December 22, 2016

伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)生誕三百年記念作品のご案内


 今年も残すところあとわずか。あっという間の一年でした。
 寒さも一段と厳しくなってまいりましたので、皆さまどうぞくれぐれもお気を付け下さい。


 2016年は伊藤若冲の生誕三百年を記念し、各地で記念展がとり行われております。中でもこの春、上野の東京都美術館で開催された展覧会は、代表作《釈迦三尊像》三幅(相国寺蔵)及び《動植綵絵(どうしょくさいえ)》三十幅(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)が特別出品されたこともあって大盛況で幕を閉じました。この《釈迦三尊像》と《動植綵絵》は、若冲自ら相国寺に寄進した作品群ですが、明治維新後《動植綵絵》は相国寺から皇室に献上され今に至ります。両者が東京で一堂に会するのは史上初めてだったとのことです。


 引き続きこの秋、若冲が生涯を過ごした京の地、京都市美術館でも若冲展が開催され人気を博しました。勢いは衰えることなく12月に入り京都国立博物館で「特別陳列 生誕300年伊藤若冲」が、そして若冲と縁の深い相国寺の承天閣美術館では「生誕300年記念 伊藤若冲展[後期]」が行われています。両美術館ともに、それ以前に開催された若冲展では見られなかつた貴重な作品が多数展示されており大変な話題を呼んでおります。


 おかげさまで弊社発行の若冲生誕三百年記念作品《日出鳳凰図》も好評をいただき、なんと今年の弊社年間売上数のベスト1位に輝きました。これもひとえに皆様のおかげと深く感謝する次第です。特筆すべきは軸装のご注文のお客様が圧倒的に多かったことで、掛軸作品に対するお客様の潜在的ニーズがあるということも再認識いたしました。


 《日出鳳凰図》は若き若冲の気概あふれる傑作です。旭日と鳳凰に焦点を絞った大胆な構図が青年期の若冲の比類なき才能を感じさせ、その定評ある細密な描写が作品の完成度の高さを証明します。酉年の新しい年を迎えるにあたり、慶祝の日にふさわしい華やかで独創的な吉祥画といえましょう。




彩美版®
伊藤若冲 《日出鳳凰図》
販売価格 110,000円+税


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<仕様体裁>
原画 米国・ボストン美術館所蔵
解説 河野元昭(美術史家、東京大学名誉教授)
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 三段表装(本表装)
画寸 94.0×33.0㎝
軸寸 183.0×52.5㎝
箱  柾目桐箱、タトウ付
※ご希望により額装のご注文も承ります。
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




お客さまからは、画中の署名と印章の読み方についてお問い合わせをいただくことが多く、この場を借りて簡単にご説明をさせていただきます。


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署名は居士(こじ)、藤(伊「藤」)、汝鈞(若冲の名「じょきん」)画と記されています。
署名の下には印が上下二段に捺されており、上の白文方印は「藤汝鈞印」(左回りに)、下の朱文法印は「若冲」(号)が刻印されております。


作品への興味とご理解を深めていただき、本作をご愛蔵いただければ幸いです。
末筆ですが、皆さまどうぞ良いお年をお迎え下さい。

December 16, 2016

絶景!「天下の秀峰 金時山」と金太郎


先日、箱根山の北西部に位置する金時山(別名・猪鼻嶽)に登って参りました。
富士山ビュースポットといえばここ、この日は特に快晴で美しい景色を眺めることができました。

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ashinoko.jpg【山頂から眺める富士山と芦ノ湖】

また金時山は、金太郎伝説の山としてファンにとっては聖地となる山です。
金太郎は、平安中期の武将、源頼光に見込まれ頼光四天王のひとりとして活躍した坂田金時が実在のモデルとされているのは有名です。

皆様は金太郎をモティーフとしたゆるキャラの存在をご存知でしょうか?

神奈川県の、「かながわキンタロウ」、神奈川県南足柄市の「よいしょの金太郎」、
そしてなんと岡山県勝央町から「きんとくん」(と、くまパチ)など。
各々キャラクターが個性的です。
それぞれライバル視しているとかいないとか...

さて金時山では頂上手前、あと少しで登頂というところで岩場の急なのぼりが続きますが、
ちょうど登山者を癒すように金太郎像が迎えてくれます。

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(犬連れ登山も多く自力で登る小型犬には勇気づけられました。)

とても小さな像です。
「菱形の腹掛け」がとても可愛らしいです。
金太郎たらしめているアイテムといえば、「まさかり」や「クマ」はきっても切れないものだと思っていましたが、あったりなかったり...必ずしもそうではないようです。
金太郎は「菱形の腹掛け」がマストアイテムのようです。

ゆるきゃらのような愛すべきゆるさと親近感をすべての「金太郎」に感じます。
それだけ日本人の心の深くに染みついているのでしょうか。一年を通してそばに置いておきたいくらいです。
日本画においてもこの金太郎モチーフは愛され、題材として取り上げられています。
当ブログでも何度か東山魁夷先生の金太郎をご紹介させて頂いておりましたが、
とりわけ「歴史画」を描かれる守屋多々志先生は金太郎を題材に何点も描かれています。
こちらは当社の彩美版®でもお楽しみいただけます。
金太郎のように元気に年末まで過ごしていきたいものです!


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守屋多々志 《金太郎》
販売価格(軸・額共通) 90,000円+税

<仕様・体裁>
原画 第34回春の院展出品作品(1979制作)
解説 川瀬邦聡(大垣市守屋多々志美術館学芸員)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 和紙

■軸装仕様
表装 三段表装
材料 天地 利久無地
   中廻 濃茶地横段文緞子
   風帯・一文字 牙地小花唐草文金襴
   軸先 新牙
   箱  柾目桐箱・タトウ付
画寸 天地36.5㎝×左右45.0㎝
軸寸 天地125.5㎝×左右63.0㎝

■額装仕様
額縁 木製金泥仕上げ、アクリル付
画寸 天地35.9㎝×左右44.5㎝
額寸 天地54.1㎝×左右62.8㎝
重量 約3.3kg

December 9, 2016

横山大観旧宅及び庭園が国史跡・名勝へ


 当部では半世紀以上も複製画事業に取り組んでおりますが、その初期の頃から長きにわたり大変お世話になっております『横山大観記念館』につきまして、此度の喜ばしいお知らせをこの場を借りて改めてご連絡させて頂きます。


 東京都は上野池之端に佇む『横山大観記念館』。横山大観画伯のご自宅兼画室及び庭園は、貴重な文化財であることから、今年2016年11月に「横山大観旧宅及び庭園」として国の史跡・名勝の両方に指定される運びとなりました。


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画像提供:横山大観記念館


木造二階建ての数寄屋風日本家屋。文化庁文化審議会による指定答申では、
① 横山大観画伯が自ら指示して造営(デザイン)している点。
② 横山大観画伯の思想・感性が大きく反映されている点。
③ 実際に創作が行われた場であり、その素材となったものも多くあると考えられる点。
などが評価されたそうです。


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画像提供:横山大観記念館


これもひとえに、この旧宅及び庭園を「記念館」として一般公開し、保存・維持に努められた『横山大観記念館』理事長である横山隆様をはじめ、関係者の皆さまのご尽力による、近代美術界への多大なる賜物と存じます。


【横山大観記念館のご紹介】

kinenkan_maingate.jpg住 所 東京都台東区池之端1-4-24
電 話 03-3821-1017

休館日 毎週月~水
長期休館 夏期休館、冬期休館あり
開館時間 10:00~16:00(入館は閉館30分前まで)
入館料 大人 550円
    団体割引(20名様以上)450円
    小学生 200円
    障がい者料金 大人450円、子人100円
    年間パスポート 1,500円

最寄駅 東京メトロ千代田線「湯島」から徒歩7分
     東京メトロ銀座線「上野広小路」、都営大江戸線「上野御徒町」から徒歩12分
     JR「上野」「御徒町駅」から徒歩15分
     京成線「京成上野」から徒歩15分

ホームページ http://members2.jcom.home.ne.jp/taikan/




 当部商品・横山大観画伯「霊峰飛鶴」をご紹介いたします。我々も微力ながら、この貴重な文化財産の益々の発展を祈念し、今後も事業展開に努めてまいる所存です。




彩美版®
彩美版 横山大観 《霊峰飛鶴》
販売価格 120,000円+税


 昭和28年(1953年)に横山大観画伯の澄み切った境地が描かれた吉祥作品。金泥で刷かれた瑞光を背景に、富士の前に鶴が群れをなし飛翔しています。


<仕様体裁>
◆共通仕様
監修 公益財団法人横山大観記念館
原画 公益財団法人横山大観記念館所蔵
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り(本金泥使用)
用紙 特製絹本
限定 950部(軸装、額装の合計)
証明 監修者検印入り証書を貼付

◆軸装仕様
画寸 天地39.5cm×左右52.5cm
軸寸 天地135cm×左右72.1cm
表装 三段表装
箱  柾目桐箱、タトウ付
 
◆額装仕様
画寸 天地39.2cm×左右52.8cm
額寸 天地58.7cm×左右72cm
重量 約3.6kg
額縁 特製木製金泥仕上げ、アクリル付(国産、ハンドメイド)


※「彩美版」は共同印刷株式会社の登録商標です。


横山大観《霊峰飛鶴》(軸装)


横山大観《霊峰飛鶴》(額装)


<関連記事> 横山大観記念館にて

December 2, 2016

早雪の雪花 ~首都圏で54年ぶりに11月の積雪を観測~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。

 紅葉が色づき始めた奥多摩の山道から撮影した写真です。穏やかな気候で、澄んだ空気にとても癒されました。



奥多摩の紅葉


 そんな秋めく最中にもかかわらず、先週(2016年11月24日)は突如、東京都心で11月としては54年ぶりの積雪が観測されました。この季節外れの雪は「紅葉の中に雪が降る」という、首都圏ではなかなか見ることの出来ない赤・黄色と白のコントラストが美しく映えわたりました。
 そこで今回は、「雪」をテーマにご紹介いたします。

 皆さんは「雪」と聞いて、どのような雪を思い浮かべますか?住んでおられる地域や、幼少期の記憶などから「雪」と言っても様々とは思いますが、実は「雪」にはびっくりするくらい沢山の種類があることをご存知でしょうか。
 以下、その数ある中から、一部を抜粋しましたのでご覧ください。

【降る時期で変わる雪の名前】
・ 初雪(はつゆき)...夏を過ぎて初めて降る雪。
・ 早雪(そうせつ)...例年の初雪の時期より早く降る雪。
・ 初冠雪(はつかんせつ)...夏を過ぎて初めて山を白く染める雪。
・ 名残雪(なごりゆき)...春近くに冬の季節を名残惜しむように降る雪。
・ 残雪(ざんせつ)...春になっても溶けずに残っている雪。
・ 万年雪(まんねんゆき)...富士山等、標高の高い山岳地帯に1年中溶けない雪。
・ 三白(さんぱく)...正月の三が日(1月1日、2日、3日)に降る雪。

【降り方や状態で変わる雪の名前】
・ 細雪(ささめゆき)...細やかにまばらに降る雪。
・ 粉雪(こなゆき)...粉のようにさらさらとした細かい雪。
・ 粒雪(つぶゆき)...粒になっている雪。積もるのが特徴です。
・ 牡丹雪(ぼたんゆき)...雪の結晶が集まって「ぼたんの花」のように固まって降る雪。
・ 綿雪(わたゆき)...綿をちぎったような大きな雪。牡丹雪よりやや小さめ。
・ にわか雪...一時的に降ってすぐやむ雪。にわか雨の雪バージョン。
・ 風花(かざばな)...晴れているのに、風上から風に舞ってキラキラと飛んでくる雪。
・ 霰(あられ)...直径5mm未満の氷の粒。
・ 雹(ひょう)...直径5mm以上の氷の塊。あられの大きいバージョンです。

【積もり方で変わる雪の名前】
・ 新雪(しんせつ)...積もりたての雪。結晶の形がまだ残っているのが特徴。
・ しまり雪...積もって数日経って結晶が壊れ、固く締まった雪。
・ どか雪...短時間に一気に積もる雪。
・ 衾雪(ふすま雪)...一面に降り積もった雪。
・ 雪持(ゆきもち)...枝や葉に雪が積もっている様子。
・ 松の雪(まつのゆき)...松の木に積もった雪。
・ 撓雪(しおりゆき)...降り積もって木や枝をたゆませる雪。
・ 友待つ雪(ともまつゆき)...次の雪が降るまで健気に溶けないで残っている雪。

【その他、色々な雪の名前】
・ 銀世界(ぎんせかい)...雪が美しく降り積もり、辺り一面が真っ白になった様子。
・ 白雪(しらゆき、はくせつ)...真っ白で美しい雪の様子を表すことば。
・ 雪花、雪華(せっか)...雪の結晶、または雪が降る様子を花にたとえたことば。
・ 深雪(みゆき)...雪が深く積もって美しい様子。
・ 小雪(こゆき)...少しだけ降ったり積もったりする雪。
・ 瑞雪(ずいせつ)...おめでたい印とされる雪。
・ 雪明り(ゆきあかり)...積もった雪の反射で、日が落ちても薄明るくなっている状態。

 いかがでしょうか。雪は降り方や積もり方、雪の状態などによってたくさんの種類に分けて表現されていることが解ります。美しいことばの数々。同じ雪でもこれだけ多くの呼び名があるのは、四季の自然を楽しむ日本ならではの情緒なのかもしれませんね。

 年末を控え、日に日に寒さの増す今日この頃。皆さまお身体ご自愛ください。
 さいごに、先日ご逝去された日本画家・後藤純男画伯を偲び、画伯の作品より「秋の談山神社」「大和 雪のしじま」の当社彩美版を、謹んでご案内させて頂きます。

 ※ しじま:静まりかえって、物音ひとつしないこと。静寂。




彩美版®
後藤純男 《秋の談山神社 多武峰》
販売価格  240,000円+税


後藤純男「秋の談山神社 多武峰」


<仕様体裁>
原画 後藤純男美術館所蔵
監修 後藤純男美術館
解説 行定俊文(後藤純男美術館館長)
限定 500部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り、本金泥使用
用紙 版画用紙(かきた)
額縁 特製木製額金泥仕上げ、アクリル付き
画寸 36.0cm × 72.5cm(20号)
額寸 57.0cm × 93.5cm
重量 約6.1kg
証明 監修者の承認印入り証書を貼付
発行 共同印刷株式会社




彩美版®
後藤純男 《大和・雪のしじま》
販売価格  240,000円+税


後藤純男「大和・雪のしじま」


<仕様体裁>
原画 後藤純男美術館所蔵
監修 後藤純男美術館
解説 行定俊文(後藤純男美術館館長)
限定 500部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 版画用紙(モロー)
額縁 特製木製額金泥仕上げ、アクリル付き
画寸 37.0cm×73.0cm(20号)
額寸 58.0cm×94.0cm
重量 約6.2kg
証明 監修者の承認印入り証書を貼付
発行 共同印刷株式会社


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

November 25, 2016

未来を見つける祭典


 それは去る9月下旬の雨の日、買い物から戻った妻が、「そこの公園にシートで覆われた荷物の端からすっごく大きな靴が覗いていたよ。」と物珍し気に話していました。想像すると極めて奇妙な光景ですが、ああ、とピンときました。「さいたまトリエンナーレ2016」は開催前に妻の発見から幕を開けました。
 9月24日から12月11まで79日間続くアートイベントで、さいたま市が初めて取り組む国際芸術祭。現在既に終盤に入ろうとしています。ディレクター・芹沢高志氏の掲げた「未来の発見!」をテーマに市内各所で多様な文化関連プロジェクトが展開されてきました。アートプロジェクトでは、国内外で活躍するアーティスト34組が参加。内容は多岐にわたり私もすべてを体験出来ていませんが、大きくは3地域に分けられた各所の展示をぶらぶら鑑賞した一部を紹介します。



 冒頭の作品は、武蔵浦和駅~中浦和駅周辺地域にある西南さくら公園に置かれた「さいたまビジネスマン」。ラトビアの作家、アイガルス・ビクシェ氏による強化ポリウレタン製の10m近い彫刻作品です。仏陀の涅槃の像を想わせるかのように芝生に横たわり、体中に虫が這っても動じないサラリーマンの姿は悲しいような滑稽なような・・・しかし心を和ませます。

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アイガルス・ビクシェ 《さいたまビジネスマン》


 すぐ近くにある会場「旧部長公舎」は70年代に建てられたレトロモダンな邸宅。4軒それぞれでアーティストがインスタレーションを公開しています。写真家・野口里佳氏は、故郷さいたまを独自の視点で取材した映像作品の投影と展示。高田安規子+政子姉妹は縄文期にベイエリアだったこの場所の海の痕跡や絶滅危惧種の生き物の切り絵装飾で家を再生。松田正隆+遠藤幹夫+三上亮の俳優不在の演劇インスタレーションは、実際にかつて2006年まで何組もの家族が営んだ生活の記憶を、今もその時代に生活しているような室内で、物音・声などで重層的に再現。過ぎ去った日常への郷愁と共に、姿の見えない人の生々しい気配に恐怖心を覚えたのは私だけでしょうか。
 真っ白な空間に変えた邸宅内で展開される鈴木桃子氏の鉛筆ドローイングパフォーマンスは、開催前から作者が室内に緻密に描き続けてきた壮大な生命の増殖(火の鳥)が、ある時点から観客によって消されて何もない空間に帰るというプロセスをたどります。

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鈴木桃子 《アンタイトルド・ドローイング・プロジェクト》


 この地域でもう1つ外せないのは、日比野克彦氏の「種は船プロジェクトin さいたま」。日本各地を巡り人をつないできた朝顔の種の形をした船・TANeFUNeは前年にプレイベントで埼玉の川を航行。このトリエンナーレでは、金沢と横浜からやってきた「種は船」作品の2艘が、別所沼公園のワークショップに参加した人たちの手で埼玉バージョンとして塗り替えられ、公園の池に美しく浮かべられています。海のないさいたま市で「水のさいたま」の記憶を積み込んで、さて次はどこへ向かうのでしょうか。

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日比野克彦 《種は船プロジェクトinさいたま》


 与野本町駅~大宮駅周辺、岩槻駅周辺も、開催される場である建物の特色(歴史・背景)と絡めたコンセプチュアルな展示内容は深く印象的。岩槻の旧埼玉県立民俗文化センターは集中してたくさんのインスタレーション作品に出会える場で、個人的に興味深かったのは「犀の角がもう少し長ければ歴史は変わっていただろう」という川埜龍三氏の作品です。現在われわれが住んでいる世界を「さいたまA」とし、架空に存在する並行世界「さいたまB」で発見された奇妙な埴輪群とその発掘現場の様子を展示する「歴史改変SF美術作品」。中心にあるのは、犀の形をした巨大な犀型埴輪です。思わず笑顔を誘う作品で、本当にこんな世界がすぐ隣にあったら・・・という夢とロマンへの少年的憧れを刺激します。

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川埜龍三 《犀の角がもう少し長ければ歴史は変わっていただろう》


 このトリエンナーレを象徴する「息をする花」の作者、韓国のチェ・ジョンファ氏作「サイタマンダラ」は、市民が消費を通じて自動的に制作に参加してしまう作品で、芸術は物事の捉え方次第で成立することを再認識しました。ご紹介した以外でも、各作家はさいたまという地の特色を研究し、作品イメージを紡ぎだし創出しています。もちろん理解しやすい作品・しにくい作品はあるものの、各々の「未来の発見!」の解釈が垣間見えてきます。おそらく身近で体験したこのイベントに触発され、表現活動を始める未来のアーティストもいるのではと思います。3年後はどんなテーマでどんな表現が見られるか、楽しみにしています。





■さいたまトリエンナーレ2016
会期:2016年9月24日(土)~12月11日(日)[79日間]
鑑賞無料(一部の公演、上映を除く)
定休日:水曜日
主な開催エリア:与野本町駅~大宮駅周辺、武蔵浦和駅~中浦和駅周辺、岩槻駅周辺
開場時間:10:00~18:00(最終入場17:30)
主催:さいたまトリエンナーレ実行委員会
ディレクター:芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)
URL:https://saitamatriennale.jp/


November 18, 2016

秋日和、名家伝来の禅画と「つばきやま」界隈


 この秋、禅画がブームである。秋晴れの日、細川家に伝来する文化財を展示している永青文庫に仙厓義梵(せんがい ぎぼん)の禅画を見に行くことにしました。仙厓義梵は江戸時代後期の臨済宗の僧侶で、ユーモアある禅画を描いている。



 東京は文京区。近くに流れるのは神田川であるが、江戸川橋という駅で下車する。既にお昼時、まずは食事をしてから展覧会に臨むことにする。神楽坂方面に向かって上る坂が大きく曲がり始める手前に「マティーニバーガー」はある。こちらはニューヨーク生まれで、デザインの仕事をされていたオーナーが経営しているハンバーガーショップ。ニューヨークではマティーニを片手にハンバーガーを食べるとのことだが本当であろうか。お店に並んでいるマティーニグラスはどう見てもダブルの量、ちょっとランチで飲むというには困難である。ハンバーガーの種類はアメリカの地名にちなんでいる。ベーコン、オニオン、バーベキューソスのウェストサイドをオーダー。只管打座でじっと待つこと、出てきた料理はベーコンがカリッとして、ビーフ100%のパテはジューシーでとても美味しくボリュームもある。
 お店の雰囲気も、オーナーも感じがとても良いお店です。

「マティーニバーガー」のカウンターの後には、ウォッカの瓶がアーティステックに飾られている。
「マティーニバーガー」のカウンターの後には、ウォッカの瓶がアーティステックに飾られている。



 さてお腹もくちくなったので、いざ永青文庫へ。永青文庫は椿山荘がある小高い台地の上にある。明治の時代、軍人・政治家の山縣有朋(やまがた ありとも)が「つばきやま」と呼ばれていたこの一帯を買い取り、邸宅として「椿山荘」と名付けた。今ではホテル椿山荘東京として生まれ変わっている緑豊かな斜面と神田川の間を通り、急峻な胸突坂を上る。坂の右側には、かつて松尾芭蕉が住んでいた関口芭蕉庵がある。上りきった左手の鬱蒼と茂った木々の奥に瀟酒な白い洋館が見える。ここが永青文庫である。文武両道にすぐれた細川家に伝来する歴史資料や美術品を保存、展示している。建物は4階から2階が展示スペースとなっており、「平成28年度秋冬季展 仙厓ワールド」(~2017年1月29日まで開催中:期間中展示替えあり)では、4階は仙厓の掛軸など、3階は仙厓の茶碗やアジアの器など、2階では明、清時代の文房四方(筆、墨、硯、紙)などが展示されており、仙厓の素朴な表現や墨の文化をテーマにしている。

