June 30, 2017

身近なものを額に入れること、のおすすめ。


『美術趣味』をご覧いただきありがとうございます。
本日は、身近なものを額に入れること、のおすすめです。


先日私は、ペルー・シピポ族の泥染めの布を額装いたしました。
額選びプロセスはやってみるととても楽しいです。
当社では各作品に合った額装を何度も検討し選りすぐったものでご提供しておりますが、
お手元の「彩美版®」も新しくお気に入りの額に入れ替えてみるのも楽しいかもしれません...笑


まず額選びには、既成額とカスタムメイド額があります。
もちろんご予算次第でいちからデザインを決める完全オーダーメードも良いですよね。
今回はお手軽に、かつコーディネートに幅があり作品にぴったりあった仕上がりになる
カスタムメードの額で選んでいきます。


カスタムメイドは各メーカーのものを合わせると1000種類以上あるコーナーサンプルの中から
自由に大きさを決めることができ、必要なパーツの組み合わせで額を作ることができます。
今回は布ですがお皿やボールなどの立体物も自由に額装できます。


まず作品に合い、自分のイメージする雰囲気の額を選びます。
セットの方法や、額の深さなどの構造部分も考えながら選びます。


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素材や色、形など色々とあります。
すっきりしたデザインよりも今回はボリュームのある額を選びます。
あえて素朴すぎないものを合わせてみます。


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それからマットをつけるのかつけないのか、またマットの幅を考え全体の大きさを
どのくらいにするのか、UVカットのアクリルを使用するのかなど作品にとって保存状態が
良く見栄えがよい方法で各パーツを選んでいきます。


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今回はマットを被せず、作品の下にベースマットを敷いて、そこに糸で布を固定する方法で額装します。
接着しないので後から取り外ししやすく、布の辺部分まで見せることで手仕事の風合いが際立ちます。
さらにアクリルを直接のせずに布の柔らかさを楽しみたいため、額内側のサイドに立ち上がりをつくり深さを出します。
マットを加工し2センチほどの空間を作ります。
立体感がでるのと質感が強調され、額のボリュームと布とのバランスも合ってきます。


こんな感じで出来上がりました!


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プリミティヴな幾何学模様がモダンなインテリアともマッチするような額装になりました。


【作品提供ご協力】
世界の染織や日本の民芸、北欧家具のショップ

ROUND ROBIN

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June 16, 2017

木の森の生命たち


 私の住む区内にちょっと気になる「美術館」があると知り、天気の良い休日を見計らって訪れることにしました。初夏の日差しが急に増してきたと感じながら、自転車で、もたもたペダルをこぎ、閑静な住宅街の中を何となくこのあたりだろうと目途をつけたものの、そう甘くはなく右往左往。ようやくそれらしき建物を見つけました。(もう一度すんなり行ける自信がありません。)

 美術館と言っても大きな住宅の風情。しかし入口の意匠はとても神秘的で、樽に乗った馬の首の彫刻があり、壁にかかった味わいある木の板には、M●KKINKANと読みづらいロゴが記されていました。ここはしまずよしのりさんという彫刻家の作品を展示する、モッキンカン木の森美術館です。

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木の森美術館入口

 館長である奥様のリコさんに案内されて入ると、大小様々な木彫りの彫刻が所狭しと置かれています。楽器を奏でる動物や巨大な顔面などインパクトある作品や、小さく可愛い不思議な人形類などとともに、額装された絵や小さなスケッチも壁を覆っていました。
 しまず先生はとても多才な方で、書や詩も書き、童話も作られます。小さな彫刻作品はアニメーション制作に使用したもの。ご自身で微妙に人形を動かしては撮影しコンピュータのソフトで作り上げたオリジナルアニメ作品がたくさんあります。

 正式な展示室である2階に上がるとさらに圧倒されます。様々な木彫りの作品は皆大きく、生命が宿っているかのように生き生きして佇んでいます。殆どが大きな木から彫りだされた一木造の作品で、モチーフも様々。巨大なアゲハチョウやトンボが宙を舞っていたり、羽を畳んだ妖精が眠っていたり、夥しくざわめくキノコと笛を吹く少年、祈りを捧げる森の精など、異界に住む住人が集合したようです。

 女性が馬車に乗った作品は未完成とのことですが、館長に促され背後から女性を見ると、たくさんの子供に乳を与えている動物の姿が現れました。表と裏が異なる造形になっている作品で作者のユーモラスな面が伺えます。作品の様相は制作年によっても変化しているようで、それも楽しめる要因です。初期からの膨大な作品はここ以外に米蔵の倉庫に保管されているとのこと。絵画作品中心に展示された小さな部屋もあり、無垢でファンタスティックな世界は私の心の琴線に触れ、何度も見入ってしまいました。

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賑やかな彫刻展示風景

 しまず先生は、1944年東京都生まれで、幼少は長野育ち。その後浦和に移り美術に没頭。高校卒業後作家活動に入り、絵画からレリーフ、そして独学で彫刻を始め、長野県での制作活動を経て70歳を超える今も精力的に制作を続けています。

 お会いして様々なお話を伺いました。哲学を感じる大人向けの寓話、なかでもサラリーマンを経験していないしまず先生だからこそ、サラリーマンの風習の奇異さが目に付く内容のお話は不気味でした。今の世は「無邪気さ」や「他愛ないこと」が少なくなったこと、しかし「人間はそんな少年時代がすべてを決定づける」ことなど、あらためて確かにと共感できる言葉にも接しました。

 しまず先生の作品は多様ですが、その作品には共通して、人間は自然と対立するものではなく、自然の一部だと捉えた思想が投影されています。「森から放たれた原木と対峙し、その原木に宿る『生命の立体』を見出し、迷うことなく彫り出す。彫り起こされた『生命の立体』はやがて連なり新たな森を形成する。」

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作品「羽化する少女」

■モッキンカン木の森美術館
さいたま市南区大谷口593
TEL 048-881-0524
営業時間10時~17時
定休日 木曜
Web  http://www.unpopu.com/cho/index.html

April 21, 2017

色褪せない芸術『岩田ガラス』とおすすめ展覧会『生誕100年 長沢節展』


いつも美術趣味をご覧いただきましてありがとうございます。

先日のブログ、彩美版®新作・小倉遊亀筆「初夏の花」はご覧いただけましたか。
透(すき)のボディに白砡(しろぎょく)が潔く、ツツジの伸びやかさを一層強調しているかのような存在感のあるこのガラス花器が、岩田久利(ひさとし)氏の手になるものであることはご存知でしたでしょうか。


本日は、「初夏の花」画中のガラス花器制作者、ガラス芸術家・岩田久利先生についてです。
遊亀が陶磁器を愛好していたことはよく知られていますが、1980年「耀」、1980年「椿」など遊亀の静物画には特徴的なガラス花器がたびたび登場します。
これらはみな遊亀がコレクションしていた、岩田久利氏によるガラス芸術です。


今回の彩美版®「初夏の花」制作を機に、久利氏の二女でいらっしゃる岩田マリさんとお会いする機会に恵まれ、たくさんの作品を拝見することができました。
そこでこれまで持っていたガラスのイメージがくつがえされてしまいました。
また、マリさんより貴重なお話がうかがえましたのでご紹介いたします。


ガラスは、食器、窓や蛍光灯などの工業製品も含めると、私たちの生活にとても身近な素材です。一般的にガラスにイメージするものといえば、「透明」「割れやすい」「冷たい」「静」などが想起されることと思います。
しかし、久利氏の父・藤七氏よりはじまる岩田家のガラス芸術は、それだけではないガラスの多面的な魅力を教えてくれます。
その魅力の真髄は、真逆にも「鮮やかな色(透明・不透明あり)」「重厚感(何層にもなり厚みがある)」「躍動感」でした。
(さらに制作時に直面するガラスの特徴、「柔らかさ」「熱さ(環境も含む)」についてはガラスを扱う困難さ、どのようにしてガラス芸術が生みだされるかに至る大事な特徴なではありますが、ここでは語りきれません。)


岩田家のガラス芸術の歴史を簡単にですがご紹介します。(以下敬称略)


■日本の色ガラス芸術のパイオニア 父・岩田藤七
(明治26年・1893年生まれ)

明治大正時代、板ガラスなど実用製品が躍進の一途を辿っていたガラス工業界。それに比べ、"ガラス工芸"は江戸時代以降途絶え不毛の時代を迎えます。
数十年の空白期の後、藤七は、現代ガラスのパイオニアとして色ガラスによる宙吹きの作品を作り始めます。
日本においては古来より陶器の作品が好まれ、茶道の影響もあり高いレベルの作品とされている中で、藤七はガラスの作品を日本の美術界にアートとして認められるよう努力を続け、近代ガラス工芸を日本の美術界に位置付けるに至ります。


代表作「貝」は、藤七ならではの大胆な気質だからこそなせる技だったといいます。
作品は今も日生劇場、ホテルオークラのオークバー(現在はリニューアル工事中)、メトロポリタン美術館(NY)、国立近代美術館などで観ることができます。


■「ガラス芸術」へ高めた功績者・岩田久利
(大正14年・1925年生まれ)

父・藤七の長男として生まれ幼い頃よりガラスに携わります。
久利は東京美術学校工芸部図案科卒業、その他、科学的基礎やガラス組成についても学び、藤七の築いたものをさらに極めていきます。
久利の作品は、端正・優美、高い技術に裏付けされた理知的な作品といわれ、初期の緻密な作風にはじまり、50歳代にはこれでもかと技術を凝らした根気のいる作品を、60歳代からは、線が細くなっていく身体とは対照的に壮大な自然をモチーフに力強い作風へと昇華します。


久利氏の作品は、幾何学模様のミニマムでモダンなデザイン的なものもあれば、ごつごつした大地や岩を髣髴とさせるプリィミティブなものまで多彩な創造性が魅力的でもあります。

iwataglass.jpg岩田久利作 〈第十回日展出品作〉 制作:昭和29年

1960年代には、家庭における食器、照明などのガラス製品が普及します。
特に岩田ガラスが生みだしたガラス照明は、一世を風靡します。金赤(ガラスの金赤は可愛らしいピンク色)でフリルをまとったガラス照明は結婚式の引き出物として多くつかわれていた、とのこと。
もしかしたら皆さまのご自宅にあるかもしれません。


今なお新しさが感じられる、岩田久利氏の作品を下記よりホームページにてご覧ください!


岩田家のガラス芸術
HP : http://www.iwataglassart.com


■岩田久利氏の長女でいらっしゃる、ガラス芸術家・イワタルリ氏の個展のご案内です。

イワタルリ展 
開催場所 SAVOIR VIVRE サボア・ヴィーブル 東京都港区六本木5-17-1 AXISビル3F
開催日時 2017年6月23日(金)から7月2日(日)まで
詳細につきましてはホームページにてご確認ください。
HP : SAVOIR VIVRE



【オススメ展覧会のご案内】

岩田ガラスの会社ロゴ、包装紙をデザインしたのが、「スタイル画」デッサンの名手・長沢節(せつ)氏でした。
久利氏は、画家、文芸家、俳優などジャンルを超えたお付き合いがあったといいます。
東京文京区弥生美術館にて、今年4月23日で閉校するセツ・モードセミナー公式の、最後の展覧会として下記展覧会が開催されています。
ファッションイラストレーターの先駆けであった節の〈スタイル画〉は鉛筆のほか毛筆で描かれた作品もあります。毛筆書に慣れ親しんだ世代だからこそ為し得るものなのでしょうか、「セツ美学」あふれる流麗なイラストは必見です!



IWATAlogo.jpg左上:岩田ガラス・ロゴ(長沢節)
setsu.jpg右下:岩田ガラス・包装紙(画:長沢節)


『生誕100年 長沢節展』- デッサンの名手、セツ・モードセミナーのカリスマ校長 - 

長沢節は1917年生まれ、文化学院卒、20歳で挿し絵画家としてデビュー。
太平洋戦争前より池袋近く要町の芸術家村・通称「池袋モンパルナス」に暮らす。
終戦後アメリカ兵より流れてきたヴォーグやハーパス・バザーを参考にみようみまねで洋服を描く。節の描くファッショナブルな女性像は〈スタイル画〉と呼ばれファッション界もリードする存在となる。
1954年より美術学校セツ・モードセミナーを主宰。(設立当初は「長沢節スタイル画教室」)
卒業生は、金子国義、山本耀司、安野モヨ子など。



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左上:C.ディオール「マリ・クレール」1998年6月号 掲載原画
右下:女性デッサン 1960年代


■開催要項■
会場:弥生美術館 1~2階会場
住所:東京都文京区弥生2-4-3
会期:2017年4月1日(金)~6月25日(日)
休館日:毎週月曜日 ただし、5月1日(月)は臨時開館
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料:一般900円(800円) 大高生800円(700円) 中小生400円(300円)
※竹下夢二美術館と併せての料金。()内は20名様以上の団体割引料金
TEL:03(3812)0012 FAX:03(3812)0699
HP : http://www.yayoi-yumeji-museum.jp

February 10, 2017

「全国カレンダー展」雑記


 今回はカレンダーのお話です。

 68回目を迎える「全国カレンダー展」が、1月14日(土)~1月18日(水)に、ゲートシティ大崎で開催されました。同時に「全国カタログ展」も同じ会場で開催、併せて見ごたえある展示会となっていました。(一社)日本印刷産業連合会とフジサンケイビジネスアイ主催の全国カレンダー展は、回数で分かる通り歴史あるコンテスト・展示会です。展示されているのは様々な会社や団体が発行する企業・販促カレンダーを中心に、個人購入の販売カレンダーも含め多様です。応募数の減少傾向は否めませんが、今回は600点程で、その中から選ばれた400点程が展示され、さらに選び抜かれた69点が入賞の栄誉を受けました。

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 印刷会社からの出品が多く、弊社も毎年いくつもの得意先企業のカレンダー製作に携わり、出品させていただいています。カレンダー展の長い伝統にも密接に関わってきました。現在企業カレンダーは、かつての異常な豪華さはないものの、依然企業の顔としての役割は担っており、特に近年はコーポレートコミュニケーション(企業の広報活動)ツールとして再認識されている側面があります。

 コンテスト入賞作品は当然こうした企業文化を伝える意義深いものが多く、グレードの高い仕様で製品化されていますが、受賞の脚光を浴びていなくても、企業としてのアイデンティティを表現する意図が伝わり、面白く見入ったものも多くありました。
 例えば自動車の修理・整備を行う某会社のカレンダーは、「武骨なカッコよさ」を表現すべく、コンクリート壁のようなセメントの板を地に、表紙はタイヤの跡のみが走り、本文各月は大胆にデフォルメされた欧州車のイラストが描かれたデザイン。個人的に気に入ったテイストでした。

 某ミシンメーカーのカレンダーは、そのミシンで作成したキルティングなどのソーイングアート作品を紹介。自社製品の可能性や楽しみを伝える役割を果たしています。
 また、自然風景写真はカレンダーとして最も人気の高いモチーフですが、それだけにたくさんの企業で作られており、その中でどう差別化し特徴を出せるかが問題です。某電気メーカーは「流れ」をコンセプトに川のシリーズを設定し、川の風景と動物を捉えた「川 と命」をテーマに写真選定。他社とは一味異なる統一感を持った構成に上がっていました。
 装飾品という形をとりながら、さり気なくお客様に長期にわたってメッセージを伝える・・・企業カレンダーにはそういう穏やかな訴求力があり、アート性と企業のアピールを如何にスマートに両立させるかがポイントです。

 他社製作のカレンダーにスペースを割きましたが、最後に弊社の入賞カレンダーもご紹介いたします。日本商工会議所会頭賞及び金賞を受賞した清水建設(株)は、グラフィックデザイナー・上條喬久氏に依頼して制作を続けている、WINDSCAPE MINDSCAPEシリーズ。絵柄は一貫して建設をイメージした窓から見る心象風景を表現。今回は平面分割でできたシンプルな形を質感ある色彩で描いたアート作品です。紙製のリングを使用したスケッチブック風のスタイルです。

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清水建設株式会社

 
 銀賞に輝いた(株)資生堂の2017資生堂ビルカレンダーは、グラフィックデザイナー・仲條正義氏のタイポグラフィカレンダーで、仲條氏のオリジナル制作のタイプフェイスで構成。B1サイズ・1枚タイプのカレンダーで、好みで選べるように表裏異なる色で作られています。暦配列の既成概念を崩し、それを判読する楽しさがあり、数字だけでデザインされた洒落たインテリアポスターとして飾れます。資生堂の先鋭的な企業文化をイメージさせます。

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株式会社 資生堂


 展示会場で、小さな男の子と彼を抱っこしたお父さんがカレンダーを1枚1枚めくりながら歓声を上げていました。見ていたのは筆者が担当した(公財)東日本鉄道文化財団の鉄道博物館カレンダー(奨励賞受賞)。同館所蔵の歴史を刻む数々の列車の模型を撮影して構成し、各写真に列車のもつ特色を暗示する落書きのような線画イラストを愛らしく絡めています。こうして感嘆を持って見てもらえるんだと、心が温まりうれしくなりました。

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公益財団法人東日本鉄道文化財団(鉄道博物館)

November 25, 2016

未来を見つける祭典


 それは去る9月下旬の雨の日、買い物から戻った妻が、「そこの公園にシートで覆われた荷物の端からすっごく大きな靴が覗いていたよ。」と物珍し気に話していました。想像すると極めて奇妙な光景ですが、ああ、とピンときました。「さいたまトリエンナーレ2016」は開催前に妻の発見から幕を開けました。
 9月24日から12月11まで79日間続くアートイベントで、さいたま市が初めて取り組む国際芸術祭。現在既に終盤に入ろうとしています。ディレクター・芹沢高志氏の掲げた「未来の発見!」をテーマに市内各所で多様な文化関連プロジェクトが展開されてきました。アートプロジェクトでは、国内外で活躍するアーティスト34組が参加。内容は多岐にわたり私もすべてを体験出来ていませんが、大きくは3地域に分けられた各所の展示をぶらぶら鑑賞した一部を紹介します。



 冒頭の作品は、武蔵浦和駅~中浦和駅周辺地域にある西南さくら公園に置かれた「さいたまビジネスマン」。ラトビアの作家、アイガルス・ビクシェ氏による強化ポリウレタン製の10m近い彫刻作品です。仏陀の涅槃の像を想わせるかのように芝生に横たわり、体中に虫が這っても動じないサラリーマンの姿は悲しいような滑稽なような・・・しかし心を和ませます。

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アイガルス・ビクシェ 《さいたまビジネスマン》


 すぐ近くにある会場「旧部長公舎」は70年代に建てられたレトロモダンな邸宅。4軒それぞれでアーティストがインスタレーションを公開しています。写真家・野口里佳氏は、故郷さいたまを独自の視点で取材した映像作品の投影と展示。高田安規子+政子姉妹は縄文期にベイエリアだったこの場所の海の痕跡や絶滅危惧種の生き物の切り絵装飾で家を再生。松田正隆+遠藤幹夫+三上亮の俳優不在の演劇インスタレーションは、実際にかつて2006年まで何組もの家族が営んだ生活の記憶を、今もその時代に生活しているような室内で、物音・声などで重層的に再現。過ぎ去った日常への郷愁と共に、姿の見えない人の生々しい気配に恐怖心を覚えたのは私だけでしょうか。
 真っ白な空間に変えた邸宅内で展開される鈴木桃子氏の鉛筆ドローイングパフォーマンスは、開催前から作者が室内に緻密に描き続けてきた壮大な生命の増殖(火の鳥)が、ある時点から観客によって消されて何もない空間に帰るというプロセスをたどります。

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鈴木桃子 《アンタイトルド・ドローイング・プロジェクト》


 この地域でもう1つ外せないのは、日比野克彦氏の「種は船プロジェクトin さいたま」。日本各地を巡り人をつないできた朝顔の種の形をした船・TANeFUNeは前年にプレイベントで埼玉の川を航行。このトリエンナーレでは、金沢と横浜からやってきた「種は船」作品の2艘が、別所沼公園のワークショップに参加した人たちの手で埼玉バージョンとして塗り替えられ、公園の池に美しく浮かべられています。海のないさいたま市で「水のさいたま」の記憶を積み込んで、さて次はどこへ向かうのでしょうか。

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日比野克彦 《種は船プロジェクトinさいたま》


 与野本町駅~大宮駅周辺、岩槻駅周辺も、開催される場である建物の特色(歴史・背景)と絡めたコンセプチュアルな展示内容は深く印象的。岩槻の旧埼玉県立民俗文化センターは集中してたくさんのインスタレーション作品に出会える場で、個人的に興味深かったのは「犀の角がもう少し長ければ歴史は変わっていただろう」という川埜龍三氏の作品です。現在われわれが住んでいる世界を「さいたまA」とし、架空に存在する並行世界「さいたまB」で発見された奇妙な埴輪群とその発掘現場の様子を展示する「歴史改変SF美術作品」。中心にあるのは、犀の形をした巨大な犀型埴輪です。思わず笑顔を誘う作品で、本当にこんな世界がすぐ隣にあったら・・・という夢とロマンへの少年的憧れを刺激します。

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川埜龍三 《犀の角がもう少し長ければ歴史は変わっていただろう》


 このトリエンナーレを象徴する「息をする花」の作者、韓国のチェ・ジョンファ氏作「サイタマンダラ」は、市民が消費を通じて自動的に制作に参加してしまう作品で、芸術は物事の捉え方次第で成立することを再認識しました。ご紹介した以外でも、各作家はさいたまという地の特色を研究し、作品イメージを紡ぎだし創出しています。もちろん理解しやすい作品・しにくい作品はあるものの、各々の「未来の発見!」の解釈が垣間見えてきます。おそらく身近で体験したこのイベントに触発され、表現活動を始める未来のアーティストもいるのではと思います。3年後はどんなテーマでどんな表現が見られるか、楽しみにしています。





