけでしょうか。
 真っ白な空間に変えた邸宅内で展開される鈴木桃子氏の鉛筆ドローイングパフォーマンスは、開催前から作者が室内に緻密に描き続けてきた壮大な生命の増殖(火の鳥)が、ある時点から観客によって消されて何もない空間に帰るというプロセスをたどります。

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鈴木桃子 《アンタイトルド・ドローイング・プロジェクト》


 この地域でもう1つ外せないのは、日比野克彦氏の「種は船プロジェクトin さいたま」。日本各地を巡り人をつないできた朝顔の種の形をした船・TANeFUNeは前年にプレイベントで埼玉の川を航行。このトリエンナーレでは、金沢と横浜からやってきた「種は船」作品の2艘が、別所沼公園のワークショップに参加した人たちの手で埼玉バージョンとして塗り替えられ、公園の池に美しく浮かべられています。海のないさいたま市で「水のさいたま」の記憶を積み込んで、さて次はどこへ向かうのでしょうか。

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日比野克彦 《種は船プロジェクトinさいたま》


 与野本町駅~大宮駅周辺、岩槻駅周辺も、開催される場である建物の特色(歴史・背景)と絡めたコンセプチュアルな展示内容は深く印象的。岩槻の旧埼玉県立民俗文化センターは集中してたくさんのインスタレーション作品に出会える場で、個人的に興味深かったのは「犀の角がもう少し長ければ歴史は変わっていただろう」という川埜龍三氏の作品です。現在われわれが住んでいる世界を「さいたまA」とし、架空に存在する並行世界「さいたまB」で発見された奇妙な埴輪群とその発掘現場の様子を展示する「歴史改変SF美術作品」。中心にあるのは、犀の形をした巨大な犀型埴輪です。思わず笑顔を誘う作品で、本当にこんな世界がすぐ隣にあったら・・・という夢とロマンへの少年的憧れを刺激します。

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川埜龍三 《犀の角がもう少し長ければ歴史は変わっていただろう》


 このトリエンナーレを象徴する「息をする花」の作者、韓国のチェ・ジョンファ氏作「サイタマンダラ」は、市民が消費を通じて自動的に制作に参加してしまう作品で、芸術は物事の捉え方次第で成立することを再認識しました。ご紹介した以外でも、各作家はさいたまという地の特色を研究し、作品イメージを紡ぎだし創出しています。もちろん理解しやすい作品・しにくい作品はあるものの、各々の「未来の発見!」の解釈が垣間見えてきます。おそらく身近で体験したこのイベントに触発され、表現活動を始める未来のアーティストもいるのではと思います。3年後はどんなテーマでどんな表現が見られるか、楽しみにしています。





■さいたまトリエンナーレ2016
会期:2016年9月24日(土)~12月11日(日)[79日間]
鑑賞無料(一部の公演、上映を除く)
定休日:水曜日
主な開催エリア:与野本町駅~大宮駅周辺、武蔵浦和駅~中浦和駅周辺、岩槻駅周辺
開場時間:10:00~18:00(最終入場17:30)
主催:さいたまトリエンナーレ実行委員会
ディレクター:芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)
URL:https://saitamatriennale.jp/


September 23, 2016

アメリカの休日

 
 秋の風情がなかなか顔を見せない残暑厳しい9月初旬、少し気分を変えてみようと、近年話題のジョンソンタウンを初めて訪れてみました。

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 場所は埼玉県入間市。国道463号をひたすら西へ走ると、彩の森入間公園の向かいに白い木造の建物群が現れました。青い看板にJOHNSON TOWNの文字。そして星条旗がなびいています。敷地に入っていくと、三角屋根に横張りの板壁、そしてポーチがついたアメリカの家屋そのものが立ち並んでいます。ノスタルジックなアメリカ映画や古き良き時代を描いたアート作品などで目にした家々の現物が目の前にあり、違うとわかっていても異国の空間に迷い込み、その空気を吸っているような錯覚を覚えます。カフェや手作り雑貨等たくさん並ぶお店がそのイメージを倍加させ、ディスプレイされた商品やレトロな看板が明るい楽しさ、愛らしさを訴えかけてきます。家と家の間に高い塀のない開放的な空間。そうでありながら静かに暮らす人々の日常が保たれているとのこと。

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 約2.5haに60棟ものアメリカ風建築が並ぶこの地区は、国土交通省主催の平成27年度都市景観大賞の都市景観部門で大賞を受賞しました。1945年、戦後GHQが入間基地にあった陸軍航空士官学校を接収してジョンソン基地とし、朝鮮戦争勃発時には民間にも米軍ハウスをつくるよう要請。たくさんのハウスが建てられたものの、基地返還後は老朽化・荒廃化しました。しかし民間会社により「進駐軍ハウス」は改修・保全され、それを模した新たな「平成ハウス」も設計・建築され、インフラ・植樹整備、コミュニティ支援等多岐にわたり地区の再生・活性化が図られました。アメリカ風の自由で文化的な空気に惹かれ生活する家族で活気に満ちた風土が培われ、文化遺産としても見直されているということです。

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 時間がたつのも忘れてゆるゆる散策。港町でもリゾート地でもない埼玉県の何気ない場所に目いっぱい「本物」の異国の風情が?という感覚的ギャップにわくわくするインパクトを受けた日でした。変わり映えのしない日常風景に飽きたとき、是非また気軽に行けるアメリカで休日を過ごしたいと思いました。


 
■ジョンソンタウン

埼玉県入間市東町1-6-12   
TEL 04-2962-4450(ジョンソンタウン管理事務所)
店舗のみ見学可

July 15, 2016

ひとときの造形美


 5月にご紹介したさきたま古墳公園に続き、7月の梅雨の晴れ間に、同じ行田市の「古代蓮の里」を訪れました。

 日曜日の朝8時前に着いたのですが、公園の通常駐車場はいっぱいで、隣の臨時駐車場に案内されました。園内に入ると、極めて静かなのに既にたくさんの人々がカメラを手に集まっています。私自身初めて見る、ピンクの蓮の花が一面に咲き誇る壮観な蓮池でした。蓮の開花時間は午前6時頃からで、7時~9時頃が満開だそうです。いずれの花も大きく美しい彩りで端正な姿を誇示していました。

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 ただ、よく見ると、つぼみの状態もあれば、散りかけている花もあります。大して蓮に関心を持っていなかった私は、古代蓮会館の展示を観覧して初めて蓮の花の命が4日間であると知りました。何日目の花なのかによって、開花の状態が変わっているということでした。自然が作るひとときの美。そして連綿とつながっていく命のサイクル。殊に行田蓮と呼ばれる古代蓮は、原始的な形態をもつ1400~3000年前の蓮と言われ、偶然現代に蘇り命を宿し続けています。

