July 28, 2017

豪雨被災地の皆さまへ、心よりお見舞い申し上げます


 ようやく梅雨が明けたものの、災害レベルの豪雨に心を痛める毎日です。この度の九州北部、東北北部の豪雨災害、被害を受けられた地域の皆さま、関係の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

 恨むべきは突然の豪雨でありますが、古くより農耕に携わる生活をしてきた日本人にとって、雨は切っても切れない存在です。雨にまつわる言葉の数々からは、古人がどのように雨と接してきたかを伺い知ることもできます。以下、穏やかな言葉をまとめました。

・ 霧雨(きりさめ)...霧のように細かい雨。
・ 時雨(しぐれ)...降ったり止んだりする雨。
・ 村雨(むらさめ)...急に降りだして短時間で止むような雨。
・ 瑞雨(ずいう)...穀物を育む雨の意。
・ 慈雨(じう)...恵みの雨の意。
・ 甘雨(かんう)...草木を潤す雨の意。


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庭のトマト


 また、雨のあとには、天に美しい虹が映えるときがあります。

 以下の作品は、女性初の文化勲章受章者で、美人画の巨匠として知られる上村松園の名作《虹を見る》(原画は京都国立近代美術館所蔵)です。右隻には雨上がりの夕べ、振袖姿の姉に抱かれた愛らしい赤ちゃんが、天空に微かに映える虹を見上げて微笑む姿が印象的な構図で描かれています。

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上村松園《虹を見る》(当社彩美版®より)


 このような雨あがりの情景を、穏やかに慈しみたいものです。

 被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

July 21, 2017

夏の到来

 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 一年の前半が終わり、七月に入り本格的な夏を迎えて来ました。そして先日、各地の梅雨明けしたとみられる発表が出されました。それでもまだまだ蒸し暑くて鬱々とした気分になりがちですが、皆様どうか体をご自愛くださいませ。

 今も昔も私たちは季節に寄り添いながら暮らしています。幼いころから自然に親しみ、四季折々の情景や季節感から豊かな文化がうまれ、季節を愉しむすべをよく会得しているのではないでしょうか。

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 日本の風物詩でもある七夕ですが、七月の節句にあたるそうです。子供の頃に短冊に願い事をかいて、色とりどりの折り紙で飾りをつくって笹にくくりつけ楽しんだものです。実は先日、笹を近所の花屋で購入して色々と思い出しながら七夕飾りをつくりました。夢中で飾りをつくったり短冊に願いをしたためたりしていると、童心にかえったようで楽しいひと時をすごしました。心ゆたかに、季節とともにめぐる文化を大事にしていきたい今日この頃でもあります。





 この時期、当社に程近い伝通院および源覚寺境内では「文京朝顔・ほおずき市」、そして以前ご紹介した光源寺(こうげんじ)駒込大観音(こまごめおおがんのん)でも7月9日・10日と「ほうずき市」が開催されました。このお祭りを迎えると初夏からいよいよ夏本番!と感じられます。

 今回は、夏を感じさせる奥村土牛「朝顔)」の複製画をご紹介いたします。
 たおやかで美しい朝顔が一輪が咲き誇っています。画伯の描く「たらし込み」による表現で、より鮮やかに瑞々しさが際立ち、繊細さもうかがえます。当社「彩美版®」により、原画の微妙な色使いや雰囲気を再現いたしました。是非お手元でお楽しみください。


【当社商品のご紹介】


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奥村土牛 《朝顔》
販売価格 95,000円+税


<仕様体裁>
技法 彩美版、本金泥手彩色
原画 華禽大塚美術館所蔵
技法 彩美版®
画寸 天地38.2cm×左右52.8cm
額寸 天地57.5cm×左右71.5cm
重量 約4kg
用紙 版画用和紙(鳥の子)
額縁 特製木製額、アクリル付(国産、ハンドメイド)


※「彩美版」は共同印刷株式会社の登録商標です。
※本作品は軸装仕様もございます。





【今日の谷根千】

◇文京区立森鴎外記念館

コレクション展「森家三兄弟―鴎外と二人の弟」

会期:平成29年7月7日(金)~10月1日(日)
※会期中の休館日:8月22日(火)、9月26日(火)
開館時間:10時~18時(最終入館は17時30分)
※7月9日(日)、10日(月)は20時まで開館(最終入館は19時30分)
観覧料:一般300円(20名以上の団体:240円)
※中学生以下無料、障がい者手帳ご提示の方と同伴者1名まで無料

会場:文京区立森鴎外記念館展示室2

July 14, 2017

大正時代のガーデニング男子


 梅雨だというのに、東京では雨があまり降りません。うだるような暑さが続き木々や草花も心なしか元気がないように見えます。水が足りないのではないでしょうか。我が家の子どもがまだ幼い頃は、家庭菜園が人気で、我が家でも地元自治体が運営する菜園を借りて野菜を育てていました。植物を育てるのは手間がかかるもの、夏場は水やりが大変です。水道が離れた場所にあり重いバケツを運んで何往復もしたものでした。