■さいたまトリエンナーレ2016
会期:2016年9月24日(土)~12月11日(日)[79日間]
鑑賞無料(一部の公演、上映を除く)
定休日:水曜日
主な開催エリア:与野本町駅~大宮駅周辺、武蔵浦和駅~中浦和駅周辺、岩槻駅周辺
開場時間:10:00~18:00(最終入場17:30)
主催:さいたまトリエンナーレ実行委員会
ディレクター:芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)
URL:https://saitamatriennale.jp/


November 18, 2016

秋日和、名家伝来の禅画と「つばきやま」界隈


 この秋、禅画がブームである。秋晴れの日、細川家に伝来する文化財を展示している永青文庫に仙厓義梵(せんがい ぎぼん)の禅画を見に行くことにしました。仙厓義梵は江戸時代後期の臨済宗の僧侶で、ユーモアある禅画を描いている。



 東京は文京区。近くに流れるのは神田川であるが、江戸川橋という駅で下車する。既にお昼時、まずは食事をしてから展覧会に臨むことにする。神楽坂方面に向かって上る坂が大きく曲がり始める手前に「マティーニバーガー」はある。こちらはニューヨーク生まれで、デザインの仕事をされていたオーナーが経営しているハンバーガーショップ。ニューヨークではマティーニを片手にハンバーガーを食べるとのことだが本当であろうか。お店に並んでいるマティーニグラスはどう見てもダブルの量、ちょっとランチで飲むというには困難である。ハンバーガーの種類はアメリカの地名にちなんでいる。ベーコン、オニオン、バーベキューソスのウェストサイドをオーダー。只管打座でじっと待つこと、出てきた料理はベーコンがカリッとして、ビーフ100%のパテはジューシーでとても美味しくボリュームもある。
 お店の雰囲気も、オーナーも感じがとても良いお店です。

「マティーニバーガー」のカウンターの後には、ウォッカの瓶がアーティステックに飾られている。
「マティーニバーガー」のカウンターの後には、ウォッカの瓶がアーティステックに飾られている。



 さてお腹もくちくなったので、いざ永青文庫へ。永青文庫は椿山荘がある小高い台地の上にある。明治の時代、軍人・政治家の山縣有朋(やまがた ありとも)が「つばきやま」と呼ばれていたこの一帯を買い取り、邸宅として「椿山荘」と名付けた。今ではホテル椿山荘東京として生まれ変わっている緑豊かな斜面と神田川の間を通り、急峻な胸突坂を上る。坂の右側には、かつて松尾芭蕉が住んでいた関口芭蕉庵がある。上りきった左手の鬱蒼と茂った木々の奥に瀟酒な白い洋館が見える。ここが永青文庫である。文武両道にすぐれた細川家に伝来する歴史資料や美術品を保存、展示している。建物は4階から2階が展示スペースとなっており、「平成28年度秋冬季展 仙厓ワールド」(~2017年1月29日まで開催中:期間中展示替えあり)では、4階は仙厓の掛軸など、3階は仙厓の茶碗やアジアの器など、2階では明、清時代の文房四方(筆、墨、硯、紙)などが展示されており、仙厓の素朴な表現や墨の文化をテーマにしている。

庭から永青文庫の玄関を望む
庭から「永青文庫」の玄関を望む。

 仙厓の禅画は一切衆生を極楽往生へと誘ってくれるありがたい絵かと思いきや、まるで無垢な子供の描いた絵のようである。大猫と、目を回した不思議な生物が描かれている「竜虎図」を見た衝撃は、もう「え〜!」なのである。正しく「ゆるキャラ」のようなユニークさがある。仙厓の絵に臨む際は、古伊賀水指 銘「破袋(やぶれぶくろ)」を愛でるかのように、歪みをも楽しむ数寄者の心持ちが肝要であるか。解説で賛の訳や絵の内容をわかり易く説明しているので、親切でありがたい。仙厓は難解な公案(禅問答)をわかり易く庶民に伝えるために、楽しいタッチで禅画を描いたのかもしれない。公案は会社の会議でも使える。「指月布袋図」(布袋さんが月を指さしている図)の意味するといわれていること(月=悟り、指=教典、悟りは教典の教えの遥か遠くにある。)を元に、「計画数字そのものを追うのではなく、その先にあるのが本当の目標です。皆さんで業務に励みましょう。」なんて訓示してみようかしら。



 永青文庫を後に、講談社野間記念館との細い道を抜け、椿山荘の正門へ出る。その向かいには、特徴的な容姿と大きさ(金属製の巨大な鳥が、大きな翼を広げて地上に降り立った姿?)で知られている「カトリック東京カテドラル関口教会」がそびえている。カテドラルとはカテドラ(司教座)のある教会のことで、関口はこの辺りの地名である。この教会は有名な建築家の丹下健三が設計し、1964年に落成した。建物の壁面は垂直に近い角度で空から落ち込み、美しいカーブを描いている。外壁はステンレス張りになっており、陽光にまぶしくキラキラと輝いている。美しい建築に見惚れているうちに秋の日はつるべ落としに黄昏れて来た。関口台地の坂を下って元来た江戸川橋駅へと向かう。本日はお腹も目も心も満たされ、心願成就と相成り、すばらしい一期一会に感謝し帰路についたのでありました。


October 28, 2016

山種美術館「速水御舟の全貌」展


 山種美術館で開催中の展覧会『速水御舟の全貌』ブロガー内覧会に参加して参りました。

 近代日本画の巨匠、横山大観や下村観山などに激賞され、若くして日本美術院の同人となり、数々の素晴らしい作品を世に送り出して40歳でその短い生涯を閉じた天才、速水御舟。

 山種美術館は近代日本画では初めて重要文化財に指定された《名樹散椿》や《炎舞》をはじめ速水御舟作品の充実したコレクションでも知られており、今回の展覧会は美術館開館50周年を記念して、山種美術館所蔵の御舟作品をはじめ、公立美術館からも名作を一堂に揃えた、まとまって御舟作品を見ることができる素晴らしい機会です。


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 展覧会は、入ってすぐの《鍋島の皿に柘榴》(1921年)から始まり、群青と不思議な構図に引き込まれる《洛北修学院村》(1918年)、御舟が若いころに描いた《萌芽》(1912年)、墨画なのにまるで色彩があるかのように感じられる《木蓮(春園麗華)》(1926年)、昭和モダンな《花の傍》(1932年)など、目を見張る作品の連続ですが、私の一枚は《名樹散椿》です。


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《名樹散椿(めいじゅちりつばき)》 1929年 紙本金地・彩色 山種美術館所蔵


 通常は霞などの表現に部分的に用いるという砂子を全面に蒔いた「蒔きつぶし」による背景は、制作するのにかなりの手間と費用を要する技法だそうですが、その分金泥や箔押しとは違う鈍い独特の輝きがあり、それがボリュームのある椿の樹と相まってとても美しい作品でした。ぐにゃりと曲がった椿の枝はデフォルメしているのかと思われましたが、実際にこのようなものがあったそうです。


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金色の表現比較。左から金箔、金泥、撒きつぶしの技法による。
御舟はこれらの金を作品によって使い分けている。


 こうした徹底した制作姿勢や、執拗なまでの写実主義、緊張感ある作風、その時々である方向性を極めようと集中して作品を制作している様子から、神経質そう...と勝手なイメージを持っていた速水御舟ですが、実は家族や友人を大事にし、おちゃめなところも持ち合わせた人物だったということが伺えるエピソードを聞き、意外だったのと同時に親近感が湧いてきました。

 山崎館長が「一人の画家の展覧会とは思えないですよね」とお話しされたとおり、展覧会を通してみると、短期間に御舟の作風が様々に変化しているのがよくわかります。でもその一方で、根底に流れる何か「御舟らしさ」のようなものが、どの時代でも変わることなくあるように感じられ、それゆえ決して違う人が描いたとは思えない印象が残り、御舟の多彩さが際立つ展覧会でした。


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《炎舞》 1925年 絹本・彩色 山種美術館所蔵


 山種美術館のカフェでは展覧会の会期中、作品をモチーフにした和菓子を頂くことができます。
 《花の傍(かたわら)》をイメージしたストライプの綺麗なもの、《翆苔緑芝(すいたいりょくし)》をイメージした紫陽花と兎など、どれも綺麗で迷ってしまいましたが、私は《炎舞》をイメージしたお菓子を頂戴し、美味しく、美しいお菓子に目でも舌でも芸術を味わいました。


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黒い懐紙に炎を表現したオレンジが美しい《炎舞》をイメージしたお菓子。
食べるのがもったいない。


 後期の後半には御舟最大の問題作であった《京の舞妓》や《菊花図》が展示されるので、また観に足を運びたいと思います。




※ 掲載画像はブロガー内覧会において特別に許可をいただき撮影したものです。




【展覧会情報】

開館50周年記念特別展 「速水御舟の全貌」

2016年10月8日(土)~12月4日(日)
前期:10月8日~11月6日、後期:11月8日~12月4日
山種美術館
東京都渋谷区広尾3-12-36
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2016/gyoshu.html


October 14, 2016

秋・上野の森でゴッホの傑作と出会う


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。清涼の秋気が身にしみる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
 今回は上野で開催中の東京都美術館「ゴッホとゴーギャン展」と、上野の森美術館「デトロイト美術館展」をご紹介いたします。
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 「ゴッホとゴーギャン展」はゴッホ(1853~1890)とゴーギャン(1848~1903)が友情を結び合い1888年の10月に南仏アルルで共同生活を始めるも、結局生い立ちも作風も大きく異なる二人は仲違いし、ゴッホの「耳切り事件」で終わりを迎えた史実にスポットを当てて企画された展覧会です。
 現実の世界から着想を得て力強い筆触と鮮やかな色彩で作品を生み出すゴッホ。目に見えない世界を装飾的な線と色面で表現するゴーギャン。二人の偉大な芸術家の誕生と出会いから、アルルでの破局、その後も続いた交流と影響を60点余りの作品を通じて振り返ります。これまであるようでなかったゴッホ、ゴーギャンの関係性に焦点を当てた展覧会は、二人の偉大な巨匠の作品と芸術を改めて知るとても貴重な機会といえるでしょう。
 わたくしは中でもゴッホの自他ともに認める最高傑作のひとつ《収穫》に深く心を動かされました。南仏の麦畑を主題にした調和の取れた風景はゴッホの心の一時の平穏が投影された興味深い作品です。
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 一方「デトロイト美術館展」は、1885年の美術館創立以来、同時代の画家の作品を積極的に収蔵し造り上げた近代絵画コレクションの中から、印象派、ポスト印象派、20世紀美術の選りすぐりの名品を紹介する美術展です。モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、マティス、ピカソ等のこれぞ名画と呼ぶべき作品が集結し、心ゆくまで芳醇な美の世界に浸れます。
 中でも本展覧会のメインビジュアルにもなったゴッホの《自画像》に注目です。ゴッホが残した数ある《自画像》の中でも、1887年に制作された本作は、印象派や日本の版画に強く影響を受けた作風で、画家が自らの魂の激しさを描き上げ、人間の魂のもっとも根源的なものにまで到達しえた正に奇跡の名画です。

 芸術の秋の到来を迎え、皆さまもぜひ上野の森に足をお運びになり、豊かな美の世界をご堪能ください。



【展覧会情報】

●ゴッホとゴーギャン展
会場 東京都美術館
会期 2016年10月8日(土)から12月18日(日)まで
    ※休室日=月曜日
時間 9:30~17:30
※毎週金曜他、20時まで(詳しくは美術展公式HPをご覧下さい)


●デトロイト美術館展
会場 上野の森美術館
会期 2016年10月7日(金)から2017年1月21日(土)まで
    ※休館日=10月21日(金)のみ
時間 9:30~16:30
※毎週金曜と10月22日(土)は20時まで


September 30, 2016

鈴木其一展を観る


 東京六本木のサントリー美術館で開催中の「鈴木其一(すずききいつ)」展に行ってまいりました。鈴木其一の画業を紹介する大規模な展覧会ですが、私の一枚は、やはり展覧会のメインビジュアルにもなっている「朝顔図屏風」です。

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 琳派様式を江戸で再興した師・酒井抱一の亡き後、独自の画風を確立していった其一が完成させた《朝顔図屏風》は、金地に流れるように絡まり合う緑の蔦と、鮮やかな朝顔の色彩が目を惹くと同時に、その大きさ、ボリュームも印象的で、デザイン性が高く切れ味鋭い其一の表現は、独創的でまさに「COOL!」という感想でした。

 雑誌『和楽』10・11月号の琳派特集では、「かつて忘れられた存在であったのが、その独創的な作品から注目を集め、近年改めて人気を得た作家」・伊藤若冲と比較し、その存在、技術の高さから「ポスト若冲の一番手」としての鈴木其一を紹介しています。
 展覧会訪問日は平日でしたが、混雑と言ってよいほどの来場者に鈴木其一の注目の度合いを感じ、たしかに「これから其一がくるかもしれない...」という気配を感じさせる展覧会でした。

 10月5日からの後期展示では、《夏秋渓流図屏風》や《風神雷神図襖》などが展示されます。
 私も、もう一度観に行こうかと思っています。


★ 「鈴木其一展」、作者の遊び心と色彩感覚が印象的な「描表装(かきびょうそう)」の展示コーナーに出品されている「歳首の図」は当社彩美版®で販売しております!


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彩美版®
鈴木其一 《歳首の図(さいしゅのず)》
販売価格 90,000円+税


<仕様体裁>
原画 細見美術館(京都)所蔵
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 描表装
軸寸 天地175.3×左右47cm
箱  柾目桐箱、タトウ入り
証明 原画所蔵者の検印入り証紙を桐箱に貼付
発行 共同印刷株式会社
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

September 2, 2016

残暑お見舞い申し上げます


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 9月に入りましたがまだまだ残暑が厳しい日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。天候に左右され体調を崩しがちな陽気ですが、どうかお体をご自愛くださいませ。

 暑さで寝苦しかった夜が、ここのところ朝晩と少し冷え込み始め、鈴虫でしょうか虫の鳴き声を耳にします。蝉の鳴き声から秋の気配を感じる今日この頃でございます。

 今回は、秋の情緒が感じられる彩美版®をご紹介いたします。





彩美版®
酒井抱一 《月に兎》
販売価格 90,000円+税


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<仕様体裁>
原画 松岡美術館所蔵
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
証明 原画所蔵者検印入り証書を貼付
画寸 天地80cm×左右35cm
軸寸 天地172.9cm×左右51cm
表装 三段表装
箱  柾目桐箱、タトウ付
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




【今日の谷根千+上野界隈】

上野公園の東京都美術館では「再興第101回再興院展」東京展が開催中です。


再興第101回日本美術院展(再興院展

■会期:2016年9月1日(木)~9月16日(金)
■時間:9:30~17:30(入場は16:30まで)
    ※最終日16日の入場は13:30まで、閉会は14:30
■休館:9月5日(月)
■料金:一般900円(700円)※( )内は団体料金(10名以上)
    70歳以上の方700円
    学生以下・障害者手帳をお持ちの方と付添(1名) 無料


August 5, 2016

九州で「東山魁夷展」を見る


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。8月に入り暑さも佳境に入りました、連日の30度超えで、筆者も体調管理に四苦八苦しております。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。熱中症にも十分お気をつけ下さい。

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 さて私は先日、福岡太宰府にある九州国立博物館で「東山魁夷 自然と人、そして町」展を鑑賞してまいりました。会場に着いて先ず何よりも驚いたのは博物館のユニークな形状。波打つ屋根に総ガラス貼りの先鋭的なデザインです。真横から見ると鳥の頭のようなところが入口になっており、中に入るとそこは吹き抜けの心地よいアトリウム空間となっております。圧倒されました。見事です。設計は福岡県久留米市出身の菊竹清訓(1928-2011)。黒川紀章らとメタボリズムを先導したモダニズムの建築家です。今はなき上野不忍池ほとりの奇想のホテル(ホテルCOSIMA)の設計者といえば、東京にお住まいの方で思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。それは樅の木の形状の高層ホテルで当時流行りのガンダムを思わせる斬新すぎる建造物でした・・・

 閑話休題。2012年の北海道・宮城県巡回展以来の大レトロスペクティブと位置付けられる本展覧会は、東山魁夷(1908-1999)の画業の変遷を代表作でたどるとともに、東山芸術の頂点を示す大作「唐招提寺御影堂障壁画全68面」を特別展示するという必見の展覧会です。制作に10年を要したという画伯入魂の唐招提寺の障壁画は、ほぼ70メートルにも及ぶという長大なものであり、唐招提寺の開祖、鑑真和上の苦難の足跡になぞらえ中国や日本の壮大な自然を、抒情と幻想を内に秘めた静謐な風景として見事に描き切っています。地元奈良でも一年に数日間しか公開されないという記念碑的な作品群を、間近に鑑賞できるのはまことに貴重な機会といえましょう。国民的画家と謳われた東山魁夷の名作がずらりと並ぶ充実の展覧会には九州だけでも15万人の来場者が見込まれているとのこと。真夏の暑い盛りではありますが、皆さまも東山芸術の神髄に触れこころ豊かな気分に浸ってみてはいかがでしょうか。

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 そして実は共同印刷が制作した東山作品の複製絵画が地元福岡の弊社代理店の協力の下、会場出口で販売されております。展覧会メイン・ビジュアルの「緑響く」や「行く秋」「静映」などの彩美版®プレミアム作品が出口右横の販売スペースに飾られ、東山芸術の感動を胸にした大勢のお客様にお立ち寄りいただいております。弊社の彩美版®プレミアムは東山魁夷の美しい風景をさらに魅力的に鑑賞していただける新感覚の美術工芸技法です。ご興味のある方は展覧会場に足をお運びの際、是非ご覧になってみて下さい。



【特別展「東山魁夷 自然と人、そして町」】

会場 九州国立博物館
   福岡県太宰府市石坂4-7-2
会期 2016年8月28日(日)まで。月曜休館(祝日を除く)
時間 9:30~17:00
※巡回展:2016年9月17日(土)-10月30日(日) 広島県立美術館






【弊社新作のご案内】

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東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《 行く秋 》

販売価格 500,000円+税
限定350部発行



<仕様体裁>
監修 東山すみ
解説 松本 猛(長野県信濃美術館 東山魁夷館前館長)
原画 長野県信濃美術館 東山魁夷館所蔵
技法 彩美版®プレミアム
額縁 特注銀泥木製額プラチナカラー ハンドメイド浮き出し加工
画寸 天地45.9×左右65.2㎝(15号)
額寸 天地63.9×左右83.2×厚さ3.7㎝
重量 約5.3㎏
発行 共同印刷株式会社
※作品についてのお問い合わせ:共同印刷(株)アート&カルチャー部 TEL.03-381-2290


July 15, 2016

ひとときの造形美


 5月にご紹介したさきたま古墳公園に続き、7月の梅雨の晴れ間に、同じ行田市の「古代蓮の里」を訪れました。

 日曜日の朝8時前に着いたのですが、公園の通常駐車場はいっぱいで、隣の臨時駐車場に案内されました。園内に入ると、極めて静かなのに既にたくさんの人々がカメラを手に集まっています。私自身初めて見る、ピンクの蓮の花が一面に咲き誇る壮観な蓮池でした。蓮の開花時間は午前6時頃からで、7時~9時頃が満開だそうです。いずれの花も大きく美しい彩りで端正な姿を誇示していました。

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 ただ、よく見ると、つぼみの状態もあれば、散りかけている花もあります。大して蓮に関心を持っていなかった私は、古代蓮会館の展示を観覧して初めて蓮の花の命が4日間であると知りました。何日目の花なのかによって、開花の状態が変わっているということでした。自然が作るひとときの美。そして連綿とつながっていく命のサイクル。殊に行田蓮と呼ばれる古代蓮は、原始的な形態をもつ1400~3000年前の蓮と言われ、偶然現代に蘇り命を宿し続けています。

 思いがけず蓮に魅了されたのですが、真にここを訪れた目的は、先ほどの古代蓮会館の展望台に上がることです。そこへ上がるにも整理券が配られ、1時間ほど館内を観て待ちました。ようやくエレベーターに乗り展望台へ到着。人々は一角を見下ろして皆感嘆の声をあげています。昨年ギネスに登録された世界一大きい田んぼアートの2016年版が見ごろを迎えたのです。

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 水田をキャンバスに、様々な種類の稲を絵具として、巨大なドラゴンが目を惹く絵柄が描かれていました。今年30周年を迎える人気ゲームシリーズ「ドラゴンクエスト」がテーマで、「勇者・ドラゴン・スライム」それに「古代蓮」を加えたオリジナルデザインとなっています。色彩はまだこれから濃くなっていくそうですが、前年の写真に比べ、鮮やかな黄色が一層目立ち、カラフルな印象を受けます。

 田植えは一般体験・ボランティア合わせ延べ約1500人が参加し、6月に2日間で行われたとのこと。館内に展示されている、細かい升目に緻密に引かれた作画のラインとおびただしい数のポイントの設計図を見ると頭が痛くなりそうでした。

 地上で見ると色の模様はわかるものの、具象性は認識できません。結構な重労働だったのではと、ますます作業の苦労と疲労に感情移入してしまいました。しかし計算通り絵柄が現れた時の喜びは、作業した皆さんにとって極上のものなのでしょう。

 田んぼアートの見ごろは7月中旬~10月中旬(色彩のピークは7月中旬~8月中旬)です。こちらも限られた命の造形。自然とのコラボレーションによるひとときのアートです。ぼんやりと万物の無常を意識した暑い一日でした。



【古代蓮の里】

住所 埼玉県行田市小針2375番地1
電話 048-559-0770

○公園は年間終日開園・休業日なし
○古代蓮会館
営業時間:通常期 9時~16時30分
     6月下旬~8月上旬 7時~16時30分
休業日: 通常期 月曜日(祝日は営業)、
     祝日の翌日(土・日曜日の場合は営業)
     6月下旬~8月上旬 なし
入場料: 大人(高校生以上) 個人400円(団体320円)
     子供(小・中学生) 個人200円(団体160円)