 思いがけず蓮に魅了されたのですが、真にここを訪れた目的は、先ほどの古代蓮会館の展望台に上がることです。そこへ上がるにも整理券が配られ、1時間ほど館内を観て待ちました。ようやくエレベーターに乗り展望台へ到着。人々は一角を見下ろして皆感嘆の声をあげています。昨年ギネスに登録された世界一大きい田んぼアートの2016年版が見ごろを迎えたのです。

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 水田をキャンバスに、様々な種類の稲を絵具として、巨大なドラゴンが目を惹く絵柄が描かれていました。今年30周年を迎える人気ゲームシリーズ「ドラゴンクエスト」がテーマで、「勇者・ドラゴン・スライム」それに「古代蓮」を加えたオリジナルデザインとなっています。色彩はまだこれから濃くなっていくそうですが、前年の写真に比べ、鮮やかな黄色が一層目立ち、カラフルな印象を受けます。

 田植えは一般体験・ボランティア合わせ延べ約1500人が参加し、6月に2日間で行われたとのこと。館内に展示されている、細かい升目に緻密に引かれた作画のラインとおびただしい数のポイントの設計図を見ると頭が痛くなりそうでした。

 地上で見ると色の模様はわかるものの、具象性は認識できません。結構な重労働だったのではと、ますます作業の苦労と疲労に感情移入してしまいました。しかし計算通り絵柄が現れた時の喜びは、作業した皆さんにとって極上のものなのでしょう。

 田んぼアートの見ごろは7月中旬~10月中旬(色彩のピークは7月中旬~8月中旬)です。こちらも限られた命の造形。自然とのコラボレーションによるひとときのアートです。ぼんやりと万物の無常を意識した暑い一日でした。



【古代蓮の里】

住所 埼玉県行田市小針2375番地1
電話 048-559-0770

○公園は年間終日開園・休業日なし
○古代蓮会館
営業時間:通常期 9時~16時30分
     6月下旬~8月上旬 7時~16時30分
休業日: 通常期 月曜日(祝日は営業)、
     祝日の翌日(土・日曜日の場合は営業)
     6月下旬~8月上旬 なし
入場料: 大人(高校生以上) 個人400円(団体320円)
     子供(小・中学生) 個人200円(団体160円)


May 13, 2016

さきたま古代探検


 埼玉県の誕生は、明治4年11月14日、埼玉県設置の大政官布告が出された時で、当初の管轄区域の中で最も広い郡が埼玉郡でそれが県名となりました。埼玉郡は当初は前玉郡(さきたまぐん)という表示もされ、前玉神社もさきたま古墳群そばにあり、埼玉(さきたま)の地こそ埼玉郡の中心地と考えられ、ここが県名発祥の地とされました。

 その場所、「さきたま古墳公園」に、GW連休の好天気の中初めて訪れました。行田市街地から南東約1㎞にある広さ約37haの地に、5世紀後半から7世紀初めまでに作られた9基の大型古墳が集まっています。駐車場に着く直前、草の生い茂ったなだらかな山が見え、胸がわくわくしました。それは二子山古墳というこの公園内で最も面積の大きな前方後円墳です。通常は周囲の堀に水があるのかもしれませんが、現在長期整備中のようで、水は見当たりませんでした。

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◆丸墓山古墳
 
 園内には芝生広場があり、5月4日に行われる火祭りのため用意されたわらの古代住居が建っていました。当日神話に模し、ここに火が放たれ燃やされるそうです。この広場からは四方に古墳が見渡せますが、目立つのは日本一の円墳と言われる丸墓山古墳です。高さ約19mで、階段で登頂できます。頂上からの眺めはなかなかのもので、ここからあの「のぼうの城」忍城(現在は行田市郷土博物館)も見渡せます。実際、1590年豊臣秀吉にこの城を水攻めで落とすよう命を受けた石田三成は、この丸墓山古墳頂上に陣を張ったそうです。(水攻めで沈まなかったこの城は「浮き城」と呼ばれました。)

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◆笑う埴輪

 古墳すべてを見て回りましたが結構な運動になります。園内には埼玉県立さきたま史跡博物館があり、古墳から発掘された埴輪や副葬品が展示されています。展示物の中でも稲荷山古墳から出土した「金錯銘鉄剣」は剣身の両面に115文字の銘文が記され歴史的価値の高い発見として話題となり、「画文帯環状乳神獣鏡」などとともに国宝となっています。それにしても、豊富で多様な埴輪に感じる古代人の造形センスは、あらためて見てもユーモラスで愛らしく、遠い昔の創作という気がしません。

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◆八幡山古墳石室

 この地域には古墳公園以外にもいくつか古墳はあり、それぞれ貴重な価値のあるもので、その中の1基に立ち寄ってみました。さきたま古墳群の北東方向、八幡山公園の一角にある「八幡山古墳」です。周辺は工場・住宅地でこんなところに古墳?とそれらしい場所が見つけられず迷ったのですが、さり気ない案内看板を見つけ、何とか辿り着きました。盛り上がった草地の上に、石を積んだ石室が露出し、奈良の石舞台に似ていることから「関東の石舞台」と呼ばれています。確かに独特の存在感があります。

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◆八幡山古墳石室内部

 入口には扉が設置されていますが、開いていて内部に入れます。中は昼でも暗くて、あまり居心地がよくありません。羨道、前室、中室、奥室と続きますが最後の奥室は真っ暗ということもあり、入る勇気はありませんでした。なお、本来古墳内にあるはずの石室が露出しているのは、昭和初期に沼の干拓に墳丘盛土が使われてしまったためで、石室がむき出しになった時点で事の重要性に気づいた当時の村長が保存へと動き埼玉県指定史跡となりました。古墳の規模は推定直径80m・高さ9.5mの円墳で石室全長16.7m。ちなみに、ここを築いたのは聖徳太子側近の舎人だったと考えられているそうです。

 遥かな古代のロマンに浸った一日でした。帰宅してから子供の高校日本史の教科書を見ると、さきほど史跡博物館で見た「金錯銘鉄剣」がしっかり掲載され、なるほどと展示物の重要性をあらためて認識しました。



■埼玉県立さきたま史跡の博物館
埼玉県行田市埼玉4834   TEL 048-559-1111(代表)
開館時間 9時~16時30分(入館受付は16時まで)
     7月1日~8月31日 9時~17時(入館受付は16時30分まで)
休館日 月曜日 (祝日、振替休日、埼玉県民の日(11月14日)を除く)
    12月29日~1月3日
観覧料 一般 個人200円 団体120円
    高校生・学生 個人100円 団体60円
    中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方(付き添い1名含む) 無料