庭から永青文庫の玄関を望む
庭から「永青文庫」の玄関を望む。

 仙厓の禅画は一切衆生を極楽往生へと誘ってくれるありがたい絵かと思いきや、まるで無垢な子供の描いた絵のようである。大猫と、目を回した不思議な生物が描かれている「竜虎図」を見た衝撃は、もう「え〜!」なのである。正しく「ゆるキャラ」のようなユニークさがある。仙厓の絵に臨む際は、古伊賀水指 銘「破袋(やぶれぶくろ)」を愛でるかのように、歪みをも楽しむ数寄者の心持ちが肝要であるか。解説で賛の訳や絵の内容をわかり易く説明しているので、親切でありがたい。仙厓は難解な公案(禅問答)をわかり易く庶民に伝えるために、楽しいタッチで禅画を描いたのかもしれない。公案は会社の会議でも使える。「指月布袋図」(布袋さんが月を指さしている図)の意味するといわれていること(月=悟り、指=教典、悟りは教典の教えの遥か遠くにある。)を元に、「計画数字そのものを追うのではなく、その先にあるのが本当の目標です。皆さんで業務に励みましょう。」なんて訓示してみようかしら。



 永青文庫を後に、講談社野間記念館との細い道を抜け、椿山荘の正門へ出る。その向かいには、特徴的な容姿と大きさ(金属製の巨大な鳥が、大きな翼を広げて地上に降り立った姿?)で知られている「カトリック東京カテドラル関口教会」がそびえている。カテドラルとはカテドラ(司教座)のある教会のことで、関口はこの辺りの地名である。この教会は有名な建築家の丹下健三が設計し、1964年に落成した。建物の壁面は垂直に近い角度で空から落ち込み、美しいカーブを描いている。外壁はステンレス張りになっており、陽光にまぶしくキラキラと輝いている。美しい建築に見惚れているうちに秋の日はつるべ落としに黄昏れて来た。関口台地の坂を下って元来た江戸川橋駅へと向かう。本日はお腹も目も心も満たされ、心願成就と相成り、すばらしい一期一会に感謝し帰路についたのでありました。


November 11, 2016

雲上の世界へ


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。


 先日、中央アルプスの千畳敷へ行ってきました。中央高速道路を走り、長野県駒ヶ根ICを降りて約10分、菅の台バスセンターが見えてきます。これより先、一般車両は通行禁止となっており、路線バスに乗り換えます。蛇行する山道をゆっくりと進み、徐々に標高が上がっていくと木々が紅葉に彩られてきます。そんな景色に見とれているうちに、「しらび平駅」に到着です。ここから日本一高い駅「千畳敷駅」まで、駒ヶ岳ロープウェイで一気に標高1,000m近く上がります。すると、そこはもう標高2,600m、雲上の世界。森林限界を超え、高い木は生えていません。そしてこの駅を出ると待っていたのは、眼前に広がる大迫力の岩の壁。氷河が山肌を削り取りできた千畳敷カールの眺めは圧倒的で、荒々しい岩山に抱かれているような感覚に陥ります。特に紅葉の時期は日本でも屈指の美しさと言われています。残念ながら、訪れた10月末頃の山の上は冬支度に入っていましたが、それでも晴天で最高の景色を満喫することができました。眼下に広がる雲海を見下ろしながら飲むコーヒーは大変美味でした。


日の出(宝剣岳山頂より)
日の出(宝剣岳山頂より)


 翌朝は日の出に合わせ、宝剣岳(2,931m)頂上を目指しました。明け方の頂上付近は、この時期としては少し暖かいかなと思いつつも、岩肌は凍っており慎重に歩みを進めます。頂上まで辿りつくと、他の登山客はおらず山頂からの眺めを独り占めすることができました。岩の影で風を避けながら少し待っていると、連なる南アルプスの向こう側から太陽がゆっくり昇ってきました。周りの山々が光で徐々に赤く染まり、富士山もはっきり確認できて、なんとも神秘的な光景です。西側には中央アルプスの主稜線がどこまでも見えて、その先に日本百名山のひとつ空木岳(うつぎだけ)を望むことができました。思わず一歩を踏み出しそうになりましたが、今回はそのまま千畳敷へと下山しました。


空木岳
空木岳(2,864m)


千畳敷カール
千畳敷カール 


 「千畳敷」は高山植物の宝庫としても知られており、小一時間で周遊できる遊歩道も整備されています。駒ヶ岳ロープェイは通年営業をしていますので、四季折々の大自然を気軽に楽しむことができます。
 かつてはアルピニストのみに許された雲上の別世界へ、足を運んでみませんか。

November 4, 2016

四季を感じる


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 秋の気配から急に寒さが厳しくなって参りました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 寒くなると一層並木や林や森や野山が色づき赤や黄色と紅葉し始め、を私たちの目を楽しませてくれます。

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 先日、福島県の裏磐梯五色沼周辺の散策し、秋の景色を楽しみながらハイキングをしました。踏みしめる足元の枯葉の音、遠く聴こえる鳥の囀り、冷たく澄んだ空気の匂い、小さな渓流の水の冷たさ、目に映る青い沼と紅葉と、季節を感じ楽しみました。

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 紅葉を楽しむ「紅葉狩り」の文化は平安時代にはじまったそうです。身近に感じられる秋を和歌や俳句、紅葉を手にして美人画や風景画として残し、秋を楽しむ知恵を私たちは古来から引き継いでいるのでしょう。日本の四季が素晴らしく感じられる今日この頃です。

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【商品紹介】


彩美版®
奥田元宋 《秋渓淙々》 特別版
販売価格 120,000円+税


奥田元宋《秋渓淙々》特別版

<仕様体裁>

監修 奥田小由女(人形作家、日展理事長、日本芸術院会員)
原画 水野美術館所蔵(長野県長野市)
限定 500部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 版画用紙
額縁 木製金泥仕上げ、アクリル付
画寸 天地26.5cm×左右60.5cm
額寸 天地40.0cm×左右74.0cm
重量 約2.5kg
証明 著作権者承認印を奥付に押捺
発行 共同印刷株式会社




彩美版®
奥田元宋 《秋耀白雪》
販売価格 180,000円+税


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<仕様体裁>

監修 奥田小由女(人形作家、日展理事長、日本芸術院会員)
原画 ホテル賀茂川荘所蔵(広島県竹原市)
限定 300部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 版画用紙(モロー)
額縁 特製木製額金銀泥仕上げ(国産、ハンドメイド)
画寸 38cm×53cm
額寸 53cm×68.5cm
重量 約3.3kg
証明 著作権者承認印を奥付に押捺
発行 共同印刷株式会社


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

October 28, 2016

山種美術館「速水御舟の全貌」展


 山種美術館で開催中の展覧会『速水御舟の全貌』ブロガー内覧会に参加して参りました。

 近代日本画の巨匠、横山大観や下村観山などに激賞され、若くして日本美術院の同人となり、数々の素晴らしい作品を世に送り出して40歳でその短い生涯を閉じた天才、速水御舟。

 山種美術館は近代日本画では初めて重要文化財に指定された《名樹散椿》や《炎舞》をはじめ速水御舟作品の充実したコレクションでも知られており、今回の展覧会は美術館開館50周年を記念して、山種美術館所蔵の御舟作品をはじめ、公立美術館からも名作を一堂に揃えた、まとまって御舟作品を見ることができる素晴らしい機会です。


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 展覧会は、入ってすぐの《鍋島の皿に柘榴》(1921年)から始まり、群青と不思議な構図に引き込まれる《洛北修学院村》(1918年)、御舟が若いころに描いた《萌芽》(1912年)、墨画なのにまるで色彩があるかのように感じられる《木蓮(春園麗華)》(1926年)、昭和モダンな《花の傍》(1932年)など、目を見張る作品の連続ですが、私の一枚は《名樹散椿》です。


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《名樹散椿(めいじゅちりつばき)》 1929年 紙本金地・彩色 山種美術館所蔵


 通常は霞などの表現に部分的に用いるという砂子を全面に蒔いた「蒔きつぶし」による背景は、制作するのにかなりの手間と費用を要する技法だそうですが、その分金泥や箔押しとは違う鈍い独特の輝きがあり、それがボリュームのある椿の樹と相まってとても美しい作品でした。ぐにゃりと曲がった椿の枝はデフォルメしているのかと思われましたが、実際にこのようなものがあったそうです。


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金色の表現比較。左から金箔、金泥、撒きつぶしの技法による。
御舟はこれらの金を作品によって使い分けている。


 こうした徹底した制作姿勢や、執拗なまでの写実主義、緊張感ある作風、その時々である方向性を極めようと集中して作品を制作している様子から、神経質そう...と勝手なイメージを持っていた速水御舟ですが、実は家族や友人を大事にし、おちゃめなところも持ち合わせた人物だったということが伺えるエピソードを聞き、意外だったのと同時に親近感が湧いてきました。

 山崎館長が「一人の画家の展覧会とは思えないですよね」とお話しされたとおり、展覧会を通してみると、短期間に御舟の作風が様々に変化しているのがよくわかります。でもその一方で、根底に流れる何か「御舟らしさ」のようなものが、どの時代でも変わることなくあるように感じられ、それゆえ決して違う人が描いたとは思えない印象が残り、御舟の多彩さが際立つ展覧会でした。


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《炎舞》 1925年 絹本・彩色 山種美術館所蔵


 山種美術館のカフェでは展覧会の会期中、作品をモチーフにした和菓子を頂くことができます。
 《花の傍(かたわら)》をイメージしたストライプの綺麗なもの、《翆苔緑芝(すいたいりょくし)》をイメージした紫陽花と兎など、どれも綺麗で迷ってしまいましたが、私は《炎舞》をイメージしたお菓子を頂戴し、美味しく、美しいお菓子に目でも舌でも芸術を味わいました。


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黒い懐紙に炎を表現したオレンジが美しい《炎舞》をイメージしたお菓子。
食べるのがもったいない。


 後期の後半には御舟最大の問題作であった《京の舞妓》や《菊花図》が展示されるので、また観に足を運びたいと思います。




※ 掲載画像はブロガー内覧会において特別に許可をいただき撮影したものです。




【展覧会情報】

開館50周年記念特別展 「速水御舟の全貌」

2016年10月8日(土)~12月4日(日)
前期:10月8日~11月6日、後期:11月8日~12月4日
山種美術館
東京都渋谷区広尾3-12-36
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2016/gyoshu.html


October 21, 2016

藤牧義夫とモダン都市東京


 藤牧義夫をご存じだろうか。

 群馬県館林市出身の天才的版画家藤牧義夫(1911~1935失踪)の活動期間は、昭和初期のわずか数年に過ぎない。明確な記録が残っているのは昭和6年(1931)から10年(1935)までの5年間、この短い期間に藤牧は精力的かつ濃密な創作活動を行い、同時代の創作版画関係者の注目を集めた。藤牧は新進の商業デザイナーとして活躍する傍ら、昭和7年(1932)、小野忠重(版画家、版画史研究者/1909~1990)らの呼びかけで生まれた新版画集団に参加し同集団の発行する版画誌や展覧会を主な作品発表の場として活動した。新版画集団のメンバー中最も若年であったが、すぐに頭角を現し抜きんでた存在となり、昭和8年(1933)の第14回帝展(帝国美術院美術展覧会・東京府美術館)で《給油所》が入選し一段と注目を集める。当時版画雑誌『白と黒』を出版していた料治熊太(号「朝鳴」/1899~1982)も藤牧を高く評価していた一人である。藤牧また創作版画の創生期から活躍する恩地孝四郎、平塚運一や彼らに続く世代である畦地梅太郎ら一流作家とも親交があった。

 活動のピークに突如失踪という悲劇的な結末が訪れる。昭和10年9月2日、雨の降る夜を最後に彼の姿を見たものはない。弱冠24歳の若者であった。
 戦後長く忘れられた存在であった藤牧が再び注目されるようになったのは、銀座の画廊「かんらん舎」を主宰する大谷芳久氏が開いた遺作展(昭和52年/1978)が切っ掛けである。作品は小野忠重の協力で集められた。遺作展の準備過程で未発表の白描絵巻3巻の存在も明らかになった。この時展示された版画作品の主だったものは東京国立近代美術館が一括購入し、白描絵巻3巻(《絵巻隅田川》2巻、《申孝園》1巻)は東京都現代美術館が購入することになる。

 藤牧が活躍した時代は、関東大震災により破壊された東京が、いわゆる「帝都復興事業」によりモダン都市として再生された時代と重なっている。
 大正12年(1923)9月1日に発生した地震とその直後の大火災で東京は徹底的に破壊され、江戸の面影を色濃く残していた古い東京は壊滅した。山本権兵衛首相は直ちに「帝都復興」事業に着手、帝都復興院が設置された。総裁は内務大臣後藤新平、後藤の推薦で東京市長に就任し復興事業を推進したのは、満鉄総裁、鉄道院総裁を歴任した中村是公(よしこと)である。中村は夏目漱石の親友としても知られる。

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 後藤がまとめた復興計画の主だったものとしては、放射状と環状を組み合わせた近代的道路網の整備(靖国通りや明治通りなど)、耐震性と不燃性を備えた鉄の橋(清洲橋や永代橋など)や小学校(中央区泰明小学校や台東区小島小学校など)の建設、緑地を備えた大規模公園(墨田公園、浜町公園、錦糸公園)の整備などが挙げられる。公の事業と並行して民間でも次々と新しい大規模建築が建設された。

 この時期の建築はその後の戦火をくぐり抜け意外なほどの数が現存している。例えば国会議事堂、上野の東京国立博物館、国立科学博物館、日本橋の三越、髙島屋、日比谷公会堂、銀座和光、教文館など枚挙に暇がない。

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 ちなみに、小石川の当社ビル群や小石川植物園本館もまさにこの時代に建設されたものであり、また当社前から春日通りへと上がる播磨坂(さくら並木)は、後藤の都市計画に基づき建設された環状道路(環状3号)の名残である。

 藤牧は鉄とコンクリートとガラスによる新たなランドマークが続々と誕生する躍動的新生都市・東京の今をわくわくとした気持ちで描き続けた。少し長くなるが藤牧の言葉を紹介する。
(原文旧字旧仮名は新字新仮名に変更)

 「都会風景―その姿は複雑であり、単純であり、或は壮大に、或は明快に、或は力強く、或は速力をもって、われわれに迫ってくる、それはつねにより高く、より能率的に動いて居る。そして、われわれがスケッチブックを持って歩くとき、これらのすべては自分のものだ。
 われわれはモット、モットこの美しさを見つめなければならない。その無限に新鮮な形態を思ふままに賛美し、且つこの近代的な都市美を形成するところの鉄を感じ、コンクリートの皮膚を感じ、更にギラギラと輝くガラスをながめて、その立体美にくい入るのだ。今われわれはこの近代的都市美を版画によって、最も適切に、ハッキリと表現することの出来るのを何よりも大きな悦びとする。」

(1933年9月1日、『総合美術研究』5、「木版画実習[都会風景]」より)


 2020年に開催される東京オリンピックにむけて都内各地で新たな建築工事が急増している。前回の東京オリンピック(1964)の舞台、神宮外苑の国立競技場はあっさりと破壊されてしまった。昭和初期に建設されたモダン都市東京のランドマークもこれから多数が破壊され、新たな建物に置き換わっていくのだろう。

 《白描絵巻(絵巻隅田川)》(白鬚橋から西村勝三像周辺まで)の冒頭に、藤牧は以下の文章を記している。
 「未来すみだ川 橋の発達によりて川の面は何十年後遂に覆はれ昔日のおもかげを偲ふ事不可能になるにや、余写生中この予感あり、幸いにいまだ橋少なし精出して写生を勉むべしとす 昭和九年十月下旬考 義夫」
 藤牧は、鉄、コンクリート、ガラスといった最新の材料と優れたデザインにより構成される近代都市美に感動するとともに、近代都市のランドスケイプが常に流動的で変化が速いこともよく理解していた。藤牧の作品には疾走するようなスピード感が感じられる。日々の感動をダイレクトに画面に描写するため、絵筆を使うように彫刻刀を自在に駆使して版画を描き続けた。

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 藤牧を記念する碑が、故郷館林にある。藤牧が最注目されるきかっけを作った大谷氏による遺作展の売上の一部を原資として昭和53年(1978)、藤牧が好んで訪れた城沼(じょうぬま)の畔に建てられたものだ。黒い御影石に藤牧の版画《冬の城沼》をもとにしたブロンズのプレートがはめ込まれ、その下に藤牧の、熱き情熱が迸る言葉が刻まれている。


 
「時代に生きよ 時代を超えよ」

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【参考文献】
・『季刊 すみだがわ』'80第7号から'81第10号 隅田川クラブ(1980年12月~1981年9月)
・『別冊太陽』No.54 SUMMER '86 平凡社(1986年6月)[洲之内徹「藤牧義夫 隅田川絵巻]
・大谷芳久著『藤牧義夫 眞僞』 学藝書院(2010年11月)
・駒村重吉著『君は隅田川に消えたのか―藤牧義夫と版画の虚実』 講談社(2011年5月)
・『生誕100年 藤牧義夫』群馬県立館林美術館・神奈川県立近代美術館編 求龍堂(2011年7月)




【付記】(2016.10.24改稿)

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藤牧義夫《鉄の橋》の取材地について

 《鉄の橋》は、昭和8年(1933)9月発行の『新版画』第10号(新版画集団)に貼りこまれた作品だが、同年8月に発刊された『総合美術体系』第3号に写真版で掲載の版画《橋梁》の原版の一部に手を入れて摺られたものと考えられている。《橋梁》は黒一色で摺られた作品だが、《鉄の橋》は画面の上部に空色の手彩色1色が加えられている。簡潔で力強いモノクロームの版に鮮やかな空色の手彩が美しいコントラストを見せ、強い印象を与える傑作である。
 力強い鉄の橋を、疾走するオートバイが渡ろうとしている。その緊迫したスピード感も作品の魅力のひとつである。余談だが、国産初の量産オートバイ、宮田製作所のアサヒAA号が登場したのは本作と同じ昭和8年(1933)だそうだ。当時約4万台が販売されてという。藤牧は時代の花形である航空機のファンであり、また作品中にしばしば自動車が登場する。オートバイも当時とすれば時代の先端的存在であったろうから、力強く疾走するオートバイに藤牧が魅かれたとしても不思議はない。
 藤牧は《橋梁》の制作意図について以下のように語っている。
 「これは鉄の橋梁がもつ力強さに美を感じ、その美を強調するために出来るだけ簡素な線で鉄の強さを頭におきながら、最後まで同じ気持ちで彫ったものだ。道路もスケッチした時は工事中で、大変汚れていたが、そのままをスケッチ通りに彫った。用具(刀)は三角ノミでグイグイと押して行き、画面全部の構成が済んでから簡単に丸ノミで浚った。」
(1933年9月1日、『総合美術研究』5、「木版画実習[都会風景]」より)

 取材地については、私の調べた範囲では今のところ明確に特定されてはいないようだ。(最新の研究成果により特定されている可能性はある。)
 藤牧の版画作品中恐らく最高傑作と思われる《赤陽》(東京国立近代美術館)は前述の大谷氏の調査により上野松坂屋の屋上から湯島方面を眺めた風景であることが判明している。また大作《白描絵巻》4巻も大谷氏らの克明な調査で詳細が明らかになっている。
 現場に幾度も足を運び、他の藤牧作品や昭和初期の写真資料等に照らし合わせるなどの独自調査の結果、《鉄の橋》(《橋梁》)の取材地は、江東区佐賀の松永橋付近である可能性がでてきた。考察を簡略に付記する。



 取材地を特定する際の手がかりとなるのは主に以下の5点だろう。


 ① 中央に描かれた鉄の橋の構造的特徴。
 ② トラスの左右に歩道が設置されている。
 ③ 向こう岸の右奥に高く巨大な煙突2本と高い建築が描かれている。
 ④ 向こう岸の左右に倉庫のような切妻平屋の建物が並んでいる。
 ⑤ 左側の建物群の奥に煙突が2本描かれている。


橋の構造は、専門的には「1径間鋼製トラス橋」というもののようだ。
江東区内に多数現存する「震災復興橋梁」はいずれも鋼鉄製のトラス橋だが、ほとんどは左右のトラスが鋼鉄の横桁で結合された構造である。
この横桁が省かれたトラス橋は少なくとも三つ建造されたことが判明している。その内二つ(緑橋、平久橋)は現存し一つ(松永橋)は平成11年(1999)に新たな橋に架け換えられている。




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◇平久橋 昭和2年(1927)竣工(現存)
場所:江東区牡丹三丁目~木場一丁目間(平久川)
構造:1径間鋼製トラス橋
江東区牡丹と江東区木場を結ぶ橋。
①と②の条件は一致している。
③は木場側には藤倉電線(現フジクラ)の巨大な深川工場と富士アイスの深川工場があった。
藤倉電線の工場敷地は概ね現在深川ギャザリアがある場所にあたる。工場には当時高い煙突があったが写真で見る限りその本数や配置、周囲の建物の外観等は版画と一致しないようだ。
富士アイスの外観や正確な場所については調査中。
④、⑤に関連する情報としては、木場側の袂に江東区立平久小学校がある。平久小学校は昭和3年(1928)平久尋常小学校として現在地に開校している。




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◇緑橋 昭和4年(1929)竣工(現)
場所:江東区佐賀一丁目~福住一丁目間(大島川西支川)
構造:1径間鋼製トラス橋
江東区福住の首都高9号深川線の福住ランプの横にある。歩道とトラスの位置関係は作品と一致しない。鉄鋼のトラスが道路と歩道の双方を挟む構造になっている。
首都高9号線は、油堀川(運河)を埋め立てて造られたものであるから、藤牧の時代には緑橋のすぐ横、上流側に油堀川があった。③の高い煙突を持つ建物の存在は確認されていない。④、⑤も同様。




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◇松永橋 昭和4年(1929)竣工(平成11年(1999)架替)
場所:江東区佐賀二丁目~福住二丁目間(大島川西支川)
構造:1径間鋼製トラス橋⇒1径間鋼製ガーター橋
緑橋のすぐ上流、仙台堀と大島川西支川が交差する場所のあたりにある。
残念なことに平成11年に架け替えられ、藤牧の時代とは構造・外観が変わっている。
①以前の橋は写真で確認したところ、平久橋とほぼ同じ外観であり、作品と一致していると言える。②の条件も満たしている。

