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October 3, 2007

日展鑑賞 / 竹内栖鳳「アレ夕立に」

企画担当のツネです。

国立新美術館で開催された「日展100年」展を鑑賞しました。(現在全国を巡回中。)

美術の教科書の中に迷い込んだかのような、名品の数々。
数回に分けて、気に入った作品を勝手に解説します。
 
第一回。竹内栖鳳「アレ夕立に」
 
青い着物の女性が腰を落とし、扇で顔をかくしています。
突然の夕立に思わず顔を覆い、「アレ」と一声。

この妖艶さは、英訳の「Caught in a shower」では表現できません。


出品時に大評判になったというこの絵のあちこちに、栖鳳の技量が発揮されています。

 
まず、女性のうなじ(色っぽいですね)に見られる、毛の一本一本まで描いた細密な描き込みと、
着物や豪奢な帯の紋様に見られる、やや荒っぽい筆致の対比。

写実的に描くべきところは写実の手法で描き、絵の中の着物の中の紋様は、ざっくりと描き散らす。
 
栖鳳はもちろん、写実的に自然を描くことにも長けています。
しかし本作では、着物や帯の紋様を描くにあたり、あえて写実を捨てた。

この着物との対比が、うなじと後頭部しか見えない(見せない)女性の妖艶さをいっそう引き立てています。 
また、着物のすそに見られるような荒い筆致や部分的な描き残し(余白)は、
夕立に濡れて湿ったさまを表しているのでしょう。
 
着物が鮮やかな群青色で描かれているのは、水の流れ(≒夕立)を連想させるため。
  
そして女性の頭上の余白。
構図上のバランスも考えての余白でしょうが、同時に、
描かれていない夕立を観るひとに想像させる工夫でもあります。

ここで、絵そのものに加え、「アレ夕立に」という作品名が活きてきます。
夕立の場面であることを鑑賞者に知らせ、絵の情景をさらに展開させるのです。
 
 
本作は、1909年(明治42年)の第三回文展に出品されました。
現在は高島屋史料館の所蔵です。

1980年には「近代美術シリーズ」の切手の図案に採用されています。

ちなみに切手コレクターのわたくし、この「アレ夕立に」の切手シートを必死に探しております。

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