■八幡山古墳石室
埼玉県行田市藤原町1-27-2
公開日 土曜日、日曜日および祝日(年末年始を除く)
公開時間 10時~16時

March 11, 2016

In My Town・・・ポエジーな休日


 旅気分で足を伸ばして美術館やギャラリーを訪れるのも楽しいですが、ごく身近な場所を見渡してみると、ほんのりアートの薫りに出会えるスポットがあります。休日にさいたま市の自宅近辺で目にしたそんな場所を紹介します。

 JR武蔵浦和駅西口近く、子供が通っていた小学校のすぐそばにあるお店、器ギャラリーハセガワ。小ぶりな店構えですが、気づいてみると洒落たセンスにあふれたお店で、小さな吊り看板やOPENを示す手作りディスプレイは味わい深いものがあります。外からは大きなウインドウ越しに、格子状の棚に置かれたやきものの商品が見られ、どれも愛らしくオリジナリティある作品。お雛様の陶器の置物もありました。お店の中も形や色、デザインが個性的ながら使い易そうなやきものが品よく並んでいます。ひとつひとつ手作りでできた陶器は当然全く同じものは2つなく、商品というより作品と呼べるものです。

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 ショップを営むのは長谷川正治さん、松浦唱子さんでお二人とも通常は千葉の富津市で陶芸家として活躍されています。お二人以外にも全国各地の作家さんの作品が置かれていますが、もともとは常滑のセラミックアートスクールで陶芸を一緒に学んだ方たちで、その後各地に移ったものの、やきもの市などで交流を続け、陶器を仕入れているそうです。

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 お店には、なかなかこうは描けない脱力系のオリジナルイラストポストカードも置いています。無垢の力ともいうべき示唆に富んだ作品群は、やきものの無心の様相にマッチすると感じました。何気なく通り過ぎる道に、趣深い作品世界の広がる場所がある。そんな印象を受けました。



 もう一つですが、JR中浦和駅東側にある、以前は毎週のように訪れた別所沼公園。子供が成長してからは、何年も行っていませんでしたが、ここにもアートスポットがあります。彫刻家 中野四郎の作品「掛けた女」や、メキシコ州から贈られた「風の神の像(エヘーカトル・ケッツアルコアトル)」などもですが、はずせないのは2004年に園内に建てられた「ヒアシンスハウス(風信子荘)」という小さな家。詩人・建築家の立原道造(大正3年~昭和14年)が24歳で夭折する1年前に構想した別荘です。道造は東大建築学科で学び、在学中に辰野賞(奨励賞)を3度も受賞。同時に詩歌においても少年時代から才能を示し、著名な作家たちが名を連ねる「四季」同人となって活躍、第1回中原中也賞を受賞しました。そんな彼の未完の夢がこの小さな空間であり、没後65年後に、地元の建築家、文芸家たちの協力で、道造の遺したスケッチをもとに作り上げられました。

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 河津桜が少しだけ咲く日曜の午後、人々が思い思い寛ぐ穏やかな公園の空気の中にその家は溶け込んでいました。大きな窓から、沼と、河津桜も見えます。緑豊かな季節なら木々の爽やかな息遣いが感じられたでしょう。据え付けの机や椅子もベッドも彼のスケッチを忠実に再現しています。木の温もりの中に、そよ風が渡る自然を感じる家。道造はこんな心地よい秘密めかした空間を望んでいたのかと深い共感を覚えました。この家は芸術・文化の催しにも活用されているようです。過去の詩人の想いが何十年もの時を超えて人々に継承され実現する、その情熱の結集力に感動を覚えました。

 すぐそばにある見知った場所も、気づかないうちに変化し、アートに根ざした憩いの場として存在感を増していた・・・時を想い、感慨にふける日でした。

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■器ギャラリーハセガワ
 さいたま市南区沼影1-5-20  TEL 048-837-0639
 営業日 木・金・土  (イベント開催時は変更の場合有り)
 営業時間 13時~18時 (不定休)


■ヒアシンスハウス
 さいたま市南区別所沼公園内  
 開室日 水・土・日・祝(年末年始は休室)
 開室時間 10時~15時

January 15, 2016

山猫の森から

 
20160115entrance_door.jpg 宮沢賢治の作品から店名を起用する例は多々あると思いますが、ここまで自然に作品と現実の印象がシンクロしてしまうことはあまりないのでは...。今回伺ったギャラリーの感想です。

 お正月が終わってすぐの連休初日、寒いながらも穏やかに晴れた気候にほだされ、思いついて越生まで車を走らせました。梅林が見られたら幸運と思いつつ、道に迷いながら辿り着いてみると、さすがにまだ早く、花の気配は全くありませんでした。

 越生梅林を通過する埼玉県道61号からあじさい街道へ入り山林の中の細道を上がっていくと、右手にロッジのような一軒家が見えてきます。門前には、猫のシルエットが乗る年季の入った金属とガラス玉のオブジェ風アーチがあり、「山猫軒」という文字が形作られていました。宮沢賢治の「注文の多い料理店」に登場する店の名前ですが、この場所にあるとまさしく幻想譚の世界そのもの。古びたたたずまいにやや気後れしながら、門を通り階段を上がると建物の扉も巨大な山猫の笑い顔でした。靴をスリッパに履き替えて入ってみると、そこはパンやお菓子、その他グッズが並ぶプチ賑やかなスペースで、外観とのギャップに一瞬異界に入り込んだ印象を受けます。

20160115yamanekoken.jpg 開けかけたガラス戸の奥の部屋に絵が掛かっているのが見えたので、入って行くと何点かの展示作品と共に岩田壮平画伯の、金地に赤い椿を描いた小品もありました。その右の部屋はグランドピアノといくつかのテーブル席が設置された広いメインホール。木材で組まれた高い天井には天窓から光が差し込んでいます。柱や壁にはさり気なく絵画作品が展示されています。さらに吹き抜けの正面のロフトは2階の空間となっており、こちらにも作品が並んでいました。こことつながる右側のロフトに多数のスピーカーが置かれ、静かな音楽が流れています。暖炉には火がくべられ、テーブルのお客さんも寛いだ感じで静かに飲食を楽しんでいます。私は古代米の野菜カレーとコーヒーを賞味した後、展示作品を鑑賞させていただきました。現在「倶楽部山猫絵画展」(越生での田植えを通して出会った日本画のグループ展)が開催されており、岩田画伯を含む総勢24人の作家さんの多様な作品が展示されています。いずれも、テーマ・作風ともに日本画という枠にとらわれていない若々しさが感じられるアート作品です。