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③佐賀側の右奥に、仙台堀を挟んで浅野セメントの巨大な工場があった。両者の距離は200mほど。
浅野セメントの工場は、藤牧が好んで描いたモチーフのひとつであり、《鉄の橋》(《橋梁》)の右奥に描かれた高い建物と外観が良く似ている。高い煙突の配置も一致しているように思う。

④佐賀側の左右は三井倉庫の敷地である。
写真資料により少なくとも戦後間もなくから2000年代初頭まで切妻平屋の倉庫が多数立ち並んでいたことが確認されている。戦前の状況は確認できていないので追加調査が必要。

⑤松永橋は隅田川の河畔と200mほどしか離れていない。松永橋から向こう岸の箱崎の建物が間近に見える。藤牧の《白描絵巻 試作》(浜町公園から相生橋まで)には箱崎(現中央区)の風景が精密に描写され、多数の倉庫や煙突が描かれている。だが、煙突と手前の建物を比較すると箱崎の煙突にしては大きすぎるかもしれない。推測になるが三井倉庫(当時の名称は東神倉庫か)に煙突があったかもしれない。さらなる検証が必要である。

以上、④⑤は追加検証が必要だが、ひとまず松永橋付近が取材地である可能性がある。




松永橋にほど近い浅野セメントと清洲橋は藤牧が好んで描いたモチーフである。松永橋は清洲橋に対し、浅野セメントを挟んでほぼ対角の位置にある。追加調査は必要だが、《鉄の橋》あるいは《橋梁》の取材地が松永橋付近である可能性は十分あると言えよう。

October 14, 2016

秋・上野の森でゴッホの傑作と出会う


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。清涼の秋気が身にしみる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
 今回は上野で開催中の東京都美術館「ゴッホとゴーギャン展」と、上野の森美術館「デトロイト美術館展」をご紹介いたします。
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 「ゴッホとゴーギャン展」はゴッホ(1853~1890)とゴーギャン(1848~1903)が友情を結び合い1888年の10月に南仏アルルで共同生活を始めるも、結局生い立ちも作風も大きく異なる二人は仲違いし、ゴッホの「耳切り事件」で終わりを迎えた史実にスポットを当てて企画された展覧会です。
 現実の世界から着想を得て力強い筆触と鮮やかな色彩で作品を生み出すゴッホ。目に見えない世界を装飾的な線と色面で表現するゴーギャン。二人の偉大な芸術家の誕生と出会いから、アルルでの破局、その後も続いた交流と影響を60点余りの作品を通じて振り返ります。これまであるようでなかったゴッホ、ゴーギャンの関係性に焦点を当てた展覧会は、二人の偉大な巨匠の作品と芸術を改めて知るとても貴重な機会といえるでしょう。
 わたくしは中でもゴッホの自他ともに認める最高傑作のひとつ《収穫》に深く心を動かされました。南仏の麦畑を主題にした調和の取れた風景はゴッホの心の一時の平穏が投影された興味深い作品です。
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 一方「デトロイト美術館展」は、1885年の美術館創立以来、同時代の画家の作品を積極的に収蔵し造り上げた近代絵画コレクションの中から、印象派、ポスト印象派、20世紀美術の選りすぐりの名品を紹介する美術展です。モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、マティス、ピカソ等のこれぞ名画と呼ぶべき作品が集結し、心ゆくまで芳醇な美の世界に浸れます。
 中でも本展覧会のメインビジュアルにもなったゴッホの《自画像》に注目です。ゴッホが残した数ある《自画像》の中でも、1887年に制作された本作は、印象派や日本の版画に強く影響を受けた作風で、画家が自らの魂の激しさを描き上げ、人間の魂のもっとも根源的なものにまで到達しえた正に奇跡の名画です。

 芸術の秋の到来を迎え、皆さまもぜひ上野の森に足をお運びになり、豊かな美の世界をご堪能ください。



【展覧会情報】

●ゴッホとゴーギャン展
会場 東京都美術館
会期 2016年10月8日(土)から12月18日(日)まで
    ※休室日=月曜日
時間 9:30~17:30
※毎週金曜他、20時まで(詳しくは美術展公式HPをご覧下さい)


●デトロイト美術館展
会場 上野の森美術館
会期 2016年10月7日(金)から2017年1月21日(土)まで
    ※休館日=10月21日(金)のみ
時間 9:30~16:30
※毎週金曜と10月22日(土)は20時まで


October 7, 2016

秋、食べる芸術『お菓子調進所 一幸庵』を訪ねて


いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。
季節は秋です。
朝方少しひんやりすると、ふかふかの落葉に包まれたくなる東山魁夷の《行く秋》を思い起こします。
しかし、秋はなにより味覚を楽しみたい!
そこで共同印刷、手土産利用頻度ナンバーワン「栗ふくませ」を販売する和菓子店、弊社からは播磨坂を上ったところ小石川5丁目にあります『お菓子調進所 一幸庵』さんをご紹介したいと思います。


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こちらの風情ある外観「一幸庵」さん店舗は、茗荷谷駅からは徒歩5分。
名物はわらびもち、栗蒸し羊羹など顔となる名品を多々生みだし、夕方に寄ると売り切れてしまっていることも珍しくない人気沸騰中の老舗和菓子店です。
店主・水上力(みずかみちから)さんはロサンゼルスの美術館でのワークショップ、講演会など技術の継承にも精力的にご活躍され、今年のバレンタインデーにはテレビ番組でも番組史上初の和菓子職人として特集されるなど、世界を舞台に脚光をあびる稀有な存在でいらっしゃいます。
先日お忙しい中にも関わらず、一幸庵店主・水上力さんにお会いすることができましたのでその感動をお伝えいたします!


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水上力氏は昭和23年、戦前より名高い和菓子職人の家に生まれます。
自身の道を進むと決意し大学卒業後には京都と名古屋で修業を積み1977年に一幸庵を創業されました。
以来、繊細で芸術的な和菓子をつくり続け辿りついたのが、「お茶のうまさを引き立てる和菓子」だといいます。
特に日本の季節を四季のみならず、日本古来の節「七十二候(しちじゅうにこう)」という細分化された暦をコンセプトに72の季節の情景を表現した和菓子は前代未聞、うっとりするような芸術品です。


それを目で味わうことができるブランドブック、『IKKOAN』も今大変話題になっております。
こちらは水上氏のお菓子に魅せられた方々がクラウドファンディングにより資金を集め、日本の和菓子を世界に発信するため作られた、これまた大変美しい本なのです。(2016年グッドデザイン賞受賞)
去る今年の造本装幀コンクールにも出品されておりました。お茶の美味を引き立てる水上氏のお菓子そのもののように主張しすぎない紙の質感、和菓子のフォルムを思い起こさせるかわいくて現代的なタイトルロゴには本当に見入ってしまいました。


このように和菓子の世界で芸術的な表現をされている水上氏に質問させて頂いたのは、
「目で見ているだけでも満たされる美しい和菓子ばかり。グローバルな視点をもち日本人にとって大切な和菓子の存在を世界へ発信されている水上氏は、日々どのような物事からインスピレーションを得て和菓子づくりに反映されていらっしゃいますか?また休日は何をされていますか?」
ということ。

その問いに水上氏は、
「たまに駅前のスーパーに買い物に行ったり、予約が取れたら食事にでかけたり。休みの日は半径5メートルでの生活。身近な四季の変化、例えば桜や紅葉、つゆ草など自然の細かい変化に気付くなど感性は常に養うようにしています」とのこと。
しかしある時期には積極的にさまざまなカルチャーから刺激を受けていたとのお話。
「青山や銀座のブティックのショーウィンンドーをみては色使いを勉強したり」
「一番ショックを受けたのは、パリでフォション本店に行った時。ワンダーランドだと思った、独特な色使いを和菓子に取り入れられないか、と思ったね」とのこと。
40代で世界を見ていたら今日本にはいなかったかもしれない、とも。


『IKKOAN』七十二候のうち六十九候に「雉始雊(きじはじめてなく)」という和菓子がありますが、それについての興味深い裏話も教えて頂きました。
「サモトラケのニケ(勝利の女神ニーケーの彫像)、ナイキのロゴ、社名の由来にもなっている彫像をルーブル美術館でみたことが印象に残っていてこんなデザインが出来上がった」とのお話。
「雉始雊(きじはじめてなく)」は、白一面の雪景色に一声鳴いて降り立った雉により雪に彩りが加わる情景が見たてられた繊細かつ鮮やかな和菓子。
雉は強い発色でシャープな流線型、はかなくもあり斬新で格好良いのです。写真でお見せできないのが残念ですが、そのセンスには脱帽です。
「和菓子の世界は制約が無く何をやってもいいからね」とのこと。色々お伺いしていくとやはり絵画や版画もお好きだとのこと、水上氏の感性やインスピレーションにはやはり半径5メートル以上のものが詰まっているようです。


また、文化的レベルの高い世界各国のパティシエから称賛をうけ、教えを請われている水上氏ですが、
「日本文化は明治維新以降、欧米への劣等感など引きずっているものもあるがグローバルになろうと思えばなれる。ただしこちらは草食、相手は肉食だから最低限の知識をもってきちんと日本文化を理論武装していかないと」とおっしゃいます。
「日本人は五感で食べるし、腹八分目の文化。お腹一杯にならなくてもその分誰かに分けてあげられるんだよ」とのお話。
またバレンタインにはもっと和菓子を贈る人が増えて欲しい、と。「古来日本人は毎日歌を詠んで贈っていたのだから...」
水上氏だからこそ語ることができるグローバルな視点には改めて日本文化の魅力をひしひしと感じさせられます。


そしてやはり、職人でいらしゃいます。
栗の下処理をしている水上氏、動きはとても早く大量の栗をあっという間にさばいていきます。
素早い動作、刃が入る瞬間だけ別のリズムになります。
失礼ながら手先が震えているのかと思ったほど。ではなくほんの一瞬あまりにも柔らかく繊細なタッチに変化するのでした。
その感性やお味にはもちろんですが、何より手さばきに驚嘆させられました。


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皆様も是非お近くに寄られた際は、食欲の秋、食べる芸術を楽しんでみてください!!


一幸庵(いっこうあん)
東京都文京区小石川5-3-15
※営団地下鉄丸の内線:茗荷谷駅より徒歩5分
Tel: 03-5684-6591

一幸庵ブランドブック『IKKOAN』

September 30, 2016

鈴木其一展を観る


 東京六本木のサントリー美術館で開催中の「鈴木其一(すずききいつ)」展に行ってまいりました。鈴木其一の画業を紹介する大規模な展覧会ですが、私の一枚は、やはり展覧会のメインビジュアルにもなっている「朝顔図屏風」です。

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 琳派様式を江戸で再興した師・酒井抱一の亡き後、独自の画風を確立していった其一が完成させた《朝顔図屏風》は、金地に流れるように絡まり合う緑の蔦と、鮮やかな朝顔の色彩が目を惹くと同時に、その大きさ、ボリュームも印象的で、デザイン性が高く切れ味鋭い其一の表現は、独創的でまさに「COOL!」という感想でした。

 雑誌『和楽』10・11月号の琳派特集では、「かつて忘れられた存在であったのが、その独創的な作品から注目を集め、近年改めて人気を得た作家」・伊藤若冲と比較し、その存在、技術の高さから「ポスト若冲の一番手」としての鈴木其一を紹介しています。
 展覧会訪問日は平日でしたが、混雑と言ってよいほどの来場者に鈴木其一の注目の度合いを感じ、たしかに「これから其一がくるかもしれない...」という気配を感じさせる展覧会でした。

 10月5日からの後期展示では、《夏秋渓流図屏風》や《風神雷神図襖》などが展示されます。
 私も、もう一度観に行こうかと思っています。


★ 「鈴木其一展」、作者の遊び心と色彩感覚が印象的な「描表装(かきびょうそう)」の展示コーナーに出品されている「歳首の図」は当社彩美版®で販売しております!


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彩美版®
鈴木其一 《歳首の図(さいしゅのず)》
販売価格 90,000円+税


<仕様体裁>
原画 細見美術館(京都)所蔵
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 描表装
軸寸 天地175.3×左右47cm
箱  柾目桐箱、タトウ入り
証明 原画所蔵者の検印入り証紙を桐箱に貼付
発行 共同印刷株式会社
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

September 23, 2016

アメリカの休日

 
 秋の風情がなかなか顔を見せない残暑厳しい9月初旬、少し気分を変えてみようと、近年話題のジョンソンタウンを初めて訪れてみました。

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 場所は埼玉県入間市。国道463号をひたすら西へ走ると、彩の森入間公園の向かいに白い木造の建物群が現れました。青い看板にJOHNSON TOWNの文字。そして星条旗がなびいています。敷地に入っていくと、三角屋根に横張りの板壁、そしてポーチがついたアメリカの家屋そのものが立ち並んでいます。ノスタルジックなアメリカ映画や古き良き時代を描いたアート作品などで目にした家々の現物が目の前にあり、違うとわかっていても異国の空間に迷い込み、その空気を吸っているような錯覚を覚えます。カフェや手作り雑貨等たくさん並ぶお店がそのイメージを倍加させ、ディスプレイされた商品やレトロな看板が明るい楽しさ、愛らしさを訴えかけてきます。家と家の間に高い塀のない開放的な空間。そうでありながら静かに暮らす人々の日常が保たれているとのこと。

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 約2.5haに60棟ものアメリカ風建築が並ぶこの地区は、国土交通省主催の平成27年度都市景観大賞の都市景観部門で大賞を受賞しました。1945年、戦後GHQが入間基地にあった陸軍航空士官学校を接収してジョンソン基地とし、朝鮮戦争勃発時には民間にも米軍ハウスをつくるよう要請。たくさんのハウスが建てられたものの、基地返還後は老朽化・荒廃化しました。しかし民間会社により「進駐軍ハウス」は改修・保全され、それを模した新たな「平成ハウス」も設計・建築され、インフラ・植樹整備、コミュニティ支援等多岐にわたり地区の再生・活性化が図られました。アメリカ風の自由で文化的な空気に惹かれ生活する家族で活気に満ちた風土が培われ、文化遺産としても見直されているということです。

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 時間がたつのも忘れてゆるゆる散策。港町でもリゾート地でもない埼玉県の何気ない場所に目いっぱい「本物」の異国の風情が?という感覚的ギャップにわくわくするインパクトを受けた日でした。変わり映えのしない日常風景に飽きたとき、是非また気軽に行けるアメリカで休日を過ごしたいと思いました。


 
■ジョンソンタウン

埼玉県入間市東町1-6-12   
TEL 04-2962-4450(ジョンソンタウン管理事務所)
店舗のみ見学可

September 16, 2016

坐ることを拒否する椅子に拒否された話


 東京の青山、表参道には美術書が豊富な青山ブックセンターや、ワタリウム美術館のショップなどがある。また美術館やギャラリーもある。昨日まで続いた雨模様も今日は久方ぶりに晴れたので、青山、表参道の散策を楽しむことにした。

 先ずは表参道の路地を入った所にある「岡本太郎記念館」から始める。ここは芸術家、岡本太郎が自宅兼アトリエとして暮らしていた場所である。門を入ってすぐ横に、カフェ「a Piece of Cake」があるので人心地を付くことにする。注文したパンケーキセットは、メープルシロップ、大きめのバター、ジャム、そしてたっぷりのホイップクリームが添えられている。大きく開放的なガラス窓からは、庭の眺めが良い。ふと建物の上の方を見ると、「太陽の塔」が2階のバルコニーから庭を覗いている。

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パンケーキにはa Piece of Cakeの焼き印

 記念館の扉にある足裏の形の把手をつかんで中に入と、館内には岡本太郎の等身大の人形や、さまざまな立体、平面作品が展示されている。美術館に来たというよりは、太郎さんの家に遊びに来たという感覚である。制作に使用したアトリエが残されていて、巨大なキャンバスがいくつも棚にしまわれている。イーゼルに立てかけられた作品や、机に並べられた絵筆を見ていると、今でも岡本太郎の息づかいを感じるよう。2階の企画展「岡本太郎の沖縄」(~2016年10月30日まで)では、岡本太郎が返還前の沖縄を撮影した写真が展示されている。

 こちらの記念館の小さな庭はとても居心地がよい。うっそうと植物が茂った庭には、精霊のような不思議な作品が点在している。そして小さな広場には「坐ることを拒否する椅子」が並べてある。この椅子は座面が丸く凸型になっており、そこに目や口が凸凹と付いているので、とても落ち着いて坐れない。この椅子が坐ることを拒否することに、断固拒否して無理無理坐ってみた。立ち上がってみると、お尻が濡れている。昨日降った雨が、座面の窪みに溜まっていたようである。美術館の作品というものは、黙っておとなしく鑑賞者に見られて居るモノであるが、岡本太郎が生み出したアート達は違う。彼らも何かを仕掛けて来るから油断がならない。いい年をした大人が濡れたお尻を抱えたままでは、青山、表参道をうろつくこともままならない。始めたばかりであるが、ほうほうの体で帰途についた。



September 9, 2016

山から海へ~鎌倉アルプス


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。

 先日、アルプスを登ってきました。と言っても、標高3,000mを超える日本アルプスではく、鎌倉アルプスへ行ってきました。鎌倉にアルプス?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、都内近郊の日帰りハイキングコースとして人気で、雑誌などで取りあげられることも多いのです。

 スタートは北鎌倉駅より徒歩約15分「建長寺」となります。「建長寺」は北条時頼が創建したお寺で、鎌倉五山第一位と日本では最も古い禅寺です。見所が多いお寺ではありますが、今回は境内を足早に突き進むことにします。すると、人気も無くなり半増坊への参道が現れます。ここから始まる、急な階段を一気に登りきると見晴台に到着です。(写真1)

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写真1 建長寺 半僧坊への参道


 見晴台からは、先ほどいた建長寺が小さく見えます。奥には鎌倉の街並みと、さらに相模湾が見渡せます。こうして眺めると、鎌倉の街が三方を山に囲まれ、さらに前方は海という特徴的な地形を確認することができます。まさに天然の要害です。源頼朝が鎌倉に幕府を開いた理由が分かります。(写真2)

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写真2 見晴台からの眺望


 この見晴台を抜けると、いよいよ本格的な山道が始まります。結構な急斜面や岩場もありますので、基本的には登山靴で臨みたい所です。足元に気をつけながら、しばらく進んでいくと鎌倉アルプスの最高峰、標高159mの太平山山頂に辿り着きます。

 ハイキングコースのゴールは瑞泉寺となっていましたが、余力があったので、このまま八幡宮を抜けて由比ヶ浜まで向かうことにしました。八幡宮前から伸びる若宮大路は、改修されてから初めて歩きます。(写真3)

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写真3 若宮大路


 由比ヶ浜に到着して海水に触れると、山の上から海まで歩いてきたという達成感に浸ることができました。山から海へ鎌倉を縦走する今回のコース。思いのほかハードですが、自然と鎌倉の街並みを存分に楽しむことのできる贅沢なコースです。動きやすい格好で出かけてみてはいかがでしょうか。


September 2, 2016

残暑お見舞い申し上げます


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 9月に入りましたがまだまだ残暑が厳しい日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。天候に左右され体調を崩しがちな陽気ですが、どうかお体をご自愛くださいませ。

 暑さで寝苦しかった夜が、ここのところ朝晩と少し冷え込み始め、鈴虫でしょうか虫の鳴き声を耳にします。蝉の鳴き声から秋の気配を感じる今日この頃でございます。

 今回は、秋の情緒が感じられる彩美版®をご紹介いたします。





彩美版®
酒井抱一 《月に兎》
販売価格 90,000円+税


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<仕様体裁>
原画 松岡美術館所蔵
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
証明 原画所蔵者検印入り証書を貼付
画寸 天地80cm×左右35cm
軸寸 天地172.9cm×左右51cm
表装 三段表装
箱  柾目桐箱、タトウ付
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




【今日の谷根千+上野界隈】

上野公園の東京都美術館では「再興第101回再興院展」東京展が開催中です。


再興第101回日本美術院展(再興院展

■会期:2016年9月1日(木)~9月16日(金)
■時間:9:30~17:30(入場は16:30まで)
    ※最終日16日の入場は13:30まで、閉会は14:30
■休館:9月5日(月)
■料金:一般900円(700円)※( )内は団体料金(10名以上)
    70歳以上の方700円
    学生以下・障害者手帳をお持ちの方と付添(1名) 無料


August 26, 2016

海が見えるレトロな電車「江ノ電」


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。気付けば8月も下旬。夜には虫の鳴き声も聴こえてきて、秋の気配が近づいてきました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。残暑お見舞い申し上げます。

 さて、私は先日、テレビや映画でもお馴染みの鎌倉レトロ電車「江ノ島電鉄」に乗ってきました。地元民に限らず多くの観光客にも愛されている通称"江ノ電"は、1902年(明治35年)に開業。鎌倉駅から藤沢駅までの10キロを結ぶ(約34分)、車内から美しい海や自然の景色を眺めることのできるレトロな電車です。

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 写真は、私が「鎌倉高校前駅」で途中下車したときに撮影したものです。ちょうど夕暮れ時で、「江ノ電が走る踏切」、「穏やかに波打つ海辺」、「江の島の夕陽」をとても綺麗に撮影することができました。

 ローカル鉄道にもかかわらず、年間乗客は1,700万人にも達するとのこと。また江ノ電の駅のうち「極楽寺駅」と「鎌倉高校前駅」は『関東の駅100選』にも選定されています。その情景の美しさはもちろん、電車に揺られ"非日常を感じさせてくれる優しいひと時"が、人々を惹き付けてやまない江ノ電の魅力なのだと感じました。

 暑い夏が過ぎゆく今日この頃、きっと皆さまの心身も少しお疲れなのではと思います。そんなときは都会の喧騒を離れ、何も考えず江ノ電の心地よさに身を委ね、心癒されてみてはいかがでしょうか。


August 19, 2016

始まりの秋を探して


 いわゆる月遅れのお盆の時期(8月13日~16日)には、多くの方が夏休みを取り、帰省や家族旅行に出かけられたことでしょう。現代の感覚ですと8月は夏のイメージだと思いますが、日本古来の伝統に従えば、秋の始まる季節です。実際、二十四節季の「立秋」が8月7日(2016年の場合)ですから8月は概ね秋と言って過言ないでしょう。お盆(盂蘭盆会うらぼんえ)にしても伝統的には秋の行事とされ、俳句では秋を表わす季語とされています。そうであれば、「夏休み」と言い慣わされたお盆のお休みは、本来「秋休み」というべきなのかもしれません。