 ここ数年でしょうか、ガーデニングを楽しむ男性が増えてきているとの話題を耳にしました。そういえば、NHK「趣味の園芸」の講師はイケメン俳優の三上真史さんでしたし、作家いとうせいこうさんのエッセイをもとにして作られた田口トモロヲさん主演のNHKBSプレミアムドラマ「植物男子ベランダー」も、かなりディープな内容で人気だそうです。

 私自身はガーデニングにそれほど興味があるわけではないのですが、植物好きの家族のおかげで緑に囲まれた生活を送っています。リビングのど真ん中には、天井にとどかんばかりのウンベラータという観葉樹が鎮座し、四方に大きく枝葉をひろげています。ウンベラータの大きな葉は繊細でなるべく触らないようにしなけれなならないのですが、さほど広くない我が家のリビングですから、どこに行こうとしてもかならずこの樹の枝先ぎりぎりを通過しなければならず、不便を強いられています。それでも、活き活きとした植物たちに囲まれた空間には不便を上回る快適さと心を満たす歓びがあります。ことに室内にいながら樹下に憩う爽快さは、何物にも代えがたいものがあります。簡単な水やりでも続けていると、植物への愛情が自然と湧きあがってくるのが不思議です。

 ところでガーデニング、すなわち園芸は当初身分や教養の高い限られた人たちの趣味だったそうです。盆栽も含めていわゆる文人の嗜みの一つでした。江戸時代後期には一大ブームが興り、貴賤を問わずひろく愛好されたました。様々な花の品種が作出され園芸にかかわる出版も盛んでした。余談ですが、私はこうした園芸ブームと日本画の主題としての草花には、もちろん総てにあてはる訳ではないですが、なんらかの関連性があるのではないかと考えています。例えば酒井抱一や弟子鈴木其一ら江戸琳派の作品に多い花卉画は、園芸ブームという同時代性も併せて考えてみるべきではないでしょうか。機会があればもう少し深く探ってみたいと思います。

 話を戻します。近代日本を代表する文人の一人森鴎外(1862~1922)は園芸のスペシャリストでした。医学者らしく研究熱心で極めて高度な専門的知識を身に着けていたそうです。著名な植物学者牧野富太郎とも園芸を通じた親交がありました。自邸観潮楼(現在文京区立鴎外記念館のある場所)の裏庭は鴎外が園芸を楽しむ場所でした。毎日のように庭に下りて草花の生育状況を観察していたようです。鴎外がつけていた日記には草花の記述がしばしば登場します。また、花の開花記録である「花暦」を記しています。

 鴎外の弟子を自認していた一人に作家永井荷風(1879~1959)がいますが、荷風もまた園芸を好む男子の一人でした。荷風は随筆『偏奇館漫録』にこう記しています。

 「余花卉(かき)を愛すること人に超えたり。病中猶年々草花を種まき日々水を灌ぐ事を懈(おこた)らざりき。」


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断腸亭にほど近い余丁町の抜弁天。
荷風は大正6年12月の縁日に沈丁花一鉢を買い求め、自邸の窓下に植えている。



 断腸亭という彼の号の由来も花とかかわっています。大久保余丁町(現新宿区余丁町)の実家の庭園に咲いていた断腸花(秋海棠の別名)を好み、自らの書斎に名づけたのでした。断腸花は秋の花ですが、夏の花としては紫陽花と椎の花を特に好みました。

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荷風が好んだ夏の花、紫陽花。


 荷風の日記『断腸亭日乗』には草花の記述がしばしば出てきます。多くは季節の花の開花記録ですが、自ら雑草を抜き、種をまき、球根を植え、根分けをしたというような具体的園芸の記述もあります。また時には、樹医のようこともしています。大正9年に移り住んだ古いペンキ塗りの洋館、偏奇館には椎の老樹がありましたが、その樹に蟻がついて弱ったのを手入れして甦らせたのです。夏はこの椎の木の下で読書をするのが彼のお気に入りでした。

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偏奇館跡地に立つ泉ガーデンタワー。


 草花を好んだ荷風でしたが、偏奇館の庭は人から見れば、荒れ放題だったようです。しかし荷風自身は、綺麗に手入れされた庭園より手をあまりかけず荒廃した雰囲気に雅趣を見出したのでした。『断腸亭日乗』大正6年12月1日の記録にはこう記されています。

 「蝋梅(ろうばい)の黄葉末落尽さゞるに枝頭の花早くも二三輪開きそめたり。予今年は病のため更に落葉を掃(はら)はざりしが、今になりては荒果てたる庭のさま却て風趣あり。」

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偏奇館庭園を偲ぶ:道源寺に隣接する六本木坂上児童遊園の樹立。