20160115gallery_and_cafe.jpg 展示作品もさることながら、和と洋の要素を持ったレトロ感あるこの建物自体に強く興味がわき、オーナーの南さんに建物の来歴を伺ったところ、驚くべきことに、南さんご自身の手で平成元年に建てられたということでした。当時大きく紹介された建築雑誌2誌を見せていただきました。釘を1本も使わない伝統工法で、1,000本もの楔を作って組んでいるそうで、大変な手間暇がかかったとのこと。しかしそれはそれで充実した楽しい時間だったそうです。仲間の方たち40人ほどの協力をいただいて作り上げた家は、外装、内装に様々な人々の個性あるこだわりの意匠・造形が見られます。建物自体が複数の造形家のコラボレートによるアートといえるかもしれません。

20160115Second_floor.jpg ここにはもう1つ神秘的な場所がありました。亡き奥様の名のついた千代文庫です。農業、田舎暮らし、植物 他様々な蔵書とともに、宮沢賢治の手書き原稿の複製も置いています。隠し部屋のような造りの空間に、「~料理店」に登場する一番最後の部屋を連想しました。

 お土産に、入口付近にあったオーナーおすすめのカンパーニュ(田舎パン)を買って帰りました。帰り際、ハンモックのあるオープンテラスを見ると、暖かい時期に是非また来たいと思いました。


 
■ギャラリィ&カフェ 山猫軒

所 在 埼玉県入間郡越生町龍ヶ谷町137-5
電 話 049-292-3981
営業時間 11時~19時
営業日 金、土 日 祝日のみオープン
企画展示 倶楽部山猫絵画展(2016年1月1日~2月28日)


November 13, 2015

タイムスリップ-大正浪漫


20151113TanakaHouse1.jpg 秋の気配を徐々に心身に感じる11月初旬、川口市にある「旧 田中家住宅」を訪れました。ここは以前来たことがあり、そのとき強い印象を受け、是非再度見てみたい場所でした。一言でいえば大正時代の和洋折衷による邸宅で、国の有形文化財に登録されています。これほど見ごたえのある古い時代の文化財に気軽に入り込めるのは大きな魅力だと思います。

 田中家は麦麹味噌の醸造業と木材商で財を築き、四代目田中徳兵衛によってこの邸宅が建てられました。大正13年(1923)に完成した木造煉瓦造3階の洋館、昭和9年(1934)に増築した和館の他、茶室、池泉回遊式庭園などで構成されています。塔のようにそびえる洋館の外観は独特の様相で、その存在感を示しています。重みのある茶褐色のレンガに緑青の青味とアーチのついた白色系の窓枠が映える色彩、よく見ると重厚なシンボルが施された意匠など、荘厳で重厚な美しさです。

20151113TanakaHouse2.jpg 内部はまた秀逸でした。全部については語れませんが、いくつか挙げます。洋館1階の玄関は大きな神棚のスペースがあり目を惹きます。優雅な応接室の隣に来客用玄関があり、そこには美しいステンドグラスが設置されています。2階は階段の上に書斎や段差のある蔵があり、和館の2階にもつながっているようで、趣ある和室が隣接し、迷路のような幻想感。眺望を重視し、3階に大広間があります。いずれも年代物の美しい調度品に彩られています。アールデコ風の照明も見逃せないポイントです。目を惹いたのは、階段のスペースにある、部屋と部屋をつなぐバルコニーのような踊り場。残念ながら非公開場所につながっておりそこには立てませんが、何に使ったのか不思議な造りに感じました。

20151113TanakaHouse3.jpg 1階に降りて和館に行くと、日本間は全37畳で、やはり贅をつくしたことがうかがえる本格的な数奇屋造。障子の桟のラインもきれいですが、思わず見入ったのは、桂月山人と記された松林桂月の絵を掘った桐の欄間や、額装されているいくつかの桂月の山や植物の水墨画作品です。本物?と感嘆させられました。邸宅を出て、中心に池をもつ庭園を回ってみると、よく整備されて落ち着きのある庭で、庭そのものだけでなく、ここから見た邸宅の外観も美しい光景です。離れの茶室は戦後作られた比較的新しい建物で、和館の日本間とともに現在も茶会や句会などに利用されています。

20151113TanakaHouse4.jpg 時代を反映した意匠を施した建築物には限りない魅力を感じます。建物という空間の中に入り込むと、その時代にタイムスリップしたようにも感じられ、その時代の人たちの生活や視線を想い、深い感慨を覚えます。この旧田中家はその醍醐味をたっぷり味わわせてくれる場所でした。



国登録有形文化財
旧 田中家住宅 (川口市立文化センター分館)

所在 埼玉県川口市末広1-7-2   
問い合わせ 文化財センター TEL 048-222-1061
公開時間 9時30分~16時30分
休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は、その直後の平日)
    祝日の翌日(その日が休日または月曜日の場合は、直後の平日)
    年末年始(12月29日~1月3日)
入場料 一般 個人200円 団体1人160円
    小・中学生 個人50円 団体1人40円

September 18, 2015

Nostalgia for 深谷


20150918fukaya_station.jpg 関東にも凄まじい水害をもたらした台風を中心に、雨が降り続いた週でしたが、ようやく太陽が蘇った休日、高崎線に乗って深谷を訪れました。深谷と言えばレンガの街。深谷駅は東京駅に良く似た赤レンガで覆われ、中心市街地にも古いレンガ造りの建物が残っています。深谷の日本煉瓦製造会社で造られたレンガは東京駅や司法省(現法務省)、日本銀行(旧館)など日本を代表する建物に使用されていたとのことでした。

20150918nanatsuume_yokocho.jpg 深谷の街は休日ということもあってか、非常に静かでのどかです。レトロな骨董屋もあれば若者向けの洒落たコミュニティ・スペースも目にします。旧中山道沿いに古いレンガの煙突が見えてきます。「七ツ梅」という、酒造の煙突で、ここが本日訪れたかった場所です。七ツ梅は江戸時代を代表する銘酒のひとつで、元禄7年(1694年)創業し、以来三百年の歴史を持つ県内1、2を競う老舗蔵元でしたが、2004年廃業、現在は一般社団法人まち遺し深谷が、この施設の保存・運営・管理を行っています。

 敷地内の母屋、店蔵、精米蔵、釜屋の建物があらたに様々な店舗やホールとして活用されています。「とうふ工房」(手作りとうふ)、「深谷宿本舗」(手作りBOXマーケット)、「カフェ七ツ梅結い房」(コーヒー、カレー)「よろずの郷」(木工所)、「鬼義」(鬼瓦工房)などなど個性あるお店が集まっています。店舗はいつも全部開いているわけではなく、この日もいくつか閉まっていました。

