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November 1, 2007

伊藤髟耳先生インタビュー vol.1(全3回)

日本美術院に所属し、同人として活躍される伊藤髟耳(ほうじ)先生。若手の画家を交えて研究会を開くなど、常に熱心な創作活動を続けてらっしゃいます。
当社では先生の版画作品「家族」を発売したばかりですが、この度先生のアトリエにうかがい、インタビューをさせていただきました。3回に分けて掲載いたします。
 
 
―まずは、この「家族」を制作されたきっかけを教えてください。
 
「家族」伊藤 2000年の12月に入院し、手術をすることに決まったんですが、その年明けから、21世紀は「家族の時代」「手の時代」になると思い始めたんです。それが大事になる時代だと。
その年の春に(院展作品集の)表紙絵を描いて、秋にもまた表紙を担当する年だったんですね。春は花の絵を描いたんですけれど、秋は何にしようかな、と思って。退院したばかりだし、自分のうちにあるものを見たら、郷土玩具がある。
・・・私ね、とにかく郷土人形の庄屋さん夫婦に興味を持ったんです。それを使って「家族」を表現してみたいと。その中にうさぎさんも入れて、と。
 
―同じ年の院展出品作も、「家族」でしたよね?
 
伊藤 そう、そっちに描いたのは本当の家族。(笑)家族というテーマをずっと表現したくて、院展に出品したんです。
だけどある方に、「院展も変わった作品を描くひとが出てきたのねえ」と言って驚かれました。珍しかったんでしょうね。
 
―絵の背景の、鮮やかで不思議な模様、こちらはどのようにして生まれたのでしょうか?
 
伊藤 対象の中の形を表現していくうちに、自然とそうなりました。
あるとき、日本画の絵具っていうのは、印刷のインクでは出せない発色だということに気が付いたんです。すごく輝く。発色がものすごいんだっていう。
それを意識しているうちに、同じ色を何回も重ねていくことできれいに発色する、いい作品になる、って気が付いたんです。

光の場合は、加算混合といって、色を重ねるとどんどん明るくなるんです。で、最終的には白になる。
絵具の場合は逆に減算混合で、混ぜるとどんどん暗くなる、黒になっちゃう。絵を描くときはもちろん絵具を使っているから減算混合ではあるんだけれども、それをなるべく阻止しようという意識でやっていって、そうしたら、ああいう模様になりました。それをある画材店の社長さんに「フラクタルだ」って言われたんです。
 
―その「フラクタル」について、詳しくお聞かせください。
 
「家族」 部分伊藤 色々な意味合いがあるらしいのですが、画材店の彼が言うには、「画面の一部を取り外して他の部分と取り替えても違和感がない」っていうこと・・・
(ここで伊藤先生、にやりと笑い、息子さんに指示してアトリエに置かれた5枚組作品の内の2枚の位置を換える。)
ね、不自然にならない。そういう力のある絵なんです。
言い換えると、画面だけで主張するんじゃなくて、画面の外までわーっと広がっていくような絵、ですね。ある方が私の展覧会に来て、「画面の外まで広がってみえる」って言うんです。絵の前にひとが立つと、そのひとが絵の一部になる。天井から床まで、全部が絵になるって言うんです。
 
―そういうことは、実際に描く際には意識されてるんですか?
 
伊藤 それは一切しません。
とにかく自然をよく見て、自然が持っているフォルムがどういうものなのかを探求するのが画家の仕事だと思うんです。
自分の考えでしか絵を描けないようではいけない。自分の力だけで絵を描いていると思ってはいけない。
地球上の全ての自然体の形には、コンピュータで計算すると共通した何かがあると聞いたことがあります。山の稜線や海岸線、水をぽとんと落としたときにできるフォルムだとか、人間や動物や植物の形だとか、どれも計算できる、共通した形でできている。それは、小さいものにも大きいものにも共通しているんです。
人間のからだにもあるフォルム、無意識のうちに求めているフォルムがあると思うんです。それを、いわば「描かせてもらう」のが画家の役割なのではないでしょうか。

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