 麻布市兵衛町にあった偏奇館は戦災で焼け、その跡地には今、泉ガーデンタワーが聳え立っています。泉屋博古館分館のすぐ裏手です。この周辺は大規模開発により荷風が住んでいたころとはすっかり様子が変わってしまいました。私は、荷風が通った道源寺坂にわずかに残る面影をみつけ心に刻みました。坂下の西光寺の木芙蓉が、午後の陽射しを浴びて可憐な花を咲かせていました。

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麻布道源寺坂。


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道源寺坂に咲く木芙蓉。




【夏の花いろいろ】※クリックするとリンク先の記事に飛びます。
ツツジ: 小倉遊亀 《初夏の花》
ガクアジサイ: 中村岳陵 《八仙花》
セイヨウアジサイ: 山口蓬春 《榻上の花》

スイレン: クロード・モネ 《睡蓮の池》


【お知らせ】
■ロビー展「私たち、自然保護しています。」を日本自然保護協会様にご紹介いただきました

6月22日付当ブログで、自然保護活動がテーマの当社ロビー展の記事を掲載しましたが、このロビー展の概要を、協力いただいた日本自然保護協会様に同会ホームページでご紹介いただきました。以下リンクからご覧いだだけます。

公益財団法人日本自然保護協会(企業連携)http://www.nacsj.or.jp/partner/2017/06/4629/

July 6, 2017

土田麦僊(ばくせん)―生誕130周年を迎えて-


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。7月に入り、夏真っ盛りの陽気の中、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 さて今回ご紹介する土田麦僊(1887-1936)は明治20年(1887年)佐渡に生まれました。今年は生誕130年の記念イヤーです。同年生まれの画家には、大観を師と仰いだ堅山南風(1887-1980)がおります。麦僊は主に京都画壇で活躍、円熟期を迎えた四十九歳の年に惜しくも逝去しましたが、近代日本の美術界に偉大なる足跡を残しました。

 京都に出て画家を志した麦僊は、鈴木松年と竹内栖鳳に師事。奇しくも上村松園(1875-1949)と同じ道を歩みました。若くして有望画家として頭角を現わすとともに、西洋絵画の理論を学び、伝統色の強い京都に在りながらも東洋と西洋の美の融合を目指し、新しい日本画の創造を図りました。弟で哲学者の土田杏村(1891-1934)とは道は違えども≪近代≫日本に深くコミットし、日本と西洋の文化と歴史に深く思考を巡らせました。

 京都市立絵画専門学校でともに学んだ、小野竹喬(1889-1979)、村上華岳(1888-1939)らと活動の母体となる国画創作協会を設立。翌年(1918年)には代表作「湯女」(重要文化財)を制作し、高い評価を受けました。座学に飽き足らず大正10年には親友の竹喬らと渡欧し、パリで学ぶかたわら西欧各地を二年間旅しました。帰国の翌年には「舞妓林泉図(ぶぎりんせんず)」を発表しますが、これは伝統美の極致ともいうべき舞妓を西欧画のパースペクティブで描いたもので、麦僊の集大成的作品となりました。上述の「湯女」「舞妓林泉図」はともに東京国立近代美術館が所蔵しております(「湯女」は7月17日まで東京国立近代美術館所蔵作品展にて展示中)。

 麦僊は齢五十前に没したため文化勲章の栄に浴することは叶いませんでしたが、フランスのレジオンドヌール勲章を受章、帝展審査員や帝国美術院会員を歴任するなど、近代の日本画壇に赫赫たる名声を築きました。にもかかわらず麦僊生誕130周年の年に記念回顧展が行われる予定がないのは、とても残念なことです。そこで本ブログでは麦僊の芸術にご興味あるお客様に、夏の風物詩、銘品「金魚図」彩美版®をご紹介させていただきます。

 「金魚図」は洋行帰りの麦僊が「舞妓林泉図」制作の翌年(1925年)に制作されました。描かれた金魚の優美な姿や面構えにはどこか風格さえ感じられますが、さらに面白いのは限りない空間のこの構図です。想像を遊ばせるような日本的な余白を楽しむ趣は、麦僊洋行後の日本美への意識の深まりを窺わせます。何よりも愛らしき金魚が水中でのびのびと泳ぐ姿に、清涼なる美しさを感じ取っていただけることでしょう。

 

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●土田麦僊『金魚図 』
販売価格 90,000円+税

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■仕様体裁
技 法 彩美版®シルクスクリーン手摺り
画 寸 天地37.5×左右42.0㎝(8号大)
軸 寸 天地129.0×左右59.5㎝
額 寸 天地58.5×左右63.0㎝
発 行 共同印刷株式会社
※作品についてのお問い合わせ:共同印刷(株)アート&カルチャー部 TEL.03-381-2290


 麦僊の巧緻を極めた空間芸術を、皆さまも是非お手元でお楽しみ下さい。


プロフィール

共同印刷株式会社SP&ソリューションセンター アート&カルチャー部では、日本画を中心とした複製画や版画の制作、販売をてがけています。制作の裏側や、美術に関係したエッセーを続々とアップしていきます。尚、このサイトの著作権は共同印刷株式会社又は依頼した執筆者に帰属します。

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