20150918fukaya_cinema.jpg そんな中、七ツ梅の中核にあるのが「深谷シネマ」で、風情いっぱいの街の映画館です。この酒造跡に最初にできたのがこの深谷シネマだそうです。上映作品に穏やかな叙情を感じるのは気のせいでしょうか。今回は入りませんでしたが、いずれ是非映画を鑑賞したいと思います。



20150918sugata_syoten1.jpg そして「須方書店」という古書店の店内を物色しました。ギターのBGMが流れ、正面奥に、酒桶の蓋に見える巨大な丸い板が壁を覆っています。興味深い古本もいくつかあり、レコードも置いていました。手に取るのも気後れする和装の古書もあれば、書名は読めないものの装丁のデザインが目を惹く明治時代の古書も置いていました。売る側も買う側も本に接するのを楽しむ空間と感じました。様々な本が置かれる中で、本とは無関係に机上にディスプレイされたオブジェをアートとみるかどうか気になる内装でした。

20150918sugata_shoten2.jpg 古い民家や蔵をあらたに活用する試みはしばしば見られ、私自身とても惹きつけられます。特にこの七ツ梅横丁敷地の建物は極めて古く、歴史的・文化的に興味深い様相で、味わいに溢れていますが、老朽感がシュールすれすれの印象を受ける側面もあります。深谷に息づくノスタルジーの美学を象徴するかの様な濃い空間を体感しました。

July 17, 2015

緑の参道、穏やかな日


20150717hikawa_jinja.jpg 梅雨真っ只中の7月、2週続けて日曜日に大宮公園を訪れました。なぜ2回来たのかは後ほどお話しします。大宮公園といえば氷川神社。2000年以上の歴史をもち、大いなる宮居として、大宮の地名の由来になった関東一円の信仰を集める日本有数の古社です。本日は参拝が目的ではないのですが、あらためて神社へ続く参道を踏みしめました。氷川参道は旧中山道から南北に2kmのび、道の両側にケヤキ並木が続く美しい参道です。厚い曇り空に覆われた日でしたが、緑が爽やかで雄大な景観を印象付けてくれました。

 境内に入らず、参道右から大宮公園に入り少し歩くと小型動物園があります。ツキノワグマやブチハイエナ、種々のサル、鳥類などがいました。ケナガクモザルのアクロバティックな動きは見ていて飽きないし、対照的に造り物と見まごうようなヤクシマヤギの静止した姿も心和みます。ここにはカピバラもいて、眺めているとその落ち着きはらった所作や周囲に動じない穏やかな表情に、世俗を超えた悟りの姿を垣間見た気がしました。しかし本日は動物園で癒されるのが目的ではなく、程なくここを後にしました。

20150717GalleryElPoeta.jpg 大宮公園入り口まで戻ると、すぐ向いに、ギャラリー「エル・ポエタ」があります。こちらが本日の目的地でした。小ぶりな印象の外観ながら、扉を開けるとスペインの田舎風漆喰壁と煉瓦が使われた重厚感ある内装となっています。35年を超える老舗画廊で、詩人を意味する名に相応しく、洒落たコンテンポラリーアートや水彩を中心に展示会を開催しています。

20150717SatokoOzawa_Works.jpg この日は、小沢郷子さんという作家の個展開催中でした。いずれの作品も赤という色彩を使用して形作った抽象画作品です。色面というテーマから展開される様々な表現の作品は静かな「気」を内在させ、抽象画でありながら自然の一部を切り取った具象画のようにも感じられます。技法としては、オイルパステル、水彩、アクリルなどの画材を併用したミクストメディア。個展はこの日7月5日が最終日でした。翌週からはまた別作家の個展が開催されるとのことで、その作品も是非観たいと思い、ギャラリーのオーナーに翌週も伺うことを約束しました。

20150717DaisukeKoyama_Works.jpg 翌週の日曜は梅雨が明けていないにも関わらず、打って変わって猛烈な日照り。汗をぬぐいながら再びエル・ポエタを訪れると、コヤマ大輔さんという作家の水彩画作品による個展初日でした。東京藝術大学日本画科出身のコヤマ氏は確かな技術に裏打ちされた非常に完成度の高い水彩画を描いています。海外の著名な水彩画作家を連想させる味わいある表現にしばし見入ってしまいました。ご本人はまだ40歳に満たない若さなのですが。今後が期待される作家ですし、さいたま市の浦和出身・在住とのことで親近感を感じました。

 この日はすぐ前にあるNACK5スタジアムで大宮アルディージャの試合の日らしく、外へ出るとオレンジ色の人だらけ。浦和在住の私は目立たぬよう穏やかに通り抜けて帰途につきました。



■Gallery エル・ポエタ

所 在  さいたま市大宮区高鼻町2-285-8
電 話  048-644-9877
営業時間 11時~18時
定休日  不定休

※コヤマ大輔さんの個展は7月20日(月・祝)まで開催。

May 22, 2015

野外のアート散策


 ゴールデンウィークも過ぎ去り、急に暖かく(いや、暑く)なってまいりました。皆様体調管理に気をつけてお過ごしいただきたいと思います。天気の良い日は気持ものびのびとし、戸外に出かける機会も多くなってきます。私自身も、休日ふらりと出かけ、今回は野外で鑑賞できるパブリックアート=彫刻に視点を置いて観て回りました。

20150522saitama_oozoranisumu.jpg 自宅から程近くにあるさいたま新都心は、話題のコクーンシティで賑わいを見せています。新都心駅西側のぺデストリアンデッキは、ランドアクシスタワー、合同庁舎を経て、日本郵政庁舎まで1.2キロほど続きますが、休日は賑わいから外れひっそりとしています。その歩道や広場のところどころにさり気なく立体造形作品が顔を見せています。2000年に完成したこの新都心を特徴づけるデッキの近未来的様相に合わせ計画的に設置されたアートらしく、多様な作品が点在していますが、特に作家と小学生たちのコラボレーションによるというオブジェ作品群が心に響きました。

20150522saitama_hosinisumu.jpg 小さくて愛らしく素朴性を持つ様々な夢の動物が並んでいたり、たくさんの子どもたちの作品を外から貼り付けて球体に形作った作品など、その場所と違和感のない立体が、目と心を愉しませる役割を果たしています。よく注意をしないと気付かないものも多く、こんなところにこんな彫刻発見!という散策の醍醐味を味わえます。発見できていないものもまだまだあるだろうと思いつつ本日はここを後にしました。



