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December 3, 2007

古川美術館 vol.3  “おもてなしの心”

古川美術館への訪問インタビュー、今回が最終回です。
数多く開催されるワークショップの成果と意義、そして美術館や学芸員のお二人の今後の目標についてお聞きしました。
 
 
―― 古川美術館ではワークショップをたくさん開催していますが、そうした企画の狙いと、これまで特に反響が大きかったものを教えてください。
 
浅野 今年の夏に大変好評を頂いたのが、子供向けの美術館探検、学芸員体験というワークショップです。普段は見ることはできない美術館の裏側を、私たちと一緒に探検してもらい、学芸員の仕事を実際に体験してもらうという企画です。(古川美術館のブログも参照:http://www.furukawa-museum.or.jp/photo/2007/07/
小学校の高学年を対象に、学芸員体験として展覧会チケットのもぎりをしてもらったり、爲三郎記念館でお出ししているお抹茶のサービス係を体験してもらい、美術館にはどのような人がいて、どのような仕事があるのかを知ってもらいました。
お客様のいる現場に出ることは貴重な体験になったと思います。「ごっこ遊び」をする時期を経て、実社会に出て人の役に立つという実感を得ることができたのではないでしょうか。
 
古川美術館 ミュージアムショップ  こうしたワークショップを開くときにまず考えなければいけないのは、学校現場では子どもに対して何が求められていて、何が実現されていて何が実現されていないのか。実現されていないことに関して美術館はどう働きかけることができるか、そこがまず重要だったんです。

子どもの発展教育上、頭で覚え始めるのは中学生からなのだそうです。小学校の三年生くらいまではただ楽しいことを中心にやっていればいいけれど、三年生以降は社会や学校との関わりなど色々な物事を体験しながら学んで、学んだ後に自分で考える、ワークショップを開催するならそこまで導かなければなりません。
「体験」と言うからには、子どもたちが自由に発見できるような機会にしたい。子供たちは高学年になると自己が目覚めてくるので、私たちがリードしていくというよりは、子どもたち自身の意欲をくすぐるような何かをしてあげたいなと思っていました。
実際に美術品を触ることも、お抹茶を立てることもしなくても、職員の一人だという責任を感じさせることで子どもたちの顔つきが変わりました。そういったことを美術館の生涯学習の一環としてやりたいという思いからワークショップは始まりました。
 
浅野 すごく好評だったんですよ。予約がすぐに満席になって、実際に参加したお子さんのご父兄からも非常に喜んで頂きました。
 
―― ワークショップへの参加前に、美術館に行ったことのある子は多かったのでしょうか?
 
古川美術館 館内  行ったことのない子どもが多かったです。美術館ではやってはいけないことが多いですよね。飲食禁止とか、走り回ってはいけないとか。そうしたことを知らない子どもも多いですから、ワークショップはそれを教える機会にもなりました。子供たちに規則を守らせながら体験させることも、難しかったですね。
当館としては、生涯教育の場としても美術館を活用してほしいと思っています。今までは年齢層が高めの方に向けた企画が多かったのですが、子どもたちに向けた企画を充実させることで、(創設者の)爲三郎が力を入れていた都市開発、地域としての町おこし、そういったことの拠点にもなれると思っています。他の美術館では受け付けられないことでも、当館では受け入れる事ができて、密なお客様との接し方、子供たちとの接し方ができる。その継続をさせ、生涯普及をしていきたい。見せるだけじゃなくて体験してもらえる、学んでもらえることをやりたいです。
 
浅野 その他では、爲三郎記念館という数奇屋空間と美しい庭園を活かして、庭園に舞台を組んで自然とともにジャズを楽しんで頂いたりとか、伝統芸能を紹介したりという企画が多いですね。また、毎週金曜日に夜間開館をしておりますので、夜の美しい記念館の佇(たたず)まいを楽しんで頂いたり、色々な方面で楽しんで頂きたいと思っております。まだ模索中で、少しずつ変えていければと思っております。
 
  伝統芸能と、新しく模索するような企画はずばっと分けています。伝統芸能の企画は展示の内容や美術館と関連させたものが多く、爲三郎記念館の開館以降10年近く、開催してきました。ただ、同じものを踏襲していく意味を考えるようになりまして、記念館の新しい使い方、新しい企画に対してのお客様の反応、そういうものも模索しています。
 
浅野 伝統芸能を期待されているお客様にも「おもしろい!」と思わせるものを企画しなければいけません。新しい客層を広げていかなければならない。また、イベントを開催する狙いの一つに、美術にあまり目を向けていなかったお客様にも来てほしいという思いがあります。美術館に行ってみたいと思うきっかけになればいいなと思っております。
 
―― 最後に、美術館のこれから、お二人の学芸員としての目標などを教えてください。
 
  私がいつも気を付けているのは、姿が見える学芸員になりたい、ということです。学芸員は通常、お客様からは見えない黒子の存在です。でも当館の良さは、お客様にわからないことがあればすぐに学芸員が降りてきて説明する、というところです。お客様と密な関係を保つことができるようにすれば、解説文だけではなく、身体で伝えることができる。姿が見える学芸員になりたい、そういうことです。
美術館としては、お客さん一人一人がずっと落ち着いて過ごせるような空間にしたいと思います。あの美術館は親切だね、落ち着くねと言われるような、この規模だからできることを大事にしたいです。
 
浅野 展覧会を企画する上で常に心に思っているのは、お客様にとって新しい発見があるような企画になれば、と思っています。多くの作家が残してきたものを、展示を通して伝えることが学芸員の仕事です。求められるものはその都度違いますが、ただ常套的な説明をするのではなくて、並べ方一つで今までと違った見方ができる、そういうことを伝えられればと思っております。作品をいかに魅力的に見せるか、ですね。
 
「茶の湯」 展示室  私の恩師はよく、学芸員は「単なる絵を作品にする者だ」と言ったんですね。子どもたちがぱーって描いた絵も作品なんです。それを世に出すか、出さないかが学芸員の役目であり、単に伝えるのではなく「作品にする」ということ。永久的に残し、人に紹介してその価値を見出していくことが大きな仕事だと思うんです。単純なことですが、怠ることなくやっていきたいと思います。多面的な作品の見方を紹介していきたいと。
あらゆる意味で学芸員は仲介者であり、中継点です。私たちが最終点ではなく、その先にお客さんや作品の未来があるという意味で、常に橋渡しの存在なんです。
そうそう、社訓があるんですよ・・・
 
(声をそろえて)「おもてなしの心」!(一同笑)
 
―― (笑)どうもありがとうございました。
 
 
古川美術館
名古屋市千種区池下町2丁目50番地
TEL:052-763-1991
http://www.furukawa-museum.or.jp/
 

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