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April 28, 2016

日本民藝館を訪れた事及び、大きな屋敷で靴を持って歩き回った事。


 一度は訪れてみたいと思いながら、なかなか行くことのない場所が誰にでも一つ二つはあるのではないだろうか。私にとっても「東京タワー」と「日本民藝館」は正しくそれであった。しかしブログの掲載が差し迫って来た事もあり、この機に「日本民藝館」の方を訪れてみる事にした。

 東京の若者の街、渋谷から井の頭線に乗り2番目の駅の駒場東大前で降りると、ほど近いところに「日本民藝館」はある。民衆の用いる日用品の美に着目した柳宗悦(やなぎむねよし:1889〜1961年)は「民藝」という新しい美の概念の普及と、「美の生活化」を目指す活動をし、柳氏が収集した古今東西の工芸品を展示しているのがこの民藝館である。

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瓦と白い壁が美しい、日本民藝館の入り口


 この民藝館の本館の建物は柳氏自身が設計を手がけた和風意匠を基調とした特徴的な建物で、登録有形文化財にもなっている。玄関の引き戸を開け中に入ると、上がりかまちで靴を脱ぎスリッパに履き替えてチケットを買う。玄関を入った正面には2階へと続く大きな木製の階段が存在感を放っている。展示室は1階、2階にある複数の部屋に分かれている。木のぬくもりと白い壁のコントラストが美しく、階段の吹き抜けを中心に開放感のある館内はとても居心地が良い。この時点で訪問して良かったと思ってしまう。

 この度の展示は、創設80周年特別展として日本民藝館所蔵の「朝鮮工芸の美」(6月12日の日曜日まで開催)と題して、国内屈指の質と量を誇るという民藝館所蔵の朝鮮時代の工芸品(陶磁器、木工品、石仏、掛軸など様々な品)を展示している。朝鮮時代の工芸といえば白磁と漆塗木工品ぐらいのイメージしかない浅薄な私であったが、展示物の幅の広さに驚いた次第である。

 白磁に対して、ゴロッと黒い蝋石製面取薬煎(19世紀末)。草虫図(19世紀)の掛軸に描かれているのは、ハチ、チョウ、セミ、カエルなどの生き物達で、西洋のモチーフとは違った、日本と共通する小さきものに対する慈悲を感じる。変わったところでは、木製の枕(鼓のように両端が広く平らで、真中がくびれている)は、頭をのせる面が小さく(直径10cmぐらい)これでは、寝返りをうったら床に頭をぶつけてしまう。「たわし」の形も変わっており、「こけし」の様に縦に長い。朝鮮と日本の視点の違いと共通点を楽しめる展覧会であった。

 民藝館を出たすぐ近くには、旧前田家本邸洋館のある駒場公園がある。緑の樹々が多いこの都会のオアシスには日本近代文学館もあり、館内の「BUNDAN COFFEE&BEER」で食事が出来る。BUNDANの名に相応しく店内には天井にとどく書棚が並び、約2万冊の書籍があるという。こちらではメニューも作家にちなんでおり、コーヒーの品書きは「芥川」や「寺田寅彦の牛乳コーヒー」など、食事は「ハードボイルド・ワンダーランド(村上春樹)の朝食セット」や「シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイ」と遊び心が溢れている。僕は「シャーロック〜パイ」にしたよワトスン君といった体で昼食をいただく事に。

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シャーロッキアンではないが、シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイを注文

 公園の中心の建物「旧前田家本邸洋館」は、加賀百万石の第16代当主であった前田利為(まえだとしなり)侯爵の本邸として昭和4年に建てられた。建物はイギリスのチューダー様式で、地下1階、地上2階、延床面積約2,930平方メートルという豪邸である。隣には連絡通路で行き来できる和館もある。入場無料との事なので洋館を見学する。まずは玄関(といっても私のアパートの延床面積の約半分ぐらいある)で靴を脱いでスリッパに履き替え(今日はやたらに靴を脱ぐ日である。この後、和館を訪れた際も靴を脱ぐのであった。)、靴は設置してあるビニール袋に入れて持ち歩く。

 この館とにかく部屋数が多い。食堂が大小2部屋、サロン、書斎、家族の各部屋の他に、女中室が4部屋と女中溜、小使室、従者室、執事室が1部屋ずつある。その他の部屋も合わせると30以上にもなる。静かな館内を散策していると、どこからか「ネコふんじゃった」のぎこちなさのあるピアノのメロディーが聞こえてくる。館内をぐるぐる回っていると方向感覚も危うくなる。それにしても、人のほとんど居ない大きなお屋敷の中を部屋から部屋へと靴を持って歩き回っている自分の姿に、どろぼうになった様な気持ちになるのであった。


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