20150522kasukabe_jeans_summer.jpg 少し足をのばして、彫刻のある街づくりを標榜する春日部市を訪れてみました。目に付いたのは春日部駅東側の古利根公園橋にある数々の人体彫刻。佐藤忠良、舟越保武など著名な彫刻家を含む格調高い作品群が配置されています。その他駅前通りにも色々な彫刻が見られ、図書館や文化会館、市役所等にも設置されています。彫刻を身近に感じられる、美しく個性的な街づくりで人々に文化的なゆとりやうるおいをもたらそうという春日部市の事業により、1990年代に20体以上が設置されたようです。

20150522kasukabe_tabibitokokage.jpg 叙情性を感じたのはまちなみ公園にある池田宗弘作「旅人・樹陰」という古い自転車を前にたたずむ人の彫刻で、実際に緑豊かな木の下に設置されています。また、2人の離れた少女たちが見えない糸でつながった糸電話で話をしている廣嶋照道作「あのね」(公園橋通り)も懐かしさと深遠な意味を感じました。まだまだ見るべき作品があるはずとは思いながら、帰路につきました。

 野外彫刻は都市計画とも密接に関わるもので、時代・街の景観や目指す効果により設置される彫刻作品の傾向・内容は大きく変わります。さいたま新都心と、春日部駅周辺は明らかに景観が異なり、目指すイメージ、もたらせるものに差異があると思われます。文化的香りが異なる2つの街にとって、それぞれに適合した異なるパブリックアートは、街の重要なファクターとして生命を宿し息づいていました。


May 8, 2015

世界一大きな加須の「ジャンボこいのぼり」


Carpstreamer1.JPG いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。私はゴールデン・ウィークに「加須市民平和祭」に行ってきました。「加須市」は埼玉県の市町村では唯一、北関東3県である群馬県・栃木県・茨城県と接する市で、鯉のぼりの生産量は全国1位を誇ります。ちなみに読み方は「かぞ」です。


 お目当てはこの平和祭で揚がる、世界一大きい「ジャンボこいのぼり」。なんと全長100メートル、重量330kg!建設用のクレーンで揚げるようですが、想像を超える大きさです。日本一の名産地をアピールしようと始まったのが、このジャンボこいのぼり遊泳だそうです。

Carpstreamer3.JPG 「ジャンボこいのぼり」は昭和63年、地元青年会議所の協力のもとに作られ、毎年5月3日の市民平和祭で、会場の利根川河川敷緑地公園で遊泳が行われます。平成18年5月には、サッカー・ワールドカップ・ドイツ大会の日本代表初戦の地、カイザースラウテルンの大空を雄大に泳ぎました。現在は平成25年に作られた「ジャンボこいのぼり4世」となります。

 天候に左右されるイベントでしたが、当日は晴天に恵まれ、絶好の鯉のぼり日和となりました。端午の節句に相応しく、早朝から家族連れを中心に多くの人で賑わい、観客席となる土手はあっという間に埋まっていきました。地元の方の出し物や露店、テレビ・新聞社など報道機関の取材もあり、会場は大変な盛り上がりでした。

Carpstreamer2.jpg そして、いよいよ巨大なクレーンが動き出し、口から伸びたロープが吊り上げられると、大きな歓声があがりました。この口の部分だけで直径10mもあり、人がとても小さく感じられます。口から徐々に空気が入って鯉のぼりの形になり、ゆっくりと風になびきます。



 下に見える鯉のぼりも、実際はかなり大きなサイズです。屋根よりはるか高く、怪獣のごとく泳ぐ「ジャンボこいのぼり」の様は圧巻でした。遊泳時間は30分。風をうけて大変気持ちよさそうでした。


March 27, 2015

森のイノセントワールド


20150327g_entrance.jpg 温かさと寒さがせめぎ合う3月。まだまだ寒さが勝るこの日、埼玉県伊奈町の高校で開催された中学生の剣道大会を観戦したあと、高校の近くにあった気になるギャラリーを訪れました。

 「寧(ねい)」という名のカフェギャラリーです。表札のある門の奥はうっそうとした自然味豊かな雑木林で、なかなか建物が現れず小径がなければ森に迷いこんだような印象です。



 お稲荷さんの小さなお堂の先にテラスと土壁の洒落たカフェの建物が現れました。入口がどこか迷いつつ、素朴な木の扉をあけると抽象的な平面作品が飾られているギャラリー空間に出会え、ほっとしました。

20150327gallery_display.jpg この日は日本在住のフランス人女流作家、エザール・ドミニックさんの個展が開催されていました。作品は和紙を墨で滲ませたモノトーンので世界で、木目を版画のように墨で写し取った作品もあります。
題して「ウツス"deplacement"」(3月25日終了済み)。



20150327DominiqueHezard_works.jpg 美しい森のような庭の佇まいが眺められるカフェで、薪をくべた本物の暖炉に温まりながら、キーマカレーセットをいただいたあと、歴史ありそうな隣の母屋で行われているドミニックさんのインスタレーション展を見せていただきました。




 ところどころ畳をはずして重ね、外したところには和紙を置いたり、木目を写した和紙作品が壁に掛けられていたり。整然とした緊張感の中に和の落ち着いた温もりを感じる作品でした。作者と話をしたところ、作家としての思いはあるものの、それを饒舌に説明することなく、鑑賞者それぞれの感じ方をしてもらえたらということです。

20150327cats_hall.jpg そのあと、接客いただいた浜野茂則さんという画家であるオーナーが作成した、猫堂という猫の頭を彷彿させる小さなお堂を鑑賞。中には猫に関わる様々な制作物が置かれ、不思議な世界観を放っています。ドミニックさんとは対照的なイメージで、剝き出しの情熱が伝わってきます。



 このカフェギャラリー全体のたたずまいは、浜野さんの味わいある作品の個性と別世界の展示イベントが不可思議に同居し、無垢な懐かしさに先鋭的で端正な安らぎが重なる幻想空間の趣きです。



■イノセントアートギャラリー&カフェ「寧」

 所 在  埼玉県伊奈町大針635-4
 電 話  048-723-7371
 営業時間 11時~19時
 定休日  木曜日

なお、3月27日(金)より4月8日(水)まで、写真展「タペストリー&キャンバスで表現する!」を開催しています。

December 12, 2014

漫画と盆栽の町


 さいたま市北区盆栽町にある大宮盆栽村は、その昔、東京の文京区団子坂付近に住んでいた多くの盆栽職人が関東大震災を契機にこの土地に移り住み、たくさんの盆栽園を有する自治共同体となったのが始まりで、現在も世界的な盆栽の聖地と言われています。今季一番の急激な寒波が訪れたその日、その盆栽村に近接する2つの公立美術館を訪れました。