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 閑話休題。季節が巡るこの時期、訪れたばかりの秋の気配を探して田園の細道を辿る自転車の小旅行に出かけてきました。照りつける太陽の光の、身を焦がすような熱さを嫌い、しばらく足が遠のいていましたが、久しぶりに走る谷津(やつ)沿いの小路は、通い慣れているはずなのに新鮮な魅力に溢れていました。

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 谷津とは、北総地方に広く見られる台地に挟まれた細長い低湿地の地形で、江戸期まで存在した広大な内海のなごりです。古くから開墾され主に稲田(谷津田)として用いられています。谷津のほぼ中央付近には小川が流れ、台地と谷津の境目を地形に沿って曲がりくねる古道(谷津路)が走っています。谷津路沿いの台地側には点々と農村集落があり、集落の境目あたりには古い石の野仏が祭られています。いずれの仏様も今なお大切に御守りされていることが一目でわかります。

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 小川の土手など谷津田の周辺には葛や蘆、荻、野アザミなどの秋草が繁茂し、沢山のシオカラトンボが飛び回っていました。それはまるで、酒井抱一(1761~1829)が描いた《秋草図》を彷彿とさせる光景でした。

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 この日は雲間から青空が少し覗くといった曇り勝ちの天候で真夏に比べれば暑さも和らぎ、過ごしやすい一日でした。走りながら仰ぎ見れば、秋らしい巻雲が翩翻と空に浮かび、谷津田の上を数羽の白鷺が悠然と飛翔していました。重く頭を垂れて豊かに実った黄金色の稲穂は、今更ながら「豊穣の秋」という言葉を思い起こさせてくれました。お盆明けには稲刈りが行われるそうです。帰り道、農家の庭先で見つけたのは栗の木。まだ青いけれど大きな毬(いが)がたわわに実っていました。

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 秋が更に深まれば、小川沿いの谷津路は無数の昆虫たちに覆われます。それはあたかも虫たちの謝肉祭の如く、生命の最後の焔を輝かせ踊り続けるのです。その頃には、小川に沿って繁茂する荻の美しい銀色の穂波が風にそよぎ、はるか彼方まで続く光景が見られることでしょう。

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彩美版®、限定200部
上村松園 《初秋》 軸装・額装
販売価格(各)120,000円+税


<仕様体裁>
原画 古川美術館(名古屋)所蔵
監修 上村 淳之(日本画家・日本芸術院会員)
解説 古川美術館 学芸課
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 特殊絹本
限定 200部
証明 監修者承認印・限定番号入り証書を貼付
発行 共同印刷株式会社




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■額装仕様
額装 特注木製額金泥仕上げ、しぐれ袖織りマット、アクリル付き
画寸 縦43.5cm×横53.0cm
額寸 縦63.0cm×横72.5cm
重量 約4.5kg



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shoen_shoshu_kiribox.jpg■軸装仕様
箱書 上村松園(シルクスクリーン印刷)
表装 三段表装
材料 天地:利休茶色無地
   中廻:浅葱鼠色地流水文緞子
   風帯・一文字:白茶色地唐花唐草文金襴
   軸先:新牙
   箱:柾目桐箱、タトウ付き
画寸 縦43.5cm×横53.0cm 
軸寸 縦139.0cm×横72.2cm






【監修 上村淳之(うえむらあつし)】

1933年上村松篁の子として京都に生まれる。
松園を祖母に親子三代続いての画業に進む。
現在、日本芸術院会員。京都市立芸術大学名誉教授。
上村家三代の作品を展示する松伯美術館の館長も務める。
2013年には文化功労者として顕彰された。



【古川美術館のご紹介】

 古川美術館は、初代館長古川為三郎が長年にわたって収集し大切にしてきた美術品を、「私蔵することなく広く皆様に楽しんでいただきたい」という想いからその寄付を受け、平成3年11月に開館しました。
 所蔵品は2,800点にのぼり、美人画、花鳥画などの近代日本画を中心として、油彩画、陶磁器、工芸品、また西洋中世の彩飾写本など、多岐にわたります。現在は所蔵品を中心とした企画展示を行うとともに、美術講演会やワークショップなど、幅広い活動をしています。
 また、分館として初代館長が愛した数寄屋建築の居宅を、平成7年より公開、様々な企画を開催しています。

名古屋市千種区池下町2丁目50番地
ホームページ:http://www.furukawa-museum.or.jp/
お問い合わせ:052-763-1991


※古川美術館についてはこちらの過去記事もご参照ください。
なお記事中でご紹介した企画展は、既に終了しております。開催中及び今後開催の展覧会につきましては美術館のホームページにてご確認くだるようお願い申し上げます。


夏の出張、西から北へ美術館めぐり(2015年7月24日)
古川美術館vol.1 「大観・玉堂・龍子 三巨匠展」(2007年11月28日)
古川美術館vol.2 「茶の湯 インテリアデザイナー内田繁の世界」(2007年11月30日)
古川美術館vol.3 "おもてなしの心"(2007年12月3日)


August 5, 2016

九州で「東山魁夷展」を見る


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。8月に入り暑さも佳境に入りました、連日の30度超えで、筆者も体調管理に四苦八苦しております。皆さまはいかがお過ごしでしょうか。熱中症にも十分お気をつけ下さい。

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 さて私は先日、福岡太宰府にある九州国立博物館で「東山魁夷 自然と人、そして町」展を鑑賞してまいりました。会場に着いて先ず何よりも驚いたのは博物館のユニークな形状。波打つ屋根に総ガラス貼りの先鋭的なデザインです。真横から見ると鳥の頭のようなところが入口になっており、中に入るとそこは吹き抜けの心地よいアトリウム空間となっております。圧倒されました。見事です。設計は福岡県久留米市出身の菊竹清訓(1928-2011)。黒川紀章らとメタボリズムを先導したモダニズムの建築家です。今はなき上野不忍池ほとりの奇想のホテル(ホテルCOSIMA)の設計者といえば、東京にお住まいの方で思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。それは樅の木の形状の高層ホテルで当時流行りのガンダムを思わせる斬新すぎる建造物でした・・・

 閑話休題。2012年の北海道・宮城県巡回展以来の大レトロスペクティブと位置付けられる本展覧会は、東山魁夷(1908-1999)の画業の変遷を代表作でたどるとともに、東山芸術の頂点を示す大作「唐招提寺御影堂障壁画全68面」を特別展示するという必見の展覧会です。制作に10年を要したという画伯入魂の唐招提寺の障壁画は、ほぼ70メートルにも及ぶという長大なものであり、唐招提寺の開祖、鑑真和上の苦難の足跡になぞらえ中国や日本の壮大な自然を、抒情と幻想を内に秘めた静謐な風景として見事に描き切っています。地元奈良でも一年に数日間しか公開されないという記念碑的な作品群を、間近に鑑賞できるのはまことに貴重な機会といえましょう。国民的画家と謳われた東山魁夷の名作がずらりと並ぶ充実の展覧会には九州だけでも15万人の来場者が見込まれているとのこと。真夏の暑い盛りではありますが、皆さまも東山芸術の神髄に触れこころ豊かな気分に浸ってみてはいかがでしょうか。

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 そして実は共同印刷が制作した東山作品の複製絵画が地元福岡の弊社代理店の協力の下、会場出口で販売されております。展覧会メイン・ビジュアルの「緑響く」や「行く秋」「静映」などの彩美版®プレミアム作品が出口右横の販売スペースに飾られ、東山芸術の感動を胸にした大勢のお客様にお立ち寄りいただいております。弊社の彩美版®プレミアムは東山魁夷の美しい風景をさらに魅力的に鑑賞していただける新感覚の美術工芸技法です。ご興味のある方は展覧会場に足をお運びの際、是非ご覧になってみて下さい。



【特別展「東山魁夷 自然と人、そして町」】

会場 九州国立博物館
   福岡県太宰府市石坂4-7-2
会期 2016年8月28日(日)まで。月曜休館(祝日を除く)
時間 9:30~17:00
※巡回展:2016年9月17日(土)-10月30日(日) 広島県立美術館






【弊社新作のご案内】

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東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《 行く秋 》

販売価格 500,000円+税
限定350部発行



<仕様体裁>
監修 東山すみ
解説 松本 猛(長野県信濃美術館 東山魁夷館前館長)
原画 長野県信濃美術館 東山魁夷館所蔵
技法 彩美版®プレミアム
額縁 特注銀泥木製額プラチナカラー ハンドメイド浮き出し加工
画寸 天地45.9×左右65.2㎝(15号)
額寸 天地63.9×左右83.2×厚さ3.7㎝
重量 約5.3㎏
発行 共同印刷株式会社
※作品についてのお問い合わせ:共同印刷(株)アート&カルチャー部 TEL.03-381-2290


July 29, 2016

「『尋常小学算術』と多田北烏」を読んで


 いつも美術趣味をご覧頂きありがとうございます。

 手前みそですが、印刷愛がわいた本をご紹介いたします。

 今回、タイトルにあります本「『尋常小学算術』と多田北烏-学びはじめの算数教科書のデザイン-(発行:風間書房2014年2月)」にて、昭和の美しい教科書と多田北烏ついて知り、印刷というひとつの表現技法にとても愛着がわいてしまいました!

 多田北烏(ただ ほくう)は、資料が少ないゆえにあまり情報を知られていない存在ではありますが、美術出版の先駆者として昭和に活躍した美術家でした。
 北烏がデザイナーでありアートディレクターを務めた教科書、「尋常小学算術」は、1935年から1940年(昭和10年から昭和15年)にかけて使われた
低学年向けの初めての児童用教科書で国語に続いて初めてカラー印刷されたものだそうです。

 とにかくこちらの美しい画像をご覧ください。

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(画像4点 巻頭のカラー資料より転載)


 画像にある通り、とても教科書とは思えないほど情緒的なのです。

 なぜこのように美しいのか。

 弟子の風間四郎の言葉によると(当時の共同印刷の製版者)
 「印刷で効果が上がる原画、印刷しやすい原画」を目指したからだということです。

「挿絵画家として著名になっても、なおタブロー画家として認められようと、苦悶した画家も多かった。北烏が個人所有となるタブローよりも、庶民の生活を彩る美術、労働者との共同意識を重視したのは、当時としては特異な態度であったが、その原点となる背景は後述することにする。」(p.92より抜粋)

 とあるように、北烏は、単なる原画作家ではなく、印刷方法の原理を理解し、方法を指示したり、画家と印刷技術者との共同の芸術としてとらえていたという事でした。
 印刷で表現しきれないものは初めから描かなかった、ということです。
 まるで浮世絵版画の絵師のようです。
 戦前、デザイナーにとって印刷はまさしく表現だったことがうかがえる内容でした。

 また北烏の芸術観は現代美術の範囲に及んでいます。
 「元来私は従来の絵の具のみが絵画の永久な表現形式では決してない、将来吾々の感度がいよいよ高まり益々複雑になって来ると、更に更に変った形式が発明され、要求されて来ると思いますが、そうした場合の一形式として、此の物で描くという方法が盛んになるかと思うのです。
 例えば音で描く、光で描く、物で描く、これはまだ少し漠然としていますが空間に描く、或いは言葉で描く、或いはこれ等のものを綜合して描く、というようなものです。」(p.94より抜粋)

 この時代、北烏が語っている芸術論にも感銘を受けました!



<出典>

『尋常小学算術』と多田北烏
-学びはじめの算数教科書のデザイン-

著者: 上垣渉、阿部紀子 著
発行: 風間書房(2014/02/20)
定価: 本体7,000円+税
ISBN: 978-4-7599-2020-8


※本稿中の引用・転載につきましては、著者様と発行元様の御許可をいただいております。
謝して御礼申し上げます。


July 25, 2016

神楽坂界隈で川合玉堂を思う


 こんにちは。なかなか梅雨の明けない関東ですが、暑い夏はもうすぐですね。
 今週末は神楽坂のお祭りです。今年は7月27日から二日間がほおずき市、29日からの二日間が阿波踊りの日程で、毘沙門天を中心に一年のうちでも大変賑やかな数日間を迎えます。


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 ちょっと散歩に出かければ、あちこちでお祭りの準備をしており、こちらもウキウキした気分になってきます。


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 さてそんな神楽坂界隈は、かつて矢来町(やらいちょう)といえば鏑木清方 、若宮町(わかみやちょう)といえば川合玉堂のことを指し、他にも新小川町は藤田嗣治誕生の地であったりと、近代日本画の巨匠たちにもゆかりの地であったりします。
 川合玉堂は自然の中に暮らす人々の生活を数多く描き、個人的には晩年の住まいもあった奥多摩の人、というイメージが強いのですが、実は東京・牛込若宮町(現在の新宿区若宮町)に画業70年のおよそ半分以上となる40年余りも暮らしていました。
 周囲は、歌舞伎の中村吉衛門をはじめ由緒ある家が並ぶ屋敷町だったそうですが、この界隈は現在でも、賑わう神楽坂にほど近いところにありながら、大変静かな高級住宅地となっています。
 長流閣と呼ばれた玉堂邸は、東京大空襲で焼失してしまいましたが、とても立派なお屋敷だったようで、《行く春》や《紅白梅》、《彩雨》などの名作もここで描かれたのかと思うと、もし残っていれば...と残念です。

 日本画家ゆかりの神楽坂界隈、この週末はお祭りと散策にお出かけされてはいかがでしょうか。



彩美版®
川合玉堂 《三保富嶽之図》 軸装・額装
販売価格(各) 90,000円+税

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<仕様体裁>
 技 法 彩美版®
 用 紙 特製絹本
 監修及び原画所蔵 玉堂美術館
 証 明 監修者検印入り証紙を貼付
 解 説 小澤萬里子(玉堂美術館館長)
【額装】
 額 縁 赤松材使用特製木製額(国産、ハンドメイド)
 画 寸 天地28.2×左右45.2cm
 額 寸 天地44.1×左右69cm
 重 量 約2.2kg
 付属品 黄布袋、吊紐
【軸装】
 表 装 三段表装(国産、ハンドメイド)
 画 寸 天地28.4×左右45.3cm
 軸 寸 天地117.9×左右64.6cm
 収 納 柾目桐箱、タトウ入り

July 15, 2016

ひとときの造形美


 5月にご紹介したさきたま古墳公園に続き、7月の梅雨の晴れ間に、同じ行田市の「古代蓮の里」を訪れました。

 日曜日の朝8時前に着いたのですが、公園の通常駐車場はいっぱいで、隣の臨時駐車場に案内されました。園内に入ると、極めて静かなのに既にたくさんの人々がカメラを手に集まっています。私自身初めて見る、ピンクの蓮の花が一面に咲き誇る壮観な蓮池でした。蓮の開花時間は午前6時頃からで、7時~9時頃が満開だそうです。いずれの花も大きく美しい彩りで端正な姿を誇示していました。

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 ただ、よく見ると、つぼみの状態もあれば、散りかけている花もあります。大して蓮に関心を持っていなかった私は、古代蓮会館の展示を観覧して初めて蓮の花の命が4日間であると知りました。何日目の花なのかによって、開花の状態が変わっているということでした。自然が作るひとときの美。そして連綿とつながっていく命のサイクル。殊に行田蓮と呼ばれる古代蓮は、原始的な形態をもつ1400~3000年前の蓮と言われ、偶然現代に蘇り命を宿し続けています。

 思いがけず蓮に魅了されたのですが、真にここを訪れた目的は、先ほどの古代蓮会館の展望台に上がることです。そこへ上がるにも整理券が配られ、1時間ほど館内を観て待ちました。ようやくエレベーターに乗り展望台へ到着。人々は一角を見下ろして皆感嘆の声をあげています。昨年ギネスに登録された世界一大きい田んぼアートの2016年版が見ごろを迎えたのです。

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 水田をキャンバスに、様々な種類の稲を絵具として、巨大なドラゴンが目を惹く絵柄が描かれていました。今年30周年を迎える人気ゲームシリーズ「ドラゴンクエスト」がテーマで、「勇者・ドラゴン・スライム」それに「古代蓮」を加えたオリジナルデザインとなっています。色彩はまだこれから濃くなっていくそうですが、前年の写真に比べ、鮮やかな黄色が一層目立ち、カラフルな印象を受けます。

 田植えは一般体験・ボランティア合わせ延べ約1500人が参加し、6月に2日間で行われたとのこと。館内に展示されている、細かい升目に緻密に引かれた作画のラインとおびただしい数のポイントの設計図を見ると頭が痛くなりそうでした。

 地上で見ると色の模様はわかるものの、具象性は認識できません。結構な重労働だったのではと、ますます作業の苦労と疲労に感情移入してしまいました。しかし計算通り絵柄が現れた時の喜びは、作業した皆さんにとって極上のものなのでしょう。

 田んぼアートの見ごろは7月中旬~10月中旬(色彩のピークは7月中旬~8月中旬)です。こちらも限られた命の造形。自然とのコラボレーションによるひとときのアートです。ぼんやりと万物の無常を意識した暑い一日でした。



【古代蓮の里】

住所 埼玉県行田市小針2375番地1
電話 048-559-0770

○公園は年間終日開園・休業日なし
○古代蓮会館
営業時間:通常期 9時~16時30分
     6月下旬~8月上旬 7時~16時30分
休業日: 通常期 月曜日(祝日は営業)、
     祝日の翌日(土・日曜日の場合は営業)
     6月下旬~8月上旬 なし
入場料: 大人(高校生以上) 個人400円(団体320円)
     子供(小・中学生) 個人200円(団体160円)


July 8, 2016

都心の最高峰から坂を上り下りして、トレンディーな街で日本の美を再発見した事。


 東京23区の最高峰(自然の地形で)愛宕山。その高さは約26m。その頂上にある愛宕神社は、徳川家康公の命により防火の神様として祀られたのがはじまりという。愛宕神社へは、大鳥居をくぐった先の激坂「出世の石段」を上る。江戸の昔、三代将軍徳川家光公が愛宕山の源平の梅を見て、「誰か馬に乗ってあの梅を取ってこい!」というむちゃな命令に、曲垣平九郎(まがき・へいくろう)なる家臣が、見事に馬で石段を上り下りして梅を献上したという。今も昔も上司の無理な命令に応えた部下が出世の階段を上るのは、世の常か...。

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愛宕山の「出世の石段(男坂)」は降りる方が怖い。


 この愛宕山を上り越して桜田通りへ出から、更に江戸見坂なる激坂を上る。坂が大きく曲がる所に「菊池寛実記念 智美術館(きくち・かんじつきねん ともびじゅつかん)」がある。こちらは実業家の菊池寛実のご息女で、現代陶芸コレクターの菊池智のコレクションを母体とした現代陶芸の美術館である。展示会場へはガラスの手摺り(ガラス作家・横山尚人制作)が美しい螺旋階段を下りて地下へ行く。現在開催中の展覧会は「秋山 陽 アルケーの海へ」(7月24日まで開催中 ※アルケーとは原初、根源の意味)。

 秋山陽(あきやま・よう)は現代陶芸の最先端を走り続けている作家。その陶芸作品は、土に潜む生命力引き出したような有機的な怪しさと、圧倒的な存在感がある。何か太古の生物の化石ではないかと見まがう作品は、いわゆる陶芸とはまるで思えない。また展示会場の演出もすばらしく、鑑賞者は太古の海底に眠る作品達の間を漂うに巡る。会場の積極的な演出姿勢には、美術館の陶芸作品に向ける熱い想いを感じる。美術館の1階にはフレンチ・レストラン「ヴォワ・ラクテ」(フランス語で天の川の意味)がある。瑞々しい緑の庭を見ながらいただくランチは見た目も美しい。ホタテのポワレのランチをいただく。場所柄かお客さんも上品で、自分一人浮いているか...。

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レストランの庭は緑が鮮やか。


 美術館を出て大倉集古館(2019年まで改修工事中)の脇の坂を上がって六本木一丁目駅方面へ向かう。駅の手前、旧住友麻布別邸の跡地には「泉屋博古館分館(せんおくはくこかん ぶんかん)」が建っている。こちらは住友家第15代当主で、数寄者としても知られている住友吉左衛門友純(ともいと)(号春翠)が蒐集した美術品を中心に所蔵している京都「泉屋博古館」の分館。「泉屋(いずみや)」は江戸時代の住友家の屋号である。現在開催中の、バロン住友の美的生活「数寄者住友春翠--和の美を愉しむ」(8月5日まで開催中)は、住友家の当主が集めた東洋美術の逸品が展示されている。屏風、絵巻、茶道具、陶磁器など住友当主自らの美意識で集めた品々が見られる。
 
 港区のこの辺りは外国の方も多くトレンディースポットが集まる街であるが、日本の美にも目を向けて見たら、さらにこの街を楽しむ事が出来た。



July 1, 2016

名もなき池


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。先日岐阜県関市にある「根道神社」の、とある池まで行ってきました。最近まで特に観光名所では無かったらしいですが、ここ数年インターネットやメディアを通じて少しずつ話題となっている場所です。反響を受けて関市のホームページにも、「名もなき池」として観光案内が掲載されています。



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 さて、何が話題かというと神社入り口にある池が、まるで印象派画家クロード・モネの代表作《睡蓮》に似ていると評判なのです。そのことで「名もなき池」から通称「モネの池」として大変注目されているのです。山間の道を川沿いに走り現地へ着いてみれば、長閑な景色の中に唐突に人だかりが見えて、すぐに場所は確認できました。池を囲むように人の輪が出来ていました。



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 池の透明度は抜群で、山からの湧水により青く透き通っていて、水草や池の底まではっきりと見えます。透明度が高いのは湧水の元となっている山体が流紋岩類で構成されており、水に養分を含まず微生物が育たないことが原因のようです。太陽の光が水面に反射してキラキラ輝いている下を、色鮮やかな鯉たちが、まるで宙に浮いているかの如く、悠々と泳いでいます。



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 池自体はそんなに大きくはないのですが、立ち位置、目線の確度によって、色合いが変わり違う表情を見せてくれます。まさに動くモネの絵が目の前に現れたかのようで、いつまで眺めていても飽きることはありませんでした。



