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November 6, 2015

ジョゼフ・コーネルの部屋を訪れた事

 
 コーネルの箱が好きである。


 ジョゼフ・コーネルは、1903年にニューヨークの裕福な家庭に生まれた。しかし父を亡くすと、家族を養うために学業を辞め織物会社で働かなければならなくなった。そして彼は家の地下室をアトリエにして箱を作り始めた。

 彼の箱は蚤の市ででも買って来た様な古びた外装で、中にはコルク玉、女優のブロマイド、図鑑から切り抜かれた動物たち、割れたグラス、地図、貝殻などが並べられている。彼の箱は言うなればガラクタのいっぱい詰まった、あるいは、それすらあまり入っていない箱である。彼の作品を目にして2秒で立ち去る人もいるが、私はそれをずっと見ていたい。彼の箱の前に立つと、既になくなってしまったチョコレートの箱の匂いを嗅ぐような、甘い寂寥感を感じる。私は中でもホテルシリーズの様なモチーフが少ないものが好きである。箱(=部屋)の中にある、かすかな手がかりから隠れた物語を探すのである。空っぽのホテルの部屋で数時間前に起こった事件を想像し、ずっと昔に起こったホテルの歴史に想いを馳せてみる。

20151106Boxofcollage.jpg
© OSAMU INOUE, 2015
自宅の風呂場をコーネル風にしてみた...



 千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館で現在開催中の「絵の住処(すみか)--作品が暮らす11の部屋--」(2016年1月11日まで)で、ジョゼフ・コーネルの作品が見られるというので訪れる事にした。今回は立体、平面含め16点もの作品が、展示されている。「ジョセフ・コーネルの部屋」と題された一室には彼の作品だけが展示されている。その中の一つに《無題(ピアノ)》があった。箱の内側に楽譜が貼ってあり、3段に仕切られた棚には楽譜を貼付けたマッチ箱の様なものが置いてある。そして甘く切ないオルゴールの音色がエンドレスで聞こえて来る。元はモーツアルトの「ピアノ・ソナタ ハ長調(K.545)」が奏でられたそうだが、音楽に全く造詣がない私には、それかどうかわからない。しかし国内にこれだけの数のコーネルのコレクションを持っているとは、実にすばらしく、ありがたい事である。コーネルの箱をまだご覧になられた事がない方は、是非この機会に彼の部屋を訪れていただきたい。ただ彼の箱の世界に閉じ込められて、出られなくならない様にご注意いただきたい。

 ちなみにコーネルについての書物で、私のお気に入りは以下。「コーネルの箱」(チャールズ・シミック著、柴田元幸訳、株式会社文藝春秋発行)は、コーネルの箱の写真とシミックの幻想的な詩とが織りなす、まさに迷宮的世界で逸品。洋書の「Joseph Cornell : Navigating the Imagination」(Lynda Roscoe Hartigan著)は彼の作品がたっぷりと掲載されている。

 さて彼の部屋に長居をしすぎたため、少々コーネル疲れを起こした。隣接するレストラン「ベルヴェデーレ」で昼食を取る事にする。ここでは千葉の地のものを取り入れた料理をいただける。美術館のレストランに相応しく、前菜の盛り合わせの皿は画家のパレットの様にカラフルで、出て来る品々が皆目で見て美しく、そして美味しい。窓からは緑に囲まれた池の景色が楽しめる。ただし休日のランチは混雑するので、早めに入った方が良さそう。

20151106ViewFromRestaurant.jpg
© OSAMU INOUE, 2015
レストランの窓から、樹々に囲まれる池を眺める



 食後に池の畔で一休みする事にする。池には白鳥が居る。白鳥というものは翼を広げて立ち上がる(元から二本足で立っているが)とかなり大きい。鳴き声も騒がしく威圧的とまで言える。一羽がこちらに向かって迫って来る。白鳥に追われ引き上げる事にした。


 尚、DIC川村記念美術館と言えば、マーク・ロスコの部屋(心臓の中の様に赤い)やフランク・ステラの部屋(体育館の様に広い)も、とてもすばらしいです。



【DIC川村記念美術館のご案内】

所在 千葉県佐倉市坂戸631番地
電話 0120-498-130(フリーダイヤル)
開館 9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館 月曜日、但し祝日の場合は開館し翌平日休館
   年末年始、展示替期間
料金 その時の展示内容により変わります。
   詳細は美術館へお問い合わせください。
交通 ◆JR佐倉駅より
   南口の「DIC川村記念美術館バス停」より無料送迎バスあり(乗車約20分)
   ◆京成成佐倉駅より
   南口の「シロタカメラ」前より無料送迎バスあり(乗車約30分)

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