May 27, 2016

上野の春、意を決して大型展覧会へ足を運ぶ


このブログをご覧いただいている皆様も足を運ばれたでしょうか、先日会期は終了しましたが話題となった東京都美術館「生誕300年記念若冲展」へ行って参りました。

本展は東京では初めて《釈迦三尊像》と《動植綵絵》が一堂に会した注目の展覧会とあって大変な来場者数でしたが、私もお目当ての若冲作品を一目見ようと行列に参加、会場の熱気を存分に味わって参りました。

経験したことのないほどの長蛇の列にくじけそうになりながらもいよいよ入場、するとすぐさま美術品のもつ強いオーラに引き寄せられます。
じっくりと鑑賞したいところ後ろ髪を引かれながらも、今回のお目当てである1799年若冲の晩年に描かれた《百犬図》、ワンコ達のところへ直行。
日本画の有名な作品の中でも犬が描かれたものは多くありますが、こちらはなんと59匹もの犬が描かれているため見逃すわけにはいきません。犬たちがコロコロとじゃれ合っている様子の連続、犬好きにはたまらない作品です。
描かれた犬の顔は、まるで猿か猫のような、また違う生き物では?と思わせる不思議な顔つきですが、魅力は筋肉や関節、威嚇、甘えなどの行動でしょうか、確かに犬、嘘がないのです。
そして、この作品の何匹かは後ろ姿で描かれています。その可愛らしさについては犬好きな方なら共感して頂けるでしょう。
後姿が絵になるのは犬か猫くらいでは?と思ったりもします。

犬についてはさておき、これだけの人を惹きつけるパワーの一つ、色彩については他の作品に比べると落ち着いた色味ですが毛の一本ごとが緻密に描写され、白の濃淡だけをとっても驚くほどの見ごたえがありました。
若冲の作品では絵絹の裏面に施した裏彩色など効果的に技法が盛り込まれ、表情が様々描き分けられていると言われています。
遠目にもはっきりとわかる鮮やかな色の濃度やぽってりとした厚みにはやはり釘付けになってしまい、単純に色というには画家に申し訳ない気持ちにすらなります。
実は当社の「彩美版®」についても同じように、複製画が出来上がるまでにはこだわりがあります。
作品に込められた表現の意図を解釈したうえで、本金箔や本金泥を使用し、膠の質感までも追及するために、何度も校正をかさねて出来上がります。
さらに作品を活かすための額装も試作を繰り返し、完成されます。
このようにひとつひとつに妥協なくこだわり、仕上げられたものにはやはりそのものなりのオーラが宿ると思っております。
絶妙なバランスであったり、ディテールのこだわりの積み重ねが醸しだす雰囲気であり、さらに時を経ていればその分の佇まいがあります。
当社の「彩美版®」でも魅力的な佇まいをもっと感じていただけるものにし皆様にお届けしたい!日本画の画材である岩絵の具の物質的な特徴、長所も短所をもっと知りたい!
と身が引き締まった思いがした展覧会となりました。
この時期の展覧会は足が遠のいておりましたが意を決して足を運んだ甲斐がありました。



彩美版® 軸装
伊東若冲 《日出鳳凰図》

販売価格 110,000円+税


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<仕様体裁>

原画 米国・ボストン美術館所蔵
解説 河野元昭(美術史家、東京大学名誉教授)
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 三段表装(本表装)
画寸 94.0×33.0㎝
軸寸 183.0×52.5㎝
箱  柾目桐箱、タトウ付
※ご希望により額装のご注文も承ります。
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




そして、日本画で使用される岩絵具の原料、鉱石また鹿膠などに思いを巡らし国立科学博物館の鉱物コーナー、動物剥製コーナーへも立ち寄りました。
地球館の剥製コーナーは年に一度は足を運ぶ私のパワースポットです。
都会にいながらここでは生き物にしかない神秘や大きさが感じらるのでお勧めです!
またこちらのミュージアムショップにて、当社共同印刷のご近所に本社を構えるカロラータさんの、生物が本来持つ真の美しさを正しく伝えるリアルさにこだわり抜かれたぬいぐるみ、ホッキョククマを購入。動物の個性がみごとにデザインされたぬいぐるみに感服です。


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国立科学博物館の動物剥製コーナー


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カロラータさんのリアルなぬいぐるみ


■国立科学博物館 常設展
http://www.kahaku.go.jp/
※開館情報はHPをご覧ください。

May 20, 2016

週末の横浜散歩のススメ


 こんにちは。
 お天気の良い週末、横浜美術館で開催中の「複製技術と美術家たち―ピカソからウォーホールまで」展に行ってまいりました。

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 本展は、写真印刷や映像などの「複製技術」が普及し誰もが複製を通じて美術を楽しむことができる時代に、20世紀の欧米を中心とする美術家たちがどのような芸術のビジョンを持って作品を作っていたか、を検証する展覧会です。テーマとしては少々難解ですが、難しいことはさておき芸術家たちが複製技術をその目や手を通じてどのような形で解釈し、表現したか、さまざまな形を見ることができて興味深いものがあります。

 ピカソやマティスからウォーホールまで時代を追って、相当な数の作品が展示されていますが、中でも印刷物でも良く目にするマティスの「ジャズ」の色彩の美しさが個人的にはとても印象に残りました。

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アンリ・マティス《サーカス》(詩画集『ジャズ』より)
1947年/シルクスクリーン、紙(書籍)/42.5×65.0cm(用紙)/富士ゼロックス版画コレクション



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パウル・クレー《ホフマン的な場面》
1921年/リトグラフ、紙/31.7×22.8cm/富士ゼロックス版画コレクション



 同時開催の「しなやかさとたくましさ―横浜美術館コレクションに見る女性の眼差し 」
 「アメリカ写真の展開:1860年代-1940年代」。こちらも上村松園、小倉遊亀、片岡球子など近代日本画家から、コムデギャルソンの川久保玲など現代のアーティストまで網羅し、充実した内容で見応えのあるものになっていますし、写真展もその時代のにおいが感じられる写真が数多く展示されています。

 横浜美術館は館内が広く、展示作品も企画展~コレクション展まで観るとかなりのボリュームになるので、ゆっくり時間を取っていかれるのが良いかと思います。鑑賞が終わったら近くのカフェでのんびりとお茶をしたり、山下公園や中華街までお散歩したりするのも良いかもしれませんね!

 久しぶりに行った横浜・みなとみらい界隈は、都内にはない開放的な空気感であふれ、とても気持ちの良い時間を過ごした一日でした。



【展覧会情報】
富士ゼロックス版画コレクション×横浜美術館
複製技術と美術家たち-ピカソからウォーホルまで

会場 横浜美術館
   横浜市西区みなとみらい3-4-1
会期 2016年4月23日(土)~6月5日(日)
開館 10:00~18:00(入館は17:30まで)
※5月27日(金)は20:30まで開館(入館は20:00まで)
休館 木曜日
主催 横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
協賛 富士ゼロックス株式会社
後援 横浜市
協力 横浜高速鉄道株式会社、横浜ケーブルビジョン、
   FMヨコハマ、首都高速道路株式会社
企画協力 横田茂ギャラリー

April 28, 2016

日本民藝館を訪れた事及び、大きな屋敷で靴を持って歩き回った事。


 一度は訪れてみたいと思いながら、なかなか行くことのない場所が誰にでも一つ二つはあるのではないだろうか。私にとっても「東京タワー」と「日本民藝館」は正しくそれであった。しかしブログの掲載が差し迫って来た事もあり、この機に「日本民藝館」の方を訪れてみる事にした。

 東京の若者の街、渋谷から井の頭線に乗り2番目の駅の駒場東大前で降りると、ほど近いところに「日本民藝館」はある。民衆の用いる日用品の美に着目した柳宗悦(やなぎむねよし:1889〜1961年)は「民藝」という新しい美の概念の普及と、「美の生活化」を目指す活動をし、柳氏が収集した古今東西の工芸品を展示しているのがこの民藝館である。

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瓦と白い壁が美しい、日本民藝館の入り口


 この民藝館の本館の建物は柳氏自身が設計を手がけた和風意匠を基調とした特徴的な建物で、登録有形文化財にもなっている。玄関の引き戸を開け中に入ると、上がりかまちで靴を脱ぎスリッパに履き替えてチケットを買う。玄関を入った正面には2階へと続く大きな木製の階段が存在感を放っている。展示室は1階、2階にある複数の部屋に分かれている。木のぬくもりと白い壁のコントラストが美しく、階段の吹き抜けを中心に開放感のある館内はとても居心地が良い。この時点で訪問して良かったと思ってしまう。

 この度の展示は、創設80周年特別展として日本民藝館所蔵の「朝鮮工芸の美」(6月12日の日曜日まで開催)と題して、国内屈指の質と量を誇るという民藝館所蔵の朝鮮時代の工芸品(陶磁器、木工品、石仏、掛軸など様々な品)を展示している。朝鮮時代の工芸といえば白磁と漆塗木工品ぐらいのイメージしかない浅薄な私であったが、展示物の幅の広さに驚いた次第である。

 白磁に対して、ゴロッと黒い蝋石製面取薬煎(19世紀末)。草虫図(19世紀)の掛軸に描かれているのは、ハチ、チョウ、セミ、カエルなどの生き物達で、西洋のモチーフとは違った、日本と共通する小さきものに対する慈悲を感じる。変わったところでは、木製の枕(鼓のように両端が広く平らで、真中がくびれている)は、頭をのせる面が小さく(直径10cmぐらい)これでは、寝返りをうったら床に頭をぶつけてしまう。「たわし」の形も変わっており、「こけし」の様に縦に長い。朝鮮と日本の視点の違いと共通点を楽しめる展覧会であった。

 民藝館を出たすぐ近くには、旧前田家本邸洋館のある駒場公園がある。緑の樹々が多いこの都会のオアシスには日本近代文学館もあり、館内の「BUNDAN COFFEE&BEER」で食事が出来る。BUNDANの名に相応しく店内には天井にとどく書棚が並び、約2万冊の書籍があるという。こちらではメニューも作家にちなんでおり、コーヒーの品書きは「芥川」や「寺田寅彦の牛乳コーヒー」など、食事は「ハードボイルド・ワンダーランド(村上春樹)の朝食セット」や「シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイ」と遊び心が溢れている。僕は「シャーロック〜パイ」にしたよワトスン君といった体で昼食をいただく事に。

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シャーロッキアンではないが、シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイを注文

 公園の中心の建物「旧前田家本邸洋館」は、加賀百万石の第16代当主であった前田利為(まえだとしなり)侯爵の本邸として昭和4年に建てられた。建物はイギリスのチューダー様式で、地下1階、地上2階、延床面積約2,930平方メートルという豪邸である。隣には連絡通路で行き来できる和館もある。入場無料との事なので洋館を見学する。まずは玄関(といっても私のアパートの延床面積の約半分ぐらいある)で靴を脱いでスリッパに履き替え(今日はやたらに靴を脱ぐ日である。この後、和館を訪れた際も靴を脱ぐのであった。)、靴は設置してあるビニール袋に入れて持ち歩く。

 この館とにかく部屋数が多い。食堂が大小2部屋、サロン、書斎、家族の各部屋の他に、女中室が4部屋と女中溜、小使室、従者室、執事室が1部屋ずつある。その他の部屋も合わせると30以上にもなる。静かな館内を散策していると、どこからか「ネコふんじゃった」のぎこちなさのあるピアノのメロディーが聞こえてくる。館内をぐるぐる回っていると方向感覚も危うくなる。それにしても、人のほとんど居ない大きなお屋敷の中を部屋から部屋へと靴を持って歩き回っている自分の姿に、どろぼうになった様な気持ちになるのであった。


April 15, 2016

【新作】 クロード・モネ 《ヴェトゥイユのモネの庭》


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
 陽気が暖かくなってきましたね。先日は小雨がぱらついたり空模様はスッキリしませんでしたが、桜の満開の時期を迎え各方面賑わっているのではないでしょうか。小石川界隈はハナミズキが咲きだし、桜の花ばなの間からは青々とした葉が垣間見え、初夏の気配が感じられます。

 さて本日ご紹介する彩美版®は、今年没後90年を迎えたクロード・モネの名作「ヴェトゥイユのモネの庭」です。
 モネ一家が住む家を背景に青く澄んだ空の下、道を挟んでセーヌ川へと下る斜面に設けられた庭には、佇む子供たちの背丈をこえた向日葵が陽の光を浴び咲き誇っています。眩しい日差しが全て輝かせ、光の色彩を愛する画家の世界を感じられます。

 制作にあたり、三菱一号館美術館の高橋明也館長に、監修と解説を頂戴いたしました。





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彩美版®
クロード・モネ 《ヴェトゥイユのモネの庭》

限定 200部
価格 115,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り 
画寸 52.2×42㎝
額寸 65.4×55.2cm
重量 2.9kg
額縁 木製デコレーション金箔額
原画 ワシントン・ナショナル・ギャラリー(National Gallery of Art, Washington D.C.)所蔵
監修・解説 高橋明也(三菱一号館美術館館長)
発行 共同印刷株式会社




 こちらもモネの代表作として世界的に名高い傑作です。
 モネの「睡蓮」連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈された記念碑的な作品であり、平和を象徴する歴史的価値ある大作です。収蔵先のオランジュリー美術館は「睡蓮」連作大装飾画のために創設された≪印象派の殿堂≫と呼ばれています。
 《睡蓮、水のエチュード-雲》は、睡蓮と朝焼けの水面に映える雲の情景が、微妙なニュアンスに富む青、緑、紫、白、赤などが入り交る、モネならではの彩りの世界で描かれた作品です。本作品は第一室に飾られた「雲」の全画面より作品のハイライト部を、フランス国立美術館連合・グランパレ(RMN‐GP)の画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。

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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom


彩美版®
クロード・モネ 《睡蓮、水のエチュード-雲》
限定 200部
価格 128,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
画寸 28.3×91㎝
額寸 38.2×100.8cm
重量 3.3kg
額縁 特製木製デコレーション金箔額
原画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監修・解説 千足 伸行(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)
発行 共同印刷株式会社




【今日の谷根千】

◇文京区立森鴎外記念館
特別展
「私がわたしであること ―森家の女性たち 喜美子、志げ、茉莉、杏奴―」

会期:2016年4月9日(土)~6月26日(日)
※会期中の休館日:5月24日(火)
開館時間:10時~18時(最終入館17時半)
※6月の金曜日は20時まで開館(最終入館19時半)
観覧料:一般500円(20名以上の団体:400円)
※中学生以下、障がい者手帳ご提示の方と同伴者1名まで無料

文京区立森鴎外記念館
東京都文京区千駄木1-23-4
電話 03-3824-5511


◇根津神社
文京つつじ祭り
第47回 平成28年4月9日(土)~5月5日(木)
境内にある約2,000坪のつつじ苑には約100種3,000株のツツジが咲き誇り、甘酒茶屋、植木市、露店等もたくさん並びます。


根津神社
〒113-0031東京都文京区根津1-28-9
tel 03-3822-0753(9:00~17:00)

March 25, 2016

安田靫彦展(東京国立近代美術館)

 
 20160325sakuramatsuri.jpg いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。春本番を迎え、東京ではいよいよ桜も芽吹き始めました。今年は各地で平年より早く桜が開花しているとのことですが、皆さまのお住まいの地ではいかがでしょうか。

 共同印刷とは目と鼻の先の桜の名所、文京区播磨坂の桜も来週には満開の時期を迎えます。普段はひと気の少ない閑静な並木道も、この時期には多くの方が桜見物にいらっしゃいます。坂道に点在する素敵なレストランで美味しい食事を召し上がり、春の行楽を満喫なさるのはいかがですか。都内有数の名勝・小石川植物園もすぐ傍です。お近くまでいらした時はぜひ足をお運び下さい。最寄駅は丸の内線の茗荷谷駅です。





20160325yukihiko_ex.jpg さて、東京・竹橋の東京国立近代美術館では23日より日本画家、安田靫彦(1884-1978)の回顧展が開催されております。靫彦は歴史画家の第一人者として、近代日本画の興隆と発展に重要な足跡を残しました。その偉大な功績を称え昭和48年(1973年)には文化勲章を受章、東京藝術大学教授や日本美術院理事長の要職を務め、良寛の研究者としても活躍しました。

 明るく澄んだ色彩と簡潔な構図、巧緻な鉄描線はまさに名人芸。時代考証も綿密なその作品は、主題となった歴史人物への共感に溢れています。展示の六曲屏風『黄瀬川の陣』(重要文化財)や名作『飛鳥の春の額田王』を実際この目にし、今回特に深い感銘を受けました。

 100点を超える画家の代表作が揃う本展覧会は、靫彦芸術の真髄に触れる絶好の機会です。東京展のみの開催となるこの貴重な展覧会に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。



【安田靫彦展について】

会場 東京国立近代美術館
会期 3月23日(水)より5月15日(日)まで (月曜休館、3/28・4/4・5/2は開館)
時間 10:00~17:00 (金曜日は20時まで)




 当社では、上記「安田靫彦展」に出品の《梅花定窯瓶》と《花の酔》を含む靫彦作品の彩美版®をお取扱いしております。全て令息安田建一氏が監修されました。カタログを用意しておりますので、ご興味のあるお客さまはどうぞご遠慮なくお申し付け下さい。


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安田靫彦 《梅花定窯瓶 ばいかていようへい
軸装・額装
販売価格 (各) 本体120,000円+税

<仕様体裁>
原画 豊田市美術館所蔵 ※「安田靫彦展」に出品(展示期間3/23~4/17)
監修 安田建一
解説 豊田市美術館
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 300部
用紙 特漉和紙
画寸 天地46.0×左右39.0センチ
軸寸 天地140.0×左右58.7㎝
額寸 天地64.2×左右57.5㎝
発行 共同印刷株式会社




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安田靫彦 《花の酔》
軸装
販売価格 本体150,000円+税

<仕様体裁>
原画 宮城県美術館所蔵 ※「安田靫彦展」に出品(展示期間3/23~4/17)
監修 安田建一
解説 庄司淳一(宮城県美術館学芸員)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 200部
用紙 代用絹本
画寸 天地80.0×左右32.0㎝
軸寸 天地173.0×左右49.0㎝
発行 共同印刷株式会社




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安田靫彦 《菖蒲》
軸装・額装
販売価格 (各) 本体120,000円+税

<仕様体裁>
原画 古川美術館所蔵
監修 安田建一
解説 草薙奈津子(平塚市美術館館長)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 300部
用紙 特漉和紙
画寸 天地39.6×左右52.6㎝
軸寸 天地133.0×左右69.5㎝
額寸 天地60.2×左右73.3㎝
発行 共同印刷株式会社


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

March 18, 2016

女子力UP!の展覧会「PARISオートクチュール展」


 こんにちは。今週は三菱一号館美術館で開催中の「PARISオートクチュール展」に行ってまいりました。

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三菱一号館美術館入口


 「オート・クチュール」とは19世紀のパリで誕生した、顧客の注文に合わせてデザイナー主導で仕立てる高級服のことです。展覧会では、時代の変遷に合わせてシャネル、ディオール、バレンシアガ、ゴルチエ等、誰もが一度は耳にしたことのある高級メゾンのデザイナーによる芸術ともいうべき素晴らしい手仕事の数々を見ることができます。

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スケッチ


 様々な素材を使用し、複雑で、時に究極にシンプルに仕立てられたドレスや洋服の作品群や、クチュリエたちの手を写した写真などから、デザイナーの溢れ出る感性と、時に鋭く訴えかけてくるものを感じることができた展覧会でした。

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ゴルチエ

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シャネル


 来場者はほぼ100%女性。国籍問わず多数の来場者で賑わっており、年配の方から若い女性までみなさん、華やかなドレスにため息をついたり、自分が若かりし頃の時代の流行を思い起こして同行者とお話したり、凝ったドレスに目をこらしたりながら、作品に見入っている様子が印象的でした。

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美術館中庭


 出口の特設ショップにいたるまで、老いも若きも女子の心をグッとつかむファッションの世界に連れて行ってくれる展覧会です。もちろん男性の方々もぜひ。三菱一号館美術館のある丸の内界隈はファッションに感度の高いお店が揃う街でもあるので、展覧会帰りにショッピングも楽しいかもしれませんね。



【PARIS オートクチュール ―世界に一つだけの服】

 会 場  三菱一号館美術館
      東京都千代田区丸の内2-6-2
      電話 03-5777-8600

 会 期  2016年3月4日(金)から5月22日(日)まで

 休 館  月曜 但し、祝日及び5月2日、5月16日は開館

 開館時間 10:00~18:00 祝日を除く金曜及び会期最終週の平日は20時まで
      ※入館は閉館30分前まで

 入場料(当日券) 一般1,700円、高校・大学生1,000円、小・中学生500円
      ※3月15日~31日学生無料ウィーク


March 4, 2016

童画に込めた巨匠達の想いと、東京都板橋区赤塚を散策した事について


 東京をほぼ南北に走る都営地下鉄三田線は地下鉄といいながら、志村坂上駅より北上すると地上に出て高架線を走り、終点の西高島平駅に着く。よって地下鉄の車両はどこから入れるのだろう?と考え込まなくても良い。この辺りは昭和40年代に建てられたマンモス団地「高島平団地」で知られている。団地の総戸数は1万を越えるという。

 さて西高島平駅から南西方向に十数分歩くと「板橋区立美術館」がある。美術館は赤塚城本丸跡の公園内にあり、訪れた時は紅白の梅の花が咲き始めていた。こちらでは3月27日まで「描かれた大正モダン・キッズ 婦人之友社『子供之友』原画展」が開催されている。「子供之友」は幼児から小学生向けの生活教育雑誌として「婦人之友」の創業者、羽二とも子、吉一が1914年(大正3年)に創刊し、1943年(昭和18年)の休刊までの30年間発行された。本誌は創刊より絵画主任を務めた北澤楽天や、竹久夢二、武井武雄、村山知義などの第一線の芸術家達の作品を発表し続けた、芸術性の高い雑誌である。展示は作家ごとにまとめられており、貴重な原画が展示されている。いわゆる絵画作品とは違い、印刷原稿として描き起こされたものなので、絵の回りには引き出し線で「色は思ひきつて 鮮やかに」などの指定が残っている。こういう肉筆の指示を見ると版下原稿入稿世代の印刷マンとしては懐かしくてじんと来る。

