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November 7, 2007

伊藤髟耳先生インタビュー vol.3(全3回)

日本画家・伊藤髟耳(ほうじ)先生へのインタビュー、今回が最終回です。
先生が画家として今後描きたいもの、大切にしていることをうかがいました。
画家の方々を始め、美術に携わる全ての方、必読です。
 
 
―「家族」で郷土玩具を描かれたというお話はたいへん興味深いものでした。それでは今後、描いてみたいものはありますか?
 
伊藤 これからは、もう何でも描いてみたいと思っています。地球上の全てのもので絵にならないものはない。全部、絵になるはずなんです。それも自分で描くのではなくて、描かせてもらう、題材から教えてもらう、ということです。
・・・と偉そうなこと言うけれども、先日、湯河原で写生をしたんですが、全然描けませんでしたね。みじめでしたよ。
 
―描けない、というのは、思い通りに描けなかったということですか?
 
伊藤先生のスケッチブック伊藤 思い通りどころか、どう描いていいのかわからなかったんです。だからね、私、だめだなーと思いましたよ、今回。
でも、だめだ、ってことに気付いたこと自体まだ良かった。思うように描けない事を自覚できたからです。自分では描けると思い込んでいる人はたくさんいます。
話が前後しますが、写生に行かずに写真一枚を題材に絵を描くひとが多いんですよ。だけど、これでは絵にならない。写生に行って、如何に自分が思い通りに描けないかを知る、こういう仕事も必要。本当だったらもっともっと取材に行かなきゃいけない。

 
―写真だけからは伝わってこないものが、取材の現場では感じられる、それが絵を活かせる、ということでしょうね。絵を描く、特に日本画を描く上で大事なのは、どんなことでしょうか?
 
伊藤 整理された線、整理された色、整理された面、この三点だと思うんです。これらをただ継承すればいいわけでもないけれど、この良さを自覚した上で表現していかなければならないと思っていますね。
写生というのは、その題材を自分の体に焼き付けていくこと。そのために一つだけの写生をやるんじゃなくて色々写生をする。目が慣れてくると初めに見えなかったものがどんどん見えてくる。だから、一回で物事を全部わかったと思わないほうがいい。何回も何回も見直す。それが大事。(ここで、ご自身の画集を取り出す。)
この絵は建物を室内から描いたものです。建物の外を描くのは、大したことないんです。室内から外を見て描くと、部屋の梁は難しい。これを写真で描くと、遠近が全然違ってくるんですよ。・・・室内を描くっていうのはね、絵描きにとってすごく勉強になる。でも、室内を描くひとって少ないと思いませんか?
 
―確かに少ないかもしれません。
 
郷土玩具 うさぎと猿伊藤 描けないんですよ。こんがらがっちゃうの、描くのが。(笑)だから逆に言うと、それを勉強しておくべきなんです。
他に私が描き続けているのは、釈迦十大弟子。十大弟子というのは、一人の人間が何でもオールマイティーにできると思わない方がいいと気付かせてくれた、大切な題材です。
もちろんお釈迦様は素晴らしい人だったんだろうけど、そのお釈迦様の教えを伝えていったのはお弟子さんたちだった。その人たちの力があればこそ、釈迦もどんどん悟りを得ることができた。
人間は一人では何もできないかもしれない。信頼し合える仲間と一緒の仕事に携わることがいかに大事か、ということを教えてくれたのが十大弟子です。だから一生描き続けてもいいと思っています。
そういうことです。何でもいいんです。地球上の全てのもの、石ころ一つでもいいんです。
で、こんど浜松の展覧会に行くときにね、何か浜松に縁のあるものを描きましょうってことを言い出したんです。で、息子がね、冗談だったと思うんですけれど、「うなぎパイがある」って。
 
―あー、浜松といえば。
 
伊藤 で、一枚の絵に、うなぎパイを描きます。(笑)まだ描き終えていないから、描けないと思って不安になるかもしれないけれど。
 
―うなぎパイを描いた日本画、斬新ですね。
 
伊藤 何でもいいんです。変なこだわりを持っちゃいけない。こだわりをどんどん取り除いていく。
どんな筆でもいいんです。慣れるまでにちょっと慌てることがあっても、慣れてしまうとどうってことない。使わせていただけるなら何だっていい。そう思います。
 
―しかし、「うなぎパイ」は見てみたいですね。
 
伊藤 こういうことを先に口走っちゃうとねえ。(一同笑)口に出すと、実行しなきゃいけなくなる。
でもそうしないと実行しなくても平気で済ましちゃいます。どんなことにもチャレンジしてみる、ということで・・・
本来は、人がやらない仕事をすることこそが創作です。絵もそう、版画もそう、彫刻もそう。でも、日本の中ではそれはまだ無理なんでしょうね。
 
―「うなぎパイ」の新作、心待ちにしています。どうもありがとうございました。
 
 
伊藤髟耳 家族
伊藤髟耳 「家族」
彩美版・シルクスクリーン版画、画家自身による手彩色入り
限定100部  希望小売価格157,500円(税込)
 

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