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October 19, 2007

山種美術館 1 「川合玉堂展」

美術館紹介の第一回は、近・現代の日本画を中心とした日本有数のコレクションを誇る山種美術館。
川合玉堂展を開催中(11/11(日)まで)の館内で、今年5月に新館長に就任された山崎妙子館長と、学芸員の櫛淵豊子さんにインタビューしました。(全3回)

「川合玉堂展」館内「川合玉堂展」館内


―― まずは、開催中の「川合玉堂展」の見どころを教えてください。
 
山崎 創立者の山崎種二が玉堂さんと大変親しく交際していたため、当館では70点の玉堂作品を所蔵しております。そのうちの約60点を今回一堂に会することができたので、非常に見応えのある展覧会になっていると思います。
 
―― 玉堂さんと種二さんの親交について、エピソードをお聞かせください。
 
山崎 戦時中、玉堂さんは青梅に疎開してらしたんですけど、種二がその疎開先に俵のままお米を運んでいっただとか、いつも支援していたと聞いております。
非常に親しくて、忙しい合間をぬって玉堂さんに会いに行っていたようです。玉堂さんは性格も温かい方で、先日お会いした(玉堂の)お孫さんが、「祖父は温和な人柄で、でも、芯には強いものを持っていた」と仰っていました。

山崎妙子館長山崎妙子館長


―― 例えば、種二さんのために特別に描かれた作品はありますか?
 
山崎 画題を指定して描いていただくことはなかったようです。唯一、種二の娘の結婚式のために描いてもらった絵というのが、昭和17年の「松上双鶴」(※今年4月〜7月まで展示していたため、今回は展示されていません)です。
玉堂さんが種二に向けて書いた手紙が多数残されていますが、ある手紙の内容とこの絵柄がぴったりと当てはまったので、手紙に書かれているのと同じ作品だと判明しました。
 
―― 今回展示されている中から、山崎館長のお薦めを一つお願いします。
 
山崎 「早乙女」(1945年)ですね。あの絵は構図が非常におもしろい。大半の玉堂の絵は、余白を広く残して描かれていますが、あの絵は色の「面」で構成されています。大胆な構図で、働いている若い農婦、早乙女のひとたちがとても表情豊かにリズミカルに稲を植えていく姿が描かれています。
戦時中にも関わらず、玉堂さんが日々の生活をすごく大事にしていたことがわかる作品だと思います。玉堂さんの絵は見ていてほほえましくなるようなものが多いですが、特にあの作品は、ほほえましさだけでなくて、構図の大胆さや技法が非常に注目すべきものだと思います。
 
―― 「早乙女」の技法について、もう少し詳しくお願いします。
 
山崎 例えば、俵屋宗達や尾形光琳が名を連ねる琳派、その琳派の「たらし込み」の技法を用いて、緑青(ろくしょう)という絵具を使ってあぜ道が描かれています。
玉堂さんは常に琳派を意識していたのでしょう。これもお孫さんが仰っていたんですけれども、玉堂さんは宗達の作品を持っていたのですが、あるとき東京国立博物館に寄付したそうなんです。本当に欲の無い人で、だから宗達の作品も寄付したのだと思いますが。自分の勉強のために持っていたのでしょう。琳派からは色々と学んだわけですが、そういう意味で、非常に勉強熱心な方だったんだとわかりますね。
 
―― では、今回の玉堂展で特に苦労された点や、裏話など教えてください。
 
山崎 今回の展示では、これは当館としては初めての試みですが、軸物ばかりの展示会場にスポットライトを使用しています。ただ、当館の(ライトを取り付ける)レールダクトが後から増設したものなので、必ずしも理想的な位置にはないんですね。
ですから余計な影が出たり、室内が暗くなったりして、ライティングの専門家にやり直しに来てもらったりだとか、そういった苦労はありました。
 
―― 昨年の千住博(注:右肩に点のつかない「博」)先生の展覧会では、先生が照明に非常にこだわられたという話をお聞きしました。その時にもやはり似たような苦労があったのでしょうか?
 
山崎 そうですね。「千住博展」だけは千住先生ご指名の舞台照明の専門家が担当しました。赤い滝の作品に赤いフィルターをかけたスポットライトを当てたりとか。先生の場合は照明も含めて自分の芸術だと言い切ってらっしゃいます。
照明といえば、金箔を貼った屏風作品、玉堂さんの「紅白梅」屏風(注:玉堂美術館所蔵、今回の展示期間は終了)や、40周年記念展での速水御舟「名樹散椿(めいじゅちりつばき)」などは、作品の下から上向きに照明を当てたんです。あのやり方ですごくドラマチックになって、照明の大事さというのがわかりました。
 
櫛淵 照明は、作品保護の面でも大事です。保護のために暗くし過ぎてしまいますと、暗いという苦情が来てしまいます。その兼ね合いが難しいですね。
ほかにも色温度といって、光によって作品が暖色に見えたり寒色に見えたりするんです。照明についてはまだまだ模索中です。
 
―― 学芸員の立場で、ほかに苦労された点はありますか?
 
櫛淵 今回はわりと似たような作品が多いので、並び順にとても悩みましたね。あまり違い過ぎてもどうかと思うし、似たような作品がずらずら並んでもおもしろくない。その辺のメリハリというか、配置の企画に悩みましたね。
 
―― 確かに同じ作品でも、見る順番や、照明によって全然印象が違ってきますよね。
 
山崎 そうですね。作品を生かす展示方法を、これからも勉強していきたいと思っております。
 

 
山種美術館
東京都千代田区三番町2番地 三番町KSビル1F
http://www.yamatane-museum.or.jp/
 

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