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梅の花咲く美術館入り口

 挿絵のスタイルの変遷も芸術表現の移り変わりと重なっており、創刊始めの北澤楽天の描いたサンタクロースは正しく白ひげの仙人のようで恐ろしいが、竹久夢二の作品は夢二調の細やかで繊細な線と淡い色彩で、はかなげである。時代は下って、ベルリン留学を経て当時の前衛芸術活動をリードした村山知義はシンプルな線と面で構成されたモダンな表現をしている。「童画」という言葉を創出した武井武雄は、東京美術学校(現東京芸術大学)を出た後、自活するための仕事として雑誌の挿絵制作を始めたが、彼の作品は均一の太さの線で、木や葉を装飾的に描いている。本展示作品の私のお気に入りは、村山知義の「リボンときつねとごむまりと月」である。シルクハットを被りタキシードを着た三日月と、リボンとごむまりの三人がステーキを食べているテーブルの奥に、きつねの一行がお土産を持って遠ざかっているという何ともかわいく、シュールで稲垣足穂と宮沢賢治を混ぜたような大正モダニズムアートである。その他、岡鹿之助や安井曾太郎が自らの絵の解説を書いていたり、マティスの作品を掲載したりと、「子供之友」は子供向けとは思えないほどの本物の芸術志向であった。

 なお、「板橋区立美術館」の男子トイレにはマルセル・デュシャンの「泉」がある。といってもそれは中国人アーティストの牛波氏の「泉水」という作品で、かつてデュシャンが既製品の便器をそのまま美術品として提示したが、それをまたもとの使用できる便器として再提示した作品である。この作品は壁に付いた鏡により真上からそのフォルムを見る事が出来る(用を足しながらも見られる...)。

 さて美術館を出て東武東上線の下赤塚方面へ続く「東京大仏通り」をしばらく行って脇道に入ると乗蓮寺というお寺に出る。徳川家康より10石の朱印地を拝領したという由緒あるこのお寺には正しく「東京大仏」という高さ13m、重さ32トンの青銅で出来た巨大な大仏(阿弥陀如来)が建立されている。全体的につやつやと黒光りして、シャープな身体の線のスマートな大仏様である。境内には他にも「旧藤堂家染井屋敷石造物」という不思議な石造が配置されている。これら天邪鬼石造、婆々石造、大黒石造などの姿からは、歴史と信仰を感じさせてくれる。

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青空とスマートな大仏様

 お寺を出て、更に脇道を進んだ二股の付け根に「板橋区立赤塚植物園」がある。入園はただのようなので入ってみる。広さは約1ヘクタールと、それほど大きくはないが、起伏のある丘陵地をうまく生かした造りになっている。この植物園に入ってまず目を引くのは白い樹皮が美しい「ユーカリ」の巨木である。その高さは管理舎の屋根を遥かに越える。「ユーカリ」がこんなにも大きくなるとは知らなかった。今の季節園内では「フクジュソウ」や「スノードロップ」が咲いている。「フクジュソウ」が群生して黄色い花を咲かせている可憐な姿に春の訪れを感じた一日であった。




 今回は童画の展覧会を訪れたが、童画といえば東山魁夷も「コドモノクニ」などの雑誌に童画を描いていた時期がありました。日本画の巨匠として崇高な自然風景の作品を数多く描いた東山魁夷ですが、心温まり童心のある作品も描いています。この度ご紹介する「金太郎」も正しくそのような作品です。大きな熊にまたがり、斧を持った小さな金太郎。でもその表情は口元も眉もきりっとして、しっかりとした眼差しを向けています。彩美版®プレミアムの美しい額装は、和室にも洋室にもマッチします。絵画としての美しさばかりでなく、お子様の健やかなご成長を願ってお部屋にお飾りください。


東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《金太郎》
販売価格 180,000円+税


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<仕様体裁>
限定: 500部
技法: 彩美版®プレミアム
証明: 著作権者承認印、限定番号入り証書を額裏に貼付け
額装: 特注木製額ハンドメイド浮き出し加工
画寸: 33.3×30.0cm
額寸: 48.5×45.0×4.0cm
重量: 約2.6kg
発行: 共同印刷株式会社

January 29, 2016

兵庫県立美術館「ジョルジョ・モランディ」展


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。寒波の影響で日本全国がこの冬一番の寒さを迎えました。皆さまも健康には十分ご留意下さい。

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 さて私は先日、関西出張の折、神戸の兵庫県立美術館まで足を延ばし「ジョルジョ・モランディ-終わりなき変奏-」展に行って参りました。一部で「幻の美術展」と呼ばれるこの展覧会は、2011年の震災の影響で取り止めになっていたもので、わが国では17年振りとなる待望のレトロスペクティブ(回顧展)です。

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 ジョルジョ・モランディ(1890-1964)は20世紀イタリアを代表する静物画の画家として知られます。自然を円筒・円柱・球によって扱うと語ったセザンヌを師と仰ぎ、何の変哲もない壜や容器、花瓶といった日常的なモチーフを繰り返し描き、フォルムの探求を続けました。モランディの絵画世界では机上の器の配置、距離と奥行、光の濃淡、色彩と陰影が微細かつ精妙に変化します。幾何学的立体のヴァリーエーション(変奏)による、形態と色彩の差異の現前こそがモランディ芸術の核心といえましょう。

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 本展覧会は画家の故郷ボローニャにあるモランディ美術館の協力のもと、イタリアと日本の美術館、個人コレクションから約100点の魅惑の作品が展示されております。映画好きの私は、図らずも小津安二郎(1903-1963)が同じテーマ、同じキャストで撮り続けた相似形の構図をも想起し(「晩春」、「東京物語」etc.)、偉大なる芸術の共時性に心が震えました。構図を探求することで、孤独に自己の芸術を追い求めた二人の巨匠は、今でも多くの人を惹きつけてやみません。

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 今回、私が兵庫県立美術館を訪れたもうひとつの理由は、敬愛する安藤忠雄氏が設計した代表的な建築物であるということ。館内には安忠特有の通路が張り巡らされ、綿密に計算されたその動線を辿ると、普段は滅多に気付くことのない、建物の空間の間、光、空気が判然と知覚されます。一旦外に出で海側の通路に出れば、展示棟とギャラリー棟の2棟が隣接のなぎさ公園と精妙に一体化する様も体感でき、やはり来て良かったという深い満足感を得ました。モランディと安藤忠雄の稀有なる出会いに、至福のひと時を過ごすことが出来ました。


 本展覧会はこの後、東京と岩手に巡回します(下記情報をご覧下さい)。2016年注目の展覧会に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。



「ジョルジョ・モランディ-終わりなき変奏-」展

会場 兵庫県立美術館
会期 2016年2月14日(日)まで
休館 月曜日
時間 10:30~18:00 金曜・土曜は20時まで

※巡回スケジュール
2月20日-4月10日 東京ステーション・ギャラリー
4月16日-6月5日 岩手県立美術館


January 15, 2016

山猫の森から

 
20160115entrance_door.jpg 宮沢賢治の作品から店名を起用する例は多々あると思いますが、ここまで自然に作品と現実の印象がシンクロしてしまうことはあまりないのでは...。今回伺ったギャラリーの感想です。

 お正月が終わってすぐの連休初日、寒いながらも穏やかに晴れた気候にほだされ、思いついて越生まで車を走らせました。梅林が見られたら幸運と思いつつ、道に迷いながら辿り着いてみると、さすがにまだ早く、花の気配は全くありませんでした。

 越生梅林を通過する埼玉県道61号からあじさい街道へ入り山林の中の細道を上がっていくと、右手にロッジのような一軒家が見えてきます。門前には、猫のシルエットが乗る年季の入った金属とガラス玉のオブジェ風アーチがあり、「山猫軒」という文字が形作られていました。宮沢賢治の「注文の多い料理店」に登場する店の名前ですが、この場所にあるとまさしく幻想譚の世界そのもの。古びたたたずまいにやや気後れしながら、門を通り階段を上がると建物の扉も巨大な山猫の笑い顔でした。靴をスリッパに履き替えて入ってみると、そこはパンやお菓子、その他グッズが並ぶプチ賑やかなスペースで、外観とのギャップに一瞬異界に入り込んだ印象を受けます。

20160115yamanekoken.jpg 開けかけたガラス戸の奥の部屋に絵が掛かっているのが見えたので、入って行くと何点かの展示作品と共に岩田壮平画伯の、金地に赤い椿を描いた小品もありました。その右の部屋はグランドピアノといくつかのテーブル席が設置された広いメインホール。木材で組まれた高い天井には天窓から光が差し込んでいます。柱や壁にはさり気なく絵画作品が展示されています。さらに吹き抜けの正面のロフトは2階の空間となっており、こちらにも作品が並んでいました。こことつながる右側のロフトに多数のスピーカーが置かれ、静かな音楽が流れています。暖炉には火がくべられ、テーブルのお客さんも寛いだ感じで静かに飲食を楽しんでいます。私は古代米の野菜カレーとコーヒーを賞味した後、展示作品を鑑賞させていただきました。現在「倶楽部山猫絵画展」(越生での田植えを通して出会った日本画のグループ展)が開催されており、岩田画伯を含む総勢24人の作家さんの多様な作品が展示されています。いずれも、テーマ・作風ともに日本画という枠にとらわれていない若々しさが感じられるアート作品です。

20160115gallery_and_cafe.jpg 展示作品もさることながら、和と洋の要素を持ったレトロ感あるこの建物自体に強く興味がわき、オーナーの南さんに建物の来歴を伺ったところ、驚くべきことに、南さんご自身の手で平成元年に建てられたということでした。当時大きく紹介された建築雑誌2誌を見せていただきました。釘を1本も使わない伝統工法で、1,000本もの楔を作って組んでいるそうで、大変な手間暇がかかったとのこと。しかしそれはそれで充実した楽しい時間だったそうです。仲間の方たち40人ほどの協力をいただいて作り上げた家は、外装、内装に様々な人々の個性あるこだわりの意匠・造形が見られます。建物自体が複数の造形家のコラボレートによるアートといえるかもしれません。

20160115Second_floor.jpg ここにはもう1つ神秘的な場所がありました。亡き奥様の名のついた千代文庫です。農業、田舎暮らし、植物 他様々な蔵書とともに、宮沢賢治の手書き原稿の複製も置いています。隠し部屋のような造りの空間に、「~料理店」に登場する一番最後の部屋を連想しました。

 お土産に、入口付近にあったオーナーおすすめのカンパーニュ(田舎パン)を買って帰りました。帰り際、ハンモックのあるオープンテラスを見ると、暖かい時期に是非また来たいと思いました。


 
■ギャラリィ&カフェ 山猫軒

所 在 埼玉県入間郡越生町龍ヶ谷町137-5
電 話 049-292-3981
営業時間 11時~19時
営業日 金、土 日 祝日のみオープン
企画展示 倶楽部山猫絵画展(2016年1月1日~2月28日)


January 8, 2016

桜と目黒川と個性的なお店の事

 あけましておめでとうございます。本年も美術趣味をご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。読者の皆様には、良きごエン(猿)に恵まれ、災いがサル(猿)年でありますよう心よりお祈り申し上げます。

 さて、本年の第一回目のブログは、少々早いようですが春にまつわる花の絵から始めたいと存じます。新年早々何を浮かれているのかとご叱責を賜るかもしれませんが「冬来たりなば春遠からじ」と申します通り、今の寒さの先には春の喜びが待っております。

 東京の南側に世田谷区、目黒区、品川区を流れ、東京湾に注ぐ目黒川があります。目黒川沿いには個性的でオシャレなお店が並び、若者のデートスポットとしても有名です。また中目黒駅周辺の川沿いにはソメイヨシノが植えられており、春になると桜祭りが開催されるなど多くの人でにぎわいます。人が多いところが苦手な私は、まだ閑散としている冬の間にこの川を訪れる事にしました。

 中目黒駅から歩いてほど近い場所に、「郷(さと)さくら美術館 東京」がございます。この美術館は桜を描いた作品の常設展示室を設けて「いつでも桜が見られる美術館」として多くの方に親しまれています。また外観がとてもユニークな建物で(2012年グッドデザイン賞受賞)、ぱっと見は真っ黒な箱の様にに見えますが、近寄って良く見ると外壁のパネル一枚一枚が桜をモチーフにした模様にくり貫かれています。こちらの美術館では特別展「中島千波の世界」※が開催されています。中島千波画伯といえば、「桜の千波」と評されているほど桜の絵の大家です。

 まず美術館に入って驚くのは、一階のフロアにぐるりと並べられた大画面の桜の屏風です。まばゆい金の明るさの「素桜神社の神代櫻」や2015年に完成させたばかりの「石部の櫻」などの四曲一隻の屏風が5点、堂々と展示され日本各地の桜の巨樹を居ながらにして鑑賞できる様は、まさに桜花爛漫、春到来なのであります。個人的には薄暗い背景に、ほのかに桜の花が輝いている「樹霊淡墨櫻」がとても好きです。作品の解説には千波画伯の言葉と、描かれた花についてわかり易く書かれており、より作品を知る事が出来て楽しめます。この展覧会では1〜3階のフロアごとにテーマが分けられ、「おもちゃ」シリーズや「人物」など、中島画伯の幅広い画業に触れる事が出来ます。各階へはエレベータで移動でき、外光の差し込む明るいトイレ、適度な展示スペースなど、とても居心地が良く鑑賞疲れもありません。郷さくら美術館は福島県郡山市にもあり、そちらの方が先に開館いたしました。そちらの美術館へも是非、訪れてみたいものです。

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郷さくら美術館のアーティスティックな黒い外壁


 さて絵画鑑賞の後は、目黒川沿いを散策する事にします。個性的なショップが並ぶこの界隈でも特に楽しいお店がColobockle(コロボックル)さん。昔ながらの一軒家を改装した店内には、絵本作家の立本倫子さんのハンドメイド感たっぷりの絵本や文具が並びます。立本さんが作り出す、不思議で楽しいキャラクターが描かれた品々はどれも欲しくて迷います。目黒川沿いを池尻方向へ進んで行くと、西郷山公園近くの川沿いに昨年の11月に開店したばかりのチョコレートショップ「green bean to bar chocolate」(グリーン ビーン トゥ バー チョコレート)があります。ブルーの外壁にヨーロピアンな外装。ここはカカオ豆からチョコレートになるまでの全行程をお店に併設されたファクトリーで行っているこだわりのチョコレート専門店。カカオ豆と砂糖の2つの材料で作られるチョコレートバー。アニスの香りのガナッシュなどの各種ボンボンショコラ。マダガスカル産カカオ豆を材料にしたカカオティーといったちょっと変わったものも売っています。店内でチョコレートドリンクを飲む事も出来るので、散策に疲れたら一休みにももってこい。

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カカオティーとボンボンショコラ



 最後にお勧めしたいのは、国道246の陸橋脇にある「一般財団法人 日本地図センター」。こちらのビルの1階には様々な地図が売っているので地図好きにはたまらない所である。私も以前「デジタル標高地形図 東京都区部」と「デジタル標高地形図用3Dメガネ(紙製103円税込)」を購入した事がある。帰宅したら早速、今日の行程を3Dメガネをかけて標高地図で見てみよう。西渋谷台地と目黒川との高低差約20mもの崖線がクキッリと浮かび上がってくる事であろう。

※ 郷さくら美術館 特別展「中島千波の世界」 開催中〜2月28日(日)まで。場所、休館日などは美術館の情報をご覧ください。



【中島千波画伯版画のご紹介】

当代随一の人気画家として知られる中島千波画伯が、京都・東山にある高台寺の桜樹を描いた作品です。
高台寺は豊臣秀吉の妻ねね(北政所)が秀吉の菩提を弔うために創建した名刹ですが、古くから桜の名所として知られています。独特の華やかで妖艶な世界をお楽しみください。




リトグラフ版画
中島千波 《春日和》
販売価格 320,000円+税


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<仕様体裁>
作者直筆サイン、落款印入り
限定:200部
技法:リトグラフ
用紙:ベランアルシュ
版・色数:32版32色
額縁:特製木製額金泥仕上げ・アクリル付き
画寸:41.0×53.0cm
額寸:64.0×75.5cm
重量:約3.8kg
発行:共同印刷株式会社

December 4, 2015

日本の商業デザインのパイオニア「杉浦非水・翠子展」のご紹介~白根記念 渋谷区郷土博物館・文学館より~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。紅白歌合戦の出場歌手も発表され、いよいよ年末の気配が感じられてきました。その会場であるNHKホールをはじめ、渋谷には様々なスポットが数多く点在しています。今回のブログでは、渋谷の街の通史やゆかりの文学者に関する貴重な資料を展示している博物館、『白根記念 渋谷区郷土博物館・文学館』をご紹介いたします。

20151204shibuya_museum.jpg 『白根記念 渋谷区郷土博物館・文芸館』は、昭和45年、区立中央図書館内に設置された「郷土資料室」が前身です。その後、昭和49年に故白根全忠氏から区に寄贈された宅地と邸宅をもとに、区に関する資料の保管・展示の場として利用に供されてきた「白根記念郷土文化館」を全面改築したもので、郷土の歴史と文化を学び、新たな"渋谷らしさ"の創造を目指す施設として平成17年に生まれ変わりました。

 地上2階、地下2階の館内では、渋谷区に関係する歴史・民俗・考古学・文学などがテーマ毎に構成されています。年2~3回の特別展を開催するほか、収蔵資料を検索できる情報コーナーや戦前の住宅再現などのほか、本物の江戸時代の道具や縄文土器に直接触れたり、実際に年度の上に縄文模様を付ける体験も出来ます。

20151204sugiura_flier.jpg 現在は特別展「杉浦非水・翠子展」を開催中。日本の商業デザインの先駆者で、三越やカルピス、地下鉄開通ポスターなどの広告で知られる杉浦非水と、その妻で歌人の翠子は、戦前から戦後にかけ、それぞれの分野で先駆的な活躍をしました。展示では日本の近代の歩みとともに、二人の作品の数々を見ることができます。開催期間は、2016年1月11日(月・祝)まで。

 いつの時代も行き交う人で賑わう渋谷の街並み。現在は渋谷ヒカリエの開業を機に再開発も本格化しています。そこには様々な人による様々な功績があるという歴史背景を知ることで、より一層、渋谷への魅力が深まることでしょう。





【白根記念 渋谷区郷土博物館・文学館】

住 所 〒150-0011 東京都渋谷区東四丁目9-1
入館料  一般:100円(80円)/小中学生:50円(40円)
    ※(  )内は10名以上の団体料金
    ※60歳以上の人、障害のある人と付き添いの人は無料
会 館 午前11時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休 館 月曜日(休日の場合はその直後の平日)・年末年始
電 話 03‐3486‐2791
交 通 渋谷駅から
    都バス「日赤医療センター行き(学03)」(東口54番) 国学院大学前下車2分
    ハチ公バス「恵比寿・代官山循環」郷土博物館・文学館下車
公式HP http://www.city.shibuya.tokyo.jp/edu/koza/12kyodo/kyodoindex.html

November 27, 2015

映画祭の季節 ―第2回広島国際映画祭―


20151127hiroshima_movie_fes.JPG 日ごとに寒気加わる時節となりました。今年も残すところあとひと月です。皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 10月には、山形(山形国際ドキュメンタリー映画祭)、京都(京都国際映画祭)そして東京(東京国際映画祭)で国際色豊かな映画祭が執り行われました。現在、東京ではアジア映画を中心に特集が組まれた≪東京フィルメックス≫が有楽町で行われております。

 そこで今回は、昨年よりスタートし今年は更に充実した特集プログラムが組まれた≪第2回広島国際映画祭≫をご紹介いたします。

20151127hiroshima_movie_fes2.JPG 復興と希望の象徴である街、広島を舞台に世界一の映画祭を目指すと高らかにに宣言する≪広島国際映画祭≫。 第1回の昨年は広島県出身の映画監督・長谷川和彦にスポットを当て本格映画祭へのスタートを切り注目を集めました。

 バージョンアップした本年は、国外の映画祭で話題となっている作品の日本プレミアから、いま勢いのある日本の若手監督たちの特集上映、シネフィルの殿堂シネマテーク・フランセーズとの初の協賛企画に、質の高い作品を集めた短編映画のコンペティションなど注目のプログラムが目白押し。他にも広島出身の人気アーティストPerfumeのドキュメンタリー作品や、広島に因んだ作品の上映など関連ゲストも交え、新しい発見と出会いのある賑やかな映画祭となりました。

 中でも、ドキュメンタリーとフィクションの間を往還する不思議なテイストのポルトガル映画、ミゲル・ゴメス監督作品『アラビアン・ナイト』全三部作(日本プレミア)と、「今後20年間上映されることはない」(主催者言)という大変貴重な上映に立ち合うことができた、究極のプライヴェート・フィルム、フイリップ・ガレル監督作品『水晶の揺籠』(国内初上映)、人気俳優の染谷将太主演、古代魚ポリプテルス・エンドリケリーが実に印象的な濱口竜介監督作品『不気味なものの肌に触れる』(短編2013年制作)の三作が、私にとって特筆すべき収穫でした。

20151127hiroshima_movie_fes3.JPG 私自身広島を訪れるのも何十年振りかのことでしたので、映画祭を楽しむ傍ら、限られた時間ではありますが活気ある広島の市内を探索し、過去と現在が共存する広島の街のさまざまな表情を新たに発見することが出来ました。それは先人たちが生きた証、今を生き抜くため力、人と人との絆・・・。

 結びに、これからの期待も込めて≪広島国際映画祭≫には、地方都市開催の国際映画祭として優れて評価の高い≪山形国際ドキュメンタリー映画祭≫にも負けない、強い個性と革新的な魅力、ポジティブな力を国内外に発信していってもらいたいと思います。

※写真:上から、①②映画祭会場風景 ③平和通りのイルミネーション

≪第2回広島国際映画祭映画祭≫
会期:11月20日(金)~23日(月)
会場:NTTクレドホール、広島市映像文化ライブラリー他
次回映画祭(第3回)開催は平成28年を予定。

≪第16回東京フィルメックス≫
会期:11月21日(土)~12月4日(金)
会場:11月21日(土)~29日(日)有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇
   11月28日(土)~12月4日(金)有楽町スバル座(「特集上映ツァイ・ミンリャン」)
詳しくは http://www.filmex.net

    


November 20, 2015

展覧会図録について思う


 皆さんは展覧会に行くと図録を購入されますか?私は気に入った展覧会の図録はだいたい購入するようにしています。この場合、展覧会を見た興奮と勢いで「購入してしまう」と言う方が正しいかもしれません。装丁も、それぞれに凝っていたり、素敵なものが多いので、買ってしまう、というのもあります。

20151120books.jpg たった今、展覧会で目にした素晴らしい作品の数々を、いつでも、何度でも見返すことが出来る!という満足感と共に、分厚〜い図録を揚々と携えて帰ってくるのですが、熱が冷めるのは早いもので、帰って眺めるのはほんの数回で、ましてや解説を含めて隅々まで読み尽くしたものなど一体いくつあったか...いや、無いのではなかろうかと思うのです。私に購入された図録達にとっては悲しい運命です。実家に帰れば、これまでに買い集めた図録が、もはや本棚の中でインテリアの一部と化して、もう何年も開かれることなく寂しげに並んでいます。

 ですが最近、私の中での図録の位置付けが少しだけ変わってきました。この仕事に携わるようになってから、作品調査をする上で貴重な資料となることが、何よりの理由ではありますが、見返すたびに新しい発見があり、また読み物としても面白い本だなぁと思うのです。(何を今さら、と思う方、すみません...)