【根道神社(ねみちじんじゃ)】

所在地  岐阜県関市板取下根道上448
アクセス  白谷観音前バス停から徒歩4分






 モネの「睡蓮」連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈された記念碑的な作品であり、平和を象徴する歴史的価値ある大作です。パリのオランジュリー美術館はこの「睡蓮」連作大装飾画のために創設され、≪印象派の殿堂≫と呼ばれています。
 《睡蓮、水のエチュード-雲》は、睡蓮と朝焼けの水面に映える雲の情景が、微妙なニュアンスに富む青、緑、紫、白、赤などが入り交る、モネならではの彩りの世界で描かれた作品です。本作品は第一室に飾られた「雲」の全画面より作品のハイライト部を、フランス国立美術館連合・グランパレ(RMN‐GP)の画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。

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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom


彩美版®
クロード・モネ 《睡蓮、水のエチュード-雲》
限定 200部
価格 128,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
画寸 28.3×91㎝
額寸 38.2×100.8cm
重量 3.3kg
額縁 特製木製デコレーション金箔額
原画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監修・解説 千足 伸行(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)
発行 共同印刷株式会社

June 24, 2016

緑と水が豊かな上田市を訪れて


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 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。

 すっきりしない天気が続きますが、梅雨の晴れ間に遠く澄み渡る青い空が見え少し強い日差しを浴びると、これから本格的な夏が到来するんだなと感じられるこの頃です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 先日、長野県上田市に寄る機会がありました。上田市は長野県の東部に位置し、北は上信越高原国立公園の菅平高原、南は八ケ岳中信高原国定公園に指定されている美ヶ原高原などの2,000メートル級の緑溢れる山々に囲まれ、里山と清らかな水の流れる川に育まれた自然豊かなところです。豊かな自然環境に加え全国的にも稀な少雨地帯であることを生かし農業・商業・工業が盛んな地域です。

 私が見学させていただいた工房では昔ながらの技法で掛軸や屏風、襖など修復していました。中でも柿渋を使い襖に刷毛で塗り込んで補強・修繕する作業を通し、「こういった仕事に携れて幸せです」と職人方の気持ちがとても心に響きました。

 長野県上田市の名城・上田城は真田信繁(幸村)の父、真田昌幸によって築城され徳川軍を二度にわたり撃退した難攻不落の城としてよく知られています。上田城は盆地の高台に位置する広大な敷地に、見事な石垣で地盤を築き上げています。今は敷地内に城跡と櫓などが残っていますが、石垣の様子から立派な城だったのだろうと伺えます。

 散策をしていると上田城の石垣の周辺は、紫陽花が見ごろを迎えていました。


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さて今回は、当社彩美版®ラインナップの中から紫陽花を題材にした作品をご紹介します。



彩美版®
中村岳陵 《八仙花》
販売価格 120,000円+税


梅雨の合間でしょうか、静かに咲く額紫陽花の横で麦藁とんぼが羽を休めています。静謐な世界を澄んだ色彩で描き、画家の凛とした画風が窺えます。

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<仕様体裁>
原画 華鴒大塚美術館所蔵
解説 谷岡 清(美術評論家)
技法 彩美版®
画寸 天地42.6cm×左右52.6cm
額寸 天地60.7cm×左右70.8cm
重量 約3.6kg
用紙 特製絹本
額縁 特製木製額、アクリル付(国産、ハンドメイド)

※ この作品は軸装もございます。
※ 「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


June 17, 2016

梅雨の晴れ間に~北鎌倉・明月院(紫陽花寺)より


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。

 梅雨。一年のうちほんの数週間、雨が滴り、草木や花が命の盛りを迎える季節です。私は6月の晴れた日、北鎌倉にある『明月院』へアジサイ散策に行って参りました。

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 明月院は通称「アジサイ寺」とも称され、濃い青色に染まるヒメアジサイは「明月院ブルー」と親しまれています。6月の今まさに境内に咲き誇る約3,000株のヒメアジサイは見ごろを迎えており、一目見ようと訪れた多くの参拝客で賑わっていました。

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 アジサイの語源については諸説ありますが、「藍色が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」が変化したものという説が有力で、青い小花が集まって咲くことからこの名が付けられたとされています。また、花色は開花から日を経るにつれ徐々に変化する性質から「七変化」や「八仙花」とも呼ばれています。

 皆さまのすぐそばにも紫陽花は咲いています。鮮やかな色彩にしっとりと目を向け、美しく情緒溢れる梅雨の恵みを楽しんでみてはいかがでしょうか。





■福源山明月院のご紹介

所在地  〒247-0062 神奈川県鎌倉市山ノ内189
拝観時間 9:00~16:00(6月のみ8:30~17:00まで)
拝観料  300円 ※但し、6月は高校生以上500円、小中学生:300円
無休  
アクセス 北鎌倉駅より徒歩約9分、鎌倉駅より徒歩約29分、

June 10, 2016

小説家と挿絵画家

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泉鏡花「草迷宮」の舞台、三浦半島の長者ヶ崎と秋谷の海岸

 歌集に用いられた華やかな料紙や《源氏物語絵巻》などの美しい絵巻に見るように、装幀や挿絵への強い拘りは日本文学の古くからの伝統であろう。出版文化が花開いた江戸期においては浮世絵師が挿画や装幀を手掛け、文学と絵画は極めて緊密な繋がりを保っていた。
 明治に入ってもこの伝統は受け継がれ、当初は浮世絵師の流れを汲む日本画家がこうした役割を担っていた。明治中期に黒田清輝(くろだせいき1866~1924)らの活躍で西洋画の人気が高まると、洋画家が小説や雑誌、新聞等の出版物の装幀を手掛ける例が増加してきた。小説家のなかには装幀に拘る者も少なくなかったから、この時代の小説の装幀は今では考えられないほど贅をこらし華やかに装飾されたものが多い。例えば明治28年(1895年)に創刊された博文館の『文芸倶楽部』は大衆向け文芸雑誌であったが、毎号木版や石版(リトグラフ)による美しい口絵が添えられていた。

 博文館編輯局の一員として『文芸倶楽部』誌上に作品を発表し、一躍新進作家として広く知られるようになったのが、泉鏡花(いずみきょうか1873~1939)である。
 泉鏡花は近世以来、独特の芸術文化が栄えた金沢の出身で、父親が加賀象嵌(ぞうがん)の彫金師、母親が加賀藩お抱えの能楽師の家柄という芸術的血筋を色濃く受け継いだ。尾崎紅葉(おざきこうよう1868~1903)に憧れ弟子入りし、小説家としての道を歩み始めた。明治28年(1895年)から明治30年(1897)にかけて、紅葉を中心とした文学者集団である硯友社(けんゆうしゃ)と深いつながりのあった博文館(当社の前身は博文館印刷工場)の書籍編輯に携わるとともに、同年発刊された同社の文芸雑誌『文芸倶楽部』誌上に作品を発表、「外科室」が評論家に絶賛され一躍新進作家として注目を集めることになった。

 この『文芸倶楽部』創刊号の口絵は浮世絵師の流れを汲む日本画の水野年方(みずのとしかた1866~1908)が描いたものであるが、年方の弟子としてその挿絵の仕事を継承したのが、後に美人画の大家として画壇に重きをなした鏑木清方(かぶらききよかた1878~1972)である。清方は東京神田の生まれ、父條野採菊(じょうのさいぎく1832~1902)は戯作者でジャーナリストを兼ね、東京日日新聞(現・毎日新聞)創立者の一人。鏑木は母方の姓。清方は、父の勧めで13歳で年方に入門したが、当時年方は、父採菊が創刊した『やまと新聞』の挿絵を手掛けていた。清方は入門数年後には、師の仕事を引き継ぎ、新聞、雑誌等の挿絵画家として活動を始めた。特に『文芸倶楽部』には明治36年(1903年)以後400点近い作品を提供している。このように鏡花と清方は共に『文芸倶楽部』誌を舞台に活躍し、後に終生にわたる深い絆で結ばれるが、この時はすれ違いで出会っていない。
 博文館を辞した鏡花は、明治33年(1900年)1月に春陽堂に入社する。この両社はライバル関係にあった。春陽堂が当時出版していた文芸雑誌『新小説』の編輯局に所属し2月に発行された同誌に発表したのが代表作のひとつ「高野聖(こうやひじり)」であり、この作品で一層評価を高め人気作家の仲間入りをした。
 二人が出会うのはその翌年8月のことである。切っ掛けは、春陽堂から出版された小説「三枚続」の挿絵を清方が依頼されたことだが、安田財閥の御曹司、安田善之助邸で二人は初めて面会、その翌月には鏡花が書き上げたばかりの原稿を持参し清方宅を訪ねている。意気投合した二人は生涯の友となった。爾来、鏡花文学には清方の口絵・挿絵が定番となり数々の傑作が世に送り出されることになる。
 出会う以前から鏡花文学に傾倒していた清方は、口絵・挿絵としてではなく、独立した自己の作品テーマとしても、鏡花文学を取り上げた。昭和2年(1927年)の作品《註文帳》である。鏡花の小説は、二人が出会う少し前の明治34年(1901年)4月に『新小説』に発表された作品であるが、清方は門下を集めた「郷土展」に墨画淡彩、全13図の作品を発表している。

 清方に遅れること6年後の明治40年(1907年)に初めて鏡花と出会い、以後鏡花文学には無くてはならない存在となった装幀者が小村雪岱(こむらせったい1887~1940)である。雪岱は川越出身、東京美術学校日本画科を卒業後、美術雑誌『國華(こっか)』の古画複製図版(当時は木版刷)の制作に携わっていた。雪岱自身が『鏡花先生のこと』という文章に書き記しているが、当時まだ21歳の若者で、鏡花文学の愛読者であった雪岱が、医学博士久保猪之吉(くぼいのきち1874~1939/京都帝大福岡医科大教授)に依頼された浮世絵師「豊国の描いた日本で最初に鼻茸を手術した人の肖像」の模写の仕事のために久保の宿泊していた宿屋に通っていたところ、たまたま久保夫人を訪ねてきた鏡花夫妻と出会ったのであった。「雪岱」の画号は鏡花が名づけてくれたものである。
 雪岱が初めて手掛けたのは、大正3年(1914年)に刊行された『日本橋』(千章館)である。雪岱の回想によると、「中々に註文の難しい方で、大体濃い色はお嫌いで、茶とか鼠の色は使え」なかった。また鏡花は、「自己というものを常にしっかり持った名人肌の芸術家」であり、世間常識では変人と言っていいほど神経質だった反面、「大変愛嬌のあった方で、その温かさが人間鏡花として掬(く)めども尽きぬ滋味を持っておられた」という。(引用部分は『鏡花先生のこと』より)

 人間的魅力に溢れた鏡花を慕い、多くの芸術家や文化人が鏡花のもとに集った。明治期の「鏡花会」や昭和3年(1928年)から始まった「九九九会(くうくうくうかい)」がそうした会の代表である。
 鏡花と言えば、幽霊や化物など超自然的存在を描いた幻想文学で知られる通り、怪奇、怪異譚の愛好者であったが、知人、友人を集めて、怪談を語る会合をしばしば主催していた。明治期には、欧米で流行した「スピリチュアリズム(心霊主義)」の影響もあり、江戸時代に流行ったいわゆる「百物語」が復活し大流行した。明治42年(1909年)に刊行された『怪談会』(柏舎書楼)は、前年に向島有馬温泉で開催された鏡花主催の「化物会」の内容を書籍化したものと推定されているが、鏡花が序文を記し、鏡花に加えて清方夫妻がそれぞれ怪談を寄稿している。
 この『怪談会』にはもう一組の著名な画家夫妻が寄稿しているのだが、それは洋画家の岡田三郎助(おかださぶろうすけ1869~1939)とその妻で小説家、劇作家の八千代(1883~1962)である。岡田もまた、鏡花と終生にわたる深い絆を持った画家であった。最初の出会いがいかなるものかは浅学にして不明であるが、明治41年(1908年)に春陽堂から刊行された『草迷宮』の口絵は岡田によるものであり、確かではないが二人の共作としては最も早い時期のものではないだろうか。
 大正14年(1925年)から刊行開始された『鏡花全集』(春陽堂刊)は、鏡花のたっての希望で岡田三郎助が装幀を手掛けた。美しいタイポグラフィは雪岱によるものである。編輯者には小山内薫(岡田八千代の実兄)、谷崎潤一郎、里見弴、水上瀧太郎、久保田万太郎、芥川龍之介ら錚々たるメンバーが名を連ねている。

 このように長く深い交流を続けた鏡花ら四人であったが、昭和14年(1939年)、岡田と鏡花が相次いでこの世を去り、雪岱も翌年、53歳の若さで亡くなってしまった。一人残された清方は、既に老境にあった昭和26年(1951年)、若き日の鏡花との出会いを懐かしみ《小説家と挿絵画家》という作品を描いている。




彩美版®
鏑木清方 《 朝涼(あさすず) 》
販売価格 180,000円+税


 鏑木清方は、大正12年当時帝展審査員として画壇に重きをなしていましたが、東京・本郷龍岡町の自宅で関東大震災に遭遇しました。この《朝涼》は翌々年(大正14年)、震災後初めて開催された第6回帝展に発表され、清方の画業の転機となる重要な作品といわれています。

 金沢八景の別荘でひと夏を過ごしたある日の早朝の空に、残月が淡くかかるのを見つけ、長女をモデルとして描いたものです。清らかな女性のすらりとした立ち姿、たおやかな手つき、背景に蓮の花を配す造形は、安らかに心を落ち着かせる風情を漂わせます。


朝涼


<仕様体裁>

原画 鎌倉市鏑木清方記念美術館 所蔵
限定 100部
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
用紙 特製絹本
装丁 三段表装
材料 天地 白茶無地
   中廻薄茶綿ムラ経
   一文字・風帯 牙地唐花唐草文金襴
   軸先 朱塗頭切
   箱  柾目桐箱、タトウ入り
画寸 天地100.0×左右38.5cm
軸寸 天地169.0×左右57.0cm


June 3, 2016

新作・東山魁夷《緑響く》のご案内


 いつもブログ「美術趣味」をご覧いただきまことにありがとうございます。

 弊社は、東山魁夷 マスターピース コレクション™として東山画伯の代表作《緑響く》を制作し、この度発売いたしました。本コレクションは、作品にアクリルガラスを直接圧着することで画面に透明感と奥行きを与える、新感覚の美術工芸絵画です。

 《緑響く》は長野県茅野市八ヶ岳中信高原国定公園にある御射鹿池を題材に描かれました。魁夷の心の祈りを表すかのように一頭の白馬が静かに歩みを進める森閑とした幻想的な光景と、それを鏡のように映す神秘的な水面の美。オーケストラとピアノの旋律が木霊する安らぎの絵画は、魁夷芸術の頂点『唐招提寺壁画』完成の2年後に描かれた円熟期の作品です。画家は自ら「もし長い年月を共に歩み、喜びと悲しみを共にする好伴侶に巡り合えたとすれば、その仕合せは計り知れないものがあるだろう。」と語り、「その大きな喜びの一つはモーツァルトの音楽との邂逅」にあったと述べています。

 本作は魁夷と言えば白馬、白馬といえば魁夷と言われるほどに永年愛され続け、近年某社のコマーシャルで更に人気に火がついた、これぞ正しくファン待望の作品です。今回の複製にあたっては、原画の繊細な色合いを巧みに表現する最新の技法「彩美版®プレミアム」を採用することで、特に森と湖の深緑の美しさを引き出し、深い森の奥行き感、透き通った水面をより魅力的に再現することを可能としました。

 画面は空間を格調高く引き立たせ、和洋を問わず空間に映える15号ワイドサイズで制作(原画の約70%大)、モダンな国産木製額で装丁。額装はハンドメイドの浮き出し加工、枠は高級シルバー仕上げ、前面を梨地メタリックグレーに仕上げ魁夷の世界観を十全に表現しています。東山家の正式な監修と許諾を得て、エディションは500部限定(額裏の奥付に承認印とシリアル番号入り)で、皆さまのご注文をお待ちしています。

 魁夷が愛した奥蓼科の神秘的な風景を、皆さまも是非お手元でお楽しみ下さい。



東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《緑響く》
販売価格 500,000円+税


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<仕様体裁>
原画 長野県信濃美術館 東山魁夷館所蔵
監修 東山すみ
解説 松本猛(美術評論家、前・長野県信濃美術館 東山魁夷館館長)
技法 彩美版®プレミアム
限定 500部
画寸 47.0×62.5㎝
額寸 62.5×83.0㎝
額縁 特注木製額ハンドメイド浮き出し加工
重量 約5.3㎏

■当社ニュースリリース(2016年5月25日付)へのリンク
「東山魁夷 マスターピース コレクション™第3弾 《 緑響く 》を限定500部で発売」



※本作品についてのお問合わせは、以下までお願いいたします。
共同印刷株式会社 アート&カルチャー部
電話 03-3817-2290(平日・月~金の10:00から17:00まで)
FAX 03-3817-2288

May 27, 2016

上野の春、意を決して大型展覧会へ足を運ぶ


このブログをご覧いただいている皆様も足を運ばれたでしょうか、先日会期は終了しましたが話題となった東京都美術館「生誕300年記念若冲展」へ行って参りました。

本展は東京では初めて《釈迦三尊像》と《動植綵絵》が一堂に会した注目の展覧会とあって大変な来場者数でしたが、私もお目当ての若冲作品を一目見ようと行列に参加、会場の熱気を存分に味わって参りました。

経験したことのないほどの長蛇の列にくじけそうになりながらもいよいよ入場、するとすぐさま美術品のもつ強いオーラに引き寄せられます。
じっくりと鑑賞したいところ後ろ髪を引かれながらも、今回のお目当てである1799年若冲の晩年に描かれた《百犬図》、ワンコ達のところへ直行。
日本画の有名な作品の中でも犬が描かれたものは多くありますが、こちらはなんと59匹もの犬が描かれているため見逃すわけにはいきません。犬たちがコロコロとじゃれ合っている様子の連続、犬好きにはたまらない作品です。
描かれた犬の顔は、まるで猿か猫のような、また違う生き物では?と思わせる不思議な顔つきですが、魅力は筋肉や関節、威嚇、甘えなどの行動でしょうか、確かに犬、嘘がないのです。
そして、この作品の何匹かは後ろ姿で描かれています。その可愛らしさについては犬好きな方なら共感して頂けるでしょう。
後姿が絵になるのは犬か猫くらいでは?と思ったりもします。

犬についてはさておき、これだけの人を惹きつけるパワーの一つ、色彩については他の作品に比べると落ち着いた色味ですが毛の一本ごとが緻密に描写され、白の濃淡だけをとっても驚くほどの見ごたえがありました。
若冲の作品では絵絹の裏面に施した裏彩色など効果的に技法が盛り込まれ、表情が様々描き分けられていると言われています。
遠目にもはっきりとわかる鮮やかな色の濃度やぽってりとした厚みにはやはり釘付けになってしまい、単純に色というには画家に申し訳ない気持ちにすらなります。
実は当社の「彩美版®」についても同じように、複製画が出来上がるまでにはこだわりがあります。
作品に込められた表現の意図を解釈したうえで、本金箔や本金泥を使用し、膠の質感までも追及するために、何度も校正をかさねて出来上がります。
さらに作品を活かすための額装も試作を繰り返し、完成されます。
このようにひとつひとつに妥協なくこだわり、仕上げられたものにはやはりそのものなりのオーラが宿ると思っております。
絶妙なバランスであったり、ディテールのこだわりの積み重ねが醸しだす雰囲気であり、さらに時を経ていればその分の佇まいがあります。
当社の「彩美版®」でも魅力的な佇まいをもっと感じていただけるものにし皆様にお届けしたい!日本画の画材である岩絵の具の物質的な特徴、長所も短所をもっと知りたい!
と身が引き締まった思いがした展覧会となりました。
この時期の展覧会は足が遠のいておりましたが意を決して足を運んだ甲斐がありました。



彩美版® 軸装
伊東若冲 《日出鳳凰図》

販売価格 110,000円+税


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<仕様体裁>

原画 米国・ボストン美術館所蔵
解説 河野元昭(美術史家、東京大学名誉教授)
技法 彩美版®
用紙 特製絹本
表装 三段表装(本表装)
画寸 94.0×33.0㎝
軸寸 183.0×52.5㎝
箱  柾目桐箱、タトウ付
※ご希望により額装のご注文も承ります。
※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。




そして、日本画で使用される岩絵具の原料、鉱石また鹿膠などに思いを巡らし国立科学博物館の鉱物コーナー、動物剥製コーナーへも立ち寄りました。
地球館の剥製コーナーは年に一度は足を運ぶ私のパワースポットです。
都会にいながらここでは生き物にしかない神秘や大きさが感じらるのでお勧めです!
またこちらのミュージアムショップにて、当社共同印刷のご近所に本社を構えるカロラータさんの、生物が本来持つ真の美しさを正しく伝えるリアルさにこだわり抜かれたぬいぐるみ、ホッキョククマを購入。動物の個性がみごとにデザインされたぬいぐるみに感服です。


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国立科学博物館の動物剥製コーナー


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カロラータさんのリアルなぬいぐるみ


■国立科学博物館 常設展
http://www.kahaku.go.jp/
※開館情報はHPをご覧ください。

May 20, 2016

週末の横浜散歩のススメ


 こんにちは。
 お天気の良い週末、横浜美術館で開催中の「複製技術と美術家たち―ピカソからウォーホールまで」展に行ってまいりました。

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 本展は、写真印刷や映像などの「複製技術」が普及し誰もが複製を通じて美術を楽しむことができる時代に、20世紀の欧米を中心とする美術家たちがどのような芸術のビジョンを持って作品を作っていたか、を検証する展覧会です。テーマとしては少々難解ですが、難しいことはさておき芸術家たちが複製技術をその目や手を通じてどのような形で解釈し、表現したか、さまざまな形を見ることができて興味深いものがあります。

 ピカソやマティスからウォーホールまで時代を追って、相当な数の作品が展示されていますが、中でも印刷物でも良く目にするマティスの「ジャズ」の色彩の美しさが個人的にはとても印象に残りました。

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アンリ・マティス《サーカス》(詩画集『ジャズ』より)
1947年/シルクスクリーン、紙(書籍)/42.5×65.0cm(用紙)/富士ゼロックス版画コレクション



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パウル・クレー《ホフマン的な場面》
1921年/リトグラフ、紙/31.7×22.8cm/富士ゼロックス版画コレクション



 同時開催の「しなやかさとたくましさ―横浜美術館コレクションに見る女性の眼差し 」
 「アメリカ写真の展開:1860年代-1940年代」。こちらも上村松園、小倉遊亀、片岡球子など近代日本画家から、コムデギャルソンの川久保玲など現代のアーティストまで網羅し、充実した内容で見応えのあるものになっていますし、写真展もその時代のにおいが感じられる写真が数多く展示されています。

 横浜美術館は館内が広く、展示作品も企画展~コレクション展まで観るとかなりのボリュームになるので、ゆっくり時間を取っていかれるのが良いかと思います。鑑賞が終わったら近くのカフェでのんびりとお茶をしたり、山下公園や中華街までお散歩したりするのも良いかもしれませんね!

