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November 5, 2007

伊藤髟耳先生インタビュー vol.2(全3回)

日本画家・伊藤髟耳(ほうじ)先生へのインタビュー、第2回目。
「家族」に描かれた伊藤先生ならではの家族の表現。モデルになったのはどなただと思いますか?
この絵のモデルとなったもの、また、日本画を描く上で大切なことをお聞きしました。
 
 
―今度は「家族」のモデルについて教えてください。
 
郷土玩具 1伊藤 これは会津の郷土人形なんです。
私が(日本美術院の)同人になって間もない頃、仏像の絵をたくさん描いていた時期なんですが、郷土玩具にも興味を持ち始めたんです。
私が仏像を描いている時に思ったのが、仏師の方は、一生一代の大仕事という気持ちで仏像を作りますよね。とにかく、力作、会心作を作ろうとして。私はそれをまた写生して、絵にする。
その一連の作業の中には、人間の持っている業(ごう)が渦巻いてることに気が付いたんです。
業っていうのは確かに魅力があります。強い意志はインパクトが強いから。でも、それだけではよくない。業を少しずつ捨てていってもいいかなと思い始めた時に、浜松にある方広寺(ほうこうじ)で五百羅漢を見たんです。五百羅漢というのは、何か子供っぽい穏やかな表情で、にこやかにするものだと思ったから。それを描きに行くうちに、今度は郷土玩具には業が無い、と思ったんです。
郷土玩具というのは、農閑期に、縁側で、みんなで作るようなもので、一世一代の芸術品を作ろうなんて気持ちは全然ない。私はこれと触れ合うことで自分の業も消えてほしいという願望があった。それで興味を持っていたら、会津若松の山奥で、一人で郷土玩具を作っている人を知ったんです。

 
―その人形を見るために、福島まで行かれたわけですね。
 
伊藤 ええ。で、その方の工房まで出向いて、タクシーを待たせて、買えるものを買って帰ろうとしたんです。その時にまず、うさぎさんの人形が目に入ってきて。(笑)
その方が言うには、その家を借りた時に一番初めに来たお客さんが、実はうさぎだったんですって。で、本人もすごく思いを持っていて。
 
「家族」部分―その人形が、作品の中のうさぎですね!
 
伊藤 そうなんです。まあそんなことでね、20数年ご縁ができて、ずーっと続いています。
でもね、彼の最近の作品よりも、初期のものの方が好きです。最近のはちょっときれい過ぎる。(苦笑)
うさぎさんとか、素朴でしょ、顔が。昔の人形の方がざくざくっとしていて面白い。そんなこと、言えませんけど。(笑)
 
―それでは、日本画を描く上で大切なことは、どんなことでしょうか?
 
伊藤 ・・・これはね、理化学研究所の先生に言われたので、自信を持ったんですけれど、物体が存在するのは、反対同士の力の加減があって形ができていて、その力の兼ね合いである。それをうまく使うことが、絵を強くする、と私は思ったんです。
ある浮世絵版画の収集家の方の話で、浮世絵版画ってこんなに(両手で小さな四角形を描いてみせる)小さいものでしょ、だけど、ゴッホにしろセザンヌにしろ、ルノワールにしろ、みんな、日本の浮世絵版画を見て、すごくびっくりしたっていう。それはめずらしい表現のせいだけじゃなかった、って言うんです。
構図上で反対向きの力を使っている。平面的な色合いなんだけれど、反対同士の線、形の構成により強い絵ができると言うんです。絵が自然に強くなっている。ある線の動きがあれば逆の動き、また逆の動き、逆・・・みな、そういうふうにしてつくっている。
だからね、本当に力のある絵は、斜めから見ると誰でもわかるんですけど、膨らんで見えるんです。
それが本当に強い絵だと、その収集家の方から聞きました。
 
―興味深いですね。本当に力のある絵は、斜めから見ると膨らんでいる。
 
伊藤 そのことを実行して、日本画の持っている絵具の発色を大事にしていると、こんな私の今のような絵に、どこでも見たことのない、どこにもない絵になっていったんです。
で、そういうことで描いていたら「フラクタルだ」(注:前回のインタビュー記事を参照)って言われて。自分では全然わからないんです。でもお医者さんとか、建築家のひとに私の絵を見せると、フラクタルでできていますね、って言うんですよ。生物学者、科学者、物理学者とか、そういうひと。不思議です。
(息子さんの方を向いて)なんか言いたいことある?
 
(息子さん:にこにこして首を横にふる)
 
(一同笑)
 
伊藤 じゃあ、この話題はこの辺りで・・・
第3回に続く
 

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コメント (2)

 

非常に興味深いです。
だいたいフラクタルといえば、抽象的な絵を思い浮かべがちです。
しかし、ぱっとみて具象的な絵画でフラクタル的というのは、すごいことのように思います。

 

コメントをありがとうございます。
伊藤先生は長年、フラクタルを取り入れた日本画を制作されています。
ぜひ、美術館やギャラリーで原画をご覧になってくださいね。(担当 ツネ)

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