« 小川芋銭と牛久の河童たち | メイン | 女子力UP!の展覧会「PARISオートクチュール展」 »

March 11, 2016

In My Town・・・ポエジーな休日


 旅気分で足を伸ばして美術館やギャラリーを訪れるのも楽しいですが、ごく身近な場所を見渡してみると、ほんのりアートの薫りに出会えるスポットがあります。休日にさいたま市の自宅近辺で目にしたそんな場所を紹介します。

 JR武蔵浦和駅西口近く、子供が通っていた小学校のすぐそばにあるお店、器ギャラリーハセガワ。小ぶりな店構えですが、気づいてみると洒落たセンスにあふれたお店で、小さな吊り看板やOPENを示す手作りディスプレイは味わい深いものがあります。外からは大きなウインドウ越しに、格子状の棚に置かれたやきものの商品が見られ、どれも愛らしくオリジナリティある作品。お雛様の陶器の置物もありました。お店の中も形や色、デザインが個性的ながら使い易そうなやきものが品よく並んでいます。ひとつひとつ手作りでできた陶器は当然全く同じものは2つなく、商品というより作品と呼べるものです。

20160311utsuwa_g_hasegawa.jpg

 ショップを営むのは長谷川正治さん、松浦唱子さんでお二人とも通常は千葉の富津市で陶芸家として活躍されています。お二人以外にも全国各地の作家さんの作品が置かれていますが、もともとは常滑のセラミックアートスクールで陶芸を一緒に学んだ方たちで、その後各地に移ったものの、やきもの市などで交流を続け、陶器を仕入れているそうです。

20160311utsuwa_g_hasegawa2.jpg

 お店には、なかなかこうは描けない脱力系のオリジナルイラストポストカードも置いています。無垢の力ともいうべき示唆に富んだ作品群は、やきものの無心の様相にマッチすると感じました。何気なく通り過ぎる道に、趣深い作品世界の広がる場所がある。そんな印象を受けました。



 もう一つですが、JR中浦和駅東側にある、以前は毎週のように訪れた別所沼公園。子供が成長してからは、何年も行っていませんでしたが、ここにもアートスポットがあります。彫刻家 中野四郎の作品「掛けた女」や、メキシコ州から贈られた「風の神の像(エヘーカトル・ケッツアルコアトル)」などもですが、はずせないのは2004年に園内に建てられた「ヒアシンスハウス(風信子荘)」という小さな家。詩人・建築家の立原道造(大正3年~昭和14年)が24歳で夭折する1年前に構想した別荘です。道造は東大建築学科で学び、在学中に辰野賞(奨励賞)を3度も受賞。同時に詩歌においても少年時代から才能を示し、著名な作家たちが名を連ねる「四季」同人となって活躍、第1回中原中也賞を受賞しました。そんな彼の未完の夢がこの小さな空間であり、没後65年後に、地元の建築家、文芸家たちの協力で、道造の遺したスケッチをもとに作り上げられました。

20160311Hyacinthus_haus.jpg

 河津桜が少しだけ咲く日曜の午後、人々が思い思い寛ぐ穏やかな公園の空気の中にその家は溶け込んでいました。大きな窓から、沼と、河津桜も見えます。緑豊かな季節なら木々の爽やかな息遣いが感じられたでしょう。据え付けの机や椅子もベッドも彼のスケッチを忠実に再現しています。木の温もりの中に、そよ風が渡る自然を感じる家。道造はこんな心地よい秘密めかした空間を望んでいたのかと深い共感を覚えました。この家は芸術・文化の催しにも活用されているようです。過去の詩人の想いが何十年もの時を超えて人々に継承され実現する、その情熱の結集力に感動を覚えました。

 すぐそばにある見知った場所も、気づかないうちに変化し、アートに根ざした憩いの場として存在感を増していた・・・時を想い、感慨にふける日でした。

20160311Hyacinthus_haus2.jpg




■器ギャラリーハセガワ
 さいたま市南区沼影1-5-20  TEL 048-837-0639
 営業日 木・金・土  (イベント開催時は変更の場合有り)
 営業時間 13時~18時 (不定休)


■ヒアシンスハウス
 さいたま市南区別所沼公園内  
 開室日 水・土・日・祝(年末年始は休室)
 開室時間 10時~15時

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://bijutsu-shumi.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1735

コメントを投稿

※いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前に
このブログのオーナーの承認が必要になることがあります。
承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらくお待ちください。

※お問い合せについては、「お問い合せ」からアクセスしてください。
こちらのコメント欄には個人情報に関する内容は記載しないでください。

プロフィール

共同印刷株式会社SP&ソリューションセンター アート&カルチャー部では、日本画を中心とした複製画や版画の制作、販売をてがけています。制作の裏側や、美術に関係したエッセーを続々とアップしていきます。尚、このサイトの著作権は共同印刷株式会社又は依頼した執筆者に帰属します。

<   September 2017   >
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
 
 
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
 
 
ページの先頭に戻る