 久しぶりに行った横浜・みなとみらい界隈は、都内にはない開放的な空気感であふれ、とても気持ちの良い時間を過ごした一日でした。



【展覧会情報】
富士ゼロックス版画コレクション×横浜美術館
複製技術と美術家たち-ピカソからウォーホルまで

会場 横浜美術館
   横浜市西区みなとみらい3-4-1
会期 2016年4月23日(土)~6月5日(日)
開館 10:00~18:00(入館は17:30まで)
※5月27日(金)は20:30まで開館(入館は20:00まで)
休館 木曜日
主催 横浜美術館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
協賛 富士ゼロックス株式会社
後援 横浜市
協力 横浜高速鉄道株式会社、横浜ケーブルビジョン、
   FMヨコハマ、首都高速道路株式会社
企画協力 横田茂ギャラリー

May 13, 2016

さきたま古代探検


 埼玉県の誕生は、明治4年11月14日、埼玉県設置の大政官布告が出された時で、当初の管轄区域の中で最も広い郡が埼玉郡でそれが県名となりました。埼玉郡は当初は前玉郡(さきたまぐん)という表示もされ、前玉神社もさきたま古墳群そばにあり、埼玉(さきたま)の地こそ埼玉郡の中心地と考えられ、ここが県名発祥の地とされました。

 その場所、「さきたま古墳公園」に、GW連休の好天気の中初めて訪れました。行田市街地から南東約1㎞にある広さ約37haの地に、5世紀後半から7世紀初めまでに作られた9基の大型古墳が集まっています。駐車場に着く直前、草の生い茂ったなだらかな山が見え、胸がわくわくしました。それは二子山古墳というこの公園内で最も面積の大きな前方後円墳です。通常は周囲の堀に水があるのかもしれませんが、現在長期整備中のようで、水は見当たりませんでした。

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◆丸墓山古墳
 
 園内には芝生広場があり、5月4日に行われる火祭りのため用意されたわらの古代住居が建っていました。当日神話に模し、ここに火が放たれ燃やされるそうです。この広場からは四方に古墳が見渡せますが、目立つのは日本一の円墳と言われる丸墓山古墳です。高さ約19mで、階段で登頂できます。頂上からの眺めはなかなかのもので、ここからあの「のぼうの城」忍城(現在は行田市郷土博物館)も見渡せます。実際、1590年豊臣秀吉にこの城を水攻めで落とすよう命を受けた石田三成は、この丸墓山古墳頂上に陣を張ったそうです。(水攻めで沈まなかったこの城は「浮き城」と呼ばれました。)

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◆笑う埴輪

 古墳すべてを見て回りましたが結構な運動になります。園内には埼玉県立さきたま史跡博物館があり、古墳から発掘された埴輪や副葬品が展示されています。展示物の中でも稲荷山古墳から出土した「金錯銘鉄剣」は剣身の両面に115文字の銘文が記され歴史的価値の高い発見として話題となり、「画文帯環状乳神獣鏡」などとともに国宝となっています。それにしても、豊富で多様な埴輪に感じる古代人の造形センスは、あらためて見てもユーモラスで愛らしく、遠い昔の創作という気がしません。

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◆八幡山古墳石室

 この地域には古墳公園以外にもいくつか古墳はあり、それぞれ貴重な価値のあるもので、その中の1基に立ち寄ってみました。さきたま古墳群の北東方向、八幡山公園の一角にある「八幡山古墳」です。周辺は工場・住宅地でこんなところに古墳?とそれらしい場所が見つけられず迷ったのですが、さり気ない案内看板を見つけ、何とか辿り着きました。盛り上がった草地の上に、石を積んだ石室が露出し、奈良の石舞台に似ていることから「関東の石舞台」と呼ばれています。確かに独特の存在感があります。

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◆八幡山古墳石室内部

 入口には扉が設置されていますが、開いていて内部に入れます。中は昼でも暗くて、あまり居心地がよくありません。羨道、前室、中室、奥室と続きますが最後の奥室は真っ暗ということもあり、入る勇気はありませんでした。なお、本来古墳内にあるはずの石室が露出しているのは、昭和初期に沼の干拓に墳丘盛土が使われてしまったためで、石室がむき出しになった時点で事の重要性に気づいた当時の村長が保存へと動き埼玉県指定史跡となりました。古墳の規模は推定直径80m・高さ9.5mの円墳で石室全長16.7m。ちなみに、ここを築いたのは聖徳太子側近の舎人だったと考えられているそうです。

 遥かな古代のロマンに浸った一日でした。帰宅してから子供の高校日本史の教科書を見ると、さきほど史跡博物館で見た「金錯銘鉄剣」がしっかり掲載され、なるほどと展示物の重要性をあらためて認識しました。



■埼玉県立さきたま史跡の博物館
埼玉県行田市埼玉4834   TEL 048-559-1111(代表)
開館時間 9時~16時30分(入館受付は16時まで)
     7月1日~8月31日 9時~17時(入館受付は16時30分まで)
休館日 月曜日 (祝日、振替休日、埼玉県民の日(11月14日)を除く)
    12月29日~1月3日
観覧料 一般 個人200円 団体120円
    高校生・学生 個人100円 団体60円
    中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方(付き添い1名含む) 無料

■八幡山古墳石室
埼玉県行田市藤原町1-27-2
公開日 土曜日、日曜日および祝日(年末年始を除く)
公開時間 10時~16時

April 28, 2016

日本民藝館を訪れた事及び、大きな屋敷で靴を持って歩き回った事。


 一度は訪れてみたいと思いながら、なかなか行くことのない場所が誰にでも一つ二つはあるのではないだろうか。私にとっても「東京タワー」と「日本民藝館」は正しくそれであった。しかしブログの掲載が差し迫って来た事もあり、この機に「日本民藝館」の方を訪れてみる事にした。

 東京の若者の街、渋谷から井の頭線に乗り2番目の駅の駒場東大前で降りると、ほど近いところに「日本民藝館」はある。民衆の用いる日用品の美に着目した柳宗悦(やなぎむねよし:1889〜1961年)は「民藝」という新しい美の概念の普及と、「美の生活化」を目指す活動をし、柳氏が収集した古今東西の工芸品を展示しているのがこの民藝館である。

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瓦と白い壁が美しい、日本民藝館の入り口


 この民藝館の本館の建物は柳氏自身が設計を手がけた和風意匠を基調とした特徴的な建物で、登録有形文化財にもなっている。玄関の引き戸を開け中に入ると、上がりかまちで靴を脱ぎスリッパに履き替えてチケットを買う。玄関を入った正面には2階へと続く大きな木製の階段が存在感を放っている。展示室は1階、2階にある複数の部屋に分かれている。木のぬくもりと白い壁のコントラストが美しく、階段の吹き抜けを中心に開放感のある館内はとても居心地が良い。この時点で訪問して良かったと思ってしまう。

 この度の展示は、創設80周年特別展として日本民藝館所蔵の「朝鮮工芸の美」(6月12日の日曜日まで開催)と題して、国内屈指の質と量を誇るという民藝館所蔵の朝鮮時代の工芸品(陶磁器、木工品、石仏、掛軸など様々な品)を展示している。朝鮮時代の工芸といえば白磁と漆塗木工品ぐらいのイメージしかない浅薄な私であったが、展示物の幅の広さに驚いた次第である。

 白磁に対して、ゴロッと黒い蝋石製面取薬煎(19世紀末)。草虫図(19世紀)の掛軸に描かれているのは、ハチ、チョウ、セミ、カエルなどの生き物達で、西洋のモチーフとは違った、日本と共通する小さきものに対する慈悲を感じる。変わったところでは、木製の枕(鼓のように両端が広く平らで、真中がくびれている)は、頭をのせる面が小さく(直径10cmぐらい)これでは、寝返りをうったら床に頭をぶつけてしまう。「たわし」の形も変わっており、「こけし」の様に縦に長い。朝鮮と日本の視点の違いと共通点を楽しめる展覧会であった。

 民藝館を出たすぐ近くには、旧前田家本邸洋館のある駒場公園がある。緑の樹々が多いこの都会のオアシスには日本近代文学館もあり、館内の「BUNDAN COFFEE&BEER」で食事が出来る。BUNDANの名に相応しく店内には天井にとどく書棚が並び、約2万冊の書籍があるという。こちらではメニューも作家にちなんでおり、コーヒーの品書きは「芥川」や「寺田寅彦の牛乳コーヒー」など、食事は「ハードボイルド・ワンダーランド(村上春樹)の朝食セット」や「シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイ」と遊び心が溢れている。僕は「シャーロック〜パイ」にしたよワトスン君といった体で昼食をいただく事に。

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シャーロッキアンではないが、シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイを注文

 公園の中心の建物「旧前田家本邸洋館」は、加賀百万石の第16代当主であった前田利為(まえだとしなり)侯爵の本邸として昭和4年に建てられた。建物はイギリスのチューダー様式で、地下1階、地上2階、延床面積約2,930平方メートルという豪邸である。隣には連絡通路で行き来できる和館もある。入場無料との事なので洋館を見学する。まずは玄関(といっても私のアパートの延床面積の約半分ぐらいある)で靴を脱いでスリッパに履き替え(今日はやたらに靴を脱ぐ日である。この後、和館を訪れた際も靴を脱ぐのであった。)、靴は設置してあるビニール袋に入れて持ち歩く。

 この館とにかく部屋数が多い。食堂が大小2部屋、サロン、書斎、家族の各部屋の他に、女中室が4部屋と女中溜、小使室、従者室、執事室が1部屋ずつある。その他の部屋も合わせると30以上にもなる。静かな館内を散策していると、どこからか「ネコふんじゃった」のぎこちなさのあるピアノのメロディーが聞こえてくる。館内をぐるぐる回っていると方向感覚も危うくなる。それにしても、人のほとんど居ない大きなお屋敷の中を部屋から部屋へと靴を持って歩き回っている自分の姿に、どろぼうになった様な気持ちになるのであった。


April 22, 2016

いざ、怪しい館へ


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。

 さて本日取り上げるのは、伊豆半島の城ケ崎近く、大室山ふもとにある「怪しい少年少女博物館」です。一風変わったネーミングに惹きつけられ、以前より通りすぎる度に気にはなっていたのですが、先日ついに立ち寄ってみました。名前からはどのようなものを展示しているのか想像がつきません。博物館前にペンギンの体に人の顔がついた奇怪な巨像が立っているので、否が応でも目立っているのです。建屋は昔の学校風で、入る前から怪しげな雰囲気を醸しだしていて期待も高まります。

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 いよいよ入場してみれば、展示物の多さに圧倒されます。確かに怪しすぎて思わずニヤリとしてしまいます。まず目に入ってくるのはショーケースに並ぶ昭和ファッションをまとったマネキンの数々。その中に混ざって昔懐かしいおもちゃ、フィギュア、生活雑貨が所狭しに展示されています。例えば「野球板第1号、なめ猫、月光仮面、アイドルフィギュア、紙芝居、アイスキャンデー販売の自転車、ブラウン管テレビ、鯉のぼり、日本人形などなどなどなどなど」といったようなものです。

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 なにが何だか分からないと思いますが、特定のテーマや時代背景に沿ったかたちで展示されているのではありません。とにかく色々な物が多少のジャンル分けがあるだけで、良い意味で適当に陳列されています。あえて言えば「驚安の殿堂ドンキホーテ」をイメージしていただければ分かりやすい?かもしれません。その数の多さに、もはや「怪しい」を超え、摩訶不思議な空間に仕上がっています。

 2階にも展示スペースがあり、ファミコンをプレイできる場所の横にある螺旋階段を上ります。2階は、一応オカルト系のジャンルでまとめられているようで、なんと藁人形の打ち付けスポットがあります。来場者の思いが込められた藁人形が多数打ち付けられていました。もちろん、「藁人形と釘」はこちらの怪しい博物館で購入可能です。

 怪しい「少年少女博物館」は昭和の文化、特にサブカルチャー満載の博物館でした。私でも十分懐かしい感じがして相当楽しめたのですが、団塊の世代あたりの方たちがご覧になれば、胸が熱くなること間違いなしだと思います。かなりディープなスポットでしたが、私にはこの博物館の近くにもう一箇所気になる施設がありました。「まぼろし博覧会」。受付の方に訊ねてみるとやはり姉妹館のようで、さらにディープな感じに仕上がっているそうです。次回周辺を訪れた時は、是非立ち寄ってみたいと思います。



【怪しい「少年少女博物館」の情報】
所在地  静岡県伊東市富戸街道下1029-64
電 話  0557-51-8800
休館日  年中無休
開館時間 9:00~17:00まで (入館は16:30まで)
入館料金 大人1,000円 小・中学生600円
アクセス 伊豆急行「城ケ崎海岸駅」より徒歩10分


April 15, 2016

【新作】 クロード・モネ 《ヴェトゥイユのモネの庭》


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
 陽気が暖かくなってきましたね。先日は小雨がぱらついたり空模様はスッキリしませんでしたが、桜の満開の時期を迎え各方面賑わっているのではないでしょうか。小石川界隈はハナミズキが咲きだし、桜の花ばなの間からは青々とした葉が垣間見え、初夏の気配が感じられます。

 さて本日ご紹介する彩美版®は、今年没後90年を迎えたクロード・モネの名作「ヴェトゥイユのモネの庭」です。
 モネ一家が住む家を背景に青く澄んだ空の下、道を挟んでセーヌ川へと下る斜面に設けられた庭には、佇む子供たちの背丈をこえた向日葵が陽の光を浴び咲き誇っています。眩しい日差しが全て輝かせ、光の色彩を愛する画家の世界を感じられます。

 制作にあたり、三菱一号館美術館の高橋明也館長に、監修と解説を頂戴いたしました。





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彩美版®
クロード・モネ 《ヴェトゥイユのモネの庭》

限定 200部
価格 115,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り 
画寸 52.2×42㎝
額寸 65.4×55.2cm
重量 2.9kg
額縁 木製デコレーション金箔額
原画 ワシントン・ナショナル・ギャラリー(National Gallery of Art, Washington D.C.)所蔵
監修・解説 高橋明也(三菱一号館美術館館長)
発行 共同印刷株式会社




 こちらもモネの代表作として世界的に名高い傑作です。
 モネの「睡蓮」連作大装飾画は第一次世界大戦の終結を記念し、フランス国家に寄贈された記念碑的な作品であり、平和を象徴する歴史的価値ある大作です。収蔵先のオランジュリー美術館は「睡蓮」連作大装飾画のために創設された≪印象派の殿堂≫と呼ばれています。
 《睡蓮、水のエチュード-雲》は、睡蓮と朝焼けの水面に映える雲の情景が、微妙なニュアンスに富む青、緑、紫、白、赤などが入り交る、モネならではの彩りの世界で描かれた作品です。本作品は第一室に飾られた「雲」の全画面より作品のハイライト部を、フランス国立美術館連合・グランパレ(RMN‐GP)の画像協力を得て、当社が誇る彩美版の技法にて再現いたしました。気品あるデコレーション金箔額(国産ハンドメイド仕上げ)に収め、200部限定でご用意しております。モネが愛したジヴェルニーの風景を、是非お手元でお楽しみください。

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Photo ⓒ RMN-Grand Palais (musée de l'Orangerie) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom


彩美版®
クロード・モネ 《睡蓮、水のエチュード-雲》
限定 200部
価格 128,000円+税



<仕様体裁>
技法 彩美版®、シルクスクリーン手摺り
画寸 28.3×91㎝
額寸 38.2×100.8cm
重量 3.3kg
額縁 特製木製デコレーション金箔額
原画 オランジュリー美術館(Musée de l'Orangerie)所蔵
監修・解説 千足 伸行(成城大学名誉教授/広島県立美術館長)
発行 共同印刷株式会社




【今日の谷根千】

◇文京区立森鴎外記念館
特別展
「私がわたしであること ―森家の女性たち 喜美子、志げ、茉莉、杏奴―」

会期:2016年4月9日(土)~6月26日(日)
※会期中の休館日:5月24日(火)
開館時間:10時~18時(最終入館17時半)
※6月の金曜日は20時まで開館(最終入館19時半)
観覧料:一般500円(20名以上の団体:400円)
※中学生以下、障がい者手帳ご提示の方と同伴者1名まで無料

文京区立森鴎外記念館
東京都文京区千駄木1-23-4
電話 03-3824-5511


◇根津神社
文京つつじ祭り
第47回 平成28年4月9日(土)~5月5日(木)
境内にある約2,000坪のつつじ苑には約100種3,000株のツツジが咲き誇り、甘酒茶屋、植木市、露店等もたくさん並びます。


根津神社
〒113-0031東京都文京区根津1-28-9
tel 03-3822-0753(9:00~17:00)

April 8, 2016

満開の桜と四季の花々~小石川植物園より~


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。
 春麗らかに、弊社近隣の桜並木(播磨坂)では今年も「文京区さくらまつり」が開催され、多くの人で賑わっています。実は、文京区小石川の弊社近隣にはもう一つ大きな自然公園があることはご存知でしょうか。今回は『小石川植物園』をご紹介いたします。

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 通称『小石川植物園』と呼ばれ親しまれているこの施設は、正式名称を『東京大学大学院理学系研究科付属植物園』、すなわち東京大学が植物学に関する様々な研究・教育を行っている教育学習施設です。この植物園は日本で最も古い植物園であるだけでなく、世界でも有数の歴史を持つ植物園のひとつです。

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 面積は161,588㎡(48,880坪)で、台地、傾斜地、低地、泉水地などの地形を利用して様々な植物が配置されており、植物標本は約70万点、また植物学関連図書は約2万冊あり、内外から多くの植物研究者に活用されています。

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 6年ほど前(2010年7月)、"世界最大の花"を咲かせるというサトイモ科の植物「ショクダイオオコンニャク」が開花したことも話題となりました。直径約1メートル×高さ1.5メートルのその花は子供が両手で抱えきれないほどの大きさで、インドネシア・スマトラ島で絶滅危惧種に指定されているほど貴重な植物。1993年に種をまいて17年目に開花するという素晴らしい成果が印象に残っています。

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 長い歴史を物語る数多くの由緒ある植物たち。美しい四季の移ろいを感じ取ることができる小石川植物園へぜひ足をお運びください。



【小石川植物園

約320年前の貞享元年(1684年)に徳川幕府が設けた「小石川御薬園(こいしかわおやくえん)」がこの植物園の遠い前身で、明治10年、東京大学が設立された直後に付属植物園となり一般にも公開されてきました。

住 所  東京都文京区白山3丁目7番1号
開 園  10:30~16:30(入園は16:00まで)
料 金   一般:400円、小中学生:130円、その他、団体割引有。
休 園  年末年始、月曜日(月曜が祝日の場合はその翌日)   
交 通  都営三田線「白山駅」より徒歩約7分
     東京メトロ南北線「本駒込駅」より徒歩約13分
     東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」より徒歩約15分


April 1, 2016

私たちはローリングストーン

 
 春は門出の季節、学校を巣立った全国各地の若者たちが新社会人として新たな人生を歩みはじめました。私たちも初々しい大勢の若人を新たな仲間として迎えました。若者たちの未来に幸多からんことを心より祈ります。

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 さて、今月は当社の前身のひとつである美術印刷専門の印刷工場、精美堂の創設110周年にあたります。精美堂は、後に当社初代社長となる大橋光吉(1875~1946)により、明治39年(1906)4月に設立されました。

 精美堂設立の目的は、当時光吉が行っていた美術出版事業の合理化を目的としたものです。光吉は、明治37年(1904)に日本葉書会を設立し、月刊誌「ハガキ文学」とコレクション対象となる趣味性の強い絵葉書を刊行していました。

 この絵葉書は、和田英作、中村不折、鏑木清方など当時の一流画家に依頼した原画をもとに石版(リトグラフ)や木版でつくられた極めて芸術性の高いものでした。今で言えばハガキサイズのミニ版画に相当します。この時代、すなわち日露戦争期の絵葉書ブームに乗り、光吉の美術出版事業は大いにに当たりました。当初石版や木版刷は外注でしたので、事業の伸長により内製化による合理化が求められ精美堂が設立されました。

 現代の私たちが取り組むアート&カルチャー事業は、半世紀以上も前の昭和33年(1958)、印刷技術の向上を目的として始められた油画の複製技術開発を端緒としています。今日主力とする「彩美版®」は、最新の精密なデジタル画像加工技術と伝統的な職人の手仕事による版画技法を融合させ、それぞれの特長を最大限に活かした複合的版画技法(ミックスドメディア)です。

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■最初の彩美版®、菱田春草《落葉》

 彩美版®は20世紀の終り、平成11年(1999)から研究開発が始まり平成15年(2003)の秋、足かけ5年にわたる研究の成果として最初の商品が上梓されました。それから今年で14年目を迎えますが、弛まぬ技術改良により長足の進歩を遂げ、著名画家や美術研究者など、美術のプロフェッショナルから高い評価を受けるまでに成長しました。現在の評価に甘んじることなく、更に上を目指して改良を続けてまいります。

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■2015年発売の東山魁夷《静映》には彩美版®プレミアムという新技術が使われています。



 私たちはローリングストーン。転がる石の如く苔むすことなく、常に新鮮な好奇心とチャレンジ精神を忘れず、時代に即して変わり続け、新たな価値を生み出し続けられるチームでありたいと願っています。



March 25, 2016

安田靫彦展(東京国立近代美術館)

 
 20160325sakuramatsuri.jpg いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。春本番を迎え、東京ではいよいよ桜も芽吹き始めました。今年は各地で平年より早く桜が開花しているとのことですが、皆さまのお住まいの地ではいかがでしょうか。

 共同印刷とは目と鼻の先の桜の名所、文京区播磨坂の桜も来週には満開の時期を迎えます。普段はひと気の少ない閑静な並木道も、この時期には多くの方が桜見物にいらっしゃいます。坂道に点在する素敵なレストランで美味しい食事を召し上がり、春の行楽を満喫なさるのはいかがですか。都内有数の名勝・小石川植物園もすぐ傍です。お近くまでいらした時はぜひ足をお運び下さい。最寄駅は丸の内線の茗荷谷駅です。