20151120rinpa.jpg ちなみに最近読んで面白かったのは、京都国立博物館で開催中の「琳派 京を彩る」展の図録です。琳派400年の今年、京都で大いに盛り上がっているこの展覧会に訪問したので、先の例に漏れず厚さ2センチはある図録を購入して帰りました。

 巻頭の河野元昭先生のお話、「琳派私的旅行」は、国宝級の作品を多数収録する雅で重厚感ある図録のイメージとは裏腹に、誠に失礼ながら巻頭にもかかわらずかなりラフな旅行記になっており、図録をみているというよりもちょっとしたエッセイを読んだような楽しさがありました。ともすれば堅苦しくなりがちな本の内容に向かう心を、ゆるく解きほぐしてくれるような効果があって、「琳派」というテーマと自分を少し近づけてくれたように思われました。

 そんなこんなで、最近の私にとって図録は、一過性のものではなく何度でも見返して楽しい、作品や作家と自分を近づけてくれる、そんな存在になってきました。先日実家に帰った際に、久しぶりに過去の図録を開いてみました。展覧会を見たときのことや、自分があの頃何に興味があり、どんな作品が好きだったか、そんなことを少し思い出したり、新たな魅力ある作品を発見したりして、ああ、やっぱり買ってよかったなぁ、と思ったのでした。

 皆さんは購入した図録、どうされていますか?私と同じように本棚に眠っているのであれば、時々は見返してみると、あの美術館にまた行きたいな、またあの人の作品を見てみたいな、と思うものがきっと見つかるかもしれません。



琳派誕生400年記念
特別展覧会「琳派 京を彩る」

会期:平成27年10月10日(土)~11月23日(月・祝)
場所:京都国立博物館


November 6, 2015

ジョゼフ・コーネルの部屋を訪れた事

 
 コーネルの箱が好きである。


 ジョゼフ・コーネルは、1903年にニューヨークの裕福な家庭に生まれた。しかし父を亡くすと、家族を養うために学業を辞め織物会社で働かなければならなくなった。そして彼は家の地下室をアトリエにして箱を作り始めた。

 彼の箱は蚤の市ででも買って来た様な古びた外装で、中にはコルク玉、女優のブロマイド、図鑑から切り抜かれた動物たち、割れたグラス、地図、貝殻などが並べられている。彼の箱は言うなればガラクタのいっぱい詰まった、あるいは、それすらあまり入っていない箱である。彼の作品を目にして2秒で立ち去る人もいるが、私はそれをずっと見ていたい。彼の箱の前に立つと、既になくなってしまったチョコレートの箱の匂いを嗅ぐような、甘い寂寥感を感じる。私は中でもホテルシリーズの様なモチーフが少ないものが好きである。箱(=部屋)の中にある、かすかな手がかりから隠れた物語を探すのである。空っぽのホテルの部屋で数時間前に起こった事件を想像し、ずっと昔に起こったホテルの歴史に想いを馳せてみる。

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© OSAMU INOUE, 2015
自宅の風呂場をコーネル風にしてみた...



 千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館で現在開催中の「絵の住処(すみか)--作品が暮らす11の部屋--」(2016年1月11日まで)で、ジョゼフ・コーネルの作品が見られるというので訪れる事にした。今回は立体、平面含め16点もの作品が、展示されている。「ジョセフ・コーネルの部屋」と題された一室には彼の作品だけが展示されている。その中の一つに《無題(ピアノ)》があった。箱の内側に楽譜が貼ってあり、3段に仕切られた棚には楽譜を貼付けたマッチ箱の様なものが置いてある。そして甘く切ないオルゴールの音色がエンドレスで聞こえて来る。元はモーツアルトの「ピアノ・ソナタ ハ長調(K.545)」が奏でられたそうだが、音楽に全く造詣がない私には、それかどうかわからない。しかし国内にこれだけの数のコーネルのコレクションを持っているとは、実にすばらしく、ありがたい事である。コーネルの箱をまだご覧になられた事がない方は、是非この機会に彼の部屋を訪れていただきたい。ただ彼の箱の世界に閉じ込められて、出られなくならない様にご注意いただきたい。

 ちなみにコーネルについての書物で、私のお気に入りは以下。「コーネルの箱」(チャールズ・シミック著、柴田元幸訳、株式会社文藝春秋発行)は、コーネルの箱の写真とシミックの幻想的な詩とが織りなす、まさに迷宮的世界で逸品。洋書の「Joseph Cornell : Navigating the Imagination」(Lynda Roscoe Hartigan著)は彼の作品がたっぷりと掲載されている。

 さて彼の部屋に長居をしすぎたため、少々コーネル疲れを起こした。隣接するレストラン「ベルヴェデーレ」で昼食を取る事にする。ここでは千葉の地のものを取り入れた料理をいただける。美術館のレストランに相応しく、前菜の盛り合わせの皿は画家のパレットの様にカラフルで、出て来る品々が皆目で見て美しく、そして美味しい。窓からは緑に囲まれた池の景色が楽しめる。ただし休日のランチは混雑するので、早めに入った方が良さそう。

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© OSAMU INOUE, 2015
レストランの窓から、樹々に囲まれる池を眺める



 食後に池の畔で一休みする事にする。池には白鳥が居る。白鳥というものは翼を広げて立ち上がる(元から二本足で立っているが)とかなり大きい。鳴き声も騒がしく威圧的とまで言える。一羽がこちらに向かって迫って来る。白鳥に追われ引き上げる事にした。


 尚、DIC川村記念美術館と言えば、マーク・ロスコの部屋(心臓の中の様に赤い)やフランク・ステラの部屋(体育館の様に広い)も、とてもすばらしいです。



【DIC川村記念美術館のご案内】

所在 千葉県佐倉市坂戸631番地
電話 0120-498-130(フリーダイヤル)
開館 9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館 月曜日、但し祝日の場合は開館し翌平日休館
   年末年始、展示替期間
料金 その時の展示内容により変わります。
   詳細は美術館へお問い合わせください。
交通 ◆JR佐倉駅より
   南口の「DIC川村記念美術館バス停」より無料送迎バスあり(乗車約20分)
   ◆京成成佐倉駅より
   南口の「シロタカメラ」前より無料送迎バスあり(乗車約30分)

October 23, 2015

密やかに咲く


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。朝晩の冷え込みと富士山の初冠雪の便りを聞くと、冬の到来も間もなくであることを意識いたします。体調を崩しやすい季節でもあり、皆様どうぞご自愛くださいませ。



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 このところ秋晴れの爽やかな天候が続いていますが、散策の途中に立ち寄ったお寺の境内で、密やかに咲く山茶花(さざんか)が目に留まりました。瑞々しい青い葉の間から清楚に咲く花に凛とした空気が漂っていました。寒くなると花木に触れる機会が少なくなりがちではありますが、季節ならではの楽しみ方がありますね。

 さて今回は、当社彩美版®のラインナップのなかから小倉遊亀の《山茶花》をご紹介いたします。静謐な画調の中から瑞々しい感性と凛とした精神性が感じられる逸品です。


小倉遊亀 《山茶花》
彩美版®、軸装・額装
販売価格(各) 180,000円+税


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●額装仕様


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●軸装仕様


<仕様・体裁>
監修 鉄樹
解説 細野正信(美術史家)
原画 滋賀県立近代美術館所蔵
技法 彩美版®、シルクスクリーン
装丁 軸装・額装
限定 300部発行

<軸 装>
軸装 三段表装、柾目桐箱付
画寸 天地47㎝×左右53㎝
軸寸 天地143㎝×左右73㎝

<額 装>
額縁 木製金泥箔仕上げ、アクリル付
画寸 天地47㎝×左右53㎝
額寸 天地63㎝×左右70㎝
重量 約3.2kg




【今日の谷根千】

地下鉄「千駄木駅」近くにある森鴎外記念館の情報です。
現在、以下の特別展が開催されています。


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特別展 「ドクトル・リンタロウ―医学者としての鴎外」

文京区立 森鴎外記念館
所在 東京都文京区千駄木1-23-4
電話 03-3824-5511

会期 2015年10月3日(土)~12月6日(日)
休館 10月27日(火)、11月24日(火)
時間 10:00~18:00(入館は17時30分まで)
※11月6・7・8日(金土日)は20時まで開館(入館は19時30分まで)
料金 一般500円(20名以上の団体は400円/人)
   中学生以下は無料


October 2, 2015

東京都美術館で「モネ展」開催中


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。10月に入りやっと秋らしくなってまいりました。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。私は先日、上野の東京都美術館で「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」に行って参りました。

 ルノワールと人気を二分する印象派の巨人、クロード・モネ(1840-1926)。パリのマルモッタン・モネ美術館には画家が最期まで手元に置いた貴重な作品の数々が所蔵されています。十代で描いた風刺絵-地元で大変な人気を得てモネは画家として立つ自信を得た-、画家の没後に発見された家族の肖像画、モネが集めた同時代の画家たちの作品-ルノワールが鉛筆で描いたリヒャルト・ワーグナーの肖像はワグネリアン必見!-等々、モネの人生や人物像を知る上で欠かせない作品ばかりです。モネの歴史的コレクションで、貴方はますますモネの世界に惹きつけられることでしょう。

 中でも注目は何と言っても《印象、日の出》です。印象派の由来となった著名な作品ですが、東京で鑑賞できるのは21年振りとのこと。わたしは昼間の喧騒を避け、夜間の特別展示でじっくりと作品を鑑賞いたしましたが、想像していたより小振りな作品にもかかわらず、名画の放つオーラと統一感、細部の光と色彩の豊かさに思わず息を飲み、その場で足が釘付けになりました。尚、この作品は会期中ひと月しか展示されませんので、《印象、日の出》を目的に訪れる方はくれぐれもご注意下さい(展示は10月18日まで)。同20日からは、これまた滅多に館外には出ないという《ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅》が特別展示されます。

 他にもモネが生涯愛したジヴェルニーの庭園を描いた一連の作品も展示されており、《睡蓮》や《しだれ柳》、《(日本風の)太鼓橋》や《バラの道や庭》等々、マルモッタンの貴重なコレクションでモネの豊かな創造の世界を堪能することができます。わたしは特にモネ最晩年の作品に、コンテンポラリー絵画にも通じる、モチーフを描くというよりは見るという行為そのものを描出するような、写実を離れ印象/抽象の世界をより強く志向する姿勢を感じ、深い感銘を覚えました。

 芸術の秋にふさわしい、見応えあるモネの展覧会に皆さまもぜひ足をお運び下さい。


【展覧会情報】

マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 「印象、日の出」から「睡蓮」まで


会場 東京都美術館
会期 2015年12月13日(日)まで
   ※休室日=月曜日(10/21・11/2・11/23を除く)、
    10/13(火)、11/24(火)
時間 9:30~17:30 (金曜、10/31-11/2は20時まで)
※ただし「印象、日の出」展示期間は10/18(日)までです。
 期間中の土・日・休日は21時まで特別開館します。


 なお、弊社では文中でも触れたモネの代表作《印象、日の出》の複製画を大小2つのサイズでお取扱いしております。好評発売中の『睡蓮、水のエチュード-雲』ともども、貴方様のお部屋のインテリアとして、また大切な方への記念品や贈り物としてお勧めいたします。




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モネ《印象、日の出》
※上の画像は10号サイズ版です。


モネ 《印象、日の出》
①F3号  販売価格 25,000円+税
②F10号 販売価格 40,000円+税


<仕様体裁>
技法 アートレリーフTM
画寸 ①F3号/②F10号
額寸 ①36.0×41.5cm/②62.5×70.0㎝
重量 ①1.2kg/②3.6kg
額縁 特製木製洋額
原画 マルモッタン美術館所蔵
発行 共同印刷株式会社





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モネ《睡蓮、水のエチュードー雲》
※画像をクリックするとより大きな画像が別画面で開きます。
Photo © RMN-Grand Palais (musēe de l`Orangerie) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNP artcom



モネ 《睡蓮、水のエチュード-雲》
販売価格 128,000円+税


<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
画寸 28.3×91㎝(30号大)
額寸 38.2×100.8cm
重量 3.3kg
額縁 特製木製デコレーション金箔額
原画 オランジュリー美術館所蔵
発行 共同印刷株式会社


July 31, 2015

品川の原美術館で「サイ・トゥオンブリー」展を見る


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。夏も真っ盛り、連日の30度超えで、私の周りでは体調を崩す方が大勢いらっしゃいます。皆さまも体調管理には十分お気をつけ下さい。

20150731CyTwombly_Ex.jpg さて私は先日、アメリカ現代絵画の巨匠サイ・トゥオンブリーの展覧会を東京品川の原美術館にて鑑賞してまいりました。いつもは品川駅より第一京浜をてくてく歩いていくのですが、その日はちょっと気分を変えて最寄りの京急北品川駅より向かいました。国道を渡り、ゆるやかな坂道を上り始めるとそこはもう閑静な高級住宅街。ゆったりした街並みは自然環境にも配慮が行き届き、歩いているだけでも気持ちが豊かに高揚します。駅からも10分程度のアクセスですので、徒歩で訪問の際は、一度このルートを通ってみてはいかがでしょうか。

20150731hara_museum.jpg 原美術館は昭和初期のモダニズムハウスを改装し、1979年に私立の現代美術館の草分けとして開館。御殿山の一角の高級住宅街に位置するロケーションが、今も贅沢な気品を漂わせます。40年近くにも亘り、国内外のコンテンポラリーアートを地道に紹介してきたそのスタンスは国内外で高く評価されております。

 今回の目的は「サイ・トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」展-20世紀の抽象絵画を牽引した米国ヴァージニア州出身のアーティスト、サイ・トゥオンブリー(Cy Twombly, 1928-2011)の日本初の企画展です。「描画された詩」とも評される絵画作品70点を一堂に揃え、画家の半世紀にわたる作風の変遷を回顧します。2001年ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞受賞後、キャリアピークを迎えた2003年、ロシア・エルミタージュ美術館をスタートし、欧米各国を巡回した伝説のレトロスペクティブが画家の没後、新たに企画再構成されました。

 キュレーターの方達の本展への熱意が伝わってくるようで、見応えは十分です。描線の戯れが印象的な初期作品から、イタリアに拠点を持つことで作風が独自の発展を遂げ、鮮やかな色彩を獲得するに至った後期作品まで、華やかさや激しさを禁欲的に表層にとどめる画家の強固なスタイルに深い感銘を覚えました。2011年に惜しくも移住の地であるローマに没した画家への哀悼が、一転して刺激的な「祝祭の場」へと変容してしまう、アートの喚起する偉大な力を本展でもまざまざと実感いたしました。

 他にも館内には、奈良美智のガジェット作品や宮島達男の電光アート、ジャン・ピエール=レイノーのクリーン・ルーム等のミュージアム・コレクションが常設され、どれも美術館の静謐な空間に悠然と融けこんでおり心が安らぎます。

 以上、ご紹介の「サイ・トゥオンブリー」展の会期も残すところあとひと月。真夏の暑い盛りではありますが、クールで一見シンプル、だがとても奥が深い...そんな現代アートの展覧会に皆さまもぜひ足をお運び下さい。



【展覧会情報】

「サイ・トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」

会場 原美術館
   東京都品川区北品川4-7-25
会期 8月30日(日)まで。
   月曜休館(祝日を除く)
開館 11:00~17:00(水曜は20時まで)


July 10, 2015

恵比寿の長い坂と前田青邨展


 久方ぶりに恵比寿駅に降りた。ビールの貨物駅として開業したこの駅の周辺には美味しいビールを飲ませてくれる店も多い。今日はこの駅の近くにある山種美術館で、前田青邨(せいそん)の生誕130周年を記念した展覧会を開催していると聞き、訪れてみることにした。そして叶うなら帰りにビールで喉を潤そうと、この地の利を最大限に活用する計画で臨んだ。

 駒沢通りに出て青山方面に向かうとすぐに長い坂に出る。果てが見えないような坂であるが、この頂にまだ見ぬ山種美術館がそびえているはずなので、汗をかきかき上って行く。この坂の辺りは住所でいえばオシャレの代名詞でもある広尾。坂の両側にも小洒落たレストランや、雑貨店がある。途中、巨大なダビデ像が立っているビルの前を通り過ぎ、ようやく坂の頂を制覇して山種美術館にたどり着く。

 展覧会名に「生誕130周年記念 前田青邨と日本美術院 −大観・古径・御舟−」※1とある。まずは展示会場に入る前に、エントランスにある「Cafe 椿」で一休みする事に。ここでは今回の展覧会のオリジナル和菓子が楽しめる。私は前田青邨筆《蓮台寺の松蔭》にちなんだ「こころざし」という練り菓子と抹茶のセットをたのんだ。「こころざし」は松蔭が読んでいる書物を模した形になっており、シナモンの香りと上品な甘みが抹茶の爽やかな渋味に合う。他にも速水御舟筆《炎舞》をイメージした「ほの穂」や、横山大観筆《作右衛門の家》を題材にした「青葉」など、色鮮やかで宝石のように美しい和菓子があって目移りする。

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「Cafe 椿」の美しい練り菓子


 一息ついたのでそろそろ作品鑑賞に移る事にする。この度の展覧会はタイトルに日本美術院とあるように前田青邨だけではなく、横山大観、速水御舟、平山郁夫など日本美術院で活躍した日本画の巨匠達の貴重な作品が一同に見られる。青邨の大作も間近で見られ、その筆使いや金の色使いなど、つぶさに観察でき大変勉強になる。なお、公益財団法人日本美術院が主催運営する院展は、今年の秋で再興第100回という大きな節目を迎える。本展覧会は現代日本画の巨匠の作品を見られる貴重な展覧会である※2。

 美術館からの帰り道、ソフトクリームの看板が目立つ雰囲気の良さそうなカフェがあったので入ってみる。元気の良い女性3人が切り盛りしていたこの店の中の壁は全て本棚になっており、そこには大量の写真集がきれいに収まっている。オーダーをすれば自由に閲覧できるようだ。後で知ったのだが、ここは「写真集食堂めぐたま」という変わった名前のお店で、壁の写真集は写真評論家の飯沢耕太郎氏の蔵書5,000冊だそうである。ちなみに私の隣のお客には、お店の人が「ねこまんま」をしきりにお勧めしていたようである。「ねこまんま」といえば、ご飯に鰹節をのせて醤油をたらしたあれだと思うのだが...。

 広尾、恵比寿といえばオシャレなお店が軒を連ねる所といったイメージをいだいていたが、この界隈は自家製のぬか漬けを売っている八百屋さんや、昔ながらのガチャガチャが置いてある雑貨店などもまだ現役でがんばっている。庶民的で昭和な商店も所々に顔を出す不思議な場所である。帰りに駅前でも魚屋さんが威勢よく、今風のカフェのマスターと魚の調理の仕方を話していた。良い感じに暮れかかって来たので、私も喉を潤しに行くことにした。

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ガチャガチャのある雑貨屋(ガチャガチャは私が子どもの頃に呼んでいた名前で、一般名称はカプセルトイ)


※1 「生誕130周年記念 前田青邨と日本美術院 −大観・古径・御舟−」展は山種美術館で2015年8月23日まで開催しているとの事です。
※2 再興第100回院展は9月1日(火)に東京都美術館から始まり各地を巡ります。また当社はこの図録の制作・製造を請け負っております。






【関連商品のご紹介】

今年、生誕130周年を迎える日本画の巨匠、前田青邨。
当社でもこの記念すべき年に新作高級複製画「牡丹」を制作いたしました。
富貴の象徴でもある牡丹が、色鮮やかな五彩花文壺に生けられた名作です。
華やかで気品ある本作品を皆様のご家庭にも是非どうぞ。



彩美版®
前田青邨 《牡丹》 軸装・額装
本体価格 (各)190,000円+税

<仕様体裁>
監修: 小山 硬(日本画家、日本美術院同人)
解説: 川口直宜(美術評論家、前・泉屋博古館分館長)
限定: 200部
技法: 彩美版®、シルクスクリーン手刷り、本金泥使用