 閑静な住宅街は石畳と木目のマップ標識で統一され綺麗に整理された印象です。庭の敷地にいくつもの盆栽鉢が見える盆栽園も目にします。住宅の1つの様にさり気なく溶け込む「さいたま市立漫画会館」に到着。一部工事中でしたが、普通に観覧できました。入場は無料です。

20141212manga_museum.jpg この美術館は1966年に創設された日本初の漫画に関する公立美術館です。近代風刺漫画の先駆者で、日本初の職業漫画家といわれる北沢楽天の晩年の住居跡に建てられました。楽天は英字新聞社で西洋漫画の手法を学び、当時評価が低かった風刺画を、近代漫画として確立させました。その活躍ぶりは語り尽くせぬもので、明治から昭和にわたり、新聞や雑誌で、政治・社会の世相を巧みに捉えた風刺漫画や、ユーモラスなコマ漫画などを描き、後継の多くの漫画家に影響を与えました。ここには楽天の晩年の作品や愛用品が常設され、画室もそのまま保存されています。生前からあった日本庭園も鑑賞でき、穏やかな晩秋の風情を楽しめました。

20141212manga_museum_garden.jpg この日は企画展として、「さいたま市民漫画展2014」の展示会初日でした(2015年2月15日まで開催)。この漫画展は小学生から一般まで、国内外・プロアマを問わず作品を募集し、審査するコンテストです。毎年開催され来年30回目を迎える、全国で最も長く続いている漫画応募展です。11月に先行して同じ展示会を別の公共施設で開催済みということもあり、あまり鑑賞者は来ていませんでした。実は恥ずかしながら今回初入賞した筆者の作品も展示されています。今回の募集テーマは「しあわせ」でしたが、展示された小学生の素直な「しあわせ」観は、あらためてほのぼのとした気分にさせてくれました。

20141212oomiya_bonsai_museum.jpg ここから北へ数分歩くと「さいたま市大宮盆栽美術館」があります。こちらの建物も付近の住宅と違和感ない容姿で佇んでいます。盆栽文化を広く人々に親しんでいただくことを目指して、2010年に開館しました。盆栽というと、高齢者の渋い趣味という印象をもっていましたが、ここに展示されている作品は、そういうイメージよりも作品としての秀逸さに目を奪われます。

 展示室は、盆栽に関する知識を記載した解説パネルと季節に合わせて選定された盆栽がブース毎に展示されています。たくさんの美しく赤い実のなった作品が印象的でした。

 続いて「座敷飾り」として3種類の異なるスタイル(真・草・行)の床の間の見本が設営され、各部屋の特徴に合わせて、盆栽と掛軸が展示されています。掛軸と盆栽は密接に関わりあると感じました。

20141212bonsai_museum_garden.jpg 最後に戸外の盆栽庭園を鑑賞。常に40~50点の名品が見られます。ただひたすら寒かったので、スピーディーに見て廻り、建物内に戻りました。残念ながらこの日は展示替え期間で企画展示の開催はありませんでした。

 盆栽は人が自然に働きかけ、一緒に作り上げていく生きた芸術作品。優れた作品にはそこへ到達し維持するために想像を超えた根気がいるのではと敬服します。



■さいたま市立漫画会館

 さいたま市北区盆栽町150番地   
 TEL 048-633-1541
 開館時間 9:00~16:30
 休館日  月、祝日の翌日 年末年始

 
■さいたま市大宮盆栽美術館

 さいたま市北区土呂町2-24-3
 TEL 048-780-2091
 開館時間 11月~2月=9:00~16:00  3月~10月=9:00~16:30
 休館日  木曜(祝日の場合は開館) 年末年始 臨時休館あり
 観覧料  300円(20名以上の団体料金200円)


September 5, 2014

さり気なくアートな空間で一息


 お盆も終わり、夏もそろそろ名残惜しそうに後ろ姿を見せようとする頃、ふらりと映画を観に行き(るろうに剣心~京都大火編)、途中で終わった感が名残惜しく、続編を見ねばと思いつつ、さらにふらりと近くにあるアルピーノ村に立ち寄りました。

G_inside_20140905.jpg アルピーノ村とは、さいたま新都心にある、フレンチやイタリアンのお店や、お花屋さん、お菓子屋さんなどが大通りをはさんで並ぶ店舗空間で、(たぶん)知る人ぞ知る人気スポットです。実はこれが初めての訪問ですが、それぞれのお店の何ともさり気なくお洒落な佇まいが気持ちを和ませます。ヨーロッパの素敵な邸宅を想わせる「お菓子やさん」という洋菓子店に入ると、その奥に、「あるぴいの銀花ギャラリー」という画廊があります。

G_inside2_20140905.jpg 画廊といってもかしこまった感じはなく、菓子店の空間の延長で、ちょっとアートに触れられるという印象です。その時は「アイデアを具現化する-生活の道具 考案と制作と展示」という催しでした。椅子やラック、ハンガー、状差し、花瓶、カットボードなど、ユニークに設計されたデザインが、職人的技術で美しく味わい深く製品化されていました。町田市の工房団地に集まった4人の若い作家さんたちの作品だそうで、作家さんが気さくにお話をしてくれました。

karakurin_20140905.jpg ギャラリーのオーナーの方は、「画廊というと限られた人々が訪れる場になりがちだが、菓子店舗とつなげ、その境界をなくすことで、より幅広く子どもも含めたくさんの方に、気軽に作品に接してもらえることを意図した」とおっしゃっていました。そしてこのアルピーノ村の各お店には、このギャラリーと関わるアートやデザイン作品がさり気なく置かれているそうです。「お菓子やさん」にも、テーブル等なるほどと思わせる家具類が見られますが、何といっても目を惹くのが、レジの後ろ上部に掛けられた、井村隆先生の金属加工によるシリーズ作品「カラクリン」。レトロなSF的オブジェは、柔らかな手作り感と無骨さがあり、生命を吹き込まれたようで、夢と温もりにあふれています。

 さらにこのアルピーノ村を語る上で外せないのが、鈴木悦郎先生の作品だそうです。悦郎先生は大正生まれの画家・イラストレーターで、雑誌『ひまわり』『それいゆ』などの挿絵や本の装幀、バレエ美術など幅広い分野で知られています。昨年惜しくも亡くなられたということですが、お店の2階も(式場の空間のようですが)見せていただき、数点の悦郎先生の抽象作品が飾られていました。確かにお店全体を形作るVI表現というか、さり気ない装飾や包装紙、袋などの愛らしいデザインは鈴木悦郎先生の手によるものです。

 1969年に最初にフレンチレストラン「アルピーノ」が誕生し、徐々に発展してきたそうで、このギャラリーも老舗の歴史を持つわけですが、全くそういうイメージはなく、お菓子の可愛くてフレッシュな美味しさが、そのままギャラリーに息づいているようです。



