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November 30, 2007

古川美術館 vol.2 「茶の湯 インテリアデザイナー 内田繁の世界」

古川美術館へのインタビュー、第2回目。
美術館の分館・爲三郎記念館で開催されている企画展について、引き続き学芸員のお二人に話を聞きました。
現代的な茶室の展示。しかしここでも苦労が絶えなかったようで・・・
 
 
展示風景 1―― 現在、爲三郎記念館で開催されている「茶の湯 インテリアデザイナー内田繁の世界」(12月6日まで)も非常にユニークな企画ですね。
 
浅野 当初、爲三郎記念館が持つ数奇屋の空間を生かした企画を考えていたんです。爲三郎記念館は茶事を目的として建てられた建物ですので、茶の湯をキーワードに、空間を全体的に演出するような企画を検討しました。そこで、茶の湯を通してインテリアやデザインの可能性を追求されている内田繁先生に演出をお願いすることになりました。
内田先生は茶の湯に大変造詣が深い方なので、現代ならではの茶室の展示ができると思ったんです。
 
  展示は大掛かりになりました。伝統的な爲三郎記念館の設えとは全く違う演出が施されています。新しく生まれた空間と伝統的な空間が、きれいに融合されています。
 
浅野 爲三郎記念館の特徴は、大きな広間があることと伝統的な四畳半の小間(こま)の茶室があること。小間の茶室はそのまま伝統的な設えで活かしす一方、広間はがらっと建具を変えたり、スクリーンを使うことで大きく変える試みをしています。
内田先生の「仮設の茶室」をご存知でしょうか? 組み立て式の茶室で、どこへでも茶の湯の空間を作り出すことができるというものですが、そちらを記念館の前の庭園に展示し、記念館にある国宝の如庵(じょあん:16世紀、茶の湯の創世期に織田有楽斎(おだ うらくさい:織田信長の弟)が建てた茶室。愛知県犬山市の有楽苑)を写した茶室と併設することで新旧の茶室を対比を楽しんで頂く、というのが今回の内容です。

  茶室の中は非常に気持ちのいい空間です。庭の景色が映りこんですごくきれいなんですよ。
 
展示風景 2浅野 外からの光が当たると、これがまた美しいんですね。格子が影になって。茶室の中では不思議と周囲の音が聞こえなくなるというか、空間に集中することができます。やはり突然に建つ茶室ならではのおもしろさですね。そうした日常の空間でない場所でお茶を楽しむことができるのが魅力です。
それと、自然をよく感じることができる。つまり、普通に庭を見るのではなく、この茶室の中から自然を感じることでいっそう濃密な自然を感じられるのではないかな、と。そうした空間を楽しんで頂きたいです。
しかし準備にはたいへん苦労いたしました。開催日の前日に雨が降ったので、カバーをかけたり学芸課の皆の力を借りて作品保護に努めたんです。カッパを着て、ヘルメットをかぶって・・・
 
  あれは辛かったよね!(笑)
 
浅野 その時に私ははしごから落ちたんです(前回のインタビュー記事を参照)。傘をかけようとして、はしごをよじ登った瞬間に。
 
  その日の降水確率が80%で、夜中の12時まで雨が降り続けるという予報でした。そこで17時頃に茶室にカバーをかけ、その一時間半後に皆で確認しに行ったところ、カバーが雨水の重みでたわんでいたんです。もうしばらくすると屋根が潰れる!と危機を感じ、夜中に一時間ごとに水かきに行くことに決めたんです。その作業中に、浅野さんがはしごから落ちてしまったんです。
 
―― それは大変でしたね・・・
 
浅野 本当に苦労はありました。ただ、その甲斐あって私共も非常に満足のいくものができ、内田先生にも喜んで頂きました。
先生が以前仰っていた言葉があります。国宝の待庵(たいあん:日本三名席の一つ。京都府大山崎町。千利休が豊臣秀吉のために建てたと伝えられる。)は二畳の究極の茶室空間として知られています。限界まで狭くして、また壁も真っ黒にしたことで、空間の枠を越えて無限の広がりを感じられる茶室になった。では逆に、こうした屋外の仮設の茶室において、室内外が丸見えでありながら、囲われたような茶室空間ができるのか。そう考えながら作られたのだそうです。
 
―― 素材は竹ですか?
 
浅野 ええ、竹です。竹で編んであるという、その儚(はかな)さ、かげろうの羽のような透き通った感じが最大の魅力ですね。光が外からも入るし中からも漏れる、それがこの茶室を一層美しくし、儚さを感じさせる。いっそう仮設性、つまり瞬時になくなったり実現したり、ということを感じさせるんでしょうね。これが堅牢な一枚の板だったらここまでの美しさはなかったと思います。
野外展示という性質上、期間限定の公開という形にさせて頂いておりますが、少しでも多くのお客様にこの茶室を楽しんで頂きたいですね。
 
分館 爲三郎記念館―― 一般の方には、茶室は縁遠い空間ですからね。
 
  そうですね。純粋に楽しんで頂くという気持ち、或いは茶室だということを忘れて入ってもらう方がいいかもしれません。
 
―― 公開の日は晴れるといいですね!
 
浅野 本当にそうですね。雨だと展示できませんので。
当館では毎週金曜日、夜間開館に合わせてライトアップをしておりますので、次回公開日(12月7日)には闇の中で照らし出された空間に身を置く事ができます。是非ともお越し頂きたいです。
 
―― 楽しみです。非常に力の入った企画だということが分かりました。
 
  本当に、肉体的にも非常に大変な企画でしたので。(笑)
 

 
 
古川美術館
名古屋市千種区池下町2丁目50番地
TEL:052-763-1991
http://www.furukawa-museum.or.jp/
 

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