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


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【軸装】
表装: 三段表装、柾目桐箱・タトウ付き
箱書: 小山 硬(シルクスクリーン刷り)
画寸: 天地41.1cm×左右53.0cm
額寸: 天地136.5cm×左右72.1cm




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【額装】
額縁: 特注木製額金泥仕上げ、金モール織マット、アクリル付き
画寸: 天地41.1cm×左右53.0cm
額寸: 天地59.2cm×左右71.0cm
重量: 3.3kg

June 26, 2015

新作・モネ《睡蓮、水のエチュード-雲》のご案内


20150626ajisai.jpg いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。関東圏内は梅雨入りしましたが、時折ザーっと降る夏の夕立のような雨が降りあまり梅雨らしくない空模様がつづいています。それでも路地や庭先等に咲く菖蒲や紫陽花、芍薬に目に留めては雨が似合う花が咲く季節なんだなと感じ、心和みます。
 写真は先日「あじさいまつり」が開かれていた、文京区白山にある白山神社境内の紫陽花です。







20150626suiren2.jpg いつもの谷根千界隈からすこし足を運んで上野恩賜公園へ向かって散策途中、公園の南西側にある不忍池にたどり着きました。三分された池は、北は上野動物園の水上動物園、西はボート池、南は蓮の池となっています。蓮の池は青々と池の水面を茂る蓮の葉が目に眩しく、ワイルドに!群生している葉の隙間から花のつぼみが見る事ができました。花はこれから7月中旬~8月上旬にかけて見頃を迎えるそうです。湿った空気と暑さの中での散策でしたが、時折吹く風や木陰に入るとヒンヤリ気持ちよく、遠くの空の雲の様子に夏の気配感じながら公園を後にしました。

20150626suiren1.jpg さて弊社ではこの度、モネ畢生の大作《睡蓮、水のエチュード-雲》の彩美版®を発売します。原画は印象派を代表する画家クロード・モネの集大成、オランジュリー美術館所蔵の《睡蓮》連作大装飾壁画8作品のひとつです。モネ《睡蓮》連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈されたという歴史的な作品であり、オランジュリー美術館は《睡蓮》連作大装飾画のために創設された「印象派の殿堂」です。

 《睡蓮、水のエチュード-雲》は、睡蓮と朝焼けの水面に映える雲の情景が、微妙なニュアンスに富む青、緑、紫、白、赤などが入り交る、モネならではの彩りの世界で描かれた作品です。本作品は第一室に飾られた「雲」の全画面より作品のハイライト部を、フランス国立美術館連合・グランパレ(RMN‐GP)の画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。



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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) /
Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom



彩美版®
クロード・モネ 《 睡蓮、水のエチュード-雲 》
Claude Monet
Les Nymphéas, Étudu d'eau:Les Nuages
販売価格 128,000円+税
限定200部発行



<仕様体裁>
原 画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監 修 千足 伸行(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)
限 定 200部
技 法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
用 紙 キャンバス
額 縁 木製デコレーション金箔額(国産ハンドメイド)、アクリル付き
画 寸 天地28.3×左右91㎝(30号)
額 寸 天地38.2×左右100.8㎝
重 量 3.3㎏
発 行 共同印刷株式会社

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


June 5, 2015

奇想の美術館でバネット・ニューマンを見る


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。6月に入り、夏真っ盛りの陽気となりましたが、西の方からは徐々に梅雨の足音も近付いてきました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

20150605mihomuseum_entrance.JPG さて私は先日、予てより念願のMIHO MUSEUM(ミホミュージアム)で「バネット・ニューマン-十字架の道行き-」展を鑑賞してまいりました。MIHO MUSEUMは滋賀県琵琶湖の南、湖南アルプスの山中に位置する雄大なスケールと景観を誇る美術館です。私はその立地から知る人ぞ知るの秘境美術館をイメージして行ったのですが、JR石山駅からバスで50分の辺鄙な山地にありながらも、来場者は数多く、あまつさえ外国人観光客の観光コースとなっていることに(!)驚きを感じました。

20150605mihomuseum_entrance2.jpg 美術館の広大な敷地は、入口のレセプション棟からトンネルを抜け、半地下の南北に広がる美術館にまで続きます。美術館の設計はルーヴル・ピラミッドで有名なI.M.ペイ。シャープで幾何学的なデザインの作風から「幾何学の魔術師」の異名を持つアメリカを代表する建築家です。写真の幾何学模様のガラス屋根に建築家ペイの個性が表れております。
 美術館を訪れて改めて分かったことは、優れた景観や展示内容はもちろん、特にホスピタリティに優れた美術館であるということでした。休憩時利用のレストランやティールームの応対とメニューは卓越しており、私が買い求めたパンや菓子でも、農薬や化学肥料を一切使わない天然素材の食材とのこと。一口噛めば粉の違いがはっきりと分かる、滋味あふれる、本物の味わいの美味しさでした。

20150605mihomuseum3.JPG 興奮のあまり?話しが些か脱線いたしましたが、今回の鑑賞の目的はバネット・ニューマン(1905‐70)です。ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコらとともにアメリカ抽象表現主義を牽引したニューマンは、《アンナの光》という代表作が近年まで日本の美術館に所蔵されていたこともあり、日本の現代美術愛好家に親しまれております。ニューマンの作風は線と色彩の配列のみで、崇高なイメージを創造するというもの。一見シンプルな構図の作品の表層からも、困難なテーマに挑み続けた作家の生涯が決して平坦なものではなかったことがうかがわれます。私が考えるニューマン作品の鑑賞の要件は、独り絵の前に佇み、作品を見詰め、問い掛け、その作品と共振すること。それだけ。そうすることではじめて作家の精神・作品の核心に近づくことが出来るものと信じております。

20150605mihomuseum4.JPG 今回来日の作品は、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する全14点の連作《十字架の道行き》。「十字架の道行き」とは、本来キリストの受難を図像化した宗教画の伝統的な主題のひとつですが、ニューマンは独自の作風で8年の歳月を掛けて連作を描き続けました。作品は時代・国籍・人種・宗教を超越し、優れた芸術のみが持ちうる崇高な精神性や、至上の聖性を顕現するに至りました。「レマ・サバクタニ(神よ、なぜ私をお見捨てになったのですか)」の副題に隠された、作品に秘められた根源的な問い掛けからも、本連作が20世紀抽象絵画の到達点と呼ばれるに相応しい、マスターピースであるということが言えましょう。

 同時開催の『曽我蕭白「富士三保図屏風」と日本美術の愉悦』では表題の《富士三保図》がとにかく圧巻です。代表作《群仙図屏風》と趣向は違いますが、六曲一双の屏風に描かれたダイナミックなスケールの富士の眺望は、奇想の画家と謳われる曽我蕭白の壮大なイマジネーションを充分に堪能させるものでありました。

 今回は限られた時間でしたので、ミュージアム・コレクションの日本美術や世界各地の古代美術品をじっくり鑑賞する余裕はなかったのですが、美術館収蔵の名品の数々はどれも美術館の静謐な空間と調和して、泰然とした輝きを放っておりました。

 ご紹介の「バネット・ニューマン」展の会期も今月7日(日)までと残すところあと僅かですが、展示替え休館をはさみ、7月4日(土)からはこれまた注目の「生誕300年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村」展が東京のサントリー美術館よりムーブオーバーいたします。夏の暑い盛り、雄大な山々の健やかな自然に囲まれた美術館に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。



【展覧会情報】

「バネット・ニューマン-十字架の道行き-/曽我蕭白「富士三保図屏風」と日本美術の愉悦」展

会  場 MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)
     滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
会  期 6月7日(日)まで、8日より展示替え休館。
     ※7月4日(土)より「若冲と蕪村」展開催-会期8月30日(日)まで
休  館 月曜(祝日を除く)
開館時間 10:00~17:00


May 8, 2015

世界一大きな加須の「ジャンボこいのぼり」


Carpstreamer1.JPG いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。私はゴールデン・ウィークに「加須市民平和祭」に行ってきました。「加須市」は埼玉県の市町村では唯一、北関東3県である群馬県・栃木県・茨城県と接する市で、鯉のぼりの生産量は全国1位を誇ります。ちなみに読み方は「かぞ」です。


 お目当てはこの平和祭で揚がる、世界一大きい「ジャンボこいのぼり」。なんと全長100メートル、重量330kg!建設用のクレーンで揚げるようですが、想像を超える大きさです。日本一の名産地をアピールしようと始まったのが、このジャンボこいのぼり遊泳だそうです。

Carpstreamer3.JPG 「ジャンボこいのぼり」は昭和63年、地元青年会議所の協力のもとに作られ、毎年5月3日の市民平和祭で、会場の利根川河川敷緑地公園で遊泳が行われます。平成18年5月には、サッカー・ワールドカップ・ドイツ大会の日本代表初戦の地、カイザースラウテルンの大空を雄大に泳ぎました。現在は平成25年に作られた「ジャンボこいのぼり4世」となります。

 天候に左右されるイベントでしたが、当日は晴天に恵まれ、絶好の鯉のぼり日和となりました。端午の節句に相応しく、早朝から家族連れを中心に多くの人で賑わい、観客席となる土手はあっという間に埋まっていきました。地元の方の出し物や露店、テレビ・新聞社など報道機関の取材もあり、会場は大変な盛り上がりでした。

Carpstreamer2.jpg そして、いよいよ巨大なクレーンが動き出し、口から伸びたロープが吊り上げられると、大きな歓声があがりました。この口の部分だけで直径10mもあり、人がとても小さく感じられます。口から徐々に空気が入って鯉のぼりの形になり、ゆっくりと風になびきます。



 下に見える鯉のぼりも、実際はかなり大きなサイズです。屋根よりはるか高く、怪獣のごとく泳ぐ「ジャンボこいのぼり」の様は圧巻でした。遊泳時間は30分。風をうけて大変気持ちよさそうでした。


April 24, 2015

こころ健やかに


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。春の穏やかな陽気に、草花もより一層芽吹いて新緑の季節を迎えようとしています。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 田畑の準備に春の雨...最近は雨の激しく夏の夕立のようですが、先日の局所的な雷雨(雹も降ってきました)の後、空に虹がかかってとても幻想的でした。さっきまで雷の音で怖がっていた近所の子供たちも、空を見上げては「虹だよ~!」と嬉しそうに声をあげていました。

 さて今回は端午の節句にちなみ、当社彩美版®ラインナップのなかから、日本美術院同人で文化勲章を受章された守屋多々志画伯の《金太郎》をご紹介いたします。右手に大きな鉞、左手で立派な兜を抱え込むようにしている小さな金太郎。その堂々とした態度と、元気でヤンチャ感じがうかがえる上目遣いの瞳。頼もしいような意地らしいような、凛々しい逞しい子供の姿に守屋画伯の温かな思いが伝わってきます。

守屋多々志画伯略歴

1912年 岐阜県大垣市に生れる。
1930年 上京し、同じ岐阜県出身の前田青邨に師事する。
1931年 東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科に入学。
    在学中に特待生となる。(1936年卒業)
1941年 再興第28回院展に《継信忠信》が初入選する。
1954年 総理府留学生としてイタリアに留学。(2年)
1960年 鎌倉円覚寺金堂の天井画《白龍》を完成させる。
1974年 日本美術院同人に推挙される。
1979年 第34回春の院展に《金太郎》を出品。
    高野山金剛峰寺別院の襖絵を3年かけて完成させる。
1981年 カトリック教会東京大司教区の依頼により屏風《ジェロニモ天草四郎》を制作。
    ヴァチカンでヨハネ・パウロ2世に謁見し献呈する。
1984年 在日ヴァチカン大使館にて聖シルベストロ教皇騎士団勲章の伝達を受ける。
1991年 神社本庁の依頼により《平成御大礼絵巻》の制作に着手し翌年完成。
1994年 モロッコの首都ラバトの王宮ギャラリーとパリのルーヴル美術館新館において
    「平成御大礼絵巻海外特別展」が開催される。
1996年 文化功労者の顕彰を受ける。
2001年 大垣市守屋多々志美術館が開館する。
    文化勲章を受章。
2003年 逝去。享年91。




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守屋多々志 《金太郎》
販売価格
(軸・額共通) 90,000円+税

<仕様・体裁>
原画 第34回春の院展出品作品(1979制作)
解説 川瀬邦聡(大垣市守屋多々志美術館学芸員)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 和紙

■軸装仕様
表装 三段表装
材料 天地 利久無地
   中廻 濃茶地横段文緞子
   風帯・一文字 牙地小花唐草文金襴
   軸先 新牙
   箱  柾目桐箱・タトウ付
画寸 天地36.5㎝×左右45.0㎝
軸寸 天地125.5㎝×左右63.0㎝

■額装仕様
額縁 木製金泥仕上げ、アクリル付
画寸 天地35.9㎝×左右44.5㎝
額寸 天地54.1㎝×左右62.8㎝
重量 約3.3kg




■今日の谷根千界

①第46回文京つつじまつり

期間 2015年4月11日(土)~5月6日(休・水)
・つつじ苑開苑:まつり期間中の9時~17時30分
・つつじ苑入苑:寄進料200円
会場 根津神社(03-3822-0753/文京区根津1-28-9)

②特別展 「谷根千"寄り道"文学散歩」

会期 2015年4月24日(金)~7月12日(日)
会場 文京区立森鴎外記念館 
開館 10:00~18:00(最終入館は17時30分)
※6月、7月の毎週金曜日は20時まで開館(最終入館は19時30分)
会期中の休館日:5月26日(火)、6月23日(火)
観覧料 一般500円(20名以上の団体:400円)中学生以下無料


April 3, 2015

四月―春到来


20150403sakura_matsuri.JPG いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。春本番を迎え、東京ではいよいよ桜も満開となりました。写真は当社の近傍、桜の名所・文京区播磨坂の桜並木です。この時期、普段は人気の少ない播磨坂も≪文京さくらまつり≫と銘打ち、たくさんの人が桜見物にいらっしゃいます。小石川植物園もすぐ目の前にありますし、近隣の素敵なレストランで美味しい食事を楽しめば、春の行楽を満喫できます。最寄駅は丸の内線の茗荷谷駅です。お近くにいらした時は是非足をお運び下さい。



20150403harimazaka.JPG そして一方、東京日本橋では今年も恒例の「第70回 春の院展」が開催されております。敗戦後の昭和20年の第一回展から、本年で70回目の記念イヤーを迎えます。院展(日本美術院展覧会)とは、公益財団法人日本美術院が主催運営する歴史ある公募展です。本年も理事長であられる松尾敏男画伯をはじめとした同人(どうにん)の先生方の作品と、厳しい審査を経て選ばれた300余りの入選作が一同に会する充実した展覧会をご覧いただけます。日本画の大家から若手作家までその最新作が一同に並び、日本画の最新トレンドをうかがい知ることもできます。



20140403haruno_inten.JPG おかげさまで弊社は毎年、院展作品集と絵葉書の制作を承っております。筆者も撮影からお手伝いさせていただき、例年のこの時期は大変充実した至福の時を過ごさせていただいております。

 下記に記しました通りこの展覧会は11月まで日本全国を巡回いたします。日本画壇を常にリードする美術展に皆様もぜひ足をお運び下さい。




【第70回春の院展(東京展)】
会場 日本橋三越本店本館・新館7階ギャラリー
会期 4月6日(月)まで
時間 10:00~19:00 (最終日は17時30分まで)
※以後全国巡回4~11月、名古屋、秋田、仙台、福井、倉敷、
福岡、広島、松江、神戸、さくら(栃木)




 なお、東京の会場では春の院展第70回の特別企画として、第35回以降の図録作品集の表紙絵35点が展示されております。中でも那波多目功一先生の「春日」(第60回春の院展作品集表紙絵)につきましては、弊社にて版画(リトグラフ)のお取り扱いがございます。今を盛りと咲き誇る桜の花が時節に相応しい優美な作品です。ご興味のあるお客さまには、カタログもご用意いたしましたので、どうぞご遠慮なくお申し付け下さい。



版画 那波多目功一 《春日(はるひ)》
販売価格 本体180,000円+税



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<仕様体裁>
版式 リトグラフ(画面に作家のサイン、落款入り)
制作 版画工房フジグラフィックス
限定 100部
用紙 ベランアルシェ紙
色数 18版×18色
画寸 天地24cm×左右28.4cm(3号大)
額寸 天地47.2cm×左右50.8cm
額縁 国産特注木製額金泥仕上げ、アクリル付き
重量 約2.4kg

発行 共同印刷株式会社


February 27, 2015

東京都庭園美術館リニューアルオープン


20150227_ReneLalique_work.jpg 2011年より約3年間という長期間の改修工事を経て、2014年11月、港区白金台の「東京都庭園美術館」がリニューアルオープンしました。四季折々の自然に囲まれた閑静な美術館。私は昔からのファンで再開を心待ちにしておりました。

 「東京都庭園美術館」本館は、香淳皇后の叔父にあたる朝香宮鳩彦王が皇籍離脱までお過ごしになられた邸宅で「旧朝香宮邸」とも呼ばれています。ヨーロッパの装飾様式であるアール・デコ様式を用いて1933年に建てられました。主な部屋の内装基本設計はフランスの装飾美術家:アンリ・ラパンが担当、また正面玄関にある女性像のガラスレリーフや大客室のシャンデリアなどはフランスの宝飾デザイナー兼ガラス工芸家:ルネ・ラリックの作品です。この優雅な装飾がなされた歴史的建造物は建物そのものが美術品と呼べるほど貴重であり、迎賓館などで使用された後、1983年に都立美術館として一般公開が開始されました。

20150227teien_art_museum.jpg 現在は、開館30周年を記念した展覧会『幻想絶佳:アール・デコと古典主義』を開催中です(4月7日(火)まで開催中)。同展は前述の「アール・デコ(1910年代半ばから1930年代にかけてヨーロッパで流行・発展した装飾様式)」をテーマに、古典主義のアール・デコ作家たちのが生みだした幻想とイマジネーション溢れる世界を、家具・磁器・銀器・ガラス・ドレス・絵画・彫刻などを通じて紹介するものです。また、当時のサロンや博物館で行われた生活空間を再現するようなアンサンブル展示をはじめ、植物からの引用や有機的な曲線の「アール・ヌーボー」に対し、直線と円などを組み合わせた幾何学パターンが特徴の「アール・デコ」との相違点に着目した解説映像など、様式の魅力を多角的な展示から観て感じ取ることができる構成になっています。

20150227teien_art_museum_interior.jpg JR目黒駅から徒歩7分、白金台駅から徒歩6分というアクセスしやすい立地にある「東京都庭園美術館」。現在も庭園エリアは工事を行っておりますが、2015年春には随時公開を予定しているそうです。改修された新館には、カフェ「Café du Palais(カフェ ド パレ)」やミュージアムショップ「Noir(ノワール)」も併設され、庭園風景を一望できます。暖かな春のアート散歩としてお薦め。ぜひ一度足を運んでみてください。



東京都庭園美術館
・ 住所 〒108-0071 東京都港区白金台5丁目21番9号
・ 公式HP http://www.teien-art-museum.ne.jp/

February 13, 2015

東京都美術館「新印象派」展

20150213tobikan.jpg いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。2月に入り一段と冷え込んでまいりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 私は先日、上野の東京都美術館で「新印象派-光と色のドラマ」展に行って参りました。19世紀後半の絵画の革新運動「新印象派」にスポットライトを当て、スーラ、シニャックに始まる運動の流れを時代を追って入念に検証し、20世紀フォーヴィズムの画家マティスにまでつなげる、「色彩表現の変化の軌跡」を仔細にたどった実に気宇壮大な展覧会です。

 モネやルノワール、セザンヌに代表されるフランス印象派は、光のきらめきや色の彩度を追求し、きめ細やかな筆触で自然や風景をキャンバスに描き上げました。その様式を新印象派の画家たちは、光や色彩の科学的理論に基づく点描画として更に発展させました。惜しくも早逝したスーラに代わり、理論家のポール・シニャックを運動のキーマンとし、本展覧会はその運動の生成と発展を多彩な展示作品により、あたかもドラマを見るように巧みに描き上げます。鑑賞者の目の中に混ざるように配置された作品の細密な点が、光と色彩のモニュメントを築き上げるがごとく、私には新印象派の歴史が腑に落ちるように伝わってきました。

20150213neo-impressionism.jpg 中でも注目はやはり、新印象派を牽引したジョルジュ・スーラ(1859‐1891)の作《セーヌ川、クールブヴォワにて》でしょうか。揺れる水面と陽光の移ろいをスタティックに描出し、観るものの佇まいを正すような印象的な作品です。スーラは生来寡作であり、31才の若さで亡くなったため、残された作品は少ないのですが、シカゴ美術館が所蔵する門外不出の《グランドジャット島の日曜の午後》(1886年最後の印象派展出品作)をはじめとして、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの《アニエールの水浴》、オルセー美術館の《サーカス》など、どれも質の高い作品ばかりであり、近年改めて注目を浴びている画家のひとりです。


 今話題の展覧会に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。




【「新印象派-光と色のドラマ」展】
会 場 東京都美術館
会 期 2015年1月24日(土)から3月29日(日)まで(月曜休室)
時 間 9:30~17:30(金曜は20時まで)




 なお、弊社では文中でも触れたスーラの代表作である、《グランドジャット島の日曜の午後》のアートレリーフ™複製画をお取扱いしております。貴方のお部屋のインテリアとして、大切な方への記念品、贈り物としてお勧めいたします。


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ジョルジュ・スーラ 《グランドジャット島の日曜の午後》
販売価格 50,000円+税

<仕様体裁>
技法 アートレリーフ™※
画寸 M15号
額寸 63.5×83.0cm
重量 4.3kg
額縁 特製木製洋額
原画 シカゴ美術館所蔵
発行 共同印刷株式会社

※アートレリーフ™とは
原画を思わせる絵の具の盛り上がりや筆のタッチを忠実に再現し、キャンバスに仕上げた特殊な複製画です。絵の表面の盛り上がりを直に触ってお楽しみいただけます。