20160325yukihiko_ex.jpg さて、東京・竹橋の東京国立近代美術館では23日より日本画家、安田靫彦(1884-1978)の回顧展が開催されております。靫彦は歴史画家の第一人者として、近代日本画の興隆と発展に重要な足跡を残しました。その偉大な功績を称え昭和48年(1973年)には文化勲章を受章、東京藝術大学教授や日本美術院理事長の要職を務め、良寛の研究者としても活躍しました。

 明るく澄んだ色彩と簡潔な構図、巧緻な鉄描線はまさに名人芸。時代考証も綿密なその作品は、主題となった歴史人物への共感に溢れています。展示の六曲屏風『黄瀬川の陣』(重要文化財)や名作『飛鳥の春の額田王』を実際この目にし、今回特に深い感銘を受けました。

 100点を超える画家の代表作が揃う本展覧会は、靫彦芸術の真髄に触れる絶好の機会です。東京展のみの開催となるこの貴重な展覧会に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。



【安田靫彦展について】

会場 東京国立近代美術館
会期 3月23日(水)より5月15日(日)まで (月曜休館、3/28・4/4・5/2は開館)
時間 10:00~17:00 (金曜日は20時まで)




 当社では、上記「安田靫彦展」に出品の《梅花定窯瓶》と《花の酔》を含む靫彦作品の彩美版®をお取扱いしております。全て令息安田建一氏が監修されました。カタログを用意しておりますので、ご興味のあるお客さまはどうぞご遠慮なくお申し付け下さい。


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安田靫彦 《梅花定窯瓶 ばいかていようへい
軸装・額装
販売価格 (各) 本体120,000円+税

<仕様体裁>
原画 豊田市美術館所蔵 ※「安田靫彦展」に出品(展示期間3/23~4/17)
監修 安田建一
解説 豊田市美術館
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 300部
用紙 特漉和紙
画寸 天地46.0×左右39.0センチ
軸寸 天地140.0×左右58.7㎝
額寸 天地64.2×左右57.5㎝
発行 共同印刷株式会社




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安田靫彦 《花の酔》
軸装
販売価格 本体150,000円+税

<仕様体裁>
原画 宮城県美術館所蔵 ※「安田靫彦展」に出品(展示期間3/23~4/17)
監修 安田建一
解説 庄司淳一(宮城県美術館学芸員)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 200部
用紙 代用絹本
画寸 天地80.0×左右32.0㎝
軸寸 天地173.0×左右49.0㎝
発行 共同印刷株式会社




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安田靫彦 《菖蒲》
軸装・額装
販売価格 (各) 本体120,000円+税

<仕様体裁>
原画 古川美術館所蔵
監修 安田建一
解説 草薙奈津子(平塚市美術館館長)
技法 彩美版®、シルクスクリーン手刷り
限定 300部
用紙 特漉和紙
画寸 天地39.6×左右52.6㎝
軸寸 天地133.0×左右69.5㎝
額寸 天地60.2×左右73.3㎝
発行 共同印刷株式会社


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。

March 18, 2016

女子力UP!の展覧会「PARISオートクチュール展」


 こんにちは。今週は三菱一号館美術館で開催中の「PARISオートクチュール展」に行ってまいりました。

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三菱一号館美術館入口


 「オート・クチュール」とは19世紀のパリで誕生した、顧客の注文に合わせてデザイナー主導で仕立てる高級服のことです。展覧会では、時代の変遷に合わせてシャネル、ディオール、バレンシアガ、ゴルチエ等、誰もが一度は耳にしたことのある高級メゾンのデザイナーによる芸術ともいうべき素晴らしい手仕事の数々を見ることができます。

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スケッチ


 様々な素材を使用し、複雑で、時に究極にシンプルに仕立てられたドレスや洋服の作品群や、クチュリエたちの手を写した写真などから、デザイナーの溢れ出る感性と、時に鋭く訴えかけてくるものを感じることができた展覧会でした。

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ゴルチエ

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シャネル


 来場者はほぼ100%女性。国籍問わず多数の来場者で賑わっており、年配の方から若い女性までみなさん、華やかなドレスにため息をついたり、自分が若かりし頃の時代の流行を思い起こして同行者とお話したり、凝ったドレスに目をこらしたりながら、作品に見入っている様子が印象的でした。

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美術館中庭


 出口の特設ショップにいたるまで、老いも若きも女子の心をグッとつかむファッションの世界に連れて行ってくれる展覧会です。もちろん男性の方々もぜひ。三菱一号館美術館のある丸の内界隈はファッションに感度の高いお店が揃う街でもあるので、展覧会帰りにショッピングも楽しいかもしれませんね。



【PARIS オートクチュール ―世界に一つだけの服】

 会 場  三菱一号館美術館
      東京都千代田区丸の内2-6-2
      電話 03-5777-8600

 会 期  2016年3月4日(金)から5月22日(日)まで

 休 館  月曜 但し、祝日及び5月2日、5月16日は開館

 開館時間 10:00~18:00 祝日を除く金曜及び会期最終週の平日は20時まで
      ※入館は閉館30分前まで

 入場料(当日券) 一般1,700円、高校・大学生1,000円、小・中学生500円
      ※3月15日~31日学生無料ウィーク


March 11, 2016

In My Town・・・ポエジーな休日


 旅気分で足を伸ばして美術館やギャラリーを訪れるのも楽しいですが、ごく身近な場所を見渡してみると、ほんのりアートの薫りに出会えるスポットがあります。休日にさいたま市の自宅近辺で目にしたそんな場所を紹介します。

 JR武蔵浦和駅西口近く、子供が通っていた小学校のすぐそばにあるお店、器ギャラリーハセガワ。小ぶりな店構えですが、気づいてみると洒落たセンスにあふれたお店で、小さな吊り看板やOPENを示す手作りディスプレイは味わい深いものがあります。外からは大きなウインドウ越しに、格子状の棚に置かれたやきものの商品が見られ、どれも愛らしくオリジナリティある作品。お雛様の陶器の置物もありました。お店の中も形や色、デザインが個性的ながら使い易そうなやきものが品よく並んでいます。ひとつひとつ手作りでできた陶器は当然全く同じものは2つなく、商品というより作品と呼べるものです。

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 ショップを営むのは長谷川正治さん、松浦唱子さんでお二人とも通常は千葉の富津市で陶芸家として活躍されています。お二人以外にも全国各地の作家さんの作品が置かれていますが、もともとは常滑のセラミックアートスクールで陶芸を一緒に学んだ方たちで、その後各地に移ったものの、やきもの市などで交流を続け、陶器を仕入れているそうです。

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 お店には、なかなかこうは描けない脱力系のオリジナルイラストポストカードも置いています。無垢の力ともいうべき示唆に富んだ作品群は、やきものの無心の様相にマッチすると感じました。何気なく通り過ぎる道に、趣深い作品世界の広がる場所がある。そんな印象を受けました。



 もう一つですが、JR中浦和駅東側にある、以前は毎週のように訪れた別所沼公園。子供が成長してからは、何年も行っていませんでしたが、ここにもアートスポットがあります。彫刻家 中野四郎の作品「掛けた女」や、メキシコ州から贈られた「風の神の像(エヘーカトル・ケッツアルコアトル)」などもですが、はずせないのは2004年に園内に建てられた「ヒアシンスハウス(風信子荘)」という小さな家。詩人・建築家の立原道造(大正3年~昭和14年)が24歳で夭折する1年前に構想した別荘です。道造は東大建築学科で学び、在学中に辰野賞(奨励賞)を3度も受賞。同時に詩歌においても少年時代から才能を示し、著名な作家たちが名を連ねる「四季」同人となって活躍、第1回中原中也賞を受賞しました。そんな彼の未完の夢がこの小さな空間であり、没後65年後に、地元の建築家、文芸家たちの協力で、道造の遺したスケッチをもとに作り上げられました。

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 河津桜が少しだけ咲く日曜の午後、人々が思い思い寛ぐ穏やかな公園の空気の中にその家は溶け込んでいました。大きな窓から、沼と、河津桜も見えます。緑豊かな季節なら木々の爽やかな息遣いが感じられたでしょう。据え付けの机や椅子もベッドも彼のスケッチを忠実に再現しています。木の温もりの中に、そよ風が渡る自然を感じる家。道造はこんな心地よい秘密めかした空間を望んでいたのかと深い共感を覚えました。この家は芸術・文化の催しにも活用されているようです。過去の詩人の想いが何十年もの時を超えて人々に継承され実現する、その情熱の結集力に感動を覚えました。

 すぐそばにある見知った場所も、気づかないうちに変化し、アートに根ざした憩いの場として存在感を増していた・・・時を想い、感慨にふける日でした。

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■器ギャラリーハセガワ
 さいたま市南区沼影1-5-20  TEL 048-837-0639
 営業日 木・金・土  (イベント開催時は変更の場合有り)
 営業時間 13時~18時 (不定休)


■ヒアシンスハウス
 さいたま市南区別所沼公園内  
 開室日 水・土・日・祝(年末年始は休室)
 開室時間 10時~15時

March 8, 2016

小川芋銭と牛久の河童たち


 いつもブログ「美術趣味」をご覧頂きましてありがとうございます。先日、牛久市ゆかりの日本画家、小川芋銭(うせん)の記念館「雲魚亭」に行って参りました。


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 近くには河童伝説で有名な牛久沼があります。牛久沼の由来は諸説あるようですが、金竜寺に「怠け者の小僧が牛になってしまい、沼に身投げをした。そこから<牛を沼が食った><牛食う沼>と変わり、その沼が牛久沼と呼ばれるようになった」という言い伝えがあります。沼には昔から河童が住んでいるといわれており、周辺には河童にまつわる伝説がいくつも残っています。

 そして、牛久沼を愛し、そのほとりで農業を営みながら画業を続けていたのが、日本美術院同人として活躍した小川芋銭です。画号の「芋銭」は、自分の絵が芋を買う銭になれば、という思いによるとのことです。元来牛久藩大目付の長男として生まれた芋銭は、周りの人たちから学者として尊敬されるほど、豊かな教養を備えていました。農村の風物や水辺の生き物を好んで描いており、特に河童を多く描いたことから「河童の芋銭」と親しまれています。「雲魚亭」は晩年に建てられた、居宅兼画室です。ここに移り数か月後、芋銭は病に倒れ亡くなりました。現在は小川芋銭記念館として芋銭の作品や遺品を一般公開しています。少し歩けば、芋銭のお墓のあるお寺「得月院」があります。小川家の墓の中でもひと回り大きな墓石なので、すぐに分かります。


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 牛久市は河童を観光、地域作りのテーマとして掲げており街全体が河童で溢れています。「雲魚亭」がある側の牛久駅西口の別名は「河童口」となっています。駅前のバス停留所には河童のキャラクターが描かれているバスが停まっていました。下を向けば、マンホールに河童、橋の上に河童の像、かっぱ松、そして芋銭を敬慕する人たちによって建てられた河童の碑。街を散策すれば、まだまだ河童が見つかりそうです。牛久沼まで足を延ばせば、本物に出会えるかもしれませんね。



【牛久市小川芋銭記念館 雲魚亭】
開館日 屋内公開は土曜日、日曜日、休日
平日は、屋外見学のみ
開館時間 9:00~17:00(4月1日~9月30日)
     9:00~16:00(10月1日~3月31日)
休館日 毎週月曜日(月曜日が休日の場合は翌日)及び12月28日~1月4日


March 4, 2016

童画に込めた巨匠達の想いと、東京都板橋区赤塚を散策した事について


 東京をほぼ南北に走る都営地下鉄三田線は地下鉄といいながら、志村坂上駅より北上すると地上に出て高架線を走り、終点の西高島平駅に着く。よって地下鉄の車両はどこから入れるのだろう?と考え込まなくても良い。この辺りは昭和40年代に建てられたマンモス団地「高島平団地」で知られている。団地の総戸数は1万を越えるという。

 さて西高島平駅から南西方向に十数分歩くと「板橋区立美術館」がある。美術館は赤塚城本丸跡の公園内にあり、訪れた時は紅白の梅の花が咲き始めていた。こちらでは3月27日まで「描かれた大正モダン・キッズ 婦人之友社『子供之友』原画展」が開催されている。「子供之友」は幼児から小学生向けの生活教育雑誌として「婦人之友」の創業者、羽二とも子、吉一が1914年(大正3年)に創刊し、1943年(昭和18年)の休刊までの30年間発行された。本誌は創刊より絵画主任を務めた北澤楽天や、竹久夢二、武井武雄、村山知義などの第一線の芸術家達の作品を発表し続けた、芸術性の高い雑誌である。展示は作家ごとにまとめられており、貴重な原画が展示されている。いわゆる絵画作品とは違い、印刷原稿として描き起こされたものなので、絵の回りには引き出し線で「色は思ひきつて 鮮やかに」などの指定が残っている。こういう肉筆の指示を見ると版下原稿入稿世代の印刷マンとしては懐かしくてじんと来る。

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梅の花咲く美術館入り口

 挿絵のスタイルの変遷も芸術表現の移り変わりと重なっており、創刊始めの北澤楽天の描いたサンタクロースは正しく白ひげの仙人のようで恐ろしいが、竹久夢二の作品は夢二調の細やかで繊細な線と淡い色彩で、はかなげである。時代は下って、ベルリン留学を経て当時の前衛芸術活動をリードした村山知義はシンプルな線と面で構成されたモダンな表現をしている。「童画」という言葉を創出した武井武雄は、東京美術学校(現東京芸術大学)を出た後、自活するための仕事として雑誌の挿絵制作を始めたが、彼の作品は均一の太さの線で、木や葉を装飾的に描いている。本展示作品の私のお気に入りは、村山知義の「リボンときつねとごむまりと月」である。シルクハットを被りタキシードを着た三日月と、リボンとごむまりの三人がステーキを食べているテーブルの奥に、きつねの一行がお土産を持って遠ざかっているという何ともかわいく、シュールで稲垣足穂と宮沢賢治を混ぜたような大正モダニズムアートである。その他、岡鹿之助や安井曾太郎が自らの絵の解説を書いていたり、マティスの作品を掲載したりと、「子供之友」は子供向けとは思えないほどの本物の芸術志向であった。

 なお、「板橋区立美術館」の男子トイレにはマルセル・デュシャンの「泉」がある。といってもそれは中国人アーティストの牛波氏の「泉水」という作品で、かつてデュシャンが既製品の便器をそのまま美術品として提示したが、それをまたもとの使用できる便器として再提示した作品である。この作品は壁に付いた鏡により真上からそのフォルムを見る事が出来る(用を足しながらも見られる...)。

 さて美術館を出て東武東上線の下赤塚方面へ続く「東京大仏通り」をしばらく行って脇道に入ると乗蓮寺というお寺に出る。徳川家康より10石の朱印地を拝領したという由緒あるこのお寺には正しく「東京大仏」という高さ13m、重さ32トンの青銅で出来た巨大な大仏(阿弥陀如来)が建立されている。全体的につやつやと黒光りして、シャープな身体の線のスマートな大仏様である。境内には他にも「旧藤堂家染井屋敷石造物」という不思議な石造が配置されている。これら天邪鬼石造、婆々石造、大黒石造などの姿からは、歴史と信仰を感じさせてくれる。

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青空とスマートな大仏様

 お寺を出て、更に脇道を進んだ二股の付け根に「板橋区立赤塚植物園」がある。入園はただのようなので入ってみる。広さは約1ヘクタールと、それほど大きくはないが、起伏のある丘陵地をうまく生かした造りになっている。この植物園に入ってまず目を引くのは白い樹皮が美しい「ユーカリ」の巨木である。その高さは管理舎の屋根を遥かに越える。「ユーカリ」がこんなにも大きくなるとは知らなかった。今の季節園内では「フクジュソウ」や「スノードロップ」が咲いている。「フクジュソウ」が群生して黄色い花を咲かせている可憐な姿に春の訪れを感じた一日であった。




 今回は童画の展覧会を訪れたが、童画といえば東山魁夷も「コドモノクニ」などの雑誌に童画を描いていた時期がありました。日本画の巨匠として崇高な自然風景の作品を数多く描いた東山魁夷ですが、心温まり童心のある作品も描いています。この度ご紹介する「金太郎」も正しくそのような作品です。大きな熊にまたがり、斧を持った小さな金太郎。でもその表情は口元も眉もきりっとして、しっかりとした眼差しを向けています。彩美版®プレミアムの美しい額装は、和室にも洋室にもマッチします。絵画としての美しさばかりでなく、お子様の健やかなご成長を願ってお部屋にお飾りください。


東山魁夷 マスターピース コレクション™
東山魁夷 《金太郎》
販売価格 180,000円+税


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<仕様体裁>
限定: 500部
技法: 彩美版®プレミアム
証明: 著作権者承認印、限定番号入り証書を額裏に貼付け
額装: 特注木製額ハンドメイド浮き出し加工
画寸: 33.3×30.0cm
額寸: 48.5×45.0×4.0cm
重量: 約2.6kg
発行: 共同印刷株式会社

February 19, 2016

春一番


 いつもブログ『美術趣味』をご覧頂きましてありがとうございます。
 立春を迎え路地の水仙や梅の花が目に留まり春の気配を感じますが、まだまだ寒さが厳しく厚手のコートや手袋が手放せません。その寒さから一変、先週末東京都心は3月~5月中旬並みの陽気となり春一番の観測がされました。急な陽気の変化に驚かされますが、体調を崩さないよう皆様ご自愛くださいませ。

 そんな春の陽気に誘われ、荒川の土手沿いから散策し西新井大師へ行って参りました。境内には梅が見ごろを迎え、都内ではめずらしい寒桜が咲き誇っていました。頬にうける風はまだヒンヤリと冷たいですが、春の訪れを感じました。


【西新井大師】
〒123-0841 東京都足立区西新井1丁目15-1
03-3890-2345(代)受付・電話対応時間 9:00~16:30


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 さて今回は、当社「彩美版®」から春の訪れを感じさせる作品3点をご紹介いたします。お求め、お問い合わせは、こちらの当社代理店までどうぞ!


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前田青邨 《 紅白梅 》
販売価格(額・軸) 各190,000円+税



 淡く下地に金泥を刷いた画面に、琳派に由来する垂らし込みの技法で、華やかな紅白梅が描かれています。リズミカルにデザイン化された幹と枝は、光琳の紅白梅図屏風を連想させます。よく観ると濃い紅色、淡い紅色、白色と異なる色の花を咲かせた三本の樹々が、あたかも家族のように互いを抱きあいながら、複雑に絡み上方へと伸びています。香り高い梅の花が一面に咲きこぼれ、上品で華やかな青邨独特の画面をつくりあげています。



<仕様体裁>
■基本情報
監修: 平山郁夫
原画: 公益財団法人石橋財団 石橋美術館 所蔵
解説: 石橋美術館
技法: 彩美版(R)・シルクスクリーン
用紙: 和紙
限定: 300部
証明: 著作権者承認印入り奥付及び所蔵者承認印入り証紙を貼付
■額装仕様
画寸: 天地43.9×左右60.3cm
額寸: 天地65.5×左右81.9cm
重量: 約5.8kg
額縁: 木製金泥仕上げ特製額(ハンドメイド、国産)
※この作品は掛軸もございます。



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安田靫彦 《 梅花定窯瓶(ばいかていようへい) 》
販売価格(額・軸) 各120,000円 +税



 赤い壁を背景に置かれた白い壺に、紅白の梅の枝が活けられています。
 梅は靫彦が最も愛した花と言われます。壺(瓶)は中国・宋時代を代表する定窯の白磁です。あたたか味のある乳白色の釉に特徴があります。
 色彩、構図とも一見さりげない感じながら緻密に計算されており、明快で絶妙な調和をもたらしています。気品高く深い精神性を感じる靫彦芸術が、この一作に凝縮されています。



<仕様体裁>
■基本情報
監修: 安田建一
原画: 豊田市美術館 所蔵
解説: 豊田市美術館
技法: 彩美版®・シルクスクリーン
用紙: 和紙
限定: 300部
証明: 著作権者承認印入り奥付を貼付
■額装仕様
額縁: 木製白茶仕上げ特製額(ハンドメイド、国産)
画寸: 天地45.3cm×左右38.6cm(8号)
額寸: 天地64.2cm×左右57.5cm
重量: 約3.7kg
※この作品は掛軸もございます。




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小倉遊亀 《 梅 》
販売価格 190,000円 +税

※この作品は額装仕様のみです。


 金箔を背景に鮮やかな絵付け文様の古壺に紅白の梅の枝が活けられています。華麗な色彩で構成された小倉画伯独特の画風が眼に鮮やかです。画中から春を告げる芳しい香りが漂ってくるかのようです。
 壺は(古赤絵酒次)は小倉画伯が愛蔵した磁器で、中国・明代に景徳鎮の窯で製作されたものです。上絵付けの技法で赤を主体に緑や黄色で華やかな模様が描かれており、わが国では「古赤絵」と呼ばれています。



<仕様体裁>
■基本情報
監修: 有限会社 鉄樹
解説: 谷岡 清(美術評論家)
技法: 彩美版®・シルクスクリーン、本金箔使用
用紙: 版画用紙(かきた)
限定: 200部
証明: 著作権者承認印を画面左下部と奥付に押印
■額装仕様
額縁: 木製金泥仕上げ特製額(ハンドメイド、国産)
画寸: 天地41.0cm×左右28.5cm(6号)
額寸: 天地59.0cm×左右46.5cm
重量: 約2.4kg


※「彩美版®」は共同印刷株式会社の登録商標です。


February 12, 2016

日本の中心、日本橋(にほんばし)


 いつも美術趣味をご覧いただきありがとうございます。今回のテーマは「日本橋」です。


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 「日本橋(にほんばし)」は、東京都中央区に流れる「日本橋川」に架かる石造りの橋で、この地域の地名でもあります。江戸時代から「五街道(東海道、日光街道、奥州街道、中山道、甲州街道)」の起点として、郵便や銀行の発祥の地として、世界屈指の繁華街として日本の中心を担ってきました。