■あるぴいの銀花ギャラリー
G_entrance_20140905.jpg
 さいたま市大宮区北袋町1-130

 電  話 048-647-2856
 営業時間 11時~18時  
 定 休 日 火曜日

July 11, 2014

万華鏡三昧


kaleidoscope_museum_entrance.jpg浦和にほど近い川口に、日本一の万華鏡コレクター、大熊進一氏が館長を務める日本万華鏡博物館があると知り、ちょっとわくわくしながら見に行きました。

川口駅近くのマンション1階にあるこの博物館は、狭いこともあり、事前に予約が必要です。また、「見る」コースと、自分で「作る」コースがあり、今回は「見る」だけにしました。でも、館長自ら万華鏡の歴史や種類について丁寧に説明いただき、内容の濃い閲覧になりました。

kaleidoscope_museum_exhibition.jpg万華鏡というと、神秘的で魔法的、不可思議で怪しい世界というイメージがあり、先ほどのわくわく感もそんなところに起因していたのだと思いますが、館長の話は科学的かつ文化的で、万華鏡の構造の違いにより現れる模様の違いや、時代による万華鏡の扱いの変遷についてなど、現物を前に理解・体感することができました。

万華鏡は1816年にスコットランドで発明され、すぐに世界に広まり、3年後には日本で見られた記録があるそうです。当初は非常に高級な科学的工芸品で、裕福な家に置かれた嗜好品でしたが、素材や作りが簡易化され、特に戦後、工芸品からおもちゃとして広まったようです。その他、国により表面のデザインはその国らしさが出ていることなど興味深く拝聴しました。戦後占領下にあった日本で、万華鏡玩具がアメリカ向けに作られ、輸出されていましたが、その表面には「MADE IN OCCUPIED JAPAN」と書かれており、日本が戦争を背景にした日陰の時代があったことを偲ばせます。

1980年頃より万華鏡はより精巧な鏡の開発に伴い、玩具からアート作品として発展することとなり、万華鏡作家による新たに美しい鏡の世界が生み出されています。展開される模様、スコープ全体の形状両面でいかにオリジナリティが出せるかがアートとして問われる要素だということです。
3d_kaleidoscope.jpgこの博物館で作られたいくつかのオリジナルの万華鏡(ベアーズ・スコープ)は、ダンボールを加工して作られていたり、立体的な円形状で変化していくように見える模様の中で一瞬クマのキャラクターが現れたり、なかなか面白い趣向のアート作品でした。

最後に見せていただいたスコープは透明な偏光板の破片を素材にし、自然の光を偏光作用で虹色に見せてくれる万華鏡でした。戸外で散歩しながら除くとその景観を美しい色彩と模様に変えます。科学的な仕組みとはいえ、やはり万華鏡は魔法に満ちた神秘的な道具に思えます。特にデジタル全盛の時代にも古来から仕組みを大きく変えず続いているそのアナログ世界は、子供の頃と変わらずなぜか心を魅了するのです。



■日本万華鏡博物館

埼玉県川口市幸町2-1-18-101
電話 048-255-2422 FAX 048-255-2423
開館 10:00~18:00(予約制、毎正時ごと予約可能)
定休 不定休
料金 見るコース 1,000円 
   作るコース初級 1,500~3,000円
   作るコース上級 6,000~8,000円

May 23, 2014

浦和のギャラリー散策


g_yanagisawa2.jpg 初夏の陽気が日々天気図を占め、心も開放的となる時期となってきました。穏やかな風と明るい日差しに誘われ、さいたま市浦和駅西口近辺を散策しました。

平安時代に創建されたと言われる古刹・玉蔵院。喧騒から無縁の地を中心に、その周辺の石畳はさりげない趣を印象づけます。そんな石畳が続く裏門通りは、つい立ち止まって見入るレトロで風情豊かな装いのお店も多く見られます。「やじろべえ珈琲店」「手焼きせんべい三代目満作」「和浦酒場」などなど。つぎはぎな印象の銭湯「稲荷湯」も好きな外観です。

g_yanagisawa1.jpg そして訪れたのは中山道沿いにある、老舗ギャラリー、「柳沢画廊」。現代抽象画中心で現代版画から現代美術全般の企画展を開催している画廊です。この日も小ぶりで品の良い空間に、現代美術が並んでいました。筆塚稔尚(ふでづかとしひさ)という作家さんの個展開催中でした。「muragimo」という、質感ある様々な色の紙に有刺鉄線のハートが組み合わされた小さな作品が壁面に多数並べられていたり、質感ある空間に三角状の対象が浮かぶ木版画作品など、静けさの中にチクリとした刺激を感じるような印象の抽象造形作品でした。
 
rafu.jpg (たぶん)オーナーの方に、ご挨拶がてらこのあたりの画廊についてお尋ねしたところ、1軒面白いギャラリーがあると紹介してくれました。毎年年始に参拝する調神社のすぐ近くにある「楽風(らふ)」という喫茶ギャラリーです。早速行ってみました。

 「青山茶舗」という老舗の日本茶店。その奥の敷地に120年前に建てられた納屋を改装、1階は日本茶カフェ、2階はギャラリーとなっています。知らなければ絶対勝手に入りこまないと思う場所にあり、本物の時代性をまとう内・外装を前に、懐かしい空間がもたらす癒しの力を感じずにはいられません。

raku2.jpg 1角には入れ替わりのワンクリエーター展示販売コーナーがあり、この日は手編みのバッグ、小物、アクセサリーが並べられていました。テーブル上の手作り感ある小物も目を和ませます。冷抹茶の洋菓子セットを美味しくいただき、ここを後にしました。そう、この日はあいにく2階のギャラリーは休廊でした。しかしこの喫茶室、そして作品らしき人形が置かれた緑豊かな庭も、まさにギャラリー空間として楽しめ、それで満足してしまったのでした。2階のギャラリーはまたあらためて鑑賞するのを楽しみにとっておきます。


■柳沢画廊
 さいたま市浦和区高砂2-14-16
 TEL 048-822-2712
 営業時間11時~19時
 定休日 水曜 年末年始 夏期

■楽風(らふ)
 さいたま市浦和区岸町4-25-12
 TEL 048-825-3910
 営業時間10時~19時
 定休日 水曜 年末年始 お盆

プロフィール

共同印刷株式会社SP&ソリューションセンター アート&カルチャー部では、日本画を中心とした複製画や版画の制作、販売をてがけています。制作の裏側や、美術に関係したエッセーを続々とアップしていきます。尚、このサイトの著作権は共同印刷株式会社又は依頼した執筆者に帰属します。

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