January 30, 2015

新年、大阪、新世界紀行。


 年明け早々に大阪へ行って来た。
 新大阪から御堂筋線に乗って「なんば」方面を目指す。電車の中には何やら笹の枝に鯛や小判、米俵の飾りが付いたものを手にしている人が多く乗っている。サラリーマンの集団であったり、ご夫婦であったり。何かと思いながら駅で降りて道に出ると、笹飾りを持った人がぞろぞろ歩いている。さては縁日か祭りかと、野次馬根性で人の流れの方向に一緒に付いて行くことにした。人々は屋台でにぎわう道を抜け、今宮戎(いまみやえびす)神社という所に入って行く。境内は活気で満ちており、「商売繁盛で笹もってこい♪〜」という節回しの付いた掛け声が鳴り響いている。盛り上がったコンサート会場のようだ。

20150130ebisu.jpg 私が訪れた日は1月9日で、たまたま十日戎(とおかえびす)の宵宮祭にあたったのであった。参拝者は古くなった笹飾り(福笹というものらしい)を神社に納め、新しい福笹に小宝(鯛や小判などの縁起物の飾り)を有償で付けてもらい、今年の商売繁盛を願う。私はこの風習の事を知らなかったのだが、関西ではかなりメジャーなイベントのようである。行事を知らなかった私であるが、なぜか「商売繁盛で笹もってこい♪〜」の節だけは記憶の奥にあった。

 関西の人は恵比寿神を親しみを込めて「えべっさん」と呼んでいる。これはこの地域の人の相手に対する親しみの心や、柔らかさといった気質に関係しているのかもしれない。まずは、このブログをお読みいただいている諸兄諸姉が今年一年、商売繁盛になりますようにお祈りいたします。

20150130tsuutenkaku.jpg さて「えべっさん」を後に、新世界界隈に向かう。昭和な雰囲気が今なお残っているこの街には、レトロな映画館がまだあったりする。新世界のランドマークといえば「通天閣」。声に出したときに「ツー、テン、カク」と滑舌の良い響きが独特である。将棋棋士の阪田三吉(正しくは吉の上が土です)も「サカ・タ・サン・キチ」と、やはり響きが良い。通天閣の下には阪田三吉の偉業をたたえた王将碑がある。

 通天閣は、命名した儒学者の藤沢南岳が込めた意味のように「天に通じる高い建物」といった外観。通天閣を設計したのは内藤多仲(ないとうたちゅう)という方で、東京タワーの設計もしている。塔の高さは地上100m、現在の通天閣は2代目で1956年(昭和31年)に完成した。初代通天閣は1912年(明治45年)に完成。上部の塔はエッフェル塔、下部は凱旋門とう形をしていたとのこと。残された写真を見るととてもエキゾチックな外観で、古典SF映画のジョルジュ・メリエス的世界が体現されている。さらに当時はルナパークという遊園地とロープウェイで結ばれていたというから、正しくレトロフューチャーなSFの世界か。是非とも個性的な初代の通天閣を見てみたかった。

 ところで新世界の近くには大阪市立美術館がある。せっかくなので開催中の「中国の彫刻」展(2月8日まで開催中)を見に行くことにした。この美術館は天王寺動物園のすぐ隣にある。もと住友家の本宅があった所に建てられたこの美術館は、シンメトリーで直線的なデザインの外観がすばらしい。さらに、ホールに吊るされているシャンデリアがまた美しい。大きなホールは、正面に大理石の階段があり、高い天井には巨大なシャンデリアが2基、暖かいオレンジの輝きを放っている。ホールを見るだけでも一見の価値がある。

 「中国の彫刻」展に展示されているのは南北朝時代の北魏から明時代までの仏教、道教の石造など。正直かなり地味かなと期待せずに入ったのだが、思った以上の収穫であった。その時代の地方色豊かな表現がされた石造たちは、個性的で奔放。ある意味不出来なものもあるが、かえってそこから素朴で偽りのない信仰心を感じる。そして技術がなく技巧に走っていないが故の自由さがほとばしっていて感動した。解説にも「バランスの悪い所もあるが、おおらかで暖かみのある地方性豊かな愛すべき仏像」というような内容が書いてあり、学芸員の方の展示物に対する愛情を感じることが出来た。

 地域色が豊かな事が、文化、芸術、生活、心の豊かさにつながっているのだと、今回個性的な街、大阪で強く感じた。


December 19, 2014

生誕200年を記念し東京・丸の内で開催中の「ミレー展」


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。
今年も残すところ後わずかとなりました。皆さまも気忙しい日々をお過ごしのことと思います。

20141219mitsubishi_museum2.jpg 私は先日、東京丸の内の三菱一号館美術館で開催中の「ミレー展」へ行って参りました。自然・農民・労働をモチーフに、厳格で力強い写実的な描写を取り入れながら登場人物に崇高な愛情を注いだ、フランスの国民画家ジャン=フランソワ・ミレーの傑作群をまとめて見る貴重な展覧会でありました。

 会場の三菱一号館美術館は丸の内界隈でもひと際目を引く、瀟洒な赤煉瓦作りの美術館として有名です。この秋、10月に開幕した「ミレー展」は、つい先日私が訪れた時も老若男女を問わず大盛況でした。

20141219ex_millet_display.jpg 日本では明治期より洋行帰りの画家たちを通じてミレーの知名度が広まり、一般庶民にまで浸透し、現在のミレー人気に至りました。一方、アメリカのボストンでは早くも19世紀の半ばからミレーの人気が高まり、市民愛好家たちが競って質の高いミレー作品を所蔵したとのことです。後年それらの作品が、ボストン美術館のコレクションの中核となり、今回の展覧会でもミレー作品だけで25点が出品されました。

 自然を深く愛したミレー(1814‐1875)はフランス、ノルマンディー地方の農村生まれ。若くして画家を志しましたが、世に認められずしばらく不遇を託ちます。1849年、35歳の年にパリ近郊のバルビゾン村に居を構え、農民たちの田園生活を描くことに傾注、ミレー芸術が大きく開花するにつれ世間の評価も高まり、後年にはフランス画壇の傑出した存在となりました。

 本展覧会の目玉は「ボストン美術館三大ミレー」を謳う《種をまく人》、《羊飼いの娘》、《刈り入れ人たちの休息》3作品の公開です。特に《種まく人》(「を」を取った方が画題にインパクト有り!)は、表現の激しさと荒らしさ、暗い色調の画面、背景と人物とのコントラストが主役の農民を英雄的に浮き立たせ、リアリズムを超えた記念碑的/神話的なアウラを放ち、鑑賞者に深い感銘を与えます。この素晴らしい展覧会に、皆様もぜひ足をお運び下さい。



【ボストン美術館 ミレー展 ― 傑作の数々と画家の真実】

 会 場  三菱一号館美術館
      東京都千代田区丸の内2−6−2
      電話 03-5777-8600

 会 期  2014年10月17日(金)から2015年1月12日(月)まで
 休 館  月曜(祝日を除く)、年末年始12月29日(月)から1月1日(木・祝)まで
      ※「ミレー展」好評により12月27日(土)、28日(日)は特別開館
 開館時間 10:00~18:00 ※金曜は20時まで
 入場料(当日券) 一般1,600円、高校・大学生1,000円、小・中学生500円




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 当社ではミレーのもうひとつの代表作である《落穂拾い》の複製画をお取扱い致しております。お部屋のインテリアはもちろん、貴方の大切な方への記念品や贈り物としてお進めいたします。

ジャン=フランソワ・ミレー 《落穂拾い》
販売価格 30,000円+税


<仕様体裁>
原 画  仏・オルセー美術館所蔵
技 法  アートレリーフTM
画 寸  F5号
額 寸  44.0×52.0cm
重 量  2.1kg
額 縁  特製木製額、アクリル付き
発 行  共同印刷株式会社

アートレリーフTMについて
油絵のマチエール(画肌)を再現することを目的として当社が独自に開発した特殊な樹脂加工技術です。
パレットナイフを使った大胆な表現による絵の具の盛り上がりや画筆の繊細なタッチなど、油絵独特の画面の質感を立体的に再現することができます。仕上げに木枠に張ったキャンバスを用い、あたかも実際に油絵の具でキャンバスに描いたかのうような質感を再現しています。
当社のアートレリーフTM複製画は小・中・高等学校の教材や美術館の展示用レプリカ等にも用いられています。

December 12, 2014

漫画と盆栽の町


 さいたま市北区盆栽町にある大宮盆栽村は、その昔、東京の文京区団子坂付近に住んでいた多くの盆栽職人が関東大震災を契機にこの土地に移り住み、たくさんの盆栽園を有する自治共同体となったのが始まりで、現在も世界的な盆栽の聖地と言われています。今季一番の急激な寒波が訪れたその日、その盆栽村に近接する2つの公立美術館を訪れました。

 閑静な住宅街は石畳と木目のマップ標識で統一され綺麗に整理された印象です。庭の敷地にいくつもの盆栽鉢が見える盆栽園も目にします。住宅の1つの様にさり気なく溶け込む「さいたま市立漫画会館」に到着。一部工事中でしたが、普通に観覧できました。入場は無料です。

20141212manga_museum.jpg この美術館は1966年に創設された日本初の漫画に関する公立美術館です。近代風刺漫画の先駆者で、日本初の職業漫画家といわれる北沢楽天の晩年の住居跡に建てられました。楽天は英字新聞社で西洋漫画の手法を学び、当時評価が低かった風刺画を、近代漫画として確立させました。その活躍ぶりは語り尽くせぬもので、明治から昭和にわたり、新聞や雑誌で、政治・社会の世相を巧みに捉えた風刺漫画や、ユーモラスなコマ漫画などを描き、後継の多くの漫画家に影響を与えました。ここには楽天の晩年の作品や愛用品が常設され、画室もそのまま保存されています。生前からあった日本庭園も鑑賞でき、穏やかな晩秋の風情を楽しめました。

20141212manga_museum_garden.jpg この日は企画展として、「さいたま市民漫画展2014」の展示会初日でした(2015年2月15日まで開催)。この漫画展は小学生から一般まで、国内外・プロアマを問わず作品を募集し、審査するコンテストです。毎年開催され来年30回目を迎える、全国で最も長く続いている漫画応募展です。11月に先行して同じ展示会を別の公共施設で開催済みということもあり、あまり鑑賞者は来ていませんでした。実は恥ずかしながら今回初入賞した筆者の作品も展示されています。今回の募集テーマは「しあわせ」でしたが、展示された小学生の素直な「しあわせ」観は、あらためてほのぼのとした気分にさせてくれました。

20141212oomiya_bonsai_museum.jpg ここから北へ数分歩くと「さいたま市大宮盆栽美術館」があります。こちらの建物も付近の住宅と違和感ない容姿で佇んでいます。盆栽文化を広く人々に親しんでいただくことを目指して、2010年に開館しました。盆栽というと、高齢者の渋い趣味という印象をもっていましたが、ここに展示されている作品は、そういうイメージよりも作品としての秀逸さに目を奪われます。

 展示室は、盆栽に関する知識を記載した解説パネルと季節に合わせて選定された盆栽がブース毎に展示されています。たくさんの美しく赤い実のなった作品が印象的でした。

 続いて「座敷飾り」として3種類の異なるスタイル(真・草・行)の床の間の見本が設営され、各部屋の特徴に合わせて、盆栽と掛軸が展示されています。掛軸と盆栽は密接に関わりあると感じました。

20141212bonsai_museum_garden.jpg 最後に戸外の盆栽庭園を鑑賞。常に40~50点の名品が見られます。ただひたすら寒かったので、スピーディーに見て廻り、建物内に戻りました。残念ながらこの日は展示替え期間で企画展示の開催はありませんでした。

 盆栽は人が自然に働きかけ、一緒に作り上げていく生きた芸術作品。優れた作品にはそこへ到達し維持するために想像を超えた根気がいるのではと敬服します。



■さいたま市立漫画会館

 さいたま市北区盆栽町150番地   
 TEL 048-633-1541
 開館時間 9:00~16:30
 休館日  月、祝日の翌日 年末年始

 
■さいたま市大宮盆栽美術館

 さいたま市北区土呂町2-24-3
 TEL 048-780-2091
 開館時間 11月~2月=9:00~16:00  3月~10月=9:00~16:30
 休館日  木曜(祝日の場合は開館) 年末年始 臨時休館あり
 観覧料  300円(20名以上の団体料金200円)


November 21, 2014

山茶花の咲く頃


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 先週の金曜日、11月7日は立冬でした。ついこの間までの暖かさが一変し、手先が凍えるような寒さになってきましたね。これから日一日と寒さが厳しくなりますので、マフラーや手袋をして体を冷やさない様ご自愛ください。

 昔から立冬の頃には山茶花(さざんか)が咲き始めると言われますが、当社のお向かいにある小石川植物園内の山茶花が青々とした葉の間に白や淡いピンクの花を咲かせています。寒空の下、凛として花を咲かせ私達の目を楽しませてくれます。



 そこで今回は小倉遊亀「山茶花」をご紹介します。静謐な画調の中から画家の瑞々しい感性が溢れる逸品を是非お手元に。



彩美版® 小倉遊亀 《山茶花》
販売価格 180,000円+税(軸・額共通)


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<使用体裁>

■軸・額共通
監修 有限会社 鉄樹
原画 滋賀県立近代美術館所蔵
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 和紙
限定 300部(軸・額合計)
証明 画中及び奥付シールの2箇所に著作権者承認印捺印

■軸装仕様
画寸 天地47.3×左右53.3cm
軸寸 天地143×左右73.5cm
表装 三段表装(国産・ハンドメイド)
箱  柾目桐箱、タトウ付

■額装仕様
画寸 天地47.4×左右53.5cm
額寸 天地63.8×左右70cm
重量 約3.2kg
額縁 特製木製額、アクリル付(国産・ハンドメイド)

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。



【今日の谷中千】201411_ohgai_kinennkann.jpg
東京千駄木の森鴎外記念館では以下の展覧会が開催されています。
来週月曜日までですのでご興味のある方はお早めにお出かけ下さい。

流行をつくる ―三越と鴎外―

文京区立森鴎外記念館
東京都文京区千駄木1-23-4
電話 03-3824-5511


会 期 2014年11月24日(月・祝)まで
開館時間 10時~18時(最終入館17時半) 
観覧料 一般500円(20名以上の団体:400円)
※中学生以下、障がい者手帳ご提示の方と同伴者1名まで無料

November 14, 2014

紅葉の中に佇む 滋賀県立近代美術館より


201411_Siga_ModernArtMuse.JPG 皆さま、滋賀県にある「びわこ文化公園」をご存じでしょうか。この公園は琵琶湖や比叡山、湖南アルプスを望む湖南丘陵地一帯を滋賀県が都市公園として整備を進めているものです。その中でも県立近代美術館、県立図書館、県埋蔵文化財センター等を含む地域は「文化ゾーン」と呼ばれ、茶室や日本庭園、こども広場や催し広場など、多くの人のふれあいの場として利用されています。



201411_YukihikoYukiEx_Banner.JPG わたしは開館30周年を迎える県立近代美術館の特別展『「遊亀と靫彦」-師からのたまもの・受け継がれた美-』へ行って参りました。国内で最も小倉遊亀作品を所蔵している滋賀県立近代美術館において、今年は小倉遊亀生誕120年、安田靫彦生誕130年という記念年ということもあり、大規模な展示会が開催されています。現在、自然に囲まれたこの公園は美しく紅葉が色づいています。ぜひ足を運んで秋を堪能してみてはいかがでしょうか。





 当社は、来月12月の発売を目標として滋賀県立近代美術館が所蔵する小倉遊亀画伯の名作を彩美版®にて刊行する準備を進めております。詳細は近日発表いたしますのでご期待ください。



【遊亀と靫彦-師からのたまもの・受け継がれた美-】
会 場: 滋賀県立近代美術館
     〒520‐2122 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740‐1
     TEL:077‐543‐2111
会 期: 2014年10月11日(土)~11月24日(月・祝) 毎週月曜休館
観覧料: 一般1,100円、高大生800円、小中生600円 団体割引あり

October 10, 2014

箱根・岡田美術館


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。

okada_museum.JPG 先週土曜日、10月4日で開館1周年を迎えた岡田美術館へ行ってきました。場所は箱根小涌園、有名な温泉アミューズメント施設「ユネッサン」の隣にあります。箱根と言えば彫刻の森美術館、ガラスの森美術館、POLA美術館、成川美術館、など多種多様な美術館がたくさんありますが、こちらも見ごたえのある個性的な美術館でした。

okada_fuujinraijin.JPG 表門を入ると、館内に展示されている「風神雷神図」がガラス超しに目に飛び込んできます。こちらは日本画家福井江太郎氏の「風・刻」という作品で、縦12メートル、横30メートルにも及ぶ大壁画です。そして、この絵を挟んだ階段の上にはなんと源泉掛け流しの足湯カフェがあります。足湯に入り、お茶を飲みながらゆっくり鑑賞できるようになっています。入場者は無料で楽しむことができるという、なんとも箱根らしいサービスです。

 館内に入り入場チケット購入前に携帯電話、カメラはロッカーに預けます。展示室前に飛行機へ搭乗する時などに通る金属探知機をくぐります。かなり厳重なチェックになっている印象です。全5階からなるこちらの美術館の展示面積は、およそ5,000㎡にも及ぶとのことです。収蔵品の中心は、近世・近代の日本画と、東アジア(日本・中国・韓国)の陶磁器ですが、そのほかにも幅広い時代・分野の作品が展示されています。

 今回の訪問目的である企画展「大観・春草・御舟と日本美術院の画家たち」は開館一周年記念展として開催されていました。目玉作品は横山大観の「霊峰一文字」、速水御舟の「木蓮」。横山大観の「霊峰一文字」は、縦1m、長さ9mという絹地に、湧き上がる黒雲から姿を現す霊峰富士の雄姿を描いた大作です。大正15年(1926)人形浄瑠璃の舞台の引幕として使われて以来、ほとんど世に知られないまま秘蔵されていました。岡田美術館の所蔵となり、昨年秋の開館を機に展示されたとのことです。また、新たに収蔵された速水御舟「木蓮」もしばらく行方不明になっていた期間があり、実に34年ぶりの公開だそうです。32歳の御舟が初の個展に出品した一幅で、代表作「炎舞」(山種美術館蔵)などとともに展示され、近代日本水墨画の名作と評価されています。

 これら2点の他にも、日本美術院で活動した画家たちの作品が一堂に展示されています。明治から昭和にかけて日本画の近代化を先導した画家たちの、華やかで革新的な作品を、箱根観光と合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。



【岡田美術館】

神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
電話 0460-87-3931

■開催中の展覧会

開館一周年記念
大観・春草・御舟と日本美術院の画家たち

会  期:2014年10月4日~2015年3月31日
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休 館 日:会期中無休(ただし12月31日、1月1日は休館)
入 館 料:一般・大学生2,800円 小中高生1,800円

September 26, 2014

江戸の奇才、北斎。


 雨が降るたびに少しずつ涼しさを肌で感じる今日この頃、わたしは上野の森美術館で開催されている『ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎』へ行って参りました。

 皆さんもよくご存じの作品「富嶽三十六景」シリーズが多数出品されているこの企画展は、2008年から数えて3回目であり今回はいよいよ最終回とのこと。小雨の中にもかかわらず大勢の来館者で賑わっていました。作品を前にしたとき、驚くべきはその色彩の鮮やかさ、そして淡い色彩の美しさでした。ボストン美術館の浮世絵作品は門外不出と言われ、近年までほとんど公開されたことがなかったために保存状態が極めて良好なのだそうです。それにしてもここまで美しいとは。

 大半が日本初公開ということで、様々な作品とその表現を楽しむことができます。たとえば「水」ひとつとってもその描き方は様々で、「大海原の荒々しい波の作品」があったと思えば「穏やかな波打ち際の作品」もあり、また「山の奥地に佇む滝の姿」と、同じ「水」でもここまで違うものかと、多岐に富んだ北斎を楽しむことができました。厳選された優品約450点。浮世絵ファンならずとも魅了するこの展示会、芸術の秋のひとときを堪能されてはいかがでしょう。



【展覧会情報】

ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎
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会 場 上野の森美術館
    東京都台東区上野公園1−2
会 期 2014年9月13日(土)~11月9日(日)
時 間 午前10時―午後5時(金曜日は午後8時まで)
    *入館は閉館の30分前まで
休館日 9/16(火)、9/29(月)、10/6(月)、
    10/14(火)、10/20(月)、10/27(月)


September 19, 2014

生誕140年 「菱田春草展」


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただき、まことにありがとうございます。
 いよいよ9月23日(火)より、東京国立近代美術館にてこの秋注目の「菱田春草展」が行われます。近代日本画の礎を築き日本画の革新に挑んだ、美術史に輝く大変重要な作家の回顧展です。

 菱田春草は明治7年(1874年)長野県飯田市に生まれ、草創期の東京美術学校を卒業後、岡倉天心の組織した日本美術院の設立に参加(明治31年)、「朦朧体(もうろうたい)」と呼ばれる線抜きの描法を横山大観と共に創始し、一躍名を馳せました。インド・欧米に外遊し彼の地で作品展を開催、帰国後の明治39年(1906年)日本美術院の移転に伴い茨城県五浦(いづら)に移住し苦難の制作活動を続けるも、病のため再度上京して代々木に転居しました。後年は、病魔と闘いながらも和洋折衷の装飾的な画風による色彩の絵画を目指し、独自の日本画を確立しました。惜しむらくは院展の再興(大正3年)を見ずして、明治44年(1911年)満37歳の若さで他界しました。

