« 「石の街」宇都宮の多彩な魅力。 | メイン | 【新作のご紹介】彩美版® ゴッホ「夾竹桃」 »

August 25, 2017

身近なもののけ伝説



 強い日差しとどんよりした雨雲が不規則に入れ替わる怪しい天候の続く中、桶川市にある、さいたま文学館で開催中の「さいたまの妖怪」という企画展を観に行きました。(7月22日(土)から9月10日(日)まで開催)

さいたま文学館.jpg


 展示会では、古くは平安時代の今昔物語の記載や鎌倉時代の絵巻物などに描かれた妖怪図をはじめ、江戸時代も葛飾北斎「北斎漫画」の鬼のスケッチや河鍋暁斎の百鬼夜行をモチーフにした「百鬼書談」、利根川図誌の生々しい「河童」の図などが紹介されています。 
 妖怪とは、古来、理解できない現象や病気、災難などに人々が遭遇した時、「神」「仏」のみならず、「妖怪」「鬼」「異形」などの仕業とし、畏怖、不安、恐怖を具象化したものと考えられます。それらはその地方の風土、郷土生活と密着し、民話や伝説として語り継がれてきました。
 会場で多くの原画が展示された埼玉県在住のイラストレーター、池原昭治氏の描く昔ばなしの世界は、埼玉に伝わる妖怪伝承を温かく、親しみを込めて、(時に怖ろしく)表現しています。それを観て、あらためて自分の住む地域の近隣に伝わる伝承に興味を持ちました。そこで私の身近に見聞きする伝説の地を確認してみました。




<見沼の竜神伝説>
 現在のさいたま市見沼田んぼは江戸時代中頃まで巨大な沼でした。そこには竜神が住んでいたと言われ、いくつもの伝説が残っています。代表的なのはその沼の干拓工事を行った井沢弥惣兵衛にまつわる以下のような伝承です。
 
 見沼に住む竜神は美女の姿で弥惣兵衛に干拓工事を延期するよう請うたが、聞き入れず工事を進めると、災難が続き、弥惣兵衛自身も病床につく。竜神の美女は願いを聞けば病を治すと言い、毎夜訪れる。弥惣兵衛は快方に向かったが、家臣が覗いてみると美女は大蛇の姿で弥惣兵衛の体をなめまわしていた。恐れた弥惣兵衛はこっそり居を移し、工事は順調に進み、竜神は沼を去った。

 現在の見沼は、水田や畑が雄大に広がる情景に代表される場所となっています。さいたま市のマスコットキャラクターも「つなが竜 ヌゥ」といいます。

見沼たんぼ(加田屋新田付近).jpg




<白幡沼の巨人伝説>
 白幡沼は、現在さいたま市南区のJR武蔵浦和駅の近く、高台にある白幡中学の麓にあります。ここは、雨の日に巨人が足を滑らせて転び、その時に拳をついたところに水が溜まってできた沼と言われ、かつては「拳が池」または「こぶし沼」と呼ばれたそうです。
 たくさんの葦が茂る静かで落ち着いた場所ですが、訪れた日は白鷺が優美な姿を見せ、カメラを向ける一団体がいらっしゃいました。
 なお、同じ南区に太田窪(だいたくぼ)という場所があり、この地名は日本各地に伝わる巨人伝説「大多(ダイタ)ぼっち(巨人)」~ダイダラボッチ~に由来すると言われています。

白幡沼.jpg




<志木の河童伝説>
 さいたま市のすぐ隣の志木市は、3本の川に囲まれ水との関わりが深く、河童にまつわる伝説がいくつもあります。市内の宝幢寺には柳瀬川の河童伝説があり、柳田国男の『山島民譚集』にも紹介されています。

 昔、柳瀬川に住む河童はたびたび馬や人を襲っていたが、ある日、寺に飼われていた馬を川に引きずり込もうとし、暴れた馬に踏まれて衰弱していた。村人達が、悪さをしてきたその河童を焼き殺そうとするが、寺の和尚は哀れに思い、人々に命乞いをして助け、河童も、今後は人や馬に危害を加えないと誓い泣きながら川に帰って行った。翌朝、和尚の寝ている枕元に大きな鮒が2匹置いてあり、それ以来人や馬が襲われることはなかった。

 なお、市内には愛称のついた20体以上の河童の像があり、志木市商工会では「カッピー」、(公財)志木市文化スポーツ振興公社は「カパル」というカッパキャラを立て、市全体で河童と親しんでいます。

柳瀬川で遊ぶ河童像「流ちゃん」.jpg




 足を伸ばせば、まだまだたくさんの伝承の地があります。そういう視点で各地を見ると何気ない場所にも浪漫が感じられ、空想が広がります。




■さいたま文学館
埼玉県桶川市若宮1-5-9   TEL 048-789-1515
展示室営業時間 10時~17時30分
定休日 月曜(祝日の場合開館)、館内整理日
展示室料金 一般210円、学生・生徒100円、(団体20人以上は割引あり)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://bijutsu-shumi.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/2142

コメントを投稿

※いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前に
このブログのオーナーの承認が必要になることがあります。
承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらくお待ちください。

※お問い合せについては、「お問い合せ」からアクセスしてください。
こちらのコメント欄には個人情報に関する内容は記載しないでください。

プロフィール

共同印刷株式会社SP&ソリューションセンター アート&カルチャー部では、日本画を中心とした複製画や版画の制作、販売をてがけています。制作の裏側や、美術に関係したエッセーを続々とアップしていきます。尚、このサイトの著作権は共同印刷株式会社又は依頼した執筆者に帰属します。

<   September 2017   >
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
 
 
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
 
 
ページの先頭に戻る