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March 4, 2016

童画に込めた巨匠達の想いと、東京都板橋区赤塚を散策した事について


 東京をほぼ南北に走る都営地下鉄三田線は地下鉄といいながら、志村坂上駅より北上すると地上に出て高架線を走り、終点の西高島平駅に着く。よって地下鉄の車両はどこから入れるのだろう?と考え込まなくても良い。この辺りは昭和40年代に建てられたマンモス団地「高島平団地」で知られている。団地の総戸数は1万を越えるという。

 さて西高島平駅から南西方向に十数分歩くと「板橋区立美術館」がある。美術館は赤塚城本丸跡の公園内にあり、訪れた時は紅白の梅の花が咲き始めていた。こちらでは3月27日まで「描かれた大正モダン・キッズ 婦人之友社『子供之友』原画展」が開催されている。「子供之友」は幼児から小学生向けの生活教育雑誌として「婦人之友」の創業者、羽二とも子、吉一が1914年(大正3年)に創刊し、1943年(昭和18年)の休刊までの30年間発行された。本誌は創刊より絵画主任を務めた北澤楽天や、竹久夢二、武井武雄、村山知義などの第一線の芸術家達の作品を発表し続けた、芸術性の高い雑誌である。展示は作家ごとにまとめられており、貴重な原画が展示されている。いわゆる絵画作品とは違い、印刷原稿として描き起こされたものなので、絵の回りには引き出し線で「色は思ひきつて 鮮やかに」などの指定が残っている。こういう肉筆の指示を見ると版下原稿入稿世代の印刷マンとしては懐かしくてじんと来る。

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梅の花咲く美術館入り口

 挿絵のスタイルの変遷も芸術表現の移り変わりと重なっており、創刊始めの北澤楽天の描いたサンタクロースは正しく白ひげの仙人のようで恐ろしいが、竹久夢二の作品は夢二調の細やかで繊細な線と淡い色彩で、はかなげである。時代は下って、ベルリン留学を経て当時の前衛芸術活動をリードした村山知義はシンプルな線と面で構成されたモダンな表現をしている。「童画」という言葉を創出した武井武雄は、東京美術学校(現東京芸術大学)を出た後、自活するための仕事として雑誌の挿絵制作を始めたが、彼の作品は均一の太さの線で、木や葉を装飾的に描いている。本展示作品の私のお気に入りは、村山知義の「リボンときつねとごむまりと月」である。シルクハットを被りタキシードを着た三日月と、リボンとごむまりの三人がステーキを食べているテーブルの奥に、きつねの一行がお土産を持って遠ざかっているという何ともかわいく、シュールで稲垣足穂と宮沢賢治を混ぜたような大正モダニズムアートである。その他、岡鹿之助や安井曾太郎が自らの絵の解説を書いていたり、マティスの作品を掲載したりと、「子供之友」は子供向けとは思えないほどの本物の芸術志向であった。

 なお、「板橋区立美術館」の男子トイレにはマルセル・デュシャンの「泉」がある。といってもそれは中国人アーティストの牛波氏の「泉水」という作品で、かつてデュシャンが既製品の便器をそのまま美術品として提示したが、それをまたもとの使用できる便器として再提示した作品である。この作品は壁に付いた鏡により真上からそのフォルムを見る事が出来る(用を足しながらも見られる...)。

 さて美術館を出て東武東上線の下赤塚方面へ続く「東京大仏通り」をしばらく行って脇道に入ると乗蓮寺というお寺に出る。徳川家康より10石の朱印地を拝領したという由緒あるこのお寺には正しく「東京大仏」という高さ13m、重さ32トンの青銅で出来た巨大な大仏(阿弥陀如来)が建立されている。全体的につやつやと黒光りして、シャープな身体の線のスマートな大仏様である。境内には他にも「旧藤堂家染井屋敷石造物」という不思議な石造が配置されている。これら天邪鬼石造、婆々石造、大黒石造などの姿からは、歴史と信仰を感じさせてくれる。

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青空とスマートな大仏様

 お寺を出て、更に脇道を進んだ二股の付け根に「板橋区立赤塚植物園」がある。入園はただのようなので入ってみる。広さは約1ヘクタールと、それほど大きくはないが、起伏のある丘陵地をうまく生かした造りになっている。この植物園に入ってまず目を引くのは白い樹皮が美しい「ユーカリ」の巨木である。その高さは管理舎の屋根を遥かに越える。「ユーカリ」がこんなにも大きくなるとは知らなかった。今の季節園内では「フクジュソウ」や「スノードロップ」が咲いている。「フクジュソウ」が群生して黄色い花を咲かせている可憐な姿に春の訪れを感じた一日であった。




 今回は童画の展覧会を訪れたが、童画といえば東山魁夷も「コドモノクニ」などの雑誌に童画を描いていた時期がありました。日本画の巨匠として崇高な自然風景の作品を数多く描いた東山魁夷ですが、心温まり童心のある作品も描いています。この度ご紹介する「金太郎」も正しくそのような作品です。大きな熊にまたがり、斧を持った小さな金太郎。でもその表情は口元も眉もきりっとして、しっかりとした眼差しを向けています。彩美版®プレミアムの美しい額装は、和室にも洋室にもマッチします。絵画としての美しさばかりでなく、お子様の健やかなご成長を願ってお部屋にお飾りください。


東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《金太郎》
販売価格 180,000円+税


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<仕様体裁>
限定: 500部
技法: 彩美版®プレミアム
証明: 著作権者承認印、限定番号入り証書を額裏に貼付け
額装: 特注木製額ハンドメイド浮き出し加工
画寸: 33.3×30.0cm
額寸: 48.5×45.0×4.0cm
重量: 約2.6kg
発行: 共同印刷株式会社

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