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 橋中央部の青銅製の街路灯には、幻獣「麒麟(きりん)」が鎮座しています。「麒麟」は神話に現れる伝説上の四霊獣(「応龍」「麒麟」「鳳凰」「霊亀」)のひとつ。平和を象徴する四霊獣の中でも【信義】を意味することから「日本橋」にふさわしいモチーフとして選ばれたとされています。厳つい顔なのに実はとても心の優しい生き物であるとされる麒麟。凛として、まるで東京の守護神のような出で立ちが印象的です。一方で、橋の両端にある「獅子像」は、奈良県の手向山八幡宮にある狛犬などを参考にして製作されたそうです。


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 橋の寿命は1,000年と言われていますが、震災や空襲などにより幾度となく架け替えを余儀なくされ、現在の橋は19代目、明治44年(1911年)に開橋したものです。平成11年(1999年)には国の重要文化財(建造物)にも指定されました。しかし、高度成長期、昭和39年(1964年)の東京オリンピックの開催にあわせて首都高速道路が作られたことで、街のシンボルである「日本橋」の上空が覆われたままになっており、都市景観の在り方を含めた多くの議論を抱えているという実情もあるようです。

 そんな中、平成16年(2004年)、旧東急日本橋店の跡地に新しい商業施設「COREDO日本橋(日本橋一丁目ビルディング)」がオープン。また都内の川を結ぶ"水の道"プロジェクトとして平成23年(2011年)にはかつての舟運都市を彷彿とさせる「船着場」が完成しました。近い将来、日本橋はかつての景観と賑わいを取り戻し、昔から引き継がれる「伝統」と、新しい魅力で未来を切り開く「革新」が共存する街として、世界中から多くの人々が訪れる街になることでしょう。

 2020年の東京オリンピックへ向け、名実ともに世界への懸け橋になることを望みます。

February 5, 2016

アート鑑賞「わたし流」


 皆様、いつも「美術趣味」をご覧いただき有難うございます。さて、本日はアート鑑賞をテーマにお送りします。
 私は社会人となって以来今日まで、仕事としてアートと向き合う毎日を送っていますが、プライベートでは仕事とは異なるアプローチで、気軽に楽しくアート作品を「鑑賞」しています。手前味噌ながら、「わたし流」の楽しみ方を簡単にご紹介いたします。


1.頭をからっぽにして、作品と向き合う。

 美術館に展示されている作品には、説明プレートが添えられていますよね。必ず記載されているのは、作品名に作者名、制作年や材質、原寸等のスペックの三項目です。学芸員の方による解説が添えられていることもあります。
 素直に考えれば、これらはすべて、作品を正しく理解するために欠かせない情報なのですが、私は「頭をからっぽにして、作品と向き合う」ことを旨としていますので、作品と向き合う前にこのプレートを見ることは敢えて避けています。
 少し気取った表現をすれば、作品鑑賞は私にとって作品との真剣勝負です。予め色々な情報がインプットされてしまうと、自分自身の未熟さもあり、ともすれば「先入観」という名の色眼鏡をかけて作品を眺めてしまいかねません。真剣勝負の場に雑念を持ち込むことは、作品やそれを制作した作者に対して失礼なのではないかと思うのです。(学芸員の皆様ごめんなさい。わたしの未熟さ故です。)
 作品は、作者が封じた繊細な電波を自ら発しています。わたしのアンテナがその微細な電波をキャッチできるよう、日頃から感度を高める努力を重ねるとともに、雑音となりかねない余計な情報は極力排除し、真っ白な気持ちで作品と相対したいと思うのです。未熟なりに素直な、生のままの感性を、言わば「童心」を大切にしたいと考えています。


2.自分の感性を大事にする。

 「自分の感性を大事にする」とは、どういうことでしょうか。
 どなたにも経験あることだと思うのですが、著名な画家や評論家が素晴らしいと讃えたアート作品が、自分にはどこが良いのか解らない、あるいはそれほどの出来とは感じられなかったりすることがあります。ともすれば、「自分は未熟なのだ」と自分の感性を恥じてしまいがちです。
 でも、例えば音楽や演劇、文芸作品ならどうでしょう?「好き嫌い」という自分自身の感性の物差しでもっと気軽に評価できますよね。アート作品も同じでよいと思うのです。他人の感じ方を鵜呑みにする必要はありません。自分の感性を信じましょう。
 ちなみに最近のわたしのお気に入りは「現代美術」です。自己判定による今の自分のレベルは「現代美術超初心者」です。だからこそ「現代美術」が面白いのです。
 正直に申し上げて、作者の意図を正しく理解できていないだろうなと自覚しています。ですが、自分の素のままの感性を信じて向き合えば、面白い!と感じる作品に出合うことができます。
 感性を磨く努力も怠ってはなりません。矛盾するようですが、感じ方は経験を積むことで変わるものです。様々なアート体験を重ねることで、見えなかったものが見えてくるということです。その「成長過程」もまた面白いのです。
 ひねくれて感覚の鈍い大人に育ってしまいましたが、今思えば無垢な子ども時代は、今よりはるかに感受性豊かでした。アート作品にダイレクトに反応し、魂を揺すぶられるような強烈な感動を覚えることも、しばしばでした。「現代美術」作品と向き合うことで童心に還り、再び打ち震えるほどの感動を体験したいと願っています。


3.これは!と思った作品は徹底的に深堀する

 大学で美術史を学んだ経験を活かし、仕事でかかわりあう作品は「熟覧」と言われる作品実物の詳細な調査を行うとともに、出来うる限り多くの文献資料や証言等を集めて分析するのを常としています。場合によっては、作品のモチーフとなった場所を実際に訪れて作者の視線を辿る、フィールドワーク(実地調査)を行うこともあります。
 プライベートで出会った作品についても、これは!と言う作品は同様の調査を行うことがあります。言わばパズルのピースを一つ一つ探し拾い集めて、自分なりの作品像を再構成する作業です。気になる作品は次々に疑問が湧いてきますので、知りたいという欲求が高まってきます。研究というほど大げさなものではなく、ただ自分自身の「好奇心」を満たしたいがための事、所詮は趣味ですから。
 文献調査よりフィールドワークの方が楽しいことは、言うまでもありません。作品にまつわる情報の収集だけでなく、その土地の名産や料理も合わせて楽しむことができます。
昨年の12月に、「墨東の過去・現在・未来-永井荷風と藤牧義夫の視線」(2015年12月11日)という記事を載せましたが、あれは永井荷風や藤牧義夫の作品にかかわるフィールドワークをベースにしてまとめたものです。
 荷風は、二編の随筆、「深川の散歩」と「元八まん」に描かれた深川地区を作品に描かれた通りに辿るフィールドワークを複数回、藤牧義夫は「隅田川絵巻」を描く際に彼が歩んだであろうルートを辿り、藤牧の視線を追体験するフィールドワークを一回行いました。
 藤牧の調査の際は、「相生橋から浜町公園まで」と「三囲神社から白鬚橋まで」の隅田川沿いのルートを徒歩で辿りました。ついでと言ってはなにですが、藤牧もスケッチの途中に立ち寄って食べたであろう「長命寺のさくら餅」を家族へのお土産に買って帰りました。
 いずれの調査でも、作品その他の資料だけでは見えてこない様々な発見があり、それにより新たな疑問も出てきました。少し暖かくなってきたらまたフィールドワークに出かけたいと思っています。

20160205fieldwork.jpg※左上から時計回りに、三囲神社裏門、清洲橋(藤牧義夫「絵巻隅田川」の調査より)、元八幡・富賀岡八幡宮(永井荷風「元八まん」の調査より)、岡本太郎《太陽の塔》(現代美術)


 以上が「わたし流」鑑賞法のあらましですが、一言で言えば、「頭でっかちにならず、ハートで感じようぜっ!」ということです。「鑑賞」と表現するのが申し訳ないくらい「娯楽」に振った楽しみ方ですね。「正しい鑑賞法」あるとすればその真逆かもしれません。でも私の辞書には「楽しくなくちゃアートじゃない!」という言葉があります。「わたし流」が、皆様のアートライフを充実する一助になれば幸いです。

January 29, 2016

兵庫県立美術館「ジョルジョ・モランディ」展


 いつもブログ≪美術趣味≫をご覧いただき、まことにありがとうございます。寒波の影響で日本全国がこの冬一番の寒さを迎えました。皆さまも健康には十分ご留意下さい。

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 さて私は先日、関西出張の折、神戸の兵庫県立美術館まで足を延ばし「ジョルジョ・モランディ-終わりなき変奏-」展に行って参りました。一部で「幻の美術展」と呼ばれるこの展覧会は、2011年の震災の影響で取り止めになっていたもので、わが国では17年振りとなる待望のレトロスペクティブ(回顧展)です。

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 ジョルジョ・モランディ(1890-1964)は20世紀イタリアを代表する静物画の画家として知られます。自然を円筒・円柱・球によって扱うと語ったセザンヌを師と仰ぎ、何の変哲もない壜や容器、花瓶といった日常的なモチーフを繰り返し描き、フォルムの探求を続けました。モランディの絵画世界では机上の器の配置、距離と奥行、光の濃淡、色彩と陰影が微細かつ精妙に変化します。幾何学的立体のヴァリーエーション(変奏)による、形態と色彩の差異の現前こそがモランディ芸術の核心といえましょう。

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 本展覧会は画家の故郷ボローニャにあるモランディ美術館の協力のもと、イタリアと日本の美術館、個人コレクションから約100点の魅惑の作品が展示されております。映画好きの私は、図らずも小津安二郎(1903-1963)が同じテーマ、同じキャストで撮り続けた相似形の構図をも想起し(「晩春」、「東京物語」etc.)、偉大なる芸術の共時性に心が震えました。構図を探求することで、孤独に自己の芸術を追い求めた二人の巨匠は、今でも多くの人を惹きつけてやみません。

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 今回、私が兵庫県立美術館を訪れたもうひとつの理由は、敬愛する安藤忠雄氏が設計した代表的な建築物であるということ。館内には安忠特有の通路が張り巡らされ、綿密に計算されたその動線を辿ると、普段は滅多に気付くことのない、建物の空間の間、光、空気が判然と知覚されます。一旦外に出で海側の通路に出れば、展示棟とギャラリー棟の2棟が隣接のなぎさ公園と精妙に一体化する様も体感でき、やはり来て良かったという深い満足感を得ました。モランディと安藤忠雄の稀有なる出会いに、至福のひと時を過ごすことが出来ました。


 本展覧会はこの後、東京と岩手に巡回します(下記情報をご覧下さい)。2016年注目の展覧会に、皆さまもぜひ足をお運び下さい。



「ジョルジョ・モランディ-終わりなき変奏-」展

会場 兵庫県立美術館
会期 2016年2月14日(日)まで
休館 月曜日
時間 10:30~18:00 金曜・土曜は20時まで

※巡回スケジュール
2月20日-4月10日 東京ステーション・ギャラリー
4月16日-6月5日 岩手県立美術館


January 22, 2016

春を待つ鎌倉へ


 こんにちは。東京は積雪で始まった一週間となりました。

 きりりと寒い日が続く中、今週は鎌倉へ行ってまいりました。快晴の日とはいえ1月の寒い平日、鎌倉大仏も改修中で布を被っているそうですが、駅周辺には大勢の観光客がいました。今回私が訪問した瑞泉寺は、鶴岡八幡宮の東、中心部の喧騒を離れ鎌倉宮より徒歩13分ほど行ったところにあるとても静かな寺院です。山門を通り、うっそうと木が茂る道を進んでいくと、小さな本殿と庭園のある境内に着きます。


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瑞泉寺境内


 瑞泉寺は、円覚寺開山の仏光国師(無学祖元)の孫弟子である夢窓国師が開山し、足利尊氏の四男で初代鎌倉公方の足利基氏以降、鎌倉公方足利家の菩提寺となった格式ある寺院です。仏殿背後にある庭園は、岩盤を彫刻的手法によって庭園とした「岩庭」とも呼ぶべき造りで、書院庭園のさきがけをなすものでもあり、現在鎌倉に残る鎌倉時代唯一の庭園だそうです。鎌倉石を大きく彫った洞(天女洞)はとても見応えがありました。


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天女洞


 夢窓国師は優れた作庭家でもあったそうで、瑞泉寺のほかに、現在国の特別名勝・名勝に指定されている京の天竜寺、苔寺で知られる西芳寺、美濃の虎渓山永保寺なども夢窓国師が作ったお庭だそうです。とても季節感を感じる場所で、境内にはたくさんの種類の木が植えられており、いまは綺麗に刈り込まれた木々の合間に椿と南天の実の赤がよく映え、またところどころ小さく膨らむ黄梅のつぼみが印象的でした。


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真っ赤な実をつけた南天


 寺院の入り口の門に掲示されていた句にも春を待つ心が感じられます。


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高浜虚子の句「時ものを解決するや春を待つ」


 お寺に向かう道中、見上げると視線の先に梅の花がぽつぽつと咲いていて、ほんのりと良い香りが漂い、まだまだ寒い1月ではありますが少しだけ春の足音の聞こえる鎌倉でした。


20160122plum_tree.jpg
咲き始めた白梅の花

January 15, 2016

山猫の森から

 
20160115entrance_door.jpg 宮沢賢治の作品から店名を起用する例は多々あると思いますが、ここまで自然に作品と現実の印象がシンクロしてしまうことはあまりないのでは...。今回伺ったギャラリーの感想です。

 お正月が終わってすぐの連休初日、寒いながらも穏やかに晴れた気候にほだされ、思いついて越生まで車を走らせました。梅林が見られたら幸運と思いつつ、道に迷いながら辿り着いてみると、さすがにまだ早く、花の気配は全くありませんでした。

 越生梅林を通過する埼玉県道61号からあじさい街道へ入り山林の中の細道を上がっていくと、右手にロッジのような一軒家が見えてきます。門前には、猫のシルエットが乗る年季の入った金属とガラス玉のオブジェ風アーチがあり、「山猫軒」という文字が形作られていました。宮沢賢治の「注文の多い料理店」に登場する店の名前ですが、この場所にあるとまさしく幻想譚の世界そのもの。古びたたたずまいにやや気後れしながら、門を通り階段を上がると建物の扉も巨大な山猫の笑い顔でした。靴をスリッパに履き替えて入ってみると、そこはパンやお菓子、その他グッズが並ぶプチ賑やかなスペースで、外観とのギャップに一瞬異界に入り込んだ印象を受けます。

20160115yamanekoken.jpg 開けかけたガラス戸の奥の部屋に絵が掛かっているのが見えたので、入って行くと何点かの展示作品と共に岩田壮平画伯の、金地に赤い椿を描いた小品もありました。その右の部屋はグランドピアノといくつかのテーブル席が設置された広いメインホール。木材で組まれた高い天井には天窓から光が差し込んでいます。柱や壁にはさり気なく絵画作品が展示されています。さらに吹き抜けの正面のロフトは2階の空間となっており、こちらにも作品が並んでいました。こことつながる右側のロフトに多数のスピーカーが置かれ、静かな音楽が流れています。暖炉には火がくべられ、テーブルのお客さんも寛いだ感じで静かに飲食を楽しんでいます。私は古代米の野菜カレーとコーヒーを賞味した後、展示作品を鑑賞させていただきました。現在「倶楽部山猫絵画展」(越生での田植えを通して出会った日本画のグループ展)が開催されており、岩田画伯を含む総勢24人の作家さんの多様な作品が展示されています。いずれも、テーマ・作風ともに日本画という枠にとらわれていない若々しさが感じられるアート作品です。

20160115gallery_and_cafe.jpg 展示作品もさることながら、和と洋の要素を持ったレトロ感あるこの建物自体に強く興味がわき、オーナーの南さんに建物の来歴を伺ったところ、驚くべきことに、南さんご自身の手で平成元年に建てられたということでした。当時大きく紹介された建築雑誌2誌を見せていただきました。釘を1本も使わない伝統工法で、1,000本もの楔を作って組んでいるそうで、大変な手間暇がかかったとのこと。しかしそれはそれで充実した楽しい時間だったそうです。仲間の方たち40人ほどの協力をいただいて作り上げた家は、外装、内装に様々な人々の個性あるこだわりの意匠・造形が見られます。建物自体が複数の造形家のコラボレートによるアートといえるかもしれません。

20160115Second_floor.jpg ここにはもう1つ神秘的な場所がありました。亡き奥様の名のついた千代文庫です。農業、田舎暮らし、植物 他様々な蔵書とともに、宮沢賢治の手書き原稿の複製も置いています。隠し部屋のような造りの空間に、「~料理店」に登場する一番最後の部屋を連想しました。

 お土産に、入口付近にあったオーナーおすすめのカンパーニュ(田舎パン)を買って帰りました。帰り際、ハンモックのあるオープンテラスを見ると、暖かい時期に是非また来たいと思いました。


 
■ギャラリィ&カフェ 山猫軒

所 在 埼玉県入間郡越生町龍ヶ谷町137-5
電 話 049-292-3981
営業時間 11時~19時
営業日 金、土 日 祝日のみオープン
企画展示 倶楽部山猫絵画展(2016年1月1日~2月28日)


January 8, 2016

桜と目黒川と個性的なお店の事

 あけましておめでとうございます。本年も美術趣味をご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。読者の皆様には、良きごエン(猿)に恵まれ、災いがサル(猿)年でありますよう心よりお祈り申し上げます。

 さて、本年の第一回目のブログは、少々早いようですが春にまつわる花の絵から始めたいと存じます。新年早々何を浮かれているのかとご叱責を賜るかもしれませんが「冬来たりなば春遠からじ」と申します通り、今の寒さの先には春の喜びが待っております。

 東京の南側に世田谷区、目黒区、品川区を流れ、東京湾に注ぐ目黒川があります。目黒川沿いには個性的でオシャレなお店が並び、若者のデートスポットとしても有名です。また中目黒駅周辺の川沿いにはソメイヨシノが植えられており、春になると桜祭りが開催されるなど多くの人でにぎわいます。人が多いところが苦手な私は、まだ閑散としている冬の間にこの川を訪れる事にしました。

 中目黒駅から歩いてほど近い場所に、「郷(さと)さくら美術館 東京」がございます。この美術館は桜を描いた作品の常設展示室を設けて「いつでも桜が見られる美術館」として多くの方に親しまれています。また外観がとてもユニークな建物で(2012年グッドデザイン賞受賞)、ぱっと見は真っ黒な箱の様にに見えますが、近寄って良く見ると外壁のパネル一枚一枚が桜をモチーフにした模様にくり貫かれています。こちらの美術館では特別展「中島千波の世界」※が開催されています。中島千波画伯といえば、「桜の千波」と評されているほど桜の絵の大家です。

 まず美術館に入って驚くのは、一階のフロアにぐるりと並べられた大画面の桜の屏風です。まばゆい金の明るさの「素桜神社の神代櫻」や2015年に完成させたばかりの「石部の櫻」などの四曲一隻の屏風が5点、堂々と展示され日本各地の桜の巨樹を居ながらにして鑑賞できる様は、まさに桜花爛漫、春到来なのであります。個人的には薄暗い背景に、ほのかに桜の花が輝いている「樹霊淡墨櫻」がとても好きです。作品の解説には千波画伯の言葉と、描かれた花についてわかり易く書かれており、より作品を知る事が出来て楽しめます。この展覧会では1〜3階のフロアごとにテーマが分けられ、「おもちゃ」シリーズや「人物」など、中島画伯の幅広い画業に触れる事が出来ます。各階へはエレベータで移動でき、外光の差し込む明るいトイレ、適度な展示スペースなど、とても居心地が良く鑑賞疲れもありません。郷さくら美術館は福島県郡山市にもあり、そちらの方が先に開館いたしました。そちらの美術館へも是非、訪れてみたいものです。

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郷さくら美術館のアーティスティックな黒い外壁


 さて絵画鑑賞の後は、目黒川沿いを散策する事にします。個性的なショップが並ぶこの界隈でも特に楽しいお店がColobockle(コロボックル)さん。昔ながらの一軒家を改装した店内には、絵本作家の立本倫子さんのハンドメイド感たっぷりの絵本や文具が並びます。立本さんが作り出す、不思議で楽しいキャラクターが描かれた品々はどれも欲しくて迷います。目黒川沿いを池尻方向へ進んで行くと、西郷山公園近くの川沿いに昨年の11月に開店したばかりのチョコレートショップ「green bean to bar chocolate」(グリーン ビーン トゥ バー チョコレート)があります。ブルーの外壁にヨーロピアンな外装。ここはカカオ豆からチョコレートになるまでの全行程をお店に併設されたファクトリーで行っているこだわりのチョコレート専門店。カカオ豆と砂糖の2つの材料で作られるチョコレートバー。アニスの香りのガナッシュなどの各種ボンボンショコラ。マダガスカル産カカオ豆を材料にしたカカオティーといったちょっと変わったものも売っています。店内でチョコレートドリンクを飲む事も出来るので、散策に疲れたら一休みにももってこい。

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カカオティーとボンボンショコラ



 最後にお勧めしたいのは、国道246の陸橋脇にある「一般財団法人 日本地図センター」。こちらのビルの1階には様々な地図が売っているので地図好きにはたまらない所である。私も以前「デジタル標高地形図 東京都区部」と「デジタル標高地形図用3Dメガネ(紙製103円税込)」を購入した事がある。帰宅したら早速、今日の行程を3Dメガネをかけて標高地図で見てみよう。西渋谷台地と目黒川との高低差約20mもの崖線がクキッリと浮かび上がってくる事であろう。

※ 郷さくら美術館 特別展「中島千波の世界」 開催中〜2月28日(日)まで。場所、休館日などは美術館の情報をご覧ください。



【中島千波画伯版画のご紹介】

当代随一の人気画家として知られる中島千波画伯が、京都・東山にある高台寺の桜樹を描いた作品です。
高台寺は豊臣秀吉の妻ねね(北政所)が秀吉の菩提を弔うために創建した名刹ですが、古くから桜の名所として知られています。独特の華やかで妖艶な世界をお楽しみください。




リトグラフ版画
中島千波 《春日和》
販売価格 320,000円+税


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<仕様体裁>
作者直筆サイン、落款印入り
限定:200部
技法:リトグラフ
用紙:ベランアルシュ
版・色数:32版32色
額縁:特製木製額金泥仕上げ・アクリル付き
画寸:41.0×53.0cm
額寸:64.0×75.5cm
重量:約3.8kg
発行:共同印刷株式会社

プロフィール

共同印刷株式会社SP&ソリューションセンター アート&カルチャー部では、日本画を中心とした複製画や版画の制作、販売をてがけています。制作の裏側や、美術に関係したエッセーを続々とアップしていきます。尚、このサイトの著作権は共同印刷株式会社又は依頼した執筆者に帰属します。

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