 春草の生誕140年を記念する今回の展覧会の話題は、短い生涯の間に描かれた重要文化財4点、《王昭君》《賢首菩薩》《落葉》《黒き猫》の全てが出品展示されることです。特に《落葉》については、重文の《落葉》(永青文庫蔵)とともに《落葉》と題された同時期制作の作品が全て出品されます。《落葉》連作5点の展示はまたとない試みと言えましょう(※作品の展示期間にご注意下さい)。他にも春草の画業を理解する上で重要な100点を超える作品が出品されるとのこと。質量とも充実のラインアップで春草の目指した新たな日本画の創造過程が一望出来ることでしょう。この貴重な展覧会に、皆様ぜひ足をお運び下さい。



【菱田春草展情報】

会場 東京国立近代美術館
会期 2014年9月23日(火)から11月3日(月)まで
休館 月曜(祝日を除く)、10月14日(火)
時間 10:00~17:00 ※金曜は20時まで




 尚、弊社では春草の代表作である《落葉》の彩美版をお取扱いいたしております。
 サイズは2種(15号/25号)ご用意いたしました。お好みでお選びいただけます。カタログもございますので遠慮なくお申し付け下さい。



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彩美版® 菱田春草 《落葉》 左隻/右隻

【販売価格】

■15号
左右・各  本体価格 200,000円+税
左右セット 本体価格 380,000円+税

■25号
左右・各  本体価格 250,000円+税
左右セット 本体価格 480,000円+税


【仕様体裁】

技 法 彩美版®
限 定 左隻/右隻 各150部
画 寸 25号 34.6×80.3cm / 15号 28.3×65.2cm
額 寸 25号 52.5×98.5cm / 15号 46.0×83.0cm
額 縁 特製木製額、アクリル付き(国産、ハンドメイド)
原 画 永青文庫所蔵(熊本県立美術館寄託)、重要文化財指定
証 明 所蔵者の承認印押印証紙を額裏に貼付
発 行 共同印刷株式会社

※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

August 22, 2014

涼を求めて


mizunone_ten.jpg いつも美術趣味をご覧頂きありがとうございます。

 お盆休みも過ぎましたが、まだまだ残暑が厳しいですね。街中を歩いていても日陰を見つけてはそちらに移り、水分補給と休憩をはさみながら暑さを凌ぐ毎日が続いております。そのような中、この暑さを忘れさせてくれるような展覧会が開催されていると聞きおよび、涼を求めて足を運んできました。

 「広重から千住博まで」と銘打ち山種美術館にて開催中の展覧会「水の音」。この山種美術館では年中様々なテーマの企画展が催され、私もよく訪問しますが、まさにこの時期にうってつけの展覧会と思われます。本展は画面から感じられる「水の音」に焦点を当て、川、海、滝、雨の主題に沿って厳選した作品を通して、近世から現代までの画家たちの試みを振り返ることを主旨としています。

 展示室に入ると最初に目に入ってくるのは、奥村土牛先生の「鳴門」。海に渦巻く渦潮が画面いっぱいに描かれており、入場と同時に涼しさを感じさせてくれます。また、「鳴門」と同じくポスターに載っている千住博先生の描いた「滝」シリーズは、その水飛沫にマイナスイオンを浴びているような感覚にとらわれました。今回厳選されている水をテーマとした作品群は、絵画を目で楽しむだけでなく、まさに「水の音」を耳で、または体で感じられるようなものとなっていました。

 併設するカフェでは、展示5作品をテーマにした和菓子が販売されています。味は勿論のこと、細かい細工で作品の再現性も素晴らしいものとなっています。美術鑑賞後の余韻にひたりながら、一服してみてはいかがでしょうか。



【展覧会】
 水の音 -広重から千住博まで-

会 場: 山種美術館 
     東京都渋谷区広尾3-12-36

期 間: 2014年7月19日(土)―9月15日(月・祝)
開 館: 午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料: 一般1,000円(800円)・大高生800円(700円)・中学生以下無料
     ※ ()内は20名以上の団体料金および前売料金
     ※ 障害者手帳、被爆者手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。

お問い合わせ先:ハローダイヤル03-5777-8600(受付時間8:00‐22:00)

August 1, 2014

夏のアートフェスティバル in 六本木


 今日から8月。いよいよ夏本番ですね。この時期は子供たちの姿をよく見かけます。楽しい楽しい夏休み。皆さんも休暇はとられましたか。

 さて、わたしは六本木・森アーツセンターギャラリーへ足を運び、日本スペイン交流400周年の記念事業として開催されている特別展『建築家ガウディ×漫画家井上雄彦 シンクロする創造の源泉』を観てきました。時代、国境、ジャンルを超えた奇跡のコラボレーション展です。

 ガウディ直筆のスケッチや図面、大型の建築模型やガウディがデザインした家具等、貴重な作品が約100点出品される他、3面スクリーンによるシアター映像、プロジェクション・マッピングによる演出、床への装飾等、様々な趣向を凝らして展開されていました。

 そして、井上雄彦が描くガウディ。実際に一ヶ月間バルセロナへ滞在し、ガウディの建築作品のひとつカサ・ミラ内にアトリエを構え、40点描き下ろし作品を完成させたそうです。ガウディの独創的な建築技術、それがどのように生まれたのか。その壮大な人生、インスピレーションの源泉とは。井上雄彦が見て感じたものを、マンガ風に表現したパネルが並び、その世界観は見る者を惹き込みます。

 尚、現在六本木では、『テレビ朝日・六本木ヒルズ夏祭りSUMMER STATION』も開催中。森美術館の展望台の前には「ポケモン」、六本木ヒルズの広場には「たくさんのドラえもん」が出迎えてくれます。喜ぶ子供たちの笑顔も、たくさん見ることができますよ。



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建築家ガウディ×漫画家井上雄彦
シンクロする創造の源泉 展


六本木ヒルズ森タワー52階の森アーツセンターギャラリーにて、7月12日~9月7日まで開催中。58日間限定です。夏休みを使ってぜひ訪問してください。

June 13, 2014

開館20周年を迎えた奈良・松伯美術館


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6月5日、いよいよ気象庁が梅雨入りを発表しました。皆さまもご存じの通り、各地では記録的な大雨を観測中です。四国・高知県では僅か1日で例年の6月分の月間降水量を超えた地域があったとのこと。お出かけの際は充分にご注意くださいますよう。

さて、今回のブログでは、上村松園・松篁・淳之三代画伯の作品を多く所蔵、展示し、今年で開館20周年にあたる、奈良市『松伯美術館』をご紹介いたします。

『松伯美術館』は1994年3月、上村松篁・淳之両画伯からの作品寄贈と、近畿日本鉄道株式会社からの基金出捐により開館しました。名称の由来「松」は、上村松園・松篁両画伯の御名前と、美術館所在地である故佐伯勇近鉄名誉会長旧邸の庭に植えられている百数十本の松に、「伯」は、画伯の伯と佐伯氏の伯あるいは邸内の茶室の号、伯泉亭に由来するものだそうです。

以前仕事で訪問した際は、松が生い茂る緑の庭園と、大渕池に浮かぶ美術館の景観がとても美しく魅力的でした。雨の降りしきる今日この頃、『松伯美術館』の雄大な緑の松林は、池の畔に漂う霧に囲まれ、さぞ幻想的な景観になっているのではないかと思いを馳せてしまいます。

奈良の情緒を楽しみたい方は、"貴重な作品群"と"美しい景色"をまとめて楽しめるこの『松伯美術館』へ是非足を運んでみてください。


【松伯美術館について】

1994年3月 開館
公式ウェブサイト http://www.kintetsu.jp/shohaku/
住所 〒631-0004 奈良市登美ヶ丘2丁目1番4号
TEL  0742-41-6666 

開館時間 10:00~17:00(最終入場16:00)

定休日  月曜日(祝日の場合開館し、次の平日休館)、年末年始、展示替期間、等

入館料  大人(高校生・大学生を含む)820円(特別展は1,030円)
     小学生・中学生 410円(特別展は510円)
     ※20名以上は団体割引(1割引)
     身体障がい者手帳のご提示によりご本人と同伴者1名(2割引)

アクセス 近鉄奈良線「学園前駅」下車
     北口バスターミナル5・6番のりばよりバスで約5分
     〈大渕橋(松伯美術館前)〉下車、大渕橋を渡った右側。
     ※駐車台数に限りがあります。
     できるだけ「電車・バス」でお越しください。

※今年は、記念展も多数展開される模様です。

【松伯美術館・展覧会開催予定】
■5月20日(火)~8月3日(日)
企画展 文化功労者顕彰記念「鳥と語る 上村淳之展」(開催中)
併設展示「京都花鳥館賞展」~公募で選ばれた若き作家たち(日本画・陶芸)~

■8月12日(火)~ 9月28日(日)
企画展「楽しむ 味わう 近代日本画の抒情」~ウッドワン美術館コレクションを中心に~

■10月11日(土)~ 11月30日(日)
「受け継がれる眼 見つめる!」~松園、松篁、淳之にみる素描の力~

■12月9日(火)~ 平成27年2月1日(日)(年末年始12月27日(土)~1月5日(月)休館)
開館20周年記念「上村松園・松篁・淳之展」~松伯美術館20年の歩み~

■平成27年2月10日(火)~ 3月8日(日)
公募展 「第21回松伯美術館花鳥画展」


June 6, 2014

東京都美術館 バルテュス展


いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。
現在、東京・上野の東京都美術館では「バルテュス展」が行われております。日本では1993年のレトロスペクティブ@東京ステーション・ギャラリー以来、約20年振りの回顧展となります。

バルテュス(本名バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ)は、ポーランド人貴族の末裔として1908年にパリで生まれました。フランスを拠点にヨーロッパ絵画の伝統を独学で学び、特にイタリア・ルネサンスの影響を受けました。抽象絵画全盛の時代に、具象画の道を寡黙に歩み、「20世紀最後の巨匠」として不動の地位を確立しました(2001年逝去)。兄が著名な作家・思想家のピエール・クロソフスキー(「ロベルトは今夜」)であることや、詩人リルケとの特別な関係も芸術家としての血筋の確かさをうかがわせます。

バルテュス夫人の節子さん自らが今回の展覧会にご尽力され、晩年の画家の東洋の美に対する愛着もうかがわれる展示内容となり、これまでの難解で近づき難い画家というイメージを払拭し、ある種の親近感と、ミステリアスな作風への好奇心をそそる興味深い展覧会となりました。少女を描いた«夢見るテレーズ» (今展覧会のメインビジュアル)、«美しい日々»、 «読書するカティア»、猫をテーマとした«猫たちの王» 、«地中海の猫»といった一連の代表作の展示に加え、作家の竟の住処スイス「グラン・シャレ」のアトリエが再現され、愛蔵品の数々や晩年の貴重な写真が公開されるなど、正しくバルテュス展の決定版といえる充実した内容です。

あれは1990年頃のことでしたでしょうか、老舗出版社の写真グラビア誌の担当をさせていただいた当時、(多分)雑誌初のバルテュスのインタヴュー特集が組まれました。入稿された真新しい原稿から、霧に包まれた謎の画家バルテュスの素顔に接し、特別な幸福感に浸ったのを昨日のように思い出します・・・

注目の「バルテュス展」の会期は6月20日(金)まで。初夏の心地よい陽気に誘われて、緑豊かな上野公園を散策がてら、ご鑑賞されてはいかがでしょうか。



【展覧会情報】
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「バルテュス展」
会場 東京都美術館
会期 2014年4月19日(土)から6月22日(日)まで
※月曜日は休室
時間 9:30~17:00
※金曜は20時まで

May 16, 2014

由緒正しい銭湯とコンテンポラリーアートの関係及び、団子坂の飴細工の事。


 銭湯のギャラリーがあると聞いたので、行ってみようと思った。

 そこでゴールデンウィークのある晴れた日に、東京の台東区、谷中に出かけた。ギャラリーの名前はSCAI THE BATHHOUSE(スカイ ザ バスハウス)と言う。まさしくバスハウス(=公衆浴場)そのものの外見であるが、中を改装してコンテンポラリーアート(現代美術)を展示しているギャラリーであった。

bath_house.jpgSCAI THE BATHHOUSE(スカイ ザ バスハウス)の入り口は、まさしく銭湯そのまま

 暖簾をくぐり、入り口を入ると小さな箱を重ねたような下駄箱が並んでいる。靴は脱がずにさらに中に進むと、昔は番台から脱衣場のあった辺りまでを貫いて、大きな空間にして作品を展示している。左の展示スペースを見ると一段高くなっており、椅子が置かれ居間のようになっている。その壁面には河原温の「日付絵画」が掲げられていた。制作した日付を書いたその作品は色が黒っぽいものでなく、初めて見る鮮やかな赤いバージョンであった。あのショッキングな「浴室」シリーズを描いた河原温の作品が、もと銭湯で展示してあるというのも、なにか運命めいたものを感じる。銭湯にでも行くような軽い気持ちでふらりとやって来たが、河原温の作品に出会うとは思ってもみなかったので少々驚いた。ここは襟を正して、気を引き締め拝見させていただく事にした。

 さらに次の展示室に進む。そこは天井が高く遥か上の方に窓があり、開放感のある部屋になっていた。明るい光のもといくつかの作品がぽつぽつと展示してある。浴槽があったと思われるあたりには壁があり、事務所になっているので見る事がかなわない。どのように改築しているのか大変興味がそそられる。以前の建物をどの程度生かしているのか。富士山のペンキ絵はかつてあったのか、あったのであれば今も飾っているのであろうかなど興味は尽きない。

 このギャラリーでは国内外の最先鋭のアーティストを紹介しているそうである。古き良き銭湯とコンテンポラリーアートが仲良く同居しているのは、新しい芸術の発信と、古き良き下町が混在する上野界隈にぴったりなように感じた。

 さてギャラリーを出る。まだ日は長いのでもう少し足を伸ばしてみる事にした。谷中霊園を右手に見ながら道は大きく左に曲がり千駄木方面に向かっている。この辺りは寺院が多く風情がある。外国の旅行者も多く、のんびりと門前の石に腰掛けて休んでいたりしている。また若い人が出している新しいお店もあり、おしゃれな自転車屋や、カフェなどもあり飽きが来ない。

 団子坂を登って頂上にたどり着く辺り、森鴎外記念館のちょっと手前に飴細工のお店があった。店内は様々な動物の飴細工が展示してあり、ムンワリとした甘い香りで満たされている。飴細工の動物たちをよく見ると、白いウサギがいろいろなポーズをしているシリーズがある。商品札に「あめぴょん」と書いてある。店員さんが出てきて、このお店の一番人気であると教えてくれる。さらに「あめぴょん」のようにかわいらしい店員さんの説明によれば、メニューの中から選んで注文すれば、目の前で飴細工の実演をしていただけるとの事。メニューには十二支やインコ、鳳凰、クワガタや人魚まである。やはり形が複雑で色数が多いものほど値段が高いようである。どのように作るのか大変興味はあるものの、一人の客(おじさん)のために飴細工を作っていただくのは、見る方も、見られる方もやや気まずいのではないかと思い、ここはご遠慮願ったしだいである。「ハートあめぴょん」を一つ購入してお店を出る。

amepyon.jpg飴細工の白ウサギ、ハートを抱いた「ハートあめぴょん」

 さらに白山方面に向かい道を進める。途中、窓ガラスの内側に沿って水を流している仕掛けの歯科があった。何となく中が見えるのだが、水のせいで室内が歪んで見えてカーテンの役割をしているようである。

 さて、そろそろお腹も空いて来たので遅い昼食を取る事にした。東洋大学を過ぎた辺りにちょうど良い感じのレストランがあった。イタリア料理「シシリア食堂」とある。外観は明るいコバルトブルーで、今日の気持ちよい青空ととても良く合う。残念ながらランチはほとんど売り切れており、トマトソースのスパゲッティのランチ一つだけであった。しばし待って出て来た料理はトマトソースをからめた細めのスパゲッティに、バジルソースが縞模様にかかっている。トマトの鮮やかな赤、バジルの濃いグリーン、お皿の白のコントラスがイタリア国旗の色彩になっており目にも美しい。初夏を感じさせる今日にはぴったりのランチであった。食後のコーヒーを飲み終えてお店を出る。都営地下鉄の白山駅まではすぐである。

April 25, 2014

晩春の光


いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

心地よい風が頬をなで、ここ最近は初夏を思わせる陽気で汗ばんだりと早い季節の移り変わりを感じる今日この頃です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

hanamizuki.jpg小石川界隈は樹木が多く道行く花壇は紫陽花やツツジが植えられています。晩春の光を浴びて今はいツツジが鮮やかに咲いき見頃な時期ですね。よくそのツツジ花壇にはハナミズキも植えられ、白や赤色の花が咲き誇っていました。花のように見えるのは実はガクが変形したものだそうです。草花の不思議を感じながら、これから過ごしやすい季節に足を運んで散策もいいですね。

さて今回は、端午の節句にちなんで安田靫彦「菖蒲」と、東山魁夷「金太郎」の複製画をご紹介いたします。

安田靫彦 《菖蒲》 軸・額
販売価格 120,000円+税


金地に描かれた色鮮やかな「菖蒲」。歴史画の大家、安田靫彦画伯の秘められた名作を再現いたしました。本作は画伯81歳の晩年に描かれた作品で、凛とした菖蒲が気品を感じさせます。

この作品はこちらの販売店でお求めになれます。

yukihiko_shoubu_F400pix.jpg


<仕様体裁>

原画 古川美術館所蔵
監修 安田建一
解説 草薙奈津子(平塚市美術館館長)
技法 彩美版(R)、シルクスクリーン
用紙 和紙
限定 300部
画寸 40×53cm
額寸 60.2×73.3cm
重量 約2.6kg
額縁 木製金泥仕上げ、アクリル付き(国産、ハンドメイド)
証明 著作権者承認印入り証紙を貼付
発行 共同印刷株式会社

※「彩美版」は共同印刷株式会社の登録商標です。
※本作品は軸装もご用意しております。額装と同価格です。



東山魁夷 《金太郎》 軸・額
販売価格 90,000円+税


小さな金太郎の気丈な姿を、東山魁夷画伯独自のやさしいタッチで描かれた「金太郎」。子供の健やかな成長を切に願う思いが伝わってきます。

この作品はこちらの販売店でお求めになれます。


kaii_kintarou_F400pix.jpg

<仕様体裁>

原画 長野県信濃美術館・東山魁夷館所蔵
監修 東山すみ
解説 谷岡 清(美術評論家)
技法 彩美版(R)、シルクスクリーン、本金泥手彩色
用紙 和紙(鳥の子)
額縁 特製木製額(国産、ハンドメイド)
限定 1,000部
画寸 33×30cm
額寸 51×48cm
重量 約2.5kg
証明 監修者承認印入り証紙を貼付、監修者空押し(エンボス)を画面に刻印
発行 共同印刷株式会社

※「彩美版」は共同印刷株式会社の登録商標です。
※本作品は軸装もご用意しております。額装と同価格です。




【今日の谷根千】

①根津神社 文京つつじまつり
第45回 平成26年4月5日~5月6日開催
つつじ苑入苑は期間中の9時~17時30分(18時完全閉苑)
境内には約100種3000株のツツジが咲き、見頃な時期くを迎えています。
〒113-0031東京都文京区根津1-28-9
tel 03-3822-0753(受付時間9:00~17:00)



②暁の劇場―鴎外が試みた、或る演劇
akatsukinogekijou.jpg
2014年 4月 26日~ 2014年 6月 22日
会期 2014年4月26日(土)~6月22日(日)
※会期中の休館日 5月27日(火)
会場 文京区立森鴎外記念館 展示室1、2
開館時間 10時~18時(最終入館17時30分)
     ※6月中の金曜日は20時まで開館(最終入館19時30分)
観覧料 一般600円(20名以上の団体:480円)、
中学生以下、障がい者手帳ご提示の方と同伴者1名まで無料

April 11, 2014

森美術館 アンディ・ウォーホル展


いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。
現在、東京・六本木の森美術館では「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」が行われております。日本では約20年振りの回顧展となります。

roppongiポップアートのスーパースター、アンディ・ウォーホルは1928年にアメリカ合衆国ペンシルべニア州生まれ。第二次大戦後、興隆するアメリカの消費社会と大衆文化をテーマに、平面、立体、映像等さまざまなジャンルとメディアを横断し表現したマルチアーチストとして、一躍時代の寵児となりました。1987年に59歳で病没しましたが、死後も名声に翳りはなく、現代アートの頂点として今も君臨し続けています。

今回の展覧会では、代表作の«キャンベル缶» «マリリン・モンロー»はもちろんのこと、作家の出身地ピッツバーグにあるアンディ・ウォーホル美術館の膨大な収蔵品約400点が一挙に公開され、ウォーホルの全容が明らかになりました。若かりし頃の貴重なドローイングから、ポップアートを代表する彫刻作品、日本未公開作を含む実験映像、他の有名アーチストとのコラボレーション、ウォーホル自身の私的アーカイブ、伝説のアートスタジオ「ファクトリー」の原寸大再現等々見所は沢山、まさしく国内史上最大の回顧展と言えましょう。

因みにタイトルの‹永遠の15分›とはウォーホルの言葉、「人は誰でも生涯のうちに15分だけ有名になれる」と、後にこれを反転させた「15分で誰でも有名になれる」という彼の警句に由来します。

大好評のレトロスペクティブも会期はあと残すところ5月6日(火)まで。六本木ヒルズ見物と併せて鑑賞されることをお薦めいたします。


【展覧会情報】

「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分

会場 六本木・森美術館
    東京都港区六本木6-10-1
    六本木ヒルズ森タワー 53F
    電話:03-5777-8600 (ハローダイヤル)

会期 2014年 2月1日(土) から 5月6日(火・休)まで
    ※会期中無休
時間 10:00 ~ 22:00 ※火曜は17時まで(4/29、5/6を除く)

プロフィール

共同印刷株式会社SP&ソリューションセンター アート&カルチャー部では、日本画を中心とした複製画や版画の制作、販売をてがけています。制作の裏側や、美術に関係したエッセーを続々とアップしていきます。尚、このサイトの著作権は共同印刷株式会社又は依頼した執筆者に帰属します。

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