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January 30, 2015

新年、大阪、新世界紀行。


 年明け早々に大阪へ行って来た。
 新大阪から御堂筋線に乗って「なんば」方面を目指す。電車の中には何やら笹の枝に鯛や小判、米俵の飾りが付いたものを手にしている人が多く乗っている。サラリーマンの集団であったり、ご夫婦であったり。何かと思いながら駅で降りて道に出ると、笹飾りを持った人がぞろぞろ歩いている。さては縁日か祭りかと、野次馬根性で人の流れの方向に一緒に付いて行くことにした。人々は屋台でにぎわう道を抜け、今宮戎(いまみやえびす)神社という所に入って行く。境内は活気で満ちており、「商売繁盛で笹もってこい♪〜」という節回しの付いた掛け声が鳴り響いている。盛り上がったコンサート会場のようだ。

20150130ebisu.jpg 私が訪れた日は1月9日で、たまたま十日戎(とおかえびす)の宵宮祭にあたったのであった。参拝者は古くなった笹飾り(福笹というものらしい)を神社に納め、新しい福笹に小宝(鯛や小判などの縁起物の飾り)を有償で付けてもらい、今年の商売繁盛を願う。私はこの風習の事を知らなかったのだが、関西ではかなりメジャーなイベントのようである。行事を知らなかった私であるが、なぜか「商売繁盛で笹もってこい♪〜」の節だけは記憶の奥にあった。

 関西の人は恵比寿神を親しみを込めて「えべっさん」と呼んでいる。これはこの地域の人の相手に対する親しみの心や、柔らかさといった気質に関係しているのかもしれない。まずは、このブログをお読みいただいている諸兄諸姉が今年一年、商売繁盛になりますようにお祈りいたします。

20150130tsuutenkaku.jpg さて「えべっさん」を後に、新世界界隈に向かう。昭和な雰囲気が今なお残っているこの街には、レトロな映画館がまだあったりする。新世界のランドマークといえば「通天閣」。声に出したときに「ツー、テン、カク」と滑舌の良い響きが独特である。将棋棋士の阪田三吉(正しくは吉の上が土です)も「サカ・タ・サン・キチ」と、やはり響きが良い。通天閣の下には阪田三吉の偉業をたたえた王将碑がある。

 通天閣は、命名した儒学者の藤沢南岳が込めた意味のように「天に通じる高い建物」といった外観。通天閣を設計したのは内藤多仲(ないとうたちゅう)という方で、東京タワーの設計もしている。塔の高さは地上100m、現在の通天閣は2代目で1956年(昭和31年)に完成した。初代通天閣は1912年(明治45年)に完成。上部の塔はエッフェル塔、下部は凱旋門とう形をしていたとのこと。残された写真を見るととてもエキゾチックな外観で、古典SF映画のジョルジュ・メリエス的世界が体現されている。さらに当時はルナパークという遊園地とロープウェイで結ばれていたというから、正しくレトロフューチャーなSFの世界か。是非とも個性的な初代の通天閣を見てみたかった。

 ところで新世界の近くには大阪市立美術館がある。せっかくなので開催中の「中国の彫刻」展(2月8日まで開催中)を見に行くことにした。この美術館は天王寺動物園のすぐ隣にある。もと住友家の本宅があった所に建てられたこの美術館は、シンメトリーで直線的なデザインの外観がすばらしい。さらに、ホールに吊るされているシャンデリアがまた美しい。大きなホールは、正面に大理石の階段があり、高い天井には巨大なシャンデリアが2基、暖かいオレンジの輝きを放っている。ホールを見るだけでも一見の価値がある。

 「中国の彫刻」展に展示されているのは南北朝時代の北魏から明時代までの仏教、道教の石造など。正直かなり地味かなと期待せずに入ったのだが、思った以上の収穫であった。その時代の地方色豊かな表現がされた石造たちは、個性的で奔放。ある意味不出来なものもあるが、かえってそこから素朴で偽りのない信仰心を感じる。そして技術がなく技巧に走っていないが故の自由さがほとばしっていて感動した。解説にも「バランスの悪い所もあるが、おおらかで暖かみのある地方性豊かな愛すべき仏像」というような内容が書いてあり、学芸員の方の展示物に対する愛情を感じることが出来た。

 地域色が豊かな事が、文化、芸術、生活、心の豊かさにつながっているのだと、今回個性的な街、大阪で強く感じた。


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